そう……ならよかった…………
(彩文の様子を伺うと彼女の様子はぎこちなさなども含めて緊張からくるものだとわかり、自身の心配は杞憂だったと安堵の息をつく)
お昼……ね、わかった……
(彼女もこの3日間で色々と身辺に変化が訪れており、その報告も兼ねて昼に二人で昼食をとることを約束して二人は席へと戻っていった)
……
(担任の口から彩文の身に起こったことを生徒たちへ話していたが、まだ精神的にも未熟である生徒たちに興味を持つなということも難しく、ホームルームが終わり授業の合間などのわずかな休憩時間には常に彩文の周りには人だかりができていた)
(その様子を紗枝は遠巻きに眺め、彼女に悪意のある接し方をする人物がいないか目を光らせていたが、彼女自身の人柄や長い付き合いもありそういったことも起こる気配はないと安堵していた)
お疲れ様……大変だったね…………
(質問攻めをする生徒達の追っ手を撒いて人気のない場所で二人は昼食をとっていた)
……彩ちゃんにも分からないことも多いだろうし、そんなに一気に来られても困るよね
(二人きりということもあり完全に自他ともに認める少女となった彩文を『彩ちゃん』と呼びつつ、紗枝も同情していた)
お父様も、お母様も彩ちゃんのことを尊重してくれてるみたいでよかった…………
名前も…………『さあや』にするんだね、良いと思うよ
(かつての男の子であった『あやふみ』が一人の少女としての『さあや』に上書きされて行き、容姿はおろか性別や名前すらも女の子のものへと変化していた)
それじゃあ……これからは『さあやちゃん』として、よろしくね…………彩ちゃん……
(事情を話し、僅かに元気を取り戻して儚い少女らしい笑顔を見せる彩文に紗枝も笑みを返す)
そういえば…………今日は男の子の制服を着てるけど……そのうちスカートにするの?
(ブレザーやワイシャツ越しにわずかに膨らみを見せる胸や、スキニーとは違い余裕のある生地ではあるが若干大きめに見えるズボンを見て紗枝は問う)