(穏やかの放課後の時間を過ごしていると不意にその日常を引き裂くかのような悲鳴が聞こえる)
……?
(悲鳴に気を取られ紗枝も外を見ると鬼のような姿をかたどった妖魔が女子生徒に向かって迫っているのが見えた)
…………戦士に休みはないのね
(カウンターの方では他の委員と一言二言言葉を交わした彩文が図書室から出ていくのを見届けると紗枝は妖魔の方をぼんやりと眺める)
(知性の低い野良の妖魔は相手を雌と見るや見境なく襲い掛かっているようでその全身からは雄の臭気の様なモノを感じさせていた)
……
(まるで劇を見ているかのようにぼんやりとした顔つきもそのままに紗枝は席から動こうともせずにその場で妖魔の動向を観察しているとどこからともなく彼女にとってはよく聞いたことのあるサファイアの声が聞こえ、妖魔と対峙していた)
やっぱり…………普通の妖魔程度だったら容易に倒せるみたいね…………
(搦め手も使うことのない純粋な闘争本能と淫欲に突き動かされる妖魔は魔力の向上しているサファイアに対しなすすべもなく光の矢によって貫かれ、その矢の数も速度や威力が向上していることはその先頭をマジかでとらえ続けていた彼女にも容易に見て取れた)
(完全に人間に擬態しているため場合によっては同じ妖魔から襲われる危険性なども考慮していたが、それを上回るほどにサファイアの戦闘力には信頼を置いており特に逃げることもなく彼女の戦闘を眺めていた)
…………
(そして妖魔を滅して再び彩文の姿に戻って図書室に戻ってきた彼は若干息切れをしており、体内に流し込まれた淫魔の体液によって雄の匂いに強く反応するようになった彼の体は先の妖魔の戦いで劣情が疼き始めていた)
(彩文の表情も頬を紅潮させて少しだけ息を上げながらも仕事をこなしていたがその様子も明らかに妖魔が来襲する前と比べると好調ではないように見える)
……彩くん、大丈夫?
…………さっきトイレに行ってたみたいだけど………………また辛くなってきたんだったら言ってね?
(すれ違い様に紗枝は彩文にそう伝える)
(彩文自身が蒔いたカバーストーリーとはいえ、サファイアの正体を知らないという前提での紗枝の視点からいれば彩文が再び劣情を催してトイレに向かい自身のみで発散しようとしたようにも見て取れていた)
……委員会の仕事でも、そっちの事でも……彩くんの為だったら手伝うから…………
必要になったら…………ね?
(耳打ちするように静かにそう語り紗枝は再び席に戻る)