いつもなら学習塾からの帰路は上り線の電車に乗り込むところを、敢えて下りの急行で3つ目の駅で下車。
心なしか重い足取りで駅のトイレに入って10分が過ぎた頃、桜は再びホームに立っていた。
勤務中はアップにしていた髪を下ろし、口紅はより艶めいた赤に塗り直して。身にまとうスーツもスカートも、よく見れば降車時と違うものになっていた。
教え子に見つかったら「これからデート?」とからかわれそうな程、がらりと雰囲気が変わっている。
頬をうっすら朱に染めて、伏し目がちに線路を眺めるスーツ姿の美女は、帰宅ラッシュのピークを過ぎた駅のホームではそれなりに目立っていた。
肉付きの良さが隠し切れないヒップの丸み、そこからスラリと伸びるパンストに包まれた脚。
上半身に目をやれば、はち切れんばかりのバストのボリュームに、ジャケットのボタンが気の毒になる程だ。
ブラウスのボタンが外されているのは、今夜の蒸し暑さからか、あるいは胸の窮屈さからか。
男の視線を無意識に吸い寄せる、くっきり刻まれた深い谷間からは、甘いミルクのように匂い立つ色香が立ち昇っていた。

(苦しい……早く、搾りたいのに……っ)

指定された駅から、指示通りの服装に着替えて、指示された時刻の電車に乗り込む。
指示された車輛の指示されたドア横に立ち、発車を告げるメロディを聞きながら、意識を向けるのは110pの乳果実だ。
痛いぐらいに張り詰めたソレは、窮屈なスーツの中でどうしようもなく疼いてやまない。
周囲の乗客への警戒も忘れちゃいけないのに、押し込められた苦しさと、先の方に集まっていくむず痒いような感覚が邪魔をしてくる。

(あ、もう、おっぱい、出ちゃう……っ)

じんわりと先端からにじみ出たものが、ブラウスの生地を濡らし始めた感触を不快に思いながら、桜は流れていく車窓の景色を眺めていた。