無駄に長いけど意味が理解できない

問題はそこからだ。
ポップで明るい誘惑系――それは現代誘惑小説の王道だ。作家も、作品の数も多い。
だが、現実には明確な成功をおさめている著者は少ない(選択肢が多くても、結局はトップの作家の作品だけを読者は買うのかもしれない)。
だから編集部としては、こういった売れ筋の原稿に出会うと、最初は前のめりになるのだが、
受賞=デビューとなると、どうしても慎重な目で検討せざるを得ないのだ。
ざっと読んだときの雰囲気はいい。明るく楽しく癒される。
だが、原稿を精緻に検証していくと、また違った感想が出てくる。
一見テンポがいいように思えるのだが、ところどころ地の文が重く、じれったく感じた。
セリフの掛け合いのテンポも遅く思えるところがあった。
さらに言えば、一つ一つのセリフ(特にヒロイン側のセリフ)の魅力をもっと高めて欲しい。
男性視点に偏り、ヒロイン視点が少ない気もした
(中高年読者の多いフランス書院文庫では、三人称の女性視点が多い方が読者の支持を得やすい)。