「あッ、あうッ……あうう、いッ、いいわッ、冷二さん、もっと……」
亡夫はもう頭をかきむしるだけだった。亭主の前で人妻のアナルを犯る、生前真樹子ではかなえられなかった背徳の興奮で冷二はしゃにむにいどんだ。真樹子も自分から腰をゆすりたてる。
「ひいッ……た、たまんないッ……いッ……いいッ……」
真樹子の目の前が白くなった。のたうち回るようにガクガクと腰をはねあがらせる。
唇の端から唾液が垂れおちた。

「お尻が燃えるわッ……あなた、ゆるしてッ……あなたより冷二さんの方がいいのッ。
お尻にしてくれるから……冷二さんが、いいッ」
フッと機長の怨霊が消えた。女房の最大の魅力はムッチリ張りつめた双臀だということに気づかなかったマヌケな亭主と、人妻の前も後ろも愛した男との差だった。

霊が見えない達也は、死にかけていた真樹子が突然膝立ちになり、喘ぎながら腰をくねらせるのを、唖然として眺めるだけだった。邪魔者が消えた冷二と真樹子はひとつになって、
ぴったりと呼吸をあわせ、まるで二人でろくろを回すように腰をグラインドさせた。

「真樹子、琴野真樹子ッ、これが俺だぞッ……肛門に、肛門にしっかり覚えるんだ」
この世で最後のアナルセックスで、冷二は抑えに抑えていた精をドッと吐きかけた。
汗まみれで倒れこんだ二人は重なりあったまま唇をあわせ、舌をからめて唾液を吸いあった。
「俺のものだぜ、真樹子。フフフ……」
穏やかな笑みが浮かび、スーッと姿が消えて、冷二は昇天していった。

「生きて、いるのね……」
真樹子はうっすらと眼を開いた。冷二の声も夫の声も、冷二の生身の感触も消えた。
全ては幻だったのか。全身に暖かい生気がゆっくりと行き渡ってくるのを感じた。
捨てられたくなくて「妊娠させて……」と口走ったあの夜に新しい生命を胎内に宿したことを、
真樹子はまだ知らない。