このご時世で花火大会が軒並み中止。
毎年家族で会場にいっていた我が家は今年も庭で花火である。
佐藤家の小花火大会もいまや終盤。
バケツを囲んで線香花火を片手に冒頭のつぶやきである。
「でも母さん楽しかったよ。修吾くんもきてくれたし」
そういって母さんは僕と修吾に優しい笑みを送った。
僕は高校生活、修吾は中学の、最後の夏休み。
家から照らされる明かりと最後の線香花火に照らされて、
ほのかに浮かぶ二人。
涼しげな恰好とふっくらとした顔。
半裸のような恰好と鋭く勝気な顔。
そして僕は、多分、やれやれみたいな顔をしてただろう。
父さんはリモート勤務で、10kg太った。
でも今は通勤してこの時間でも終わらない仕事に追われてる。
じゃあ修吾くんでも呼ぼうか。
我が家の花火大会の話が出た時そう言ったのは母さんだった。
修吾。
僕の父方のイトコで三つ違いの中学三年生。
平均よりやや背が低いけどスポーツマン。
勉強は中の下。
だから時々我が家に教わりに来てる。
僕じゃなく母さんに。母さんは元教師。
僕を生んでしばらくは教師を続けていたようだけど
三十代に入るころ幼児教育の大事さに目覚め
幼児教育専門の教室をやりたいと教員を辞めたらしい。