朝起きたら、妹に その15
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0001桐莉兄2008/08/11(月) 13:55:57ID:mdGf7dDA0
桐莉「兄ちゃん、兄ちゃん、ついに15スレ目に突入だぁーっ」
隆浩「……え?まだ続いてたのか、このスレ?」
七華「続いてるよ、たかくんっ!!!」
由紀「ボク達の物語が終わっても、兄と妹の伝説は何処までも続いて行くんだよっ!!!」
桐莉「……まぁ、何時終わっちゃってもおかしくない過疎りっぷりッスけど……」
七華「桐莉ちゃん、電波分の補給宜しくっ!!」
ゆかな「ドミ狩る分はゆかなが引き継ぐのですよーっ!!」
月華「はいはい、犬神分犬神分」
雪帆「ボクと兄さまと月ちゃんも宜しくねー」

果たして命脈は何処まで続くのか、兄と妹のラブラブ電波でちょっぴり切なくいやらしい数々のストーリーが今ここにON AIRっ!?

七華「永遠はあるよ、此処にあるんだよっ!!!」
桐莉「幼馴染キャラは引っ込んでるっ!!!」


 前スレ:朝起きたら、妹に その14
    http://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1180380183/
 保管庫
    朝妹スレ私設まとめ(ハル氏)
    http://asaimo.h.fc2.com/
 ログ置き場(保管庫完成までの暫定設置)
    朝起きたら妹に、ログ置き場
    http://www.geocities.jp/asaimo0/
0201突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:28:55ID:woqFVh1V0
くぎゅ〜〜っと脳内で唱えながら読むと、ちょっとだけ幸せになれるかもしれません?>挨拶

というか最近は他の方が来ないので、我ながら相当に調子に乗ってます(汗)
0202突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:30:36ID:woqFVh1V0
 「っくしょう! 何で俺がこんな……」
 四時限目が終わるや否や、他の女子がデコ助の鞄の中から取りだした弁当箱を押し付け
られた俺は『土下座して許して貰えるまで帰ってくんなゴルァ!』と理不尽なオーラをクラス中から浴
びせられながら教室から追い出された。どうやら連中の頭ン中じゃ傲慢な俺が健気なデコ
助を苛めたという甚だ遺憾な既成事実が出来上がってるみたいだが、俺は別に手を出した
わけでも言葉の暴力を加えたわけでもない。むしろ、どっちかっつーと被害者に該当すべ
き立場だと思うんだが?
 「ってか、そもそも俺にどうしろってんだ?」
 俺に非がある云々はさておいても、デコ助が自爆して赤っ恥を掻いたのは事実だから誰
かが慰めるなり元気づけるなりした方が良いって理屈はわかる。わかるんだが、それはど
っちかっつーと親しい同性か、特に親しい所謂「彼氏」の役目であって、一方的に下僕扱
いされ口喧嘩の絶えない俺が適任とは思えない。でもミッションコンプリートしないと俺
には帰る場所すらない訳で……
 「………………」
 わざわざ遠回り(購買で俺の昼飯に加えて二人分の飲み物まで用意した)したって言う
のに、保健室に着いてしまった俺の頭ン中では、未だ今後の方針が定まっていない。
 「……だから、何で俺がこんな……」
 どれだけ考えても、何も考えつかない。というか、何て声をかけりゃ良いのかさえ分か
んねー。八つ当たりだと分かっていても、昼休みを楽しそうに過ごしてる連中の声が聞こ
えてくるだけでムカついてくる、我ながら女々しい俺。断っておくが、これまでデコ助に
頭を下げたことが無い訳じゃない。悪いと思ったら素直に認めたし、謝り倒したことだっ
て何回かはある。だが今回だけは何処にも非が見つからないというか、だからと言って適
当な事を言ったら逆ギレされそうと言うか、とにかく……
 「……ああもう! 知るかっつのっ!!」
 なんか思考の無限ループを続けるのも馬鹿馬鹿しくなってきた俺は、殆ど開き直りの心
境で保健室の扉に手を掛けた。
0203突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:32:09ID:woqFVh1V0
 「失礼しや〜す…………って、あれ?」
 が、中に人の気配はない。
 「これ何てエロゲ? お……!」
 いや、燦々と差し込む日差しで明るい上に空調の効いた快適な室内。その窓際に並んだ
ベッドの一番手前。なにやら釜に放り込む前の小籠包を連想させる人間サイズの白い球体
が震えていた。
 「おいデコ助」
 「!」
 びく、と痙攣したので間違いはなかろう。
 「なんていうかお前……その、大丈夫か?」
 自分でも陳腐だとは思うが、他に掛ける言葉も見つからない。まぁ不幸中の幸いという
か、先生も出払っているらしいので室内には二人きりだから、今回に限っては気兼ねなく
見苦しいことも言えそうで助かるのだが。
 「もう昼休みだぞ〜? 弁当持ってきてやったぞ〜?」
 扉を後ろ手で閉め、ベッドというか謎の球体に近づく。なんつーか、臍を曲げた女の機
嫌を取ると言うよりは野良猫かなんかを餌付けする時みたいな口調になってるような気が
するが、敢えて気にしない。
 「ほらほら、食わねーと大きくなれなぐほへっ!?」
 チラリと毛布の裾を捲った瞬間にニュッと突き出された拳で顔面を強打した。
 「てかグーで殴るか普通っ!?」
 「うるさいうるさいうるさぁ〜〜〜〜〜いっ! 私は誰とも会いたくないし、アンタの
間抜け面は特に見たくないんだから私の半径12756キロメートル以内に近づかないで
くれるっ!!」
 「だったら手前が地球から出てけよっ!?」
 「う、うぅぅ……ぐすっ……」
 あ、しまった! いきなりパンチを食らったもんだから素で怒鳴っちまった。
 「えっと……あー……みんなも心配してっし、なんか知らんけど俺が全面的に悪いこと
になってるから……な?」
 「あ、当たり前でしょ! 私は全然悪くないもん!!」
 「…………」
0204突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:33:18ID:woqFVh1V0
 「あによ、文句あんの!?」
 「い、いや……」
 悪いか否かと言われれば、確かにコイツは悪くないと言って良い。ただ単にマヌケ過ぎ
ただけだし。
 「ふん、だっ!」
 いや、だからといって、そこまで偉そうに踏ん反り返れる立場でもないと思うのは俺だ
けなのかもしかして?
 「だからさ、そろそろ教室に戻ろーぜ? 委員長がノート取ってくれてるらしいし、そ
れに昼からの……」
 「い・や・よ! 誰がアンタの言うことなんて聞くもんですか!!」
 「な……!?」
 いや待て我慢だ我慢! ここでブチ切れたら元も子もないだろ俺?
 「全部、ぜぇ〜〜〜んぶ、アンタの所為なんだからねっ!」
 「あ、あ〜……」
 ガキかコイツは……というかまんまガキだ! そうだ、どうせ見た目もミニマムサイズ
なんだし同級生じゃなくって近所のガキが駄々こねてるのと一緒だと思えば多少は納得も
出来るだろ? そうそう俺は少なくともガキよりは大人なんだし同じ次元で怒るのは格好
悪いだけだって! だからほれ、こういう時は……そう餌付けだ、食い物で釣ってご機嫌
を取るのが一番だ。ちょうど手元にはコイツ専用の餌もあるこったし。
 「……ま、まぁちょっと落ちつけって。もう昼なんだし、お前は昼飯もまだだろ? 気
を利かして弁当持ってきてやったから……」
 「いらないわよっ!」
 「そ、そう言わずに……」
 「ほんっと〜に使えないわねアンタ! 良い? 私は年頃の乙女なのよ? 情緒もヘッ
タクレもないアンタには分からないでしょうけど、あんな恥ずかしい目に遭ってお腹なん
か空くはずないのよっ!!」
0205突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:34:37ID:woqFVh1V0
 「でもほら、何か食った方が……」
 「ミジンコ並みの単細胞生物のアンタじゃあるまいし、繊細でデリケートな私の心の傷
はお腹が膨れた程度で治ったりはしないのよっ! 私は誰とも話したくないし食欲なんて
全然ないんだから放っておいてって……」


 (ぐ、ぐぅ〜〜〜〜〜〜!)


 「「あ……」」
 既視感、という単語を彷彿させる裏切りの音が小籠包の中から発せられた。
 「で、でもアレよね。アンタの原始的な発想にも一理くらいはあるかもね!」
 「…………………」
 「それにほら、よく考えたら私だって一生こうしてるわけにもいかないんだし、いくら
私の頭脳が明晰でも……ううん、優秀だからこそ、ちゃんと脳細胞にも糖分を補給してあ
げないと効率的に良い考えが浮かばないし、空気が読めないなりに自分からお弁当を運ん
だ下僕の顔も多少は立ててあげて度量の大きさを示すのも大切な事なんじゃないかしらっ
て私は思うのよ。」
 「…………………」
 「だから、えっと……ああもぅ気が利かない男ねっ!!」
 「おうっ!?」
 にゅ、と球体の中から急に顔だけが飛び出して来て思わず怯んでしまった。
 「ちょっと、あに人の顔見てビビッてんのよっ!」
 「いや、別にビビっちゃねーけど……」
 「そ、それなら別に良いけど。その、えと…………………あ〜〜〜〜〜んっ!」
 「…………………」
0206突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:35:38ID:woqFVh1V0
 いや、ムッとしたまま目を閉じて大口を開けたデコ助が何を求めてるのかくらいは嫌っ
ちゅーほどに良く分かるんだが、意図がイマイチ読めないっつーか……
 「あ〜〜〜〜〜〜んっ!!」
 お、更に不機嫌そうな顔になったか? というか耳まで真っ赤になるくらいに恥ずいん
だったら最初から止めとけよお前は。
 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっ!!!」
 し、しかしだ。コイツの偏屈さから考えるに、俺の方から折れて『あ〜ん』に付き合っ
てやらんと話が先に進む可能性はゼロな訳だし、小生意気なチビ女の指図に従ってんじゃ
なくてどら猫に餌付けしてるんだと思えば……な?
 「ったく、しょーがねーなぁ。」
 仕方がないので預かってきたデコ助の小洒落た弁当箱を取り出し、綺麗に並んでるサン
ドイッチの一つを摘んで口元まで運んでやる。
 「ほれっ。」
 俺の声に反応し、チラリと片目を薄く開いてブツの有無を確認するデコ助は、
 「はむっ」
 とマンガみたいな綺麗な歯形を残して全体の三分の一ほどを頬張った。しかし、こうし
て見るとどら猫っつーよりは首を伸ばしてぴーぴー鳴いてる雛鳥に近い感じだな。これは
これで微笑ましいというか可愛いというか、なんか小動物を飼って楽しそうに育ててる奴
の気持ちが分かってきたぞ、みたいな?
 「あ〜〜〜〜〜〜〜ん」
 「お、はいはい。ほれ?」
 「はむっ、むぐむぐむぐむぐ……」
0207突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/08/28(金) 04:35:56ID:woqFVh1V0
 なんだかんだ言っても、コイツって口を開いて偉そうなご託さえ並べてなきゃ美少女っ
て部類には属すると思うんだよな。いわゆるお嬢様ってやつ? 身振りとか歩き方とか見
てると品が良さそうな雰囲気もあるし、シンプルだけど高級そうな服を普段から自然に着
こなしてるし食事マナーも徹底してるみたいだし、家で専属の家庭教師付けてるだけあっ
て英語の発音も良いし楽器なんかも嗜むらしいし。まぁ流石に発育不足のツルペタっぷり
だけは矯正のしようがなかったみたいだが。
 「あ〜〜〜〜〜〜ん!」
 「ほい」
 「はむっ、むぐむぐむぐむぐ……」
 もっとも、保健室の簡易ベッドに寝そべった(?)まま毛布の固まりの中から首だけを
突き出して口の周りをパン屑だらけにしながらサンドイッチを食べさせて貰ってる姿じゃ
何もかも台無しだろーが。
 「むぐむぐむぐ…………んんっ! けほっ、けほっ……」
 「だから、ンな姿勢でパンばっか食ってるから喉に詰まるんだろーが!」
 パンばっか食わした俺の責任は速攻で棚に上げ、念のためにと用意しておいたパック入
りの苺牛乳にストローを刺し、飲みやすいよう口元に差し出してやる。
 「う……う〜〜〜〜っ、う〜〜〜〜っ!」
 「え? なんだ? 気に入らない!? って言われても……」
 あとは俺用のコーヒー牛乳(デコ助用より30円ほど高い)しか……
 「うううっ! ううっ!!」
 「は? これが良いってか? でもこれは俺の……」
 「う、うぅぅぅ〜!」
 「………………………」
 「うぅぅ〜……」
 「っだーーーーっ! もう勝手にしやがれ、ほれっ!!」
 満足そうな顔で俺が献上してやったコーヒー牛乳(少し高級品)をちゅーちゅー吸って
るデコ助を見下ろしながら、俺は朝から更新中である一日の溜息回数の新記録を更に数回
ほど伸ばしていた。
0215突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:01:39ID:oIlJa79j0
ドリクラかぁ……>挨拶?
9393妹(仮名)のお話は今回で一旦終了です
0216突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:03:31ID:oIlJa79j0
 亀の子デコ助の餌やりが終わってから自分の昼飯(出遅れた所為で甘々の菓子パンしか
買えなかった上に、それを苺牛乳で流し込まなきゃならんという苦行)を片付けた俺は、
ようやく一息付けた。
 「って、いつまで睨んでんだよ?」
 「べ、別にっ! アンタには関係ないでしょ!」
 「いや間違いなく俺が飯食ってる様子をジロジロ見てたろーがっ!?」
 何を考えてるのか知らんが、今にも噛み付きそうな目付きで延々と睨み付けられて食い
にくいこと此の上なかったっつーの!
 「ふんっ!」
 「だから引っ込むな! (教室に)帰るんだから出てこいって!!」
 「い・や・よっ!!」
 これってアレか? 振り出しに戻るって奴か? どんなループシナリオだっつーの!
 「くそぉ! こうなったら力尽くでぐげはっ!?」
 今度は生足がヒットして後ろ向きにひっくり返ってしまった。
 「し、仕舞いにゃ本気で怒るぞゴルァ!?」
 「い〜〜〜〜〜〜っ、だ!!」
 だから何だっつーんだ、この展開は!? 無駄に偉そうなチビ女に朝からキャンキャン
喚かれた挙げ句に訳のわからん勘違いでクラス中から総スカンを食らい、何も悪いことは
してないっつーのに俺の方から貴重な昼休みを潰してまでも弁当を運んでやって手ずから
食べさせてコーヒー牛乳も進呈してやった結果がこれか? これなのか!? マジで自分
の女運を疑いたくなってきたぞ俺は!
 「……ちょっと、アンタそこにいるの!?」
 「ンだよっ、お前を引っ張ってかねーと帰るに帰れねーんだから居るよっ!」
 っくしょう、こうなったら俺もデコ助の隣のベッドで貝になるっきゃ……
 「じゃあ、脱ぎなさいよ」
 「…………………………………は?」
 デコ助の声を解析して、再確認を促すのに最も適した返答を選択するのにたっぷり五秒
はくらいはかかった……気がする。
0217突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:04:47ID:oIlJa79j0
 「あにマヌケな声出してんのよ! アンタ、私に付いてきて欲しいんじゃないの? だ
ったら交換条件で私にフェラチオさせなさいって言ったのよっ!!」
 再び突き出た真っ赤なデコ助の顔。
 「い、言っとくけど、アンタが悪いんだからね! 私の大好きなタマゴサンドを食べち
ゃった上に安っぽい飲み物しか用意できないんだから、せめてアンタの精液をお腹の足し
にしようかなって思っただけなんだからね! 優しくしてもらって嬉しかったとか、なん
か元気がなかったから慰めてあげようかななんて、これっぽっちも思ってないんだから自
惚れないでくれるっ!?」
 「いやでもお前、こんな時間から学校でだぞ!?」
 「はっ! 日曜日の真っ昼間から私をカラオケボックスに連れ込んで散々レイプした変
態にだけは言われたくないわね、この性犯罪者っ!!」
 「アレの何処がレイプだ! どっから見ても和姦だっつーのっ!!」
 入った途端に剥き出しの肩やら腕やら太股やらをスリスリ擦り付けてきて、照れ臭そう
な顔で『こ、このお店、エアコン効いてないんじゃない?』とか言いいながら上目遣いでワン
ピースの襟元をパタパタさせてた女にだけは言われたくねぇ! しかも運ばれてきたドリ
ンクを一気飲みしてから『なんだか疲れちゃった』なんて呟きながらしな垂れかかってこ
られた日には……なぁ?
 「強姦って言ったら絶対に強姦なの! 私、アンタに抱いて欲しいなんて一言もいって
ないもん! アンタが勝手に勘違いして襲いかかってきただけなの!」
 「じゃあ途中からは自分も腰を振りながら『もっとぉ!』とか甘えた声出してたのは一
体何なんだよっ! しかもお前、避妊薬飲んできたら大丈夫とか言って三回も中に出させ
て終わってからも『わ、悪くなかったわよ?』って言って抱きついたまま時間いっぱいま
で離れなかったよなっ!?」
 「れれ、レイプされてそんなこと言う訳ないでしょ! 本当だって言うなら何年何月何
時何分何秒に私が何て言ったか一言一句まで正確に再現してみなさいよっ!!」
 「だから小学生か、お前はっ!?」
 「うるさいうるさいうるさ〜〜〜〜いっ! 私の言うこと聞かないと、アンタに何され
たかパパに全部言っちゃうんだからぁっ!!」
 「な……!?」
0218突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:06:32ID:oIlJa79j0
 こ、この女、なんつー自爆テロを……!
 「す、少しは自分の立場って物を思い出したかしら? アンタは私の下僕なんだから、
私がおしゃぶりしたいって言ったら黙って粗末なモノを差し出して、私が精液飲みたいっ
て言ったらお口の中に一滴残らず出せばいいのっ!」
 「ぐぬぬぬぬ……」
 「犬みたいに唸ってないで、さっさと来なさいよね! 早くしないとお昼休みが終わっ
ちゃうじゃないのよっ!!」
 もはや俺が拒絶する可能性など皆無だと確信したらしいデコ助は、毛布の中から抜け出
して真っ白いシーツの上にチョコンと正座して、
 「あ〜〜〜〜〜〜〜ん」
 と宣いやがった。さっきと同じ雛鳥みたいな顔で。
 「あ、あのな?」
 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
 「…………………」
 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっ!!」
 「わ、わかった! わーったから、それ以上大きな声を出すなっ!」
 早急、かつ隠密に事態を収拾するには……これ以上なく不本意だが……奴に従うしかな
いわけで。俺はズボンのチャックを下ろしつつデコ助の側まで移動し、取り出したムスコ
を右手で扱いて半立ち程度まで刺激してから、身長角度を調整しつつ、ゆっくりとデコ助
の口の中に挿入してやった。
 「ほれっ」
 「そ、それじゃ、始めるからね? はむっ……………………ん?」
 「な、なんだよ!?」
 「……しおへははりないほうな?」
 「だから咥えたまま喋んな! ってか、ほんとにお嬢様かお前!?」
 「ちゅぷっ。 えっと……なんか塩気って言うか味が薄くない? あと石けんの香りが
するんだけど、朝からお風呂にでも入ってきたの?」
 「……朝から色々あったンだよ」
 「ふぅん? ま、良いわ。時間もないことだし、その辺りは後でゆぅ〜〜〜〜っくりと
聞き出したげる。あむっ」
0219突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:07:05ID:oIlJa79j0
 只でさえ小さな口の中、熱い唾液で濡れた口内粘膜が四方八方から押し寄せてきて敏感
な亀頭部分をヌルヌルと刺激する。加えてトロトロの舌で裏筋を舐め回されて一気に膨張
する俺の分身。
 「んふふ〜〜っ!」
 俺の生理反応に気付いたらしいデコ助が勝ち誇った目付きで嬉しそうに微笑む。もう何
度目とも知れない回数をこなしたコイツは、何の苦もなくフル勃起した俺の半分以上を口
内に収めて吸い付いてきた。
 「ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ」
 あっという間にデコ助の唾液でコーティングされた俺の分身。いつの間に覚えやがった
のか、濡らして滑りを良くした上で喉まで使ってのディープスローを始めると、唇の締め
付けだけじゃなく亀頭全体が喉粘膜と擦れて体が跳ね上がるような快感が次々と送り込ま
れてくる。
 「く……っそ!」
 余りの気持ちよさに膝が抜けそうになっちまった俺は目の前にあるデコ助の頭を反射的
に抱えちまった。そんな俺の様子に更に調子づいたらしいデコ助は、首を捻って粘膜が当
たる部分を器用に変えたり舌を巻き付けてきたりと、手を変え品を変えで次々と新たな快
感を呼び起こして俺を追い込んでいく。きっとカラオケで弄り倒した意趣返しのつもりな
んだろが、本当に底意地の悪い女だ。
 「ちゅぱっ、ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱっ!」
 「ぬ……おおおおおおおおおっ!?」
 てなことを考えてる暇もあればこそ。ギアを上げ、柔らかい頬の内側まで使われてしま
うと俺はもうお手上げ寸前。というか手も使ってないっつーのに、どこまで上手くなりや
がるんだ、このチビ助は?
 「じゅるるるっ!」
 「ぬあっ!?」
 こ、コイツの口は掃除機か何かか!? ンなパワーで吸われたら限界が……!
 「……ちゅぷぅ……っはぁ……」
 って、なんで急に止めて……?
0220突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:08:28ID:oIlJa79j0
 「……ふぅ。どう、気持ちいいでしょ?」
 ぺろり、と泡だった手前の唾と俺の先走りで汚れた口の周りを真っ赤な舌で舐め回しな
がら勝利を確信した笑みになるデコ助。
 「………………………」
 「でも、なぁんか口が疲れちゃったのよね。アンタってば、もしかして不感症か何かじ
ゃないの? ちゅるっ」
 「のおおっ!?」
 おちょぼ口で尿道口を吸引されて情けない声をだしちまう俺。
 「そ、それに良く考えたら、私がタマゴサンドの代わりに精液を寄越しなさいって言っ
てるのに私ばっかり動くのも変よね? むしろ、アンタが自家発電でも何でもして私に飲
ませてくれるのが筋ってもんじゃない?」
 「いや、だってお前がフェラ……」
 「ででででででもねっ? 今日はその、ちょっとだけ気分が良いから、その、特別にな
んだけど……ほんとに特別になんだけど……」
 「お、おう?」
 「……アンタが『どうしても』って言うなら、今日は特別に、あの、えっと、オナニー
に使いたいって言うんだったら、私のお口を貸してあげても良い……わよ?」
 いまになって考え直すと、また『レイプされた!』謂われのない罵倒を浴びる要因を与
えてしまったのかも知れない。が、気付いたときには俺はデコ助の口の中で暴れ回った挙
げ句、朝から溜まっていたイライラと一緒にありったけのザーメンを目の前の同級生の胃
袋に流し込んでしまっていた。
0221突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:14:56ID:oIlJa79j0
 「はぁっ? 持ってきてないですってぇ!?」
 「いや、だって……」
 勿体ないからと言うから後始末フェラまで任せて、そのあとは偉そうにふんぞり返るば
かりのデコ助の着付けの乱れを直し口やら顔やらを(俺の!)湿らせたハンカチでキレイ
に拭ってやっている途中で、またしても理不尽な罵倒が炸裂しやがった。
 「いつも使ってるスプレーなんだから、アンタだって知ってるでしょ! それなのに一
緒に持ってこないとか、どんだけ気が利かない下僕のよぉっ!!」
 いや、いくらなんでも無許可で女子の鞄を漁るのは非常識だろ常考? それに俺は弁当
を持ってこようなんて思っちゃいなかったし。なんで昼飯を届けるのにブレスケア用品ま
で持ち出さにゃならんのだ?
 「……さっきのコーヒー牛乳、もう一本持ってきなさい」
 「ちょ、おまえ、俺の話も……」
 「こんな精液臭い息をしながら教室になんて帰れるはずないでしょ! 他の子に変な勘
違いとかされたら、私の可憐なイメージとか優等生ぶりとかが丸つぶれになっちゃうじゃ
ないのよ! この無神経、唐変木、甲斐性無しのあんぽんたんっ!!」
 ……あんぽんたん、て随分と懐かしいフレーズだなおい。というか既に暴君とか高飛車
とか果てしなくマイナスっぽいイメージしか残ってないと思うが。
 「だからあにボサッとつっ立ってんのよアンタは! ダッシュで買ってきなさいって言
ってるのよダッシュで! さっさと行きなさぁ〜〜〜〜〜いっ!!」
 まぁ責任の一端は確かに俺にもあるわけだし、これで再びヘソを曲げられたりでもした
ら元も子もないので仕方なくコーヒー牛乳を更に一本購入して戻ってくると、保健室は既
にもぬけの殻になっていた。
0222突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:16:42ID:oIlJa79j0
 そして慌てて教室に戻った俺は……
 「そういやさっき、お前の妹とか名乗った一年が来てたぞ? すっげぇスタイル良くて
可愛かったけど、もしかして二股か? 両天秤か? 修羅場なのかよ!?」
 ……と妙なテンションで詰め寄ってくる男共と……
 「……だから、アイツ自分で……どうしてもって……土下座……」
 「えぇーっ! それでそれで!?」
 「しょうがないから特別に『あ〜〜ん』って……コーヒー牛乳……半分こして……泣い
て謝って……」
 「きゃ〜〜〜〜っ、可愛い〜〜〜〜っ!!」
 ……年頃の乙女ちっくな猫を被ったデコ助を中心にして盛り上がってる女子達から哀れ
むような面白がるようなワクテカ全開の視線を浴びることと相成ってしまった。



 追伸、そしてその夜なのだが。
 「あんた達、本当に仲直りしたのね?」
 「はい、兄さんが全面的に非を認めて下さいました。だから私も『少し言い過ぎてしま
ったかも知れまんから』と水に流したんです」
 事前に『ハイとかウン以外の返事は絶対にしないで下さいね? でないとお風呂での一
件を全て明るみに出しますからね?』と強固に釘を刺して来た妹と仲良く並んで、お袋と
臨時予算交渉に臨んだわけだ。
 「そうですよね? ね、兄さん?」
 「あ、ああ……」
 不自然な程にぴったり寄り添い、テーブルの下で足をグリグリ踏みにじられてままでは
他に返事のしようもなく。
 「仲直りって意味、わかるわよね? これからも仲良くできるのね?」
 「もちろんです。だって二人っきりの兄妹なんですから。これからは下らないことで喧
嘩なんかしませんから。ですよね、兄さん?」
0223突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:17:47ID:oIlJa79j0
 むぎゅ〜〜〜っ、と93センチを押し付けるようにして腕に抱きつき天使のような笑み
を浮かべる小悪魔。
 (って胸、胸っ! いくらなんでも引っ付きすぎだって不自然すぎるだろ!?)
 (私達の場合は、むしろこれくらい大袈裟にアピールした方が良いんです! それに兄
さんには裸を見られましたし触られるのも今日だけで三回目? ですから慣れたというか
諦めました。もっともこれが最後ですけどっ!)
 「…………………」
 (ってかお袋が疑ってるって! 睨んでるぞおい!!)
 (……仕方ありませんね、こうなったら最後の手段です。構いませんから私の頭を思い
っきり抱き寄せて下さい兄さん)
 (なぬっ? ちょ、おま……!)
 (嫌々ながらも私は既に目一杯に兄さんに体を預けているんですから、あとは兄さんの方か
らアクションを起こすしかないでしょう!?)
 (だからって、更に不自然になってどうするよ!?)
 というか、こんな浮世離れしたっつーか、明らかに危険な一線を踏み越えちまった兄妹
をいきなり演じて実の親を騙せると思ってるコイツの思考回路が心底理解できないのは俺
だけなのか!?
 (だいたい兄さんの演技が壊滅的に下手だから疑われてるんですよ! それとも私の作
戦以上の妙案が兄さんにはあるんですか!?)
 (いや、それは……)
 (だったら当初の計画通り私に従って下さい! それともお風呂の……)
 (ああもうっ! お前の方から言い出したんだからな!?)
 ヤケクソになった俺は、妹の柔らかい髪に手を差し込んで一気に引き寄せる。すると殆
ど背が変わらない妹のサラサラの髪が頬にあたり、小鳥みたいな温かさと一緒にシャンプ
ーだか何だかの爽やかな香りが……
 (っ!)
 (って、言い出しっぺのお前が緊張してどうするよ!)
 (いえ、だからこれは……………くっ!)
0224突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:20:42ID:oIlJa79j0
 だからお前が黙り込むな! 俺のパジャマの裾を指で摘むな恥ずかしそうに頬を染める
な口を震わせて涙目になるな頭をスリスリ擦り付けるんじゃないっ! どっからどう見て
もヤバい関係にしか見えんだろーがっ!!
 「……………………」
 「いやちょっと待ってくれ、お袋! なんか非常に的外れな勘違いを誘発しそうな光景
に見えるかも知れないけど絶対に違うから! ちょっとテンパってるけど、確かにコイツ
の言うとおりに和解はしたし前よりは仲良くなったんだ! そら世間様の兄妹ほどは上手
くいってないかも知れないけど、急に変われっても無理だから……その……」
 (に、にいさん……)
 (良いから俺に任せろ、な?)
 (……はい)
 スンスン鼻を鳴らしてるコイツはもはや役に立たん。妹を庇うよう、更に力を込めて抱
き寄せながら、俺はナイアガラ並みの汗を垂れ流しつつ続ける。
 「……だから、今後に期待っつーか、執行猶予期間っつーか、とりあえず今日の所はそ
んな感じで……お願いできませんでしょうか……?」
 啖呵を切った直後だというのに何故か語尾が丁寧語になってしまう俺って、やっぱヘタ
レっすか?
 「……………………」
0225突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:21:26ID:oIlJa79j0
 「……………………」
 「いやほんと、俺が何とかすっから! ちゃんとコイツのことを妹として可愛がるって
約束するから! だからその……ねぇ?」
 「……………………はぁ……」
 うわ、いま生みの親に心底あきれ返った溜息つかれましたよ俺!
 「い、いや、ぶっちゃると最悪俺は貰えなくても良いんだ! 俺は良いけど……せ、せ
めてコイツの分だけでも……ダメっすか?」
 クソ生意気で可愛げの欠片もない妹だが、流石に成長に似合った水着の一着もないっつ
ーのは女子として余りにも不憫だからだぞ? 仕方なくだぞ?
 「えっと……」
 「………………………仲良く使うのよ?」
 「つ、使う使う! ちゃんと仲良く使う! 恩に着きるよお袋……って、え?」
  仕方がない、と言いたげに渋々とお袋が取り出したのは、俺達二人分の夏休みの臨時小
遣いが『纏めて』入ってると思しき、一通の封筒だった。
 「……兄さん?」
 「あ……あはは、あははははははは……はぁ……」
 流石はお袋だ。この程度じゃビクともしないほどに計算高いぜ……




 ……こんちくしょう!
0226突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/09/02(水) 20:26:12ID:oIlJa79j0
以上です

野郎の視点でエロを書かないと駄目なのだと途中まで全く気づかなかったのも、超エロ薄なのも最近のラノベ漬けの所為ですw
あと出番は全くありませんでしたが、この兄妹には父親もちゃんとおりますんで念のため
0227名無しさん@初回限定2009/09/03(木) 04:44:03ID:Gd23v698O
遅くなったが、一番槍GJ!

93妹は、大事なお兄ちゃんに好きな人ができたらどうなっちまうのか、
そう考えるとニヨニヨが止まらないw


つか、ほんと人いないんだな
寂しいぜ
0228名無しさん@初回限定2009/09/03(木) 13:21:58ID:DocRUv0I0
乙です
突発屋氏のおかげでまた最近賑わい始めてる気がするから
地道なとこから行きましょう
0233名無しさん@初回限定2009/09/21(月) 03:34:00ID:UPrFxN0c0
>>232
.
   ヘ⌒ヽフ
  (  >ω<)・:;;:;";:; ヘッブシュン!
  / ~つ )っ~
0236名無しさん@初回限定2009/09/24(木) 02:53:32ID:mPjJ6Qg40
>>235
なぁに、次は里佳子の長編か、鳴神月華&鳴神雪帆の長編だ。
これくらいは我慢できる。
0246名無しさん@初回限定2009/10/16(金) 23:02:04ID:6GOUufpT0
|
0247名無しさん@初回限定2009/10/16(金) 23:12:22ID:m6r2QLK30
そろそろ里佳子の長編と、鳴神月華&鳴神雪帆の長編が投下される予感(根拠無し)。
0252突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/11/19(木) 03:34:08ID:ekgemYqp0
「なんだそれ?」
「ん〜? お見合い写真〜」
「!!」
「お父さんが会社の社長さんなんだって。お金持なんだねぇ。良いかも?」
「おま、ちょ、そんな理由で決めるのかよ!?」
「貧乏よりはマシだよ。真面目なタイプらしいし〜」
「そんなの写真だけで分かるわけないだろ!」
「だからお見合いで会って話すんでしょ? 結構、美形っぽいよ?」
「写真写りにアッサリ騙されるな! それに見合いだなんて既成事実を作るのが目的に決まってるだろ!」
「ん〜? なにそれ〜?」
「だからだな、会ったら最後『とりあえず』って勝手に話が進んで……」
「でもパパのお仕事関係らしいし、簡単に断ったら拙いっしょ?」
「トラップ臭がプンプンするだろ明らかに! 却下だ却下!!」
「……ダメ?」
「ダメ! ゼッタイ!」
「ん〜……」
「だから悩むな!」
「んん〜……」
「なんなら俺が親父に掛け合ってやっても……」
「兄貴がそこまで言うなら……いまから直接電話してお断りするね?」
「は?」
0253突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/11/19(木) 03:35:19ID:ekgemYqp0
「携帯取りだしポパピプペ〜♪ っと」
「ちょ、お前何で相手の電話番号なんて知って……?」
「あ、もしもし、私〜。残念だけど兄貴は嫌だって〜」
「へ?」
「うん、うん。じゃあお流れってことで、まったね〜♪」
「しかも、なんでそんなにフランクなんだおい!?」
「プチッと。はい終了〜」
「って早!」
「雪乃ちゃん、残念ですけど今回は諦めますって。良かったね兄貴〜」
「ゆ、雪乃ちゃん……?」
「だからぁ、兄貴のお見合いの相手。実は私の同級生なんだけどね〜」
「もしかして、この前お前が連れてきた大人しそうな可愛い子……?」
「兄貴に一目惚れだったんだけど、告白は恥ずかしいからお見合いにしたんだって〜」
「な……!?」
「んじゃ遊びに行ってきま〜す」
「お、おい、その写真……」
「お断りしたし見る必要もないっしょ? 私が雪乃ちゃんに返してあげるから。んじゃね〜♪」
「な、な、ななななな…………!」
0258名無しさん@初回限定2009/12/03(木) 23:31:40ID:hrc87/ZM0
朝起きたら妹に、
私のにぃにがこんなに紳士の筈がないと言われた。
0259名無し兄 ◆2Z9GE9yyj. 2009/12/08(火) 03:31:50ID:i4ZT+7KI0
朝起きたら妹に、「私のにぃに、こんなに紳士の筈ない」と言われた。

――目覚めのときは決まって、賢者のような気分だった。
爽やかな目覚めは喜ばしいこと故、気にもしなかったが
始発で帰った夜勤明けの朝、その理由を知るのだった。

「ぁむ……はぁ、んふぁ……むぅ……」

 まだおぼろげな意識の中、
雁首か鈴口の辺りをたどたどしく刺激される感覚。
裏筋や玉袋の辺りにも、指や舌を這わせているようだ。

「ふぉふぃふぇ……ふぁ……む……」
くぐもった声をあげる翠華。
熱を帯びた舌と吐息がくすぐったくて、堪らず抱きしめていたらしい。
了解とばかりにラストスパートをかけてくる。
視界が白んでいく錯覚も解け、覚醒していくのを自覚する。
「んくっ…んくっ…んふぁ…にぃに、おはようさん。」
眸を開けば、難なく嚥下し、柔らかな微笑みで答える妹がいた。

――閑話休題

「……にぃにの甲斐性なし!嗜虐主義者<サディスト>!唐変木!ニヒリスト!変態紳士!マグロ!」

心地良い疲れに思わず寝落ちしてしまった僕を待っていたのは、
シャワーから上がったばかりらしい、以前プレゼントしたネグリジェ姿の翠華だった。

「やんなるわもぅ、うち、スペルマ欲しゅうて堪らんみたいやない……イケズなんやから……」
そう言って俯くのが可愛くて、堪らず抱きしめるのだった。
<了>
0260ハル ◆2Z9GE9yyj. 2009/12/08(火) 03:59:22ID:i4ZT+7KI0
またもやトリップキー忘れて名無し同然になっていたので
「名無し兄」と名乗ってみたハルです。
設定とかのまとめを作り直しているところですけども
258さんのネタで1本できたので久しぶりに投下しました。
最近やったゲームだと、
ましろ色シンフォニー(主に桜乃)と妹スマイルがツボでした。
洗濯物を畳むときの鼻歌がちょっとシュールでしたが可愛らしかったです。

>突発屋氏
いつもお疲れ様です。
93妹もお見合い写真の子も可愛らしくて良いなと思いました。
自分の私設まとめですが、
私生活の関係上更新不能になる可能性がありますので
テンプレからは外しておいて頂けると助かります。
0264突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:06:08ID:x/mK8zJv0
こ、これは別に新展開とかじゃなくって只の保守代わりなんだから勘違いしないでよねッ!?
0265突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:07:27ID:x/mK8zJv0
 「あ……お帰り、リカりん」
 好天に恵まれた肌寒い昼下がり。本店から戻る途中で只の通行人Aのフリを
しながら店の前を通り過ぎて店内の様子を抜き打ちチェックする、という作戦
を出鼻で挫かれた里佳子は、苦虫を噛みつぶしたような顔をしながらも仕方な
く(何故か店の前を掃除していた)中学校以来の親友であり仕事に於いても相
棒の瑞樹に向き直った。
 「なんでアンタが外で掃除してるのよ? 私がいない間はフロアの責任者な
んだから目を離したらダメじゃない!」
 「いや、だからリカりんが居ない状態で私が目を離しても真面目にやるかな
って試してみようかと」
 そんな瑞樹の返答に眉をしかめる里佳子。
 「あのねぇ、私達の職種は接客、つまりサービス業なのよ! 常にお客様に
採点されながら仕事をしてるっていうのに、そんないい加減な覚悟じゃあっと
いう間に信用を失ってしまうじゃないの! いい? いつも言ってるけど一度
失った信用というものは、そう簡単には……」
 「わかったわかった、わかったから中に入ろう。いくら何でもお店の前で店
員が口喧嘩してたら拙いって」
 「あ……う、うぅ〜〜!」
 こればっかりは瑞樹の言うことに理がある。口を『へ』の字に曲げながらも
里佳子は渋々と瑞樹に続いて裏手の従業員用出入り口へと。
 「それで、本店の会議の首尾は如何でしたかな? 次期マネージャー候補さ
ん?」
 「その呼び方は止めてって言ってるでしょ! 私は別にそんなつもりでお仕
事してるんじゃないんだから」
 更衣室と隣接する休憩室兼ミーティングルームは今は無人。フロア主任の里
佳子がパイプ椅子に腰を降ろすと、すかさず副主任の瑞樹が冷蔵庫からミネラ
ルウオーターのペットボトルを取り出してくれる。
0266突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:09:06ID:x/mK8zJv0
 「いや、つもりも何も近未来の幹部候補生でもない限り、チェーン全体の企
画会議に店長の補佐で行かせて貰ったりはしないでしょ普通。それに企業に貢
献する為の出世願望なら不健全でも何でもないんじゃない?」
 「それは……そうかも、知れないけど……」
 「でしょでしょ? 伝説のアイアンメイデンも一皮剥けたみたいだし、これ
を機会に従業員思考からの脱却を目指すってのもアリじゃない? リカりん期
待されて……」
 「ちょっと、何よその「伝説のアイアンメイデン」って! もしかして私の
ことじゃないでしょうね!?」
 「いや、もしかしなくてもリカりんのことだし。ちなみに昨日今日の話じゃ
なくて高校の時から続いてる由緒正しいあだ名だから、約一名だけは知らなか
ったみたいだけど」」
 憤慨する里佳子にアッケラカンと応じる瑞樹。ただでさえ我の強そうな瞳を
持ち、一睨みでメイド服の少女達を黙らせることの出来る里佳子の威嚇を苦も
なく受け流せる数少ない人物ならではの余裕である。
 「な、なによ! みんなして人を骨董級の堅物呼ばわりして……」
 「いやいや、どっちかって言うと内面じゃなくて一生破けそうもない鋼鉄製
の処女ま」
 「そんなことよりっ!!」
 「うひゃあっ!?」
 だが、欠伸をかみ殺している隙を突いて至近距離にまで肉迫されて怒鳴られ
ると流石に怯んでしまうらしい。
 「お店、ちゃんと回ってるんでしょうねぇ? まさか私に昇進を勧めながら
営業成績を落として足を引っ張るようなことはしないわよね、中学からの親友
のサブチーフさんは?」
 「大丈夫だって、出勤率はパーフェクトなんだし。私が出ばんなきゃばらな
いようなミスもトラブルも一切無し。昨日のリカりんの檄が随分と効いたみたい
だねぇ」
0267突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:10:41ID:x/mK8zJv0
 「……午前中の売り上げは?」
 「そう来るだろうと思って打ち出しておいたよ、ほれ」
 「………………………………………」
 「ね? 売り上げも回転率も好調この上なし。だから何時までも婚期を逃し
たナマハゲみたいにてカリカリしてないで、リカりんもたまには有給とって大
好きなお兄ちゃんと……」
 「フェア商品の売り上げが落ちてる!」
 「……思う存分イチャついて、主に私の精神衛生面の為にもお店でツンツンし
ないようにストレスを……って、え?」
 「昨日の半分くらいしか出てないじゃない! いつも言ってるけど、チェー
ン展開しててもウチのお店は大きくないんだから、フロア責任者は食材の在庫
状態にも或る程度は気を配っておかなきゃ駄目でしょう! 何のために季節ご
との商品展開を計画的に行ってるのか理解してる? わざわざ農家の方に契約
をお願いして直接卸して頂いてるのだって、お客様に新鮮な……」
 「ギブギブ、もう降参だから勘弁して! っていうかリカりん、昨日の時間
毎の売り上げまで記憶してるんだ……?」
 「あら? その程度のこと、飲食店の最前線を預かる接客責任者としては当
然だと思うんだけど〜!?」
 「ひ、ひぇ〜〜〜〜〜〜っ!?」
 ギロリ、と半目で睨まれてタジタジの瑞樹。
 「私、これから店長と一緒に(本店の企画会議の結果を踏まえた支店の)ミ
ーティングだけど、終わったら即フロアに出るからシフトの調整をしておきな
いさいよね! それとフロアに出てる子に、ちゃんとお客様にお勧めをする様
に再確認しておくこと! わかったわね、未来のフロアチーフさんッ!?」
 「ささ、さーいえっさー!!」
 まったく私がいないと全然駄目なんだから! と愚痴りながら資料を抱えて
会議室に向かう里佳子の背中を直立不動の敬礼で見送る瑞樹であった。
0268突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:12:54ID:x/mK8zJv0
 そしてその夜。
 「ねぇ耕介ちゃん、そろそろ一息付けてお風呂に入ったら? リカちゃん遅
くなるみたいだし?」
 持参金で日用品を一通り買いそろえ、おニューのエプロンを身につけた真里
亜は、すっかり佐々原家の主婦となっている。恋敵である里佳子は不満タラタ
ラなのだが、自分が社会人としての責務を職場で担わなければならない現状で
は如何ともし難い。
 「お、おう…………あのさ?」
 流しに向かい、二人分の食器を鼻歌交じりで片付ける真里亜に恐る恐る声を
かける家主の耕介。従妹と義妹が同時に恋人……どころか婚約者宣言して押し
かけてきて以来、彼の神経はすり減る一報である。
 「うん?」
 「お、お前とリカってさ、昔は仲良かったよな?」
 どういう経緯があったのか耕介は知らないのだが、義姉達を「さん」付けで
呼び常に敬語を使う里佳子が真里亜相手では何故か違うのだ。お互いに耕介か
らは従姉妹であるという共通点以外にも何かあるに違いないと耕介は常々思っ
ていた。故に、上手く取り持てば円満な関係に戻せるのではないかとも。
 「そうね。初めて会った頃はリカちゃん小さかったし、耕介ちゃんの妹って
事は私の妹になるかも知れない子だったから」
 勿論リカちゃんが凄く可愛くて良い子だったのもあるけど、と最後に付け足
しながらも淡々と家事を続ける真里亜。
 「だ、だったらさ? もうちょっとこう、なんつうか……」
 「リカちゃんが、これからも耕介ちゃんの妹でいてくれるっていうなら、も
ちろん可愛がってあげるわよ。義姉として」
 ニコっ、と振り返った満面の笑みが何故か怖い。しかも自分が蒔いた種が根
底にあるだけに下手な反論は薮蛇になるだけ。こりゃ仕切り直しだと瞬時に
判断した耕介はすごすごと浴室に撤退していった。
 「……とは言え、あのリカちゃんが此処まで頑張るとはねぇ」
0269突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:14:23ID:x/mK8zJv0
 最後の皿を拭き終え、やや疲れた溜息を漏らす真里亜。どちらかと言えば古
いタイプの人間でパソコンには余り慣れていない両親を上手く丸め込み、姉妹
でそれぞれのパソコンを持ってネットを活用していた真里亜は内通者を通じて
耕介の周囲の状況を或る程度は把握していた。そして……
 「あら?」
 玄関先からの物音に彼女の思考は中断された。がちゃがちゃと急いで鍵を差し
込み開ける音に続いて開閉音とハイテンポな足音が近づいてくる。
 「あ、リカちゃん? おかえ……」
 「ただいま真里亜ちゃん遅くなってゴメンね私ご飯はまだだけど自分でする
から平気だしお仕事で汗かいちゃったから先にお風呂入ってくるから真里亜ち
ゃんはお部屋で休んでむぎゅっ!?」
 通勤着のまま居間を突っ切り風呂場に突撃しようとした里佳子だが、予想外
に素早い反応でコートの襟首を後ろから掴まれ阻止されてしまう。
 「リ〜カちゃん、どこ行くのかな〜? いま、耕介ちゃんがお風呂に入った
ばっかりなんだけどな〜?」
 「……そそ、そうなんだ? リカ、知らなかったなぁ……」
 視線を泳がせながらも捕まれたコートをトカゲの尻尾代わりに即時脱出を計る里佳子
だが、すかさずスカートの裾をキャッチさられて失敗。互いに笑顔を浮かべながら
の攻防が続く。
 「そう、知らなかったの? 原付の音もしなかったしリカちゃんお風呂場に
真っ直ぐ向かっていったから、てっきり家に着く前にエンジンを止めてコッソ
リ押して帰って、外でお風呂場の電気が点くのを待ってから急いで階段上がっ
てきたのかと思ったけど私の勘違いだったのかな? ごめんなさいねリカちゃ
ん〜?」
 「はぅっ? り、リカ、そんな悪い子じゃないもん! ままま真里亜ちゃん
の考えすぎなんだもん……」
 あからさまに動揺する里佳子と、平然とした笑みを崩さない真里亜。
0270突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:16:28ID:x/mK8zJv0
 「うんうん、そうよね〜。じゃ、良い子のリカちゃんは耕助ちゃんのお風呂
の邪魔しないように晩ご飯にしましょうね〜?」
 「あ〜ん、おにいちゃ〜ん!!」
 穏やかな笑顔のまま、涙目でジタバタと藻掻く里佳子の体を片手で引きずりな
悠々とキッチンに戻ってゆく真里亜。体格差があるとはいえ彼女の細腕からは
想像できない腕力だ。
 (まったく、昔は素直で良い子だったのに! 私を出し抜いてお風呂で楽し
もうだなんて十年早いってことをハッキリと……)
 一回り近く年下の里佳子にワイン一本で出し抜かれたばかりの真里亜に油断
などあるはずもない。それどころか、どう雪辱を果たしてやろうかと笑顔の
裏で考えていたところだが。
 (……ん? お風呂?)
 「……真里亜……ちゃん?」
 急に立ち止まった恋敵に怪訝な顔を向ける里佳子。気のせいか真里亜の頭上
で電球が光ったような気が。
 「ね、リカちゃん?」
 「う……なに?」
 正直、嫌な予感しかしない里佳子。
 「せっかくだから、みんなで一緒に入ろっか?」
 「え、え〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
 「うんうん、それが良いわ。リカちゃんに汗臭いままご飯食べさせるも可哀
想だし、ここのお風呂は広いから三人でも平気よね? リカちゃんも、それで
良いでしょ?」
 と言うが早いか向きを変えて風呂場へと戻る真里亜。当然ながら片手で里佳
子を牽引したままで。
 「そんな、真里亜ちゃんが一緒じゃリカは……って引っ張らないでよ真里亜
ちゃん! あ〜ん誰か助けてぇ〜!!」
 まるで歯医者に強制連行される子供のような里佳子の悲壮なドップラー音を
最後に、脱衣所の扉が音を立てて閉まった。
0272突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:25:29ID:x/mK8zJv0
おかしい!w
明らかにスレ違い的な展開しか予想できないウチの9393妹(仮)が、こんなに好評の筈が(ry

>ハル ◆2Z9GE9yyj氏
久々の投稿、ご苦労様です。

それなりのご事情もおありでしょうが、こうまでトリップ変更を連続されますと
ご本人確認が難しくなる(つまり、成り済ましとの判別が出来なくなる)等の懸念が発生してしまいます。

大変申し上げにくいのですが、最低限、御自分の履歴などの保存には一層気を遣って頂けるようお願い申し上げます。
0276桐莉兄@チラ裏2009/12/31(木) 22:06:09ID:b/0kjc0B0
ちょっと早めのあけおめ置いておきますね・・・。
0278名無しさん@初回限定2010/01/17(日) 22:41:10ID:dimMFApi0
  ☆ チン

        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)<  新作まだー?
             \_/⊂ ⊂_)_ \_______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |           .|/
0280名無しさん@初回限定2010/01/26(火) 23:17:05ID:KMz3zvz70
ほしゅ
02851/72010/01/29(金) 00:54:29ID:NgGf82y70
書いたぜ!o(`ω´*)o

 酷い目覚めだった。咽のかさつきで目を覚ました雪子は尋常ではないだるさと頭痛に顔
をしかめた。
 朝起きたら妹は風邪を引いていた。
 前夜から兆候らしきものはあったものの、急速な症状の悪化に雪子はインフルエンザを
疑ったが、それが分かったところでなんだろいうのだろう。結局のところ彼女にとって重
要なことは病名ではなく、冬休みの行楽行事が潰されたということにつきた。去年から計
画されていた家族と親戚の合同スキー旅行――雪子はスノーボードに挑戦するつもりだっ
た――のよりによって当日に風邪を引くなんてよほどの見返りが無ければ割に合わないと
雪子は思った。
 時計は六時三十分を指しており、部屋の外では家族が準備をしているであろうあわただ
しい音が聞こえてきた。娘を起こしに母親が部屋に着たので、雪子は風邪を引いてしまっ
たことを伝えた。母は娘の額に手を当て「あら、どうしましょ」とお決まりの台詞を出す
と自分も家に残るようなことを言い始めたので雪子はそれを断った。この旅行を一番楽し
みにしていたのはおそらく母であり、雪子としては自分のつまらない不運で人の楽しみま
で奪いたくなかった。とは言っても、病人を一人置いて旅行に出かけられるような母親で
もなかったので、結局迷惑を掛けてしまうんだろうと思っていると、母は娘に対し、より
悪い解決策を提案した。
「じゃあお兄ちゃんに看病してもらいましょう」
「はぁ?」青天の霹靂だった。
「お兄ちゃんはスキー嫌いみたいで行かないって言ってたのよ」
02862/72010/01/29(金) 00:59:41ID:NgGf82y70
 それは違うと雪子は思った。兄――そう呼ぶのも遠慮したいところだった――はスキー
が嫌いなのではなく、外に出たくないだけなのだろうと。彼は雪子から見れば引きこもり
一歩手前のろくでもない家族の恥でしかなかった。一応、勤めに出てはいるがそれ以外の
時間はほぼ部屋でパソコンをいじっているだけであり、アウトドアを健全と考える雪子に
とって彼は病的でしかなかった。
「あ、あたしもいく」
「お留守番よろしくね」母は無情だった。

 車の排気音が遠くなっていくのを耳に残しながら雪子は兄が自分の部屋をノックしても
容赦なく突っぱねてやろうと考えていた。廊下のきしむ音が聞こえるたびに彼女は身構え
たが、結局ノックをされることは無かった。それどころか、隣の部屋、つまり兄の部屋か
らパソコンの起動音が鳴り、キーボードを叩く音が聞こえはじめたとき、彼女の怒りは一
気に沸点へと達した。なんてやつなのだろう。奴には妹の風邪など眼中に無いのだ。
 結果的に彼女の望んだ放置という結末は、その過程が気に入らなかったため理不尽な憤
怒を呼び起こしてしまった。
 雪子が不貞寝を決め込もうとした時、部屋のドアがノックされた。想定外の不意打ちを
食らった雪子は「なに」と言おうとしたが乾いた咽に空気がかすれ、むせてしまった。何
度も咳き込んでるうちに部屋のドアが開き、兄が入ってきた。
「な――なんの――」声を出そうとするとセキのほうが自己主張を始めてしまい、仕方な
く彼女は咽が落ち着くのを待った。ようやくセキが止まると兄がコップを差し出してきた。
面食らった雪子は文句も言えずにコップを受け取って中身――ぬるま湯だった――を飲み
干した。
02873/72010/01/29(金) 01:02:33ID:NgGf82y70
「何の用」
 兄は肩をすくめ「風邪引いたって言うから看病しにきたんだ」
「いらないし。ほっといていいよ」
「そういうわけにはいかない。母さんに頼まれたからな」
「パソコンつけてたくせに」ぼそりと雪子がつぶやいた。
「ん? ああ、あれはグーグル先生に指導願ってただけだぜ。病人の看病なんて素人もい
いところだからね。されるほうはベテランだが」
 パソコンに詳しくない雪子だったが、どうやら勘違いをしていたということだけは分か
った。火照った顔が余計熱くなった気がした。しかしぐーぐる先生って誰だろう。医者だ
ろうか? 彼女は考えた。
「ほら顔見せてみろ」
 雪子は抵抗したい気分だったが、ばつの悪さからしぶしぶ従った。額にひんやりとした
手が当てられる。大きな手だった。
「結構熱いなー。起きれそうか?」
 雪子はかぶりを振った。身体の節々が痛かった。
「医者に行ったほうがいいんだろうけどおんぶしてやろうか?」
「いらん、でてけ」笑えない提案だった。
「気が向いたら言ってくれ。実は免許も持っている」
「まだ死にたくない」
「俺もそう思う。じゃあ何かあったら内線で呼んでくれ」彼は家の電話の子機をベッドの
脇に置き、リビングから持ってきたであろう加湿器をセットすると部屋を出て行った。
 予想外の展開と、引きこもりだと思ってた兄の意外な献身に困惑しながら雪子は頭の後
ろから来るまどろみに瞼をゆだねた。
 このろくでもない風邪を与えてくれたろくでもない神様、どうかよくあるお約束のよう
に兄が夢にまで出てきませんように。最後にそう願った。
02884/72010/01/29(金) 01:06:41ID:NgGf82y70

 ろくでもない夢の果てに雪子は勢いよく目を覚ました。焦点の定まらない視界に揺れ回
る天井が見えた。鼻は詰まり頭は重い。夢に兄はでなかったが、神様が守ったのはただそ
れだけであり、彼女が見たのは全身汗だくになるほどの悪夢だった。しかし汗をかいたせ
いか心持ち気分が楽になっていた。
 ふと見た時計は十一時五十五分を指していた。空腹感は特になかった。
 廊下のきしむ音とノックの音に寝ぼけ半分の彼女は生返事を返すと、兄がドアを開けお
ぼんに乗せられた食事を運んできた。
「起きれるかー? 食べさせてやろうか?」
「しねばいいとおもう」弱ったあたしを見てこいつは楽しんでいるに違いない、そう雪子
は思った。気合と根性で彼女は半身を起こすと額からタオルが落ちた。寝ている間に部屋
に入って乗せていったのだろう。しかしこれでは非難できないじゃないか。雪子は今日何
度目かの複雑な気持ちにかすかなため息をついた。
「うわ、すげー汗だくじゃないか。まず着替えたほうがいいぞ」
「そう思うなら部屋から出るべき」
「もっともだ」彼は料理ののったおぼんをテーブルに置くと部屋を出て行った。
「うー」ベッドから起きだし、横に座る。パジャマのボタンをはずし脱ごうとするが筋肉
が悲鳴を上げまともに動かない上にぴったりと肌にくっついた綿のパジャマは容易に脱ぐ
事はできなかった。仕方がないので下から脱ぐ事にした。蒸れた下半身をタオルで拭き、
替えのショーツをタンスから取り出すと彼女はいつものように片足を上げショーツを履こ
うとしたがそれがまずかった。弱った彼女の足は付加に耐え切れずバランスを崩し、雪子
はそのまま前のめりに倒れこんだ。
02895/72010/01/29(金) 01:09:31ID:NgGf82y70
 ゴン! という巨大なオノマトペが響き、「くぉぉぉおおぉお」と苦悶の声が雪子の口
から呪詛のように漏れ出た。
「おい、ちょっとすごい音したけどどうした――」兄がドアを開けるとそこには下半身丸
裸の妹が額を押さえながら倒れていた。
「何事だ」
「あ、あたまうった」
「どれ……出血はしてないが、こぶになりそうだなぁ」
「うう」
 あまりにも哀れな妹の姿に思わず兄は噴出してしまった。
「なんだよう……」
「頭の心配もいいけど、下の心配もしたほうがいい」
 雪子の意識はその言葉に促され、何も身につけていない下半身へと向いた。
「――き」
 その後を語る必要はなかった。

「なー、おこんなよー」
 返答は沈黙。ドタバタ喜劇のようなやりとりから三十分経過した十二時五十三分、いま
だに雪子は布団に引きこもったままだった。
「チョロっとしかみえなかったって」デリカシーのかけらもない言葉だったが、他の慰め
の言葉はすでに沈黙で返されていた。
02906/72010/01/29(金) 01:11:46ID:NgGf82y70
「胸も見た。触った」
「うっ。気にしてたのかよ」そう、あの後まともに身体が動かせない妹のパジャマを脱が
せたのも、ブラジャーを脱がせたのも、挙句上半身を拭いてやったのもすべては兄だった。
出て行け出て行けとわめく妹をしかし放っておくわけにはいかず、半ば自暴自棄になった
彼女にタオルをあて新しい服を着せてやり、なんとかなだめつけ現状に至る。
「不可抗力というか、あれは病人介護みたいなもんで、ほら人工呼吸みたいなもんだろう。
いやまぁ悪かったけど。あ、別にお前の胸が悪いというわけじゃなくてだな」
「うるさい」天然はこれだから。雪子は頭の中でそう付け加えた。
「大丈夫だって俺三次元に興味ないから!」
 慰めのつもりだろうか? だとしたら相当な自虐だと思った。雪子は兄のあまりのバカ
らしさに思わず笑ってしまった。兄をろくでもないと決め付けていた今朝までの自分に再
考慮の赤丸をつけた。
 雪子は布団から顔を半分だし兄に視線を向けた。
「別に怒ってないから」
「怒ってるようにしかみえないんだが」
「怒るに怒れない」今日はそんなことばかり。
「うん、それを聞いて安心した。安静にしてるんだぞ」
「ん……」雪子はそっと頷いた。
「じゃあ何かあったら内線で」そう言って兄は部屋のドアを開けた。
「あ――にーちゃん」
 無意識だったとはいえ自分の口から出たとは思えない言葉に雪子は再び熱が上がった気
がした。
「なに?」
「あ、あ、あり……」何気ない感謝の言葉も相手によっては愛の告白のように気恥ずかし
くなるもので――
「添い寝してやろうか?」
「うせろ!」憎まれ口くらいがちょうどいい。             おわり
02927/72010/01/29(金) 01:16:07ID:NgGf82y70
あれ? 7レスで収まると思っていたら6レスで収まっていた。これだからROM専は…。
過去の勢いを知るものとしては現状はとても寂しい(ノд`;) バレンタインデーには賑わうとイイナァ
と思いながら寝るぜ! ノシ
0293名無しさん@初回限定2010/01/29(金) 10:23:17ID:bwRvFLcg0
>>292
昔は乙というレスがついたが、最近、名無しに対しては乙レスもないよな。
02942852010/01/30(土) 20:28:33ID:jJiPGO8/0
>>292
 確かにこれは寂しいなw もうちょっと面白い話考えてみるはw
0297名無しさん@初回限定2010/02/02(火) 22:12:53ID:zNwq/N1+0
おお、規制が解けている
煽っておいて乙できなかったから凄くもどかしかったんだ
面白かったよ>>292
0300突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:01:28ID:s1kLQ+Rb0
 その日は携帯の着信音で目が覚めた……というか覚まされた。
 「ンだよ、またデコ助かぁ?」
 暗闇の中、しつこく鳴り続けるコール音を頼りに手探りで携帯を手に取り、目を瞑り布
団に潜ったまま開いて耳に当てる。毎度のこととは言え、人の都合という物を全く考えな
いチビ助のために起き出してやる気なぞ毛頭無い。
 「もしもしぃ……」
 「兄さんですか? すぐにお台所まで来て下さい」
 「………………………………はい?」
 「ですから、いますぐお台所まで来て下さい。まだ寝惚けてる見たいですけど、そのま
ま寝直したら駄目ですからね?」
 「いや、だから……」
 「それでは失礼します」
 (ぷつん、ぷーぷーぷーぷー……)
 「……って、おいっ!?」
0301突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:02:43ID:s1kLQ+Rb0
 「やっと来ましたね。さ、こっちへどうぞ」
 にも関わらず、すぐに起きて台所に出向いてやった俺は近年希に見るお人好しだと自分
でも思う。そこでは妹が部屋着にエプロンという格好で、湯煎で溶かしたと思しきチョコ
レートの匂いに包まれながらいそいそと動き回っていた。言うまでもなくバレンタインの
準備に追われていることくらいは分かるが。
 「その前に、一つ聞いてもいいか妹よ?」
 「はい、なんでしょう?」
 真夜中に叩き起こされた俺は、兄として生意気で礼儀知らず(兄限定?)の妹に猛省を
促すべく目一杯不機嫌そうな顔をしてやったのでが、当の妹さまはキョトンとした顔で小
首を傾げるだけ。果たして俺の不満オーラに気がつかない程に鈍いのか、感づいていても
全く気圧されないだけなのかわからないが、どっちにしてもダメージを負うのは俺だけの
ような気がするので敢えてスルーして話を先に進めることにする。
 「いま、何時かわかってるよな?」
 「はい勿論です。兄さん起こしたのは午前零時を少し過ぎた頃で、いまは……そろそろ
零時半になろうかというところです。健康的、かつ勤勉な生活をしている人なら一日の疲
れを癒すために眠っている時間帯ですね」
 「そ、そこまでわかってンなら……」
 「ちなみに私は真面目に部活動を終わらせてから帰宅して晩ご飯を頂いた後、予習復習
と宿題をしてお風呂に入って、お台所が空いてから明日の準備を始めたら、こんな時間に
なってしまったというだけで兄さんに嫌がらせをするために貴重な睡眠時間を削ったので
はないのですが何かご不満がおありですか?」
 「何の前振りも無しに叩き起こすだけでも立派な嫌がらせだろうが!?」
 えっと、ここって怒って良いところだよな、普通に?
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