朝起きたら、妹に その15
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0001桐莉兄2008/08/11(月) 13:55:57ID:mdGf7dDA0
桐莉「兄ちゃん、兄ちゃん、ついに15スレ目に突入だぁーっ」
隆浩「……え?まだ続いてたのか、このスレ?」
七華「続いてるよ、たかくんっ!!!」
由紀「ボク達の物語が終わっても、兄と妹の伝説は何処までも続いて行くんだよっ!!!」
桐莉「……まぁ、何時終わっちゃってもおかしくない過疎りっぷりッスけど……」
七華「桐莉ちゃん、電波分の補給宜しくっ!!」
ゆかな「ドミ狩る分はゆかなが引き継ぐのですよーっ!!」
月華「はいはい、犬神分犬神分」
雪帆「ボクと兄さまと月ちゃんも宜しくねー」

果たして命脈は何処まで続くのか、兄と妹のラブラブ電波でちょっぴり切なくいやらしい数々のストーリーが今ここにON AIRっ!?

七華「永遠はあるよ、此処にあるんだよっ!!!」
桐莉「幼馴染キャラは引っ込んでるっ!!!」


 前スレ:朝起きたら、妹に その14
    http://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1180380183/
 保管庫
    朝妹スレ私設まとめ(ハル氏)
    http://asaimo.h.fc2.com/
 ログ置き場(保管庫完成までの暫定設置)
    朝起きたら妹に、ログ置き場
    http://www.geocities.jp/asaimo0/
0233名無しさん@初回限定2009/09/21(月) 03:34:00ID:UPrFxN0c0
>>232
.
   ヘ⌒ヽフ
  (  >ω<)・:;;:;";:; ヘッブシュン!
  / ~つ )っ~
0236名無しさん@初回限定2009/09/24(木) 02:53:32ID:mPjJ6Qg40
>>235
なぁに、次は里佳子の長編か、鳴神月華&鳴神雪帆の長編だ。
これくらいは我慢できる。
0246名無しさん@初回限定2009/10/16(金) 23:02:04ID:6GOUufpT0
|
0247名無しさん@初回限定2009/10/16(金) 23:12:22ID:m6r2QLK30
そろそろ里佳子の長編と、鳴神月華&鳴神雪帆の長編が投下される予感(根拠無し)。
0252突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/11/19(木) 03:34:08ID:ekgemYqp0
「なんだそれ?」
「ん〜? お見合い写真〜」
「!!」
「お父さんが会社の社長さんなんだって。お金持なんだねぇ。良いかも?」
「おま、ちょ、そんな理由で決めるのかよ!?」
「貧乏よりはマシだよ。真面目なタイプらしいし〜」
「そんなの写真だけで分かるわけないだろ!」
「だからお見合いで会って話すんでしょ? 結構、美形っぽいよ?」
「写真写りにアッサリ騙されるな! それに見合いだなんて既成事実を作るのが目的に決まってるだろ!」
「ん〜? なにそれ〜?」
「だからだな、会ったら最後『とりあえず』って勝手に話が進んで……」
「でもパパのお仕事関係らしいし、簡単に断ったら拙いっしょ?」
「トラップ臭がプンプンするだろ明らかに! 却下だ却下!!」
「……ダメ?」
「ダメ! ゼッタイ!」
「ん〜……」
「だから悩むな!」
「んん〜……」
「なんなら俺が親父に掛け合ってやっても……」
「兄貴がそこまで言うなら……いまから直接電話してお断りするね?」
「は?」
0253突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/11/19(木) 03:35:19ID:ekgemYqp0
「携帯取りだしポパピプペ〜♪ っと」
「ちょ、お前何で相手の電話番号なんて知って……?」
「あ、もしもし、私〜。残念だけど兄貴は嫌だって〜」
「へ?」
「うん、うん。じゃあお流れってことで、まったね〜♪」
「しかも、なんでそんなにフランクなんだおい!?」
「プチッと。はい終了〜」
「って早!」
「雪乃ちゃん、残念ですけど今回は諦めますって。良かったね兄貴〜」
「ゆ、雪乃ちゃん……?」
「だからぁ、兄貴のお見合いの相手。実は私の同級生なんだけどね〜」
「もしかして、この前お前が連れてきた大人しそうな可愛い子……?」
「兄貴に一目惚れだったんだけど、告白は恥ずかしいからお見合いにしたんだって〜」
「な……!?」
「んじゃ遊びに行ってきま〜す」
「お、おい、その写真……」
「お断りしたし見る必要もないっしょ? 私が雪乃ちゃんに返してあげるから。んじゃね〜♪」
「な、な、ななななな…………!」
0258名無しさん@初回限定2009/12/03(木) 23:31:40ID:hrc87/ZM0
朝起きたら妹に、
私のにぃにがこんなに紳士の筈がないと言われた。
0259名無し兄 ◆2Z9GE9yyj. 2009/12/08(火) 03:31:50ID:i4ZT+7KI0
朝起きたら妹に、「私のにぃに、こんなに紳士の筈ない」と言われた。

――目覚めのときは決まって、賢者のような気分だった。
爽やかな目覚めは喜ばしいこと故、気にもしなかったが
始発で帰った夜勤明けの朝、その理由を知るのだった。

「ぁむ……はぁ、んふぁ……むぅ……」

 まだおぼろげな意識の中、
雁首か鈴口の辺りをたどたどしく刺激される感覚。
裏筋や玉袋の辺りにも、指や舌を這わせているようだ。

「ふぉふぃふぇ……ふぁ……む……」
くぐもった声をあげる翠華。
熱を帯びた舌と吐息がくすぐったくて、堪らず抱きしめていたらしい。
了解とばかりにラストスパートをかけてくる。
視界が白んでいく錯覚も解け、覚醒していくのを自覚する。
「んくっ…んくっ…んふぁ…にぃに、おはようさん。」
眸を開けば、難なく嚥下し、柔らかな微笑みで答える妹がいた。

――閑話休題

「……にぃにの甲斐性なし!嗜虐主義者<サディスト>!唐変木!ニヒリスト!変態紳士!マグロ!」

心地良い疲れに思わず寝落ちしてしまった僕を待っていたのは、
シャワーから上がったばかりらしい、以前プレゼントしたネグリジェ姿の翠華だった。

「やんなるわもぅ、うち、スペルマ欲しゅうて堪らんみたいやない……イケズなんやから……」
そう言って俯くのが可愛くて、堪らず抱きしめるのだった。
<了>
0260ハル ◆2Z9GE9yyj. 2009/12/08(火) 03:59:22ID:i4ZT+7KI0
またもやトリップキー忘れて名無し同然になっていたので
「名無し兄」と名乗ってみたハルです。
設定とかのまとめを作り直しているところですけども
258さんのネタで1本できたので久しぶりに投下しました。
最近やったゲームだと、
ましろ色シンフォニー(主に桜乃)と妹スマイルがツボでした。
洗濯物を畳むときの鼻歌がちょっとシュールでしたが可愛らしかったです。

>突発屋氏
いつもお疲れ様です。
93妹もお見合い写真の子も可愛らしくて良いなと思いました。
自分の私設まとめですが、
私生活の関係上更新不能になる可能性がありますので
テンプレからは外しておいて頂けると助かります。
0264突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:06:08ID:x/mK8zJv0
こ、これは別に新展開とかじゃなくって只の保守代わりなんだから勘違いしないでよねッ!?
0265突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:07:27ID:x/mK8zJv0
 「あ……お帰り、リカりん」
 好天に恵まれた肌寒い昼下がり。本店から戻る途中で只の通行人Aのフリを
しながら店の前を通り過ぎて店内の様子を抜き打ちチェックする、という作戦
を出鼻で挫かれた里佳子は、苦虫を噛みつぶしたような顔をしながらも仕方な
く(何故か店の前を掃除していた)中学校以来の親友であり仕事に於いても相
棒の瑞樹に向き直った。
 「なんでアンタが外で掃除してるのよ? 私がいない間はフロアの責任者な
んだから目を離したらダメじゃない!」
 「いや、だからリカりんが居ない状態で私が目を離しても真面目にやるかな
って試してみようかと」
 そんな瑞樹の返答に眉をしかめる里佳子。
 「あのねぇ、私達の職種は接客、つまりサービス業なのよ! 常にお客様に
採点されながら仕事をしてるっていうのに、そんないい加減な覚悟じゃあっと
いう間に信用を失ってしまうじゃないの! いい? いつも言ってるけど一度
失った信用というものは、そう簡単には……」
 「わかったわかった、わかったから中に入ろう。いくら何でもお店の前で店
員が口喧嘩してたら拙いって」
 「あ……う、うぅ〜〜!」
 こればっかりは瑞樹の言うことに理がある。口を『へ』の字に曲げながらも
里佳子は渋々と瑞樹に続いて裏手の従業員用出入り口へと。
 「それで、本店の会議の首尾は如何でしたかな? 次期マネージャー候補さ
ん?」
 「その呼び方は止めてって言ってるでしょ! 私は別にそんなつもりでお仕
事してるんじゃないんだから」
 更衣室と隣接する休憩室兼ミーティングルームは今は無人。フロア主任の里
佳子がパイプ椅子に腰を降ろすと、すかさず副主任の瑞樹が冷蔵庫からミネラ
ルウオーターのペットボトルを取り出してくれる。
0266突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:09:06ID:x/mK8zJv0
 「いや、つもりも何も近未来の幹部候補生でもない限り、チェーン全体の企
画会議に店長の補佐で行かせて貰ったりはしないでしょ普通。それに企業に貢
献する為の出世願望なら不健全でも何でもないんじゃない?」
 「それは……そうかも、知れないけど……」
 「でしょでしょ? 伝説のアイアンメイデンも一皮剥けたみたいだし、これ
を機会に従業員思考からの脱却を目指すってのもアリじゃない? リカりん期
待されて……」
 「ちょっと、何よその「伝説のアイアンメイデン」って! もしかして私の
ことじゃないでしょうね!?」
 「いや、もしかしなくてもリカりんのことだし。ちなみに昨日今日の話じゃ
なくて高校の時から続いてる由緒正しいあだ名だから、約一名だけは知らなか
ったみたいだけど」」
 憤慨する里佳子にアッケラカンと応じる瑞樹。ただでさえ我の強そうな瞳を
持ち、一睨みでメイド服の少女達を黙らせることの出来る里佳子の威嚇を苦も
なく受け流せる数少ない人物ならではの余裕である。
 「な、なによ! みんなして人を骨董級の堅物呼ばわりして……」
 「いやいや、どっちかって言うと内面じゃなくて一生破けそうもない鋼鉄製
の処女ま」
 「そんなことよりっ!!」
 「うひゃあっ!?」
 だが、欠伸をかみ殺している隙を突いて至近距離にまで肉迫されて怒鳴られ
ると流石に怯んでしまうらしい。
 「お店、ちゃんと回ってるんでしょうねぇ? まさか私に昇進を勧めながら
営業成績を落として足を引っ張るようなことはしないわよね、中学からの親友
のサブチーフさんは?」
 「大丈夫だって、出勤率はパーフェクトなんだし。私が出ばんなきゃばらな
いようなミスもトラブルも一切無し。昨日のリカりんの檄が随分と効いたみたい
だねぇ」
0267突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:10:41ID:x/mK8zJv0
 「……午前中の売り上げは?」
 「そう来るだろうと思って打ち出しておいたよ、ほれ」
 「………………………………………」
 「ね? 売り上げも回転率も好調この上なし。だから何時までも婚期を逃し
たナマハゲみたいにてカリカリしてないで、リカりんもたまには有給とって大
好きなお兄ちゃんと……」
 「フェア商品の売り上げが落ちてる!」
 「……思う存分イチャついて、主に私の精神衛生面の為にもお店でツンツンし
ないようにストレスを……って、え?」
 「昨日の半分くらいしか出てないじゃない! いつも言ってるけど、チェー
ン展開しててもウチのお店は大きくないんだから、フロア責任者は食材の在庫
状態にも或る程度は気を配っておかなきゃ駄目でしょう! 何のために季節ご
との商品展開を計画的に行ってるのか理解してる? わざわざ農家の方に契約
をお願いして直接卸して頂いてるのだって、お客様に新鮮な……」
 「ギブギブ、もう降参だから勘弁して! っていうかリカりん、昨日の時間
毎の売り上げまで記憶してるんだ……?」
 「あら? その程度のこと、飲食店の最前線を預かる接客責任者としては当
然だと思うんだけど〜!?」
 「ひ、ひぇ〜〜〜〜〜〜っ!?」
 ギロリ、と半目で睨まれてタジタジの瑞樹。
 「私、これから店長と一緒に(本店の企画会議の結果を踏まえた支店の)ミ
ーティングだけど、終わったら即フロアに出るからシフトの調整をしておきな
いさいよね! それとフロアに出てる子に、ちゃんとお客様にお勧めをする様
に再確認しておくこと! わかったわね、未来のフロアチーフさんッ!?」
 「ささ、さーいえっさー!!」
 まったく私がいないと全然駄目なんだから! と愚痴りながら資料を抱えて
会議室に向かう里佳子の背中を直立不動の敬礼で見送る瑞樹であった。
0268突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:12:54ID:x/mK8zJv0
 そしてその夜。
 「ねぇ耕介ちゃん、そろそろ一息付けてお風呂に入ったら? リカちゃん遅
くなるみたいだし?」
 持参金で日用品を一通り買いそろえ、おニューのエプロンを身につけた真里
亜は、すっかり佐々原家の主婦となっている。恋敵である里佳子は不満タラタ
ラなのだが、自分が社会人としての責務を職場で担わなければならない現状で
は如何ともし難い。
 「お、おう…………あのさ?」
 流しに向かい、二人分の食器を鼻歌交じりで片付ける真里亜に恐る恐る声を
かける家主の耕介。従妹と義妹が同時に恋人……どころか婚約者宣言して押し
かけてきて以来、彼の神経はすり減る一報である。
 「うん?」
 「お、お前とリカってさ、昔は仲良かったよな?」
 どういう経緯があったのか耕介は知らないのだが、義姉達を「さん」付けで
呼び常に敬語を使う里佳子が真里亜相手では何故か違うのだ。お互いに耕介か
らは従姉妹であるという共通点以外にも何かあるに違いないと耕介は常々思っ
ていた。故に、上手く取り持てば円満な関係に戻せるのではないかとも。
 「そうね。初めて会った頃はリカちゃん小さかったし、耕介ちゃんの妹って
事は私の妹になるかも知れない子だったから」
 勿論リカちゃんが凄く可愛くて良い子だったのもあるけど、と最後に付け足
しながらも淡々と家事を続ける真里亜。
 「だ、だったらさ? もうちょっとこう、なんつうか……」
 「リカちゃんが、これからも耕介ちゃんの妹でいてくれるっていうなら、も
ちろん可愛がってあげるわよ。義姉として」
 ニコっ、と振り返った満面の笑みが何故か怖い。しかも自分が蒔いた種が根
底にあるだけに下手な反論は薮蛇になるだけ。こりゃ仕切り直しだと瞬時に
判断した耕介はすごすごと浴室に撤退していった。
 「……とは言え、あのリカちゃんが此処まで頑張るとはねぇ」
0269突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:14:23ID:x/mK8zJv0
 最後の皿を拭き終え、やや疲れた溜息を漏らす真里亜。どちらかと言えば古
いタイプの人間でパソコンには余り慣れていない両親を上手く丸め込み、姉妹
でそれぞれのパソコンを持ってネットを活用していた真里亜は内通者を通じて
耕介の周囲の状況を或る程度は把握していた。そして……
 「あら?」
 玄関先からの物音に彼女の思考は中断された。がちゃがちゃと急いで鍵を差し
込み開ける音に続いて開閉音とハイテンポな足音が近づいてくる。
 「あ、リカちゃん? おかえ……」
 「ただいま真里亜ちゃん遅くなってゴメンね私ご飯はまだだけど自分でする
から平気だしお仕事で汗かいちゃったから先にお風呂入ってくるから真里亜ち
ゃんはお部屋で休んでむぎゅっ!?」
 通勤着のまま居間を突っ切り風呂場に突撃しようとした里佳子だが、予想外
に素早い反応でコートの襟首を後ろから掴まれ阻止されてしまう。
 「リ〜カちゃん、どこ行くのかな〜? いま、耕介ちゃんがお風呂に入った
ばっかりなんだけどな〜?」
 「……そそ、そうなんだ? リカ、知らなかったなぁ……」
 視線を泳がせながらも捕まれたコートをトカゲの尻尾代わりに即時脱出を計る里佳子
だが、すかさずスカートの裾をキャッチさられて失敗。互いに笑顔を浮かべながら
の攻防が続く。
 「そう、知らなかったの? 原付の音もしなかったしリカちゃんお風呂場に
真っ直ぐ向かっていったから、てっきり家に着く前にエンジンを止めてコッソ
リ押して帰って、外でお風呂場の電気が点くのを待ってから急いで階段上がっ
てきたのかと思ったけど私の勘違いだったのかな? ごめんなさいねリカちゃ
ん〜?」
 「はぅっ? り、リカ、そんな悪い子じゃないもん! ままま真里亜ちゃん
の考えすぎなんだもん……」
 あからさまに動揺する里佳子と、平然とした笑みを崩さない真里亜。
0270突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:16:28ID:x/mK8zJv0
 「うんうん、そうよね〜。じゃ、良い子のリカちゃんは耕助ちゃんのお風呂
の邪魔しないように晩ご飯にしましょうね〜?」
 「あ〜ん、おにいちゃ〜ん!!」
 穏やかな笑顔のまま、涙目でジタバタと藻掻く里佳子の体を片手で引きずりな
悠々とキッチンに戻ってゆく真里亜。体格差があるとはいえ彼女の細腕からは
想像できない腕力だ。
 (まったく、昔は素直で良い子だったのに! 私を出し抜いてお風呂で楽し
もうだなんて十年早いってことをハッキリと……)
 一回り近く年下の里佳子にワイン一本で出し抜かれたばかりの真里亜に油断
などあるはずもない。それどころか、どう雪辱を果たしてやろうかと笑顔の
裏で考えていたところだが。
 (……ん? お風呂?)
 「……真里亜……ちゃん?」
 急に立ち止まった恋敵に怪訝な顔を向ける里佳子。気のせいか真里亜の頭上
で電球が光ったような気が。
 「ね、リカちゃん?」
 「う……なに?」
 正直、嫌な予感しかしない里佳子。
 「せっかくだから、みんなで一緒に入ろっか?」
 「え、え〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
 「うんうん、それが良いわ。リカちゃんに汗臭いままご飯食べさせるも可哀
想だし、ここのお風呂は広いから三人でも平気よね? リカちゃんも、それで
良いでしょ?」
 と言うが早いか向きを変えて風呂場へと戻る真里亜。当然ながら片手で里佳
子を牽引したままで。
 「そんな、真里亜ちゃんが一緒じゃリカは……って引っ張らないでよ真里亜
ちゃん! あ〜ん誰か助けてぇ〜!!」
 まるで歯医者に強制連行される子供のような里佳子の悲壮なドップラー音を
最後に、脱衣所の扉が音を立てて閉まった。
0272突発屋 ◆63./UvvAX. 2009/12/29(火) 21:25:29ID:x/mK8zJv0
おかしい!w
明らかにスレ違い的な展開しか予想できないウチの9393妹(仮)が、こんなに好評の筈が(ry

>ハル ◆2Z9GE9yyj氏
久々の投稿、ご苦労様です。

それなりのご事情もおありでしょうが、こうまでトリップ変更を連続されますと
ご本人確認が難しくなる(つまり、成り済ましとの判別が出来なくなる)等の懸念が発生してしまいます。

大変申し上げにくいのですが、最低限、御自分の履歴などの保存には一層気を遣って頂けるようお願い申し上げます。
0276桐莉兄@チラ裏2009/12/31(木) 22:06:09ID:b/0kjc0B0
ちょっと早めのあけおめ置いておきますね・・・。
0278名無しさん@初回限定2010/01/17(日) 22:41:10ID:dimMFApi0
  ☆ チン

        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)<  新作まだー?
             \_/⊂ ⊂_)_ \_______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |           .|/
0280名無しさん@初回限定2010/01/26(火) 23:17:05ID:KMz3zvz70
ほしゅ
02851/72010/01/29(金) 00:54:29ID:NgGf82y70
書いたぜ!o(`ω´*)o

 酷い目覚めだった。咽のかさつきで目を覚ました雪子は尋常ではないだるさと頭痛に顔
をしかめた。
 朝起きたら妹は風邪を引いていた。
 前夜から兆候らしきものはあったものの、急速な症状の悪化に雪子はインフルエンザを
疑ったが、それが分かったところでなんだろいうのだろう。結局のところ彼女にとって重
要なことは病名ではなく、冬休みの行楽行事が潰されたということにつきた。去年から計
画されていた家族と親戚の合同スキー旅行――雪子はスノーボードに挑戦するつもりだっ
た――のよりによって当日に風邪を引くなんてよほどの見返りが無ければ割に合わないと
雪子は思った。
 時計は六時三十分を指しており、部屋の外では家族が準備をしているであろうあわただ
しい音が聞こえてきた。娘を起こしに母親が部屋に着たので、雪子は風邪を引いてしまっ
たことを伝えた。母は娘の額に手を当て「あら、どうしましょ」とお決まりの台詞を出す
と自分も家に残るようなことを言い始めたので雪子はそれを断った。この旅行を一番楽し
みにしていたのはおそらく母であり、雪子としては自分のつまらない不運で人の楽しみま
で奪いたくなかった。とは言っても、病人を一人置いて旅行に出かけられるような母親で
もなかったので、結局迷惑を掛けてしまうんだろうと思っていると、母は娘に対し、より
悪い解決策を提案した。
「じゃあお兄ちゃんに看病してもらいましょう」
「はぁ?」青天の霹靂だった。
「お兄ちゃんはスキー嫌いみたいで行かないって言ってたのよ」
02862/72010/01/29(金) 00:59:41ID:NgGf82y70
 それは違うと雪子は思った。兄――そう呼ぶのも遠慮したいところだった――はスキー
が嫌いなのではなく、外に出たくないだけなのだろうと。彼は雪子から見れば引きこもり
一歩手前のろくでもない家族の恥でしかなかった。一応、勤めに出てはいるがそれ以外の
時間はほぼ部屋でパソコンをいじっているだけであり、アウトドアを健全と考える雪子に
とって彼は病的でしかなかった。
「あ、あたしもいく」
「お留守番よろしくね」母は無情だった。

 車の排気音が遠くなっていくのを耳に残しながら雪子は兄が自分の部屋をノックしても
容赦なく突っぱねてやろうと考えていた。廊下のきしむ音が聞こえるたびに彼女は身構え
たが、結局ノックをされることは無かった。それどころか、隣の部屋、つまり兄の部屋か
らパソコンの起動音が鳴り、キーボードを叩く音が聞こえはじめたとき、彼女の怒りは一
気に沸点へと達した。なんてやつなのだろう。奴には妹の風邪など眼中に無いのだ。
 結果的に彼女の望んだ放置という結末は、その過程が気に入らなかったため理不尽な憤
怒を呼び起こしてしまった。
 雪子が不貞寝を決め込もうとした時、部屋のドアがノックされた。想定外の不意打ちを
食らった雪子は「なに」と言おうとしたが乾いた咽に空気がかすれ、むせてしまった。何
度も咳き込んでるうちに部屋のドアが開き、兄が入ってきた。
「な――なんの――」声を出そうとするとセキのほうが自己主張を始めてしまい、仕方な
く彼女は咽が落ち着くのを待った。ようやくセキが止まると兄がコップを差し出してきた。
面食らった雪子は文句も言えずにコップを受け取って中身――ぬるま湯だった――を飲み
干した。
02873/72010/01/29(金) 01:02:33ID:NgGf82y70
「何の用」
 兄は肩をすくめ「風邪引いたって言うから看病しにきたんだ」
「いらないし。ほっといていいよ」
「そういうわけにはいかない。母さんに頼まれたからな」
「パソコンつけてたくせに」ぼそりと雪子がつぶやいた。
「ん? ああ、あれはグーグル先生に指導願ってただけだぜ。病人の看病なんて素人もい
いところだからね。されるほうはベテランだが」
 パソコンに詳しくない雪子だったが、どうやら勘違いをしていたということだけは分か
った。火照った顔が余計熱くなった気がした。しかしぐーぐる先生って誰だろう。医者だ
ろうか? 彼女は考えた。
「ほら顔見せてみろ」
 雪子は抵抗したい気分だったが、ばつの悪さからしぶしぶ従った。額にひんやりとした
手が当てられる。大きな手だった。
「結構熱いなー。起きれそうか?」
 雪子はかぶりを振った。身体の節々が痛かった。
「医者に行ったほうがいいんだろうけどおんぶしてやろうか?」
「いらん、でてけ」笑えない提案だった。
「気が向いたら言ってくれ。実は免許も持っている」
「まだ死にたくない」
「俺もそう思う。じゃあ何かあったら内線で呼んでくれ」彼は家の電話の子機をベッドの
脇に置き、リビングから持ってきたであろう加湿器をセットすると部屋を出て行った。
 予想外の展開と、引きこもりだと思ってた兄の意外な献身に困惑しながら雪子は頭の後
ろから来るまどろみに瞼をゆだねた。
 このろくでもない風邪を与えてくれたろくでもない神様、どうかよくあるお約束のよう
に兄が夢にまで出てきませんように。最後にそう願った。
02884/72010/01/29(金) 01:06:41ID:NgGf82y70

 ろくでもない夢の果てに雪子は勢いよく目を覚ました。焦点の定まらない視界に揺れ回
る天井が見えた。鼻は詰まり頭は重い。夢に兄はでなかったが、神様が守ったのはただそ
れだけであり、彼女が見たのは全身汗だくになるほどの悪夢だった。しかし汗をかいたせ
いか心持ち気分が楽になっていた。
 ふと見た時計は十一時五十五分を指していた。空腹感は特になかった。
 廊下のきしむ音とノックの音に寝ぼけ半分の彼女は生返事を返すと、兄がドアを開けお
ぼんに乗せられた食事を運んできた。
「起きれるかー? 食べさせてやろうか?」
「しねばいいとおもう」弱ったあたしを見てこいつは楽しんでいるに違いない、そう雪子
は思った。気合と根性で彼女は半身を起こすと額からタオルが落ちた。寝ている間に部屋
に入って乗せていったのだろう。しかしこれでは非難できないじゃないか。雪子は今日何
度目かの複雑な気持ちにかすかなため息をついた。
「うわ、すげー汗だくじゃないか。まず着替えたほうがいいぞ」
「そう思うなら部屋から出るべき」
「もっともだ」彼は料理ののったおぼんをテーブルに置くと部屋を出て行った。
「うー」ベッドから起きだし、横に座る。パジャマのボタンをはずし脱ごうとするが筋肉
が悲鳴を上げまともに動かない上にぴったりと肌にくっついた綿のパジャマは容易に脱ぐ
事はできなかった。仕方がないので下から脱ぐ事にした。蒸れた下半身をタオルで拭き、
替えのショーツをタンスから取り出すと彼女はいつものように片足を上げショーツを履こ
うとしたがそれがまずかった。弱った彼女の足は付加に耐え切れずバランスを崩し、雪子
はそのまま前のめりに倒れこんだ。
02895/72010/01/29(金) 01:09:31ID:NgGf82y70
 ゴン! という巨大なオノマトペが響き、「くぉぉぉおおぉお」と苦悶の声が雪子の口
から呪詛のように漏れ出た。
「おい、ちょっとすごい音したけどどうした――」兄がドアを開けるとそこには下半身丸
裸の妹が額を押さえながら倒れていた。
「何事だ」
「あ、あたまうった」
「どれ……出血はしてないが、こぶになりそうだなぁ」
「うう」
 あまりにも哀れな妹の姿に思わず兄は噴出してしまった。
「なんだよう……」
「頭の心配もいいけど、下の心配もしたほうがいい」
 雪子の意識はその言葉に促され、何も身につけていない下半身へと向いた。
「――き」
 その後を語る必要はなかった。

「なー、おこんなよー」
 返答は沈黙。ドタバタ喜劇のようなやりとりから三十分経過した十二時五十三分、いま
だに雪子は布団に引きこもったままだった。
「チョロっとしかみえなかったって」デリカシーのかけらもない言葉だったが、他の慰め
の言葉はすでに沈黙で返されていた。
02906/72010/01/29(金) 01:11:46ID:NgGf82y70
「胸も見た。触った」
「うっ。気にしてたのかよ」そう、あの後まともに身体が動かせない妹のパジャマを脱が
せたのも、ブラジャーを脱がせたのも、挙句上半身を拭いてやったのもすべては兄だった。
出て行け出て行けとわめく妹をしかし放っておくわけにはいかず、半ば自暴自棄になった
彼女にタオルをあて新しい服を着せてやり、なんとかなだめつけ現状に至る。
「不可抗力というか、あれは病人介護みたいなもんで、ほら人工呼吸みたいなもんだろう。
いやまぁ悪かったけど。あ、別にお前の胸が悪いというわけじゃなくてだな」
「うるさい」天然はこれだから。雪子は頭の中でそう付け加えた。
「大丈夫だって俺三次元に興味ないから!」
 慰めのつもりだろうか? だとしたら相当な自虐だと思った。雪子は兄のあまりのバカ
らしさに思わず笑ってしまった。兄をろくでもないと決め付けていた今朝までの自分に再
考慮の赤丸をつけた。
 雪子は布団から顔を半分だし兄に視線を向けた。
「別に怒ってないから」
「怒ってるようにしかみえないんだが」
「怒るに怒れない」今日はそんなことばかり。
「うん、それを聞いて安心した。安静にしてるんだぞ」
「ん……」雪子はそっと頷いた。
「じゃあ何かあったら内線で」そう言って兄は部屋のドアを開けた。
「あ――にーちゃん」
 無意識だったとはいえ自分の口から出たとは思えない言葉に雪子は再び熱が上がった気
がした。
「なに?」
「あ、あ、あり……」何気ない感謝の言葉も相手によっては愛の告白のように気恥ずかし
くなるもので――
「添い寝してやろうか?」
「うせろ!」憎まれ口くらいがちょうどいい。             おわり
02927/72010/01/29(金) 01:16:07ID:NgGf82y70
あれ? 7レスで収まると思っていたら6レスで収まっていた。これだからROM専は…。
過去の勢いを知るものとしては現状はとても寂しい(ノд`;) バレンタインデーには賑わうとイイナァ
と思いながら寝るぜ! ノシ
0293名無しさん@初回限定2010/01/29(金) 10:23:17ID:bwRvFLcg0
>>292
昔は乙というレスがついたが、最近、名無しに対しては乙レスもないよな。
02942852010/01/30(土) 20:28:33ID:jJiPGO8/0
>>292
 確かにこれは寂しいなw もうちょっと面白い話考えてみるはw
0297名無しさん@初回限定2010/02/02(火) 22:12:53ID:zNwq/N1+0
おお、規制が解けている
煽っておいて乙できなかったから凄くもどかしかったんだ
面白かったよ>>292
0300突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:01:28ID:s1kLQ+Rb0
 その日は携帯の着信音で目が覚めた……というか覚まされた。
 「ンだよ、またデコ助かぁ?」
 暗闇の中、しつこく鳴り続けるコール音を頼りに手探りで携帯を手に取り、目を瞑り布
団に潜ったまま開いて耳に当てる。毎度のこととは言え、人の都合という物を全く考えな
いチビ助のために起き出してやる気なぞ毛頭無い。
 「もしもしぃ……」
 「兄さんですか? すぐにお台所まで来て下さい」
 「………………………………はい?」
 「ですから、いますぐお台所まで来て下さい。まだ寝惚けてる見たいですけど、そのま
ま寝直したら駄目ですからね?」
 「いや、だから……」
 「それでは失礼します」
 (ぷつん、ぷーぷーぷーぷー……)
 「……って、おいっ!?」
0301突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:02:43ID:s1kLQ+Rb0
 「やっと来ましたね。さ、こっちへどうぞ」
 にも関わらず、すぐに起きて台所に出向いてやった俺は近年希に見るお人好しだと自分
でも思う。そこでは妹が部屋着にエプロンという格好で、湯煎で溶かしたと思しきチョコ
レートの匂いに包まれながらいそいそと動き回っていた。言うまでもなくバレンタインの
準備に追われていることくらいは分かるが。
 「その前に、一つ聞いてもいいか妹よ?」
 「はい、なんでしょう?」
 真夜中に叩き起こされた俺は、兄として生意気で礼儀知らず(兄限定?)の妹に猛省を
促すべく目一杯不機嫌そうな顔をしてやったのでが、当の妹さまはキョトンとした顔で小
首を傾げるだけ。果たして俺の不満オーラに気がつかない程に鈍いのか、感づいていても
全く気圧されないだけなのかわからないが、どっちにしてもダメージを負うのは俺だけの
ような気がするので敢えてスルーして話を先に進めることにする。
 「いま、何時かわかってるよな?」
 「はい勿論です。兄さん起こしたのは午前零時を少し過ぎた頃で、いまは……そろそろ
零時半になろうかというところです。健康的、かつ勤勉な生活をしている人なら一日の疲
れを癒すために眠っている時間帯ですね」
 「そ、そこまでわかってンなら……」
 「ちなみに私は真面目に部活動を終わらせてから帰宅して晩ご飯を頂いた後、予習復習
と宿題をしてお風呂に入って、お台所が空いてから明日の準備を始めたら、こんな時間に
なってしまったというだけで兄さんに嫌がらせをするために貴重な睡眠時間を削ったので
はないのですが何かご不満がおありですか?」
 「何の前振りも無しに叩き起こすだけでも立派な嫌がらせだろうが!?」
 えっと、ここって怒って良いところだよな、普通に?
0302突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:03:55ID:s1kLQ+Rb0
 「それは事前にお願いすると120%の確立で兄さんが拒否すると踏んだからです」
 「確信犯かよっ!?」
 「という訳で、ようやく冷えて固まった完成品第一号です。どうぞ?」
 「あー……」
 「ちなみに大きいのもハートの形をしているのも本命と同じ仕様で作った結果であって
他意は全くありませんので勝手な深読みはしないで下さいね。それから特別サービスでこ
れもお付けしますから文句を言う暇で早く召し上がって下さい」
 と俺愛用のコーヒーカップに湯気を上げるホットミルクを注いでフォークとナイフと共
に食卓に並べる妹。
 「………………」
 「どうしましたか兄さん? 早く座って食べないと兄さんのみならず私の睡眠時間まで
無駄に減ってしまうのですが?」
 いやだから何だその言い草は? まるで俺が妹の要求通りにチョコレートの味見(だと
思うんだが)をするのが確定事項というか当然みたいな口ぶりなんだが。
 「……その前に、もう一つ聞いて良いか妹よ?」
 「はい、なんでしょうか?」
 「俺に選択の自由は……」
 「家に兄さんとお父さんのお二人しか男性が居ない以上、最初から私の選択の幅は極め
て低いとしか言わざるを得ませんし、その程度の事なら兄さんの凡庸な頭脳でも簡単に予
測出来ると思いますが?」
 「いや、だったら親父……」
0303突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:05:41ID:BHrsUBRQ0
 「兄さんが『どうしても嫌だ』と仰るなら、遺憾ながらお父さんにお願いするしか有り
ません……………が……」
 「…………『が』?」
 「そうですね、具体的には…………『ぐすっ、頑張ってチョコレートのお菓子を作って、
やっと第一号が完成したので兄さんに食べて頂けますかとお願いしたのですが『お前の作
ったチョコなんぞ食べられるか!』と言われてしまって、仕方なくお父さんに……いえ、
こんな時間になってしまったのは私が不器用で手が遅い所為ですし、兄さんもゲームでお
忙しいので兄さんを責めないであげて下さい。本当は私も兄さんに美味しいって言って頂
きたかったのですが私が至らないばかりに……ううっ、兄さんは悪くないんです。私の要
領が悪いから嫌われただけで兄さんに罪は』」
 「何勝手に誇張してんだおい! ジャロ(公共広告機構)に訴えんぞゴルァ!?」
 しかも親父が妹の言い分のみを信じる可能性が100%近いのが非常に拙い。自分で言
うのも何だが日頃の素行の違いから、この家のヒエラルキーにおいて俺の信用度は妹のそ
れと比較して非常に低位置なのだ。
 「誇張ではなく演出といってください。お仕事でお疲れのお父さんに気持ち良く食べて
頂くには不可欠とも言うべき必要悪の範疇です」
 「……だったら俺を起こす時にも少しは演出を加えろよ……」
 というか俺の負担とか心労とかが最初から因数外なのはどうよ?
 「兄さん向けの演出ですか? なら、そうですね…………」
 「………………………」
 「……とか何とかやっている問答の時間も惜しいと思いませんか兄さん?」
 「面倒だからって考えるの放棄しただけだろ今!?」
0304突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:07:00ID:BHrsUBRQ0
 「とにかく兄さんが食べてくれさえすれば万事解決なんですから早く召し上がって下さ
い。兄さんだって時間の浪費は不本意でしょう?」
 「だから、それをお前が言うな……」
 なんか色んな意味でドッと疲れてきた俺は渋々ながら妹の勧める椅子に腰を降ろし、妹
が差し出したナイフとフォークを……
 「……って、なにゆえチョコをかじるのに食器が居るんだ?」
 「ああ、言い忘れていましたがケーキです。表面をチョコレートでコーティングしてあ
りますけど中身はビターチョコを混ぜたスポンジケーキなんです」
 「……随分と手が込んでるな……」
 しかも、よく見るとカット前の丸いケーキ(ホールっつーんだったっけ?)並の大きさ
だったりするのな。これって、材料の量も半端ないんじゃないのか?
 「そ、それは……さっきも言いましたけど本命の仕様ですから……」
 つまり明日(正確には既に今日なのだが)になれば、これに更にデコレーションされた
代物である本番仕様品を何処かの野郎がプレゼントされる訳か。このサイズじゃ下駄箱と
か机とかには入らないだろうし当然ながら手渡し。この見栄えだけは悪くなくて無駄に胸
がデカい妹が嬉し恥ずかしで真っ赤になりながら『これ、私の気持ちです』とか何とか宣
って、挙句の果てに『ど、どうぞ?』とか言いながら自分で切り分けて一口ずつ他の野郎
の食べさせてやったりするのか、この妹が?
 「…………あの、兄さん? 私の顔に何か付いてますか?」
 「な、なんでもねーよっ!!」
 「そこで逆ギレされる理由が全く理解できませんけど?」
0306突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:08:43ID:BHrsUBRQ0
 そうだ妹だ、こいつは妹なんだから誰と引っ付こうが、そもそも俺にゃ全然関係ないじ
ゃねぇか。まぁ明らかに不釣り合いなツマンナイ野郎だったらぶん殴る可能性もなきにし
もあらずだが、それは俺にだって義弟を選ぶ権利くらいはあるからであって、別に妹の色
恋沙汰に興味なんかないけどな!
 「……兄さん、早く召し上がらないとケーキはともかく、飲み物の方が冷めてしまいま
すけど……」
 「わ、わーってるって!」
 そうだ、こんな下らない用事はサッサと終わらせて寝よう。というわけで俺はハート形
の一番端っこを一口大に丁寧に切り落とし、何やらガン見してくる妹の目の前で恐る恐る
食べてみた。
 「………………どうですか?」
 「なんつーか、思ったより甘くない……みたいな?」
 「それはに……男の方に食べて頂く物ですから当然ながら甘さは抑えてあります。それ
よりも他に感想はないんですか? まぁ語彙に乏しい兄さんに参考になるような感想なん
て期待していませんけど、もう少し何か言い様はないんですか? はっきり言って、それ
では最しょ……味見して頂いた意味がありませんから、もっと食べて少しくらいは役に立
ちそうなコメントを頂かないと困ります」
 「わかったわかった、わーったから捲し立てるな!」
 てな調子で最終的に半分ほど食べ必死に感想を捻りだしたで妹はようやく満足してくれ
俺は寝床に戻ることが出来た。
0307突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:10:12ID:BHrsUBRQ0
 そして翌朝、明らかな睡眠不足で眠い目を擦りながら台所に顔を出すと、毎朝朝飯は皆
と一緒に食べる妹の姿が無かった。
 「ああ、あの子なら今朝はご飯も食べないで慌てて出て行ったわよ。今日は2月14日
だしね。うふふふっ♪」
 いや、だからなんでアンタが楽しげに浮かれてンだよお袋?
 「やっぱりあれよね? あれだけ張り切ってたってことは本命の子が居るって事よね?
アンタ何か知らない?」
 「しらねーよっ!」
 「何々? 朝から御機嫌斜めみたいだけど、もしかして可愛い妹のバレンタインが気に
入らないのかしらぁ?」
 「だから何でそんなにテンション高いんだよっ!?」
 おー怖い怖い、とスキップしながら逃げてゆくお袋に呆れつつ、普段からストックして
あるスポーツ飲料で朝飯前の喉を潤そうと冷蔵庫を開けた俺は、
 「……あれ、アイツ俺の食いかけ(のケーキ)をここに入れてなかったか?」
 それらしい箱の見当たらない冷蔵庫を眺めながら妹の作ったチョコレートケーキの味を
反芻していた。
0308突発屋 ◆63./UvvAX. 2010/02/14(日) 00:14:02ID:BHrsUBRQ0
以上、限定ネタで初心に戻ってみました>?

>>305
支援ありがとうございます。

>>285
勝手ながら鳥無しで保管させて頂きましたので、訂正など御座いましたら遠慮無くお申し付けください <(_ _)>
0309名無しさん@初回限定2010/02/14(日) 00:26:23ID:sFTLVUXu0
>>300
>チビ助のために起き出してやる気なぞ毛頭無い。
「チビ助」?
>>301
>目一杯不機嫌そうな顔をしてやったのでが、
「してやったのでが」?
>>302
>「文句を言う暇で早く召し上がって下さい」?
・・・・・「文句を言う暇があったら」の意?
>>303
>「最初から因数外なのはどうよ?」?
・・・・・「因数外」で合っているのだろうか思案中。
>>304
>なにゆえチョコをかじるのに食器が居るんだ?」
・・・・・「要る」?
>>306
>必死に感想を捻りだしたで
「必死に感想を捻りだしたで」?
>>308
乙であります (`・ω・´)ゞ
0311名無しさん@初回限定2010/02/14(日) 16:21:38ID:k5C3UlpDO
朝起きたら妹にチョコ貰った。


どうやら手作りらしいががが…
0313おはようのキスは ◆2Z9GE9yyj. 2010/02/14(日) 19:23:30ID:DLI2GM1I0
<お題:朝起きたら妹にチョコを貰った。>

シャワーでも浴びていたのか、髪がしっとりと濡れていた。
「ノック位して下さい。そんなんだから彼女ができないんですよ?」
痛いことを言われたショックも大きいが、申し訳ない気持ちになる。
それはそれで構いませんがとおどけつつも、
気にする素振りも見せずに着替える瑞希。
なんだか男として情けなくて、うっかりしていたと謝った。

「意識してくれてるんだと喜びこそすれ、今更恥ずかしくなんかないです。」
「ヌードデッサンのモデルをしたり、気分が昂じて始めてみたりで、
私の裸なんていくらでも見せてるじゃないですか。」
今更ですよと、頬を染めつつも応える彼女。
その俯く仕草が可愛らしくて、頭を撫でつつ、そっと抱きしめる。
啄ばむように応える彼女をそっと抱きしめ、もう一度キスをするのだった。

――閑話休題

「妹離れできなくても気にしないで下さい。
今のままでも、私は構いませんから。」
『兄離れできなくなってしまった責任、取ってもらわないと困ります。』
と、続けて聞こえたような気がした。空耳だろうか?
「私からの分なんて数に入らないかもしれないですが、
気持ちだけでも受け取って下さい。」
ホワイトチョコとミルクチョコを溶かし、バットで冷やしたのを型抜きした
シンプルなハートのチョコだったが、彼女の気持ちが、何よりも嬉しかった。
0314ハル ◆2Z9GE9yyj. 2010/02/14(日) 19:28:46ID:DLI2GM1I0
1レスお借りしました。リハビリを兼ねての短編です。
珍しくHなしですが、あくまでもスレの記念日に間に合わせること重視の
小ネタのつもりでしたので、ご容赦頂けたらと思います。
次の機会は、双子ものとかにも挑戦してみたいと思います。では。
03172852010/02/14(日) 22:15:50ID:cA8a1Rre0
お、バレンタインネタ来てる
二人とも乙っす

バレンタインネタ考えてみたけど間に合いそうもない。

>>308
なんかもう一個投下したらトリップつけよーとおもうす
0321名無しさん@初回限定2010/02/15(月) 16:15:06ID:9UUue6ZaO
このスレが出来たきっかけじゃなかったっけ?>バレンタイン

それはそうと、俺の妹にチョコの作り方教えた奴出て来い(-_-メ
0322名無しさん@初回限定2010/02/15(月) 18:09:05ID:dei2leIaP
昔、アステカ地方ではカカオマスを磨り潰した飲み物に、
唐辛子を混ぜて飲んでいたそうな。

辛さが、信仰する神との一体感を醸し出すとか何とか…
0324285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 21:46:42ID:lNG3qhxI0
 二月十四日の遅い朝。日本独特の様式を持ったバレンタインデー当日に、いたるところ
でそのイベントを楽しみにしていたり、嘲笑っていたり、あるいは無関心だったりする人
達がいるだろう。
 台所のテーブルの上に散乱したお菓子の調理器具や漂うカカオの匂いからすれば、司馬
冬子は明らかに前者の側の人間だった。お菓子作りが趣味の冬子はいつものように鼻歌を
歌いながら手際よく作業を進めていた。
 部屋のドアが開かれた音で冬子は振り返り「にーちゃんおはよ」と挨拶をした。
「はよぅ、また今年もチョコ作ってんのか」冬子の兄である修司が寝癖を撫で付けながら
自分の席へ座った。
「まーねー。あ、指入れちゃダメだって。あー、直接舐めるのもダメ!」
「いいじゃん結局俺のとこにくるわけだしこのチョコ」修司は湯せんされた液体状のチョ
コレートが入ったボウルを回転させながら言った。
「今年はちゃんと渡せるもん」
「去年もそんなこと言って、結局俺に残飯処理させたな」
「残飯ゆーな。どうせ他からもらう当てないくせに」
「俺はお菓子会社の陰謀に乗せられたくないだけだ」
「テンプレートなにーちゃんだなぁ。大体男の人には陰謀関係ないでしょ。買うのは女な
んだし」
「最近は逆チョコとかバカげたもんまであるんだぜ? ほらこれにも載ってる」修司は
テーブルに見開きで置いてあった女性誌のバレンタインデー特集ページを斜め読みしなが
らそう言った。
「男の人が女にチョコ渡すやつ? あたしはいいと思うけどな。にーちゃんがあたしにく
れたっていいんだよ」
「貰える心配より渡す心配したほうがいい」
「ふーんだ」
 修司の記憶によると、彼の妹がバレンタインデーにチョコレートを作るようになって四
年になる。今朝のように手間をかけてチョコレートを作るも、結局相手に渡せずに家に持
ち帰り、しょげかえった彼女が自棄気味に修司にチョコの処分を頼んでいた。
「チョコひとつ渡すだけがそんなに大変かね。男は苦手か?」
「苦手」
0325285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 21:48:41ID:lNG3qhxI0
 修司は、向かいに座りながらハートの型に溶けたチョコレートを流す冬子のほほをふに
ふにつまんで見せた。嫌がる様子はない。「ぜんぜん平気じゃん」
「にーちゃんは男じゃないもん」
「なにそれひどい」
「にーちゃんはにーちゃんだからね。いじわるだけど。てか作業できない」
「失礼」彼はそう言って手持ち無沙汰になった手を目の前の女性誌に持っていった。
 ファッション、占い、レジャー、スイーツ。どれも修司には興味のない記事ばかりだっ
た。巻末の“ちょっとエッチなバレンタイン特集”でページを捲っていた手が止まったが
“今年のバレンタインはちょっと小悪魔的に! チョコよりも甘いあなたの唇を捧げちゃ
おう★”という最初の文章を見て雑誌を閉じた。
「ちゅーなんてにーちゃんは許さんぞ」
「えっちぃページ見てないで冷蔵庫開けてよ」彼女は両手でチョコレートの乗ったトレイ
を持ちながら冷蔵庫の前に立ち、修司がそれを開けてやった。
「チョコも渡せないような内気な冬子には無理か」
「うー。だって今まではきっかけがなかったから」
「バレンタインなんて攻めなきゃダメだろう。守ってばっかりとかどこのサッカー日本代
表だよ。逃げ道ばっかり探してたら今年もまた渡しそびれるぞ」
「今年はだいじょぶだってば」
「いいや信用できないね」
 修司が左手を下あごに持っていき考えるように咽を鳴らし、妹を一瞥するとやがて振り
向きこう言った。「よしじゃあチョコ渡せなかったら俺とちゅーな」
「ちゅ……って、なんでにーちゃんと」
「王子様を捕まえられないようなヘタレ姫は悪い魔術師の手に落ちてしまうもんさ」彼は
舞台俳優のような大げさな身振りでそう言った。
 冬子は笑いながら言った。「にーちゃんが悪役? 背水の陣で姫を奮い立たせてくれる
なんて随分と優しい魔術師さんだね」
「好きなように解釈するといいさ、お嬢さん。賭けるか、降りるか?」
「待った。魔術師さんも代償を出してもらわないと賭けにならないよ」
「意外と抜け目ないなお前」修司は軽く考えると口を開いた。「この手の話の相場なら何
か一つ願い事をかなえてくれるってところか」
0326285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 21:51:04ID:lNG3qhxI0
「……なんでも?」
「無理のない範囲で」
 冬子が先ほど兄が取ったのと同じ仕草で咽を鳴らしながら思案し始めた。しきりに頭を
揺らしながら、やがて、これまた似たように兄を一瞥すると「あたしがチョコを渡せたら
にーちゃんの負け。渡せなかったらあたしの負け」
 修司が頷くのを見て冬子はにやりと笑うとゲームへの参加を表明した。

 午後七時を回ったところで修司は目を覚ました。居間のこたつで寝入ってしまっていた
らしく、身体の節々が痛んだ。外はすっかり暗くなり部屋は薄暗く物音もしなかった。
「まだあいつ帰ってきてないのか。うまくいって今頃いちゃついてんじゃねーだろうな」
言葉は闇に吸い込まれていった。彼はため息をついた。「二月十四日晴れ。今年のバレン
タインも一個もチョコもらえませんでした、まる」
「やっぱ欲しいんじゃない」
 予期しなかった返答の言葉に修司は激しく驚いた。振り返るとぼんやりと人のシルエッ
トが浮かび上がった。冬子だった。「おま、いたのかよ!」
「さっき帰ってきた。寒かったー」冬子は部屋の電気のスイッチを手探りでつけると、ダ
ッフルコートを脱いで椅子に放り投げた。そして振り返ると含み笑みを修司に向けた。
「お菓子会社の陰謀(キリッ)」
「なんて悪趣味なやつだ」
「ほほほ。わりとかわいーね、にーちゃんってば」彼女はあっけらかんに笑った。
「あーうるせーうるせー。その様子じゃうまくいったのかよ、つまんねーな」
 その言葉で冬子の表情が凍りついた。彼女はため息をついてダッフルコートのポケット
からラッピングされたチョコレートを取り出した。修司はすべてを悟った。
「なんだよ駄目だったのかよ、せっかく俺が一肌脱いでやったのに」彼は勤めて明るく振
舞おうとした。「まぁ罰ゲームは執行猶予つきにしておいてやるよ。俺もそこまで鬼じゃ
ない」
 冬子は修司のよくわからないフォローを無言で受け流すと、彼の隣に歩み寄り楚々と腰
を下ろした。
「な、なんですか冬子さん」
「賭けは賭けだから」冬子は目を瞑り、かるく顔を上げた。女と呼ぶにはまだ幼い顔立ち
は、しかしよく見てみれば整って見える。
0327285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 21:53:58ID:lNG3qhxI0
「いや、いやいやいやいやいやいやいいよノーカンノーカン!」
「にーちゃん意外とヘタレだよね」
「なんですと? お前後悔すんなよ?」
「挑発にすぐ乗るあたりも単純」
 さすがにこの言葉にはムッときた修司は妹の頬に手を当てると一気に自分の顔を近づけ
ていった。しかし冬子の唇数センチのところで思い改め、結局彼女の額にキスをした。
「でこちゅー」目を開けた冬子は両手で額を触りながら不満そうに言った。
「ちゅーには変わりない。くそう……賭けに勝ったのに何で俺がこんな目に」
 冬子は兄を見据えながらにやりと笑った。「残念ながらにーちゃんは勝ってないんだよ
ねー」
「何言ってんだお前は」
 不思議そうな顔をする修司に冬子はチョコレートを差し出した。修司はますます不思議
がった。「何、残飯処理?」
「残飯ゆーなっての。にーちゃん用だよ」
「義理チョコ?」
「ほんめー」
 修司は額に手を当て考え込んだ。「いや、お前……俺はお前のにーちゃんですよ?」
「いいじゃん、今年はたまたまにーちゃんが好きだったんだから」
「たまたまってお前そんな適当な。ノリが軽いし、キャラちがくね?」
「にーちゃんだからじゃない? おとこのこ……って感じはしないけど、でもあたしは好
きだよ」
「俺は恥ずかしいよ」
「ういやつういやつ。でも賭けは賭けだからねー、あたしの勝ちだし、約束はちゃんと履
行してもらうよ」
「ちょっと待ってくれ。これは詐欺と言わないか」
「計略と言いたまえ」
 どうやら自分は完全に弄ばれていたのだ。そう理解した修司は深い深いため息をついた。
貰った箱を開けると、シンプルなハートのチョコレートが一つ入っていた。手にとって冬
子を見ると彼女はどうぞ、と水平にした手のひらを上に上げて促した。一口食べてみると、
カカオの風味が強く口の中に広がった。甘味はほとんどなかった。
0328285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 22:00:35ID:lNG3qhxI0
「あんまりうまくない」
 冬子は相好を崩しながら無言で修司を見ていた。
「まじまじと見んな。早く要求言え。無理難題ふっかけんなよ?」
「大したことは言わないよ」冬子は肩をすくめた。「逆チョコちょーだい」
 修司は眉をひそめ「チョコなんてもってない」と言った。
「今食べてるじゃん」修司が手に持っているチョコレートを指差した。
 彼は今日のやり込められた悔しさから、ささやかな逆襲を思いついた。意地悪そうな笑
みを浮かべ残りのチョコレートを一気に口の中に入れてしまった。
「もうない」彼は租借しながら手にもっていた空の箱を見せた。
 隣に座っていた冬子が膝立ちになり見下ろすように修司を覗き込んだ。右手で髪を押さ
えながら左手を修司の顔へと伸ばした。
 無言の妹の不穏な動きに修司は努めて冷静さを保とうとした。「し、しかし苦いなこの
チョコ……」
「苦いもの食べた後甘いもの食べるとすごく甘く感じるでしょ」
「甘いものどこよ」修司がそう言った次の瞬間、冬子の顔が目の前に迫り唇が重ねられた。
唖然とした修司の口内に冬子の舌がするりと入り込み、器用に溶けかけたチョコレートの
かけらをすくっていった。唇が離れた後も互いの視線は睦んだままに。一方は驚愕を、一
方は妖艶を。
「ん〜苦いね」
「な、な、な――」
 絶句する修司を尻目に冬子は一つ息をつくと、再び彼を見据え、
「甘かった?」
 頬を赤らめそう言った。
0330285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 22:08:19ID:lNG3qhxI0
一日おくれで投下。
書いてて体がむずがゆくなった。

>>326 彼は勤めて明るく振舞おうとした。
努めて でした。
0331285 ◆V16zmGSouU 2010/02/15(月) 22:12:45ID:lNG3qhxI0
>>329
支援サンクス

推敲繰り返してたらなんだか頭が痛くなってきたんで寝るよ。
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