ココちゃんは隣に住む女の子だが、子どもの頃からの付き合いもあってか、
 我が『椎名』家の鍵を持っている。
 苗字は一緒だが、血はつながっていない。偶然というものだ。

「だからって俺の部屋の鍵を開けて入っていいことにはならないよな?」
「ぴゅ〜〜ぴろろろー♪」

 超絶にヘタクソな口笛もどきを噴きながらとぼけるココちゃん。
 だが、悪びれた様子はない。
 なぜなら常習犯だからだ。

「……で。何の用だ? 今日は日曜だぞ。学校もないぞ」
「日曜日だけど……バレインタインでしょ? だから……んー」

 ココちゃんは唇を突き出した。
 柔らかそうな唇は幼い頃と変わらず

「何か、忘れてませんか」
「んひぃ……忘れてた♪」

 ココちゃんは微笑みと、チョコレートを唇に挟み、突き出してきた。
 どうやら今年も甘いチョコのようだった。