バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第8部
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※ルート分岐のお知らせ
前スレ>>238「生きてこそ」以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。
経緯につきましては、新・総合検討会議スレの886以降をご参照ください。
―――灯台跡まで、あと800m。
例えるならば、サイコバリアとは「一枚の大盾」である。
前後左右、どの方向にも展開できるが、用を為すのは一方向のみである。
透子の攻撃が盾を構える正面から打ち込まれたなら、弾き返すのは易い。
しかし、盾の背後から打ち込まれたならば。
或いは、盾の側面から打ち込まれたならば。
その攻撃は無防備な知佳の柔い体に齧り付き、喰い破ることであろう。
それでも、武器がカオスであれば、問題は無い。
透子には、長剣に類されるカオスを、自在に振り回す腕力や技量が無い。
知佳はその運動音痴ぶりを既に【読んで】いる。
故に、たとえテレポート能力を駆使されようとも、
刀身が知佳を捉える前に、バリアを必要方向に移すことも可能である。
故に、今。
前面にサイコバリアを展開したまま、知佳は疾走を続けていた。
だが、その知佳の準備に透子が応える様子はない。
もう、それなりの距離を稼いだにも関わらず。
(待ち伏せ…… かな)
透子が知佳を止めるのを諦めた、とは考えられぬ。
何百万年もの間想い続けている愛しい人の復活が掛かっているのである。
その海溝の如き深き情と比せば、あらゆる事象は水溜り程の深さしか持たぬであろう。
ましてや知佳との僅かな交流など、考慮に値すらせぬであろう。
知佳は推測する。
それでも透子が走行の妨害に現れぬということは。
追跡に分が無いを悟り、戦法を待ち伏へと変更したからであろうと。
おそらくは地下シェルター付近で。
おそらくは武装を充実させて。
背水の陣を敷き、眠れる同胞たちを死守するつもりであろうと。
その場合……
殺そうとは思ってないよ―――
その誓いを、覚悟を、守ることが出来るのか?
身体能力に劣るところは無い。
それでも。
本気で、必死で、死に物狂いで向かってくるであろう相手に、
手心を加えた上でやり過ごすことなど、果たして可能であろうか?
(コレを使えば―――)
知佳はポケットに左手を忍ばせた。
指先に転がったのは小さな球体、二つ、三つ。
それは、知佳の配布アイテム。
それを、知佳は二度、使用している。
一度は悪漢を倒す為に。
一度は死地から脱する為に。
これ以上ないタイミングで、行使している。
その機を、見極めれば。
その機を、誤らねれば。
(―――透子さんを出し抜ける)
暗澹たる思いで、揺らぐ気持ちで。
それでも知佳は、疾走する。
―――灯台跡まで、あと700m。
「No。君の登場は本当に心臓に悪いな」
透子の目の前で驚愕するのは、レプリカ智機N−21。
二人が立っているのは、崩れた学校の瓦礫の中。
「残念な結果ではあるが……」
校舎の放送施設はやはり死んでいたのだと。
透子が夕刻に放置した通信機を回収したものの、
やはり本拠地との通信は不可能であったのだと。
N−21は突如目の前に姿を表した透子に、
己の調査任務の結果を報告しようとした。
「それはいい」
「銃を貸して」
しかし透子はレプリカの説明を遮った。
前置きも説明も無く、N−21が腰から下げる銃器へと手を伸ばした。
時間を惜しむ余りに。
シェルターまでの正確な距離の程は、透子には判らぬ。
しかし、知佳がそこにたどり着くまで、あと五分と掛からぬ。
その程度の事は理解できていた。
その焦りが、行動に表れていた。
「Why? 御陵透子、なぜ君が銃を欲する?
銃を預けるにやぶさかではないが、理由は聞いておきたいものだね」
「仁村知佳が」
「シェルターに向かってる」
「Yes、それは確かに必要だ。 風雲急を告げている」
N−21は腰に提げた軽銃火器―――グロック17を透子に渡した。
透子は魔剣カオスを放り投げ、銃を受け取った。
《うぉっ、乱暴じゃな!》
カオスの苦情が耳に届く前に、透子は消えた。
知佳を止めるべく、追跡を再開した。
「NO…… 事情はわかるが乱暴なことだな。
同僚の無礼、私が成り代わって謝罪させてもらおう、魔剣カオス」
《えーと…… ともきんちゃんでよかったかの?》
「Yes、魔剣カオス。 卑猥なのはNoと、最初に断わっておくよ」
《……つまらん嬢ちゃんじゃの》
―――灯台跡まで、あと600m。
仁村知佳が、走っている。
暗い闇の中を、一人、走っている。
既に周囲は磯ではない。
潮の臭いも届かない。
構造物も樹木も無い草原を、北々東へと走っている。
タン!
音は知佳の背後に聞こえた。
風圧は知佳の真横に感じられた。
銃撃である。
背後から放たれた弾丸が、知佳の脇を疾り抜けたのである。
(待ち伏せじゃなくて、武器の調達だったのね!)
知佳は振り返る。
背後10mほどの距離に、後方に転倒しかけている透子がいた。
恐らくは始めて発射する銃の反動に膝を崩されたのであろう。
その臀部が地面に衝突する直前に、透子は消えた。
「―――!!」
知佳は咄嗟に身を翻す。
直感は正しかった。
振り返った正面に、透子がテレポートしてきていた。
既に指がトリガーに掛かっている状態で。
タン、タン、と。
軽い発砲音、二発。
一発目は知佳の腹部を目掛けて飛来した。
銃弾はサイコバリアに弾き飛ばされた。
二発目は明後日の方向に逸れていった。
一発目の反動にて銃口が踊ったために。
そしてまた、透子は消えた。
知佳は、足を止め、周囲を警戒する。
一秒、二秒。
吸気、呼気。
透子は現れない。
(これは…… 危険だよ)
サイコバリアの利点と欠点は、先程述べた。
襲撃者が透子であり武装が剣であることでの知佳の有利も述べた。
しかし、銃器であれば、話は変わる。
速度。
射程。
威力。
その全てが、透子の運動能力に依存せぬ故に。
対してサイコバリアは、知佳の意思の下に展開されるものである。
発現にも方向転換にも、知佳のコントロールが必要になる。
その速度は、果たして弾丸よりも速いのか?
仮に早いのだとしても、別方向から間髪入れずに、射撃されたなら。
バリアの方向転換は間に合うのか?
知佳は周囲を見遣る。
遮蔽物は無い。
身を隠す手立ては無い。
タン、と。
知佳の一瞬の迷いを衝くかの如く、凶弾が迫り来た。
反応、左側面。
バリア旋回、左回り90度。
(間に合―――)
弾丸は念動の壁に喰らいつくが、食い破ることなく落下する。
(―――った!)
タン、と。
知佳の一瞬の安堵を衝くかの如く、凶弾が迫り来た。
反応、右後方。
バリア旋回、右回り120度。
そのバリア移動、100度ほどのタイミングで、弾丸は走り抜けた。
知佳の右足、太腿を掠めて。
(熱っ!)
擦過傷では済まなかった。
引き裂かれた皮膚から血が滲んでいた。
(このままじゃやられちゃう……)
知佳は、ポケットに左手を忍ばせる。
小さな球体の、虎の子の、支給品。
知佳はそれを、シェルターに侵入してから使うべきだと考えていた。
逃げ場も回避する空間も無い密室にこそ出番があると決めていた。
しかし、武器・銃器と移動手段・テレポートという組み合わせの妙。
その相性の余りの良さに、知佳は行く手を遮られた。
ほんの少しの油断で、命を奪われる危険に追い込まれた。
(他に手段、無ければ……)
知佳の左手は、未だポケットの中にある。
―――灯台跡まで、あと500m。
知佳がポケットに手を突っ込んだ。動きが止まった。
それはあからさまな隙であった。
透子はグロックのトリガを握り、発砲する。
しかし、弾丸は知佳を掠めもしない。
狙い定まらぬ射撃であった為に。
集中力を欠いた射撃であった為に。
(私は殺せる……)
そのはずであった。
しかし、銃撃の感触から自分の有利を確信した時。
気持ちだけの問題でなく、現実として知佳を殺せるのだと実感した時。
透子の胸は、痛んだのである。
とうの昔に失ったと思っていた感情が、切なく蘇ったのである。
(殺せるけど……)
知佳がシェルター襲撃を諦めてくれたらと、透子は思う。
殺せる覚悟は今なおある。
だが、決して殺したいわけではない。
殺さずに済むなら、それに越したことはない。
いっそ降伏勧告でも行おうか。
そう思い、口を開こうとした矢先に―――
透子は読んでしまった。
《あれれ? 決着つかない雰囲気? つまんないなー、肩透かしだなー》
蒼鯨神が、機嫌を損ねたという記録を。
それは、透子の希望の芽が摘まれる可能性を示唆していた。
それは、情に流されかけた透子を、非情の本流に戻させるに十分な記録であった。
(殺すしか……)
思い直した透子は、きょろきょろと周囲を警戒する知佳を見つめ、
為すべき必殺の方策を練り上げる。
まず、バリアの背面から、遠距離にて撃つ。
その弾丸が知佳に達する前に、テレポート。
出現ポイントは側方至近距離。すぐさま連撃。
遠距離のものと、近距離のもの。
その銃弾が同時に知佳に届くことが要である。
即ち――― ひとり十字砲火である。
透子はここまでの六度の銃撃の結果から、あたりをつけていた。
サイコバリアの欠点と、己のテレポートの利点を把握していた。
知佳の危惧は正しく、知佳が立つのは絶対の死地であった。
(……ばいばい)
空間跳躍。
知佳の背後15m。
―――知佳がポケットから左手を出した。
即座に射撃。
即座に空間跳躍。
―――知佳が左手に握った何かを地面に叩き付けた。
知佳の右側面5m。
即座に射撃。
移動、照準、射撃、タイミング。
土壇場で奇跡の如き集中力を発揮した透子は、
それら全てを理想通りに成し遂げた。
必殺のクロスファイアの完成である。
弾丸は疾り抜ける。
北から―――
東から―――
知佳の居らぬ空間を。
今の今まで、確かにいたはずの空間を。
(―――!?)
ばさばさと。
翼のはためく音が背後から聞こえ、透子は振り返る。
距離、目測にして15m。
そこに、知佳がいた。
大きく展開したエンジェルブレスが、知佳を空へと舞い上がらせる。
ありえない移動であった。
姿を消した瞬間に他の場所に移るなど、
透子の如き瞬間移動でもせぬ限り不可能であった。
(知佳にテレポート能力は)
(無いはず―――?)
透子は状況を飲み込めぬ。
飲み込めぬがしかし、知佳が飛び去ろうとしていることは理解した。
透子は、知佳の真下にテレポートする。
銃口を真上に向けて発砲する。
しかし弾丸は20mと昇らぬうちに力なく頭を垂れて、
あとは重力に引かれるままに、落下してしまった。
その結果を見届けてか、知佳は飛んでゆく。
透子の銃の届かぬ高度を飛んでゆく。
北々東へ。
ザドゥと芹沢が眠る地下シェルターへ。
―――灯台跡まで、あと400m。
仁村知佳にテレポート能力は無い。
それは事実である。
では、今見せた動きはなんであるのか?
いや、事は今だけに止まらぬ。
森の中で海原琢磨呂に詰め寄った際に為した不可思議な移動が、
新校舎にてDレプリカから逃走した際に壁を透過した挙動が、
テレポートで無いとするならば、一体何であったというのか?
回答は矛盾する。
知佳が為したそれら三つの機動は、テレポートであった。
回答は矛盾しない。
それは知佳の能力に非ず。配布アイテムの恩恵であった。
テレポストーン―――
今は亡きシャロンの出身地である影の一族の地下帝国。
遠く遥かな剣と魔法の世界。
そこであたりまえに売買され、使用される道具である。
効能は、瞬間移動。
但し透子のそれに比して、制約も多い。
同一階層であること。
自分が通過したことのある場所であること。
遠距離に過ぎぬこと。
等々の制約はあれども、魔力も超能力も必要とせず、
この小石を足元に叩きつけさえすれば瞬間移動が成るのであるから、
緊急避難・奇襲などに於いては、まさに虎の子であると言えよう。
テレポートには、テレポートで処す。
確かに知佳は予想通りに、透子を出し抜くことに成功した。
成功したが、これで透子は警戒するであろう。
もう虚は突けぬ。
手元に残る二個のテレポストーンを以ってしても。
(使っちゃったな……)
それでも、使いどころは間違っていない。
先刻の知佳は本当に死の崖っぷちに立っていた。
転移の判断が一瞬でも遅れれば、十字射撃のどちらかが、
知佳の体を貫いていたであろうから。
(しかたなかったんだよ、うん。 頭を切り替えないと)
知佳は沈む頭を切り替えようと、こめかみに拳を軽く当てた。
そこに、また―――
銃声が劈いた。
知佳の耳に、はっきりと届いた。
銃弾は貫いた。
濁った羽根、エンジェルブレスを。
「わわっ!?」
不幸中の幸いであった。
羽根は念動力が形を持ったものであり、目には見えども物質ではなく、
打ち抜かれたとて知佳にダメージを与えるものではなかった故に。
「嘘……」
しかし、知佳は戦慄した。
空中であれば、透子の銃撃は無いと考えていた。
そうではなかった。
油断していた。
タン!
またしても、銃弾は逸れた。
しかし、知佳の怖気は益々強まった。
下方では無く上方から銃撃されたから。
地面では無く天空から銃撃されたから。
「嘘じゃない」
「現実」
知佳の耳に、抑揚の無い聞き慣れた声が届いた。
知佳の耳に、自らの翼ならぬ風切る音が届いた。
知佳はその声と音の発生源、上方を見遣る。
透子が、落下してきていた。
そして、消えた。
即時、出現。落下。
即時、出現。落下。
知佳は、透子の瞬間移動能力を甘く見積もっていた。
足場無き位置には跳べないとタカを括っていた。
透子の移動に、時間も場所も関係ない。
存在できるだけの空間さえあれば、どこであろうと、即時に。
出現。落下。出現。落下。出現。落下。出現。落下。
出現。落下。出現。落下。出現。落下。出現。落下。
テレポートを小刻みに繰り返せば。
透子は、スカイウォーカーとなる。
《凄ーい! 今度は空中戦だ! どっちが勝つかな、どっちが勝つかな♪》
大空は、決してセーフティーゾーンではなかったのである。
むしろ、危険地帯なのである。
なぜなら、テレポストーンが使用できない故に。
それは、地面に叩きつけて発動するアイテムであるが故に。
(為す術がないなら…… 前に進むしかない!)
覚悟を決めた知佳が、速度を上げた。
―――灯台跡まで、あと300m。
空中でテレポートを繰り返すという透子の閃きは、成功した。
ぶっつけ本番にしては、上出来であった。
今、知佳がひたすら速度を増したのは、
透子に意識を向けぬのは、
バリアを上方に展開したまま動かさぬのは、
透子が知佳を追い詰めたことを、如実に示していた。
(……決める!)
タン! 側方に逸れた。
タン! 二の腕を掠めた。
タン! 下方に逸れた。
タン! 脇腹を貫いた。
タン! 大きく逸れた。
タン! バリアに弾かれた。
タン! こめかみを掠めた。
カチ!
カチ!
怒涛の連撃は、たった七発で終了した。
さらに二度の空トリガーを引いて、透子は漸く気付いた。
銃口から弾丸が発射されていないことに。
グロック17。
その名の通り、装弾数は17発であり―――
透子はその全てを、撃ち尽くしてしまったのである。
弾数のことなど、計算に無かった。
素人にありがちな判断ミスであった。
(新しい武器を……)
どこに取りに行けばいいというのか。
それを取って戻る時間の猶予はあるのか。
目を凝らせば、眼下に。
北々東の向こうに。
崩れた灯台の瓦礫の山が見えているというのに。
知佳は穿たれた脇腹から血を滴らせ、
それでも速度を緩めずに、
透子を振り返ることもせずに、
ひたすらシェルターを目指している。
まずは十数秒。それだけの時間で、知佳はシェルターへとたどり着き。
さらに十数秒。それだけの時間で、知佳はザドゥと芹沢を永眠させる。
(なにがある?)
(なにができる?)
こうして透子が迷っている間にも、
十数秒のうちの数秒が経過していた。
あと数秒で方針を決めねば終わる。
あと数秒で行動を起こさねば終わる。
(……なにもない!)
そう、武器は、何も無い。
有るとすれば……
(私……だけ!)
透子は、瞬間移動した。
知佳の真上に。
サイコバリアの真上に。
透子はクッションの如きそれに柔らかく受け止められる。
知佳は透子のその動きにも反応しない。
脂汗を流し、歯を食いしばり、
ひたすらシェルターへと突き進む。
透子はサイコバリアの縁を掴み、身を乗り出し。
知佳の足首を、両腕で抱えると、それにぶら下がった。
「……つかまえた」
―――灯台跡まで、あと200m。
この異能同士の追跡劇の最終局面は、キャットファイトとなった。
結局、極限まで追い詰められれば、それなのである。
矢尽き盾折れれば、人には、肉弾戦しか選択肢がないのである。
普遍的な、生き物と生き物の争いの形である。
唯一、普遍的でない点を挙げるとするならば。
地上30m超の空中で行われている点である。
不意に足を掴まれた知佳は、その重みにバランスを崩す。
瞬間、翼の制御を失った。
落下、数m。
呼吸を整え、翼を力いっぱい羽ばたかせ、漸く落下は止まったものの、
透子は、知佳の足にぶら下がったままであった。
知佳は、透子の顔を見た。
必死の形相であった。
額に汗は滲み、端正な顔を醜く歪ませて。
瞳の焦点を合わせて、奥歯を噛み締めて。
親の仇とばかりに、知佳を睨みつけていた。
透子は、知佳の顔を見た。
必死の形相であった。
額に汗は滲み、あどけないな顔を醜く歪ませて。
瞳の焦点を合わせて、奥歯を噛み締めて。
親の仇とばかりに、透子を睨みつけていた。
「離して」
「できない」
知佳のサイコバリアは霧消していた。
念動力をフィンに一点集中したが為に。
なぜならば。
フィンの制御を失うということは、飛行不能であるを意味し。
それは逃れられぬ墜落死へと、繋がるからである。
透子の狙いも、将にそこにあった。
故に透子は、なんとしても、知佳を叩き落さねばならぬ。
脹脛に爪を立てる。
ぶら下がり、大きく揺れる。
かと思えば、急に転移して。
知佳の小さな背に、ボディプレスを仕掛ける。
知佳も、透子の意図を理解していた。
故に知佳は、なんとしても、透子を振り落とさねばならぬ。
蛇行して振り払う。
旋回して肘を入れる。
転移の隙に、体勢を整えて。
空中でバック転し、透子の背面を抑える。
「離して」
「できない」
銃撃ではない。
念動ではない。
武器でもない。
道具でもない。
喰らい合うのは、互いの肉と肉、意地と意地。
ぶつけ合うのは、互いの骨と骨、想いと想い。
しのぎ合うのは、互いの血と血、願いと願い。
命と、命。
「離して!」
「できない!」
知佳の眼前に現れた透子が右手を伸ばす。
透子のその手を知佳が左手で払う。
透子の払われた腕は知佳の髪を掴み、引っ張る。
知佳は引かれた勢いに乗り、透子の腹に頭突きを食らわす。
握られたままの髪が纏めて引き千切られる。
知佳が喚く。
透子が呻く。
二人が吼える。
指を使う。爪先を使う。肘を使う。膝を使う。
噛み付く。引っ掻く。踏みつける。しがみ付く。
なんと醜い戦いであろうか。
なんと剥き出しな戦いであろうか。
なんと生々しい戦いであろうか。
《ファイトだファイトだ、とーうこちゃん♪ 負けるな負けるな、ちーかーちゃん♪》
ルドラサウムの興奮が最高潮を迎えた頃。
ついに戦いは、幕を閉じる。
知佳の脇腹に。
グロック17が唯一穿ちぬいた風穴に。
透子が指を差し込んだのである。
「うぁあああ!!」
これまで感じたことの無い激烈な痛みが、知佳の脳髄を焼いた。
そして一瞬、失った。翼の制御を。
(落ちる―――)
確実な死の予感が、知佳の焼かれた脳髄に冷や水を浴びせた。
その瞬間、弾けた。周囲の空間が。
(―――落ちたく無い!)
知佳の頭の中には、それだけしかなくなった。
死に物狂い。
その意味を、知佳ははじめて知った。
落下、反転、上昇。
知佳は透子をぶら下げたまま、天上を目指した。
昇れば落ちるから遠ざかる。
落ちるの反対は昇る。
そんな単純な考えに凝り固まっていた。
ぐんぐんと、知佳は上昇する。
ロケットの勢いで。
100m超の高度まで。
その重力加速度が、決め手となった。
知佳の肉体にとって、その重力加速度は、既知の衝撃であった。
念動力の実験と称された病院での訓練にて、幾度も経験してきた。
透子の肉体にとって、その重力加速度は、未知の衝撃であった。
故に不可避の急性貧血が、透子の視界をブラックアウトさせた。
のみならず、意識も薄く延ばされ、四肢から力が失われ―――
「……あ」
透子が、口を開いた。無意味な発声であった。
呟きは木霊することなく、知佳の後方へと、下方へと、落下した。
―――灯台跡まで、あと100m。
透子を振り払った。その実感に知佳は安堵した。
安堵はエンジェルブレスの安定をもたらした。
故に知佳は無思慮な上昇を止めた。
透子は、すぐにテレポートしてきて。
透子は、すぐにしがみついてくる。
そう予想し、身構えた知佳の元に、しかし透子は現れなかった。
―――ぱちゃ。
下方から。地面から。
水風船が弾けたかの如き音が届いた。
小さい音であるにも関わらず。
知佳の耳に、はっきりと聞こえた。
いや、聞こえる筈はない。
それは、幻聴であった。
或いは、予兆であった。
虫が知らせた不吉の調べであった。
透子が噛んでいた腕が、痛む。
前歯の一本が、そこに刺さったままになっていた。
―――透子はまだ、現れない。
また、戦法を変えて来るのか。
そんな空々しいことを夢想しても。
―――透子はまだ、現れない。
透子を殺す心算は無い。
そう誓ったのは、果たして誰であったか?
―――透子はまだ、現れない。
肉弾戦になったとき、確かに思ったはずだ。
透子を振り払い、突き落とすのだと。
それは、殺意なのではないか?
―――透子はまだ、現れない。
自分は友の希望を踏み躙って。
裏切って。
誓いを破って。
その果てにこの状況が、ある。
―――透子はもう、現れない。
顛末を見届けること。
それは自分の責任であるのだと、知佳は覚悟を決める。
目を背ける訳にはいかないと、知佳は自分を激励する。
無防備に瞑目。
深呼吸、数度。
知佳は瞳を閉じたまま、降下する。
下りること80m余り。
深呼吸、数度。
そこで知佳は漸く震える瞼を開いて。
目線をゆっくりと、下方に移す。
「ああっ……」
花が、咲いた。
地面に撒き散らされた透子を見た知佳の、感想である。
御陵透子は―――
加速度に、決して離さぬはずの知佳から引き剥がされ。
遠心力に、テレポートを思う間もなく意識を刈り取られ。
重力に、100mの上空から、身構え無しに引っ張られ。
緑の草原に、鮮やかな薔薇の花を咲かせたのである。
その命と、引き換えに。
《きゃはははは! 知佳ちゃんの、かちー♪》
【御陵透子:死亡】
―――――――――主催者 あと 3 名
↓
(ルートC)
【現在位置:J−5 地下シェルター付近 上空】
【仁村知佳(40)】
【スタンス:主催者打倒
@ザドゥと芹沢を殺す
A手帳の内容をいくつか写しながら、独自に推理を進める
B恭也たちと合流】
【所持品:テレポストーン(2/5)、まりなの手帳、筆記用具とメモ数枚】
【能力:超能力、飛行、光合成、読心】
【状態:疲労(小)、精神的疲労(小)、出血(中)、銃創(脇腹)、念動暴走(小)】
【備考:定時放送のズレにはまだ気づいていません。
手帳の内容はまだ半分程度しか確認していません】
※透子のグロック17は落下の衝撃で大破しました。
※魔剣カオスはレプリカ智機N−21が持っています。
仁村知佳には、二重の戒めが掛けられている。
戒めの一つは、ピアスである。
念動力の出力をコントロールする際の補助具であり、
知佳の意思によらぬ力の遺漏を閉じ込める役割を持っている。
透子の契約のロケットに類するアクセサリーである。
戒めの二つは、内服薬である。
体外に発散できぬエネルギーは精神を不安定にさせ、臓器に負担を掛ける。
薬とはそれらの不調を押さえ、緩和する為の処置であり、
種類は十を越え、一日あたりの摂取量は100gにも達している。
戒めは、知佳の平和な生活を保障する手立てであった。
戒めは、知佳が愛する者を傷つけぬ為の手段であった。
その戒めが、今は無い。
ピアスは砕けている。
内服薬も、二日も摂取していない。
それでも、知佳の心が穏やかであるならば。
知佳の頭が冷静であるならば。
その意思で以って、ある程度の暴走を押さえ込むことが出来る。
内にエネルギーを溜め込み、耐えることが出来る。
それが、透子と死の鬼ごっこを開始するまでの、知佳の状況であった。
現在の彼女は……
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
(ルートC・2日目 PM11:30 J−5地点 灯台跡)
ぴしりぱしりと、静電気が走るかの如き音がしていた。
さくりがさりと、砂を蹴散らすかの如き音がしていた。
「はあ、はあ……」
光差さぬ灯台跡にたどり着いた小さな光は仁村知佳。
血に塗れた脇腹を押さえ、息を荒げて。
ふらふらと危なげな足取りで歩いている。
件の音は、その知佳の周囲で鳴っていた。
静電気が走るかの如き音とは、大気が切り裂かれる音である。
砂を蹴散らすかの如き音とは、瓦礫が砕ける音である。
よく目を凝らせば―――
念動力の視覚的特長である、薄い油膜の如きうねる虹色があった。
知佳を中心にアメーバの如き伸縮を見せていた。
その伸びる先で、次々と、大気と瓦礫の破砕が発生しているのである。
行為に意味などない。
知佳は、大気や瓦礫を壊そうとは考えていない。
そもそも、そんな無象に意識を傾けてはいない。
念動力が暴走しているのである。
暴走とは破壊の権化と化すを意味する。
外界に遺漏する念動力が、老若男女善人悪人動物植物器物建物
あらゆる全てに分け隔てなく、押し捻り拉ぎ潰すのである。
こうなることを、以前の知佳は忌避していた。
今の知佳は違う。
透子を殺してしまった罪悪感に、
不殺の誓いを破ってしまった自責の念に、
知佳の心が、ささくれ立っている。
暗澹たる想いが高揚している。
故に暴走の現状を、知佳は受け入れている。
制御するを捨て、荒々しい感情の為すがままにしている。
常に内に向かっていた力が、外に向かっている。
押さえ込んでいた心の壁を、取り払っている。
「はあ…… はあ……」
凶弾に穿たれた脇腹から、出血は止まらない。
それがかなり危ない状況に差し掛かっているのだと、知佳には判っていた。
逆に、直ちに適切な止血と処置を行えば、命に別状無いことも判っていた。
それでも、知佳は止まらない。
どこまでも、シェルターを目指して進んでゆく。
(ひとまず殺す。必ず殺す。少なくとも殺す。一度は殺す……)
知佳は、固執している。
殺してはいけない透子を殺してしまった自分には、
目的の為に踏み躙ってしまった自分には、
その目的を果たす責任があるのだと、
ザドゥと芹沢を殺す義務があるのだと、
この身と引き換えにでも為さねばならぬのだと、
そのような考えに凝り固まってしまっている。
強い責任感の、負の側面に支配されている。
「……ここだね」
知佳の眼前にはシェルターのドア。
遂に知佳は目的地にたどり着いた。
固く閉ざされたそれが、最後の関門であった。
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「No。透子も分機たちも無用心なことだな。
扉も閉めずに、敬愛すべき首魁様と同僚を放置するなどとは」
シェルター内で爪を噛み噛み、独り言を呟くのは椎名智機。
彼女の白衣は埃や泥に穢れ、インナーは絞れるほどの汗に塗れ、
硬質な髪までも鳥の巣の如く乱れていた。
一目に判るほど、憔悴の色を濃くしていた。
30分ほど前。
地下道を抜け、I−4に巧妙に隠してある出入り口に姿を現した智機は、
ジンジャーを静音モードに切り替えて移動した。
怯えながら、慄きながら、そろりそろりと息を潜めて移動した。
安楽椅子管理者・椎名智機が戦場に身を晒したのは、
実は、この二日間で初めてのことであった。
恐ろしかった。
不安だった。
生きた心地がしなかった。
漸く地下シェルターにたどり着いてみれば、透子もレプリカも居なかった。
ベッドに眠る芹沢と、ベッドから落ちて眠るザドゥしかいなかった。
智機を守ってくれる存在は、盾となるべき存在は、そこに無かった。
故に智機の不安は解消されず、故に智機は爪を噛んでいる。
「今ここで誰かに襲撃されたら……」
誰か、と、智機は対象を特定せずに口にはしたものの。
首輪を解除した六人は、本拠地跡に向かっているか魔獣と対峙しているであろうし、
しおりも森の中で泥の様に眠っており、暫くは目覚める様子もなかった。
候補となるべき対象者は一名しか該当しない。
「参加者40・仁村知―――」
がちゃがちゃと。
シェルターの扉のノブが二度、回された。
「鍵、掛かってるね」
次いで、幼い声が聞こえた。
智機はすぐさま声紋認証を行う。
「知らない場所だから、テレポストーンも使えないし」
幼い声は続ける。
智機は平行して配布アイテム情報を検索する。
「うん。扉、壊そう」
(声紋確認。アイテム情報一致。―――判断確定)
扉の向こうにいるのは40・仁村知佳である。
噂をすれば影が差す。
諺は時に真実を示す。
智機の漠然と予感していた最悪の事態が、現実として差し迫っていた。
「だ、大丈夫さ、大丈夫。
このシェルターは某国の大統領が所持している物と同規格。
地震で有ろうと爆撃であろうと耐え切る設計さ。
たかが念動力程度、恐れるものではないよ!」
饒舌は不安の裏返しであった。
トランキライザは勤勉に働き、恐怖感は丸められたが、
それは恐怖の限界値にての安定を得られたに過ぎぬ。
智機は身を竦め、様子を伺う。
「Yes、大丈夫、大丈夫……」
しかし、その不安が現実となることは無かった。
叩きつけるような音が数度。
引き裂くような音も数度。
音はその度毎に大きくなっていくが、それだけであった。
「はあ、はあ…… やっぱりダメだよ。私のちからでも、壊せない」
知佳の破壊を諦めたかの如き口ぶりに、智機は胸を撫で下ろす。
このシェルターを逃亡先に選んだ自分の慧眼を褒めてやりたい。
自己肯定感が不安の情動パラメータを緩和させ、心に若干の余裕が生まれる。
しかし智機は再び凍りつく。
「じゃあ、扉を壊さなくてもいいか。中身を、壊そう」
扉の向こうから、不可解かつ不吉な作戦変更の宣言が為された故に。
変化はすぐに発生した。
家鳴りの如きラップ音と共に、振動が発生したのである。
最初、智機はそれを地震なのだと判断した。
しかし、違った。
揺れているのは室内そのものであり、空間であった。
(これは……?)
まず、ボールペンが机の上で踊った。
次いで、ハンドライトや置時計の、小物電化製品が小刻みに震えた。
テレキネシスによる乱気流が、にわかに発生しようとしていた。
爆撃も大地震も洪水も防ぐ重厚な扉をいともあっさり透過して、
その力の奔流が、室内に流れ込んできたのである。
(No! 念動力には、こんな使い方があったというのか!?)
机の上で踊っていたはずのボールペンが、天井に突き刺さった。
ハンドライトは浮揚し、置時計は壁に叩きつけられ、大破した。
智機の白衣とスカートは捲れ上がり、ザドゥと芹沢が横たわるベッドは軋んだ。
力の奔流は益々強まる気配を見せている。
「に、仁村知佳! 取引をしよう!」
智機が声を裏返して、叫ぶ。
論理演算回路が状況を正しく把握し、正しく予測した故に。
シェルターの出入り口は、知佳が立ちふさがる扉、ただ一つ。
この念動竜巻から逃れる手段が、今の智機には見出せなかった故に。
「……その声には聞き覚えがあるよ。あなたロボットの人ね?」
「ああそうだ。ロボットだ。オートマンだ。椎名智機という」
「椎名さん。あなたがそこにいてくれて良かったよ。だって……
三人も纏めて殺せるんだから!!」
知佳は智機の提案に耳を傾けない。
智機の存在を把握して、却って破壊衝動を色濃く表した。
「きみを優勝させてやる! そのためのあらゆる支援に尽くしてやる!」
局所的ツイスターは勢いを増してゆく。
小型軽量のあらゆる道具や調度が、渦巻く嵐に飲み込まれている。
もう、智機は立ってなどいられない。
ベッドの足にしがみ付き、奔流に抗うのが精一杯である。
「私は透子さんを殺しちゃったから……
その妨害を乗り越えてここに来たんだから……」
有り得ない言葉が、知佳の口から漏れていた。
まさか、という思いが智機の脳内を駆け抜ける。
(透子が、死んだ…… だと!?)
あの底知れぬ透子が。
瞬間移動を使いこなす化生が。
自分が唯一恐れる同僚が。
既に殺されていようとは。
この少女にそこまでの力が備わっていようとは!
「だから、私は、貴女たちを殺さないわけにはいかないんだよ。
だから、私は、透子さんを殺した責任を取らなければいけないんだよ」
知佳の理論は破綻している。
前後の関係のつながりが断絶している。
それでも智機にははっきりと判った。
その意志を短時間の間に曲げる事は不可能であると。
その不条理な理を唯一絶対の掟としているのだと。
「全部ぐちゃぐちゃにかき混ぜてあげるよ。
部屋の中をジューサーミキサーにしてね。
あなたも、ザドゥも、芹沢も、みんな、
ミックスジュースになっちゃえばいい!」
無軌道に、奔放に、室内は荒れ狂う。
ああ、ついには智機すら。
ああ、ザドゥや芹沢すら。
渦巻く念動に捕らわれて、その身を宙に浮かせてしまった。
智機は安定した思考能力を失ってしまった。
制動系の安定に、メモリの大部分を確保された故に。
そうして壁に叩きつけられ、天井に叩きつけられ、床に叩きつけられ、
ザドゥや芹沢と衝突して、家具や家電と衝突して。
擦れ、崩れ、潰れ、千切れ、砕け―――
やがては知佳の宣言どおり、ポタージュスープと成り果てるのであろう。
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XX(ダブルエックス)障害者の暴走とは、超常のリミットブレイクを意味する。
知佳の読心力もまた限界を突破し、その射程距離を伸ばしていた。
意志に関わらず、範囲内に存在する者の心が勝手に流れ込んで来る。
【No私の体が浮いているオートバランサーが制御不能にな】
【った制動系がメモリを占拠する思考にリソースを割り当て】
【られない交渉しなければ仁村知佳を止めでもメモリが思考】
知佳は扉の向こうからの智機の混乱ぶりを読み取って、揺るがぬ勝利を確信する。
智機に反撃の手は皆無であると読み取って、目的の達成を確信する。
通常の念動での戦いには自覚的な制動が必要である。
しかし、今の知佳にそのコントロールは必要はない。
精密な動作も狙い定めも必要ない。
部屋の中の何を巻き込もうと、
部屋の全てが壊れようと、
その中にいる無抵抗の三人を殺せば良いだけであるから。
ただ、猛るテレキネシスを、感情の昂ぶるままに暴れさせればよい。
【 間に合った? ザドゥたちは無事? 】
背後に突然発生した第三者の思考。
同時に知佳の身体に電流が走った。強烈に。
「……っ!?」
電流とは、比喩ではない。
いつしか接近していたレプリカ智機のスタンナックルを、
知佳は無防備なうなじに受けたのである。
100万ボルト×25ミリアンペア×1秒。
その衝撃は命を奪うほどのものではないが、
全身を麻痺させるには十分な威力であった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています