■捻くれモノの学園青春物語 〜俺と彼女の裏表〜■SC H2
『俺ガ〇ル』を読んだ桜庭丸男が漂白剤に浸かりながら書いたお話。
あの『ChronoBox』のライターが描く青春とは? と楽しみにしていたが、複数ライター隠しで実態は全体の40%しか担当していなかった。
更にtrue√らしきヒロインが別ライターという残念な事件があったものの、桜庭氏担当の唯&雫の√は捻くれモノというテーマを踏まえ、且つ本作の特徴のミニゲームがシナリオに活用された意欲的で面白いものだった。
雫は作品中ダントツの捻くれヒロイン。
設定からして性格最悪のストーカー幼なじみで、共通√の言動とキャラの魅力を全て隠した地味状態のイラストで大いに損していた。
幼なじみ好きな私をして『ハズレ幼なじみ』と表現させる程どう控えめに言ってもクソ女だったが、シナリオがそれらの下馬評をひっくり返した。
主人公への好意の理由は彼女の人格形成にまつわる過去が関するものだったが、その過去に縛られ続ける自分と青春倶楽部のヒロインたちと知り合って変わりゆく主人公の間に心象的な距離を感じていた。
雫の世界では主人公だけが光で、彼がいなくなったら本当に独りぼっちになってしまう。そんな後ろ向きな動機ではあったが、心をすり減らしながら、泣き叫びながらも想いを告げて自分の弱さを受け入れたその告白シーンは間違いなく本作随一の名シーンだった。
これまでの人生ずっと捻くれたまま生きてきた1人と1人が
「俺達は、1人じゃ生きていけないんだ。捻くれた生き方をし続けて……普通の連中のから大幅に後れを取った者同士ーー馴れ合って、寄り添って、カッコ悪く生きていこうーー」
と、2人になり、世界を愛し始める物語。それが雫√だ。