>>134
(振り向いた女の顔は「おやっ」という表情から束の間、視線が左上の方に向く)
(この人どこかで会ったような気が…とでも思っているんだろう)
(こういう時、この顔は便利だ。見た目はいい。だが大きな特徴はなく「雑誌やテレビで見かけるちょっとカッコいい男」…)
(そして、その後街角などで違う二枚目でも会えば綺麗さっぱり記憶から消去されてしまう)

(自分の目の前に座っている男に何やら話しかけているが内容までは聞こえない)
(ヒールを履いて少しの揺れでさえ体勢を崩してしまう女を立たせて座っている男)
(男の風上に置けない腐ったヤツだ。空気くんと呼ばれている男でも一緒にいる女性は何のも迷いもなく座らせる)
全く世の中は理不尽さで満ちている…。
(激しい憤りが三度、声になって出てしまったが、前に座る男との会話に夢中になっている女には聞こえはしないだろう)

地獄の入り口っていうのは真後ろにあったりするんだよ…
(電車の揺れを利用して前に立つ女に密着すると口を女の耳に近づけ低く囁く)
(生まれたての小鹿のように無防備で無力な女を狩ろうと思っていた)
(だが…番いでいる雌鹿、自分にはすぐそばに庇護者がいると安心しきっている女を庇護者が見ている前で
地獄へと叩き落とす…そっちの方が断然狩人冥利に尽きるってものだ)
(素晴らしい…なんて素晴らしいんだ)
(これからのことを考えただけで股間のモノは既に痛いほど勃起している)
(薪割用の斧のように狂気に満ちた凶器…そんなものが突然自分の尻の割れ目に押しつけられたら…)
(この女はその美しい顔をどんな風に歪めるんだろう)

くっくっくっ……
(気づけば口元からは楽しげな笑みが漏れてしまっている)