きつみはもふもふふもふもふ
うんまあ・・・のんびりといこうや、美味いもの食って昼寝して・・・
おでんは煮込んだほうが美味しいよな、今のうちに仕込んでおこうか
きつみはの好きな餅巾着もたくさんいれてやるからな
でも餅は煮ていると溶けるから途中で入れたほうがいいかな・・・でも味の染みたのも捨てがたい・・・うーむ・・・

その土地は彼の条件を満たしていた
人里から離れたその土地は自然が豊かで、人間の手が入るのを拒んでいるかのようだった
全財産をつぎ込んで辺り一帯を購入すると、彼はある計画を実行し始めた
「ん?ここに穴が・・・ちょうどよい、これを利用しよう」
ある大木の根元に大き目の穴を見つけ、これを更に深く大きく拡張していく
人間の匂いなど残さぬよう慎重に、決してアレに気取られることの無いように・・・
かなりの時間を使い、目標の大きさにすることができた
そして目立たない場所に高性能小型ソーラーパネルを設置し電気も確保した
穴の内装も整え、家具も設置し水周りも完備した
水は穴を掘っていた時にたまたま湧き出た地下水を利用し、下水は高性能なバイオ式にしてエコにも配慮
「キッチンとトイレと風呂・・・食料保存庫は主に果物をたくさん置き、そして寝室と・・・ベッドは大きめにして正解だったな
出来るだけ深く掘ったから外気より温度は変化しにくいし、いざというときの為のエアコンもあるし」
まるで彼の為の変わった家を作っている様だが、実際はもっと別のものだ
各部屋にある監視カメラ・・・そこに映し出される映像はここから遠くにいても見ることができる
「布団はふかふかの高級羽毛布団と・・・おっと、蜂蜜を入れた壷も用意しておいてやろう」
全ての準備が終わると、彼はそこから立ち去り、遠くの場所で毎日の様に送られてくる変わりない映像を見続けていた
そしてある日、それは現れた
こげ茶色の毛皮を纏ったケモノが、彼の作った家の入り口を慎重に伺っている
長い間そうしていたケモノは、ゆっくりと穴の中に入っていき、そして・・・
「うわあ・・・すごくいい布団だ・・・それに美味しそうな蜂蜜に食べ物もいっぱいあるぞ!
誰も使っていないなら俺が冬眠してもいいよね」
映像には嬉しそうなケモノ、クマーが部屋のあちこちを探索して楽しんでいる姿が流れている
どうやら彼の計画は成功したようだ
この一冬、クマーの冬眠する姿を、時々起きてあれこれする姿を、そして時にはちょっとヤバイ姿も堪能できる
だが当のクマーは自分が計画にはめられて、監視されていることを知ることはなかった
映像の中のクマーは本当に、嬉しそうにニカッと笑っていた