>>303
再び下着に顔を寄せて、肺いっぱいに息を吸う
布から放たれる匂いが鼻に刺激を与え、頭の中が幸福感で満たされる
ああ・・・この匂い・・・この家の長男である三橋廉の、直に触れた布のに匂い・・・
この家に入り込んだ切欠は、ある人物に三橋家の調査を依頼されたことだ
気配を消し、決して家人に見つかることなくこの家の家族を影から見守る
それは防犯関係ばかりではなく、この家族の心身の健康状態のチェックも含めてのことだった
そして何度もこの家に入り込み、異常が無いか確認していた
そんなある日、いつものように家に入り込み、調査していたときにそれを見つけた
洗濯機の中に入れられていた下着
男物のそれはこの家の父親か長男のものであるのは確実で、その日は父親は不在だった
となるとそれは長男のものと判断したとき、ふとあることを思いついた
健康状態をチェックするには下着の確認も必要ではないか
例えば腹の調子が悪いときは下着が汚れることもあるし、体内に変化があれば匂いも変化する
そう思い、下着を広げて匂いを嗅ぐべく鼻を近づけ匂いを嗅いだ
その瞬間、体に痺れが走ったのを今も覚えている
頭の中も痺れてくらくらして・・・でもこの興奮する感覚は一体何なのだろう
もっとだ・・・もっと嗅ぎたい・・・これでは足りないのだ、もっと・・・
そして俺は、この家の長男、三橋廉の下着の匂いの虜になってしまった
だがちゃんと仕事はするぞ、俺もプロだからな
もう一度、と匂いを思いっきり嗅ぐと、ある違和感を感じた
匂いが・・・ほんのわずかに匂いが違う・・・
まるで他人の匂いが混ざっているかのようなそんな違和感・・・
その時、二階からまた物音がしてきたのだ
それはひそやかなものだったが、訓練された俺にはしっかりと聞こえてきた
"ん・・・やぁ・・・も、もう・・・らめえ・・・"
微かな嬌声・・・それは三橋廉のそれに間違いなく・・・何をやっているかも俺には気配で丸わかりで・・・
ではこの匂いの違和感は別の誰かの・・・
その時俺は、思った この違和感を排除しなくてはと
俺は三橋廉が誰といるのか調べる決意を固め、今はそっとこの家を出るのであった
目から水が出ているのが不思議だが、それはきっと汗なんだろうな
くやしくなんか・・・ないんだからな! おしまい