出版♀だけど「口伝記」って言葉ははおかしくないし、造語でもないよ〜。
たぶん、前提を知らない人が多いから混乱しちゃうんだね。

まず、前提から話すと、例えば平安時代や室町時代って、圧倒的に文字かけない人のほうが多かったよね?
だから、口伝(言い伝え)形式で後世にものごとを伝えていくしか手立てがなかった。

で、時代が進むと、文字をかける村人や家族が現れたりする。
その時点で「言い伝えだと記憶違いしちゃったりして間違えちゃう。間違いのないように、お前書き記してくれない?」ってなるわけ。

それでできたのが「口伝記」。浦島太郎みたいな伝承や、神社の成り立ちを書いてるものが多いね。

「口伝されてきたものを書写しました」つまり、「口で伝えられてきたものを今書いたやつだから正確じゃないかも。許してね」って意味が込められてる。

あとは、口伝される過程でバージョン違いが出てきてることもあるから、そこへの配慮が込められてることもある。
例えば、赤ずきんちゃんも「狼に食べられて終わり」バージョンがあるでしょ? それといっしょ。
つまり、「〇〇さんが口伝してきたものをここに記します」とすることで、バージョン違いを口伝してる人たちとの揉め事を避けたわけです。

そういう意味を込めて「口伝記」とする。ゆかしいよね。

今昔物語や宇治拾遺研究なんか読んでると、出典元に「〜口伝記」ってよく記されてるよ。