楽園の魔女たちでエロパロ
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ところでここって楽魔女以外の樹川作品はどうなの?楽魔女オンリー? 他にないし、いいんじゃないか
別スレ立てたら重複になっちゃうし 一口食べた素部長どんが
「うーまーいーぞー!!」
と絶叫して脳内宇宙が広がるところまで見えた。 ドラマCD聞いてて思ったけど殿下に「ハイヒールで穀潰しと呼びながら踏んでください」って頼むのはハードル高いわ
皇女だぜ皇女 マリアとナハさんが作ってくれた料理が食べたい
――ごくちゃんの分は別でお願いします ごくちゃんってユニコーン状態でも雨の日分裂したっけ? 多分だが、ユニコーンの時に雨が降ってる場面が作中にないと思う ナハトールはあの後も、たまに立ち寄って
昔をなつかしみつつごはんを食べるように
なり、
そしていつの間にかナハトを待ちわびている自分に気づくサラ、
的なにか、そういうのがいいなあ 保守をかねて投下します
ナハサラ。むしろサラナハ?
共犯者の続編、長いですごめんなさい
連投規制にひっかからないように、ぼちぼちと 「せっかくのきれいな髪が傷むだろ?」
ナハトールはいつもそういって微笑むばかりで、彼女を抱くとき、
あおむけに寝台に押しつけようとしない。ただの一度も。
「ほら、こんなにまっすぐなんだし、傷んだらもったいないよ?」
さらりとしたクセのないサラの黒髪を指のあいだで梳きながら、
そんなことを言う。
その屈強の男の指は剛剣をふるうにふさわしく太く、長い。
傭兵としてこれまで数々の修羅場をかいくぐってきたはず──そんな経歴には
まったく似つかわしくないほどのおだやかな動作でナハトールはサラの髪を
なで下ろし、シーツに寝そべったまま、たくましい両腕をゆったりと頭の
うしろで組んだ。
彼の腰をはさみこんで上から見下ろしたサラは、肩からナイトガウンを脱ぎ
落とす。
そばの椅子の背にそれをかけながらたずねる。
「──理由は、それだけですか。ナハトール?」
「もちろん。ほかになんかある?」
たったいますでに一度は精を放ったばかりであるが、彼の中心はふたたび
勃ち上がりかけており、サラの白い尻をうしろから圧している。
そんなことはふりかえってたしかめるまでもない。
言いようのないもどかしさをサラは感じる。
なぜなのか自分でも理由はわからない。わからないが、
「私はてっきり、あなたが私に遠慮しているものとばかり」
「遠慮?」
しかも、彼はとぼけるのもうまい。
心外だ、というように茶色の瞳をみひらいて、声はたてずにナハトールが
また笑う。
合わせた素肌から、笑いの振動が直につたわってくる。
男の体温はとても高い。その熱量がどこからくるのかふしぎなほどだ。
「それはサラちゃん、男心ってもんがわかってないよ」
「男心」
「そ。あのねえ、魅力的な娘さんを前にして、おれみたいな大男が本気で興奮
したらどうなると思ってんの?」
「正確な意味がわからない。よって説明を求めます」
「できないし、したくない」 「ナハトール──」
「って、いいたいとこだけど、そうねじゃあヒントだけ。男ってのはね、単純
だから、女の人を押し倒して上からのしかかっちゃうと、なおさらハッスル
しちゃうわけ。歯止めが効かない。っていうか、暴走しちまう。ヤバイと思っ
ても止まらない。そーゆー自覚があんの、いちおう。だから自重してます」
「自重しなくていいと、私は言ったはずです」
そう、ただひとつ「ある行為」だけをのぞいては。
身体を好きにしてくれてかまわないとサラは彼に告げていた。
「うん、それは何度も聞いたよ」
だったら──といいかけたサラのウエストにナハトールの腕が巻きつき、
いとも簡単に引き寄せられた。厚い胸板に倒れ込むサラのやや小ぶりな丸い
乳房が押しつぶされる。
すぐそばで燭台の炎がゆれた。
同時に、もう片方のてのひらが足の付け根をすくいあげるように割り込み、
もちあげた。
「あっ……」
「遠慮なんか、してないって」
低くささやく声。いつもよりかすれた声はサラの頭上から降る。
──うそつきだ。
そう言ってやりたかった。
肌をぴったりと寄せ、すりあげるようにサラの太股を自分の脇腹まで引きあげ
たナハトールは、彼女を上に抱いたまま、その大きく熱いてのひらで脚の線を
なぞっていく。
敏感なひざの裏側からなであげられ、サラがまだ顔もあげられないうちに、
男の指先は花芯に到達した。
「……ッ」
唇を噛んで声をこらえる。
遠慮なんかしてない、そうだろ? そんなナハトールのことば。じらすように
すぐに指先は花びらを離れて腰をわし掴みにする。
思わず眉根が寄る。
が、痛くはない。
痛い思いをしたことなど一度もない。
そう、ナハトールは、絶対に自分を傷つけたりはしない。
いつもぎりぎりの力加減でもって、この屈強の男はサラの望みに応える。 ──抱いてほしい。最初にそう申し出たのは自分のほうだった。行為は合意
の上で、たがいにそれは承知している。
この忠実な共犯者はいつもやさしい。
そのやさしさがサラを駆り立てる。
分析不可能な凶暴な感情へと。
指をのばして、サラは手さぐりでナハトールの後頭部にふれる。黒髪を束ねて
いる皮紐をむりやりほどくと、ナハトールの髪がばらけて散った。
こうすると、ほんのすこしだけ安心できた。
肩を越すくらいの髪をほどいたそのすがたは、いつもの彼とはちがって見える。
野性的で……そう、セクシーだ。間近で瞳をのぞきこもうとしてもその心の
奥底までは見えない。見知らぬ他人のようで、真意がまったく読めない表情で、
サラの肌を撫で、ただ口づける。
──ああ。ここにいるのはただの男だ。
サラはそう自分に言い聞かせる。
矛盾に満ちた思考にみずから蓋をして、瞼をとざし、サラは両手を彼の肩に置
くと大きくのけぞった。
待ち構えていたように、とがった胸の頂きを男の舌がはじく。
「は……、は……っ」
息づかいの間隔がせまくなり、呼吸が荒く乱れていくが、それでもサラは嬌声
をあげない。
ナハトールもまた一言も発しようとしない。いつものことだ。ひとたび始まれ
ば、ふたりのあいだに会話はなくなる。あるのはただ肉体を溶け合わせる
ことだけ。それだけのこと。
細身の自分は女性として貧相なのではないか──そんなことを考えたことも
ある。もちろん、一般的な統計と比較してだ。痩せぎすで、“うすい”。
しかし、ナハトールは気にしていないように見える。実際にそう言った。
「サラちゃん、ズルイよ」そのあとにこうつづけた。「素敵すぎて、おかげで
先に何度も恥をかきそうになったよ」と。
いかにも彼らしい言い分だ。
それもまたうそだ。サラは考える。
最初の一度かぎりだった──ナハトールがサラの中に射精したのは。 この男の空恐ろしいほどの自制心はどこからきているのだろう? わからない。
まったく理解できない。
「精子は酸に弱いから」と理屈を説いてきかせても、実際に酢とスポンジを
見せて「こちらの避妊は万全です。さあ心置きなく」ぽんと太股を叩いて
うながしても、笑ってはぐらかすばかりで「うん」とは言わない。
何度「なぜそうしないのか?」と問いかけても、精を放つのはいつも決まって
外だ。
しかもサラが気をやるのを確かめるまで自分は達しようとしない。
ガンコすぎる。
いや、それとも──。
彼はマゾヒズムの傾向でもあるのだろうか? それならばプレイスタイルにも
それらしい変化をつけなければなるまい。
これまでさんざん押し問答をくり返して、しぶしぶナハトールは行為前の準備
すなわち手淫だけはサラに任せることに同意したくらいだ。
彼はそれを「準備」と呼んでいた。それを済ませてようやく彼の剣はサラとい
う鞘の中へと収まる。
自分の膣が狭すぎるせいだとは思わない。とはいえ、参考にできる学術資料が
ないのだから、結論を導きだせないことが何とももどかしい。
ふむ、ぜひ統計をとってみたいものだが……世の中はままならないものだ。
ナハトールの動きはノーマルのお手本どおりと見えながら、ときとして予測が
つかない。
いまも、上をむいた乳首のまわりを舌でこすり、問いかけるように間を置いて
から、不意打ちのように鎖骨からみぞおちまでスッと撫でおろしてきた。
長い指先が胸の双丘をかすめ、あばらを順番にたどる。
まるで自分がひとつの楽器になったように感じる。彼の指に自在に奏でられ、
ふるえる弦だ。
──決して音が出ることはない、こわれた楽器。それとも、彼の耳にだけは、
なにかの音が届いているのだろうか……?
深く長いため息が自分の喉から漏れた。
背中に片手をひろげ、ナハトールはうしろに倒れそうになるサラの上体を
しっかりと支えてくれている。温かな手。
安心感? これは果たしてそうなのだろうか?
完全に主導権をゆだねるべきではない、そう思いつつも、しだいしだいにサラ
は最初のいらだちをわすれてしまう。 ──はやく。いますぐ、はやく中を充たしてほしい、終わらせてほしい。
ただそれだけを望んでいたはずだった。これは正当な取引だ。自慰では意味が
ない。内なる淫乱な人格を野放しにしないためにも、この本能の欲求を鎮める
ことさえできれば、なんだってよかった。そのための交合だ。
それなのに。
「──!」
とっさに手の甲を唇に押し当て、サラは声を押し殺す。
ふたつの胸の頂きをナハトールが両の親指でグイとめりこませ、小刻みに律動
させたからだ。
不覚。
データ不足だった、とっさにサラは思った。
自分でも知らずにいた強く甘い刺激にただ翻弄され、思考が飛んだ。
なかば膝立ちのまま、がくがくと浮いた腰をゆらして、そこから蜜がしたたる。
蜜は男の下腹にこぼれた。
耐えきれず崩れ落ちると、ナハトールの鋼のような腹筋に、露をふくんだ彼女
の薄墨色の柔毛が透明な線をのこした。
ひくり、と泉の源がひくついた。
「サラ……?」
耳元で問われたが、彼の表情はたしかめなかった。そんなゆとりはなかった
のだ。両腕を彼の肩にまわしてあずけたまま、サラは黙って首を横にふる。
問題ない、と。
こうやって男の胸板に無防備に押しつけていることさえ気だるく心地よく
感じる。ひきしまり、弾力のある筋肉。自分とはまったくちがう異性の身体。
ふしぎだ。
サラは背後に手をのばした。
彼の濡れた先端をさぐりあてた。
そのまま上下になでさする。
なめらかで、硬い。太く血管が浮きでて脈打つようすも、ありありとわかる。
ああ、なんと熱いのだろうか。相手の耳たぶをかるく噛んでから、サラは身を
はなし、膝をずらして、あとずさった。
頬に落ちかかるストレートの黒髪を指ですくって片方の耳にのうしろにかけ
ながら、頭を下げていく。
彼女が何をしようとしているのか──。
すぐに悟った彼の手が、すばやく顎をすくうようにしてその動きを止めた。
「だめだ。だめだよ、それは」 「…………」
彼のペニスをてのひらで包んだまま顔をあげ、サラは藍色の瞳で問う。
ナハトールはわずかに苦笑したようだった。
ひとつ呼吸をしてから
「してほしくないから」
とだけ。
不可解だ。口淫を嫌う男性がこの世にいるだろうか? ここにいるのか?
信じがたい。
まったく納得しかねる理由だが、この性交のパートナーがそう拒否するから
にはこれ以上の無理じいはできないのだろう。
だが、もやもやとした悔しさのようなものはおさまらない。
これでは自分が一方的に奉仕されているだけだ。
この関係はあくまで対等でなければならないはずだ。だから──。
彼は上半身を起こしていた。
小首をかしげてサラはいったん彼の中心から指をはなす。
ふっ、と一瞬だけナハトールが短い息を吐いた。
そのすきに彼の太股に置いた手をささえにして前に進むと、仕返しのように
男根の裏側をかすめながら腰を押しつけ、うねらせた。
「…………!」
つきでた喉仏がごくりと上下する。
すこしだけ、満足した。
ナハトールはまったく無反応なわけではない。
むしろ、行為について気持ちが良ければ素直に良いと口にし、事後には
かならず褒め言葉もわすれない。性に対しては解放的で陽気だ。
それでいて行為に溺れ切ることはないのだ。いつもそうだ。
我をわすれて彼女の白い肌にキスのなごりの痕をのこすことすらない。
サラは睫毛を伏せると。位置をゆっくりと合わせながら身を沈めていく。
先端を呑み込むとき、いつもとちがう抵抗感を感じた。
大きい。
──ふだんより、時間をかけすぎたのだ。
サラは悟った。
いつもわざわざ手淫によって一度射精してから、半勃ちの状態でナハトールは
サラの中に入る。そうしないと負担をかけるからと彼は言う。
たしかにそのとおりで、彼は大きい。
どれだけ指で念入りにほぐしても彼は自分自身をすべて埋めることはなかった。
いくら大丈夫だとサラが主張しても譲らなかった。
ほんとうにガンコな男だ。
いま、その剛直は完全に復活して漲っている。
ためらっているのはむしろナハトールのほうだった。
サラの腰を落とさせまいとして抱えている褐色の上腕には力がこもり、縄目の
ような筋が浮いている。
そのことに気づいたサラは力を得る。
てのひらを彼の肩に置き、首筋を舐めた。塩の味がした。少し前かがみに
なると、
その腕を──と彼に要求する。
「はなして」つけくわえる。「おねがい、します」
彼は屈した。 7ズンと息がつまるような圧迫感がきた。
苦しさをやわらげるためにいったん息を吐き、かまわずサラは動きつづけた。子宮の入り口に完全に到達した先端がそこを突きあげる。
圧倒的だった。
想像以上に。
ぎりぎりまで押しひろげられた膣をかきまわすように、みずから腰を使った。
要領はもうわかっている。彼のものに自分の身体はなじんでいるから、目的
を達成するためにあとは最後までつづければいい。そうしないとこの男は──
やさしすぎる共犯者は、これから先もきっと、一度たりとも自分を組み敷く
こともなく──。
まさにただの道具にすぎないかのようにふるまうから。
ならば、ぞんぶんに利用させてもらうまでだ。ナハトール。
もっと。もっと痛くしないと充分ではない。
彼の自制心を打ち砕き、うめき声をあげさせてやりたい。
気がつけば、なだめるようにナハトールがサラの背に手を添えている。ひざ
を使ってたくみに位置を誘導すると、ゆっくりと力強く応じている。
サラの暴走を止めようとはしていないが、彼女のより感じる部分に直接問い
かけてくる。彼はサラの弱みを知り尽くしている。
こんなときにまで、どうしてこの男は──。
そこまで考えたとき、とうとう限界が来た。
「……あぁっ」
爪先までひろがった痺れはいつもよりも大きな波となって彼女をさらった。
まだつながったままビクビクと収縮する入り口で泡立つ水音がする。
のけぞっていたサラはようやく半身を起こして目は閉じたまま、なんとかして
息を整えようとした。
息切れしたまま喋るわけにはいかない。
うっすらと汗の浮かんだ両腿はいまもまだ緊張してふるえている。
声を──。
こらえきれなかった。
こんなことははじめてだった。
サラは混乱していた。かすかな失望と、そして疑問が頭をもたげる。
短い時間ではなかったはずだ。これほどしてもなお、ささやかな意趣返しは
遂げられない。男根は太く自分の中で硬いままだ。深々とサラを貫いて。
彼は達しなかったのだ。今回もまた。なぜ? ようやく瞳をひらいたとき、はっとした。
むきあい、間近にある彼の目を見たときに、つぎに起こることをサラは察した。
瞳に縫い止められていた。
彼の広い手がサラのうなじに添えられ、反射的に身をひきかけた彼女の動きを
しずかに封じた。
避けようと思えばそうできた。
なのに、できなかった。
わずかに顔をかたむけ、沈黙のまま、彼はそっと、ふれるだけの口づけをした。
唯一、そしてかたくなにサラが禁じたことを、ナハトールは破ったのだ。
──まっとうな唇へのキス、それだけはしないでほしいと頼んだのに。
わかっているはず、なのになぜ彼はそうしたのか。
ショックのあまりに口もきけず、動揺に瞳だけがただ左右にゆれた。
「…………」
椅子の背にかけたガウンをつかみ、サラは身をひるがえすと、ひとことも
発することなくそこから逃げた。彼の部屋から。彼自身から。 バタンと扉が閉ざされる。
走り出ていくサラの裸足はほとんど音さえたてず、まだ彼女の残り香が
ただよう部屋にナハトールはひとり取り残される。
おそらく彼女はもう二度とやってこないだろう。
これでいい──その思いは嘘ではない。
サラが生身の異性とのセックスにこだわるのは、自傷行為と変わらない。
それがわかっていながら、いつまでずるずるとつづけるつもりでいたのか。
いつかは終わりにするべき関係だった。その時期がほんのすこし早まっただけ
のことだ。
都合がいい男、それでも良かった。
手頃で、ほどよく親切で、よろこんで同意してくれるロクデナシ。そんな役回り
でも良かった、そう思い込もうとしてきた。
サラは知るはずもないだろう、本当はただ意のままにがむしゃらに身体を
ぶつけて、どれだけ彼女をむさぼり尽くしたいと思ったことか。
自分の名前を叫ばせたい。
ふつうの男女のようになんの躊躇いもなく笑って抱き合いたい。
無表情な彼女がつかのま見せる、ほんの瞬間だけの無防備さ、愉悦のかけら、
それに魅せられ、もっと見たくて今日まで未練を断ち切れずにきたことなど。
なぜ自分の中で射精しないのかとふしぎがり、彼女はわけをたずねたが、その
答えならかんたんだ。
ナハトールがもっとも望むものを、彼女が用心深く守りつづけているからだ。
ひとつだけしかない、心。
この手がとどくはずもない。
ふたりの契りはあくまで偽りだ。
ならば、せめて彼女に与える快楽とひきかえに、偽りであることの証明を
したかった。
自分自身に言い訳するための、身勝手な理由。自己満足だ。
男という存在にサラはまるで期待をしていない。理性を手放そうとはしない。
ギブアンドテイクだと最初に彼女はいった。
それは足元にはっきりとした線を引くことばだった。
ふたりのあいだのルールをやぶり、一線を踏みこえて、かくしてきた気持ちを
さらけだしたのは自分のほうだ。
すでに扉は閉ざされた。だから、たとえどれだけ彼女を追いかけたいと願った
ところで、それだけは叶わない。
蜜天は失われてしまった。たったいちどの口づけのために。
もはや二度と元にはもどれず、ゆるされることはないだろう。 「ほう、一人前に落ち込んでやがるんですか、このアニキは? あなたなんか
ただのディルドーのくせに」
背後からいきなり言われてナハトールは飲んでいた水を盛大に噴いた。
くそ、ついにきたか。
あれから数日、やけに静かになりをひそめていたと思ったらフェイントでコレ
だ。こぶしで口元をぬぐって、
「──いやまあ、おれのことは大人のオモチャでもなんでもいいけどさ、
そんなでかい声で話さないでくんない? エイザード」
「心配しなくても、いまこの塔にはあなたとわたし、ふたりだけしかいません
よ」
「狙ってただろ」
「当然です。だれが好きこのんで、こんなこっぱずかしい話をわざわざ弟子
たちのいるところでしたいなんて思いますか」
うわぁ。かなりマジだろ、あんた。
「──あ? なによ、この本?」
後頭部を分厚い本のカドでどつかれ、押しつけられた。
しかたなくエプロンで手を拭きふき流しからふりむいて、古びた表紙を見て
みれば、革目に金色の竜の刻印。どこかでたしかに見覚えがある。
これは──?
発作的に笑いだし、ごまかそうとしてあわててカラ咳をした。
エイザードの紫色の瞳が剣呑にとがる。
「あなたを半殺しにするのはかんたんですけどね、ナハトール。そのせいで
弟子から責められるのはわたしなんです」
「いや、ごめん」
いちおう殊勝にあやまっておいたが、まだ去勢されてないことが奇跡だよ。
「あんたが、こんな気の遣い方をするとは思わなかったもんで、つい」
「もしもし、すみませんが、もう一度?」
「これなら読んだことあるよ。うん。性魔術がどうしたこうした、ってやつだ
ろ? おれがこの“楽園”に来たばっかの十三のころ、グィエンじいさんが
教えてくれた。性欲をもてあましたらどうすればいいのか……ってさ。
よけいな性欲とやらを昇華して、べつのエネルギーに変える方法だろ。
便利だよな。たしかに魔術師じゃなくても、これなら初歩的だし、しかも人畜
無害だし、おれみたいな一般人にもお手軽に使えて役に立つと思うけど──」
「なにを勘ちがいしてるんです。
あなたのために持ってきたわけじゃありません」
エイザードがさえぎり、
「それ、サラが読んでいたんですよ」
まったく思いがけないことをいった。 ナハトールはまばたく。
「は? えーと、つまり……?」
「つまりあなたは、もうお役御免ってことです。フラレたんです。理解しまし
たか、この腐れディルドー」
「これを、彼女が読んでた? それっていつの話?」
「…………」
とたんにそれまで余裕のあったエイザードがなぜか不機嫌になった。超ムカ
つく、と横をむいて吐き捨てると、そこまで教えてやる義理はありませんねと
つっぱねる。
「せいぜい悩みなさい。それが罰ですよ。ところで、ひとつだけ質問があります、
ナハトール」
「──うん、なにかな?」
色々とこわい。
親バカならぬこの師匠バカが、ここまでこまかく察していたこと、知って
いながら口調の丁寧さがとりあえずまだ変わらずにいることのほうが。
身の置き所がないとか、決まり悪さというレベルをはるかに超越して、無垢な
赤ん坊にもどりたいくらいだ。
「なぜ、道具のままで満足できなかったんですか? あなたなら、最後まで
都合のいい道具でいられたでしょうに、このマゾ男は」
ああ、あんたは正しいよ。エイザード。
「夢をみちゃったから……かもな」
「なんですか、それ。キモチ悪い」
「自信はあったはずなんだけどね。ただの道具でいられなくなった。そんだけ
だよ」
「…………」
うさんくさそうな表情をしたが、虹の谷の魔術師はそれきり口をつぐみ、
もうそれ以上はなにもたずねてはこなかった。
折しも時は早春。
パラダイス・ロスト。
天災によって“楽園”が崩壊する、そのほんのわずか前のできごとだった。 以上、お粗末さまでした
改行ミスはどうぞお目こぼしください(やっちゃった)
サラが部屋を出て行くところで終わらせようとしたものの、
あまりに後味が悪かったので、オマケでお師匠さま登場でした おおう、まさか登校がアルトはおもわなんだ
おつっした おつでしたー
この二人の間には暖かい情感があると思いつつ
最後はどっちも決めたことを追って傷付きそうだなって納得させられた
しかし、途中サラが楽魔女界のキンゼイ先生になるんじゃないかとドキドキした 保守
関係ないけど近々コスプレイベントやるんだってね
いまだにそういう活動が起こるってすげーなー おーついにか
あれだけリクエストされてたら納得だよな
ていうかtwitterでは一言も触れてなかったから今吃驚だよ! 樹川先生、素敵な作品を本当にありがとうございました。安らかに…。
サラxナハの公式が読みたかったなあ… なんの冗談/質悪い
とか思ったらマジでお亡くなりになってたのか……
こげなトコで知るハメになるとか ぜひ一度はアニメ化してほしかった、原作読んでない人でも受けいれ易い作品だったと思うし ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています