【嘘】嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん【だけど】
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0001名無しさん@ピンキー2009/09/27(日) 01:51:57ID:I0IcGI8l
無いから立てた。

これで落ちたら需要無しと諦める。

基本的にsage進行で

0440名無しさん@ピンキー2011/08/02(火) 22:11:07.15ID:xAlg2wMZ
age
0441名無しさん@ピンキー2011/08/05(金) 09:25:34.32ID:7wsRead/
みーくんとまーちゃんの体が入れ替わるssってのを……書いてみたいかもしれない。
0442名無しさん@ピンキー2011/08/05(金) 17:53:47.71ID:7wsRead/
というかもう暇だから書くわ。暇なときに書くから一日じゃ無理だけど。
てかみーくんっぽく無くなるわww
0443名無しさん@ピンキー2011/08/05(金) 17:55:09.34ID:7wsRead/
「おにょーーーーーーー!!!!!!」
 朝、僕はマユの奇声で目が覚めた。マユが僕より早く起きるなんて珍しい。何かあったんだろうか。
「……まーちゃん? ――グフッ!」
 僕がマユに言葉を投げかけるのと同時に、腹の上に重量感。マユ、太った?
「みーくん、みーくん、みっくーん、みーくんくん、みーくーん、みーくーるー、大変なのです!」
 最後のは最早僕じゃない。僕は未来から来たわけじゃないんだよマユ。嘘じゃないよ。それにしても、今日のマユは声が変だな……風邪か?
 ともかく僕は朝に不足するマユ成分を視界からでも取り入れようと目を開く。

 僕がいた。

「……は?」
 枝瀬××がそこにいた。天野××がそこにいた。僕が二人? いやいや僕はこの世に一人だけだ。
となるとこれはドッペルゲンガーか。なんてこったい僕は三日後に死ぬ運命なんだね!
 大変だ、マユのドッペルゲンガーも連れてきて一緒に三日後に心中しなくちゃマユが怒っちまう!
「みーくん、鏡ー!」
 ドッペルゲンガー(僕)がニコニコしながら手鏡を僕の前に差し出す。おのれドッペルゲンガーめ、マユの手鏡を勝手に使うとは。
 僕は何気なくその手鏡に視線を降ろす。

 マユがいた。

「……は?」本日二度目の『は』。
 御園マユがそこにいた。マユマユがそこにいた。マーユー!
「ねっ! ほら、面白いでしょ!」
 ドッペryがニコーッと僕に笑いかける。……さっきも思ったんですが、僕の顔で笑顔は止めてください。
 ……えーっと? 朝起きたら目の前に僕がいた。僕が手鏡を覗いたらマユがいた。……いや、そんな漫画展開、あるわけない……
 そう、そんな……体が入れ替わっちゃったなんて非現実的なこと、あるわけな「まーちゃんとみーくんは入れ替わっちゃったのです!」くもないらしい。
 マユの言葉は信じなきゃ。それがみーくんってやつだ。……というわけで僕は今、マユになっている。マユは普段、自分の感情を素直に吐き出す。
「せーのっ」
 だから僕も、今は感情を吐き出そう。

「嘘だろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!?????????」

 『嘘だけど』で、あって欲しかった。
0445名無しさん@ピンキー2011/08/06(土) 13:55:49.13ID:lpbwVEWT
 アリかな?ww 適当だから読みづらいけどとりあえず書いてくよ。



「で……起きたら、君と御園が入れ替わっていたと……ダウト」
 先生に事実を否定された。
「だと良かったんですけどねー……」
 否定を否定した。
 途端に先生の目が丸くなり、口がポカンと開けっ放しになる。そんな顔も可愛いですよ言ったら顔を赤らめた。嘘だけど。
 先生は深く溜息をつき、口を開く。
「君の名前は?」「枝瀬が苗字で名前はラブの和訳です」
「好きな食べ物」「甘い物」
「私の名前は?」「ニー日せんせ……嘘ですから、その握り締めた右手を開いてください」
 そんなコントをしている場合では無いのだから。

 あの後、とりあえず僕ははしゃぐマユ(in僕)を落ち着かせて、朝の支度をした。
 学校は休もうとしていたのだが、マユが何を血迷ったのか、制服に着替えてしまった。しかもいつもマユが着る制服、つまり女物を……
 勿論、男の僕が女装をするという最悪のシチュエーションになってしまい、土下座しながらそれを止めさせた。
 そして怒るマユをなだめてから、元精神科の恋日先生の家へきたのだった、まる。

「あー……こりゃ本物だわ。いったいどうなってんのよ!?」
「僕が聞きたいですよ」
 しばし恋日先生と話した後、恋日先生が言うにはそのうち治るだろうとのことだった。とりあえず帰ろうと腰を上げたとき、思い出したように恋日先生が僕に言う。
「一応、今の君は御園なんだから……暗闇とかには気をつけなさい」
「……はい」
 心配してくれる恋日先生に、結婚しよう! と言いたくなった。嘘……だけど。
0447名無しさん@ピンキー2011/08/06(土) 15:04:51.06ID:lpbwVEWT
 とりあえず、恋日先生の家から家に帰ろうとする。しばし歩いて家の近くのスーパーに通りかかった。そして――
「げ」
 ちょうどスーパーから出てきた伏見柚々とバッタリ鉢合わせる。平日なのに学校は? と思ったが、そういえば今日は休みの日だということを思い出した。
 結構な日にちをマユとサボりに費やしているので、平日と休日の感覚が分からなくなってきている。
 にしても伏見か……別に嫌いな人間じゃないんだけど、こんなときに会いたくは無かったな。
「あ……」
 伏見がザラリとした声色で、僕の鼓膜を震わせる。パパッと自身のポケットなどを弄るが、ちょうど手帳を持っていなかったらしく、苦々しい顔をする。
「え、っと……こんにちは、御園さん」
 おどおどとした小動物の様子で言う。そんなおどおどしなくてもなーと思いつつ、返答を返す。
「こんにちは、伏見」
「……え?」
 伏見のきょとんとした顔に、何か間違ったか? と少し焦る。
「え? ……あ」
 ……そうか、僕は今、マユだった。
「あ、あー……ごめんなさい、わたし今ちょっと混乱しているの」
 お前の頭、大丈夫か? と言われそうな言葉を返して、慌ててその場から立ち去る。……うーむ。次会った時に何か言われるか?

「みーくんおーそーいー!」
「ごめんごめん。ちょっとマユのことを考えていたら、空想の中のマユの美貌に目を奪われてぼーっとしてたんだよ」嘘だけど。
 むー、と唸るマユの頭を撫でると、ニコリと顔が破顔一笑する。マユの顔なら可愛いが、僕の顔でニコニコされてもなあ。おっと寒気が。
「僕がいない間ちゃんとしてた?」
 マユはこくこくと頷いて、肯定する。よしよしとまた頭を撫でようとすると、マユが言った。
「みーくんはやっぱり泣き顔が一番だねー!」
 ……ちょっと待て、今何つった。僕がマユに尋ねる前に、マユが自分の携帯を持ってきて写真を見せる。
「#%&)=(’%$#”$(’)!!!??」
 シフトを押しながらの僕の奇声。マユが見せた写真には、僕の顔がたっぷりと写っていた。いや、顔だけならいいんだが……
「これがさっき撮ったテレ顔でー、こっちが笑顔ー! で、一番がこの泣き顔〜!」
 マユが自分で表情を作って撮ったらしい写真の数々。僕のテレ顔や笑顔や泣き顔がそこにはいっぱい写っていて、て、、てて、、てててててtっttっててってて
「お願い消してえぇ!!」
 僕らしくない叫び声。マユの声だから多少可愛さがあるが、僕の精神としてはそれどころじゃない。
「いーやっ! みーくんコレクションの宝庫でまーちゃんはwktkなのです!」
「何そのネット用語!?」
 こうして僕の黒歴史が刻まれた。
0448名無しさん@ピンキー2011/08/07(日) 23:53:07.59ID:eYbRDiVC
ええい!続きはまだか!
0449名無しさん@ピンキー2011/08/08(月) 13:45:10.17ID:nen03brh
 ペース遅すぎてごめん。あと正直エロが良く分からない。無しでもいけるかな?

「んでねっ! んでねっ、みーくん!」
 マユが突然ニパーッと笑顔を作って僕を見る。そして続けた。
「まーちゃん、学校行きたい!」
「……え? 何で?」
「んとねー、みーくんになったまーちゃんは、学校で皆にバレないように過ごせるかという実験がしたいのです! キラーン!」
 キラーンじゃねえよ。言いたかったけど言えるはずが無い。
「ちょっとそれは……「なにー! まーちゃんに逆らうのかー!」……」
 もう、どうでもいいや。

 その後は特に描写する必要すらない、淡々としたマユと僕の生活だった。
 ご飯を食べてゴロゴロして夜になってお風呂に入ってマユが寝て、僕も寝た。

 そして、夜に目が覚めた。

「……ん?」
 薄っすらと開いた目は、部屋をぼんやりと映している。むっくりと起き上がり、時計を確認しようと部屋を見回した。
「あ」
 口をついて出た言葉は間抜けな声。時間は夜中の二時ほど。そして――部屋は、電気を付け忘れた所為で真っ暗だった。
「ぁ、あ、あぁあ、あ、あ、―――――――――――――――――――――――!!!!!!」
 暗い部屋、黒、黒黒黒黒、地下室、お父さん、お母さん、
にもうと、兄、菅原、恋日先生、奈月さん、まーちゃん。
まーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃんまーちゃん――
「―――――――――――――――――――――――!!!!!!!!」
 獣の咆哮。歯軋り、眩暈。――落ち着け、落ち着け僕。僕はまーちゃんじゃない。僕は僕だ。暗闇なんて怖くない。だから、大丈夫だから、
「ぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくは」
 声、言葉、動く、立つ、足、震え、よろめき、転倒、嘔吐、涙、汗、立つ、電気、電気、電気、紐、明かり……

「は、はっはー、−っは、は、、hhhは、はーー」
 酸素と二酸化炭素の入れ替え立ち代り循環。大丈夫、僕は大丈夫。
「は、は――――……」
 汗が流れ落ちるのを待ち、直ぐ近くに寝ているマユを見た。うん、ぐっすりと寝ている。僕のことなんか気づいてさえいない。
 台所に向かい、昼に先生から貰った薬を飲む。水と一緒に飲み込んで、落ち着いたら寝室に戻り僕の吐瀉物を片付ける。
「よし、寝るか」
 再度、夢の国へと旅立つことを決心した僕。マユの頬を少し撫でてみた。感触としては僕の肌だったが、精神的にはマユ成分を確保出来た。
「……おやすみ、まーちゃん」
 また明日。
0450名無しさん@ピンキー2011/08/09(火) 11:13:00.33ID:jedu9gJn
「はい、じゃあ名簿1番から順々に並んでねー」
 マユの名簿は何番だっけ? ……ああ、29番か、最後の方かよ。
 僕は辺りを見回しながら溜息をつく。左右を見回しても、僕の目に映るのは同じ。

「ねえ、体重どうだったー?」「もーヤバイ! 1キロ太った!」「うわマジ? 身長伸びるかなあ」「もう止まったっしょww」

 保健室に群がる下着姿の女子生徒達、それが今の僕が目にするものだ。今日は学校の身体検査の日だった。
 どうしてこんな日に学校に来てしまったんだろう。朝、学級で担任から身体検査のことを聞かされたとき、思わず硬直してしまった。
 マユは飛び上がって喜び(後に周りの視線が無いとき)、「みーくんの【ピー】が見れるのかー!」なんて叫んでいた。休め、マユ。
 別に下着姿の女子を見ても精神が高ぶったりはしない。マユので見慣れているからな。というわけで僕が制服を脱ぎ始めると、明らかに周りの女子の話の内容が変わる。
「……ねえ、御園さんの見て」「うわ、傷だらけ!」「何あれキモッ!」「足んとこヤバクね? あれナイフ?」「んなもん見せんじゃねーよ!」
 ヤンキーどもめ。マユの麗しき四肢を見て嫉妬しているんだな。嘘だけど。
「あ、えっと……御園さんどうぞ」
 保健室の先生が僕を呼ぶ。返事もせずに体重計に上がった。詳しくは言わないが、マユの体重は平均と比べるとかなり少ない。(3巻のマユのダイエット? 知るか
「……もう少し栄養取りなさい。はい次」
 苦い顔をする保健室の先生。用が済んだのなら早く教室に戻らなくては。制服に着替えていると、次のクラスが入ってきた。
「…………」
 伏見と長瀬がいた。(二人はクラス違う? 知らんよ
 先生に指示されて服を脱ぎだす彼女達。もじもじとちょっと恥らいを持つのはいいことだ。最近の若い子は恥じらいっちゅうもんがねー……
 長瀬は全体的にスラリとしている、健康的なスポーツウーマンってとこか。伏見もスラッとしているが、胸部の所は凄い。気づいていないのだろうが、女子達の嫉妬の目が注がれている。
 僕はというと、数人の女子達の憎悪の視線を受けながら保健室を出た。

「みーくんの【ピー】は【ピー】だったのです! まーちゃんおどろき! みぃんながみーくんの【ピー】が【ピー】って言ってた! 【ピピピピー!!】はみーくんなんだっ!」
 放課後のマユの歓喜の声です。僕はその日久しぶりに枕を重く濡らしました。
0451名無しさん@ピンキー2011/08/10(水) 01:36:05.84ID:n8MBrVRp
キテター!
ガチエロじゃなくてちょいエロでもいいじゃない。
0452名無しさん@ピンキー2011/08/10(水) 17:30:42.83ID:GSswxYBU
 ごめん、ちょいエロだったらこれが限界だorz
 エロにしたい誰かいたら、こっから続き書く? ヘイタッチ(´・ω・`)ノ <ヘーイ
0454名無しさん@ピンキー2011/08/10(水) 21:00:33.66ID:GSswxYBU
いいのかww じゃあ、オチもgdgdになりそうだけど頑張るよ。
時間あるときに書くね。ほんと、ペース遅すぎてごめん!
0456名無しさん@ピンキー2011/08/11(木) 16:40:45.40ID:r9h1KVO5
「みーくん、朝らよー」
「……うん」
 次の日も、僕は僕の顔をしたまーちゃんに起こされた。一体いつ元に戻るのだろうと考えても仕方が無い為、ぼやける頭で動き始める。
 朝の支度をして制服に着替えて学校に行く。
 いつも通りに授業を受け、先生も珍しく起きているマユ(in僕)に、ここ数日驚いて、でも僕が考えているのは授業じゃなくてマユと僕が戻る為の方法で。
「……図書室にでも行くかな」
 小声で呟いて、昼休みの過ごし方を決めた。

「というわけで、図書室へ行こうか」
「分かった」
 朝からずっと寝ていたマユを起こし、手を取って図書室に向かう。マユも周りに人がいる為外向きの顔をしながらついてくる。
 図書室はかなりの数の本があり、まあ人間の心と身体が入れ替わるなんてことを適当に書いている哲学の本もあるかもしれない。
 そして扉に手をかけ、遠慮なく開ける。伏見が本を読んでいた。
「……ぅぁ」
 小声でびっくりしながら、伏見が僕達を凝視する。そういえばしばらく部活に行っていなかったな。戻ったら謝らなくては。
 そう思っている間に、伏見がささっと手帳を取り出して僕達に向ける……いや、それは僕よりもマユの方を向いていた。
『枝瀬』『今日』『部活』『来る』「はてな」
 そして、それに対するマユの返答は、
「……誰ですか」
 ……やばい。伏見の目が驚愕に見開かれてる。態度の冷たさに悲しんでいるというより、その返答の内容に驚いている感じだ。
「え、っと、あ」伏見がおろおろとしているうちに、「みーくんじゃないのに、話しかけないでください」マユがズバッと言い切る。
 伏見はまたまた目を丸くして硬直。僕が何か声をかけようか迷っている隙に、マユは本棚の奥へ進もうとしていた。僕は軽く「気にするな、ゆずゆず」と言いながらマユの元へ歩み寄ろうとし、

「……枝瀬?」

 伏見は、『マユの姿をした僕に』向かって呟いた。
0457名無しさん@ピンキー2011/08/11(木) 17:21:35.51ID:r9h1KVO5
「わたしは御園マユですけ「違う!」ど……」
 即座に否定された。伏見はたたみかけるように喋る。手帳は使わない気なのか握り締めてぐしゃりと皺が出来ていた。
「お前がわたしを分からないはずない! 御園さんしかお前のことをみーくんって言わない! 私をゆずゆずって言うのはお前だけ!」
 ……うーん。伏見は鋭いなあ。将来は探偵になってこの世の悪を裁くべきだな嘘だけど。
 伏見はぐいっと僕に近づいて、口を開こうとする。そして、
「みーくん」
 苛付いた表情のマユが、僕に歩み寄ってきた。
 苦い顔をする伏見は眼中に無いかのようにマユは僕の腕を力強く握って言う。
「何をしてるの。こいつと何話してたの。みーくんはまーちゃんと一緒にいるの。絶対いるの」
 理不尽な理由を僕に押し付けたまま、マユは僕の腕をぐいぐい引っ張ってくる。伏見にちらりと目をやると、やっぱりな! といった顔で僕を見ていた。
 放課後、伏見にちゃんと話さなきゃな。

「みーくうぅぅん! とあーっ!」「ごはー」
 マユが僕に圧し掛かってくる。一応女子の体に男子が乗っかっている状態で重い。
「あのねあのねあのね!」「なんだいなんだいなんだい」
 まーちゃんは喜々とした笑顔のまま、僕の顔に一冊の絵本を叩きつける。
「遂にまーちゃんは元に戻る方法を発見したのです!」
 じんわりと痛む鼻を押さえて、絵本を見る。……なるほど、その絵本は僕らと同じような状況の男女が、キスによって戻るというものだった。
「つまり、まーちゃんたちもちゅーをするのです! ささ、ちゅー!」
 マユが僕に圧し掛かって動きを封じたまま、目を閉じて迫ってくる。……………………うん。

 僕のキス顔とかキモチワリイィィィ!!!!!!! 止めろ、止めろというか止めてくださいまーちゃん! 自分がキスを迫るってどんなだよ! こんなだよ!!
 自分の顔のキスってうわああぁ! 自分がキスを迫ってきてる状態への回避方は!? 想像して早めに回答を出してく「むちゅっ」れっ……

 ……ああ、もう、どうでもいいやぁ……
 そんなとき、本棚の方へ一人の男子生徒がやって来た。……! こいつは……!

「wawawa忘れ物〜、うおぁっ!?」
 オールバックの髪型に、大げさな驚き具合。僕達のキスシーンを見て硬直した数秒後。
「すまん……ごゆっくりいぃ!!」

 谷○、学校違う。というか帰れ。
0458名無しさん@ピンキー2011/08/13(土) 15:47:03.56ID:fB7JIJja
 放課後、マユが寝たままなのを確認した後、僕は真っ先にアマチュア無線部の部室へと向かう。
「ゆっずゆーず」
 扉は軽快に開き、中にいた伏見の肩を跳ねさせる。僕を見た後、一瞬怪訝そうな顔をして直ぐに納得したような顔になる。
『やあ』『こんにちは』
 伏見が座っている丸椅子の隣に、もう一つの丸椅子を持ってくる。そこに座り、伏見と顔を向かい合わせた。
『枝瀬』「御園さんは」「はてな」
「ああ、寝てるよ」
 会話をしつつ、伏見があまり僕の現状に驚いていないことが分かる。ま、どうでもいいけど。
 そして、次に伏見は衝撃の事実を僕に告げる。
『私』『元』「に」『戻る』『方法』『知ってる』
 ……珍しく、目を見開く。伏見の首がこくこくと上下に動く。
「……どんな?」
 伏見は一瞬迷ったような表情になってから、手帳を猛スピードで動かした。
『ショック』『方法』「で」『頭』「ごっつんこ」「神経」『性別』「むきゅ」
 最後のは僕が伏見の頬を摘んだために起こった声だ。大体分かったぞ、伏見の言いたいことは。頭突きをし合って僕とマユの頭を苺ジャムのようにすればいいということだな、嘘だけど。
「オーケー、分かった伏見。ありがとうございまする」
 言いながら頭を撫でてみる。伏見は部屋が暑いのか頬が赤い。
『問題』「ナッシング」「お、おけー?」
 伏見の言葉は、理解しづらいな。

「みーくん、まーちゃん眠い」
 帰宅途中の道で、マユがうとうととした目で僕を見る。といっても僕の顔だから可愛いとは感じない。
「最近は遅く起きれたのにね……よーし、早く帰っておねんねしよっかー」
「ムキー! まーちゃん子供じゃなーいー!」
 バタバタと足をばたつかせるマユは、どう見ても子供だ。
 僕は適当にマユをなだめて、歩みを速くした。
0460名無しさん@ピンキー2011/08/18(木) 16:44:43.33ID:kMsJFOxR
 その夜、僕は夢を見た。
 白い部屋に僕がいる。壁と地面と天井の区別が付かないほど真っ白な部屋の中、不意に一人の女の子が僕の前に現れた。
「まーちゃん?」
 その女の子、マユは小学生の頃の姿をしていた。僕自身の体を見てみると、同じように小さくなっている。某探偵アニメのような薬は飲んだ覚えが無い。
「みーくんだ! あのね、まーちゃんね、みーくんにお願いがあるの!」
 くるりと回って、スカートをひるがえらせたマユ。にこりと笑ったまま、僕に言った。
「まーちゃん、みーくんになりたい!」
「……もう、なってるでしょ?」現実では。
 マユは頬を膨らませて憤慨する。足でぴょんぴょん飛び跳ねて地面を揺らす、震度は2ぐらいか? 勿論嘘だ。
「じゃあどーすればいーのー!」
「さあ? ……取りあえず僕は一度元に戻りたいんだけどな」
 マユは嫌がるだろうか。なんて考えを持っていると、マユがぽんと手を叩く。
「おお、盲点だった!」
 ……マジ?
 マユは僕の手を掴み、ぐいっと引っ張る。途端に、僕の体は重力に喧嘩を売り出しながら宙に浮かぶ。あー、夢って素晴らしい。
「いつまでもみーくんのままだと、まーちゃんはしてもらえないことがあるのです!」
「え、どんな?」
 マユは、僕の手に頬を付けて、すりすりと撫でる。そして僕をチラッと見た。……ああ、成る程ね。
「じゃあ、まーちゃんは元に戻ってくれるの?」
「うん! そしてみーくんも戻って二人でラブラブランデブー!」
 マユが叫びながら、空を泳いで壁に突撃する。ガラガラと白い壁が崩れ落ち、空いた穴から真っ暗な空間が顔を出す。
 マユは躊躇せずにその空間に入っていく。
「……起きたら、戻れるのかな」
 僕も呟きながら、その空間に飛び込んだ。
0462名無しさん@ピンキー2011/08/20(土) 16:08:19.33ID:aqFWmNlr
「おにょーーーーーーー!!!!!!」
 朝、僕はマユの奇声で目が覚めた。……ああ、デジャブ。
「……まーちゃん? ――グフッ!」
 僕がマユに言葉を投げかけるのと同時に、腹の上に重量感。だけどその重量感は最近のものとは異なっていた。
「みーくん、みーくん、みっくーん、みーくんくん、みーくーん、みーくーるー、大変なのです!」
 初日と同じ台詞を叫ぶマユ。そしてぼーっとしている僕の頬を叩き、完全に目を覚まさせた。

 マユがいた。

「……おお」
 現状把握。理由もきっかけも何も無いはずだったけれど、どうやら僕とマユは元に戻ったらしい。
「まーちゃん、戻っちゃった! しょーしん!」
 ショボーンと自分で口に出した後、マユは破顔一笑して僕に笑顔を向ける。
「で、でで、でねみーくん!」
「なんだいまーちゃん」
 僕がマユに顔を向けると同時に、マユは僕に頭を向けて来た。
「…………」
 それは、夢で見たものと同じ光景で――多分、マユがして欲しいことも同じことだろうと、僕はマユの頭に手を乗せ、左右に動かした。つまりは頭を撫でた。
「……よしよし」
「へへー……みーくん、大好き!」
 おわー、まーちゃんが飛び掛ってきたぞー。
 マユは僕にのしかかったまま、僕の唇に自分の唇を合わせた。そして見とれるような可愛い笑顔で、僕に言う。そして僕もマユに答える。

「みーくん、×してる!」「僕も×してるよ、まーちゃん」
0463名無しさん@ピンキー2011/08/20(土) 16:09:03.16ID:aqFWmNlr
 とりあえず終了。グタグタ&エロ無しでごめんね。見てくれた人ありがとう。
0466名無しさん@ピンキー2011/08/29(月) 14:00:54.31ID:EAYcJxy7
湯女のが見たい!
あ、黄鶏くんと多摩湖さんも…
04714132011/09/01(木) 23:30:27.84ID:KQMPseql
>>399の前日談と>>412(と同時期)の一樹視点ならどっちが需要あり?


聞くだけ聞いて書かない可能性もゼロじゃないけど。
もっかい息抜きに何か書きたい気もする。
04774132011/09/03(土) 11:00:51.04ID:pzH/fTVT
まさかの一樹需要。電波女の方が書き易かったのに…(←じゃあ需要を聞くな)

ネタ自体は頭にあるので、一週間以内にざっと書いてみます。
0480名無しさん@ピンキー2011/09/04(日) 19:05:47.13ID:c7Zvab4F
ふだんあんまりこんな事は言わないんですが、あえて今日は言いましょう。


このロリコンどもめ!!
0481名無しさん@ピンキー2011/09/04(日) 19:05:59.96ID:c7Zvab4F
この町には『ころしや』がいる。間違いない。
もう半年、誰も殺されてない。だからみんな無かったことにしようとしてる。
『ころしや』はどっか行っちゃったんだって。

だけどあたしにはわかる。

『ころしや』はずっとすぐ近くにいる。ぜったいいる。

「こーたくん、かーえりーましょー」

出てこい、『ころしや』。はやく。

はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく。

「……うん。先にゴミすてに行ってからね、長瀬さん」

このエサをあげるから。




0482名無しさん@ピンキー2011/09/04(日) 19:06:14.48ID:c7Zvab4F
「るんるんらら〜ん」

空いた両手をぶらぶらさせ鼻歌を歌いながらのんびり歩く。
ほら、あたしはこんなに油断してるぞ。早く来い。

「ああ…長瀬さん、そっちに行くと遠回りになっちゃうよ」
背中から聞こえてきた小鳥みたいな声に振り向くと、ゴミ袋を重そうに抱えたこーた君が教室2つ分くらい向こうでノロノロしてた。
いけない、離れすぎちゃったか。少し待ってよう。

「ららら〜。
むひゅひゅ、いや〜ん。あなたと2人っきりになりたいなって、おとめごごろなのに〜」
「あう……」
あたしの言葉にこーた君が真っ赤になってうつむく。
その横顔はとってもキレイで、女の子のあたしよりずっと女の子みたいだ。

ううん、顔だけじゃない。

「よいっしょ……」

真っ白な肌。細い手足。ゴミ袋を持つだけでふらふらしちゃう弱さ。
女の子よりもずっとずっと美味しそう。
だから人を沢山殴って手がゴツゴツのあたしからは、一瞬目をはなすはずだ。

「う〜ん、今日もこっちの校舎裏はだーれもいないわねぇ〜」
「うん。
この辺の教室は第二理科室とか物置みたいな教室ばっかりだし、焼却炉に行くにもすっごく遠回りだからね。
………だから明日も明後日も、誰もこないよ」
バカなこーた君。なんにもわかってない。
『ころしや』は来るんだ。あたしを狙って。
あたしにはわかる。『ころしや』は悪いやつを殺しに来る。ねーちゃんみたいに、悪い事をした人間を。

ねーちゃんは、まぁ悪いねーちゃんじゃなかった。
高校生だったのに小学生のあたしよりずっと弱くて、にぶくて、バカなねーちゃんだったけど、でもまぁ優しかった。
友達も結構いたみたいだ。とーるも連れて来てくれたし。
だけどねーちゃんは悪い事をしていた。何かはもうわからないけど、弱いねーちゃんは毎日毎日それを怖がってた。
だからねーちゃんは殺された。『ころしや』にグチャグチャにされて。

ねーちゃんよりももっともっと悪い事をしたあたしは、グチャグチャのゴリゴリのズタズタのドロドロにされちゃう。
そうに決まってる。
なんでみんなわからないの?いつだって狙われてるんだよ?なんでみんなそんなすぐに忘れてしまえるの?
『ころしや』を、誰かがいなくなる怖さを、ねーちゃんが殺された事を、自分がやった悪い事を。
0483名無しさん@ピンキー2011/09/04(日) 19:06:33.70ID:c7Zvab4F
「よっと……。うん、これで今日のゴミ捨て当番はおしまいだね」
「おつかれさまでしたー」

あたしはグチャグチャのゴリゴリのズタズタのドロドロになりたくない。
そのまきぞえで、おとーさんやおかーさんや、大好きなとーるにケガもされたくない。
だから決めた。『ころしや』を殺そうって。

「じゃーかえりましょ」

だから今日もあたしは、こーた君を横に置いてる。
おとーさんやおかーさんを離して。とーるから離れて。いっぱいガマンして。
作戦はこうだ。
キレイなこーた君に目をうばわれた『ころしや』に向かって、こーた君を突き飛ばす。
体勢をくずした『ころしや』をあたしが殺す。グチャグチャのゴリゴリのズタズタのドロドロになるまで殴り続ける。
そしたらあたしは助かる。きっとこーた君は死んじゃうだろうけど。

「うん……」

ふやふや笑うこーた君を見てると、ちょっと可哀相だなって思うけど、あたしが助かるためなんだからしょーがないよね。
どうせこーた君は幸せになれない子なんだから、あたしが生きてたほうがずっといいよね。
…もちろんあたしだって、こーた君に死んで欲しいわけじゃないよ。悪い事をしてるわけじゃないんだよ。
ちょっとでも死ににくくなるように、頑丈になるように、毎日殴ってあげてるじゃないか。
キレイな顔や手足に傷が残らないよう、せいいっぱい気をつけながら。
そうだ。毎日あたしは頑張ってる。こーた君もそこそこ頑張ってる。

「あんずを迎えに行ってからね」
「………………………」
嫌だ。

あの小さいのは全然頑張ってない。なんにもしてない。
なのに、こーた君から優しさを当たり前みたいにもらってる。もらえるのが当たり前だって、ありがとうも言わない。
あんなののために時間を使うのはムダだ。

「………それじゃ、行くね」
「あっ…、れっつごー!」
だまってるあたしを置いて、すたすたと歩き出したこーた君をあわてておいかけて、右に並ぶ。
ムダなのに。
なのに、今日もあれのところに歩いてく。
しょーがない。このときだけはこーた君はあたしの言うことを聞かない。
どんなに殴っても、蹴っても、立ち上がらなくなるくらいに痛くしても、ナメクジみたいにズルズルとあれの所へ行く。
あたしを1人にしちゃう。

なんで?
いっぱいお菓子もお金もあげてるのに。『あたし』だってあげてるのに。
なんであたしの事を1番にしてくれないの?
0484名無しさん@ピンキー2011/09/04(日) 19:10:56.72ID:c7Zvab4F
来週までにもうちょっとやる気が出たら弱エロパートも書くかもです。
私エロは門外なんで、書くのが疲れる=エロパートは『息抜き』にならない……。

ロジックが微妙に繋がってないのは、視点が壊れてるからです。
タイトルが無いのはダルくて考えるのが嫌になったからです。だめじゃん。
0485名無しさん@ピンキー2011/09/04(日) 19:14:28.82ID:c7Zvab4F
書きながら思ったけど、
こーたは『長瀬がとーるを忘れてるふりをしてる』と、気付いてる事にしといた方がよかったな。
全部わかった上で、横に居てあげてる的な。
0486名無しさん@ピンキー2011/09/05(月) 17:26:17.52ID:0VGX+QRE
それでもいいし、そうじゃなくても良いと思うぞ。
面白い。期待してる。
0488名無しさん@ピンキー2011/09/06(火) 02:39:53.43ID:16eKakPF
これでせめて一樹の心情が所有欲とか依存心だったら救いがあったのに。
こーたくんマジ頑張れ。続き期待。
04894852011/09/09(金) 22:38:42.78ID:mz3Mv9nx
すみません。ちょっと今週は書けなかった…。
0491名無しさん@ピンキー2011/09/16(金) 20:12:41.35ID:vHLnWN/v
そして誰もがいなくなった。

…………嘘、だよね?ww
0492名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 21:45:20.60ID:10CKRQAY
 )ノ
(__) <嘘だへど
(\_)
(__)
||

というわけで妄想ポイントが貯まったので、よければどうぞ↓
0493名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 21:49:20.05ID:10CKRQAY
少し忙しい日だった。
右腕を骨折して入院していたイトコが帰ってくる日だったから。

お母さんは、朝早くから何やらメモ用紙にせっせと書き物をしたり、
足りない画鋲を家中の壁という壁から調達してきたり、
冷蔵庫をきれいにしたりと忙しそうにしていた。

聞くと、今日帰宅するイトコの退院祝いの準備だという。
イトコの帰りが遅れた時は冷蔵庫の中から救出するよう頼まれた。どうやら冷蔵庫に入ってイトコを待つらしい。
身体を張って出迎えをするなんて、お母さんはすごいなー。
わたしもイトコのために何か準備をしようと思い立った。


私は、イトコのお見舞いに行かなかった。
行く気がなかったわけじゃない。何度も行かなきゃと思ってはいたけれど、
あの日のショックで頭がこんがらがっていて、しばらく整理がつかなくて、
飛び降りたときに、イトコが大怪我をしてしまっていたことも手伝って、
どんな顔をしてイトコに会えばいいのかわからなかったから。

お母さんがお見舞いに行くときに、なんとか勇気を振り絞ってついて行こうとしたけど、
傷だらけの心がひりひりと痛んで、外の空気に触れられなかった。
結局今日まで電話一本してなくて、このままだと後ろめたさで布団から出られなくなりそうなので、今日はしっかりイトコを出迎えたい。
0494名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 21:58:10.86ID:10CKRQAY

最初にするべきことは、すぐに浮かんだ。
イトコに会ったら、まずはちゃんと謝ろう。
イトコはわたしのために怪我をしたのだから。私も去年同じことをしたから、あの息の詰まるような骨折の痛みがよくわかる。
ちゃんとくっついたかな。

それと、お礼がしたい。
わたしにもう一度飛ぶ機会をくれたこと。
イトコが一緒に飛んでくれなかったら、私は今でも踏ん切りがつかず、宇宙人にも地球人にもなりきれなかったろうから。


それで、お礼に何をすればいいだろう。部屋に戻って、わたしは考える人になる。全裸にはならないけど。
順当に思いつくのはプレゼントをすることだけど、どんな贈り物をすればいいのかわからない。
会って日が浅いこともあって、イトコの趣味や欲しいものについての知識が乏しいし、それとなく訊いてみることも今からでは不可能だ。用意できるものにも限界がある。
すぐに用意できて、イトコのにーずに応えられるものは、と思いを巡らせて、

「あ、」
ひとつ思い当たる節があった。確か、飛び下りの日の前夜のこと。
お母さんとイトコがトランプか何かで盛り上がっていた時、わたしは人恋しくなって、イトコの部屋の前で聞き耳を立てていた。
そのあと部屋に戻って寝てるときに、イトコの何やら悲痛な叫び声に起こされたから、あの日のことはよく覚えている。まったく迷惑なイトコだ。
思い出したわたしは、さっそく衣装棚へ。
0495名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 22:03:17.14ID:10CKRQAY
開けたのは上から三段目、つまりは下着類の引き出し。

イトコはあのとき確かに言っていた。勝ったらギャルのパンティーくれ、と。
幸いパンツなら部屋にたくさんあるし、プレゼントはわたしのパンツで決まりだ。
せっかくだから、お気に入りのやつをあげることにする。この白地にリボンのがいいだろうか。そっちのブルーのやつもフリルが可愛いかも。
でもやっぱり水玉かな。お気に入りと別れるのは寂しいけど、そのぶん気持ちも伝わるから。


…あれ?
その水玉模様のパンツが見当たらない。洗濯中だっけか。

…まさか。
とっさに部屋の入り口に顔を向けて耳をそばだてる。お母さんが上がってこないのを確認して、おもむろにワンピースをぺろり。

「……」
やっぱり。
一番のお気に入りである水玉パンツには今、わたしの両脚がはまっていた。

…どうしよう。
これを脱いでプレゼントするべきか、ワンピースの裾を持ち上げながら、しばし迷う。
お母さんによるとイトコは匂いフェチだそうだから、わたしの匂いがついたのをプレゼントしても、失礼にはならないかもしれない。

匂いフェチかー。
裾をつかんだまま、自分の手の甲をすんすん。
正直この匂いがいいのか悪いのか、自分ではわからないけど、イトコにはイトコの事情があるのだろう。たでくうむしもすきずきっていうしなー。
プレゼント、これにしようかなー。
嗅ぐのかなー。
わたしの、




0496名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 22:08:08.20ID:10CKRQAY
「ひぅ…」

イトコが直接わたしのそこに鼻を寄せるさまを想像してしまい、慌ててワンピースを押さえて閉じた。
動悸が急に高まって、耳とほっぺに血が集まってぞわぞわする。

穿いたパンツをプレゼントするということはつまり。
パンツはその…そういう部位に密着しているわけで、
そこにあるのは皮膚だけじゃなくて色々あって、当
然そこの匂いがついてるわけで、わたしはこの
パンツを今朝から穿いているわけで、そんな
に時間は経ってなくて、でもさっき小さ
いほうに行ったりしたわけで、でもち
ゃんと拭き拭きしたわけで、だけ
どちょっと不安で、イトコの鼻
がわたしより高性能だった
らどうしよう。取りあえ
ず脱いで匂いを確かめてみ「エリたーんマコくん今からタクシーに乗るってー」「ひぎぃ」

お母さんの声。勢いでパンツを下ろしかけた格好のまま固まる。両手にワンピースの裾がぱさり。
首だけきりきりと部屋の入口に向けるけどお母さんはいなかった。声は一階からかな。

「わ、わかったー」
か細い声で応じる。最近のわたしは、大声が得意じゃない。
よろしくねー、というお母さんの声に再び応じてから、ほっとひと息。


危なかった。
冷静に考えると何が危ないのか微妙にわからないけど、とにかくひと息。次いでパンツ穿きなおし。
変な声が出てしまった。「ひぎぃ」だって。お母さんに聞こえなくてよかった、気がする。
この言葉からは何かイケナイ香りがするのだ。そういう電波を受信したのだ。
0497名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 22:15:35.89ID:10CKRQAY
こほん。

改めて依頼品を…じゃなかった、改めてわたしの股間を覆うプレゼント候補について考える。

穿いたパンツをプレゼントするということはつまり、わたしのそこやそれらの匂いを嗅がれてしまうということだ。
イトコがわたしの二の腕の匂いを嗅ぐ程度であれば気にすることもない(かな?)けど、さすがにそれとこれとは話が別だ。
その、小さいほうの匂いを嗅がれるのは、さすがに。

……それだったら、これといって匂いがしなければ問題ないのかな? ああでも、それじゃ匂いフェチのイトコのにーずに応えられないかも。ううむ。

とにかく、固まっていても仕方がない。イトコはもうしばらくで家に着いてしまうし、そろそろ決断しないといけない。
そう、これはおとしまえというやつである。これからもイトコと暮らすための。
覚悟を決めよう。
わたしはこのお気に入りのパンツを脱いで、イトコへのプレゼントとしよう。

思い切ってワンピースの中に両手を差し入れ、パンツに親指をかけ、そこで階下に耳をすませるのを忘れない。
お母さんが上がってこないのを確かめてから、ゆっくりと指に力を込める。けっして焦らず、パンツを下ろし始める。
0498名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 22:22:49.88ID:10CKRQAY
……ああ、またイトコの幻覚が、わたしのそこに鼻を寄せる。
まるで電柱に張りつく犬のように、真剣にわたしのその部分に鼻をうずめて、
目を閉じて、
本人は深呼吸のつもりらしい浅い息をついて。

………………。



……ちょっと可愛いかも。

そうしてじゃれついてくるイトコは普段の意地悪ばあさんな様子とは違っていて、本当に動物みたいで。
なんだか、母性本能を刺激するのだ。わたし、エリおかーさん。
犬より猫が好きだけど、たまには犬もいい。


「……ふふ、イトコ?」
架空のイトコの頭をそっと両手で挟み込む。
ワンピースの裾は顎で押さえて、わたしの腰は心なしかゆらゆらと楽しげに揺れている。

「もっと……もふもふする?」
腰のゆらめきに方向性が加わり、縦運動を始める。
わたしのそこは架空イトコの鼻に軽く押しつけられては離されて、
そのうちにイトコもわたしの動きに合わせはじめて、
なんだか不思議な感じ。
このままどこまでもいってしまいそうなとーすい感が、わたしの頭を痺れさせ「エリたーんお母さん冷蔵庫に入るからー」「みぎぃ」

またもお母さん。架空イトコを誤って握りつぶすわたし。
はずみでワンピースが落ちて、両手に被さる。

「わ、わかったー」
もう一度か細い声で応じる。最近のわたしは、大声が得意ではない。
よろちくねー、というお母さんの声に再び応じてから、
0499名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 22:27:18.89ID:10CKRQAY
一息つこうとして、うまくいかない。
動悸に押し上げられて肺が浅い息しかついてくれない。ほっぺに集まった血はもうにじみ出てきそうなほどに火照っている。頭痛い。

勢いに乗って開いてはいけない扉を開きかけていた。
少しずつ冷静さを取り戻していく頭にほんの十数秒前の自分が蘇ってくる。やめて蘇るのやめて。

もっともふもふする? だって。もふもふってどういうことだろう。
こう、わたしの股間に、イトコの、鼻が、こんな風に、

「ひゅぅぃ」
指で軽くなぞった瞬間、全身の毛が逆立ったので、慌てて引っ込めた。

そろそろ歯の根が合わない。いま鏡を覗いたら、記録的な赤色を見られると思う。
こんな顔イトコには見られたくない。布団すごく巻きたい。
勇気を振り絞ってもう一度ワンピースをめくりあげてみようとしたけど、今度こそ無理だった。お気に入りプレゼント作戦、失敗。


「……はぁ」
なんだかすごく疲れた。もうイトコは着いてしまうし、仕方がないので別のパンツにしよう。
衣装棚からリボンのパンツを取り出して握りしめてから、あらかじめ巻いて結んでおいた布団に、膝まですっぽりと収まる。

おもてで車のドアが閉まる音と走り去る音が響いた。多分イトコの乗ったタクシーだろう。いよいよだ。

布団の内側の闇が、吐息で急に熱せられるのを感じる。
わたしの顔が火照っているのは、暑い布団の中にいたせいだと、イトコは勘違いしてくれるかな。

〈おわり〉
0500名無しさん@ピンキー2011/09/24(土) 22:33:32.52ID:10CKRQAY
以上です。

書いているうちに、エリオの性格がだんだんわからなくなってきた…
0504名無しさん@ピンキー2011/09/26(月) 13:58:02.41ID:gy0w/2fo
GODJOB
このあとイトコに調教されちゃうんですねわかります
0511名無しさん@ピンキー2011/10/18(火) 12:14:11.25ID:yVwJbTIV
「みーくん」
「ん……なんだい? まーちゃん」

 わたしが呼ぶと、こっちに振り向いてくれるみーくん。
 優しくて、格好良くて、大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで……わたしが世界で一番×している人。

「みーくんはー……わたしのこと、好きぃ?」
「勿論。見目麗しいまーちゃんのことを嫌いなみーくんなんてこの世に存在しないさ」

 そう言ってわたしの頭を撫でるみーくん。

「んふふー! みーくん、だーいすき!!」

 わたしはニコニコ笑いながらみーくんに抱きつく。そのままうりうりと頭を擦りつけ、みーくんからわたしの顔が見えないようにする。

「みっいっーくん。みーぃーくん。みーっくーん」
「好きだぜまーちゃーん」

 他愛も無い会話を続けるわたしたち。不意に思う。今、みーくんにこの事を言ったらどんな反応をするのかな、と。
 慌てる? 青ざめる? 叫ぶ? それとも泣いちゃうかな? みーくんの泣き顔は見てみたい気もする。……ああ、いや、違う。


 あなたは『みーくん』じゃなかったよね。


 「みーくん」気づいてる?「みーきゅーん」わたしは知ってるの「大大大だーい好きなのです!」あなたが『みーくん』じゃないって。

「僕もだぜ、まーちゃん」嘘つき。

 あなたはわたしのことが好きなんじゃない。『まーちゃん』が好きなんだ。『わたし』を見ないで『まーちゃん』だけしか見ていない。
 でも『みーくん』はわたしが殺した。優しくて格好良くて大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで……わたしが世界で一番×していた人。
 ごめんね、『みーくん』。
 今の『私』はこっちの『みーくん』が、×くんが大好きなの。……ごめんね。ごめんね。ごめんね。

「みーくん……世界で一番、×してる」

 ごめんね。



 何となく書いてしまった。10巻後だと思ってる。……正直すまんかった。
0512名無しさん@ピンキー2011/10/19(水) 00:53:29.46ID:3QVqJZv5
いいよー、いいよー
GJ
治ったら治ったで大変だよなあ
0514名無しさん@ピンキー2011/10/20(木) 17:55:30.28ID:zwboGaBf
マユが回復したらみーくんは用済みだもんな。
もしこうなったらみーくんはどうなるんだろうか。
0515名無しさん@ピンキー2011/10/22(土) 22:02:01.80ID:SP4+zWN5
用済みになった×君はゆずゆずが責任を持って回収するよ
0517名無しさん@ピンキー2011/10/24(月) 17:05:06.16ID:+0rpDQK6
じゃあ上半身はゆずゆずが、下半身はせがせが(長瀬)が持って行くといいよ
0519名無しさん@ピンキー2011/10/31(月) 03:43:38.53ID:1Nt5BOII
十巻まで読んでおいて回復したらみーくんが用済みだと思ってるやつが居ることにびっくりだ
0520名無しさん@ピンキー2011/10/31(月) 09:32:39.59ID:/RuNO8nW
まだ一巻しか読んでないけど、
みーくん捨てて他の男とホテルから腕組んで出てくるシーンとかあれば寝取られ厨の俺大歓喜。

まぁ無いだろうが。
全巻買ってきたから続き読むし。
0524名無しさん@ピンキー2011/11/20(日) 20:19:55.84ID:FtJ9nROq
敢えてカイショーと主人公(『僕』の方)で挑戦してみようとしたら
どんなに状況的に追い込んでも漫才しかしてくれない…
0526名無しさん@ピンキー2011/11/21(月) 13:56:39.83ID:tOqS4b+q
リョナまではいかないんだけど
まーちゃんが痛がったり苦しんでるの想像するとえらい興奮してくる。
でもまーちゃんSSは甘々なのばかりなのでそういう需要はないみたいね。
05275242011/12/04(日) 05:46:06.23ID:PNSubOVY
「出来ない」って言うと出来るの法則で、頑張ってたら書けました
書けたのはここのおかげということで、投下させていただきます

組み合わせはカイショーと弟子です
糖度がやたら高いのでご注意を
0528弟子×カイショー(1/11)2011/12/04(日) 05:46:37.63ID:PNSubOVY
 甲斐抄子の部屋に行ったら、甲斐抄子が居た。当たり前だ。
 だけど僕は目が点になった自分をコミカルに想像してお茶を濁すほど衝撃を受けている。
甲斐抄子に至っては慌てることすら諦めてのんびり起き上がり、こっちを向いた。
 タオル地のゆるいワンピース(バスタオル巻く代わりに着るようなやつ。リラッ〇マ。というかこんなもん持ってたのか)
を着て、髪も乾かしてない甲斐抄子だ。
 その甲斐抄子が、口を開く。
「女の子の部屋に勝手に入るとはいい度胸ですね」
「はは、忘れ物取りに……。まだ風呂かなと思ってこっそり」
 睨みつけられる。
 僕はさっきまで甲斐抄子の部屋でうだうだしていた。甲斐抄子がそろそろ風呂に入ると言うので帰り、
自分の部屋についてから小説に関するメモの入ったノートを忘れたことに気づいて慌てて引き返してきたのだ。
「っていうかそういうのって風呂前に済ませて風呂でまとめてさっぱりするのが普通じゃないか?」
 それか風呂で済ますとか。
 わけのわからない現実に思わず変な指摘をすると、甲斐抄子は立ち上がり、べしんと僕のパーカーを叩く。って、
「う、わ、べとべとした手で触んな」
「黙りなさい。大体私はあなたみたいな人と違って普段からこういうことをするわけじゃないのでそんな計画性あった方がいやです」
 涙目にすらならずにまくし立てる。間違いなく甲斐抄子だ。
 なのに、見たことがないくらい血色がいいからだろうか。一応…………色気が…………あと可愛い。なにこれこわい。
「あーごめん。ちょっと驚いただけだから。ごめん」
 流石にひどい現場を押さえてしまったので、出来るだけ誠実に頭を下げた。
よく考えなくても、僕だって見られたらショックだ。
「許しません」
「……えー」
「お嫁に行けません」
「むしろ元から行けな……あたっ」
 頭を叩かれそのまま黙り込まれた。状況を上手く丸める術が思いつかない。
「誰にだって性欲くらいあるし間が悪いやつだってきっと世界中に居るよ。僕も運悪く母さんが……」最悪の台詞だ。
「……勘違いしないでください。そういうんじゃありません。今日はちょっと、寂しくなっただけですから」
 頭を上げると、じわじわショックが浸透してきたのか、あの甲斐抄子が涙目になっていた。
辛いもの食べたときとか以外で初めて見た。言ってる内容もあまり言い訳になっていない。
甲斐抄子なりのしどろもどろなのかもしれなかった。
 ム〇ゴロウさんして怒らせてごまかそうとして右手を頭に乗せる。
 何故か、手つきが優しくなってしまった。あれ?
「勝手に人の頭触らないでください。怒りますよ」
 あれ? ちょっと声が甘いだけで充分脅威になっている。
 これはまずいのではなかろうか。
0529弟子×カイショー(2/11)2011/12/04(日) 05:47:01.75ID:PNSubOVY
 気まずい方がまだマシな沈黙の中、甲斐抄子は頭を振って僕の手を振り払う。
「私の湯上がり姿にくらくらしているようですね」
 見事な棒読みで、どう考えてもネタ振りだった。湯上りとかじゃねえよってつっこみは野暮そうだ。
「……え…………あー………………くっそ」
 上手い返しが浮かばなかった。
「えっ、本当にくらくらしちゃってるんですか」
 甲斐抄子は目をまんまるくして純粋に疑問を投げ付けてくる。
「して……してるわけが………………すみませんでした」
 子供みたいな目に晒されて、ついに嘘がつけなかった。
 今度は平気そうにしている甲斐抄子とは対照的に僕が一方的に気まずい。
 甲斐抄子は口の中で何やらもごもご言っている。
「……ほんとに早漏だった……」
「ちょっと待ったー」
「え?」
「漏れてねーし。っつーかギリギリ起き上がってもねーし!」
 要らんことまで暴露していた。
「……ギリギリ」
「そこで顔を赤くするな生娘か」
「イエスですが何か文句でも童貞」
「っ……うっせぇやい、全部小説に捧げてきてそんな余裕なかったんだよ」
「あなたの場合は募っても相手が居ないんじゃないですか?」
「そうだよ居ないよ。大体きみは可愛いんだから比較対象にすんなよ」
「…………………あなたの口から、可愛いなどという言葉が、出て、くる、とは……」
 ミスった。どっちからしても破壊力が高かった。
「あのさ……そんな顔されると、過ちもいいんじゃないかって思えてくるから……」
 やめてくれ。
 最後の言葉だけ何故か呑み込んだ。それは、わざとだったんだろうか。
「…………奇遇、ですね……」
 おずおずと指と指を触れさせるようにして、その言葉は耳に入り込んでしまう。
 僕は放火された。
 指も瞼も耳たぶも発火している。気管支が既にちょっと気持ちいいのは、もう仕方がないことなんだろう。
 暖房のきいたこの部屋では、余計に喉が飢えてしまう。思いつく水源は目下にあった。
触れて、触って、こじ開けて、舐めとって、自分の涎ごと吸いこんで……
考えるまでもなく他人の唾液に食らいつく辺り、どうかしている。気づけば肩を抱いていた。
「い、たい」
「ごめん」
 言われてからやっと、強く吸いつきすぎてしまっていたことに気づく。それと眼鏡。
 片手で眼鏡を外して適当なところに置きながら、離れない体と裏腹に頭では
やっぱりやめようかという思考がちらついた。お互いインドア派が極まっているので既にかなり息が荒い。
 甲斐抄子がこちらを見上げて、目が合う。
「やさしくしてください」
「……はい」
 今度はそっと唇を合わせる。少し、照れた。
 途中から柔らかい動作の方が唾液が溜まっていくのだと気づいて、もう少し効率的になって、息継ぎをして、
そんなことを続けていると、舌も歯も内壁も唾液もどちらのだかわけがわからなくなっていく。
手のひらが触れているこわばり気味の背中は少しずつ弛緩している気がした。
0530弟子×カイショー(3/11)2011/12/04(日) 05:47:28.09ID:PNSubOVY
 途中で息が苦しくなって、どちらからともなく口を話す。腕は完全に回して抱きすくめていて、
一旦とはいえ離す気にもなれなかった。というか顔を見ていられないので抱きしめた。
 呼吸だけをする。ややあって、甲斐抄子が口を開いた。
「このまま、最後までします?」
「…………したい。ごめん」
「謝らないでください。私も同感ですから」
 甲斐抄子のおでこが僕の肩を好きになったようにじゃれる。長い髪がふわふわ乗っているのが、
見えなくてもわかった。シャンプーの匂いがする。
 それから、軽く胸を押される。甲斐抄子は僕の力が抜けたのを見計らって腕からすり抜けると、
引き出しから小さな何かを取り出した。小さめの……見えない。
「まさか役立つ日が来るとは思っていませんでした」
「え」
「友達がメーカーを間違えたからいらないと言って押しつけてきたんです」
 その前にそれ何、と聞こうとして自分の馬鹿さ加減に気づく。……師弟で背負うリスクなんて
監督された作品の設定ミスとかくらいで十分だっていうのに。
 言い訳をさせて貰えるならそれの出番がない人生すぎて『メーカー』という単語と繋がらなかったのだ。
あと眼鏡。そりゃあ、色々並べて売ってあるんだからさ、メーカーくらいあるさ。
「助かります」
「いえいえ」
 甲斐抄子は部屋の照明をそっと落として、小さな豆電球だけを残す。
 とことこ歩いてくる足音が妙に可愛らしくて、こちらからも歩み寄ってもう一度抱きしめた。
間抜けな足取りで布団の上まで移動する。歩くにも止まるにも躊躇わない。間取りをかなり把握しているなぁ、
と他人事のように思った。
 前傾姿勢にならなければ肩が遠くて、逆に言えばちょっと前傾姿勢になるだけで白い肩口がすぐそこだ。
特に思うところもなく口をつける。あと舐める。甲斐抄子の皮膚の味なんかとっくに知ってるはずだったのに、
不思議な感慨だ。本能全開だった。
 甲斐抄子の手は背中には回ってこないけど、僕の胸の前で布を掴む手のひらは、僕を受け入れている気がした。
 意を決して体を離して、貧相だ貧相だと評してきた胸をタオルの上から触る。ひよこでも撫でているような、
妙な気分だ。さっきみたいに痛いと言われてしまわないように最初から加減をする。
 それからタオル地のワンピースをはだけさせて直接触れてみた。
 僕の手が熱いのか、肌の表面は冷たく、柔らかい。乳首だけが手ごたえを感じさせているように錯覚すらする。
「冷たいな」
「そっちはあったかいです」
 甲斐抄子は会話で止まった僕の右手を両手で掴んで、胸に押しつける。どうやら心臓吐きそうなのは
僕だけじゃないようだった。
「……ほっとしますね」
 手のひらの熱がお気に召したようだ。
0531弟子×カイショー(4/11)2011/12/04(日) 05:47:49.88ID:PNSubOVY
 甲斐抄子は、暫く惚けたと思いきや今度は僕の服を脱がしにかかる。
「ずるいです。あなたも脱いでください」と言いながらパーカーを脱がせてきたのでTシャツも脱いで半裸になる。
ズボンも適当に脱ぎ散らかしておいた。あ、靴下脱げた。
 その辺りで攻守交替ということで、しゃがんで背中と膝の裏に手を回して座らせる。
「ひゃ」
「どっこいしょ」
「突然怖いじゃないですか。何か言ってくださいよ」
「じゃあ、触っていいっスか」
「え、あ、どうぞ」
 どんなテンションだ、と言いたげに睨めつけられた気がした。それは僕だって言いたい。
 軽く口を合わせて、頬を手で包む。小指で耳を触ってもう一度して、止まらなくなる前にターゲットを
首筋に鎖骨にと移す。
 胸の真ん中でちゅっと音を立てた辺りで、甲斐抄子の手が首に回された。
 僕も胴体に手を回して、背中をつーっとなぞった。甲高いような力が抜けたような声が降って
後頭部をぎゅっと掴まれて、反射的に怒らせてやいないかと思う。だけど、何もかも、やめる気にはならなかった。
ワンピースはもう了解も取らずに下げられるところまで下ろす。
 へその横に鼻先を押しつけるようにして口づけると、消え入りそうな声で「恥ずかしいです」と聞こえた。
 甲斐抄子が腰を持ち上げて僕がワンピースを完全に脱がせると、甲斐抄子は全裸になった。儚い装備だった。
礼儀としてこちらも全裸になると、今度は甲斐抄子から首に口つけてくる。肌に口が触れると吸いたくなるのは
同じらしく、淡い刺激がくっついてくる。いまいち加減がわからないようで、一瞬ぴりっと痛みが走った。
 加減の失敗に気づいのかすぐに口は離される。代わりに、もたれかかるように抱きつかれた。
 背中に回った手がもぞもぞと自分の居場所を探る。腕を伸ばしきる度胸がないらしいその仕草は
全然甲斐抄子らしくないのに、元から小動物っぽいからか、なんとなく甲斐抄子のような気がする。
「すみません。跡ついちゃったと思います」
「あー…………まあいいや」考えるのめんどくさい。
 僕の胸にくっつけたおでこを離した甲斐抄子は、尻を浮かせて僕にキスをした。苦手な酒をちびちび飲むような
弱々しいくっつき方と離れ方だ。
「そういえば、僕今日のが初めてだ」
「童貞なのはもう聞きましたよ」
「いや、えと、き……接吻的な何か」
「私だってあの無駄にダイ○ンなのがファーストですけど」
「ごめ……」
 また唇が触れる。今度はかなり口を塞ぐ意図を感じた。遠慮がちに唇の内側を舌でなぞられる。ぞわぞわした。
その舌を絡め取って軽く吸ったら、距離が邪魔になってくる。引き寄せて僕の膝(いつのまにか正座していた)に乗せた。
「あの……」
「ん、何」
 ド近眼の僕より焦点が合ってない甲斐抄子の頬を撫でる。さっきよりは温度があるだろうに、まだ僕の手よりは低い。
0532弟子×カイショー(5/11)2011/12/04(日) 05:48:15.02ID:PNSubOVY
「さっきから、私ばっかり気持ちいいような……」
 言外に負けた気がすると言っているような態度だ。気を遣っているわけじゃない辺りが甲斐抄子らしくて安心する。
「気のせい気のせい」
 僕だって、唇と舌の感覚はそう鈍くない。
 まだ湿っている髪を撫でて梳いて、広げた舌で胸の先を包んで、押しつけて、そのまま舐め上げる。
甘いのは匂いだけで、他と同じく汗の味がした。どこか懐かしいような気もしながら、綺麗すぎるイラストとは
程遠くにある茶色を口に含む。その味が舌に馴染む頃には、いつまでも口にしていられる気がした。
「赤ん坊、みたいですね」
 ふいに優しく頭を撫でられてしまう。ちょっと恥ずかしいような照れくさいような嬉しいような感じがした。
「なんかそれ、いつか言った覚えが……」
「仕返しです」
 不敵に笑っていても声が上擦っていた。思わず撫でた耳の後ろも、再びくすぐった背中も、
普段の好き嫌いや態度のとがり方と同じように、価値が反転された弱点だ。いつまでも触れていたくなる。
弱点が多いことが、美徳になる。
 内腿を通って、まだ触れてなかった核心に、そっと手をつける。左腕は背中に回して、ぽんぽん叩く。
 右手が粘膜の感触にたどり着いた。湿っているだとか濡れそぼっただとかもよく聞くけど、
蜜がどうこうって描写の方がしっくりくる。というより皮膚が融けているんじゃないかと思える。だんだん感触に
慣れて調子に乗る頃、親指がとっかかりに触れる。
「       」
 また力が抜けるような鋭い声が上がる。それは、背中をなぞったときよりも大きく響いた。思わず手をどける。
「……ひぁ、ぁ、あの、声っ……ご近所迷惑になるので、あの、そこ触るとき何か言ってくだひゃい……」
 いやでもそんな、両手で口を押さえて赤面に赤面を重ねたような顔をして泣きだしている甲斐抄子に哀願されても
余計に気分は昂じてしまうだけで、わざといじめたくなる。当の甲斐抄子はそれに気づかない。もうこうなったら
自分の精神力で抑え込むしかない。素数を使えば捗るのかい?
「あー、うん、わかったから……」
 泣かないで。とほざいても無理なんだろう。
「じゃあ、また触るよ」
 必死に首を縦に振るのが返事代わりだった。車のダッシュボードの上に置く置き物みたいな動きだ。
 僕は引き続いて指の平を滑らせている。甲斐抄子は何かに耐えるように、腕の中で身を強張らせたりよじらせたり
しながら悶えている。一度咳き込んだので休憩を入れるついでに膝から下ろし、飽きずにこねくり回す。
 話しかけて笑い返されるとまたそうしたくなるように、指の動きの影響が分かるともっと続けたくなる。
ピアノには決して覚えなかった感情だった。
0533弟子×カイショー(6/11)2011/12/04(日) 05:48:37.72ID:PNSubOVY
 そのうちに骨張った左手が僕の手を思い切り握るので何かと顔を上げると、甲斐抄子が右手で口を押さえて
眉根を寄せていた。
「……はぁ、ちょっと、きゅうけい」
「やだ」
「ふぇぇえっ」
 不満を訴えたかったのであろう鳴き声を妖精が沸いて出そうなくらいさっぱり無視して、甲斐抄子が悶え死ぬのでも
目指すように、反応が顕著なところばかりを狙い続ける。
 先程から熱いのを通り越して冷や水でも浴びせられたような感覚になる瞬間さえある。
心臓が体の何箇所についているのかわからない。
「も……ほんとにらめ……」
 甲斐抄子の言葉に、手を止める。『すき』と言ったら『すし』になりそうなくらい舌が回っていなくて、
抵抗も弱々しい。やりすぎたかなぁという気にもなった。
 手をどけたので、指全体がふやけてきていることに気づく。指で指を触ってみると妙な感触だ。そういえば、
爪を切って二日くらいだったか。
 甲斐抄子の呼吸がある程度整うのを待つ。
「指入れても平気?」
 頃合いを見て顔を覗き見て聞くと、甲斐抄子は渇いた唾を飲み込むような仕種のあと口を開く。
「はい、大丈夫、です。それに、タンポン使ったことあるんで、結構余裕かと……」
 きまじめな返事と総動員した知識を照合して、思うより大きく安堵する。
 僕はきっと、なんだかんだでこのひとを傷つけたくないんだと思う。
 そろそろと探るように人差し指を入れていく。僕より体表面温度が低い甲斐抄子だけど、あからさまに熱い。
ざらついていて、指くらいならそこまできつくはなかった。
 心臓が高速回転して、頭がくらくらする。口の中で息が詰まって鼻で吸うと、空間を漂う匂いもいつのまにか
変わっていて、気づいた僕を誘惑する。
「っ……ねえ」
 ハッとして目を合わせると、甲斐抄子が両手で僕の頬を包んで、鼻先に熱い唇を押しつけてきた。
とても愛しそうな仕種だと思うのは、自意識過剰すぎるだろうか。
「そろそろ、大丈夫だと思います」
 それで本当に大丈夫だろうかと思っているうちに、甲斐抄子は四角い包装をぴりぴり破く。
「もうちょっと時間かけた方がよくない?」
 僕の発言に、甲斐抄子は可笑しそうに目を細める。
「多少痛いのは、仕方がないことです」
 そう言われても痛いのはなるべく避けたかったけれど、唇一つで、何も言えなくされてしまった。
「私が、待ちきれないので」
 甲斐抄子は小さな声で、言い訳なのか本心なのかわからない言葉を発信する。
もうとっくから熱くて仕方がなかった体と顔が、仕切りなおしたように発火して、発疹でも出そうだった。
 銀の包装はそこらにほっぽられて、中身は僕の元に寄越された。蘇れ、保健体育の記憶っ。
 緊張しながらかぶせて、焦らないように丸まったゴムを広げる。なんだかんだ早くしたい。なんとか、上手く出来た。
0534弟子×カイショー(7/11)2011/12/04(日) 05:49:01.29ID:PNSubOVY
 視線を上げる。甲斐抄子の顔を盗み見るつもりが、ばっちり目が合った。僕が誤魔化しを探す前に、甲斐抄子が
ぼそぼそ喋る。
「真剣で可愛い、って言ったら、怒りますか?」
 どうでもいいけどあんまり僕の息子を見ないでくれ。それと顔と見比べるな。恥ずかしい。
「……うぅん、可愛いかぁ」
 それ以前に甲斐抄子から素直な称賛が飛び出ることに驚きなので、
「新鮮だな」
 そんなきみの方が可愛い、なんてクサい台詞は死んでも吐けないけどな。
「そうですか……」
 もごもご言ってすごすご引き下がって、甲斐抄子は決して、可愛いを言いなおしたりはしない。僕もそれ以上
言葉を続ける気にはならなくて、甲斐抄子の唇を軽く食べてから、そっと押し倒した。
 両の脚を軽く持ち上げて間に割って入る。恥ずかしそうにしながらも、甲斐抄子は顔を逸らさない。
さっきより距離が離れたせいで表情はよく見えないけど、多分目は泳いでいる。
だから僕は更に脚を持ち上げる格好にはなるけど顔を近づけて、やっぱり目が泳いでいる甲斐抄子の瞼をついばむ。しょっぱい。
「じゃあ、入れるな」
「はい」
 慎重に場所を定めて、片手で手で位置を合わせて、身を埋めていく。時折身じろぐ甲斐抄子の額の汗を撫ぜながら、
ゆっくりと。
「思ったよりは全然、痛くっ、ないですよっ」
 おい声裏返ってるぞ。
「……っ、自分が得をしない嘘を吐くなって」
 顔にかかった髪をどけて、耳を指で挟む。感触が固くて、性的なものとは別の意味で気持ちいい。時折涙を零す
甲斐抄子が痛み以外の理由で身じろぎするのも、居心地がよかった。
 そうこうしているうちに、こっちも若干痛くなるくらいに締め付けられながらも、なんとか入りきった。
「わあ……」
 想像もしなかったけど、こういうのって感動するものだったらしい。二人顔を見合わせて同じことを言っていた。
 それを合図にしたかのように、僕の口から、自分でも信じられない言葉が漏れだす。
普段なら絶対、思っても飲み込むのに。歯止めが利かない。
「……嬉しい」
「は?」
「あ、べ、別に、きみとずっとこうしたかったとか、そういうことじゃないんだけど……」
「は、はい」
「かなり嬉しい。叫びたい」
 きみが好きだと叫んでしまったらこの行為とはまた別で問題があるので、その衝動は黙秘するけど。
 甲斐抄子が何か言い出す前に口を塞いでしまう。何を言おうとしているのか聞きたくもあるけど、
それ以上にキスがしたかった。抱きしめた体もそうだけど、唇も舌もざらざらした天井も舌の下も小粒な下の前歯も
それより少し大きい上の前歯も他の歯も、全部が全部、触れたら嬉しい。
 ひとしきり堪能したあとマイナスだった顔の距離をプラスに戻しても、二人共息するのが精々で何も言えない。
0535弟子×カイショー(8/11)2011/12/04(日) 05:49:18.99ID:PNSubOVY
 あーもー動かなくていいや。満足した。だって僕と甲斐抄子は別の人間のはずなのに、僕の感覚が一番鋭敏な器官
丸ごと預けてるし、甲斐抄子は腕の中に収まっているんだぜ。すげえ。
 快感には、急かされている。それでもここがまだ絶頂じゃなくて、絶頂を迎えれば萎んでいくものだなんて
嘘だろ承太郎。それと、
「大丈夫?」
 やっぱり、甲斐抄子は動いてなくても苦しそうだった。体硬そうだし、運動不足も祟っているのかもしれない。
体制変えるべきか。
「大丈夫、です。それよりさっきの……」
「超嬉しい」
 具体的には、泣いてないけどこのまま笑い出して何度も叫びたいくらい。
 少女漫画の主人公みたいだと評する人も居そうなくらいストレートなテンションだ。あるいは水泳選手っぽいかも
しれない。
「…………先に感想言わないでくださいよ」
 甲斐抄子ぷいっと明後日の方を向く。
「しょうがないだろ。……きみは?」
「………………二番煎じは不本意ですが……あなたと、同じです」
 甲斐抄子は、まっすぐ僕を見て言った。
「嬉しいんです、不思議と」
「……そ……っか」
「……はい。それと、痛いっちゃ痛いんですが……」
 甲斐抄子は僕の頭を引き寄せて、耳元に口を寄せる。
「…………ちょっとは、気持ちいいですよ」
 小さな小さな声で耳打ちされて、耳にかかった生暖かい息が体の芯を震わす。
「よかった」
 真偽を疑うよりも先に思わず口に出る。甲斐抄子が照れたのが、体の反応でわかった。
「何かしてほしいことある?」
 囁き返すと、甲斐抄子は軽く笑う。
「起こしてください。……このまま、抱っこしてください」
 なるほど。意図はすぐにわかった。僕は甲斐抄子を抱き上げて、投げ出した脚の上に乗せる。
 僕は筋肉がない方だけど以外と持ちあがる辺り、甲斐抄子は結構軽いのかもしれない。……ちょっとふにふに
しているけど。
 所謂対面座位の状態になる。動作の後にいちいち一息つくところが若々しくない。ふいー。
 胸が鎖骨にぶつかったはずが、そのまま柔らかさと汗で貼りつく。二人共全体的には骨ばっているくせに、
ぺたりとした感触だ。
 甲斐抄子は僕の耳に頬を寄せて、しばらくしてから静かに声を零す。
「一人は、別に慣れてますし、大丈夫なはずなんです」
「……うん」
 相槌を打ってから、しどろもどろにしていた言い訳の続きだと気づく。
「でも、偶に無性に寂しくなることも、あります」
「うん」
「一人暮らしは、一人のお留守番とは、別の何かがある気がします」
 その想いは、多分一人暮らしをしている人が大抵持ったことがあるものだろう。僕も、無性に寂しくなることは
あった。バカが遊びに来ても、甲斐抄子が訪ねてきても。『家族』が居ないというのは、それだけで僕らの心に
何らかの現象を呼び込むのかもしれない。
0536弟子×カイショー(9/11)2011/12/04(日) 05:49:34.44ID:PNSubOVY
「風邪で熱が出たとき、とか、特に心細いですよね」
「きっと、そうだな」
 僕は今のところ大きく体調を崩したことはなかった。いや、崩したけど高熱やインフルエンザではなく、
慢性的な胃痛や疲れだったのだ。
「……今日も一晩中、居ますか?」
 まるで、『居てくれますか』とでも言っていそうな響きだった。殊勝すぎて戸惑いもするけど、今は
ふてぶてしい甲斐抄子に戻るまでずっと付き合っていたい気分だった。
 言葉を、選ぶ。
「帰るのめんどくさい」
 小さく噴き出した息が首にかかって、横隔膜の揺れも伝わった。
「生意気な弟子ですね」
 ゆるんだ空気で深めに呼吸をする。甲斐抄子が僅かに体を離した。下弦の唇に笑い返そうとしたけれど、
少しだけ弱気な眉のラインが判別出来て、口許の微笑が切ないものになる。何かをゆるそうとするとき、
人間はこんな笑い方をするんだろう。
「どしたん?」
「いえ。……終わったらお風呂は先に貸しますからね。弟子の休息は後回しです」
「…………それは……困ったな」
 何を恐れてゆるそうとしたのかが十分に分かって、言葉に詰まる。そうならないと否定することが出来ない。
何せ、経験もクソもないのだ。
「あのさ」
「はい」
「僕もさ、自分がどうなってるか、わからないから、賢者タイムは怖いよ」
「……賢者タイムって」
 あの甲斐抄子が慈悲深そうに見えた微笑みが大袈裟な笑い声に変わる。
「あんまり笑わないでくれ。ちょっとの刺激でいきそうで怖い」
「そんな怖い怖い言わないでください」
 僕の鼻先で小さな唇が音をつくる。今度はちょっと溜めが長くて、本当に愛しそうに思ってしまう。
 耳と耳を髪越しに愛撫させ合うようにほお擦りをして、甲斐抄子は僕を包む。
「普段あんなに意地悪なんですから、今更です」
「そ……か」
 息に混ざるように薄い言葉が、薄っぺらな自責を剥ぎ取る。
 こんなにゆるされる時間も痛みのなさも、久しぶりに思えた。気づけば僕は小説の中にだってもうゆるされる立場を
持てなくなっていて、痛みはいつだって蔓延していた。
「なんだか今は、全てにゆるされている気さえする」
「そうですか」
「うん。本当に、ありがとう」
 結局のところ傷を舐め合うような惨めな交わり方になってしまっているけれど、それでも。
「ありがとう」
 そして僕は服の襟ぐりが余程深くなければ見えない箇所に、こっそり跡をつけた。いつ消えてしまうのか、
未来の僕にもバレないように。なんだか引き潮の砂浜につけた足跡みたいだと思う。あの日満ち潮より先に帰ったから、
いつ消えたのかわからないんだよなぁ。
「ちくっとしました」
「だよなぁ」
 甲斐抄子は少し膨れて、僕は脱力して笑う。
0537弟子×カイショー(10/11)2011/12/04(日) 05:49:57.91ID:PNSubOVY
 そのまま何も言わずに抱き合ったままで子供が笑うときそうするように体を揺する。快感が高まるような
動きにはなっていない。どうでもいいけど二回戦があったら背もたれがほしいなぁ。
 なんだか、動かなくていいやなんて思ったことは忘れそうだった。欲が出るのかもしれない。
 僕がヘタれると、今度は甲斐抄子がゆっくり前後に動き出す。体がぎゅっとくっつくときが、最高に気持ちいい。
「激しい動きは、難しそうですね」
「そうだね」
「最初みたいに、戻しませんか?」
「えー」
「それは何の、えー、ですか」
「僕が夢中になっちゃったら、キッツいんじゃないかなーと」
 半分は建前だ。
「さっきから、気遣い過剰で、気持ち悪いです」
「悪かったな、普段がアレで。……それにさ」
「他に、何か?」
「……こうしてるより、早く終わりそう」
「…………なんでときめいちゃうんでしょうね、私」
 それは僕にもはっきり伝わってきていた。
 さっきから僕の中では、へその辺りがキュンとして飛んでっちゃってたあの歌詞にエロ疑惑がかかっている。
よばれてとびて……いや今出たら困るよ!
 それにしてもそもそも好き同士恋人同士でしてるわけじゃないんだからある程度割り切って貪り合えばいいのに、
さっきから口を開けば気遣い・弱音・睦言と、ライクア好き合ってるワードのオンパレードである。
 これがいいんだけど。
 甲斐抄子の申し出通り、今一度甲斐抄子を押し倒して、今度は脚は持ち上げずさっきより脚を開くような形で、
密着する。しすぎると、やっぱり、重そうだ。
 目が合うだけで、自然と笑えた。
 もう色々駄目くさかったので素数を数えながら、少し出たり思い切り入ったり出たり入ったりを繰り返した。
途中で数が飛んでわからなくなって、苦しそうな顔に興奮して罪悪感が沸いて更に興奮したり
一つ残らず秘密を打ち明けたくなったり、途中からもう無茶苦茶だった。
 どれくらい経ったか、僕は一つ終わって、動けなくなる。甲斐抄子は僕の前髪を撫でた。お疲れ様です、と唇が動く。
ああ、本当に疲れた。でもきみだって疲れてるんじゃないか? 甲斐抄子。
 ぐったりしている暇はない。気だるいけど、一番片づけなくてはいけないものを片づけないと。
 なんとか結び目を作ってティッシュでくるんで捨てるところまで済ます。電気眩しい。
 僕の手際の悪さを面白がりそうなはずの甲斐抄子はやっぱりぐったりしている。放っておこうかと考えた。
さっきまでほど積極的に触ろうとも、思えずに。
 けれど、なんとなく心細そうに見えた。眼鏡を掛けても、勘違いじゃないことが分かるだけだった。
 眼鏡を外す。
0538弟子×カイショー(11/11)2011/12/04(日) 05:50:25.03ID:PNSubOVY
「しょーこさん」
「……はい?」
「この通り目が悪いので風呂の勝手が全然わかりません。一緒に入りませんか」
 誘って、のたりと起き上がってきたところにキスをすると、甲斐抄子は鳩に豆鉄砲で撃たれたような顔をする。
僕が薄情じゃないのがそんなに意外かね。とからかおうとすると、先にそれに気づいたらしく
「ぐぬぬ」と歯噛みしてから咳払いする。
「ふふん、私の素晴らしいお風呂さばきについて来れますかね」
「キャーシショー」
 返事が棒読みでも上機嫌の甲斐抄子が風呂場に向かう途中に転んで、それを笑って蹴られて、
風呂で白熱(主にお湯のかけ合いなどの嫌がらせ合戦)しすぎてのぼせて、風呂上がりのアイスのチョコ味を奪い合って、
カップの蓋についたアイスはやっぱり僕の分まで舐められて……。
 その夜は甲斐抄子が僕にすり寄って眠りこけているのを見た直後に意識が途切れるまで、ずっと甲斐抄子と遊んでいた。







 後日バカに首の跡を指摘されて僕が赤っ恥かいた挙句甲斐抄子に思いっ切り笑われるのは別の話。
0539名無しさん@ピンキー2011/12/04(日) 05:52:42.71ID:PNSubOVY
以上で終わりです
もっと需要あるカップリングはあるんだろうけど後悔はしない
0540名無しさん@ピンキー2011/12/04(日) 22:00:34.10ID:/gcy46p0
ふぉぉぉぉぉぉ(雄叫び)



・・・糖分って致死量とかあるん・・・だ・・・

G・・・J・・・
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