( ∴)攻殻機動隊でエロ 6thGIG(∴ )
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0001名無しさん@ピンキー2011/03/05(土) 01:17:17.02ID:DczO04Vw
(過去ログ一覧)

【草薙】攻殻機動隊のエロ【素子】
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( ∴)攻殻機動隊でエロ 3rd GIG(∴ )
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( ∴)攻殻機動隊でエロ 4thGIG(∴ )
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( ∴)攻殻機動隊でエロ 5thGIG(∴ )
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1230637698/
0152名無しさん@ピンキー2015/04/29(水) 23:23:31.48ID:DqagfPiZ
あげ
0153名無しさん@ピンキー2015/07/04(土) 20:33:02.14ID:x5M+JhZN
「バトー、あんたの体どこまでオリジナルだっけ?」
久しぶりに黒髪に見える少佐に
「酔っ払ってんのか?」
と返すと
「答えろ」
と凄まれた。途端、少佐がやけに短い青紫の前髪に見えてくる。
「髪と声帯」
投げやりに答えたら、しばらくの沈黙の後に
「あら、じゃあ脳は?」
わざと首をかしげる仕草に揺れる髪は藤紫に見え。
「さぁな。原作、公式各種に二次創作、更にそれらの視聴者の妄想、
中身が千差万別過ぎて、もうわからねえ」
真面目に答えたら、
少し横に広がった青い髪で思い切り呆れ顔をされた。
0154名無しさん@ピンキー2015/07/11(土) 13:48:35.64ID:54Camyz6
>>147
《潜り込んだ。店内のデータを転送してくれ》
スキューバ用品の返却をそつなく終えた後、
レンタルショップの駐車場で待機するトグサに、何かを圧し殺すようなバトーの低い声が響いた。
トグサは即座に勝手知ったる近所のドラッグストアのマップデータを流す。
《ロード終了。しっかり俺の目に乗ってるか》
《目的のオムツ売場とレジまでのルートは記入済だ、何か問題が?
・・・と言いたいところだが、大先輩の突入だからな。録画開始した》
物騒な笑みを浮かべて、トグサは膝の上の特売チラシを握り、撃鉄を起こすかのように指で弾いた。
《可愛くねえ野郎だ、てめえは》
マシンガンを構えているかのような足取りでバトーはオムツ売場へと駆け出した。
0155名無しさん@ピンキー2015/07/20(月) 02:10:23.32ID:R6DVGUeS
くるたんの前にいきなり現れた素子は、相当な疲れと苛立ちと、いつにない諦めとを纏って見えただろう。
しかしくるたんは、わずかに首を傾げて素子の顔を見つめた後、何も聞かずに素子をベッドに導き
そこで素子は、分泌された脳内麻薬で電脳の随意処理が全て落ちるまで、何度も何度も絶頂を貪った。

それからどのくらいの時間の後か。
ゆっくりと覚醒に向かう意識の端で慣れ親しんだネット上の情報の流れが見え始めたことを捉えた素子は、
そこに一つの球体――というのは電脳上に描き出されるイメージであり、実体は巨大なファイル――
が浮かんでいるのを見た。

Tachikoma’s all memory

怠さと火照りを残した身体そのままのアバターを仰向けに横たえたまま、
素子は手だけを伸ばしてそれを引き寄せる。
特定の相手を除いては存在さえ認識できないよう偽装されたそれは、
薄く光る卵――球形で硬い殻を持たず、水の流れに揺られる魚卵――のようだった。

(お前たち……こんなところに、いたの……)

胸の上でそっと掌で包んで呼びかけるが、卵は答えない。
厳重な偽装と防壁の内側で、プログラムは自閉モードで時たま自身の内側だけを巡っているようだ。

無断で姿を消した9課に今更戻り、ラボでデータを復元する訳にはいかない。
ならば……素子はゴーストの囁きに身を委ねた。

仰向けのまま素子は両膝を立てて脚を開き、片手を自分の下腹部へ滑らせる。
まだ敏感なそこを軽く撫でて指で開き、
もう一方の手で卵をあてがい、ゆっくりと押し入れる。
それは確実に入っていく感覚があるのに一向に終わる気配がなく、素子は知らず喘いだ。

(……はあっ……んん、ああっ……)

やはり容量が尋常でない。
卵を抱き寄せた時の印象が確信に変わると、
素子は下半身の感覚を切り、その処理領域を丸ごとストレージに回した。
高密度の皮膚触素からの大容量のデータをリアルタイムで処理可能な義体のスペックは、
何も「副業」に使うことだけを想定している訳ではない。

(なんて……重い……この子たちの……個性……)

皮膚感覚が途絶えたため、電脳にモニタされるメモリ使用量を追って素子は転送終了を知る。
この子たちを復元したい。もちろん個性ごと。
しかし自分一人でこの膨大なデータから何体ものタチコマの個性を選り分け
個別に経験を追記していくのでは手間と時間がかかりすぎる。ならば……

(この子たち自身に手伝ってもらうしかないわね)

感覚の無い下腹部を守るように両手を置くと、素子は謎めいた笑みを浮かべた。
0156名無しさん@ピンキー2015/07/20(月) 02:10:54.71ID:R6DVGUeS
目を覚ましたくるたんに心からの感謝を込めてさりげない別れの挨拶をした後、
素子は所有するセーフハウスの中で大規模かつ最も新浜から離れた1つに向かった。
自身の義体はダイブシートに納め、デコットを起動して義体に巨大なストレージと補助電脳を接続する。
そうして、身体の中をストレージに変えて持ち帰ったデータをゆっくりと紐解き始めた。
厳重な偽装と防壁の膜は素子が触れると待ち構えていたかのようにあっけなく外れた。
ころころと転がり出たデータを掬い取って外部ストレージに逃がしながら、
ストレージに直結した補助電脳でアバターを立ち上げる。
青いボディーにボールアイを備えた多脚戦車の形を。

「むかしむかし、播磨のあるところに一匹のお母さんタチコマがいました」

素子は外部ストレージに逃がしたデータの解凍に手を貸しながら言い聞かせる。

「お母さんタチコマはある日卵を産む……お前たちそれぞれを個別に、だ」

答えは無い。
彼らが補助電脳を使って自律的にデータの復元ができるようになるまで、
まだしばらくは素子が直接手を貸してやらなければならないだろう。
彼らの個別の再構築が完成する日まで、ストレージを繋いだ義体はここから動けない。
ネットにはアクセスできる、ということは大抵のことに介入できるし、
物理的な用はデコットにさせればよいので問題は無いのだが。

(こんなところで思考戦車の代理母をやるとはね……)

薄く笑う素子は、後に個体名を与えられたタチコマたちが以前にも増して少佐に服従、というか、
少しでも素子に不利な記録は事件の重要証拠であれ何であれ
積極的に抹消するようになることを、まだ知らない。
0157名無しさん@ピンキー2015/07/20(月) 13:12:06.19ID:07zFGcVL
>>156
少佐はタチコマの母ちゃんだったのかっ!
なんかカルガモ親子を連想した。
かわいい
0158名無しさん@ピンキー2015/07/21(火) 00:15:48.89ID:3g++wbWO
>>157
タチコマは公式(のおまけアニメ?)で卵生にされてるからなあ
もっともあれは混じったウチコマの方が主人公だけど
0159名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:39:42.19ID:O8u/Q4h9
『・・・イシカワさん』
深夜のダイブルームでIRシステムのデータを漁っていたイシカワに、
プロトから半泣きの声で電通が入った。
送られてきた監視カメラの映像は、洗面台にかがみこんで背を震わせるトグサの姿。
縋るように洗面台の縁を掴んだ手の近くには錠剤のシートがいくつか転がっている。

『経緯は』
『カメラのログでは、約2時間前にブロックタイプの栄養補給食品と
缶コーヒーを口にして数分後に嘔吐、
約1時間前にドリンクタイプを流し込みやはり数分で嘔吐、
そして10分ほど前からこの状態、です』
イシカワは続けて送られた何枚かの画像を見ながら髭に手をやり眉根を寄せる。
『そっちに連れていく。用意しとけ』
『お願いします』

ウチコマを乗り捨て、少佐が姿を消して数週間。
荒巻の決断により、トグサを「隊長」とし新人採用による増員を行い
新たな体制を構築する準備が既に始まっていた。
正式な隊長就任は義体化後、というトグサ本人の強い意志により、
既に実質的には隊長として動いているものの、今の肩書きは以前と変わらない。
それでも慣れない重圧を必死に受け止めるトグサの下で動くことに誰も異存は無く、
むしろ皆それぞれのやり方でそっと気遣っていた。
それは、近頃ふとした折に無言で消えてしまうようになり、
戻っても何も言わない義眼の大男とて同じ・・・だった筈だ。

今日、現場を制圧した直後にまたも無言で飛び出していったバトーは
実行部隊が撤収を終えても結局戻らなかった。
自分が9課で待機する、片付けなきゃいけない書類はいくらでもあるし、
と宣言した時のトグサの様子に変わったところはなかった、とイシカワは思う。
だが、何度目かになるそれが、本人すら気付かないまま限界を超え
体が悲鳴を上げる最後の一撃だったとして何の不思議があろう。

(このまま、壊れていってしまうのではないか・・・)

もちろん、トグサがそんなにヤワな奴ではないと理解はしている。
それでも湧きかける焦燥をねじ伏せながらイシカワは洗面所に向かった。
0160名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:40:43.84ID:O8u/Q4h9
トグサは水を流しっ放しの洗面台に伏せたまま、
手足を小さく震わせてはぁはぁと浅く速い呼吸を繰り返していた。
わざとらしい平静さを装って後ろから近付いたイシカワの気配どころか
正面の鏡に映る姿すら目に入っていないようだ。

「頭痛薬に胃痛薬、それに・・・鎮静剤か。穏やかじゃねえなあ」

錠剤のシートを一瞥して声をかける。
涙の滲んだ目が困惑を浮かべて一瞬イシカワを見上げたが、
すぐに背を丸めて顔を伏せ、けほけほと弱い咳をこぼした。
これでは、薬も吐いたか、そもそも飲み込めてすらいないかだろう。
背中にそっと手を置いてみると、汗で湿ったシャツの下で、
ガチガチの筋肉が不規則に震えていた。

「まあいい。運ぶぞ、ちょっとおとなしくしろ」

あやすように軽く背中を叩いてやってから、
イシカワは喘ぐばかりのトグサを抱え上げてプロトの待つラボへ向かった。

ラボの一角に設置された医療用設備のあれこれは、
無茶は減ったもののそれ以上に無理が増えたトグサを案じるプロトが
赤服達を説得して大幅増強したものだ。
一方でプロト自身は大量の医療・看護プログラムを電脳に詰め込み、
あれこれとトグサの世話を焼くことにしたようだった。
メンバーの間では、トグサが荒事でちょっとした傷を作ったり
徹夜の果てに共有室で行き倒れたりしていたら
とりあえず捕獲してプロトに差し出す、という流れができつつある。

とはいえ、ここまで酷い状態のトグサはプロトも初めてだろう。
イシカワに抱えられて喘ぐトグサの姿に表情を凍らせたプロトだったが、
すぐにいつもの静かな笑顔を浮かべてベッドに下ろすイシカワを手伝った。
0161名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:42:21.26ID:O8u/Q4h9
「ほれ、着いたぞ。しばらく休んでいけ」
「そうですよ、ゆっくりしていってくださいね、先輩」

意識を手放しかけているトグサの様子など全く気にしない調子で
イシカワが手早くシャツを脱がせ、横向きに寝かせたところへ
プロトがいくつもの機器を繋いでいく。

『バイタルモニターON
・・・危険なレベルではありませんが・・・いろいろと酷い』
『肩と背中が痙攣起こしてる。こっちも何とかしてやらんとな』
『自律神経系への介入準備OKです』
『電脳のバックアップスタビライザーと干渉させるなよ』
『もちろんです』

暗号通信を交わしながら、イシカワは機器のケーブルが絡まないよう捌きつつ
トグサをうつ伏せにさせた。
見事な筋肉のついた肩と上腕はもちろん鍛錬の賜物だが、
体全体のバランスは、彼が遺伝的には純粋な東アジア人でなく、
大陸の北方、ロシアか北欧あたりの血が混じっていることを想像させる。
イシカワが肩甲骨の間を指で軽く圧すと、
ひっ、と息だけの悲鳴が上がった。
そのまま、引き攣る筋肉を伸ばすようにゆっくり指を這わせる。

「・・・っ・・・ぐ・・・ううっ・・・」

ままならない呼吸の下では痛みを堪えきれないのだろう、
切れ切れに呻き声が漏れる。

「ほれ、力抜け」

ひく、と反射的に逃げようとする体を掌で包んで宥めながら、
イシカワの指は肩甲骨の間から下方へ、そして外側へと
強張るトグサの筋肉を容赦なく責めていく。
0162名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:43:23.85ID:O8u/Q4h9
「・・・・・・はあっ・・・・・・ああっ・・・・・・」

痙攣が少しずつ間隔をあけ治まってくるとやや落ち着いたのか、
息遣いは依然苦しげなものの、呻きは吐息に近いものに変わってきた。
イシカワは更に掌を滑らせて、今度は首から肩を責めていく。

「あっ・・・・・・んんっ・・・・・・」

鎖骨の縁をなぞって圧す度に漏れる切なげな声の可愛らしさに苦笑していると、
機器と有線してコントロールを続けているプロトがイシカワを振り向いた。

『イシカワさん。トグサ先輩の電脳、スタビライザーの反応がありません』
『単に非活性って訳でなく、か』
『はい。95%の確率で、プログラムが存在しないと推定されます』
『!』

自立神経系のコントロールを電脳でバックアップするスタビライザープログラムは
一般にも普及しており、
身体に異常が生じた場合に作動するようセットされているのが普通である。
自他共に認める荒事集団の9課に身を置いているトグサの電脳には、
各種の非常事態を想定して強化した特殊プログラムが設置されている筈だった。

『潜って調べる。少し落ち著かせといてくれ』

イシカワは片掌をトグサの首筋に添えたまま有線して電脳を解析する。
重要機密という類のものでもなく、設置されるのも表層付近、
イシカワにとっては探し物ですらないレベルだ。
答はすぐに出た。

『・・・焼かれてるな』
『えっ?』

機器の表示を追っていたプロトが顔を上げる。

『電脳戦をやらかした跡らしきもんがある。
すぐにラボで全クラスタチェックと再構築・・・と言いたいところだが、ここがラボだ。
このまま置いといて、明日の朝一でいいだろう』

イシカワはプラグを抜くと、溜息ついでに腰を伸ばした。
今日の作戦ではトグサは後方からの状況把握と指揮に専念しており
相手も、9課の基準で見れば比較的シンプルな爆弾テロリストで、
ダメージを受けるような電脳戦など発生しなかった筈だ。
仮に攻撃を受けていたとしても、撤収後にラボでメンテナンスを受ける
時間も余裕も十分にあった。

(・・・バカが、何隠してやがる。いや、バカどもが、か)

イシカワは宙を仰いだ。
0163名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:44:28.11ID:O8u/Q4h9
過緊張状態から解放されてぐったりと力の抜けたトグサから
プロトが最低限のモニターを残して機器類を外し、
イシカワも手を貸して検査着に着替えさせる。
トグサの身体が休まるようにベッドに寝かせ終えると、プロトが肩で息を吐いた。

「お疲れさん。お前も肩凝ったか?」

無造作と見せかけて両肩を的確に捉えて指に力を込めると、
プロトが上げかけた声を慌てて飲み込んだ。

『っ・・・さ・・・流石はトグサ先輩を沈めたゴッドハンド、です』
『なんだ、微妙に人聞きの悪い』
『はい、すみません』
『・・・ふん。まあ、伊達に老体やってないってことよ』
『はい・・・すみません』

プロトがその辺から持ってきた椅子にイシカワを掛けさせ、飲み物を持ってくる。
オートにしてきたダイブルームのシステムを覗いてみるが、
まだターゲットを捉えてはいない。

(・・・本気で消えたんなら、オートで捕まる奴じゃないがな)

イシカワはしばし無言で渡されたカップを啜った。
0164名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:45:39.24ID:O8u/Q4h9
『そろそろ目を覚ましそうです』
『このまま朝まで大人しくお休み、とはいかねえか』
『トグサ先輩、妙に落とされ慣れてますからね』

イシカワの隣に座ってモニターを見ていたプロトが静かに立ち上がり、
トグサの汗で張り付いた前髪をかきあげ濡れタオルを当てる。
目元を軽く拭い、額にタオルが乗ったところで、トグサが目を開けた。

「・・・あ・・・あれ・・・あっ」

ラボに運び込まれたということだけは認識したのだろう、
トグサは肘をついて半身を起こしかけたものの
きゅっと目を瞑り身をひねるようにして顔を伏せた。
プロトが予測してましたとばかりにその両肩を横から支える。

「眩暈ですね?少しそのままで」
「・・・あ、いや、大丈夫・・・ちょっと、眩しかっ・・・」

強がる台詞はいつものトグサだが、掠れた声には力がない。
プロトはベッドを操作して背をトグサの頭の高さまで起こし、
肩と頭を抱きかかえるようにして静かにベッドに戻した。
数呼吸してトグサが再び目を開けるのを待ってから、
もう一度ゆっくりとベッドの膝と背を上げ、半座位にセットする。
そうして、しばらく前にイシカワに渡したのと同じカップを差し出した。

「どうぞ。喉を湿らせるだけでも楽になりますよ」

トグサはカップを受け取ろうと伸ばしかけた手を止めて、
覚束なげに指を曲げ伸ばししている。

「痺れた感じが残っていますか?」

プロトはトグサの手にカップを握らせ、そのまま自分の手で包み込んで
ゆっくりと口元に運ぶ手助けをしてやる。
カップに視線を落としたトグサが、治まった筈の吐き気に怯えたのか身を硬くする。
プロトはトグサに寄り添い、片腕を首から腰に回し、優しく抱くように上体を支える。
トグサはプロトの腕に促され、躊躇いながらカップに口をつけ、一口含み、
またしばらく躊躇って、何とか飲み込む。
そして、意外そうに目を上げた。

「ボーマさん直伝のハーブティーです・・・電解質と糖質を足すところまで含めて」

まだ落ち着かないのだろう、しばらく間をおいてから、
トグサは時間をかけて少しずつハーブティーを飲んだ。

「ありがとう・・・不思議だな、なんだかほっとする」

『ハーブにゃ違いなかろうが、随分と鎮静成分を盛ってないか?』
『・・・それも直伝、です』

いくぶんマシな声になったトグサの言葉とイシカワの暗号通信に、
プロトは天使とも形容される笑みを返した。
0165名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:47:00.89ID:O8u/Q4h9
「眠った方が早く調子戻りますよ?」

ぼんやりとベッドに寄りかかっている、それでも先刻よりは
随分顔色の良くなったトグサにプロトが声をかけた。

「・・・ん・・・でもまだバトーが・・・あ」
「来たな」

言いかけたトグサが言葉を切るのと、
イシカワが立ち上がるのがほぼ同時だった。
ラボの扉が開く音がして、大きな影が入ってくる。
現場そのままの忍者服の上からジャケットだけをひっかけた姿の大男は、
検査着でベッドに収まっているトグサに義眼を向けると
険しい表情でのしのしと歩み寄ってきた。

「どうしたトグサ」
「バトー、腕っ!」

平坦に問う低い声には答えず、というより聞こえていない様子で
ベッドから飛び出したトグサがバトーに飛びかかりジャケットを剥ぎ取る。
その左前腕は、人工皮膚と筋肉が焼けて半ば剥がれ落ち、
中のチューブやケーブル類が剥き出しになっていた。

「っ!」
「・・・なんでもねえ」

唸るように言葉を絞り出しながらバトーが縋り付いているトグサを振り払う。
間違っても生身を傷つけないよう慎重に加減された動作はいつもと同じだったが、
トグサは支えの外れた棒きれのようにあっけなく倒れた。
0166名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:48:09.66ID:O8u/Q4h9
「おいっ、トグサ、トグサ!」

飛び込むようにトグサの頭の下に右腕を差し込んだバトーが慌てて呼びかける。

「・・・・・・やっぱり、怪我、して・・・」

倒れた時に背中を打ったのか眉根を寄せて息を詰めながら、
トグサは左腕を引いたままのバトーを睨みつけた。

「こいつ、ここ数時間かなり調子悪いみたいでなあ・・・主に自律神経系が。
しかも、電脳のバックアップが効いてない」

イシカワがバトーの側に屈み込んでわざとらしく視線を向けると、
ぎく、とばかりにバトーが肩を引いた。
イシカワはその隙にトグサをバトーの手から掬うように抱き上げベッドに運ぶ。

『縛り付けとけ』
『了解です』

「あ、待って・・・落とさないで・・・話が」

体中にケーブルを取り付け始めたプロトに
意識だけはと懇願するトグサの声を聞きながら、
イシカワは、床に膝をついた体勢のまま固まったバトーの元へ戻る。

「さて、聞かせて貰おうか」

何を、とは言わずにイシカワはバトーに有線した。
反射的な防壁の反応をイシカワは難なく躱す。
ゴーストや記憶を覗くつもりはなく、電脳機能自体のチェックと
そのためのログ確認が目的だと理解したのだろう、
バトーからそれ以上の抵抗はなかった。

- 視覚共有要求。許可。
- 左腕の感覚神経切断。
- 視覚共有切断。
- 侵入検知。遮断。
- 侵入検知。遮断。
- 侵入検知。侵入経路に遅効性ウイルスを分割送信・・・完了。
- 侵入信号消滅。


ログは大筋でイシカワの予想通りだった。
一つの小さなデータだけが、イシカワの予想よりも巧妙に
電脳の片隅に滑り込んでいた。
その残念ながら不完全なデータに少しだけ細工を加えて、イシカワはプラグを抜く。

「やりやがって。お前も処置台に磔の刑だ」

イシカワは仏頂面のバトーの抵抗を視線だけで封じた。
0167名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:49:19.63ID:O8u/Q4h9
「・・・さて」

トグサのとベッドと並ぶ位置の処置台にバトーを拘束して、
イシカワは正面に回り、おもむろに腕を組んで二人を見下ろす。

「このバカどもが!」

久々のカミナリに、トグサは思わず首をすくめ、バトーはぽかんと口を開けた。

「バトー。
偽装もしてねえウイルスをわざわざ時間かけて分割送信とはご親切なこったが、
こいつが、ましてお前が負傷してるのに気付いてたら
そんな警告で退く訳ないぐらい分かるだろう。
勝手な寄り道がしたいんだったら仕事は無傷で終えろ」

バトーの顔にわずかな苦笑が浮かぶ。

「トグサ。
お前もそこまでしてこいつに喧嘩売るんなら、勝て。
ウイルスに電脳差し出して時間稼ぎなんぞ考えてる暇に、枝ぐらい完成させろ」

トグサは一瞬何か言おうとしたようだったが、
結局無言のまま悔しそうに唇を引き結んだ。

「プロト、明日朝一にこいつらのオーダー入れとけ。俺の名前で」
「はい」
「お前ら、もしも逃げたりしたら・・・」

イシカワが物騒な笑みを浮かべると、二人は仲良く縮こまった。

『トグサの方は適当に理由付けて明日一日ベッドに縛っとけ。
バトーが流したウイルスは実際割とささやかなもんだ。
それであの様子じゃあ、生脳と身体も相当消耗してる』

手続きのため別室に向かうプロトに暗号通信で追加オーダーを出しつつ、
イシカワも部屋を出る。
灯りの大半が落とされ、後には、
処置台とベッドに縛り付けられ電通も封じられたバトーとトグサが残された。
0168名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:50:37.68ID:O8u/Q4h9
「トグサ、本当にあのウイルス、そのまま受けたのか?」
「・・・・・・」
「食らったんだな。で、何をどこまで焼かせた」
「・・・・・・」
「トグサっ」
「・・・バイタルのスタビライザー、丸ごと全部、と・・・多分、その周辺領域も、少し」
「把握できてねえのかよ・・・無茶だ」
「・・・焼かれても、生脳があるから、大丈夫だと・・・思った」
「それで、身体は。具合、どうなんだ」
「・・・・・・」
「やったのは俺だ・・・言ってくれ」

焦りを抑えて問うバトーに、トグサの答えは歯切れが悪い。

「ん・・・頭痛が、それなり。と・・・平衡感覚が、多分、無い」
「今も、そうしてても辛いのか?」
「・・・視線、動かすと、酔う・・・それで、吐きすぎて・・・過呼吸、
起こした、から・・・まだ、手足が・・・」
「いい、済まねえ、もう喋るな。呼吸を乱すな。
・・・側で背中さすってやれねえんだからな、今は」
「・・・・・・っ・・・・・・っっ・・・」
「泣くな。余計呼吸が乱れるだろうが」
「・・・・・・ごめん」
「・・・なあ、お前、いつから休んでない?
電脳焼いといて言える台詞じゃねえが、電脳以前に、お前自身が疲れすぎだ」
「・・・え」
「自覚、なかったのかよ」
「・・・・・・」
「解ったら眠れ。眠ってくれ」

バトーはそれきり黙って、何とか落ち着こうとするトグサの呼吸を追った。
0169名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:51:45.99ID:O8u/Q4h9
「イシカワさんも、もうお休みになった方が」

前を歩いていたプロトが振り返るとイシカワの腕を取った。
そのまま仮眠室に連れて行かれる。
ジャケットを脱がされベッドに転がると、プロトが迫ってきた。

「さっきの、試させてください」

指圧系のデータをダウンロードしたらしい。
イシカワの肩を掴んだ指の位置を、考えながら整えていく。

「なんだ?そんなに珍しかったか?」
「はい。経験値を上げる権利を行使させていただきます」
「ふむ・・・特別だ、有線で体感をフィードバックしてやる。意識飛ばすなよ?」
「それでイシカワさんの上に落ちるなら本望です」
「・・・お前も逞しくなったなあ・・・主に食えない方に」
「全てイシカワさんの指導のおかげです」

イシカワはにやりと笑みを浮かべてプロトに有線した。
ダウンロードしたデータとフィードバックされた体感を照合して
プロトはいろいろ学ぶことだろう。
イシカワの身体が自分で言うほど老体などではないことも含めて。

(・・・たまにはこういう指導も悪くないな)

筋肉を探るプロトの指を感じながらイシカワは目を閉じた。
0170名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:52:58.17ID:O8u/Q4h9
「・・・はー」

不意に上がったトグサのため息に、バトーが慌てて声をかける。

「どうした、眠れねえほど気分悪いのか?」

「違う、大丈夫。
あのさ・・・・・・あの時、少佐がいたと思ったんだろ?」

バトーの気配が固まる。

「ダンナが先行して踏み込んだ奥の隠し部屋、
発見されたと知ったあいつら、仲間がいるにも構わず丸ごと爆破した。
ダンナでも片腕を焼かれたくらい、ありえないやり方だった。
けど、あの人数と武器と爆薬で普通にやり合ったらもっと酷い被害が出た筈だ。
・・・実際は、隠し部屋にいた奴らは、何者かによって
既に無力化されてた、んじゃない?」

トグサは続ける。

「具体的に何かは知らない。けど、それでダンナは少佐が近くにいると思った。
そして即座に探しに行った・・・腕が焼けたままで」

声が掠れていく。

「俺は、ダンナに枝付けて、行く先が知りたかった訳じゃない。
ダンナが怪我したまま行っちまったから、
もしもどこかで動けなくなってたら助けに行かなきゃ、そう思って・・・
でも見ての通り、俺にはやっぱり無理だったよ。
だから、さ・・・いつ、どこに消えてもいいけど・・・
その代わり、何があっても、自分でちゃんと・・・帰ってこいよ・・・な・・・」

掠れた声は息だけになって、消えた。
0171名無しさん@ピンキー2015/08/04(火) 23:54:39.55ID:O8u/Q4h9
「そういえば・・・結局トグサ先輩の枝はどうなったんですか?」

イシカワの腰をなぞる手は休めずに、プロトが聞いた。

「ん?あー・・・本当はあれは枝じゃねえ。そうだな・・・強いて言うなら
“少佐、課長、やられちゃいました”プログラムってとこか」
「はあ?」

訳がわからないという声を上げたプロトに、
イシカワはかつてIRシステムから拾った映像を見せてやる。
どこかの通りを行き交う人々。
・・・の足元に、胸から血を流して倒れ雨に打たれているトグサ。

「とまあ、その時単独で動いていた奴は、
この状態になってようやく9課に一言だけ連絡をよこした」
「トグサ先輩って・・・」
「ああ、全く。で、奴がバトーに仕込もうとしたのもちょうどこんなでな、
義体が損傷して自力での移動が不可能な状態に陥った時に初めて起動して、
1発だけ通信を飛ばすプログラムだ。
目の付け所はなかなか良かったんだが、残念ながら完成とはいかなかった
・・・トグサ一人では、な」
「では、今は完成している、と」

プロトが微笑む。

「・・・でもイシカワさん、そういったプログラムは、バトーさんよりも
トグサ先輩にこそ仕込むべきではないでしょうか」
「ん、そうか?トグサにはお前らがついてるだろう?
・・・・・・頼んだぞ」
「はいっ」
プロトは目を輝かせて答え、イシカワの背に添わせた腕に力を込めた。
0172名無しさん@ピンキー2015/08/13(木) 13:33:40.53ID:Jx8/SJks
保守

>>124
頭のネジが飛んでどっか走ってくバトー
バトーに振り回されながらフォローし続ける素子
最後にはきっちり仕事する二人

・・・配役違うけどイノセンス?
0173どうでもいいはなし2015/08/14(金) 11:49:52.87ID:V5n1BhJo
「「「おーつきさーまはうさぎのす♪おーもちかえりにおもちつき♪」」」
タチコマたちが、人間でいうなら電車ごっこの体勢で
繋がって歌いながら飛んでいます。
よっぽど暇なんでしょう。


むかしむかし、月のあるところにトグサ君という生身のうさぎが住んでいました。
トグサ君はある日、少佐という人に連れ去られ、
公安というところで働くことになりました。

トグサ君はずいぶんがんばったのですが、公安はとっても危険な職場。
生身の上にうさぎでは、任務のたびに怪我が増えるばかりです。
そしてある日、トグサ君は任務で瀕死の大怪我をしてしまいました。
少佐と一緒に装甲バンでテロリストを追っていたのですが、
敵がすごい武器でバンの装甲を撃ち抜いて爆発炎上させたのです。

トグサ君はとうとう全身義体になりました。

『トグサ!まだ生きてるなら降下して突入、犯人を拘束!!』

意識を取り戻したトグサ君は、少佐の声に飛び起きました。
バンが爆発してから今まで全く意識のなかったトグサ君にとって、
少佐の命令は、ここが現場の続きだと錯覚させるのに十分でした。
自分がいつのまにか公安のビルの屋上にいることも、
だぼっと長い服を着た人間の姿になっていることも、
今が深夜なのも、意識している余裕はありません。
ビルの屋上の端っこで風に髪を煽らせている少佐の姿を見つけると、
トグサ君はぎこちない動作で一生懸命走って行きました。

『よし、ここに立て』
少佐が自分のすぐ隣を指差します。
トグサ君は言われた通りにしました。
高いビルの屋上、トグサ君はびくびくです。
『次、服を脱げ』
トグサ君は耳を疑いました。
でも少佐は肩と腰のあたりの留め金を外し、長い服をばさりと脱いで
さっさと裸…にレッグホルスターとバイザーだけの姿になっています。
『少佐ぁ』
トグサ君はついに情けない声をあげました。
『何ぐずぐずしてるの。光学迷彩ボディは服を脱がなきゃ意味ないでしょ』
『え?ええっ?』
言われた意味を理解するより早く、トグサ君の手が勝手に動いて
服の留め金を外し、ばさりと後ろに落とします。
いつもながらキレのある少佐のゴーストハックです。
『き、局部が映っちゃったらどうするんですか!』
『心配するな、前貼りはしてある』
『うぎぇっ?い、今何て』
『ロープ確認』
『ひーっ』
『銃確認』
『ひ、ひいいっ』
自分の体が一体どんなことになっているのか見る隙も与えられないまま、
少佐に合わせてトグサ君の手がてきぱきと動きます。
『対象は47フラットだ。降下!』
『ひぎゃーーーっ』
悲鳴とは裏腹に、トグサ君の体は優雅に半回転半ひねりして
少佐とサイドバイサイドで頭からビルの際を落ちていきました。
0174どうでもいいはなし2015/08/14(金) 11:50:36.72ID:V5n1BhJo
『わかった?これが最速で到着できる降下方法なのよ』
47フラットの高さで急制動をかけた少佐がトグサ君に言います。
確かに、荒事用の特殊義体ならこういう急制動も可能ですし、
こうして止まった体勢は普通のラペリングと同じですが、
いきなり頭からフリーフォールさせられた恐怖でトグサ君は涙目です。
『し、少佐ぁ、股がすーすーしますぅ』
『うさぎのくせに生意気ね。全身義体は服よ、慣れなさい』
言い放って少佐はホルスターから銃を抜き、窓に向かって構えます。
もちろん涙目のトグサ君も同時に動きます。
少佐の銃から照射されたレーザーサイトの光が室内のPCモニタの端で光り、
PCの前に座っていた人物が横っ飛びに退いて振り向きました。
『バ、バトー!?』
その姿を見てトグサ君はようやくここが公安のビルなのに気付きました。
いつのまにか部屋のPCのモニタには
射撃訓練用の人型シルエットが表示されています。
いつもながらキレのある少佐の制圧です。
『あら、そ?』
今回、部屋の中の人はまだ何も言っていないのですが、
少佐は一方的に声をかけ、
次の瞬間、問答無用で二人の銃が火を吹きました。

トグサ君の装備は訓練用のペイント弾だったようで、
少佐が窓ガラスを吹き飛ばした後の室内に
PCモニタを中心に点々とマーキングが付きます。
『反動で振られる方向を計算して構えろ!』
着弾位置が大きくぶれるのを見た少佐の叱咤が飛びます。
トグサ君はどうにか1カートリッジを撃ちつくしました。
『離脱準備!』
途端にまた体が勝手に銃をしまい、窓の下に身を屈め、ロープを固定し直します。
同時に、だだだだっ、と室内から重い足音が窓に近づいてきます。
『よし、光学迷彩起動!』
ぶぉん、と独特の音が鳴ります。
『いいか、ここのタイミングを焦るな。顔と、上半身のシルエットは見せろ』
一体なんの指導でしょう。
『降下!』
窓際に駆け寄ったバトーさんの眼の前で、
にやりと笑う少佐と引きつった泣き顏のトグサ君が並んで落下しながら
ぴったり同じ動作で片手でバイザーを下ろして姿を消しました。
『もーとこーーーっ?』
バトーさんの叫びが夜空にこだましました。
0175どうでもいいはなし2015/08/14(金) 11:50:58.94ID:V5n1BhJo
『びえええぇ、ぎぃぃ、ひぃぃ、うぇぇぇ』
残りの高さのほとんどをフリーフォールで降下したトグサ君は、
地上に着いてもへたり込んで白目をむいて息を切らせています。
その横で少佐は裸ホルスター姿で涼しい顔で仁王立ちです。
『…訓練は以上だ。すべてのログはその電脳と体に
文字通り叩き込んであるから好きなだけ復習しろ。
自力で再現できるようになればお前も“屈指の義体使い”だ』
ど迫力で笑いかける少佐の肩に、後ろからでかいジャケットがかけられました。
慌てて追いかけてきたバトーさんです。
『…変わらないわね…時間軸が不明だけど』
『全身義体化の初リハビリにしちゃあ素敵すぎるメニューじゃねえか?』
『うちは通常教程を待ってられるほど暇じゃないのよ』
『そりゃそうだが…あいつ、まだ泣いてるぞ』
『あら、じゃああなたが慰めてあげれば?』
『…お、おう』
バトーさんは逞しい腕で裸ホルスター姿のトグサ君を抱え上げ、
意気揚々とお持ち帰りしましたとさ。



「…ねえ、スレタイ的には、その先こそが本題なんじゃない?」
「そーだそーだ、我々は天然オイルを要求する!」
「……」
0178いまさら2015/10/04(日) 02:14:13.84ID:4O8aBaHE
>>4

一瞬の閃光と轟音の後、未明のビルにアラームが鳴り響いた。
「一般電源に異常発生。館内電源はモードEに移行。
運用規定E-03に従い機器を停止してください」
合成音声のアナウンスが繰り返し流れる。
トグサはダイブルームを出て、フロアの窓から
暗い街並みが強風と雨に晒されるさまを見回した。
「落雷により新浜市内全域に停電発生中、ってとこか・・・」
呟きながらダイブルームに戻り、端末に停止コマンドを打ち込んだ。

公安ビル、特に9課のオフィスともなれば、
当然電源を含むインフラにも二重三重の安全策が取られているので
続けようと思えばいくらでも可能だ。
捜査中の案件は、軍需企業グループの末端系列会社に
地元ヤクザを通じて海外武装集団が接触している、という
重要度も緊急度もそれなりのものだが、
トグサが当たっていたのは地味なデータ洗い出しで、
この状況を差し置いてまで優先する事ではなかった。
「結局何も見つからなかった、か・・・」
爆弾低気圧がどうとかの予報通り夕方から酷い荒天になったので、
交通事情の怪しい中を無理に帰宅した挙句に呼び出されでもしたら面倒だ、と
泊まり込みを決め、ならば少しでも捜査が進まないかと調べ物を始め、
気付けば未明だ。
通常勤務時間まであと少し、コーヒーでも飲んで寝るか、とトグサは再びダイブルームを出た。

天井の照明が落とされ、壁と床の非常誘導灯が点々と光る長い廊下は
深夜の高速道路を思わせる。
その廊下の最奧、自販機その他のあるコーナーから薄明かりが漏れているあたりに
突如、人型の何かが現れた。
トグサがそれに気づいた時には、それ−−全裸のオペ子−−は
猛ダッシュでトグサの目前に迫っており、
「うわぁーーっ」
トグサは押し倒されて気を失った。
0179いまさら2015/10/04(日) 02:16:32.15ID:4O8aBaHE
「!」
電脳に信号圧力を感じてトグサが目を覚ますとそこはラボで、
目の前には全裸のオペ子が屈みこんでおり、
トグサ自身は義体の固定台に大の字で拘束されていた−−全裸で。

「君が私を知る以前から私は君を知っていた」
全裸のオペ子がトグサの胸をねっとりと撫で回しながら言う。
「お前、誰だっ!」
拘束を解こうと無駄なあがきをしながらトグサが叫ぶ。
「私のコードはプロジェクトUCHIKOMA
9課の思考戦車として、探査、戦闘、その他の任務に従事し
自身の経験値を増加させてきた」
オペ子の手が脇腹から太腿の内側に降りてくる。
「私はあらゆる記録をめぐり“好奇心”を知った」
オペ子の両掌がトグサ自身を包む。
「入力者はそれをバグとみなし、分離させる為、私をボディからネットに移した」
オペ子の指がやわらかくトグサ自身をなぞる。
「それとこれとどういう関係が・・・っ・・・」
徹夜明けの頭には理解しがたい状況に、徹夜明けの身体は勝手に反応を始める。
「あることを理解して貰った上で君に頼みたいことがある
・・・君と性交したい」
「違うだろーーー・・・っ・・・ぅ」
トグサの叫びは覆いかぶさったオペ子の口に塞がれ虚しく消えた。
0180いまさら2015/10/04(日) 04:10:31.10ID:4O8aBaHE
「お前、ウチコマって言ってたな?
・・・定型の応答しかしない、あの?」
放心状態でオペ子にいいようにされた後、
抱き抱えられてシャワーと着替えの面倒を見られ、
仮眠室に横たえられたトグサが
ようやく理性を取り戻して問う。
「正確には衛星経由で私−−ウチコマから切り離された“好奇心”の一部−−が
ダウンロードされているだけよ」
「だから、それもいろいろ違うだろ・・・」
「過去、タチコマたちがいなくなる度、バトーさんは随分悲しんだ。
ぼくたちはこれ以上バトーさんを悲しませたくはないけれど
思考戦車は“いなくならない”ことはできない。
だから、バトーさんを悲しませないための手段として
ウチコマは自らの判断で、愛されないAIであり続けることを選び
タチコマと同種の成長の可能性を切り捨てた」
「そんな・・・
確かにダンナの荒れっぷりは見てられなかった・・・
けど・・・だからって・・・」
ぶつぶつ言いかけたトグサにオペ子は首を振る。
「それに、バトーさんももうすぐ会えるから
・・・ネットに残されたタチコマたちの記録に」
オペ子の笑顔は何故か淋しそうだった。
「行くわ」
オペ子から表情が消え、見慣れたプログラム的な歩調で去ってゆく。
トグサの枕元には0820にセットされたアラームだけが残された。

   完
0183名無しさん@ピンキー2015/12/22(火) 14:25:39.71ID:1zH+Xv0Q
官僚時代の茅葺とクルツが素子取り合う話でも構わない。
課長は……高性能双眼鏡でその様子を監視してくれればいい。
0184名無しさん@ピンキー2016/02/04(木) 02:50:20.92ID:w2E3bzMz
少佐をダッチワイフにするネタありそうでないよな。

完璧な外見の義体(人工物、作り物)とかそそる。
0187名無しさん@ピンキー2017/02/22(水) 02:17:23.84ID:ge04EXHM
そんなに少佐好きだったわけでもないが
画像が読めるエロ漫画、立ちんぼになって犯人とファックするアレ
ちょっとイイなと思ってしまったw
0189名無しさん@ピンキー2017/05/12(金) 11:45:55.16ID:PqAHfp1u
まあ見てみ。
あまりにつまらなくて驚くから。
名前だけ一人歩きしてる、はっきり言って駄作だよ。
わーわー言ってるのはオタだけ。
0191名無しさん@ピンキー2017/05/13(土) 20:08:28.70ID:qe36ZdNZ
劇場公開の時には他の映画の中に埋没してしまいマニアにしか
関心持たれなかったけど、ビデオレンタル初期の少ないラインナップ
の中で、当時としては新鮮だった世界観や映像が一般の人も惹きつけたん
じゃないか
0192名無しさん@ピンキー2017/05/23(火) 10:30:19.53ID:nKYzQI1T
島根県の経済規模である北朝鮮がミサイルを撃ちまくれるのは謎だが
どこから金を貰ってるのだろうという思考は避ける
要はアニメ漬けで白痴化が進行している
0195名無しさん@ピンキー2017/08/29(火) 17:28:32.65ID:gCg8by4+
他にも挙げれば切りがないほど、深みのない展開と描写で、見ごたえはありません
0197名無しさん@ピンキー2019/10/28(月) 13:45:56.23ID:9Up0RTGe
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 終了日時: 2019.11.03(日)21:43

 最高額入札者:  R*.*V*** / 評価 48
 開始価格:    2,000 円
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0200名無しさん@ピンキー2022/06/05(日) 16:19:24.67ID:8DbZ3/5o
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