朝日に顔を照らされ賢者は目を開いた。

意識が覚醒するにつれ感じる恋人のぬくもりに彼女の心は幸福感で満ちていく。
少しだるさも感じたが二日酔いの苦痛など物の数ではない。

賢者は天使の腕の中でいつものようにゆっくりと流れる時間を楽しんでいた。


「賢者……起きた?」
天使はもう起きていたようだ。

(昨日は皆で花見と宴会に来て……彼にたくさん飲まされて……そして……。)
賢者は自分の現状を思い出す。


「おはよう。」
賢者は恋人と暫し見つめあう。彼は何か寂しげな表情をしている。
賢者が首を傾げると天使は急に彼女を抱きしめた。


「どうしたの?」
彼は賢者の胸に顔をうずめて大人しくなる。


「甘えたいの?」
そういうと彼は二度小さく頷く。


「よしよし……いい子ね。」
賢者は天使の頭を優しく撫でる。
彼が自分に甘えるのは故郷を思い出して寂しいときだ。甘えさせてあげよう。

そうしているうちに日は昇る。皆が起きてくれば天使に抱かれた自分を見られてしまう。
羞恥の感情が彼女の中で生じるが、刹那に『見せてしまえばいい』と結論が出される。

賢者は再び目を閉じ、心地よい惰眠を貪ることにした。

だが、天使の隣に眠るのは自分だけではないのを賢者はまだ知らない。




「私だけって言ったくせに――――――――!!!」
という賢者の咆哮とドルマドンが炸裂するのはこの3時間ほど後のことである。