>>61
の続きです。

ーーー腰を振ることと、イシカの様子に限界を感じた俺は、そろそろいいだろうと思った。

身体をぶるぶると震わせて、腰を振るのをやめると、彼女の頭の脇に自分の頭をうずめた。
床に広がった濡れた金髪がひんやりと気持ちよく、俺の顔の火照りをぬぐってくれた。
俺が動くのをやめてもかまわず暴れ続けていたイシカだったが、
急に動きをやめた俺に、気づいたのか彼女も俺の胸の中で次第に大人しくなっていった。

俺は彼女の耳元で囁いた。
「……イッたフリ」
俺の言葉が理解できたのか、しばらくの沈黙のあと、イシカは納得したように「ああ」と小さくつぶやいた。
俺の下で身をこわばらせていた彼女の身体がすっと力を抜いていく。
「……このくらい続けないと巨人も信用してくれないだろ」
「そうね……最初っから言えばいいのに」
なにやら不満のあるような口調だったが、さっきよりは冷静になってくれたようだった。
「……最初に言ったつもりなんだけど」
「一応お礼を……まあ、言わなくてもいいわね」
「……言えよ」
どうにも、このイシカという少女は言葉ではなく行動で示さない限り
他人を信用しないようだった。
さっきまでせわしなかった彼女の心音が少しずつ緩まっていくのを、胸で感じながらも、
俺は一向に背中を押さえらる力が緩まないことに不安を感じた。
「もう、終わってくれるとありがたいんだけど……どうなってる?」
「えっ?」
「俺からは巨人は見えない。巨人はどうしてる?」
「どうしてるって……」
次の瞬間、背中が急激に軽くなると同時に俺の身体は宙に浮いた。
脇の下を巨大な指を挟まれて、巨人に持ち上げられたのだ。
俺は猛スピードで急上昇して、がくんと急停止した。。俺は全身の総毛が立った。
目の前には巨大な巨人の顔があった。
巨人は大きな目で俺の股間を凝視していた。
俺は奥歯をがちがちと鳴らし身を強張らせた。
どのくらいの時間が経ったのか……。
そう思った瞬間、俺の身体は急スピードで降下した。
そして空中でくるりと反転させられ、仰向きのまま地面に押し付けられた。さらに巨人は俺の両腕を二本の指で床に押さえ付けた。
俺はちょうど十字架に貼付けられたような体勢となった。

俺がきょとんとしていると、真上に巨大な管が出現していた。
管から温かい液体が俺の全身に降り注ぐ。
液体はほんの少しどろりとしていた……油だ。
真上から巨人につままれたイシカが俺の上へ今、降りようとしているところだった。
イシカの後方にある、巨大な顔は唇を歪ませてにやりと笑っているように見えた。