「魔導士さん」
そう言ってぼくに語りかける君を、ぼくはずっと殺したかったのだ。君の死ぬところは綺麗だろうと思った。
使役している精霊の1人。なんでもぼぬのいうことをきいてくれる。いや、聞いてしまうのだ。
君は死の秒針にかかった。自分の体から、絶命の音が聞こえているんだろうと思う。それでも君が平然としているのは、普段から襲う希死念慮のためか、はたまた強がりなのか。
ぼくはそんな君を見ているせいで、いや、ただの下心と言っても良い。詠唱にまるで身が入らなかった。誰が見ても歴然だった。君はそんなぼくに笑いかけて、こう言った。
「魔導士さんが見たいなら、いいですよ」
ただそう言ったんだ。それは、君が死ぬことへ諦観か、はたまたぼくへの許可なのか。
ぼくは後者と解釈した。それから、中身のこもっていない、口先だけの詠唱を行った。 案の定、君は死んだ。全身の血液が沸騰して、筋肉がバラバラになった。それがこの呪術の応えだった。
ぼくは、心底羨ましかった。君に弱体をかけた敵に対して。どうしてぼくじゃないんだろうと思ったんだ。 いつかのある日、そうしたら君はただ優しく笑った。
「俺が死ぬのは、魔導士さんが俺を召喚するからですよ」 ああそうか、ぼくが召喚しなければ、君は死なないんだ。ぼくは変に納得した。
それから君に会いたくて、詠唱を始めた。