【Wizardry】ウィザードリィのエロパロ15【総合】
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0001 ◆lBOCRI2fXtwt 2012/11/02(金) 00:16:58.81ID:ed/DdGP9
ワードナ率いるヴァンパイア軍団や、ローグ、オークその他のモンスターに凌辱される女冒険者たち。
プリーステス、ウィッチ、サキュバス、獣人などの女モンスターやNPCを凌辱する冒険者たち。
ここはそんな小説を読みたい人、書きたい人のメイルシュトローム。
凌辱・強姦に限らず、だだ甘な和姦や、(警告お断りの上でなら)特殊な属性などもどうぞ。
過去スレその他は、>>2-10辺り。
0681始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/27(日) 09:49:41.71ID:IaZftonl
 
 烈道の逃亡からしばらく経ったある日、美桜は幕閣たちの前に呼ばれた。

「美桜、お前に斯羽烈道一味の討伐を命じる」

そして幕閣たちはこうも付け加えた。
西方に逃亡した烈道の真の目的を探れ、と。
もし任務に成功したなら多大な褒美だけではなく、忍者を束ねる上忍の座を授けるとまで言ってきたのだ。

「その任、謹んでお受けします」
礼装姿の美桜は恭しく頭を下げ、そう言ってその場を立ち去った。


(私もここまでのようね……)
任務の準備を進めながら、美桜は諦念の中にあった。
烈道を討つのはくのいちを極めた美桜にも至難の技だが、たとえ任務を果たしたとしても
幕閣が栄達を与えるつもりなど無いと美桜は見抜いていた。
彼女は心とともに一切の欲を捨てた。それ故に富や出世への執着もなく、だからこそ
欲に惑わされることなく幕閣の思惑が読めたのだ。
任務に失敗しても成功しても、その先にあるのは悲惨な末路でしかない。
だがしかし、くのいちに任務を拒む権利はない。命令を達するために戦うしかないのだ。


 西方に旅立つ前日。美桜はあるところに出向いていた。
そこは罪人たちを収容する監獄であり、美桜が向かったのは凶悪な犯罪者ばかりが収容された区域だった。


「皆さん、御機嫌いかがかしら…?」
広めの牢屋に集められた凶相露わな男たちの前で、礼装姿の美桜が恭しく挨拶をする。

「はぁ?何言ってんだ姉ちゃん?」
「こんなとこに押し込められて御機嫌もクソもあるかよバーカ!」
男たちは口々に文句を垂れたが、しかしその目は突然現れた見目麗しい美女を飢えた眼差しで見ていた。

「ええ、知ってるわ。だからアナタたちに愉しんでもらいたいの」
「たのしむ?」「姉ちゃん何か芸でもしてくれんのかよ!」「ていうか脱げよ!ギャハハハ!」
美桜に向かって男たちのヤジが飛ぶ。牢屋は外から閉ざされ数十人の男たちの中に女が一人、一触即発の
空気が満ち満ちたその時である。

はらり……

美桜の足下に礼服が落ちる。
欲情にぎらついた無数の眼差しの中、美桜の着衣が次々と落ちていき、虚を突かれた男たちの目の前で
美桜はその魅惑的な裸身を晒した。

「「「!……」」」

呆然とする男たちに美桜が手招きする。

「いらっしゃい。私と気の済むまで愉しみましょう───」
0682始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/27(日) 09:50:51.82ID:IaZftonl
 
「おいおい、あの女なに考えてんだ!?ヤツらの前で脱ぎやがったぞ!!」
「あーあ、結構いい女だったのにな、勿体無い」
「このままじゃあの女アイツらに犯り殺されるぞ!!どうすんだよ!?」
「どうしようもないさ、牢の中で何があってもお構いなし、それがあの女をこの牢に送りつけた伊藤様の言いつけだ」
「一体あの女といい伊藤様といいどういうつもりなんだ…」
「さあね、俺らが考えても仕方ないさ」

牢を監視している看守たちは美桜の恥態を見ながらそんなことを言い合っていた。


「………」
「どうしたの?まさか黙って見ているだけかしら…?」

全裸の美桜が目の前の男たちに呼びかける。
彼らは誰もが殺人、強姦、強盗、その他諸々の悪事を犯して投獄された凶悪犯罪者ばかりである。
当然、獄中では女に飢えており、中には男同士で肛姦に及ぶ者たちもいる。
そんな彼らのもとに見目麗しい美女がやってきただけでも信じられないのに、なんとその美女は
衆目の前で着衣を脱ぎ捨て全裸になったのである。
理解し難いあまりにも現実離れした展開に、男たちは女の真意を計りかねていたのだ。
0683始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/27(日) 09:52:38.17ID:IaZftonl
 
「しょうがないわね…」
下品なヤジすら飛ばさない男たちにしびれを切らしたのか、美桜が動き出す。

「うおっ?!」
「あらあら、なかなかご立派だこと」
前にいた一人の男の下半身から、しなやかな指が逸物を取り出す。
男たちの着衣はいずれも囚人用の着物一枚を羽織り、フンドシという出で立ちだったため
美桜は容易く逸物を取り出せたのだ。

「おっ、ぉおおぉおおっ、ぅおおお、」
巧みな指使いが逸物に甘美な刺激を与え、みるみる天を突かんばかりに逸物を勃ち上がらせる。
しかし逸物への刺激はなおも止まらず、美桜の両手が固く漲った逸物をさらに扱き続けた。

「お、お、おお、来る、来る、来る、」
「イっちゃう?イっちゃうのかしら?」
「おおお、イク、イク、イク、」
逸物を美桜にされるがままの男が呻きながら身体を強ばらせる。
それを回りの男たちは固唾を飲んで見ていた。

「じゃあイきなさい!思いっきりぶっかけて!」
美桜の指使いが激しくなり、快楽の刺激が高まったその瞬間、美桜の手の中で逸物が跳ねた。

びゅるっ!びゅるっ!びゅーっ!!びゅーっ!!

美桜めがけて白い迸りがぶちまけられた。
「ん…! ん…んん……ふぁ…」
男の射精を浴びて、美桜の顔が、胸元が、乳房が白濁に汚される。
ようやく男の射精がおさまると、美桜はかかった精液を指ですくって舐めた。

「じゃあ、今度は誰にしようかしら…?」
欲情に潤んだ眼差しが男たちを舐めるように見回す。
様子を見ていた男たちだったが、これで彼らのタガが一気に外れた。

「オレだよ!オレオレ!」
「俺とヤってくれよ!!」
「いいや、俺からだ!!」
興奮した男たちが美桜に群がってくる。いくつもの荒々しい手が
柔肌を弄り、乳房に伸び、下半身を撫で回す。
美桜はそれらをあしらいながら、逸物を勃たせた男と繋がった。

「おお〜ッ!!」
「ふふふ、私の中はどう?」
「た、たまんねえええええ!!」
向かい合いながら男の逸物を挿れた美桜がグイグイ腰を使う。
膣肉は反り立つ逸物をしゃぶるように締め上げ、形容し難い快感をもたらした。
女と久しぶりにまぐわった逸物は快楽に堪えきれず、美桜の中で盛大に果てた。

「あら、もうイったの。もったいない」
「オラぁ!次はオレだ!」
筋骨隆々の男が美桜を引き離すと、逞しい逸物で真下から美桜を貫いた。
0684始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/27(日) 09:55:23.07ID:IaZftonl
「はぅううぅッッ!!」
「どうだ深いだろう!オラオラァ!!」
筋骨隆々の男は背後から美桜の膣奥をガンガン突きまくった。
男の下半身と美桜の尻肉がぶつかり、パンパンと間抜けな音を立てる。
そして美桜の前からは何人もの男たちが、美桜の口に、手に、逸物を押し付けてきた。

「ああン…もうせっかちね…」
しなやかな指で、紅く濡れた唇で、目の前の逸物たちに美桜が奉仕する。

「おうッ!」
「ふぉッッ!」
「はぅっ!」
逸物に愛撫を受け、一様に反応する男たち。
唇の中でねっとりとした舌遣いに舐られ、しっとりとした手の中で指捌きに扱かれ、強烈な快感に
誰もがたまらず悦びの呻きを洩らす。

「オラ、そろそろイクぞぉおおおお!!」
背後から美桜を責めている男が声を荒げる。
ズブズブと秘所を広げて貫く逸物の動きが激しくなり、愛液の飛沫を散らす。

「うおおおおイクぞイクぞ、ぉおおおおおおおお!!!!」
筋骨隆々の男が雄叫びを上げながら腰を突き上げた瞬間、逸物は力強く脈打ちながら美桜の胎内に精をぶちまけた。
そしてそれと同時に、美桜の口や手で奉仕されていた男たちも絶頂に達した。

「ンンン〜〜ッッ!!」
顔に乳房に大量の精液を浴び、膣奥に精液を注がれ、打ち震える美桜。
男たちが存分に精を放つと、また別の男たちが美桜を犯しにやってくる。

「ああ、おっぱいだおっぱい、本物のおっぱいだ!」
その男は美桜の乳房をつかむと、息を荒げて夢中で乳房を揉みまくった。

「あなた、おっぱいが好きなの?」
「ああ、こんないいおっぱい久しぶりだよ!」
おっぱい男は美桜の乳房にむしゃぶりつき、片方の乳房を揉んでいた。

「へへへ、たまんねえケツしてんな姉ちゃん」
背後からは別の男が美桜の尻を撫で回していた。
「なぁ姉ちゃん、アンタ尻穴もイケる口かい?」
「したいならどうぞ、遠慮なく」
美桜は尻たぶを広げ、肛門を晒した。

「へへへ、女の尻穴は初めてだぜ」
男の逸物の穂先が肛門にあてがわれ、菫色の窄まりを押し広げながらゆっくりと入ってゆく。
ギチギチと肛門が逸物を締め、それが何とも言えない刺激と背徳感をもたらしてくれる。

「く、くぅ、ふっ、ふぅ、」
「ああ〜、いい、いいぜ姉ちゃん、女のケツもいいもんだ」
尻穴男はゆっくり腰を使い、美桜の肛門の締め込みを堪能している。
0685 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/27(日) 10:01:01.52ID:IaZftonl
規制が入ったので一旦ここまで。全ての欲を捨てたのに男たちとヤりまくるって矛盾してるな、と。
0686名無しさん@ピンキー2017/08/27(日) 10:41:04.77ID:lbwwzqdQ
GJです
信也冤罪によって殺されたんかい…
どこまでも救われない…
くのいちの心はもう諦観の域に達してて伊藤の無茶苦茶な命令にも言われるがままだし…
男たちに輪姦させてくのいちの反応を見る事で、
こちらの命令に従うか試していたのだろうか…?
0687名無しさん@ピンキー2017/08/27(日) 11:03:05.64ID:ydJLnA7R
今の内に乙を
ケインとのエッチと違って読後感が・・・
痛々しさが積もるばかりです・・・
0688名無しさん@ピンキー2017/08/27(日) 19:51:17.53ID:F7baBTUy
乙乙。
西方へ逃げた仇役は外伝4のハゲ3人衆の一人思い出した。
胎魔王に溶かされそうになってマロールしたんだっけかな。
0689名無しさん@ピンキー2017/08/27(日) 21:33:31.34ID:qbl1a6PU

真相知っても怒る気力すらないなんて、よっぽど自分を許せないのかもな・・・
普通なら信也を殺さざるを得ない状況に追いやった元凶を憎むものなのに
ましてや証拠の捏造までした偽りの謀反報告が引金ならなおさら
監獄の男達に己を犯させるのは、欲を捨てたんじゃなくて自分への罰の一環なのかも・・・
信也といた頃の美桜を見ると無理をしているようにしか見えなんだよなあ
0690名無しさん@ピンキー2017/08/27(日) 23:39:30.57ID:qbl1a6PU
紛らわしい所を見つけたので訂正追記
>信也といた頃の美桜を見ると無理をしているようにしか見えなんだよなあ
厳密には
信也といた頃の美桜と比較すると今の美桜は無理をしているようにしか見えない
昔の美桜と比較すると今の美桜は別人レベルの変貌ぶりだもの・・・
昔の美桜を知らない人が見たら同姓同名の別人よくて双子と勘違いするレベルの
0691 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:06:41.92ID:cpQdHL29
 
変わってもいいじゃない
おんなだもの
くのいちだもの

みを


というわけで>>684の続きです。
0692始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:08:18.43ID:cpQdHL29
そしておっぱい男は相変わらず美桜の乳房に息を荒げてむしゃぶりついていた。

「ねぇ、一つ聞いていいかしら?」
「なんだ?」
おっぱい男に美桜が訊ねる。

「あなた、おっぱいでイったことあるかしら?」
「いや、ねぇよそんなこと」
「して、あげましょうか…?」
「………」
目を細めながら淫靡に微笑む美桜に、おっぱい男は無言でうなづいた。
と、その時である。

「どけよ、クソが!」
「ぐわっ!!」
おっぱい男を蹴飛ばして一人の男が割り込んできた。
その男は美桜の頭を掴むと、いきなり逸物を美桜の唇にねじ込み、乱暴に頭を動かした。

「うぐッ!ぶぅっ!おぶッッ!!」
「いつまでもチンタラチンタラしてんじゃねぇよクソアマ!さっさとヤらせろボケ!」
美桜の唇で太い幹が前後し、喉の奥を逸物の先が蹂躙する。
それは自分の欲求を満たすためだけの一方的な口淫であり、男は美桜のことなどお構いなしに、彼女の口を犯した。

「おう、出るぞ!飲めクソアマ!」
達する寸前、男は美桜の口に逸物をすべてねじ込むと、喉奥めがけて精を放った。

「ッッ!! ぐ……ぉご…ご……ぉぐぅ……」
ドクドクと注がれる精液を懸命に飲み下す。
0693始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:10:32.53ID:cpQdHL29
ようやく射精がおさまると、美桜は逸物を吐き出し、ゲホゲホと咳き込んだ。

「勝手に吐き出すなバカ!オラ、ちゃんと勃たせろ!」
男はまた逸物を美桜の口にねじ込むと、乱暴にしごきだす。
やがて逸物がみなぎりだすと、口から引き抜いた。

「おいオマエ、このアマを持ち上げろ!」
「あっはい」
美桜の尻を犯していた男が命じられて、美桜の両脚を抱えて持ち上げる。
脚を開いた状態で丸出しになった美桜の秘所に、男の逸物が突き入れられた。

「はぅゔゔゔぅッッ!!」
「どうだぁ!チンポ二本差しで嬉しいだろぉ!!」
前から、後ろから、逸物が美桜を貫き責め立てる。
男の身体に挟まれた白い肢体が快感にのけぞり、顎を上げて被虐の喘ぎを洩らす。

「ぉうッ!んぉお゙ぉぉ!!あ゙ぉお゙お゙お゙お゙ッッ!!」
「お、おれもうイきそう!」
「だらしねぇな、じゃあ同時にイクぞぉ!!」
膣と尻穴を犯す逸物の動きが早まる。そして二本は深くめり込んだ。

どくっ!!どくっ!!どくっ!!

美桜の胎内に、大腸に大量の精がぶちまけられる。
女の芯を灼く迸りに、法悦の歓喜が美桜の心身を溶かしてゆく。

「ぉ…ぉお……ぁぁ……」
快楽の余韻にうち震える美桜を、欲情に息を荒げる男たちがもてあそぶ。

「まだへばんじゃねーぞ、ヤりたいヤツはまだいるんだからな!」
「おう、みんなでマワせマワせ!!」
「ちゃんとオレたちを楽しませろよ!!」
男たちは美桜を思いのままに嬲り、犯し、次々と交わった。

口で、髪で、手で、脇で、乳房の谷間で、尻肉の谷間で、膣で、肛門で、脚で、好き勝手に精を放ってゆく。
おびただしい精液に塗れ、蹂躙される被虐に酔いしれ、美桜は忘我の快楽に溺れていったのだった。


「あーあ、ひでえなこりゃ」
「こんなになったんじゃ犯る気もしねえな」
床に横たわる美桜を見下ろしながら、男たちがニヤニヤと下卑た笑いを浮かべる。
男たちの欲情に染められ、美桜の肢体や体内は言うに及ばず、艶やかな黒髪や柔肌もすっかり精液に塗れていた。
白濁まみれの身体が仰向けになり、呼吸にあわせて胸の双丘が揺れ、膣口からとめどなく精液が溢れ出ている。

「せっかくオレたちの相手をしてくれたんだ、最後はみんなでキレイにしてやろうぜ」
「ああ、そうだな」
そして男たちは逸物を取り出すと、美桜の周りを取り囲んだ。
0694始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:12:43.02ID:cpQdHL29
「そうら、清めてやるぞ!肉便所め!」
そう言うと同時に、男たちの逸物から小便が美桜めがけてぶちまけられた。

ジョバジョバと勢いよく線を描いて小便が美桜の全身を流してゆく。
顔に、乳房に、下半身に、男たちの小便がかけられ、湯気を立てながら
小便臭が美桜の身体から漂ってくる。

「あっはっは、肉便所が本当に便所になったぜ!おもしれー!」
「これだけ可愛がってやりゃあ女冥利に尽きるだろうよ」
「これで酒とウマいメシがありゃ最高なんだがな」
「つうかこの女どうすんだよ、コイツ臭くて気持ち悪いんだけど」
「おーい看守ー!このメスブタ片付けろよー!」
男たちの誰かが看守を呼んだ、その時だった。

「……その必要はないわ……」

「「「?!」」」

いつの間にか美桜が立っていたのだ。
全身から精液と小便を滴らせながら。

「なんだまだ立てるのか」
「もうオマエに用なんかねぇよ!とっとと出てけ!」
男たちが口々に美桜を罵る。性欲を発散させた今、ヤりまくって汚れた女など汚物と何ら変わらないのだ。

だが美桜は誰の罵倒にも応えない。そして滑るような足取りである男の前に来た。
「なんでこっちくんだよ!この便……」

「 う る さ い 」

その美桜の声を聞いた者はいなかった。
だが、美桜の手が男の首を薙いだ直後、鮮血を吹き上げながら生首が床に落ちた。

「な…!」
「!!……」
いま一体何が起きたのか、男たちには理解できなかった。
裸の女がある男の前に来た瞬間、いきなり男の首が落ちたのだ。
そして首の無い身体は後ろにどうっ、と倒れた。

「おい、どういうことだよ!?」
「オマエ、いまいったい何を…」
男たちが再び口を開いたその時、美桜の身体が動いた。

片足を軸にし回転することで、もう片足が弧を描いた蹴りを放つ。
白い脚の放った軌跡は何人もの男たちの頭に重なり、彼らの頭部をまとめて刈り取った。


ドシャァァ━━ッ!!

頭を失った何人もの身体が床に倒れ込む。
あまりに一瞬の出来事だったので、男たちは何が起きたのかわからないまま。
そんな彼らに、返り血で赤く染まった美桜が告げる。

「皆殺しにしてあげる。最後まで私と愉しみましょう───」

そして。

「うわあああああああああ!!!!」

誰かの悲鳴とともに阿鼻叫喚の地獄が始まった。
0695始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:15:29.98ID:cpQdHL29
「いやだ!いやだ!死にたくない!!」
「看守ー!!ここから出せー!!」
「チクショウふざけやがってこのアマー!!」
「死ぬのはテメエだキチガイ女め!!」

牢屋の中から男たちの悲鳴や怒号が激しく上がる。
彼らが犯し交わっていた女はとんでもないバケモノだった。
そしてそのバケモノは男たちの命を次々と刈り取っていたのだ。

「ギャー!」「グワー!」
「ギャー!」「グワー!」
「ギャー!」「グワー!」

絶え間なく断末魔が上がり、床に死骸を作ってゆく。
立ち向かう者、逃げる者、命乞いする者、誰も分け隔てなく美桜は殺していった。

首をはね、頭を砕き、首を折り、心臓を貫き、ハラワタをえぐり出し、股間を潰す。
全裸という一見無防備な姿は、くのいちに野獣のごとき驚異的な身体能力をもたらした。

もともと野獣は着衣など纏わない。
くのいちを極めた美桜の身体能力は忍者たちの中でも極めて高い方だが、すべてを脱ぎ捨てることで
野獣と等しくなり、潜在力すら引き出すことで完全なる殺戮者として覚醒するのだ。
男たちと交わることでメスの本能を呼びさまし、更なる獣として己を作り替えてゆく。
それは誰に命じられたわけでなく、任務を果たすために美桜が己に課した修行であった。
もっとも、幕閣の一人で上役である老中、伊藤一明(カズアキラ)に請願してようやくこの修行ができたのだが。
伊藤も最初はこの請願に難色を示したが、烈道を倒すためだと説き伏せられ、監獄の凶悪犯を生け贄にすることで
美桜の願いを聞き届けたのだ。
男たちと交わり犯され、その男たちを自ら皆殺しにする、まさに人外の化生に堕ちねばなし得ない所業であった。


ピチャン……ピチャン……

血の滴る音が牢獄に響く。
男たちの返り血に染まった美桜が周りを見回すと、床一面に無残な死骸が転がっていた。
白濁と小便に汚された裸身はすっかり紅く彩られ、覗く柔肌の白さが際立つ有り様だった。
これで全員だろうか、取りこぼしがないか五感に神経を集中させた美桜の耳が、奇妙な音を捉えた。

“ちゅー、ちゅー、ちゅー”

まるで何かを吸っているかのような音だった。
音の出所に向かうと、そこには異様な様子の一人の男がいた。
男は両膝を抱えて座り、目を見開いたまま親指をひたすらしゃぶっていたのだ。
0696始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:18:10.65ID:cpQdHL29
その顔を見て、美桜は思い出した。
その男は美桜の乳房に執着し、乳房にひたすらむしゃぶりついていた男であった。
最後は胸の谷間に逸物を挟んでしごいてイカせてやったのだ。
奇妙な音は男が親指をしゃぶる音であり、どうやら彼は恐怖と混乱のあまり幼児退行を起こしたらしい。

「可哀想ね。でも諦めてちょうだい」

“ちゅー、ちゅー、ちゅー”

「私はね、赤ん坊や年端もいかない子供も手にかけてきたの」

“ちゅー!ちゅー!ちゅー!”

「だから往生際の悪い男は思いっきり苦しみながら死になさい」

“ちゅー……”

最後の断末魔が牢獄中に響き渡る。それはいままでより長く、おぞましい声だった。
そこで何が行われていたのか、それを確かめようとする者は誰一人としていなかった。


断末魔が止んですぐ、牢屋の扉が内側から蹴り壊された。
中から現れた血まみれの美桜は、怯えおののく看守たちにこう言った。

「今すぐお風呂の支度をしてくれないかしら?このままじゃ伊藤様に顔見せできないから」

看守たちは直ちに風呂の準備をした。
美桜は身体を洗い流すと、湯船の中にその身を浸していったのだった───


   ***   ***

そして現在。

「ふぅ……」

美桜は浸かっていた湯船からゆっくり頭を出した。
ケインとの情交のあと、彼女は宿からこっそり抜け出し、街にある自分のアジトにて風呂に入っていたのだ。
熟練した忍者なら誰にも気づかれず出入りすることなど容易いことである。


 美桜がヒノモトを発った後、侍たちによる烈道討伐隊が編成されたことを仲間のくのいちが知らせてくれた。
こうして美桜は自分の予想が正しかったと確信した。

謀叛人である烈道を討つのは侍でなくてはならず、すべての手柄は侍に与えられなければならない。
それはヒノモトを治めるサムライの論理であり、幕府の威厳と支配を保つための茶番であった。
美桜が烈道を討ったところで、それは侍の手柄として喧伝され、そのために彼女は邪魔でしかないのだ。

さりとて、烈道を討つ任務を放棄する選択はない。そして美桜は考えを変えた。
烈道は侍たちに討たせればいいのだ。くのいちである自分はそのためのお膳立てをすればいいのだと。
そもそも美桜は烈道の真の目的を探るという任務も負っているのである。
何もかも一人でやるより、それが効率的だと判断したのだった。

(続く)
0697 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/08/28(月) 03:20:41.41ID:cpQdHL29
次の投下でくのいち美桜さんのお話は終わると思います。たぶん。

ではこれにて
0698名無しさん@ピンキー2017/08/28(月) 09:16:35.22ID:iUD1wDEm
乙……
過酷な修行の名目で自暴自棄になっているようにも感じた……
0699名無しさん@ピンキー2017/08/28(月) 10:04:26.85ID:xa9FXd0G

裸忍者が何故強いか納得できる話だった
07006862017/08/28(月) 15:15:20.23ID:FkWcu17i
くのいちがダイジロウには自分の事を一切秘密にしておくようにとケインに言ったのは、
ダイジロウの復讐を密かにサポートする為だったという事なのか
その為に伊藤がドン引きするような苦行による自己暗示で更なる強化までしたと…
遣る瀬ない以外にも、あの世の信也がくのいちを見たら悲しむだろうな…
0701 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:03:24.61ID:9vagmw9h
今さら気づいたけど、美桜って挟めるくらい胸あったんだなーって。

では>>696の続きです。
0702始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:06:29.86ID:9vagmw9h
 
 それから行商人に紛れて西方に向かった美桜は、忍者たちが幾つもの小隊に分かれて
あちこちのダンジョンと呼ばれる迷宮に潜んでいることをつきとめた。
大人数での行動は目立ちやすく動きが鈍くなりがちである、だからこそ分散して
潜伏しているのだと美桜は読んだ。もっとも、烈道のいる本隊の動きは掴めなかったが。

恐らく本隊は他の小隊と互いに密に連絡を取り合い、何か異変があれば
それは本隊に伝わるはず、そう予想した美桜はとあるダンジョンにて忍者の小隊を襲撃した。
折しも、その忍者たちはある冒険者の一団を襲い、その中で唯一生き残った女メイジを皆で陵辱していた。
この好機を逃す手はなく、美桜の襲撃により忍者の小隊は全滅し、目撃者である女メイジは始末した。
が、そこで予想外の事態が起きた。

女メイジを殺した瞬間、死体だと思っていた男が突然魔法の道具を使いダンジョンから脱出したのだ。
すぐに追わなかったのは忍者の痕跡を消し、目撃者の死骸を処分する必要があったからだ。
その後、美桜は冒険者たちが拠点にしている町に向かい、自分が逃した男が
ケインという名の、声を無くした盗賊だと知った。
ケインは恐ろしく逃げ足の早い男で、美桜が探りを入れたころには既に町を出た後だった。

今までダンジョンにて冒険者に姿を見られたことはあったが、すぐに逃げたことで深入りを免れてきた。
しかし、ケインは美桜が何者かその目で見ていたに違いないのである。
美桜が動いていることは決して烈道らに知られてはならない。
こうして美桜は本来の任務に加え、ケインを探すという面倒まで負うことになってしまった。

忍者たちの動向を探りつつ、逃亡したケインを捜すのはさすがに困難を極めた。
しかしケインについて調べるうちに、美桜は次第にケインに興味を抱くようになっていった。
冒険者たちの間では、ダンジョンに死んだ仲間を放置して他人に救出を押し付けたケインへの評判は極めて悪かった。
それにこれは美桜だけが知っていることだが、ケインは仲間の女メイジを見殺しにして自分だけ脱出したのである。
これらを知れば、ケインに対して良い評価や感情を抱くどころか最低最悪のクズ野郎と誰もが思うはずである。

ところが……

(西方にもデキる男はいるみたいね……)
なんと美桜はケインを高く評価していたのだ。
0703始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:10:04.88ID:9vagmw9h
 
普通の倫理観ならケインのような男は冒険者どころか人間として決して許されない存在である。
だが、美桜から見たケインは実に有能かつ、優れた判断力を備えた一流の盗賊であった。
感情に流されず、合理的かつ最善の判断をし、行動力と生存本能に長けた優秀な冒険者、それが
くのいちの彼女がケインに下した評価だった。

もしヒノモトに生まれていれば、きっと優秀な忍者になれたであろうケインの才能を美桜は惜しんだ。
そして彼女はあることを思いつく。それはケインを烈道討伐に協力させるというものだった。


 烈道一味が西方に逃亡して一年以上が過ぎた。
その間、幕府が編成した烈道討伐隊のいくつかは忍者たちと交戦を始めていたが、戦況は決して芳しくなかった。

侍たちはヒノモト中から選抜されただけあって、まともに戦えば忍者たちより強い、そのはずだった。
しかし、ダンジョンにこもった忍者たちは様々な罠を張り巡らし、狡知をもって侍たちを翻弄したのだ。
結果、少なくない数の侍たちが命を落とし、同行していた僧侶や法術士(いわゆるメイジ)も巻き添えとなった。
上忍である烈道ならまだしも、下っ端の中忍や下忍相手にこのザマである。
このままでは討伐どころか、侍たちは返り討ちで全滅させられるかもしれない。

討伐隊に同行しているくのいち達(ただし正体を隠してである)からの報告を受けるうちに、美桜はある問題に気づいた。
討伐隊に欠けているのは盗賊の存在なのだと。優秀な盗賊の助力さえあったなら
犠牲はもっと少なくなっていたはずなのだと。

忍者は、くのいち達は正体を明かすことや大っぴらに活動することを許されていない。
それゆえに同行しているにもかかわらず、忍者としての能力や知識を活用できないという
問題を彼女達は抱えていた。
烈道配下の忍者たちに惨敗を重ねていたのも、ある意味それが原因とも言えた。

しかし、盗賊を雇えばなんとかなるというものでもなかった。
侍たちの多くは盗賊という職業を卑しい生業と蔑んでいたからだ。
戦いには何の役にも立たず、戦いが終わってから敵の死体や宝箱を漁るだけの
卑しく浅ましい下郎というのが、侍たちが盗賊に抱く印象であった。
当然これは無知と偏見が作り上げた差別的な見方なのだが。
0704始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:12:46.59ID:9vagmw9h
侍たちの中にも盗賊という職業に偏見をもたない者もいたが、如何せんそれはあくまでも少数派であり
逆賊烈道を討つ正義の戦いに盗賊の力を借りるなどありえないというのが、大方の侍たちの総意であった。


 そういうわけで、ケインを誰に協力させるかは容易に絞られた。
ケインを見つけたこの街で、ケインとダイジロウが酒を酌み交わすほどの間柄だと知ったことで、ケインを
ダイジロウの仲間にすることに決めたのだ。

美桜はダイジロウという男を知っていた。
ダイジロウは侍の中でも心が広く、生まれや立場で人を差別しない情の厚い男であった。
そして剣の腕においてはヒノモトでは一流と認められるほどの実力者であった。
まともに戦えば美桜ですら確実に勝てる見込みはない。
そして何より、忍者に、烈道に深い憎しみと怒りを抱いている。
烈道はダイジロウの妻と娘、そしてかつての“友”を殺めた憎むべき仇だからだ。
もっとも、ダイジロウの友に手を下したのは美桜なのだが……

(まあ大二郎“様”はどうにかできても問題はあの二人よね……)
湯船の中で白い肢体が艶めかしく揺れる。
 
討伐隊に編成された際、ダイジロウには5人の仲間がいた。
侍二人、僧侶一人、法術士一人、そして彼らの世話をするために遣わされた奥女中が一人。
そのうち法術士は忍者との交戦中に倒され、蘇生に失敗し命を落とした。
美桜が問題だとしたのは侍二人のほうで、彼らは盗賊を蔑み嫌悪する側の侍だった。
ケインがダイジロウに上手く取り入ったとしても、あの二人はケインの参加を絶対に認めないだろう。
おそらくダイジロウの説得ではあの二人を説き伏せるのは無理である。

しかし、美桜に手抜かりはなかった。くのいち仲間である奥女中を通じて僧侶に手助けを要請したのだ。
彼の口車もとい説得なら、頭の悪い馬鹿二人も折れるはずである。
あとはケインが冒険者としての本領を発揮できるかどうかにかかっている。


「あ……」
突然感じた下半身の疼きに身じろぐ美桜。

ケインとの交わりの余韻はいまだに美桜の中でくすぶっていた。
正直言うと、美桜はケインを殺したくて殺したくてたまらなかった。
なにせ忍者でもヒノモトの人間でもない盗賊風情にまんまと欺かれ逃げられたのである。
それはくのいちを極めた美桜にとって屈辱以外の何ものでもなかった。
0705始まりのニンジャ〜第三話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:18:23.51ID:9vagmw9h
もし侍たちによる忍者討伐が順調だったなら、ケインは見つけたその日のうちに殺していた。
しかし、のっぴきならぬ事情とケインの才能が彼を生き長らえさせたのだ。

「本当に運のいい男ね……」
美桜はケインをしばらく観察し、使えると判断してダイジロウの仲間になるよう要請するために会いに行った。
やはりケインはあの日のことを引きずっていた。
寝言で女メイジの名前を呼んでいたのも、股間を勃たせていたのも本当である。

ダイジロウの仲間になると確約させるだけだったが、それだけでは色々とおさまらなかった美桜はケインを求めた。
意外ななりゆきに当然ケインは困惑し、彼女を拒絶した。が、彼も男である。
結局、美桜の誘惑に負けて彼女を抱いたのだが、ここでまたしても美桜はケインにしてやられた。
なんとケインには女を抱く才能もあったのだ。そのせいで美桜は何度も果て、とうとうただの雌となって
夜明け近くまでケインと交わり続けたのであった。

(まったく、忌々しい…!)
悔しさを覚えつつも、あの時のことを思い出すと美桜の中のオンナが切なく疼く。
今まで何度も男たちと交わってきたが、こんなことは美桜にとって初めてであった。

殺したい殺したい。ケインを求める欲求は殺意へと繋がっていく。
だが、任務を全うせよという忍者の掟がケインへの殺意を抑えている。

「まあせいぜい頑張って頂戴……烈道までたどり着いたなら貴方はそこで用済みだから……」
美桜は深く一息つくと、両腕を揃えて伸ばした。
水を滴らせながら水面から上がった両手はまるで何かを掲げているかのようだった。

「そうしたらまた貴方を愛してあげる……烈道が討たれたら私と一緒に逝きましょう……」
呟く美桜が両手に想い浮かべるのはケインの首。そしてその先にある自らの末路。
いくら功を成そうと、如何なる命令に従順であろうと、上の都合でくのいちなど簡単に消される。
それでも美桜はくのいちであることを辞めない。

あの日、人間としての美桜は信也とともに死んだのだから。
くのいちとしてしか生きられないのなら、くのいちとしての運命を受け入れるしかない。

そして静かな狂気の笑みを浮かべながら彼女は思う。
最期にこの素肌に纏うのは誰の血であろうか、と───

(第三話、終わり)
0706始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:22:24.25ID:9vagmw9h
 
   ***   ***

「うーむ…」

開いた手紙を読みながら坊主頭の男は難しい表情をした。

「山路(ヤマジ)様、その手紙に何か問題でも?」
「問題、か。拙僧もずいぶんアテにされたものだな。読んでみなさい」
山路と呼ばれた坊主頭の男は手紙を目の前の少女に渡した。
頭の後ろを小さく纏めた短髪の少女は、山路から受け取った手紙をさっそく読んだ。

「………」
「美桜殿は一体どういうつもりかな、縫火(ヌイ)?」
「どうもこうも手紙の通りだと縫火は思いますが」
縫火と呼ばれた少女は淡々と事務的に答えた。

「確かに烈道討伐もままならず、芳しくない状況なのは確かだ。我々も伊南殿を失ってしまった。だが……」
山路の渋い声が絞り出すように言葉を紡ぐ。それを縫火は黙って聞いている。

「西方の人間を、しかも口の訊けない盗賊を我らの仲間にしろとは美桜殿は一体何を考えているのか。
しかも今日だ。これから件の迷宮に向かう時に余計な揉め事を持ち込むとは、実に厄介なことよ」
「なら断りますか?」
無表情のまま山路に訊ねる縫火。

「いや。美桜殿は戯れでこのような難事を頼みはすまい。ここは拙僧が弁を振るうしかあるまい」
正座していた山路は膝をポンと叩くと、スッと立ち上がった。

「ケイン、か。美桜殿に推されるとは如何なる男かな」
腕を組みながらまだ見ぬ男に思いを巡らせる山路。

(ケインですか……)
縫火もまたケインという人間に興味を抱きつつあった。

回りだした運命は彼らを導き、宿命へと誘っていく。だがその行き先に何が待つかは、誰も知らないのだ。

(続く)
0707 ◆pT3tKNJdzbPc 2017/09/03(日) 17:33:49.00ID:9vagmw9h
これにて第三話は終わりです。ついでに第四話の触りも投下しました。
これでようやく一区切りついた感じです。拙作に感想をくれた皆様にはただただ感謝です。
長いような短いようなよくわからないけれど、お付き合いいただき本当にありがとうございました。

ではまたいつかこのスレで、さようなら!
0708名無しさん@ピンキー2017/09/03(日) 19:39:31.75ID:EYiVNL4k
乙彼
奥女中もくのいちとな。
女同士の睦みあいもいいものじゃ。
0709名無しさん@ピンキー2017/09/03(日) 19:50:40.99ID:keblJ4fV

凍てついた美桜の心に僅かながらの変化をもたらしたケインのテクがもっと見れる事を大いに期待
0710名無しさん@ピンキー2017/09/03(日) 22:13:38.02ID:q9yLKdpn
GJです
縫火という新キャラが出て来たけど、もしカリーナポジなら空気キャラでもいいかも…
もう陰鬱な話は食傷になる程連続で目にしたので割と本気でキツイというか、
また次もそうなのかと読む意欲が削られ続けてしんどかったもので…
ケインの新たな仲間として活躍するならくのいちコンビによる、
裸マフラーのツーショットなどを楽しみにしてみたい以外にも、
縫火が全裸で戦うのかどうかも気になるところ
0711名無しさん@ピンキー2017/09/04(月) 02:42:38.66ID:lbtHR5rJ
やっと美桜を主体とした第三話が終わったけどただただ疲れたというのが第一印象
読むと不安の方が溜まって楽しむ余裕がなかったので次の話での改善に期待
美桜や縫火の素肌にマフラーだけの姿につっこむケインとか
ケインに二人そろって一方的にイかされ続ける美桜や縫火とか
0712名無しさん@ピンキー2017/10/31(火) 22:59:13.99ID:i05H8rDk

色々と波乱に満ちた展開が窺える区切り方
感情移入してしまう程キャラが作り込まれていたからケインやミオが苦しむほどこっちも同じく苦しい気持ちになった
読むにしろ感想するにしろ根気がいる流れだけどだからこそ最後はケインもミオもヌイも幸せ(死以外での)でなってくれる事を切実に願う
特にケインとミオは十分すぎる程苦しんでヌイも訳ありっぽいから



つまり第四話の完成・・・心からお待ちしております!!(全裸の披露率UPも兼ねて)
0713 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/01/20(土) 20:08:22.26ID:OV/PYKPR
4カ月も何の作品もなかったのか。さびしい
0714始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/01/20(土) 20:10:09.43ID:OV/PYKPR
 
   ***   ***

 泥の中にいるような微睡みから、ゆっくりと意識が浮かび上がる。
目覚めたケインの目に飛び込んだのは、窓からの柔らかな日差しだった。

(いないな……)
裸の女はすでにベッドから去っていた。
夕べはあんなに激しくヤり合ったのにつれないなと思うケインだったが、目覚めてすぐ横であの女に
「おはよう(はぁと」と言われるのは何だか心臓に悪そうなのでやっぱりいなくていい、ということにした。

ケインはベッドから飛び起きると、すぐに身仕度を始めた。
これからやる事はたくさんある。強要されたとはいえ、これから彼は冒険者に戻らなければならないのだから。
(そういやアイツの名前聞いてないな……)
裸の女がニンジャなのはわかったが、ニンジャ女と呼ぶのはなんか違うなとケインは思った。


「おやおや〜?声無しのケインじゃないですか〜!?」
チェックアウトのため1階に降りると、ソバカス面のホビットがカウンターからケインを見てニヤニヤ笑っていた。

「昨日はお楽しみでしたねぇ〜〜、いつの間にオンナ引き込んでたんですかぁ〜〜?ウヒヒヒw」
宿の外にまで聞こえるような大声でホビット野郎が訊ねてくる。

「しかもアンアンアンアンすごい声上げてマジたまんねーwwもしかしてあの声ケインの声?
だったらマジキモいんだけどwwwなんてwwwうえっwww」
汚いソバカス顔のホビットのニヤケ面は何もかもが不愉快で目障りだった。

(…死ねクソガキ!)
ケインは宿代である二枚の銀貨を指先に挟むと、巧みな指捌きでホビット野郎の鼻の穴にねじ込んだ。

「ほげェエ゙エ゙ェエ゙エ゙━━ッッ!!!!」
悶絶し、のた打ち回るホビット野郎の絶叫など知らん顔でケインは宿を後にした。


それから約30分後。

(まあこんなもんかな…)
冒険者の店にて、買い込んだ装備一式を身に着けながらチェックを行うケイン。
ラフな格好から装いを改めた彼は、すっかり半年前の冒険者の姿に戻っていた。
こうしていると、冒険者だったころの思い出が脳裏に浮かび上がってくる。
もっとも、それはケインにとって辛く苦い思い出ばかりであったが。
店での用事を終えると、ケインは足早に立ち去った。

「………」
そしてその後を、一つの影が静かに追っていった。
0715始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/01/20(土) 20:11:54.47ID:OV/PYKPR
 

(この道を行けば北の正門に早く着く、今ならダイジロウより早い!)

 息を急かしながら人気の無い路地裏を駆けるケイン。
装備のために有り金を使い果たし、行き着けの宿のクソガキを半殺しにしてまで来たのである。
ここでダイジロウを取り逃がしたら苦労が無駄骨どころか、本当にあの女に殺される。
いや、ダイジロウも殺されるかもしれない、ケインは自分の命以上の重みを感じながら必死に走っていた。
と、その時である。


「──やはりここを通りますか、ケイン」
突然、ケインの行く手に一人の少女が立ちはだかった。

(?! なんだコイツ!?)
思わず足を止めたケインは、いきなり現れて自分の名を呼ぶ少女に警戒と苛立ちを覚える。
年の頃は14〜5歳か。ショートの髪を後ろで小さく束ね、動きやすそうな着衣を纏い、
短めのスカートの下から伸びる両脚を薄手の履き物がぴったり覆っている。
その姿に、ある記憶がケインの脳裏に浮かび上がる。

(そうか…こいつ昨日ダイジロウを迎えに来たガキだ!)
昨夜、ケインとダイジロウが飲んでいるところにやってきて、彼女に帰るように諭されて
ダイジロウは酒席を切り上げたのだ。
その時、ケインを一瞥した彼女の表情を思い出す。
少女は無表情で淡々としていたが、その眼差しには明らかに蔑みの色が表れていた。
そして今、その時と同じ眼でケインを見据えながら、少女は彼の前に立っていた。

(コイツ、一体なんのつもりだ…?)
思わぬ足止めを食らい、焦るケインに少女が話しかける。

「まさかミオ様がアナタを推すとは思いませんでした。でも……」
そこまで言った瞬間、少女の姿が目の前から消えた。

(なッ!?)
驚いて後ずさったケインの頭上から少女が飛びかかってきた。
ケインは身体をそらし、ステップを踏んで少女の攻撃をかわした。

「いい反応ね。でも期待外れだわ」
そうつぶやく少女の手には奇妙なナイフが逆手に握られていた。
刀身と柄が一体になったような、柄の端に丸い輪の付いたナイフ。
そのナイフと少女の身のこなしに、ケインは驚愕した。

(コイツ、ニンジャか!)
昨日ダイジロウからニンジャのことを聞かされ、夜中は裸の女に再開し、今はニンジャ少女に襲われている。
続くニンジャとの因縁の連鎖に戦慄するケイン。
そこへ、少女の蹴りが飛んできた。
0716始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/01/20(土) 20:15:12.45ID:OV/PYKPR
 
ドスッッ━━!!

「ッッ!!」
みぞおちに衝撃を受け、ケインの体勢が揺らぐ。
そこへ間髪入れずに足払いを食らい、ケインは仰向けに倒れてしまった。

(く…クソが…!)
立ち上がろうとするケインだったが、踏みつけてきた少女の足が上半身を地面に押さえつけた。

「…!…!」
「……まったく、骨がないですね。この程度じゃただの足手まといだわ」
冷たい視線がケインを見下ろす。
(ふざけんな!)
ケインは腰のショートソードを抜いたが、すかさず少女の足がショートソードを蹴り飛ばした。

ドスッ!!

「カハッ!!」
「見苦しいですね……なんでこんな男をミオ様が推したのかわかりませんが、ここで終わりにしましょうか」
腹を踏みにじられ、たまらず息を吐いたケインの耳に少女の言葉が響く。
(ミオ…?ミオ様…?)
少女が二度も口にしたある名前がケインの中で引っかかる。
このニンジャ少女が様付けで呼び、ケインを推したと言っている、この“ミオ”とはまさか……

「さようなら。これも運命だと思って諦めて下さい」
少女が慣れた手つきでナイフを持ち直す。
ケインに向けられた刃が冷たく輝き、振り下ろされそうとした、まさにその時だった。


『縫火!!何をやっている!?』
突然、上がった男の怒声に少女が硬直した。

(こ、今度は何だよ!?)
寸前で命拾いしたものの、更なる事態にただただ困惑するばかりのケイン。
少女に踏まれて動けない中、急いた足音がケインと少女に近づく。

『儂はケインとやらを知らないからお前を迎えに行かせたのに、どういうつもりだ、この馬鹿モノ!!』
『も、申し訳ありません…』
『儂が話をつける、さっさと下がれ!』
『はい…』
彫りの深い顔の壮年の男が少女を怒鳴りつけると、少女は恐縮しながらケインから離れた。
なお、2人の会話はヒノモト言葉だったため、ケインにはさっぱりわからなかった。

「大丈夫ですかな、ケイン殿」
壮年の男がケインをいたわりながら起こす。

「さっきは使いの者が失礼をして本当にすまない。
私はヤマジと申す。あの娘ヌイに代わって先程の無礼、お詫び申し上げる」
そう言ってヤマジを名乗る男は、ケインに恭しく頭を下げた。
その頭はツルツルに剃られた丸坊主であった。
0717始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/01/20(土) 20:20:49.50ID:OV/PYKPR
(別にあんたに謝られてもなぁ……)
ケインがチラッと見ると、襲ってきたヌイとかいう少女はしれっと澄ました顔をしている。
コイツ、絶対悪いなんて思ってねえ。ケインは怒りを募らせつつもヤマジの話に付き合う。

「昨晩、儂の下に文が来ましてな、差出人はミオとあった。
ミオ殿は我々の同士で、この異国の地で何かと協力してくれる素晴らしいお方だ」
(ああ、さっきのガキも言ってたな、ミオ様ミオ様って)
「そのミオ殿が言うには、ケイン殿をダイジロウ殿の仲間に加えてほしい、ついては
その手伝いを儂にしてほしいとのことであった」
(結構な念の入り様だな、さすが“ミオ様”)
「ミオ殿が推したとなれば無視するわけにもいかぬゆえ、どうか儂とともにダイジロウ殿のもとに来てくだされ」
ヤマジの頼みにケインは頷いて応えた。

ヌイが言っていたこととヤマジの話からして、ミオが裸の女なのはほぼ間違いないだろう。
ミオ本人がケインを応じさせたからこそ、ダイジロウの仲間にも根回ししてきたのだ。
どうしてそこまで自分をダイジロウの仲間に入れたいのか、未だミオの思惑がわからないケインであったが
仲間になるからには、盗賊は盗賊にできることをするだけである。

(続く)
0718 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/01/20(土) 20:23:22.64ID:OV/PYKPR
しばらくエロいシーンはない。でもメスガキには大人のお仕置きをお見舞いしたい。

あけましておめでとうございます
0719名無しさん@ピンキー2018/01/21(日) 01:07:19.40ID:O7504HWh
乙です
ミオは土下座のポーズでアナルレイプしてやりたいですね。
0720名無しさん@ピンキー2018/01/21(日) 22:01:26.27ID:oIwzwc43
乙です
新年最初の新作ありがとうございました
0721名無しさん@ピンキー2018/01/22(月) 09:36:32.62ID:Fv0mWB0h

ケインとヌイの対面、彼女も一筋縄ではいなかそう
というかヌイが喧嘩腰な理由はなんだろうか
ケインをやたらと敵視するのはやっぱりミオ絡み?
大人のお仕置きなら是非脱がせましょう
ニンジャなのに裸にならないのは未熟の証なので
0722名無しさん@ピンキー2018/01/22(月) 14:28:15.75ID:Xn8/9q0J
陰鬱な話でなくてホッとできました。
しばらくエロいシーンはないなら逆に考えればいいんだ。
セクシーシーンを出せばいいと。
縫火と美桜の全裸あるいは裸マフラーに期待です。
0723名無しさん@ピンキー2018/01/22(月) 23:31:12.05ID:GWlx15ji
乙です
続きを書いてくださった御礼代わりになるかわかりませんが新キャラくのいちのイラスト描いてみました
服は脱がせてあります

ttps://www.axfc.net/u/3882702
ttps://www.axfc.net/u/3882703
パスワード nui

1枚目は裸でも戦えるけどまだ苦無を使っている絵
2枚目は手刀で戦えるようになった絵です

>年の頃は14〜5歳か
>ショートの髪を後ろで小さく束ね

発育してるけど幼さを残しつつ髪を束ねているイメージを表現してみました
0724名無しさん@ピンキー2018/01/23(火) 04:07:22.47ID:BMrDJfhE
小説最新話とキャライラ、GJ!
ケインとニンジャ二人の3Pを期待
0725名無しさん@ピンキー2018/01/23(火) 17:53:42.02ID:u7iIAUWQ
ずっと待ってた
>>しばらくエロいシーンはない
だったら縫火の格好を見えそうで見えない裸マフラーにチェンジで
0726名無しさん@ピンキー2018/01/23(火) 21:16:09.60ID:t5M4Yl5v
>>713-718
今回もお疲れ様でした。
第三話ラストにちょっとだけ出て来たヌイがメインの話でしたね。
ケインを圧倒する強さを見せつけましたが、彼女ことミオとどういう関係なのかも気になります。
そしてこの時点ではまだ服を着ていますが、全てを脱ぎ去る時が待ち遠しくもあります。
エロいシーンの予定ですがエロい=セックスの解釈ならば、少年誌でもキワドイ演出(乳首も乳首券という都市伝説がありますし)がありますし裸まではセーフではないでしょうか。
いきなり裸が恥ずかしいなら薄布マフラーのみのチラリズムで上手く隠しながらも羞恥心が捨てきれないヌイなどもいいかもしれません。

>>723
ヌイのイメージ絵ありがとうございました。
ミオとは違った魅力を感じました。
こちらの絵では一足先に脱いでいますが、本編でもその時が来るのが楽しみです。
0728名無しさん@ピンキー2018/01/24(水) 12:33:09.63ID:SuoTYn3X
乙です
脱いで全裸になるまでなら許容範囲ですよね?
それをチラチラと見るケインとか
0729名無しさん@ピンキー2018/01/24(水) 21:07:45.42ID:m2QqhD+R
忘れた頃に続きを投下してくれる乙
縫火が自分から脱ぐのかケインが脱がせるのかそれが問題だ
恥じらうのか美桜のように恥じらわないのか待ち遠しい
0730 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/02(金) 21:23:52.27ID:DI2GQHIB
感想とイラストありがとうございます。まだ出発できなくてごめんなさい
0731始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/02(金) 21:26:30.53ID:DI2GQHIB
 
「では、参りましょうか」
ケインとともに、さっそくダイジロウのもとへ向かおうとするヤマジとヌイ。
だが、ケインはすぐには動かなかった。
彼は背中のバッグから一枚の板を取り出すと、それに指で何かを書いてヤマジに見せた。

「なっ!」
「…!」
板に貼り付けられた魔法の羊皮紙に書かれた文章に、驚愕するヤマジとヌイ。

【ヤマジさんよ、ダイジロウはそのガキがニンジャだと知ってるのか?】

「ケイン殿は忍者と戦ったことがあるのか!?」
ケインはヤマジの問いにうなずいて答えると、また新たな文章を書き連ねた。

【半年前ニンジャに仲間を殺された。助かったのは俺だけだ】

「………」
ケインからの予想外の問いかけに、ヤマジはしばし困惑する。
ミオからの手紙にはケインは声を出せない熟練の盗賊とだけしか記されていなかった。
しかしこの男は先ほどの襲撃でヌイが忍者であることを見抜いてしまった。
ケインの指摘した通り、ヌイは忍者である。理由あって彼女の正体を知るのはヤマジだけなのだ。
もしヌイの正体をダイジロウが知ったら、決してタダでは済まないのは目に見えている。
0732始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/02(金) 21:30:46.10ID:DI2GQHIB
ケインを仲間にしなければならないが、ヌイの正体は隠さねばならない。
ヤマジは思考を整理すると、ケインに話し始めた。

「ケイン殿の申すとおり、ヌイは忍者だ。このことは儂とケイン殿しか知らない」
「ヤマジ様!?」
「黙っていろヌイ。これは勝手をしたお前の落ち度でもある」
正体をばらされ物言いしかけたヌイをたしなめると、ヤマジは話を続けた。

「ヌイは理由あって忍者であることを隠してダイジロウ殿に同行している。
だが、忍者は本来サムライと敵対する存在ではない。ヌイはれっきとした我々の仲間だ。
あんな目に遭って虫のいい願いだとは思うが、どうかヌイのことは内密にしてくだされ」

(………)
頭を下げ懇願するヤマジを前にケインはしばし思案する。
ニンジャを追う旅にニンジャが正体を隠して同行しているのはどうにも怪しいが、ヤマジやミオ、ダイジロウの話を
聞いた限りでは、サムライと敵対しているニンジャはレツドウとかいう奴が率いている連中だけだろう。
もっとも、先ほどのヌイといい半年前のミオといい、やたら殺意に満ちたヤツばかりなのはどうかと思うが
ヤマジさえいればヌイはうかつな真似はできないし、ミオは協力を申し込んだ手前、危害は加えないだろう……たぶん。
それにケイン自身、後ろめたい過去や隠しごとを持つ身である。
余計な詮索をしてかえってヤマジにこちらのことを探られるのは色々とマズい。
ケインは魔法の羊皮紙から文字を消すと、新たに一文を書いて見せた。

【わかった。ヌイのことはバレないよう気をつける。仲間入りの件はよろしく頼む】

「かたじけない」
ヤマジは安堵の表情を繕いながら礼を述べた。
お互いの疑問や不安が晴れたわけではないが、共通の秘密をもったことで
これからの協力関係を結べたのだと、ケインとヤマジは各々自分を納得させた。
だが、ヌイの方はそう割り切れてはいなかった。

(まさか忍者を知っていたなんて……厄介ですね……)
ヌイとしてはケインの力を試すつもりで本気で殺すつもりではなかったのだが、そのせいで
ケインに秘密を知られてしまった。まさにヌイの落ち度そのものなのだが、だからといって
ケインを信用できるかは別の話である。

(もしものときは……)

3人がようやくダイジロウのもとへ向かう中、ヌイは危険な考えを巡らせていた。
0733始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/02(金) 21:35:12.05ID:DI2GQHIB
 
それから約5分後。

「ケイン…? それにヤマジ殿にヌイまで、なんで一緒なんだ!?」
街の北門の前にて、ともに現れた3人に困惑するダイジロウと、その後ろにいる2人のサムライ。

「ダイジロウ殿、突然で申し訳ないが、このケインを我々の仲間にしてほしい」
「な…何だと!?」
驚くダイジロウに、ヤマジは更に話しかける。
そこへ2人のサムライが加わり、ヒノモト言葉での言い争いになった。
どうも2人のサムライはヒノモト言葉しか話せないらしく、話の合間にケインに
嫌悪の眼差しを向けたりするものの、直接物言いすることはなかった。
ダイジロウは終始平静であろうと務めていたが、彼もケインの参加には難色を示していた。

やがてヤマジの説得に2人のサムライが渋々引き下がって、ヒノモト言葉の論戦は終わった。
そしてダイジロウはケインに尋ねた。

「なぜだ、ケイン。お前が冒険者だったことは知っている。
だが、なぜ俺の仲間になろうと思った?俺なら入れてくれると思ったのか?」

(………)

厳しい顔で問い質すダイジロウ。
ケインはバッグから魔法の羊皮紙を貼り付けた板を出すと、指で文を書き、ダイジロウに見せた。

【ニンジャが仲間の仇だからだよ】
0734始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/02(金) 21:39:26.27ID:DI2GQHIB
 
「!!……」
驚いた風のダイジロウだったが、内心ではやはり、と思っていた。
酒場で忍者の写し絵を見た時の反応から、ケインは忍者に遭っていると察していた。
この西方で忍者に遭遇するということは、大方の場合において血生臭い結果をもたらす。
そして、忍者に遭遇して生き残ったと語る西方の冒険者をダイジロウはまだ知らなかった。

「ケイン、お前に何があったのか詳しく教えてくれないか」
ダイジロウに言われ、ケインは魔法の羊皮紙にて自分とニンジャとの因縁を語りだした。


 かつて俺は仲間たちとともに西方のダンジョンを冒険していた。
約半年前、あるダンジョンに入った俺たちパーティーは黒ずくめの集団に襲われた。
連中はあっという間に仲間たちを殺し、俺と女メイジだけが残された。
連中は俺と女メイジを取り押さえると、俺の目の前で女メイジを犯し始めた。
連中は代わる代わる女メイジを犯し続け、やがて飽きたのか、女メイジを殺すと俺もすぐに殺された。
後から来た別の冒険者に俺たちの遺体は回収され、蘇生させられたが、生き返ったのは俺だけだった。
俺はダンジョンであったことを他の冒険者たちに伝えたが、誰にも信じてもらえず
蘇生や遺体回収の費用をふっかけられ、一文無しになってしまった。
冒険者を続けようにも声の出せない盗賊を仲間にするパーティーなんかいなかった。
俺は黒ずくめの連中から逃げるようにあちこちをさまよい、この街にたどり着いた。
だが昨日、ニンジャのことを聞かされて黒ずくめの連中がニンジャだと知った。
俺は非力だ。どんなに憎んでも何をしてもニンジャにはかなわない。
それでも仲間の仇は討ちたい。ヤツらがたびたび口にしていた“レツドウ”が何者か知りたい。
ニンジャと戦えるなら何があっても構わない、お荷物なら捨ててもいい、死んだら放っといていい、俺も連れていってくれ!


そこまで語ると、ケインはヒノモトに伝わる交渉術の最終奥義“ドゲザ”を使った。

「「………」」

ケインとダイジロウの間に沈黙が流れる。

ケインとその仲間たちに起こったことは悲劇だが、同情や感傷で仲間を決めてはいけない。
しかし、ケインが聞いたという“レツドウ”という言葉がダイジロウの心を大いに揺さぶったのもまた確かであった。

(続く)
0735 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/02(金) 21:43:19.71ID:DI2GQHIB
仲間に加わるのが目的であって、正直でなければならないわけではないのだ。

バレたら怖いけどね

ではおやすみ
0736名無しさん@ピンキー2018/02/02(金) 21:55:03.17ID:muflwGdL
魔法で逃げ帰ってきたのは誰にもバレてないんだ
口がきけないからうっかり喋っちゃうこともないもんな
0737名無しさん@ピンキー2018/02/04(日) 22:13:36.20ID:7iPSHBqP

確かケインを憎んでいる生き残りがいたような・・・
0739名無しさん@ピンキー2018/02/05(月) 01:22:23.42ID:rWXds8Ae
おお、続きが来てる。
ケイン以外の生き残りだけど、一人だけ蘇生成功したのがいた。
0740名無しさん@ピンキー2018/02/05(月) 10:13:59.15ID:H7Gp5B9H
乙です
読み返してみたけど生き残りの性別は"彼"という表記から男性である事以外は不明ですね
復活後はケインを追いかけてそのままフェードアウトしてます
0741名無しさん@ピンキー2018/02/05(月) 19:43:44.31ID:rubLAZCA
GJ
ケインのいた冒険者パーティの末路は当初ダンジョンのある町で話題になったよ
それもいつしか飽きられて現在だと忘れ去られている
0742 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:11:24.60ID:BHIIcqJv
ケインが一人だけダンジョンから脱出したと知っているのは、今まではミオとダンジョンのある町の連中と、ただ一人
生き返ったヤツだけだった。>741の言うとおり、みんな飽きたから話さなくなった。
ただし。ケインの件が他に知られていないという確証はない。

ちなみに今回は野郎どもがガン飛ばしたり怒鳴ったりそんな話し。サツバツ!
0743始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:15:46.87ID:BHIIcqJv
 
『父上、大二郎はあの痴れ者を仲間にしますかね』
『フン、連れていったところで忍者か魔物に殺られるのがオチよ、こないだの伊南みたいにな』
『まったく戦いのおこぼれを漁るしかないコソ泥が何をトチ狂ったのやら』
『まあ生きた楯くらいにはなるだろうさ』

ケインとダイジロウのやりとりを眺めている二人のサムライがヒノモト言葉で話し合う。
二人は父子らしく、父親は痩せぎすでヤラレ役の似合いそうな顔をしており、息子は父親とは全く似つかぬ男前であった。
この二人のふてぶてしい態度やケインを蔑んだ物言いは、彼の仲間入りを躊躇わせるには十分であった。


『………』
そんな二人の会話を不愉快な思いでヌイは聞いていた。
伊南(イナミ)とはダイジロウの討伐隊にいた女法術師で、西方で言うところのメイジである。
年上であるイナミは、何かとヌイに親身にしてくれ、仲の良い相手だった。
しかし彼女は先日ダイジロウたちと赴いたダンジョンにて、忍者の罠にかかり、そして殺された。
そもそもイナミが罠にかかったのはサムライ父子のせいなのだが、彼らはそのことを全く悪いとは思っていなかった。
二人はダイジロウには詫びたものの、本心でないのは明白だった。
この父子には忌々しい思いを抱く一方、ヌイはケインという男に否定的であった。
尊敬するミオが推したとはいえ、ヌイが知るケインは博打代をダイジロウにせびり、酒色に浸るようなロクデナシである。
そのうえヌイが忍者だと知られてしまった。はっきり言ってヤマジとの約束を守る保証などどこにもない。

(なぜ美桜様はあんな男を伊南さんの代わりに……)
ヌイの心中で疑問と不安が入り混じる中、ようやくダイジロウが口を開いた。


「ケイン、顔を上げてくれ」

ダイジロウに促され、顔を上げるケイン。その目はまっすぐダイジロウを見据えていた。

「先に言わねばならぬが、我らが忍者を追うのは仇討ちだからではない」
ダイジロウは険しい表情のまま、話を続ける。

「ヒノモトで非道を働いた輩はここ西方に逃れてなお、無法を犯している。
お前の話からもそれはよくわかった。おそらく我々が知らないだけでも
かなりの人々が忍者どもの犠牲になっているはずだ。ケイン、すまない、本当に申し訳ない」
そう言って、ダイジロウはケインに頭を下げた。
0744始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:20:05.00ID:BHIIcqJv
(おい、待てよ、なんでお前が謝るんだよ?)
ケインが内心とまどう中、ダイジロウはさらに話を進めた。

「お前が聞いた“レツドウ”という言葉は忍者どもを束ねる首領の名前だ。
すべての忍者どもはレツドウの指示を受けて動いている。
冒険者を襲うのもレツドウの考えあってのことだろう」
(………)
「レツドウの思惑や目的はわからない。だが、ヤツを早く討たねばいずれ最悪の事態になる。
西方の国々も忍者と我々サムライの存在に気づいているはずだ。レツドウの悪行が続けば、その怒りの矛先は
西方にいる我々サムライや忍者ども、いずれはヒノモトに向けられる。

その先にあるのは……戦(いくさ)だ」
(……!)

ダイジロウの語る話は、もはや一介の冒険者の事情を越えた深刻な問題であった。
レツドウという悪党をこのままのさばらせたら西方とヒノモトが戦争になるかもしれない。
それは双方にとって絶対避けねばならない事態である。

「ケイン、これは我らヒノモトの者が片付けなければならない問題だ。
ヒノモトでヤツらを討てなかったことで迷惑ではすまない酷いことになってしまった。それは心から謝る。
だが、お前が首を突っ込んで命を捨てることはない。
レツドウも他の忍者もすべて殺す。それでお前の仲間の仇もとれるはずだ。
だからケイン、俺はお前を連れていくわけにはいかな…」

突然、ダイジロウの話が遮られる。
それはケインがダイジロウの襟首を掴んだからだ。

「ケイン!?」
怒りの形相のケインは襟首を離すと、魔法の羊皮紙に何かを書き殴ってダイジロウに突き出した。

【ふざけんな!!】

「え…」
ケインは文字を消すと、再び何かを書き連ね、ダイジロウに突き出す。

【よそ様の土地で好き勝手しやがってそれを黙ってみてろだと!?いったい何様のつもりだお前ら!!】

「……」
ケインの怒りのこもった文言にダイジロウはしばし言葉を失う。
西方からすればサムライもニンジャもよそ者である。西方の人間であるケインからすれば
勝手に乗り込んできたよそ者たちのいざこざに巻き込まれて怒りを覚えるのは当然であった。

しばしの間をおいて、ケインはまた新たな文章を書き連ねた。

【レツドウとかいうヤツが元凶なら、ソイツの最期を見届けてやる。
それまで俺はお前たちの後をついていく。イヤならその腰のカタナとかで俺の首を落とすんだな】
0745始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:23:20.96ID:BHIIcqJv
 
「………」
「………」

 険しい顔でにらみ合う二人の男。

北門を行き交う人々が何事かと、横目でチラチラ見ている。

『山路様、人目が…』
『しばし待て』
往来からの視線に困惑するヌイを抑えるヤマジ。
このにらみ合いはケインとダイジロウの言葉なき対話である。
言葉を尽くしたいま、ケインとダイジロウの二人にとって互いの心を測ることが最後の対話なのだ。


果たしてどれくらいの時が経ったか。
時間にすれば数分であるが、いつまでも続くかと思えたにらみ合いは、ようやく終わりを迎えた。

「……わかった」
ダイジロウが口を開いた。

「ケイン、お前を我らの道中に加えよう。ただし命の保証はしない。それでもいいなら付いてこい」
厳かな声で仲間入りを許したダイジロウに、ケインは頭を下げ、魔法の羊皮紙に文を書いた。

【ありがとよ。無理を言ってすまなかった】

「いいさ。西方の人間がいるのならそれなりに言い訳にもなる。レツドウを討つまで生きていれば、な」
そうケインに応えたダイジロウの表情は、いつしか穏やかな人のよい顔になっていた。

『大二郎殿、儂からも礼を申す。かたじけない』
ケインとダイジロウのやりとりを見届け、ヤマジがダイジロウに礼を述べる。
0746始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:27:07.34ID:BHIIcqJv
『山路殿も内心では心苦しかったでしょう。これで少しは気が楽になられましたかな』
『ええ、大二郎殿こそ儂とケイン殿の無理を受け入れてくれるとは大した度量ですな。感服致した』
と、ダイジロウとヤマジが互いをねぎらっていたその時である。

『大二郎!!おぬし、気は確かか!?』
突然怒鳴り込んできたのはサムライ父子の父であった。

『御不満ですか、義父上(ちちうえ)?』
『当たり前だ!我らの使命を何と心得る!こんな卑しい盗賊なんぞを連れて使命を果たせると思っているのか!?』
ダイジロウに義父上と呼ばれたサムライは口角泡飛ばしながらダイジロウに詰め寄った。

『先程は私の判断に任すと言われたはずですが』
『こんな馬鹿な判断をするとは思わなんだからそう言ったのだ!!
あの盗賊に何を吹き込まれたか知らんがヤツを連れていくことは許さん!!とっとと追い返せ!!』
『それはできませんな』
『何だと!?』
ダイジロウに要求を拒否され、サムライ父の顔がますます怒りに歪んでゆく。

『大二郎殿、父上に逆らう気か!』
『そうだ、儂は義父なのだぞ、それが義父に対する態度か!』
サムライ息子も加わり、サムライ父子がダイジロウにくってかかる。
しかしダイジロウはたじろぐどころか毅然とした態度で二人に対峙した。

『此処でそれを持ち出しますか。ですが誰のおかげで此処にいられるのか、もうお忘れか?』
『なっ!?』
『お二方が此処にいられるのは私が同行を許したからであって、もし私のやりように御不満でしたら
お二方だけで使命を全うなされればよいでしょう』
『な、何を言っておる、我ら親子抜きで戦えると思っておるのか大二郎!』
『そうだ父上の言うとおりだ!己の強さに増長して我らを蔑ろにするのか!』
まったく、ああ言えばこう言う。
さっきヤマジを交えて決めたことさえ平気で反故にするサムライ父子にダイジロウは心底ウンザリする。
だが、討伐隊の長としてはここで彼らを黙らせなければならない。鬼の覚悟をもって、ダイジロウは声を上げた。

『伊南殿を見殺しにしたお二方がまともな戦力とお思いか…?』
『『なにぃ!?』』
思わず叫んだサムライ父子の声が重なる。
0747始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:32:55.66ID:BHIIcqJv
『お二方の迂闊な振る舞いで伊南殿が罠に掛かり、忍者どもに嬲り殺しに遭ったことをどうお考えですかな』
『な、なんで今さらそのことを蒸し返すのだ!?あのことはもう済んだことだろうが!!』
『忍者どもに殺されたとはいえ、山路殿が蘇生に成功さえすれば
伊南殿は助かっただろうに、我らを責めるのはお門違いだ!!』
ダイジロウからの詰問にサムライ父子はうろたえながら必死に反論する。

『やはり反省も後悔もしてませんか。これでは伊南殿も浮かばれませんな』
『話を逸らすな!儂はその盗賊を追い出せと言ってるんだ!』
『そうだ!!伊南殿のことは関係ないだろう、父上の言うとおりにしろ!!』


『 い い か げ ん に し ろ !! こ の 馬 鹿 ど も が !!!!』


『『ッッ!!』』

ダイジロウの気迫に満ちた怒号が、耳障りな暴言を圧倒する。

『後衛を守りきれず貴重な戦力を危険に晒しておいて、よくそんな口が叩けたものだな。
伊南殿が死んだのは貴様らのせいだ。助けようとした山路殿を責めるなどそれこそお門違いだ』
サムライ父子へのダイジロウの叱責が始まった。

『だいたいこの一年余り、貴様らは何をしていた?
忍者討伐に赴く以外は宿に籠もりきりか、色町に繰り出すかだ。
我らは西方で戦っているというのに、西方の言葉も文字も学ばず
忍者どもの情報を探しもせず、親子して酒を飲みながら愚痴をこぼしてばかり、迷宮に赴けば各々勝手をしては
山路殿や縫火の手を焼かせる始末、そのあげく伊南殿を失ったのだ』
ダイジロウの言うとおりだった。
サムライ父子は戦力云々以前に冒険者としての心構えが著しく欠けていたのだ。

『山路殿があの者を推してきたのは元はといえば貴様らの失態のせいだ。
追い出せという資格など貴様らにはない。それが納得できないというなら、今すぐヒノモトに帰れ!!』
『『………』』

怒りに満ちたダイジロウの前に、サムライ父子はただただ恐縮し、沈黙するしかなかった。

『大二郎殿、もうそこまでになされよ』
ようやくここで、ヤマジがダイジロウを諫める。

『お二方は大二郎殿の義父上と義兄上(あにうえ)、なぜ討伐隊に加わっているか大二郎殿もわかっているであろう?』
『………』
0748始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:37:33.59ID:BHIIcqJv
『確かにお二方は至らぬところはあるやもしれんが、ここでヒノモトに帰っても武士の面目が立つまい。
ならば大二郎殿がお二方を厳しく律するがよかろう。さすればいずれ性根が直るかもしれん』
『山路殿がそう仰るなら…』
『それに先程の叱責でお二方もわかったであろう、ケイン殿のことはもう心配めされるな』
『あいわかった』
『いささか時間を食いましたな。では出立しますか、大二郎殿』
『うむ』
こうしてやっと、サムライたちの諍いは終わった。


(やっと終わったか…)
突然始まったヒノモト言葉の言い争いに、ケインはこっそり下がって終わるのを待っていた。

「待たせてすまないな、ケイン」
(いいってことよ)
ケインはダイジロウにヒラヒラを手を振って返す。

「では行くぞ、各々気を引き締めよ!」
先頭を行くダイジロウの後をヤマジ、ヌイ、ケインが続き、サムライ父子が気まずそうについてくる。

こうしてミオの思惑通り、ケインを加えた忍者討伐隊は動き出した。
向かうは北西のとあるダンジョン。
様々な問題や不安を抱えながらも、彼らはようやく歩き出したのであった。

(続く)
0749 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/08(木) 17:45:11.71ID:BHIIcqJv
ゲームではレバーとボタンでサクサク進むこともリアルにするとめんどくさいね。
みんなのパーティーはサツバツしてる?

こういうときはスマホ太郎でも見よう。またね〜〜
0750名無しさん@ピンキー2018/02/08(木) 21:36:52.44ID:4aPIdP8r
このスレ(1)から全部見ているわけではないけど
結構完成度高い作品ですよね
終われるよう頑張ってください。
0751名無しさん@ピンキー2018/02/08(木) 21:42:53.57ID:mRXc/LkR
登場するまでもなくはいになってしまったメイジさん哀れ…
0752名無しさん@ピンキー2018/02/09(金) 10:13:53.50ID:+2txYz6o
乙でした。
イナミさん名前ありキャラだけど既に故人とはお悔やみ申し上げます。
0753名無しさん@ピンキー2018/02/09(金) 12:24:07.81ID:iFM5p8gM
うわぁ、サムライ二人の死亡フラグが物凄く太くそびえ立ったわ
0754名無しさん@ピンキー2018/02/09(金) 17:00:59.38ID:ZOVG0Y21
乙かれさん
なんでこんなのが討伐メンバーに選ばれてるんだろうな・・・
敵よりも厄介な味方殺しでしかないわ
0755名無しさん@ピンキー2018/02/09(金) 20:11:06.06ID:d4mpOj+p
おっつ
実力があっても人格や行動が全てを台無しにしている件
0756名無しさん@ピンキー2018/02/09(金) 20:11:34.71ID:PlxGGZ+I
>>754
血筋とかコネとか、本人の能力と関係無く選ばれるのは割と良くある。
0758 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:25:48.76ID:BWR1Obgw
 
イナミ「ハァ…名前が出たと思ったらもう死んでるし。でも変な番外編で私の最期とか描かれたくないし。
   あの馬鹿親子は殺してやりたいけど、いま死なれたら私と再会するからそれも嫌だし。
   縫火ちゃん強く生きてね、山路さん生前はお世話になりました。あと大二郎さん、私あなたのこと好きでした。
   あとだれかいたような気がするけど、とりあえずみんなのことよろしくね」

以上、イタコからのメッセージでした。
第四話いきます。
0759始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:30:20.33ID:BWR1Obgw
 
   ***   ***

「さっきの一体なんだったんだろうな」
「知らない言葉で怒鳴りあったり、にらみ合ったり…」
「なんか盗賊みたいなのが来てからモメてたな」
「新メンバー絡みのゴタゴタかよ、東方の奴らは気難しいや」

北門にて起きたケインとダイジロウ一行との一悶着は、酒場にてちょっとした話のネタになっていた。
もっとも、誰もヒノモト言葉などわからないし、彼らの事情を知らないから憶測や想像で好き勝手言ってるだけだが。
しかし、そんな噂話に耳を立てている者がいた。

(そっか…あの連中、今度は盗賊を雇ってダンジョンに行ったんだ…)
壁を背に口元のグラスを傾けながら、そのエルフと思しき金髪で眼鏡の女性は耳を澄ませる。
彼女は雑音と会話を分けながら、聞こえる会話の内容を吟味していた。

(しかし報告するにはまだまだ情報が足りないなぁ……ここでめぼしいネタがなかったら……)
グラスを上げ、中身を一気にあおる。

(ドラゴンの巣に飛び込むつもりで行ってみますか!)
エルフの女性は空のグラスを掲げ、黄色い声でウェイトレスを呼んだ。

「おねーさーん!ワインのおかわりくださーい!」
0760始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:33:55.01ID:BWR1Obgw
 
   ***   ***

 大陸において西方世界と呼ばれる広大な地域の東の端に、その街はあった。
その名はイースタリア。東西を行き交う商人や旅人によって栄えた街であり、東西の文化の交わる場所でもある。

そのイースタリアの北の向こうには山脈が連なり、そのふもとにダイジロウ一行が向かうダンジョンがあった。
しかしながらそこは徒歩で気軽に行ける距離ではなく、片道で丸1日はかかると言われている。
なぜそんなところに彼らは向かうのか。
それはそのダンジョンに忍者どもが潜んでいるか確かめるためである。


「そこまでしてもらわなくとも、別に我々は構わないのだが…」
「いえいえ、盗賊たちから助けてくれたことに比べれば大したことはありませんよ、どうかご遠慮なく…」
「わかった。御好意感謝する」
ダイジロウは商人と思しき男に頭を下げると、仲間たちに子細を話し、そして全員が荷馬車に乗り込んだ。


ダイジロウ一行は北門から出発して、街道を進んでいた。
それから約2時間経ったころだろうか。彼らは異様な光景に出くわした。
それは盗賊の集団に襲われている荷馬車の隊列であった。
護衛らしき冒険者たちが応戦していたが、見る限りでは彼らは劣勢にあった。

「助けに行くぞ」
ダイジロウは一行を引き連れ、盗賊団に戦いを挑んだ。
結果、盗賊団の撃退に成功し、荷馬車を率いていた商人から途中まで
馬車に載せてもらえることになったのである。

「しかし凄かったな、あんたの戦い方は。ヤツらがまったく手も足も出なかったんだから」
「その腰に下げている剣はエラい切れ味だったな。俺らの使っている剣とは違うみたいだが、それが東方の剣なのか」
「東方にはあんたみたいな戦士がまだまだいるのか、俺らも腕上げねえとな」

荷馬車の中では、ダイジロウが同乗していた他の冒険者たちから賛辞を浴びまくっていた。
負傷者こそ出たものの、死者を出さずに荷馬車隊を守りきったことで、冒険者たちはダイジロウの強さに
すっかり感服してしまったのだ。
しかしダイジロウは浮かれるでも畏縮するでもなく、毅然と彼らに応対していた。

(大人気だなあいつ…)
やれやれといった感じで眺めていたのは戦いであまり活躍しなかったケインである。
0761始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:40:33.91ID:BWR1Obgw
一応ケインもショートソードを抜いて応戦したのだが、とても戦士系のようにはいかなかった。
ダイジロウの強さは言うまでもないが、あのサムライ父子も戦士系だけあって
それなりの腕前で、盗賊たちを次々と倒していった。ただ、サムライ息子は
ケインと他の盗賊の区別がつかなかったのか、何度もケインを斬ろうとしていたが。

(…あの野郎いつか殺す!)
胸の内でサムライ息子への殺意をたぎらせるケイン。
ちなみにサムライ父子はダイジロウを横目で見ながらコソコソ陰口を叩いていた。
しかし何より、ケインが気になっていたのはヌイの戦い方であった。
盗賊団との戦いでは、ヌイは荷馬車の上に駆け上り、敵の頭上から弓矢を射っていた。
その腕前は見事で、ほとんどの矢を相手に命中させていた。
だが。ケインはその戦い方に違和感を感じていた。

ダイジロウのもとへ向かう途中で襲いかかってきた際のあの身のこなし、隙なく
繰り出された攻撃、あれが本来のヌイの戦い方ではないのか。
ケインが感じたところでは、ニンジャとしてのヌイは
ダイジロウやミオには及ばないが、あのサムライ父子より間違いなく強い。
にもかかわらず、ニンジャとして戦うことができないヌイに、ケインは少しだけ彼女を気の毒に思う。

(まあ俺があいつのことをどうこう言えやしないしな…)
ケインが実はおおやけにできない事情でダイジロウ一行に加わったように、ヌイにも
正体を明らかにできない事情があるのだろう。
興味がないわけではないが、別に知らなくてもいいか、ともケインは思う。
たとえ知ったところで、人はしょせん自分の狭い了見の中でしか理解できないチンケな生き物だから、だ。
ケインは考えるのを止め、腕を枕に目を閉じた。


 時が経ち、西の空に夕陽がさしてきたころ、荷馬車の隊列はとある小さな村に着いた。
そこは商人の目的地の1つであり、今晩はここで夜を明かし、明朝出発するという。
ダイジロウ一行もこの村で一晩過ごすことになった。


(あーやっぱ馬小屋か…)

案内された宿泊先はケインの予想通りだった。
サムライ父子はグダグダ文句を言っていたが、ダイジロウとヤマジに何か言われておとなしくなった。
ヌイはさっそく寝床になるであろう場所を調べ、寝られるように敷き詰められた藁を整えている。
なお、彼女が用意している寝床は5人分で、そこにケインの分は入ってない。
0762始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:43:52.57ID:BWR1Obgw
(仕方ねぇな、俺は“新入り”だしな)
そう心でつぶやきながら、ケインも自分の寝床の準備をする。
馬の臭いがほのかに残る藁草を直していると、ふとケインの脳裏に昔のことが思い浮かぶ。

駆け出しだったころは6人で馬小屋に泊まり、寝る場所で揉めたり、馬の糞の始末に辟易したり……

しかしケインは思い出を振り払う。彼らはケインが捨てた仲間であり、ケインに彼らを懐かしむ資格はない。
全滅した場所を記したメモを残したから、彼らは冒険者に死体を回収されて生き返らせてもらったかもしれない。
だが、助かっていようといまいと、ケインが彼らのもとに戻ることは二度とない。
如何なる理由にせよ、仲間を捨てて逃げるということは、決して簡単に許されることではないのだ。


 その晩、ダイジロウ一行と護衛の冒険者たちは村の広場に大きな焚き火を設けて、それを囲んで夕食を始めた。
それぞれ持ち寄った食事や酒に舌鼓をうち、昼間の出来事を肴に語り合う。
もっとも、冒険者たちと話しをしているのはダイジロウとヤマジであり、会話のできないサムライ父子と
声の出せないケインは早々に退席したが。
そしてヌイはというと、酒席の面々に酒を注いでいたが、ヤマジに命じられ
寝床に引っ込んだサムライ父子に酒と食事を持っていった。


(あー!虫うぜえ!)
まとわりつく蚊を払いながら、ケインは虫除け草を入れた香炉に火を焚いていた。
季節はまだ夏であり、森に近いこの村では夜間になれば蚊の類が飛んでくる。
もちろん馬小屋にも蚊は入ってくるため、虫除けの草を焚いてその煙りで蚊を払わなくてはならない。
ケインは必要分の香炉に火を焚くと、馬小屋に向かった。


(これでよし、と…)
吊り下げ式の香炉をすべて設置し、一息つくケイン。
数分もすれば不快な羽音は馬小屋からいなくなるはず。だが……

「ンゴォー…」

どこからか聞こえてくるイビキの声。
そのイビキの主は、藁の寝床に横たわるサムライ父子だった。
寝る直前まで飲み食いしてたのか、食べかすの残った食器と空になったグラスがあった。

(やれやれ、起きたら蚊に食われて顔がパンパンだぜwざまあw)
ランプの灯りに照らされ呑気に寝入る2人の顔を見ながら鼻で笑うケイン。


と、その時である。

冷たく光る鋭い切っ先が、ケインの首筋に突きつけられた───
0763始まりのニンジャ〜第四話〜 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:46:31.95ID:BWR1Obgw
 
(!!……)

「ケイン、話しがあります。おとなしく私と来てくれませんか」
冷や汗をかくケインの背後から聞こえる、事務的で淡々とした少女の声。
それはヌイの声だった。

(ヤマジのおっさんもダイジロウもまだ酒盛り中だったか…やられたぜ…)
後でどう言い訳するか知らないが、ヌイを抑える者がいない今、ケインを始末するには絶好のチャンスだろう。
ケインはふぅ、とため息をつくと、ヌイに言われるまま馬小屋から出た。


しばらく歩き、ケインとヌイが着いたのは村外れの納屋の前だった。
普通、村人というものは大事か急な用事でもなければ夜間に外出なんかしない。
それを考えると、こんな夜中に村外れの納屋に村人が来ることはまずないし、冒険者が納屋に用事なんてあるわけがない。
まさに暗殺にはうってつけのシチュエーションである。

「止まって、こっちを向いて」
その声と同時に、ケインの首筋から刃先が引いた。
ケインは足を止めると、回れ右で後ろに向いた。

(!……)

ほのかな月明かりがヌイを照らす。
その姿に思わずケインは目を見張った。

(続く)
0764 ◆pT3tKNJdzbPc 2018/02/10(土) 22:54:02.16ID:BWR1Obgw
なんか女メイジばかりヒドい目にあってなくね?どうしよう、めぐみん!

次回はヌイヌイの忍び装束をお披露目するよん。さようならケイン。キミは知りすぎた……
0766名無しさん@ピンキー2018/02/10(土) 23:11:21.69ID:Q0ZDVA8u
乙です
新作ありがとうございます
0767名無しさん@ピンキー2018/02/10(土) 23:44:38.40ID:kGL4X98h
GJっす
ヌイの衣装お披露目って事はついに裸忍びマフラーが見れるんだな
あるいは最初から全裸かな
どっちにせよどれだけこの時を待っていたか
0768名無しさん@ピンキー2018/02/11(日) 00:19:13.79ID:fefU4tAi
乙です
裸マフラーなら見る角度次第で乳首や股間が露わになるチラリズムを
何も着ていないならケインの前で露出プレイというシチュを
どちらにせよ楽しみです
0769名無しさん@ピンキー2018/02/11(日) 01:42:57.33ID:gJbcOj1K
>その姿に思わずケインは目を見張った。
これは前にうpされた>>723の絵の如くな姿を期待していいんですな!?
0770名無しさん@ピンキー2018/02/11(日) 09:25:19.88ID:Nkj6KXHg
乙と言わざるを得ない
メイジはご愁傷さまとしか言えない、というか野郎二人が犠牲になればよかったのに
そして全裸にマフラーの見えそうで見えないギリギリ感来る?
宿屋でミオと再会した時のは身体に巻きつける印象で、例えるならミニスカのような絶対領域成分が足りなかったので
あと>>718で語られてた大人のお仕置きもここで一緒にやるのかな?
0771名無しさん@ピンキー2018/02/11(日) 15:50:14.46ID:mEor0aoP
乙。
もしマッパでマフラーやるなら是非次から美桜もお揃いの格好に。
0772リルガミン・初めての夜 ◆7I/nSM.cg2 2018/02/19(月) 10:34:14.62ID:B3FEhXPU
「ふぅ…今日はもう潮時かな……」

 煌々と魔法光のネオンに照らされた通りにて、ドワーフの女がため息混じりにつぶやいた。
だいぶ夜も更け、行き交う人の姿もまばらになった今、客の呼び込みを続けるのは徒労に等しかった。
もう店に戻って時間まで流し女の仕事でもしようか、そんなことを考えていたその時だった。

「ジョゼ!調子はどう?」
不意に声をかけられドワーフの女が振り向くと、可愛らしい出で立ちのノームの少女がニコニコしながら立っていた。
「あ…ミンシア…」
「こんな時間までお疲れ様、私はこれからまた仕事だけどね♪」
「ああ、そうだよね」
「まったく、風呂場で客の背中流しながら約束したりわざわざ客のところまで行ったり、面倒くさいんだから、もう!」
「でもいつも客取れてるじゃない、ミンシアって結構人気あるよね」
「こんな仕事で人気になってもねぇ…」
ジョゼの言葉に、ミンシアがウンザリ気味にため息をつく。
「本当なら今ごろ、私たちニルダの杖を取りに行っていたはずなのにどうしてこうなったんだか…」
「仕方ないよ、こうでもしなきゃあたしらリルガミンから追い出されてたんだから」
「わかってるわよ、だけど私はこのままで終わるつもりなんかないんだから!
あんただってそうでしょジョゼ?」
「そ、そんなの当たり前じゃない!」
「そのためにも早くちゃんとした冒険者捕まえないとね」
「そうだよね…」
ドワーフの女ことジョゼはまたため息をついた。
ぶっちゃけた話、ジョゼの娼婦としての人気はミンシアに全く及ばない。
そもそも客が取れるなら街頭で呼び子の仕事なんかやらされたりしない。となると
冒険者探しはミンシアをアテにするしかなく、ジョゼにはそれが何とも歯がゆかった。

「それでさ、ミンシア、」
「なぁに?」
「今から相手にする客ってどんなの?」
「うーん、そうねぇ…」
ジョゼからの質問にミンシアは頬に人差し指を当てながら愛らしく首を傾げた。
「人間の男だけどこのあたりの出身じゃないわね。たぶん東方から来たんじゃないかな」
「え…」
「冒険者みたいだったけど使えるかどうかまだわかんない。でも…」
「でも何?」
「私の指でイカなかった上にこっちがイカされたわ。このお返しはきっちりつけないとね♪」
ミンシアは悪戯っぽく笑うと軽い足取りでその場を後にした。
0773リルガミン・初めての夜 ◆7I/nSM.cg2 2018/02/19(月) 10:39:47.26ID:B3FEhXPU
「東方から来たっぽい男って…まさか……」
ミンシアを見送るジョゼの脳裏に街頭で店に招いたある男の姿がよぎる。
その男とミンシアの客が同じだったと気づいたのは、それから幾ばくか経ってのことである。


 さて、その頃シンクロウは何をしていたかというと、自室のベッドの上で仰向けに横たわっていた。
目を伏せていたが、眠っているわけではない。これから女を抱くのに眠るわけがない。
手足を広げ、特定のリズムで呼吸をし、視覚以外の感覚に意識を集中する、これはシンクロウが故郷で修行していた時から
続けていた鍛錬の一つだった。
視覚を閉ざし雑念を払うことで他の五感の働きを促し、洞察力や直感力を鍛えるのがこの鍛錬の目的であり
何らかの事情か時間に余裕がない場合を除いては、毎日この鍛錬を欠かしたことがない。
正直なところ、これまで生きてこられたのはこの鍛錬も含めて日々の錬磨のおかげだとシンクロウは信じている。
もっとも、自身の意志や力の及ばないところで救われたこともままあったが、だからといってこれまでの鍛錬が
無駄だったとは決して思ってはいない。
神の御力が人を介してもたらされるこの世界で、己を助けようとしない者を一体どこの神が救うというのか。
中立のシンクロウは神の力を使うことはできないが、神は信者を通じて諸々の人を助けている、自分も助けられているからこそ
今ここにいるのだと、彼は常に心に留めている。

(!……)
シンクロウの感覚が階下に新たな気配を感じた。
カウンターの店員や出入りしている他の客ではない、誰かの気配を。
それはしばしカウンターのある場所に留まったかと思うと、階上に向けて動き出した。
その気配はやがてシンクロウの部屋のある階に着くと、まっすぐに近づいてきた。

(今日はここまでだな)
シンクロウは目を開くと来客を迎えるべく身を起こした。

“トントン!”

ドアをノックする音に続いて少女の声が上がる。
「シンクロウさん、いますか?私です、ミンシアです」
「今開けるよ」
さっそくドアを開くと、そこには可愛らしい装いをしたミンシアが立っていた。

「すみません、待ってましたか?」
「いや…思ったより早かった」
シンクロウは澄ました顔でミンシアに答えた。
0774リルガミン・初めての夜 ◆7I/nSM.cg2 2018/02/19(月) 10:45:51.00ID:B3FEhXPU
「ふふっ、ずいぶん余裕なんですね」
「情熱的な方が好みだったか?」
「どっちでもいいですよ、どうせする事は一緒なんですから♪」
「それもそうだな……とりあえずこれでどうだろう」
シンクロウはミンシアを部屋に入れると、代金を入れた小さな皮袋を渡した。

「ん〜、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ、いつ、むつ、、、」
ミンシアが皮袋の金額を数えている間、シンクロウは彼女の姿をじっくりと眺めていた。
可愛く揃えたセミロングの銀髪の斜め上には小さくまとめた髪がちょこんと飛び出し、身に着けた袖無しの水色ブラウスに
クリーム色のミニスカートが小柄な体型に実によく似合っていた。
風呂屋での濡れて透けた衣装は扇情的であったが、こっちはこっちでミンシアの可愛らしさを十分にアピールしていた。
(やはりいるところにはいるもんだな)
ミンシアを見ながらシンクロウはそう思った。
前にノームの女性を抱いたことはあるが、彼女は冒険者だった。
しかしながら女という性がある以上、ノームとて例外ではなかったというだけである。

「ふぅ…ずいぶん気前がいいんですね♪」
代金を数え終え、ミンシアがニッコリ微笑む。
「そんなに多いかな?」
「こんなに払ってくれるお客さまはめったにいないですね」
「そうか。で、何時まで楽しめるんだ?」
「朝まで付き合ってあげますよ…♪」
「そいつは嬉しいな…」
媚びる目つきで見上げるミンシアにシンクロウも笑顔で応えた。


「あ……」
ミンシアの小さな身体がベッドにストンと落ちる。
仰向けに横たわるミンシアの上に、上半身の着衣を脱ぎ捨てたシンクロウが覆い被さった。
「時間はたっぷりあるんだ、じっくり楽しもうか」
「でも私は遠慮しませんよ。シンクロウさんは強そうですから」
「ああ、構わんよ」
シンクロウが唇をミンシアの唇に寄せる。
ミンシアは目を伏せ、シンクロウの唇を受け入れた。
重なり合った唇がチュッチュと音を立ててついばみ合い、互いを味わう。
やがて唇が唇をなぞり、舌先同士が絡み合い、吐息と唾液を貪る濃厚な接吻になっていく。
「んあ…はぁぁ…」
「ふぅ…くぅ…」
熱いキスが続く中、シンクロウの手がミンシアの手に触れてきた。
大きく広い男の手はほっそりとしなやかな女の手を包むと、中で優しくさすりあげる。
丹念に、丁寧に、それはそれは指の一本一本まで愛おしむように。
0775名無しさん@ピンキー2018/02/19(月) 21:11:07.62ID:e5MkbywE
もしかしてリルガミン・初めての夜 1の続編ですか?
続きを書いてくださりありがとうございます!
0776名無しさん@ピンキー2018/02/19(月) 23:03:05.28ID:E8ny4WXZ
懐かしい話の新作とは……実に乙。
0777名無しさん@ピンキー2018/02/20(火) 00:25:02.76ID:1k3M6q1H
乙です。
ミンシアとシンクロウ、次の話でで本番ですかな?
次回もお待ちしております。
0778名無しさん@ピンキー2018/02/20(火) 11:04:12.38ID:cEFa8E/R

もう読めないと諦めていた作品の続きが読めるのは嬉しい
0780名無しさん@ピンキー2018/02/21(水) 01:35:00.82ID:pI1Umcsp
お風呂にします?

それとも…わ・た・し・?

ノームは合法ロリ!
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