>>69 の続き
なんとなく古美門と並んで服部さんを見送った後、表情をうかがう。
(蘭丸くんも服部さんも、私がここに戻ったことにしちゃってたけど…何も言わないってことは…)
黛の視線に気づいた古美門と目が合った。ゆっくりと1度まばたきをした古美門の瞳には優しい色が浮かんでいた。
(私、戻って来たんだ。ここに…。先生の隣に…)
しんみりしてしまいそうで、何か話そうと言葉を探す。先に口を開いたのは古美門だった。
「草の者とセフレになればよかったじゃないか」
「キスフレです!わざと間違えましたね。セクハラですよ!」
「どっちでもいい。キスでもセックスでも少しは経験して、ハニートラップの1つくらい仕掛けられるようになりたまえー」
「私には出来ないし、するつもりもありません!先生は誰とでもするんでしょうけどっ」
「私はいい女としかしない。いい女かどうかは顔と足首とおっ」
「あーはいはい。そーですかっ」
「何を怒っている」
「…先生は、先生はいいんですか?私が誰かと…」
「なぜ私が出てくるんだ」
「えっ?いや、あのぉ」
(変なこと言っちゃった…)
顔を逸らそうとした瞬間、顎を掴まれた。
鼻先がつくほど近くに古美門の顔がある。
低い声で言う。
「人間とは愚かなものだ。美女しか相手にしないはずが、チンチクリンを構いたいと思う夜もある」
「せんせ?」
「今夜だけは、愚かさを愛してみようか」