悪魔娘達にとある王国が滅ぼされた
最期まで城に立て籠もった兵士たちは勇敢に戦ったが人外の持つ圧倒的な力の前には為す術がなかった
ほんの少し前までは賑やかだった城下町には死体が散乱し、かつて『地上の楽園』とまで言われた面影はない
「はいは〜い、並んで並んで〜」
未だ転がる死体を蹴り退かし、悪魔娘の一人が『戦利品』の兵士たちを連れて広場にやってきた
「わぁ〜、来ましたです〜」
「ホントだーっ」
「待ってましたっ♪」
「・・・・・」
それを見た他の悪魔娘たちが一斉に色めき立つ
自らの故郷を守るため必死に戦った兵士たちは名誉とともに死ぬことも許されず、拘束され、見せ物のように並ばされていた
俯き、唇を噛みしめる男達とは反対に悪魔娘達は黄色い声をあげる
「うーん・・・ボク、コイツがいいかなぁ・・・えへへ」
品定めをしていたボーイッシュな悪魔娘が捕虜の一人の首筋を尻尾で撫ぜた
「オマエだよね、ボクに切りかかってきたやつ」
頭一つ分ほど背の高い男を上目遣いで見上げながら、いたずらっぽく微笑む
「弱いくせにしつこく突っかかってきてさ・・・ふふっ、殺された他の仲間みたいに逃げ出せばよかったのに」
「黙れ!仲間を愚弄するな!!」
男は大きく頭を振って悪魔娘の尾を払いのけた
「殺すならさっさと殺せ!俺は恐れない!!」
男の瞳にはまだ強い意志が宿っている
尾を払いのけられた悪魔娘はきょとん、と目を丸くして男を見たあと
「ぷっ・・・・・あっはははは♪」
腹を抱えて笑い出した
「まあ・・・うふふふふふ」
「クスクス・・・・」
周りの悪魔娘たちからも蔑むような笑いが起きる
「殺す?ボクが?オマエを?うふっ・・・・くくくくくっ・・・」
「何がおかしい!この悪魔どもめ!!」
嘲笑を浴びせられた男は怨嗟の声を上げるが、それすらも彼女たちには滑稽にしか映らない
「ねえオマエ・・・・、悪魔娘が好きになる男ってどんな男だと思う?」
悪魔娘が上目遣いで男に問いかけながら唇を舌でなぞった
見かけだけなら十代ほどの美少女にしか見えない悪魔娘だが、その所作はどこか妖艶さを感じさせる
「し、知るものか!」
男は悪魔娘の艶やかさにたじろぎ、無意識の内に魅入っていた悪魔の唇から目を逸らした
「ふふっ・・・それはねえ・・・」
悪魔娘は男の首に腕を回し、耳元で呟く
「『勇敢で清い魂』を持つ男、だよ・・・心当たり、無いかなぁ?」
「クッ・・・は、放せ!!」
男は悪魔娘の腕を解こうと身を捩るが、悪魔娘を楽しませるだけでなんの効果もない
「そもそも、今回襲われた意味わかってる?ふふっ、わかるわけないよね」
「知らない・・・知らないっ!!早く殺せえええええっ!!」
男はひたすらに暴れ、藻掻いた
本当は薄々理解し始めている
けれど、それを彼女たちの口から聞きたくはなかった
そんな男の気持ちを見透かしたかのように短髪の悪魔娘は男の胸板に頬ずりをして『死刑宣告』を下した
「オマエ達はね、今日成人した悪魔娘たちの夫になるために襲われたんだよ・・・あははっ♪」