うちの三軒隣に、内藤さんという家がある。
旦那さんが気の良い人で、夫婦揃って優しくしてもらったものだ。
父親が単身赴任で、小学生の頃はともかく中学生以降は母も父のところに行くことが増えたため、余計にお世話になったと思う。
その旦那さんが病気で亡くなった時には、付き合いがあったということで家族で参列したのも数年前のこと。
高校卒業手前で母が父のところに行った時、久しぶりに出会った内藤さんの奥さんは、三十路も半ばを越えただろうに、以前同様淑やかで、夕食はどうかと誘ってくれて。
懐かしさと、内藤さんへの憧れもあって、二つ返事で承諾した。

自宅に帰った内藤さんは、外での淑やかさに反するかのように、薄手のシャツ一枚にショートパンツだけになって。
薄手のシャツの下は下着を着けていないらしく、両乳首の先端の色がうっすらと見えていて。
汗の臭いと相まって、思春期真っ只中の俺には刺激が過ぎる程だった。

「充君は恋人とかいるのかしら?」
「あら、いないの…こんなに格好いいのに」
「おばさんもね、ずっと一人なのよ。子供を産めていたらもっと忙しくて…寂しくもないのだろうけども」

食後、ソファに並んで座った俺と内藤さんは、何とも言えない距離感にあった。
手を出したいのに、優しくしてくれたおじさんへの遠慮も申し訳無さもあって、おばさんの言葉に首を縦に、横に振るしか出来ない。
時計が22時を指した辺りで、俺はおばさんに
帰りますと伝えようとして。

「ね、今晩だけで良いの」
「話を聞いてくれるだけでいい」
「寝る時に抱きしめて欲しいけど」
「一人の夜は、すごく、寂しいの」
「内藤さんじゃなくて、絵里香と呼んで?」

絵里香、と試しに呼ぶと、おばさんにファーストキスを奪われて。
許されない恋愛なのは分かっているのに、何年も積み重なった憧れが、色付いていき。
何度も何度も、おばさん──絵里香さんの唇を貪るようにキスを求めていた。