シーツにくるまったサクラがじっととした目でサスケを見ていた。
そのシーツの下には赤い染みがついていた。
「す…すまない、サクラ」
サスケが気まずそうな声を出す。
女の初めては相当キツイという事は聞いて(情報源は水月)知っていたのに、ついサクラに溺れ途中から一切気遣わなかった事をサスケは自覚していた。
激しく攻め立て連続で数回精をその中にぶちまけた。サクラがもう無理だと泣き叫んでも止めなかった覚えもある。
一族復興といいつつ、これでは肉欲を貪る方が目的みたいではないかとサスケは自己嫌悪した。
もちろんサクラと一つになりたい願望は以前からあったが、それは自身が一人で愉しむものではないのだ。
無茶をした事を再び詫びようと、サスケが言葉を探す。
だがかける言葉を見つけられずにいるとサクラが溜め息を溢しながら視線を伏せた。
「…サスケくんと違ってさぁ…。私はこういうの、本当に今までなかったから…」
サクラの発言に今度はサスケが眉間にシワを寄せ、難しい顔を作る。
視線を落としているサクラはその事に気づいていない。
「…オレが一族復興のついてはっきり決めて具体的に行動に出たのはこれが初めてだ」
サスケが淡々と言った。そしてサクラが顔を上げる。
「うん?」
一族復興を目標としてたためについ力みすぎちゃったということかと、サクラは考える。
「今までにこういうのがあるわけないだろ」
心外だといった様子でサスケは口許を曲げた。
「え?」
「何でオレと違って、ってなるんだ…」
「…サスケくんも…私と一緒なの?」
「一緒に決まってるだろ」
サスケは自らのこれまでの童貞歴について明かし、誇らしげな表情を浮かべた。


サクラは、サスケのこれまでの様子からして、けして初めてではないだろうと踏んでいた。
今まで何度も同じ宿・同じ部屋に泊まってきているが、今日この日までサスケの態度はいたって普通の仲間そのもので、サクラはサスケに手を出されかけた事すらないのだ。
サクラはサスケは女としての自分のことは眼中にないのだと思っていたが、どうやらそうではないらしいことを今日知った。
意識した異性と四六時中一緒にいて今までそういった素振りも見せず、愛撫も手慣れているような気がして、これはもう「それなりに経験がある」という風にしか思えなかった。
なんせあの幼い頃からスーパーモテモテイケメンのうちはサスケだ。こういう機会にはいくらでも恵まれていておかしくはない。
だからサスケが過去にどういう女性と関係があろうと、今自分を想ってくれているのならそれで充分だとサクラは思った。
反面、サスケのことだからきっと綺麗で魅力的な女の人達と縁があったことだろうと思うと行為中の自分が見られるのも目が合うのも恥ずかしくて怖くて仕方がなくなった。
魅惑的な豊満ボディの女性を抱いた経験なんてもしかつてあったら、貧相なこの身体はサスケの眼にはど映る?
どんな眼でサスケは自分の事を見ているのだろうと、サクラの頭の中に初めて芽生えた類いの不安が渦巻いて、ずっと自身の顔を覆ってしまっていた。
破瓜の痛みと恐怖に手で覆っていられなくなった時に、目に入ったサスケの顔はとても必死で、苦しげで、直向きだった。
その瞬間にサクラは、もう顔を自らで覆う必要はないのだと悟ったのだった。


サスケは、サクラと想いが通じ合い共に旅をしているつもりでいた。
その昔「また今度な」と約束を交わし、その時は置いていった。
再び旅に出る時にサクラが「今度こそ私も一緒に行く」と再度意思表示をした際に、今度はそれを了承した。
男と女が二人きりで旅をするというのはそういう事だろうと、サスケの中でサクラは婚約者も当然だった。
だがうちはという一族の名の重さ、具体的なプランが一切ない一族復興のことなどを考えると、関係をさらに深めるのは慎重であるべきだと、サスケはその事をずっと考えていた。
サクラにあれこれ気を回させないよう、自身の考えが纏まるまでは7班時代からの延長のようにただの仲間であるような態度に徹した。
サクラも同じような考えで、自分と同じようにしているのだとサスケは信じて疑わなじにいた。
そんなサスケが「ずっと片想いだと思ってた」とサクラに聞かされ驚愕するのは、そう遠くない未来の話。