「…ま、いきなりで私にここまで迫れたなら上出来かしらね?」
わざとらしく演じたような高笑いをする。
さすがに周回遅れにこそならなかったものの、彼と私の差は歴然で、結果は私の圧勝を示していた。
「ヘアピン3箇所ともノーブレーキで…ぶつぶつ」
「苦労したからね、色々と」
(実際の道路であんな運転したら、「ゆかり車」どころの騒ぎじゃないんじゃないかな?とは思う)
「ま、でも本当にいい気分転換になったわ。大山君」
「…そら、よ〜ござんしたね!」
(あ。ちょっと、むくれてる!…可愛いとこあるなぁ…)
「じゃ、そろそろこれで俺は失礼するか。水原…大学落ちたんだろ?でも、勉強だけはしておけよ。
浪人する、て手もあるにはあ―」
「え?受かったわよ、大学」
「はい?…いやだって今さっき、うまくいかなかった、て?」
「うん、旧知の輩(トモガラ)にちょっと嘘をつかれてね。私「落ちた」とは一言も?」
「お、お!……」
(いや実際アレ、心臓破裂モンなショックだんだから!)
「…うん、そのゴメン。ちょっとあなたに対して八つ当たりみたいになってた」
(流石に洒落にならないか、コレ。平手打ちくらいは覚悟し―)
「おめでとう!合格」
「……はい?」
「受かったんだろ、大学?なら、他の言葉はないだろ」
素直に出てきた相手からの感謝の言葉に。
すごく目頭が熱くなって―
「うわ!っと…」
「…ありが、とう」
自分の今の顔を彼に見られるのが恥ずかしくて、強引に抱きつくくらいの位置に寄り、
相手の服の中に顔をうずもれさせて、長い事返せてなかった、彼への感謝の言葉を、微かに呟いた。