スラリと伸びた背に長く艶のある黒髪―
 見た者を突き刺すかのような鋭さを持つ眼光。

 すなわち「榊さん」である―


 普通学校内で常に成績優秀、容姿端麗とくれば、クラスの人気者として
まつり上げられたりするものだが、彼女の場合は他人を寄せ付けない孤高の
オーラみたいなものがそれを阻み、いつもは教室の隅で目立つ事もなく
日々を経過させていた。


 そんな彼女の前に、唐突にライバル宣言をする珍客が現れた。

 「お!?榊さん、アンタもこのクラスだったんだな!この前はやられたけど、
次は…て、何だよ!?今初めて会った、て顔?!ヲイ!!」

 榊は無言で頷く。

 「……と、とにかくライバルなんだ!よろしくな!!」

 珍客の名前は神楽と言った。

 (「ライバル」…か)

 特に意識した事はなかったが、相手の勢いだけは見習うべきものを感じた。
 「勢いだけ」は。


 その後―

 神楽とは陸上であれ水泳であれ、おおよそ運動関連では事ある毎に
対決する機会に恵まれて、気がつけば一歩、いや半歩先の勝利を
ものにし、僅かながらとは言え、自分を奮起させている確かなライバルに
少しばかり感謝した。


 (ん――?アレは…)

 とある日の事。

 榊は、誰もいなくなった教室での神楽と木村先生との禁断の関係、その行為の
一部始終を見てしまった――