ガンダムヒロインズMARK ]Y [無断転載禁止]©bbspink.com
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
語るも良し!エロパロ書くも良し!
ガンダムの娘ッ子どもで妄想が膨らむ奴は集え!
ガンダム以外の富野作品やGジェネ、ガンダムの世界観を使った二次創作もとりあえず可!
で、SSは随時絶賛募集中!
■前スレ
ガンダムヒロインズ MARK ]X
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1385961055/
■関連スレ
ガンダムビルドファイターズでエロパロ
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1381888018/ 上のトリップは当時使用したトリップを失念した時に新たに作ったものでした。
よって最初のトリップはないという結果になりますね……💦
気を取り直して、pixivに書いたのをここに載せてみます。 ずっと昔に書いたものですが……w
『マリナ 闘いの始まり』
戦いを知らぬ皇女が闘士になる決意をしたあの日から……
アザディスタンのガンダムファイト推進委員会の前で、弓と槍の卓越した技術で同国の候補に勝ち、代表選手になったマリナ・イスマイール。
その日から槍と弓は勿論、ファイターとしての格闘や身体能力を高める訓練を続け、他国には負けるが格闘家として十分な基礎能力を身に付けていった。
そんなある日、彼女自身の訓練と同時進行で行われていたMF製造が遂に完成した。
その名はガンダムファーラ。
彼女に合わせ、弓と槍による遠距離・中距離に長けた機体だ。
それを操縦するためのファイティングスーツ装着訓練が始まった。これに成功しなければファイターとしての闘いは始まらない。
「それでは皆さん、今から始めます。」
開発陣やマリナの秘書など、大勢の関係者が見守る中マリナはワイヤーでファーラの中に入っていった。
今の彼女はシンプルな白い訓練用の制服姿。上は長袖、下はズボンというオーソドックスな出で立ちだ。
「これがMFの中……ここが私の戦場なのね……」
一人が入るには広く、大勢が入るには狭い、そんなコクピットで拳を握りしめるマリナ……
天井と床に設置されたリング。
[newpage]
衣服を丁寧に脱ぎ、畳むとそれは収納ボックスに入れると、リングの中央に立ち祈るように手を握り目を閉じた。
全裸の彼女は生来の華奢で均整がとれた体型に加え、程よく引き締まっていた。
控えめな美乳はもう少し小さくなり、小振りな尻は上向きに、肉付きの薄い腹部は更に括れて縦に筋肉のラインが入っていた。 「モビルトレースシステム、起動。」
その声を認識したコンピューターによって、上のリングから清涼感ある彩りの布がマリナを包みながら降りてきた。
全身を圧迫する苦しみに捕らわれるマリナ。
「ぐっ、これは……」
柔らかい見た目に反して凄まじい力で拘束する布製スーツ。
胸も、胴も、尻も圧迫され身動きが容易に取れない。
「キ……、キツイ…………!!
でも、わ、私は、ファイターだから……!」
歯を食い縛りながら手足を力一杯動かせば布が伸びていく。しかし、中々千切れない。
ファイターならば誰もが通る道だが、非力な彼女にとっては尚更至難だった……
「……あれは……!」
その時、偶然目についたのは一本の鉄棒だった。
長さは彼女より頭一つ短い程。
どうやら作業員が最終点検で使ったものを置き忘れていたらしい。
「……あれを……!」
一旦屈んでそれを手にするマリナ。
床に立てたロッドを軸にすがるような体勢で全身を少しずつ回していくマリナ。
幸い体が他のファイターより柔軟な彼女はそれを頼りに全身に布を巻き込んでいった。
「い、いやぁぁぁ……!で、でも、ここを……乗りきれば……」 胸は尚も締め付けられ、小刻みにプルんと震える。
胴体にもグイグイと音を立てながら拘束する。
「ぐっ、このぉぉぉ……!は、早く、しないと……!!」
性器には恐ろしい程食い込み、痛みにも似た衝撃に腰が卑猥に震える。
アナルにはより深く侵入していく布。
女性特有の恥ずかしさを身に染ませて悲鳴のように声を上げる
「く、このぉぉぉ……!!」
これ以上ないくらいに布に包まれると、軸代わりに抱きついていたロッドから全身に力を込め、勢い良く離れた!!
「きゃああぁぁぁぁ…………!!」
ロッドはコクピットの隅に投げられ、布はブチブチと甚だしい音を響かせ破れていく。
「うぐっ……!」
自分もリング外に尻餅をついて、臀部を擦りながらリング内に戻るマリナ。
「…………これって……?」
全身の感覚がやけに軽やかだ。
身体にあの布が完全にフィットしている。
装着は成功だ!
自分の手を見つめるマリナの動きをガンダムファーラもトレースしている。
見守る関係者からも歓声が上がっている。
「わ、私、ついに……!」
嬉しさで顔を綻ばせるマリナ。 スーツは胴体は雪のような純白、腕と下半身は彼女の正装宛らの青紫。
そして、股部分には濃い紫のV字型切れ込みが堂々と入っている。
細い下腹部とスラリとした脚の境界線が強調された形になっている。
しかも、尻の真上からアナルにかけても同色の切れ込みが入っているので上向きの小さなヒップも目立つ。
普段のマリナにとっては恥ずかしいがそれを感じる暇もないくらい喜びに溢れていた。
あれから2週間、生身での戦闘訓練とスーツ装着・MFに乗っての戦闘訓練を繰返した結果、装着時間短縮を果たしたマリナは遂にサバイバルイレブンに臨むことになった。
しかも、筋力アップしたことでロッドに頼らずとも装着できるようになっていた。
誰もいないアザディスタンの砂漠に立つ二人のファイター。
一人はマリナ。相手はギリシャ代表ディノス・サマラス。直々にファイトを申し込んできた男だ。
日に焼けた肌、ギザギザの黒みがかった紅い長髪を縛っている。
搭乗機はガンダムアレキサンダー。
古代の王のような豪奢な外観の機体だ。
金色の王冠に、彫刻のように筋肉を象った白銀のボディ。
深紅のマントは滑らかかつ強靭な盾代わりになる。
右手には大剣を構えている。
両者示し合わせたようにワイヤーでコクピットに入り込む。
「とても威勢の良い人だったけど負けられない……!」 衣服を収納ボックスに入れ、全裸になる。
初のファイトで緊張しながらもリングの中央に立つ。
両手を握り締め、脚を内向きに開き、目を閉じる。
だがそれは最初の時のような、ただ祈るだけの姿とは違い、もっと強い意思を秘めたものだった。
ただ手を握っただけではなく、丁度あのロッド一本が入る程の余裕を設けている。
一言で言うと、見えないロッドを持っているかのようなポーズだった。
(ただ祈るだけじゃだめ、もっと自分を信じて、力を込めて……!!)
そんな思いからくるものだった。
上からくる布の圧迫に負けぬよう、全身の力を入れたり抜いたりを繰返す。
それでも、いつもの癖でアナルには常に力が入ってしまう。
やがて身体は布に包まれ、ギュ……と締め付けていく。
「や、やっぱり……キ、キツイ……!!
でも、負けない……ッ!!」
口を閉め歯を食い縛るマリナ。
見えないロッドを軸にまるでポールダンスをするような動きでゆっくり回転するマリナ。
小振りなヒップを突きだし、足元をメインに回り布を身体に巻き付けていく。
鍛えた甲斐があり、その衝撃にも耐えられ何とか動きを取れるようになった。
「このっ…………あつい……!」
腕をしなやかに動かし、これ以上ない程布が摩擦する。
擦れた熱に苦悶の色を滲ませるが、それに負けず腕を振るう。 ブチッ!バチッ…………!!
鼓膜に強い刺激を残すような音と共に布は千切れ、両腕にスーツが定着する。[newpage]
「まだ、まだキツイ……キ、キツイ…………!!」
腰を突き出したまま上体を反らし、細いウエストを捻る。
強烈な摩擦に襲われながら程良くフィットしていく。
綺麗なお碗型の美乳が白いスーツに浮かび上がり、引き締まってより細くなった胴体も包まれていく。
最後の難関は局部……
性器とアナルを同時に締め付けられ、頬を赤らめながら苦悶する。
「う、うぐっ……!いやっ……!!」
脚を大きく開き、下腹部に力を入れて耐え抜く。
やがて程よくフィットしたのを見計らい、長い脚を片方ずつハイキックして、布を身体から切り離す。
ブチッ、ブチチッ……!!
「ふう…………!はあ、はあ……!!」
遂に皇女はファイターの衣を身に纏い敵を見据え、両者の声が重なり合う。
「ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」
「皇女様の実力、見てみたかったんだ。楽しませてもらうぜ!!」
大剣を掲げ意気揚々と挑むディノス。
邪気のない好青年といった面持ちだ。
マリナは槍を斜め上に構えて走っていく。 「はあっ……!」
ぶつかる刃同士。
弾かれそうになったのはマリナの方だ。
痺れる腕に耐え、ぐらつきそうな足を踏みしめ、スライディングしながら相手の背後に回る。
「危ないところだったわ……!」
「すばしっこいな、こりゃ楽しめそうだ!」
「はあっ……!」
姿勢を屈めて突撃しようとするが、ヒラリと視界を軽やかに遮るアレキサンダーのマント。
貫こうにも柔らかいそれは刃を通さない。
「これは……一体……?」
「これは柔軟な繊維でできてるんだ!簡単には破れないぜ!」
そのまま大剣がファーラの胸を斬る。
真昼の砂漠に鋼の白い欠片が舞い散っていく。
「きゃぁぁぁ…………!」
倒れつつも得物は離さず持ちながら、相手のモーションの一つ一つに隙を探しながら槍を突き出す。
しかし、マントに守られていない場所にかすり傷を付けるのが精一杯で中々決め手が見つからない。
「駄目だわ、これじゃあ……」
「こうなったら……」
少し距離を置いて、槍を弓モードに変形させ大量の矢を放つ。
夥しい鋼の矢をマントで防ぐディノスのアレキサンダー。
マリナは自分の姿勢や方向を変えながら打ち続ける。 目を素早く動かし探しているのだ、マントに守られない箇所ができるのを……
「このっ……こんな機能があったなんて!」
しかし、胴体や頭部が防御されている以上どれも決定打にはならずディノスの突進を許してしまう。
「これで止めだ!!」
「こうなったら……!!」
マリナは諦めなかった。まっすぐ弓を構えた状態で立ち上がり、相手を見つめる。
迫る剣が触れる間際、紙一重でジャンプ。
雲一つない青空に舞うファーラ。
瞬時に相手を見下ろし、矢を乱れ打つ!!
「ぐっ、ぐわああぁぁぁ……!!」
土砂降りのようなそれらにマントによる防御モーションはできず、頭部を始めとした幾つかの箇所に傷ができる。
すぐに着地するファーラ。
「終わりよ!!」
咄嗟に槍に変形させた得物を振り上げ、アレキサンダーの頭部を攻撃。
そこを破壊され、砂の山に倒れていく。
数分後、コクピットから出てくるディノス。
頭を擦っているが鍛えているためかダメージはそれほどでもないらしい。
「いやあ、あんた強いな、想像以上だぜ。」
「いえ、私もかなり苦戦したんですよ?」
負けても屈託ない彼の態度に緊張が綻ぶマリナ。
「あなたにファイトの厳しさを教えてもらったんですから。」
そう言って皇女はこれからの闘いに希望を持ち、アザディスタンの空を見上げた。 続けていきます。
『マリナ 淑やかな闘士』
世界各国で長年病のように続いた戦争が4年に一度行われる新たな制度「ガンダムファイト」によって終わりを告げた。
初回の今年、2307年は中東の国家アザディスタンも同様にエントリー。
更にその代表は皇女であるマリナ・イスマイール。
雅で大人しい彼女が格闘家=ガンダムファイターになるギャップに誰もが驚いた。
しかし、彼女は10代の時に親の英才教育の一環として始めた槍と弓の分野でずば抜けた才能を発揮。
だがマリナの興味は昔から続けていた音楽に向けられ、両親を必死に説得しそれらの競技はあっさりと辞めてしまった。
まさかそれが革新的な制度に活かす時が来るとはマリナ本人思ってもみなかった。
「戦い」を徹底して嫌う彼女だが、命を奪うことのないこの「闘い」には自ら名乗りを上げた。
国民の幸せの為にできることに突き進む理念がこのような形で実現しようとしている……
とは言え肉弾戦をしたことのない彼女には基本的にガンダムファイトは不利。
スタンダードな身体捌き、走り込み、筋力トレーニング、最低限の格闘訓練……
それらを行っても基礎的な身体能力では他のファイターに一歩譲る形になる。
巧みな槍術と弓術で数人のファイターを倒してきたのだ。
これは皇女にしてファイターであるマリナとある少年の一日を描いた物語…… 「すごい、ガンダムめっちゃデカイ!」
「負けるな、皇女さま!」
ここは、中東のアザディスタンのとある町にある孤児院ーーー
子供達はこぞってテレビに釘付けになっているが、アニメではなくスポーツの特集。
それも、先日ノルウェーで行われたガンダムファイトの映像だ。
まだサバイバルイレブンの段階だがこの手の番組の視聴率は高い。
司会者はテンション高く実況を続けている。
「さあ、始まりました!我れらがノルウェーと中東のアザディスタンとの試合!
我らが代表、広大な炭鉱を有するキルステン・バルグの駈るガンダムブラース
対するはアザディスタンのファイターにして皇女でもある……マリナ・イスマイールの駈るガンダムファーラ!!
一体勝利の女神はどちらに微笑むのか!
ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」
ノルウェー代表はハンマーを持つガッシリとした神話のドワーフのようなガンダムブラース……
キルステンは立派な髭を生やした大男。
青銅のような暗いスーツに身を包んだ筋肉質な姿。
対するアザディスタンは、細身の青紫のガンダムファーラ。女性的なしなやかなラインは正に皇女専用と言った趣だ。
画面に映ったその乗り手に子供達は目を奪われた。
皇女にしてファイター……マリナ・イスマイールは長く豊かな黒髪、白い肌、澄んだ水色の目の女性だ。
普段から国の安定や貧困に喘ぐ各地の慰問に力を入れているので、今は眼前の敵を厳しく睨んでいてもその優しいイメージは国民から消えることはない。 格闘家らしからぬのは顔だけではない。
スラリと伸びた手足、ほっそりした胴体。
しかし鍛えられているので程好く引き締まったシルエットと筋肉の切れ込みが青紫のスーツから見える。
テレビの前の女子はその雰囲気に、そして男子は美貌とスタイルに各々釘付けになっていた。
特に、このアクバルという少年は一番目を輝かせている……
彼はやんちゃで孤児院の職員が手を焼いていた。
「行け!皇女さま!!」
「おい、アクバル。落ち着けよ!」
振り上げた腕を友達に退かされても画面に魅入るアクバル。
マリナは右手には槍を構え、走ってくる相手を静かに待ち構えている。
「一撃で勝つ!」
ドワーフ宛らに体格の良いファイターの力強いモーションから繰り出される攻撃。
次の瞬間には皇女の機体の小さな頭部は破損するだろうと思われたが……
「なに?!」
すんでのところで相手を見失い戸惑う。
……次の瞬間
「どこだ!いきなり……あ……」
突如感じる腹部の痛みに仰け反るファイター。
マリナのファーラが持つMFサイズの槍が機体に命中していた。
倒れるキルステン。
瞬時にしゃがみこみ素早い一突きを食らわせたのだ。 「勝者、マリナ・イスマイール選手!」
圧倒的な勝利に驚きと興奮を隠せない子供達。
「すげえ、細いお姉さんが一発で相手を!」
「女性ファイターいるって聞いてたけど、ホントに勝てちゃうなんて、あたしも自信持っちゃったぁ。」
「おまえ、ファイターにはならないだろ。でも速攻で勝っちゃうんだから凄いよなあ!」
口々に感心を表す中、いつもは賑やかなアクバルは興奮のあまり何も語らず、笑みを浮かべて画面のマリナを見つめるだけ。
(す、すげえ……あんなに綺麗で強いなんて……
それに、あのスーツテカっててハッキリとスタイルがわかってそそるよな……)
10歳程の少年の関心事はやはりそこだった。
そこへやってくるシスター達。
「みんなー、今日はお客様が来ておりますよ!さあ、どうぞ。」
「皆さん、こんにちは。マリナ・イスマイールです。」
子供達は呆気に取られた。さっきまでテレビに出ていた姫がここに立っている。
控えめながら雅な佇まい。そしてフランクで優しい笑顔に誰もが目を丸くした。
身に纏うのは流石にあのピッチリスーツではなく、白い上着に紺色の膝丈スカートというシンプルな姿。
職員が企画した子供達への一大サプライズで、話を聞いたマリナはファイトのテレビ放送とタイミングを合わせるというアイディアに戸惑っていたが、子供達の励みになりたいと承諾した。
今日も他の国でファイトをした帰りに寄ったのだ。
孤児院から少し離れた場所に今日だけ置かせてもらっているガンダムを後で子供達に見せるサプライズも用意している。
「え、えーすごい!ホントにマリナ様?」
「信じられない!今テレビ見てたとこだよ?」 皆沸き立って彼女を取り囲む。
「ええ、前回の闘いよね?何だか恥ずかしいわ。でも、皆に元気を少しでも分けられたみたいで良かった……」
はにかみながら談笑を続けるマリナ。
やがて彼女は皆が戦争や犯罪が原因で家族を失っていた話を聞いて慰めたり、得意のピアノ演奏で楽しませたりしていた。
そんな時……
「ターッチ!」
「キャッ……!」
小さな手がマリナの胸を豪快に触った。
やったのはいたずらっ子のアクバル。
「ちょっとアクバルー、皇女様になんてことをー!」
「全くホントにこの子は…!こういう時に……!」
赤面しながらアクバルを戸惑いの目で見続けるマリナ。
「……んーテレビで見たけど、思ってた以上に小さめだなー
ここのシスターさんの方がでかかったぞ?」
「……わ、私は鍛えてるからそんなに大きくならないだけで」
初めて触れられた驚きでスムーズに話せないマリナの代わりにシスターが捕らえようとするが、少年らしい俊敏さで建物を出ていくアクバル。
「小さいけど、柔らかくていい感じ……
鍛えててもやっぱり女の人だな。」
掌を見つめながら広い空地に行くと、彼は一気に目を丸くした。
「これは……あの、マリナ様のガンダム!?」 大木や簡素な滑り台やジャングルジムという日常的な光景の中に一際目立つ鋼の塊が片膝を着いてそこにあった。
さっき皆でテレビで見て盛り上がっていた自国の守り神・ガンダムファーラ。
頭部や腕部、脚部は殆どのガンダム同様に純白。
胴体と肩はマリナが演説や国内各地への訪問時に着ている正装宛らの鮮やかな青紫。
新聞等で見た他国のガンダムよりずっと華奢で格闘用機体というイメージはかなり薄れるが、やはり巨大人型マシンなので間近で見た迫力はかなりのもの。あんぐりと口を開けてしまう。
「……マジか?信じられねえ……あのMFがここにあるなんて……」
グルリと回り様々な角度から機体を鑑賞していくと、男特有のメカへの憧れが刺激される。
「実際に見るとでけえな……ん?」
背中から入る方式なのだろうが、肝心の背中ハッチが少し空いている。まるで入ってくれと言わんばかりの様子。
しかもそこから太いワイヤーが垂れ下がっている。いつもこれで乗り降りしているが、今日は仕舞い忘れたのだろう。
それを見て好奇心と悪戯心に溢れた彼に大人しくするのは無理だ。
「……やってみっか。」
グリップに付いたボタンを押すと背中の位置にスルスルと上がっていく。
「この高さ、何か不思議な感じだな……遊具の上に上がるのとは何か違う。
しかしマリナ様、意外と不用心だな。そこが可愛いか、フフッ。」
綺麗な皇女の「一人部屋」に侵入するようなスリルを持ってにやけながらコクピットに入ると、そこにはテレビで見たのと同様殆ど何もない、しかし真っ暗な空間が広がっていた。
手探りで探し当てた壁のライトを付けると無機質な壁に周囲の見慣れた町の風景が写し出され、天井と床に一つずつ設置されたリングが見えた。
「おー、テレビと同じだ!よく映ってるじゃん!
この高さだと色々イメージ違うなー。絶景かな、ってな。
取り合えずマリナ様ビックリさせたいから待ってるか!」
コクピットの隅にドカッと座る。 それとほぼ時を同じくして、上空には一体の剛健な外観のガンダムが飛んでいた。
メキシコ代表のガンダムスティンガー。手足に付いた複数の棘、サイズは大小様々。
乗っているのは荒れくれ者のバイス・アリアス。元野盗・名うてファイターの一人だ。
180強の身長のガッチリした身体。日に焼けた肌に僅かな顎髭を蓄えている。
「ここか、アザディスタンの姫が来ている場所は。腕が立つようだが叩きのめしてやるぜ!」
掌に拳を当てて意気込む。彼は元野盗だけあり、手段を選ばず卑怯で荒っぽい戦術を好むファイター。
自国からも色々問題視されているが一番の適任者ということで御上が目を瞑っているのが現実。
何人かの柄の悪い男達が町の至る場所から出て来て旗を振っている。
「バイスの兄貴ー待ってましたぜ!」
「よお、お前ら!ん、あそこにあるじゃねえか。ターゲットのガンダム。暢気なものだぜ。」
ファーラを見つけると重々しい音を立てて降り立つ機体。
駆け寄ってくる柄の悪い男達。
彼らはバイスの盗賊時代の手下で、彼の為に暗躍する時がある。正にどこまでもダーティーなファイターだ。
「おい!皇女のファイターはあんただな!俺はメキシコのバイス・アリアスだ。
ファイトを始めようぜ!」
アクバルはその大声に驚きスクリーンに映る仁王立ちするガンダムに度肝を抜かれる。
しかも手下達がライフルを持ってこちらや近隣の建物を脅すような素振りを見せている。
やんちゃなアクバルも普通の子供。犯罪者や荒くれ者には耐性なんてなく、出るに出られない。 「やばい、どうしよう……てかここで降りても危ねえし。
そういや、あの機体前に中継で見たけど、結構おっかない奴だったような……手下も従えてるし……
早く帰ってきてくれーマリナ様……」
しゃがみこんで怯えるのも無理はない。勝つために民間人を盾にしようとしたこともある極悪非道な相手だ。
近隣の住民も震えて黙り混んだり隠れたりしている。
「私に用!?」
そこに聞き覚えのある女性の声がして顔を上げる。
周りの連中も一斉にその方向を向いた
「え……本当に来た……?」
「随分騒がしいわ。あなたの相手は私だけでいいでしょう。場所を変えましょう、ここにいる皆さんの迷惑になるし。」
そこにいたのは誰もが待っていたマリナ・イスマイールだ。服はあの時と全く同じだがファイトの時に見せた厳しい表情で強靭なガンダムと周りの犯罪者を睨んでいる。
「よく来たな、姫さん。でも、俺は人に従いたくねえんだ。俺が態々来たんだし、どうしてもってんなら上空でやり合おうぜ?
……その前にこいつらでウォーミングアップだ!やっちまえ、お前ら!!」
彼の一声で一斉にライフルをぶっぱなす男達。
「あぶね、マリナ様……って……アレ?」
アクバルの心配は無用だった。
しなやかな動きで銃弾のパレードを避けると、男達を一人ずつ殴り、蹴り、投げ飛ばし全員をのしてしまった。
「いいぞ、姫!やっぱり、生身でも凄いんだ!……」
「……あっさり倒すとは……あいつらファイター程じゃねえが相当強いってのに……
やっぱ本物のファイターには勝てねえのか……」 「あなた、国の代表として恥ずかしくないの?」
「勝てりゃいいのさ!早く始めなきゃ町の奴らどうなるかわからねえぞ!」
ワイヤーを掴むと背中のハッチを開けっぱなしにしているのに気付いて頬を染めるマリナ。
「私のミスだわ……気を付けなきゃ……」
ハッチを開けると皇女とご対面。苦笑いしながら出迎える少年。
「ど、どうもマリナ様。凄かったぜさっきの闘い……」
「アクバル!ここにいたの!」
怒りながら近付く彼女の迫力に圧倒され俯くが……
「……本当に心配してたのよ。あそこにいる皆も何かあったら悲しむわ……」
格闘家とは思えない優しい力で頭を撫でられ、赤面するアクバル。
「ごめん、俺面白そうだからここに入っちゃって……
邪魔にならないように下りるよ……」
「……だめ!あいつは有名な悪漢よ。いきなり出てきたあなたを人質にするかも知れないし……」
「じゃあどうすりゃ……」
事実過去の大戦で使われていた緊急脱出用戦闘機は配備されていない。こうなれば……
「……そうね、壁にあるバーに掴まっていて。大丈夫、必ず勝つわ。
皇女の誇りにかけてあなたを無事に皆の元に帰すわ……
……だから、目を瞑っていてもらえる?」
「……わかった。」
口を閉めて覚悟を決めるアクバル。しかしこの年の少年特有の高揚が生まれて、いてもたってもいられなくなる。
(でも、あの姿になるってことだよな……
おい、ヤバイって……!) 興奮する彼をよそに静かかつ素早い動作で衣服を脱ぐ音が聞こえる。
それらを手慣れた動きで畳むと、床リングの中央に立つマリナ。
「バイス、今から始めるわ。モビルトレースシステム起動。」
(マジで始まるのかよ……あのスーツを着るのか……)
(……うーん、我慢できねえ、許してくれよ。姫様。)
恐る恐る目を僅かに開けるとその光景に息を飲んだ……
幸いにもというべきか?目を閉じながら少し脚を広げ、祈るように両手をそっと握るマリナ。
これから闘うには相応しくない、寧ろ神を無垢に信じる聖女のよう。
柔らかさと優しさに溢れていた。
(ひめさま……邪魔しちゃいけない雰囲気だな
でも見ちゃう、ごめんな)
大人だろうと子供だろうと男であるのに変わりない。視線はその人並外れた美貌だけでなく、体にも注がれていた。
想像通りのスラリとして、同性の中でも華奢な体つき。
しなやかに伸びた長い手足。
どう見ても格闘には似合わない、寧ろ一流の女優やモデルのような姿。……但しシルエットだけなら。
手足は細い形を保ちながらも、程よい深さの切れ込みがあった。
肉付きの薄い腹部にも腹筋のうっすらとした横ラインがいくつか走っており、縦ラインは比較的深々と主張している。
正に女性らしさと格闘家らしさの融合と言うに相応しい完璧なバランスだった。 ……とは言えまだ子供のアクバルにはこの状況でここまで深く見る余裕はなく、全身の素晴らしさに驚愕し、男心を揺さぶられるしかなかった。
(すごい、マリナ様……
見ちゃった……姫様の裸を見ちゃった……
俺もしかして重罪?)
様々な考えが頭の中にとっちらかって、眼前の光景を目に焼き付けるしかない。
そして天井のリングから薄い布が力強い勢いで降ってくる。
彼女が王宮にいる時と同様、鮮やかで品のある青紫と、雪のような純白の二色に彩られたスーツ。
一気にマリナの肩から足元まで降り立つと、彼女は無表情から一転、目を閉じたまま苦しみ始める。
「う、ああ、……うう……!」
伸びやかな手を重々しく揺らし、激しくスイングすると両腕は一気にスーツに包まれる。
「が、頑張れ。マリナ様。」
初めて見る、皇女の苦労に思わず呟いてしまう。
「う、ああああぁぁぁ……」
小振りな胸や細い鎖骨を覆うスーツ。
細く引き締まった胴体を大胆に反らして、体を柔らかいモーションで捻り続ける。
しかし、次が色んな意味で問題だった……
控え目な毛で守られた秘所に当然の如くスーツが食い込む。すると……
「お、おおお……や、く、くす……」
(……?お、おい何を……)
いきなりそそるような声を出すマリナ。しかも、今度は体を反らす代わりに尻を突き出している。
アクバルも反応してこれまで以上の視線を注いでしまう。
「く、くすぐったい……あ、あ……」 男の好奇心が煽られたのかマリナの背後に回るとやはり、小さくも美しく引き締まった上向きの尻がスーツに包まれながらこちらに突きだされている。
尻を振って何とかスーツを体にフィットさせようとしているのを知って尚興奮するアクバル。
前後の秘所に与えられるスーツの摩擦と闘うマリナ。
「……!」
(マリナ様、くすぐったいって……てかこのポーズ相当ヤバイんじゃ……
俺ケツ触っちゃいそう……いや、ダメだ。んなことしたら処刑もんだ!)
子供なりに理性を働かせ、伸ばした手を慌てて引っ込める。
「……ふー、はあああぁぁぁ……!」
脚を含め下半身を激しく動かして全身にスーツを纏うマリナ。
一回のファイトや訓練毎にスーツは入れ換えられるので、前後の秘所は新品の冷たさが与える心地よい刺激に少しの間耐えることになる。
「色々、大変なんだな……ファイターって……」
背後のバーに掴まりながら呟く少年に対し、ニコリと笑顔で首を横に振る皇女。
「ひめ……」
もはや彼はマリナのことしか考えられない。
「さあ、やりましょう。」
互いに上空に浮かび上がる両雄の機体。
「ガンダムファイト! レディ……ゴー!!」 向かい合う二人のガンダム。
「俺が倒すのはあんたで10人目だな!」
鋭い棘の付いた肩を向けショルダーアタックを仕掛けるバイスのスティンガー。
「ハッ!」
マリナはファーラのリアアーマーに付いた、特殊金属製の伸縮式ランスを手にするとそれを伸ばし、鋭い刃で棘を粉々にしてしまう。
「何だと!」
咄嗟のことに驚く相手に構わず肩、手足、胴体に次々と槍の刃を突き刺し、時にはロッド部分で殴打しダメージを与えていく。
スティンガーの全身の棘は見る見る内に砕けて落ちていく。
悔しがるバイス。
「おのれ……甘く見ていたか……!」
「すげえ……マジでできるんだな……」
関心のあまり唖然とするアクバル。
槍を直に盛っているのはガンダムだが、それを操るマリナの構え・全身の動きを直で見て高揚する。
背後から彼女の様子・モーションが全て丸わかりだ。興奮しない方がおかしい。
真後ろから見る皇女の華奢な肩、手足はしなやかに動く。
長く豊かな黒髪は活発に靡く。
スーツ装着に必死になっていた小振りな尻の穴を戦闘開始からギュッと締めているのもアクバルを熱くさせた。
「力、入ってる……」
思わず呟いた声と視線に一瞬振り返った皇女の頬は紅かった。
「見ないで、癖なの……」
「ああ、失礼しやした……(試合中ずっと締めてたのか。やべえ、ドキドキするじゃん。)」 バイスは歯軋りしつつコクピット内のとあるボタンを押すと、スティンガーのバクパック(コアランダー式ではない)が開き、チェーン付きの鉄球が飛び出してきた。
慣れた構えで手に持つバイスのスティンガー。
更にグリップ部のボタンを押すと、幾つかの棘が鉄球から顔を出す。
「こいつは避けられねえぞ?」
豪快なスイングによって、巨大な蛇の如く宙を舞うチェーン。何度もマリナを襲い来る鉄球。
「ごめんなさい、さっきより揺れるわよ?」
「またか!?」
激しいモーションで避け続けるマリナのファーラ。
必死さの為か、子供の握力で耐えられるのが不思議な程、バーに掴まり続けられるアクバル。
「ホラホラ、どうした!この武器じゃ手も足も出ねえか!?」
「はぁはぁ、正直、不利だわ。ああいう重い武器は……」
何とか背後に回ると、あの鉄球が入っていたバックパックを思い切り蹴って距離を置くマリナ。
「はあはあ、きついな……このスピードで毎回闘ってるのか、マリナ様……」
「ええ……私は慣れてるけど、あなたには堪えるわよね、ごめんね……」
憂いを帯びた顔で言われて言葉に詰まりながらも「いや、んなことねえよ。俺は大丈夫だからさっ。」
無理矢理笑顔でガッツポーズを取って見せる。
「諦めな!姫さん!?」
意気揚々と飛んでくるバイスの機体。
「どうする!このままじゃ……!」
「いえ、この距離ならいけるわ……!」 微笑みながらランスの小型スイッチを押すと、刃パーツが収納され、ロッドが真っ二つに割れてアーチ状に変形した。
サイドアーマーに複数収納されていた矢をセットするマリナ。
彼女のもう一つの戦術だ。
「これって……」
「弓よ。これで決めるから、ね。」
ニッコリするマリナに素直な笑顔で笑い返すアクバル。
アクバルはマリナの左側に移動してその横顔を覗き込む。
いつもは柔和な水色の瞳は鋭く敵を狙う射手そのもの。
スラッとした脚を凛として開き、右腕を一点の緩みもなく、後方に力一杯引く。
「ハッ!」
細く優しい声は低い叫びに変えて、一本の矢を放つ。
回避を試みたバイスはギリギリで肩に刺さってしまう。
「このっ……!」
鋭い痛みに顔を歪めるバイス。
「よし!」
拳を握り興奮する少年。
手慣れた動きで複数の矢をセットすると目にも止まらぬ速さで撃ち抜いていく。
「町の人達を脅かしたこと、反省して……っ
これで終わりよ、ハッ!」
真空波のように飛び掛かる矢の雨。
「手こずらせやがって……って、何だありゃあ!?」
矢を引き抜いた直後のバイスは鉄球を持った腕で頭部を庇うが、当然のように腕、腹、脚に刺さっていく。 「うわあああ!!こ、この、小娘にぃぃぃ……!!!」
比較的頑丈な装甲だったが一定のダメージが至るところ刺さり、悲鳴を上げる悪漢。
ガッシリした機体はバイス本人と共にワナワナと揺れている。
「やりぃ!!姫さますごいじゃん!!」
はしゃぐアクバルに静かな声で諌めるマリナ。
「ありがとう……でも前に出てきちゃだめでしょう?
お願いだから下がっていて。
それに……まだ終わってないわ。」
「?」
実際スティンガーの頭部は無傷だった。そして、そこを守った鉄球も……
ガンダムファイトは頭部を攻撃され破壊されない限り敗北扱いにはならない。
そしてこの闘いで最も厄介なのはあの強靭な鉄の塊だ……
「……姫さん、やってくれんじゃねえか……
こうなりゃ本当の怖さを教えるしかねえな……」
ニヤリとすると鉄球を支えるチェーングリップのボタンを押すバイス。
瞬時にその塊はチェーンから離れ、まるで意思を持ったかのようにマリナ目掛けて飛んでいく。
「そんな!?」
驚きながらも矢を放つマリナ。
しかし、流石スティンガー本体以上の防御力を誇るだけありビクともせず、進んでいく。
「まさかあんな機能があるなんて!」
「ど、どうしよ。マリナ様!?」 「怖がらないで……勝って見せるわ……皇女だもの。」
優しく微笑みながらも激しい射撃を繰り返すがビクともせず突き進む鉄球。
「ハハハ!どこまで耐えられるかな!!」
まるでバイスの嘲りに呼応するようにそれはマリナの腹部に当たる。
「きゃああああ!!」
棘と鉄の重量、そしてかつてないスピードを一気に受けて、マリナのスーツと体に鈍く重い痛みが走り、細く高い声を上げる……
ファイターと言うよりは暴漢に教われる乙女のようだ。
ただヒットしただけではなく、腹部に接触したまま、マリナを後方へと押しやるように飛行し続ける鉄球。
もはや永続的に続く拷問のようなもの。
「うわあ!いてえ!」
勿論彼女の背後にいたアクバルも安全バーを握ったまま、壁とスーツ姿の皇女にサンドイッチされた状態になってしまった……
(姫様、やばいんじゃあ……
あのトゲボールやり過ぎだろ……ルールよくわかんないけど
……にしても姫様とこんなに密着できるなんて……オレまじでラッキーじゃねえ?)
不謹慎だが年頃の少年なので仕方ない。
マリナのしなやかな筋肉に覆われた体(それも全身ピッチリスーツ)に押し付けられているのだ。
興奮しないのは至難の技というもの……
お陰で年相応のアレが逞しくなってマリナのお尻に当たっている。
(もう少しこうしてもいいかも……あのファイタームカつくけど今は感謝だな……アハハ……) 「ア、アクバル……ごめんなさい……ケガはない?……」
「お、おれだったら平気だよ……」
(姫様、オレのアレに気付いてねえのかな……でもその方がいい)
痛みを押さえて向き直るマリナ。
(この鉄球……どうにかしないと……どこかに策はあるはず……)
自分を押しやる鉄球を苦しみながらも見つめると一ヶ所に細く深い穴が見つかった。
(そうか……あの時連続で射撃したからなのね……)
「どんなに硬くても勝機はあるわ!」
「えっ!?」
突然の言葉に思わず自分の股間を触ってしまうアクバル。
(おいおい、硬くてもって……
やっぱりオレのことに気付いて……なわけないか。)
「随分苦戦してるな!俺が引導を渡してやる!挟み撃ちだ!」
後ろからいつの間にかやってきたバイスのガンダムスティンガー。
辛うじて残っていたトゲの付いたナックルをマリナの背中に向けて迫ってくる!
しかし、皇女は苦しみに汗を流しながらも珍しく強気に笑った。
「イチかバチかよ……!」
腹部は鉄球の摩擦と硬度を食らい、背中はスティンガーのニードルに狙われている。
「ど、どうすんのさ、マリナ様!?」
心配するアクバルをよそにマリナは刻が来るのを待った。
「覚悟しろ!」 迫るバイス。しかし……
「ハッ!!」
ギリギリのタイミングでバイス機の肩を踵で蹴り上げ上空に飛んだ!
その衝撃で彼女から離れた鉄球はその主であるスティンガーの腹部に激突した!!
「ぐああああ!!」
凄まじい叫びを上げるバイス。
「すげえ……マリナ様、こんなことできるんだ!」
はしゃぐアクバル。
一方自由落下で誰もいない山に落ちていく鉄球に目にも止まらぬ連続射撃を浴びせるマリナ。
あれ程彼女を苦しめた鋼の怪物は無惨に粉々に砕け散った。
「ちくしょう……マリナ、てめえ……!!」
悪漢は腹部を押さえて歯を食い縛り皇女の機体を見上げながら、相手と同じ高度まで飛翔する。
同じ目線で睨み合う両者。
マリナに数発矢を放たれ勢いを徐々になくすバイス。
「バイス、ここで終わりにするわ。
町の人達を脅かした罪、反省しなさい……」
弓を凛々しく構えるマリナ。しかし……腹を押さえて膝を着く。
やはり短時間とは言えダメージの蓄積はかなりのものだった……
鋼による圧迫と猛スピードの為に全身に疲労も溜まり、狙いを定めるのが難しいのだろう……
「うぐっ!……」 「マリナ様?!」
「……はあ、はぁ……ねえ、アクバル。
お願い、聞いてくれる……?」 「うん!何でも聞くよ!」
「それじゃあ……」
彼女の求めに少し頬を赤らめるがすぐに頷く。
片膝を着いて狙いを定めるマリナ。
後ろ側で何と彼女を羽交い締めにするアクバル。
上体を安定させる為とは言え、彼女の背中とお尻にイヤでも密着して動揺を抑えられない。
このまま胸を触りたい衝動に駈られるがグッと堪える。
「これで終わりだ!」
「いえ、あなたの方よ!」
光の速さで射たれた矢がスティンガーの頭を撃っていく。
「ぐわああああ!!俺が、小娘に……やられるだと……!!」
無人の山に落ちていく悪漢とスティンガー。
「ねえ、皇女様……」
「なにかしら?」
「今日は、色々と……ごめんなさい……」
「いいわ、謝らないで。私はこの国が、あなた達が好きだから闘ってるの。ただそれだけよ。」
頭を撫でる皇女はとても優しかった。
その後、孤児院に無事帰還するマリナのガンダムファーラ。
ワイヤーで降り立ち、ファイティングスーツ姿の皇女と手を繋ぎながら歩むアクバル。
「もう!本当に心配したのよ!!」
「やんちゃだからってまさかここまでとはな……」 真剣に怒ってくれる孤児院のシスター。呆れながらも帰宅を喜んでくれる友達。
「ごめんごめん。でもマリナ様凄かったんだぜ!!
テレビで見るのとは比べ物になんねえよ!
やっぱ本物は違うよな!」
拳を振り上げて皆に自慢するアクバル。
それをクスクスと微笑みながら見守るマリナ。
「今日は本当に申し訳ありませんでした!!家の子がとんでもないご迷惑を……!」
「いえ、気にしないで下さい。アクバルは立派に私を助けてくれましたから。
あんな子がいるんですから私は絶対勝って見せます。」
「マリナ様……」
憧れの目で見つめるアクバルの耳元に語りかけるマリナ。
「ねえ、アクバル……?」
「何?」
「あなたあの時……熱くなってたでしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
「ねえ、何?何なのー!?」
アクバルは他の子達に聞かれて頬を赤らめながら苦笑いするしかなかった。 スパロボとかでプル・プルツーが救われる(仲間になる)話はよくあるが
フォウ・ロザミアが救われる話は少ないような…
何故だ。 需要はあると思うけど、その二人は劇中のストーリーが悲惨すぎてハッピーエンドにどうもっていいのかわからないから、な気がします。
原作のプルツーも悲しかった。
ゲーマーではない自分の意見だけど。
ただ、プルは大好きなジュドーと一定期間同行できたから比較的幸せだと思います。
まあ自分は原作で殴り合いなんて全く経験無さそうなマリナとシーリンに格闘させてますがw 『マリナ 新たなる戦術』 EP1
アザディスタン代表のガンダムファイター、マリナ・イスマイールは都市から離れた荒野に敵ファイターと向かい合っていた。
相手はエジプト代表、レザー・クルスーム。185センチの大男でいかにもパワーのありそうな風体をしている。
「闘いにゃ似つかわしくねえ姉ちゃんだ。皇女様がよくやるぜ。
楽しめるんだろうな?」
どこかサディスティックな笑みを見せるレザーにマリナは静かに、だが毅然と答えた。
「……私にとっては楽しむものではありません。ただ、国の為に闘うだけです。」
「まあいいさ、精々泣かないようにな。ガンダム!」
レザーの大声と共に大地は割れ、ガンダムグレイブは姿を表した。
マッシブな人型ではあるものの、ピラミッドの頂点を思わせる尖ったパーツが複数付いている。
「ガンダム。」
対して静かに呟くマリナに答え、大地から現れるガンダムファーラ。弓と槍の闘いに適した純白の機体だ。
コクピットに入っていくマリナ。
皇女としての紫の衣装を丁寧勝つ素早く脱いで、一糸纏わぬ姿になる。
均整の取れたスマートな身体。それと同時に、訓練により程よく筋肉のついていた。
腹は比較的深い縦線が入っていて、臀部は上向きで無駄な肉がなく、柔らかさと締まりを両立させる見事なものだった。
もし少女時代しか知らない亡き両親が見れば娘の成長?ぶりに驚くこと受け合いだ。
「モビルトレースシステム機動。」
青紫のスーツが凄まじい圧力とスピードを伴い降りてくる。
祈るように両手を握りしめ、脚をそっと開いて待つマリナ。 間もなく、胸元から爪先までを完全に覆い尽くす大きな布の固まり。
遠目に見れば美女を襲うスライムのように見えるかも知れない。
「はぁぁぁぁ……!!何度も、したから……これくらい……」
声を絞り出し耐えるマリナ。
少し小振りな胸を反らせば、テカる布は嫌と言うほどその美しい輪郭を際立たせ定着していく。
爪先立ちになりつつ、両腕を鶴のように広げると、甚だしい音を立てながら布は破れ纏われていく。
「うっ、……あ、あ……キ、キツイ……!!」
何度やっても慣れないのは股間とアナルに侵入する布。
まだ女の喜びを知らない膣は柔軟なそれが与える摩擦に翻弄され、無言の悲鳴を上げる。
そして、禁所とも言えるアナルは深々と入っていき、清潔なそこを満たしていく。
「くぅ、……いやぁぁ……はぁ……はぁ!」
尻を上下左右に振りながら定着し、馴染ませていく。
どこか一ヶ所でも定着しなければ、機体に自分の動きをトレースさせられない。
普段の彼女を知る周囲からは想像できない姿だ。
長い両脚を片方ずつ掲げて、全身スーツに覆われた。装着完了。
細い胴体は青紫、長い四肢は純白、足の付け根とアナルにはV字型の暗紫が同等と主張していた。
二人のファイターの声が重なる。
「ガンダムファイト!レディーゴー!!」 「喰らいな!」
「なんの!」
グレイブの全身に付いた突起から繰り出される大きな砲弾を得意の弓術で破壊していくマリナ。
「この調子で勝てれば……」
冷静に素早く近付くマリナ。しかし……
「どうかな!?」
突如猛スピードで迫るグレイブ。砂を掻き分けスムーズに走るその様に驚くマリナ。
「これは……!」
「この機体は様々なフィールドに対応できるように換装式になってんだ!
アマゾンなら湿地、海なら水中、砂漠ならホバータイプだ!」
瞬時に接近を許してしまい、弓を叩き落とされるマリナ。
「そんな!」
「非力な姫様には勝機はねえぞ!」
片腕を捕まれ抵抗できなくなるマリナ。
必死で外そうとするも相手は動じない。
それもそのはず。グレイブはパワーに長けているのもあるが、そもそもマリナは他のファイターに比べ非力。よってパワータイプを操るのは負担になる。
それを補う為の槍と弓だったが落とされ身動きできなくなったとあれば勝ち目はない……。
皇女の戦況は絶望的だ……! 「まだ、諦めない……」
サイドスカートから取り出したスペアアロー……
しかしそれさえも叩き伏せられてしまう。
やはり遠距離でこそ輝く武器。至近距離ではどうしようもない……
「ほら、喰らいな!姉ちゃん!」
「きゃああぁぁ!!」
肩、腰、脚に砲撃を受ける。ファイトのルール上、コクピットを狙うわけにはいかないので必然的に食らうのはそれらの場所になる。
「さあて、頭を狙わせてもらおうか……」
「……!」
ファイターとしての本能とでも言おうか、瞬間的に精神がクリアになったマリナ。
恐れも焦りも心の奥に沈み、反射的に片足を上げて思いきり敵の片目にキックを直撃させた!
「ぎゃぁぁぁ!!」
一瞬の強い攻撃に悲鳴を上げファーラを離すグレイブ。
砂の上に尻餅を着いて何とか距離を取るマリナ。
「やろう、目を……ファイトはお預けだ。また一週間後に来るぜ!」
飛び去っていくグレイブ。
「はぁ、はぁ…………私の武器が通じない……」
汗を拭いながら飛んでいく巨体を見つめるマリナ。
そこに一体の小型飛行機が降り立った。
中から現れた女性を見てマリナは驚いた。
ウェーブのかかった短いブルネット。
眼鏡の奥に光るクールな瞳。年はマリナより少し上だろうか。 「あなたは……シーリン?」
「久しぶりね。マリナ。」
マリナは機体から出ると飛行機にいる彼女に駆け寄った。
マリナの秘書をしていた女性、シーリン・バフティヤール……
外交の為、暫く国を留守にしていたのだ今日戻ってきたのだ。
皇女は頬を染めながら……
「あの……今のファイトは……」
「ええ、見ていたわ。一国の代表としては少し酷いわね……」
「言い訳はできないわね。でも、後一週間しかリミットが……」
「そう、それなら私に良い提案があるわ。ここで挽回できなければ……わかるわね?」
「…………」
マリナは首を縦に振った。 EP2
「きゃっ!」
床の上に倒れ込むマリナ。シーリンはいつも通りの冷静な顔で彼女を見下ろしていた。
「いたた……あなた、いつの間にこんな技を……」
立ち上がる彼女にシーリンは告げる。
「外交中に日本で教わった合気道というものよ。殴らずに相手の勢いを活かして倒す、古くから伝わる武術よ。」
「そんな武術があったの……空手や柔道しか知らなかったから……」
驚くマリナの前にしゃがむシーリンは側近と言うよりは家庭教師という顔だった。
そう……昔彼女に教えていた時のように、政治に携わる今よりは幾分親しみやすい雰囲気だった。
そっと手に触れる。
「私も始めて知ったけど、マスターすればかなり有効な武術。
あなたは努力を重ねてここまで成長した。それでも唯一他のファイターに届かないのはフィジカル……
器用に武器を使いこなしても腕力では敵わないでしょう。
でも、合気道ならその差を埋められる。あのパワーやスピードを兼ね備えた敵にもね。」
「…………期限は一週間だものね。わかったわ。私に教えて頂戴。」
シーリンは首を静かに縦に振った。 そして数時間後……
「私の動きを少し見切れるようになったみたいね。」
「はあ、はあ……!それにしても、シーリンの、手捌き、すごいわ……
対応……精一杯だもの……」
フラフラになりつつ汗を流すマリナ。
彼女が立っている場所を中心に汗が滴り落ちている。
「MF用の訓練室に行きましょう。見せたいものがあるわ。」
「?……」
不思議に思いながらも付いていくと、応急修理を終えたガンダムファーラにワイヤーを使い入っていくシーリン。
前方には、各国のMFを元にした無人の訓練用ダミー機が複数待機している。
「まさか……」
「ええ、今から合気道のファイトを見せるわ。よく見ていて。」
コクピットに入ったシーリンは慣れないその場所を見回す。
旧友にして皇女、そしてファイターであるマリナの居場所。
ファイトにかける想い、焦り、不安、そして勝利の喜び。
マリナが持っているありとあらゆるものがこの戦場にひしめき合っているような気がして、普段冷静な彼女も息を飲む。
「最初会った時は少し危なっかしい所もあると思っていたけど、ここまで強くなるなんてね……」
緑の外交スーツから布製のケースを取りだし、服と下着をパサッと脱ぐと、それは粒子となり消えていく。
マリナより数センチ背の高いシーリンはパッと見彼女より威圧感を与えるかも知れないが、身体は同じくらい細かった。
一言で言うと、適度に軽い運動を嗜む女性と言った趣の体型。
皇女より少し大きい平均サイズの胸。 ファイターでないのでマリナ程でないが、一般人の女性より幾らか引き締まった身体。
艶のある肌は色気を引き立てるのに充分だろう。
流れるような線を描くシルエットも男を昂らせるだろう。
リングに立ち脚を閉じて、両腕をスーっと広げる。
「デミモビルトレースシステム機動!」
叫んだ瞬間にケースから取り出したのはサイズの違う二つの半透明の布。
その内大きい楕円形のものを胸にピタリと吸着させる。
「く、うううぅぅぅ…………!いやぁぁぁ……!!」
いつもの凛とした揺るがない態度からは想像できないあられもない声。まるで痴漢や強姦に遭ったような悲鳴と共に身体を反らす。
布は大きく広がり、見る見る内に胸から鎖骨、腹、背中と両腕を包んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、最近開発されたモビルトレースシステムの簡易版である。
必要以上に負担のある正規版に比べ1/3の疲労で済むもの。
巨大なスーツが上から降りてくるのではなく、二つの伸縮式布で上半身と下半身に纏う。
云わば訓練生とファイターに憧れた一般人のためのもの。
その分、人間の動きをガンダムにトレースさせる効果は正規の1/3程。
特定の武術やスムーズな動きに長けていれば、性能以上のトレースができる者もいるが稀である。
「マリナの、苦しみに、比べれば……!!」
正規程手はないにしろ、全身にかかる圧迫を跳ね退けるように握り拳を作り、両腕を広げる。
そして、シーリンはもう一つ、小型カプセル状の布を性器である谷間に差し込んだ。 「い、いやぁぁぁ……!!」
いつもの凛としたものとは違う声色を上げてしまうシーリン。
布はやはり性器の比較的奥まで吸着する刺激を与えながら、下腹部、性器周り、尻、脚を包んでいく。
「キ、キツイ……!!」
深いアナルにも行き渡るスーツに腰を揺らしながら、全身に力を込める。
「時間が、ないわ!!マリナの、為に……」
吸着に耐えながら正面にいるダミー達を見据えるクールな瞳。
衝撃は徐々に消えていく。一般人に取っては有り難いシステム。
半透明の美しい、だがどことなくぼやかした色のスーツに包まれたシーリン。
通信機を作動させマリナに呼び掛けるシーリン。
「よく見ていてね。これが合気道よ。」
首を縦に振り旧友が乗ったガンダムを見つめるマリナ。
「はあっ!!」
簡易版とは言え、走り込みと合気道に慣れたシーリンはスムーズに、正確に自分の動きを反映させている。
ファイターではないが一般人としてはかなりのものだ。
ダミーの振り降ろす腕を掴み、瞬く間に投げていく。
バランスを崩した機体は次から次えと間接を初めとするパーツを破壊されて倒れていく。
「凄いわ……こんな戦い方があったなんて……」
その鮮やかさに魅入るマリナ。
皇女は友によって新たな希望を感じていた。 EP3
訓練開始から三日経ち、マリナは苦労しながらも生来の才能ゆえに合気道の技を身に付けていった。
今は晴天の昼下がり、気晴らしに街を歩く。道行く人に挨拶をして、時には軽く談笑すると、人通りのない原っぱに出た。
街の治安が守られていることを皇女として嬉しく思う。
およそ十年前には考えられなかったことだ。
「これも国のみんなが協力してくれたお陰ね……」
(絶対にあんな人に負けはしないわ……シーリンの為、みんなの為にも……!
…………!?)
上空から自分目掛けて何か大きなものが勢いを付けて降ってくるのを感じ、ファイター故の反射神経で素早く身構える。
棍棒を持った長身の男。
「ハッ!……」
瞬時に相手の腕を掴んで捻り、投げ飛ばした。
「いてて……てめえ、避けやがったな……」
背中を強かに地面に打ち付けた男はダメージに痙攣している。
この近くの土は柔らかいとは言え、マリナの今までの訓練で培った腕力と合気道の訓練成果によって、相当の痛みがあるらしい。
棍棒を奪って槍の構えのように突きつけるマリナ。
「エジプトのファイター・レザーの命令?
」
「けっ、誰の命令だろうが関係ねえ!」
男が痛みに耐えながら指を鳴らすと、複数の男達が茂みや木から姿を現す。 殆どは嫌らしい顔でマリナを見ている。
相手を痛め付けたいだけでなく、性的なことを考えてもいるのだろう。
それは対面している皇女自身にも伝わっており、ファイターになってからある程度の覚悟はしていた。
皆腕利きの格闘家や元軍人……レザーが雇った相手だろう。
シーリンが言った通り、マリナの弱点は筋力。武器の扱いやスピードはともかく、純粋なパワーだけなら彼女を越える者も二、三人は混じっているかも知れない。
「マリナよ、悪いがここでシメさせてもらうぜ。」
一斉に襲いかかる男達。
戦闘体勢に入ったマリナは次々と相手を殴り、蹴り飛ばしていく。
ガンダムファイターとして非力でも、それ以外の格闘家や軍人を圧倒的に凌ぐパワーと格闘センスを持っている彼女は純粋にパワーだけで片付けられる。
そして敵は残り僅かになったのだが……
向かってくる一人の男は凄まじい腕力でマリナのパンチを弾き返す。
一気に原っぱに倒れ込むマリナだがすぐに立ち上がる。ファイターにしては小さい拳は痛みにジンジンとしている。
「キャッ……!」
「フッ、応えたらしいな。俺は腕力に関しちゃ自信があってな。」
その男はテクはイマイチだったのでガンダムファイターの適正はなかったが、パワーはかなりのものだった。
この世界の格闘家の中ではトップクラスまでいかずともかなりのものだろう。 「くらえ!」
更に何発もキック、パンチをマリナの腹、腕、脚等に入れていく。
乱れ内に少しずつ赤くなる皇女の皮膚。
「うぐっ……!(もっと冷静に……敵の動きを読まなきゃ……)」
ふらっよろめくマリナ。周りの男達は手を出さずにいやらしく囃し立てる。
金で雇われたであろうそいつらは暴力に飽きたらず性欲まで強く持っている。
今マリナにダメージを与えた男も同類の表情だった。
「いい格好だな、皇女さまっ!これが終わったら俺達楽しめるな!!」
「はぁ……はぁ……誰があなた達に……
(ここで負けては国を救えないわ……
怖い敵なんて、誰もいない……!)」
心を鎮めて雑音をシャットアウトすると、どこか精神が白く透き通ったような心持ちになる。
自ずと今握った拳は開かれて、身体全体にかかる力は抜けて軽くなったような心境だ。
彼女には怪力の男しか見えていない。
大きな拳が見せる軌道……それを鋭く見つめると、痛む身体を押して腕を掴み、捻り混んだ!!
「ハッ!」
「うわぁぁぁぁ!!」
そのまま更に捻ると、男の腕の間接が脆くも外れる音がした。
「ひいぃぃぃ!!」
男はそのまま痛みに苦しみながら汗をドッと流していた。
皇女はそれを冷静に見下ろすだけ…… 今日はここまでですね。
『新たなる戦術』も既にpixivに書いたものですが、一気にガーッと載せるのもあれなので少しずつにします。 エロとバトルと、時々リョナと
EP4
そして他の男達もマリナに投げられ、間接を捻られた。
全員が彼女の通報で逮捕されたが、敵ファイターの住むエジプトと問題を起こしては国の安全に関わると言うマリナの判断で密かに独房行きになった。
マリナはあの頭が冴え渡るような感覚から元の状態に戻っていたが、何分初めての体験なので混乱しつつ帰路に着いた。
街の人達や通報を受けた警官からは軽い土汚れや痣を心配されたが、本人は笑って心配をかけないように努めた。
ここはアザディスタンの城の皇女専用の個室。少し脚の長いベッドには皇女の純白の下着が丁寧に畳まれて置かれている。
マリナは椅子に座って一糸纏わぬ姿でシーリンのお世話になっていた。
両手を膝に置き真っ直ぐに姿勢良く座っているが、桃色の薄い唇を少し強ばらせている。
控え目な美乳・括れていながらも引き締まった腹・しなやかな手足……痣のできた体の各部に塗り薬が染み渡る。
「いっ、いたい……」
「全く無理をするんだから。たまにそういうところがあるわよね、昔から。」
シーリンは呆れながら出来るだけ優しく薬を塗ってくれていた。
「ありがとう、シーリン。でも不思議なのよ。冷静になろうとしたら頭が冴えたような、余計なものが消えちゃった状態になって……」
シーリンは少しの間考えていたが直に顔を上げると
「それはもしかすると、明鏡止水というものではないかしら……」
「め、明鏡止水……?」
聞き慣れない言葉に首を傾げる皇女に旧友は続けた。
「一切心が荒まずに、澄み渡った……そうね、とても落ち着いた安定状態というのかしらね。日本で聞いた言葉よ。」
「私が、その状態に……?」 「私が、その状態に……?」
「ただ、誰でもいきなりなれるわけではないわ。もしかしたら……その前段階かも知れないわね……」
「じゃあ、いつもその状態を保っていられれば……」
「そう、だけど決着までに後四日しかないわ。確かに大切な言葉だけど、新しい概念に心を奪われていたらそれこそ元も子もないわ……
言い出した私が言うのも何だけど、忘れて訓練に励みましょう。ただ冷静さだけを心掛けるしかないわ。」
「そうね、ありがとう。シーリン……」
それでも、その言葉はマリナの心を掴んで離さないのを自身が一番わかっていた。
望みと不安を同時に見せる澄んだ水色の瞳……
それは旧友に親愛の微笑みをさせてしまうものだった。
「マリナ、あなたって人は……
……所で何か感じない?」
「何って?」
「この部屋、私達だけじゃないわよ?」
「……!?」
敵の襲撃後なので、立ち上がり構えるマリナ。
シーリンはベッドの脚に触れると諭すように「出てきなさい。」
「な、何?」
「あちゃー、ばれちゃったかー、ハハハ。」
ベッドのやや長い脚と床の間から這うように出てきたのは見覚えのある少年……アクバルだった。
前に孤児院で出会い、コクピットに入りマリナの戦いを目の当たりにしたあの少年……
「アクバル!あなた、いつからそこに……
ずっと、見てたの!?ひどい……」
マリナは立ち上がり、胸と局部を両手で隠す。 子供とは言えスケベな男子。女としては反射的に防御せざるを得ない。
スラリとしつつ引き締まった、つまり二重の意味で美しさを兼ね備えた女体を震わせる。
少し衝撃を与えればすぐに体制を崩して大事なところを公開しかねない危うさ。
普段ファイトで落ち着いた構えを見せる彼女とは別人のようだ。
ただ、それはファイトの訓練と経験によって積み上げられたもの。
今の姿は生来の彼女らしさかも知れない。
実は彼に裸を見られたのはこれで二回目。最初の時は目を瞑るよう頼んでから、脱衣してスーツを装着したので恥はあまりなかった。
…………と思ってるのはマリナだけで、アクバルは(ある意味では)勇気を振り絞ってこっそり目を開け、皇女の裸体とスーツの装着に苦しむ様をまざまざと脳裏に焼き付けたのだ。
まだ小さい彼には相当の刺激と高揚を教えてくれたので、それを一人アソビの助けにしているのは秘密だ。
その思い出を孤児院の男子達に語れば相当の反響を呼び、女子達はそれに対し所謂「男子サイテー!」というリアクションを見せ、従業員は青ざめながら説教をしていた。
この孤児院始まって以来の大騒ぎだった……
「いや遊びに来たんだよ。マリナ様にあったことあるって言ったら城の警備の人が入れてくれてさ。
でも、酷いな、今回ヤバいやつらだったんだろ!?
ファイターにも色んなタイプがいるんだな……」
アクバルが心配そうに手を触れようとするのを反射的に武道宛らのモーションで避けるマリナ。
「もう、酷いのはあなたよ……
……でも、ここまで来てくれて嬉しい……ありがとう……」
マリナは呆れながらも険悪な感じはなかった。寧ろチラリと向けた水色の瞳には喜びが見えるので、少年は素直に笑った。
「気付かないなんてまだまだね……皇女様も形無しね……」 「シーリン、からかわないで!
……あっ」
言った拍子に手を広げて、股間を見せてしまうマリナ。
「…………」
時が止まったようなムード。鳩が豆鉄砲食らったような顔になるアクバル。
「いやっ……!!」
「うわぁぁぁ!」
少年は目にも止まらぬ速さで腕を捕まれ床に転んだが悪びれる様子もなく背中を擦る。
「いてて、流石、マリナ様か……」
「ほら、行くわよ。」「はい……」
シーリンに連れられて部屋を後にするアクバル。
着替えたマリナはまた二人を部屋に入れてお茶を人数分淹れた。
「院のみんなは元気?」
「うん、みんなマリナ様が来てからもっと元気になったよ!」
「そう、良かった……私が少しでもみんなの力になれるなら……」
少年の言葉には二重の意味があったのを彼女は知らない……
シーリンだけは何かを察したのか黙ってお茶を啜っていた。 EP5
マリナがアクバルと和気藹々と過ごしている頃、城の別室では何人かの大臣が集まっていた。殆どは年輩で、中には中年も混ざっていた。
アザディスタンは元々女性に参政権のない国。
しかし、ガンダムファイトが制定されたことで戦争は終わり、政治家の尽力により国の経済力も少しずつ上がっている。
皇女となったマリナがガンダムファイターになり、二重の意味で国の代表になったことで、国内の女性の地位も上がり女性政治家も増えた。
それを快く思わないのがここにいる彼らである。
「しかし、参りましたね。ここ最近のマリナ皇女の活躍ってやつは。」
一人が皮肉っぽく告げる。
「全くだ。しかし、遂に完成したじゃないか。新型の《スーツ》が。
何も知らずに開発の話を喜んでいたな、皇女は。
これで彼女の信頼は終わりだろう。」
自信ありげに話す男は中心人物らしい。
すると、隣にいた男は手を上げた。
「しかし、そうなっては国民からの我々の評価も危ないのでは?」
メインの男は首を横に振り
「いや、大丈夫だ。優しい皇女とその直属の部下達なら甘い処罰を選んでくれるだろう。
今回の失敗を糧にこれからもお願いします……という言葉と共にな。」
「確かに。それにエジプトのファイターがこのタイミングに我が国に勝負を仕掛けたのもラッキーですね。
敵に感謝することがあるとはね……」
個室で談笑するマリナ達の元に先程集まっていた大臣の何人かがメカニックスタッフ数人を連れてやってきた。
「マリナ皇女。実は新型のファイティングスーツが完成致しました。」 「本当ですか?それではすぐにテストしましょう。」
嬉しそうに立ち上がるマリナ。
少し不安げに男達を見つめるシーリン。アクバルは好奇心の目でマリナを見つめる。
シーリンとアクバルを連れ立ってガンダムの格納庫に行く一同。
「新しいスーツというのは?」
「これです。」
パッドに映ったデータのイラストを見たマリナは苦笑いして固まる。
脇から覗いたシーリンも絶句した。
そこには「リキッドメタルスーツ」という文字があった。
「こ、これですか……」
「ええ、以前のものとは違いますが軽量なのですよ。エジプトとの闘いも迫ってますし……」
例の一番メインの大臣が説得すると応じるマリナ。
「……そうですね。時間がありませんからね。」
「どれ、どんなの?」
パッドを奪おうとするアクバルを止めるシーリン。
彼女は男達に疑惑の目を向けたが、その視線はテストに臨むマリナの方を向けばすぐに心配の眼差しに変わった。
「あなたが見るものではないわ……
(しかし、こんなものを……彼らは一体何を……)」
緊張しつつガンダムファーラのコクピットに入るマリナ。いつも通り全裸になるが新たなシステムに不安で内股になり、普段の祈るポーズもする余裕がない。 「大丈夫なのかしら……でも、闘えるのは私しかいないから……!
モビルトレースシステム起動!」
恥じらいを消すように発した声と共に天井から降りてきたのはスーツの布ではなく、掌サイズの銀色の液体だった。
それは液体金属……リキッドメタルスーツというものだった。
「新型スーツの話は聞いていたけどこれはどういうこと?」
静かに、しかしそこはかとない厳しさを見せるシーリンにリーダー格の大臣は落ち着き払って応えた。
「その名の通り液体金属を使ったものですよ。軽量ですし、新技術を使えば他国への優位性のアピールにもなります。」
「…………」
「ねえ、ホントに大丈夫なのか?」
シーリンは不安がるアクバルの肩に手を置きながらも、大臣達への疑惑の目を向け続けた。
一方マリナは……
「な、何?これが液体、金属?キャアッ!なに、これ……!」
重力や引力に逆らう技術が使われているのだろうか……
銀色のそれは首や肩ではなく、いきなり形の整った胸元に圧迫するようにへばりついた。
更に胸を揉み解すようにモゾモゾと動きながらその面積を広げていく。
「い、いやぁぁ……!キ、キツイ……!!
それに、柔らかくて、ヒンヤリしてて、何だか、こわい……」
あっという間に肩甲骨まで包んでいくと、まるで生き物のようにそこと胸を前後からグイグイと圧迫していく。
「い、いやぁぁぁ!!い、いた、く、苦しいぃぃ……!!」
柔らかいが、同時に強靭な締め付けでマリナを苦しめるメタル。 何度も揉まれていく度にそこを中心に、真っ白かった肌が少しずつ紅くなっていく。
理不尽で未体験の衝撃と羞恥によって……
徐々に固まり、銀の硬質なブラジャーのような形になるメタル。
すると、新たにもう一つの掌サイズ液体金属が降ってきた……[newpage]
シーリンとアクバルは心配そうにガンダムに目を向けていた。
「マリナ様……どうなるんだ……」
「今は信じましょう……」
少年の肩に置いた手は心なしか力が入っていた。
液体金属に戦くマリナ。
「また一つ?今度は何!? ……まさか……」
予感は的中した。それはマリナの胸を通過し下腹部に触れるとジンワリと陰部、尻にその侵略を進めていく。
「いや、やめて、そこだけはぁぁぁ!!」
怯えて悲鳴をあげる姿は皇女ファイターとは思えず、寧ろ怪物に襲われる女性のようだ。
今までずっとスーツの与える羞恥と苦しみと戦い、耐性もかなり付いてきた。
しかし、新しく見たそれは生物のようにマリナに迫る。恐れない方が不自然。
冷たい質感と共に下腹部を全て覆われると、誰も誘い入れたことのない女の場所にグイッと入り込み、深いところまで入っていく……
バイブと圧迫を同時に与えて、マリナはあられもない声をあげる。
腰を上下に揺らす姿は見たものを驚きと邪な感情に駆り立てるかも知れない。
「いやぁぁぁ……何だか、くっつかれてる、みたい……」
下半身をメインにガタガタと震えるマリナをよそに、会陰を伝ってアナルにまで入っていく。
「ひゃ、だ、だめよ、そこは!そんな!」 「ひゃ、だ、だめよ、そこは!そんな!」
実際に清潔なのだが場所が場所なので、自分の秘密を見られたような気分になってアナルに手を伸ばそうとするが既に遅い。
深々と入ったそれの与える冷たさに尻を突き出して背中を反らし、天井を仰ぎ見る。
「いやぁぁぁ……!!わたしの、そんなところ、やめて……!!
国の、みんなに、見られたら……」
なぜかふとアクバルの悪戯そうな顔を思いだし赤面する。
アナルに入ったそれは更に小振りな美尻を入念に包んでいく。
腰全体を苦しめるように揺れながらプレッシャーをかける液体金属。
やがて固まり、銀色のパンツになった。
同時にマリナの体にかかる苦しみも少しずつ軽減していく。
「はぁ、はぁ……!……これが……スーツ……!?」
金属が包んだのは全身ではなく、胸と腰だけ。下着のようなアーマーといった方が正しいかも知れない。
データを先に見ていたが、いざ着ると衝撃と恥ずかしさは並みではない。
「あの人達は何を考えているのかしら……!?」
決着まで後僅か。皇女は漠然とした不安を募らせていた。 EP6
「はぁぁぁ!」
訓練場で無数のダミー機体を蹴散らしていくマリナ。
あるものは槍と弓で、あるものは合気道の投げ技で次々と破壊されていく。
一見格闘とは無縁そうなビキニ状スーツはマリナのモーションを見事機体にリンクさせて滑らかなモーションを実現させてくれる。
「すごい、前のスーツを格段に進歩させてる。」
あまりの成果に自身が纏っている金属の胸当てとパンツを繁々と見つめる。
大臣達の求めにそのままの姿でゆっくりとワイヤーで降りるマリナ。
その場にいる誰もが息を飲んだ。
元々持つ雅な美貌。訓練によりスレンダーさが増した抜群のスタイル。そこに際どい場所だけをメタルに守られている。注目を集めるのは無理もなかった。
「むう、素晴らしいですな、マリナ皇女。」
「スーツを使いこなしていますね。」
大臣達は口々に誉めるがそれは半分おだて。それを知った上ではにかむ皇女。
「いえ、皆さんの力あってですから……
…………何をしているの、アクバル?」
「……え、これは……?……うわぁぁ!」
お尻に手を伸ばそうとするアクバルの腕をさっと掴んで軽く投げるマリナ。尤も、手加減していたから大丈夫だったが。
「ホントに困った子……」
「いてて、流石だな。マリナ様。」
シーリンはフフっと笑い
「段々勘が鋭くなっていったみたいね、マリナ。」 その日から三日間、新型スーツでのガンダムの操作と、スーツを着ながらの生身の訓練に力を注いだ。
アクバルもそれを見学したいからという名目で城に泊り、マリナの姿を脳裏に焼き付けるのに注力した。
決着は明後日となったこの日、いつも通りシーリンから合気道を教わった。
「中々の性能ね、そのスーツ。見た目通りかなり身軽になってるわ。」
「ええ、姿は恥ずかしいけど動きやすいし、次の戦いが終わったらデザインを変えてもらわなきゃね……」
その語尾は相当強いものだった……
「全身金属というのも中々斬新よね。他のファイターからの視線が凄そう、色んな意味で……」
「ちょっとやめて、シーリン。全部金属は困り者よね……もっと目立たないようになれば良いんだけど?」
その後、マリナはシーリンと自室に戻ると訝しい顔をした。
「あれ?ない、ないわ。」
「どうしたの?」
「ビキニスーツの解除用リキッドがないの。」
解除用リキッドは、その名の通り金属でできたスーツを溶かす液体。
但し純粋に溶かすだけなので、人間の皮膚には何ら影響はない。
不思議がる二人。
そしてマリナは人差し指を口元に触れて…
「それに、アクバルもずっと帰って来ないのよね…」
「こんな時に人の心配?でも確かに気掛かりね。やんちゃな子だから…」 一方アクバルはまた戻ると言い残し長い間城の近くをブラブラしていた。
20人程客がいる酒場に行くと、早くも皇女のスーツの話を自慢げに切り出した。
様々な年齢の男達が目を輝かせて話に聞き入った。女達は苦笑いしたり、眼前の男達に不快感を示したりして正に十人十色だった。
「……というわけなんだ、すげえだろ!?」
「まじですげえ、ボウズ、いいもん見たな!」
「こぉの、幸福者ぉ!」
しかし、中には無法者もいた……
スキンヘッドの男は王宮の警備員として相当の強者だったが飲酒や暴力などの素行不良でクビになって荒れた生活をしていた。
逆恨みで何をするかわからない……!
彼は近付いてくると、好色な顔をズイッと寄せた。
「おい、姫様は今でも城にいるか?何なら今からでも会いに行きてえと思ってな。」
悪い予感がしたアクバルは自分の軽率さを悔いながら首を横に振った。
「いや、今はもういないと思う。……他に用事があるらしいから……」
「どうだろうな。まあ行ってみるさ……」
(この荒くれたやつ、マリナ様になにするかわからない。今大事な時だし……!
絶対に会わせちゃいけない!!)
「やめなよ!今姫様は大変なんだ!国の未来がかかってんだ!……あんたも国の一員なんだからわかるだろ?」
少年にとって精一杯の説得だった。しかし、元々血の気が多くて最近はそれが酷くなった男は聞くわけがなくアクバルの胸ぐらを掴む。
酒場の店員や他の客は何もできずじっとしていた。
「ガキが何言ってやがる!こっちはクビになってから毎日悲惨なんだ!一泡吹かせなきゃ腹の虫が収まらねえ!!」
「こいつ……!!」 「私に一泡吹かせたいならその子を離して。」
向かい合う二人が振り向くとそこには当の本人、マリナが白いコートを着て立っていた。
馴染みの少年を脅す男に怒りの炎を燃やす水色の目は、宛ら蒼い炎のようだ。
「マリナ様……」
「アクバル、中々帰ってこないから探してたわ。」
「そっちから来てくれるなんて丁度いい……まずはこれを喰らえ!」
襲いかかる男の猛烈なパンチ。それに動じず腕を掴むとそのまま相手を床に倒してしまう。
「この野郎……」男はタフなのか立ち上がってくる。
「ここでは皆さんの迷惑になるわ。どうしてもと言うなら誰もいない場所で…… アクバル、あなたは早く帰りなさい。」
「ありがとう、マリナ様……」[newpage]
少し離れた空き地に向かい合う二人。
「ファイターになったからって自惚れんじゃねえ!!」
「あなたのような人、クビではなく警察に渡すべきでした。今終わりにします!」
(感情に流されちゃだめ。落ち着いて……今ここには誰もいない、存分に戦えるわ。)
自分に言い聞かせると、原っぱの時のように頭が冴え渡ってくる。
この数日であの冷静さをマスターしつつあった。それでもまだ明鏡止水まではいかないが……
「さっきは油断したがこれで終わりだ!」
男の方も少し落ち着いてきたのだろう。
いくら腕っぷしが人並外れて強いとは言え相手はガンダムファイター。一筋縄ではいかないのを実感していた。 ナイフで襲いかかる男、その手はマリナに払われ地面に落ちる。
それからも男の攻撃を受け流し、地面に倒し続けるマリナ。
時にはパンチとキックを交えて柔軟に戦うが、何回も攻撃の応酬を繰り返す度に少しずつ疲れが出てきた。
時が経つ毎にそれは顕著になっていく。
(はあ、はあ……おかしいわ。こんなに早く疲れるなんて……訓練より激しく動いているから……?)
疑問と疲労を頭の中で振り払おうとするが、一瞬のモーションの鈍さを男は見逃さなかった。
「もらったぁぁ!!」
「しまった!」
男は逆にマリナを投げ飛ばすとナイフを拾い、コートを縦一閃に切り裂いた!
「いやぁぁ!」
「ほお、皇女、いいもん着てるじゃねえか。」
コートの下にはあのビキニ状スーツを来た姿。 アクバルが心配で急いでコートを羽織ってきた。
「どれ、どんなかんじなのかねえ、マリナ様の素肌……」
「いや、やめて!」
震えている様は普通の女だった。もはやあの冷静さは吹き飛んでいる。
体力の減少も止まらず、息が激しくなっている一方だ。
「はぁ、はぁ……」(さっきより疲労が酷くなってきてる……)
「やめろ!マリナ様に酷いことするな!」
そこにやってきたのはアクバルだった。
「アクバル、なぜここに!?」 「俺を、助けようとして戦いになったから気になって……お前、やめろよ!」
「ほお、ガキがいい度胸だな、まずはお前からだ!」
アクバルに襲いかかる男。
咄嗟に少年の前に出るマリナ。
勢いで放ったキックが相手を吹っ飛ばすが、体力の消耗は誤魔化せず、フラフラしている。細い肩を揺らして息をする。
疲労を現すように何滴もの汗が大地に滴り落ちる。
「はぁ、はぁ、負けるわけには……」
(これではアクバルを守りきれない。もっと冷静に……
明鏡止水は……)
疲労と焦燥を無視し、あの原っぱでの戦いを思い出し、再び頭が冴え渡る皇女。
全身に意識を集中させ、頭に幸せな思い出を浮かべる。
今は亡き家族との日々、シーリン達友人との思い出、ファイターに合格した日、喜んでくれる国民の顔。
その全てが彼女を落ち着かせ、穏やかにしてくれる。
そして、身軽さのためにコートを脱ぎ捨てたその体は少しだけ淡い色に輝いていた。
日の光に照らされた麦のような薄い金色……
銀色だったビキニまでも同じ色に変わり輝きを放つ。
「お前……一体……?」
「マリナ、様……?」
他の二人はただ驚き目を見張るしかない。 「この、早く倒れろ!」
飛んでくる拳を俊敏な鳥のように軽々と避けて、腹に凄まじいパンチをぶつける。
「うわぁぁぁ!!」
そしてよろめく相手の肩を掴み、大地に投げ飛ばす。
その音に木々に止まっていた鳥達は逃げ出す。見守るアクバルは茫然とする。
男は強かに打ち付けて気絶してしまった。
「あの、マリナ様!!ついにやったね!!」
「……アクバル。」
駆けて寄ったアクバルが手を伸ばした時、マリナの全身から光は消えて、力なく少年の上に倒れていった。
「うわ、マリナ様!ちょっと……!!」
金属のビキニに包まれた肢体は汗を大量に流しながら少年の真上で眠りについた。
どこか苦しみを見せる表情で…… EP7
「マ、マリナ様……」
いきなりのことに驚くアクバル。
彼より背が高いとは言えマリナは軽かった。重みは感じない。
(な、なんか前にコクピットに入った時も思ったけど、肌柔らかいな……
でも体型は締まってるし……
元々いい匂いがするし、今は汗かいてるけど嫌な感じはしないし。ドキドキする……)
「いけね、なに考えてんだ俺は。」
不謹慎さに気付いて首を横に振ると、彼女を肩に担いでさっきの酒場に入り、そこの電話で王宮と警察署に報告した。これで敵の男は逮捕され、気絶したマリナはアクバルと共に王宮に運ばれた。
王宮の医務室にあるベッドに横たえられるマリナ。
シーリンは解除用リキッドがなくなったのを医師達に告げると、メタルスーツを開発推進した大臣達を電話で呼んだ。
その間、念の為医師はメタルのスーツを外そうとするが
「取れないっ……並大抵の人間の力では無理か……ファイターでなければ。
……もしかして、皇女の疲労はこれが原因なのでは?」
心配するアクバルの隣にいたシーリンは不穏な表情で頷く。
程なくして、スーツ装着テストにマリナを読んだ大臣とメカニック達を連れてくるシーリン。
彼女は疑惑と嫌悪に満ちた目を彼らに向けていた。 中心的な大臣は普段の落ち着いたムードを崩さないながらも申し訳なさそうに
「いや、このようなことになるとは。
メタルスーツの開発は完璧だった筈ですが……
危険性に気付かず我が皇女にこんな苦しみを……
本当に面目ない。」
彼の目配せでメカニックがマリナのビキニ部分に液体を垂らした。
皮膚を傷付けずに少しずつ溶けていく液体。いざという時のスーツ解除用のリキッドだった。
「マリナの部屋にあった解除リキッドがなくなっていたんですよ。
心当たりありません?」
それとなく尋ねるシーリンを見て首を横に振る大臣達。
「皇女を初めとした皆さんに御迷惑を御掛けしました。私達は一旦引き上げます。」
帰っていく一同をシーリンは厳しい目で見つめていたが、直属の部下に目配せする。彼は大臣達とは距離を取りながら後を着けていった。
部屋の内側と廊下にはボディーガードを数名付けてある。
そしてシーリンは医師からマリナの着替えを受け取ると、静かな声でアクバルに
「あなたも一旦借りている部屋に戻って。」
「うん……」
脱力したように戻るアクバル。
やがて全て溶けて消えてしまうと、一糸纏わぬ姿になったマリナの汗を冷たいタオルで拭き服を丁寧に着せた。
「ごめんね、マリナ……」
横たわる彼女の手に自分の額を重ねた。その目には雫が…… 「シーリンさん、わかりました。やはりあいつら仕組んでいました!」
一時間程してシーリンの部下がRCレコーダーを持って戻ってきた。
いつになくガタッと立ち上がるシーリン。マリナを起こしたかと思い、まだ寝ている彼女を見て安心すると部下に向き直ると、ボディーガード達にその場を任せて部屋を後にした。
「そう、それでは私の部屋に行きましょう。」
二人は録音を真剣に聞いていた。
あの大臣達とメカニックの声が聞こえてくる。
彼女は部下に命じて、彼らの仕事部屋のドアに盗聴機を付けさせた。
例え外側に付けても部屋の内側の音声を録音できる性能だった。
『極度の感情の昂りにより疲労を与える金属。メカニックさんは目の付け所が違いますな。』
『しかし、上手くいきましたな。皇女の汗のかきよう。あのスーツかなりのものですね。
目の保養にもなりますし。メカニックのあなた方のお陰ですよ。』
『お褒めに預り光栄です。それにしてもあなた達はそんなに女性の王様がお嫌いなのですね。
私は報酬をもらえば良いですし、男女どちらでも気にしないのですが。』
『ええ、ずっとアザディスタンは男が強い力を持っていた。それをあの娘が皇女になっただけでなく、ガンダムファイターにも……
男の立つ瀬がないと思いましてな。あのシーリン達の一派からは保守派などと言われ嫌われてますがね、ハハ。』
『まあ、そのお陰で新しいスーツの研究費も頂きましたしウィンウィンですがね。
そう言えば、彼女が次のファイトに負けても新しい男性のファイターを用意していると聞きましたが、その時は是非とも私を頼ってください。
私が彼に新しい装備を作りますから。』
『お願いします。』
シーリンは腕を震わせた。国のためにずっと歯を食い縛ってきたのに、男のプライドの為に国の足を引っ張るばかりかマリナを苦しめたのだ。 「こいつら……本当に……」
部下はその様子を見守っていたが、そこにもう一人部下が現れUSBメモリを出した。
「ここには、あのスーツのハッキングデータがあります。保守派大臣の差し金でしょうが、とんでもないカラクリがありました。」
「……どんな?」
PCに接続すると、詳細データが表示された。
「……シーリンさん、落ち着いて聞いてください。
このスーツはユーザーの極度の闘争心を関知すると、その体力を減少させるスチール効果があるのです。
……だからその、冷静さや明鏡止水の状態になっても闘う意思が強過ぎれば危険なことになります。
訓練では問題なくても、いざ実戦になるとスチール効果が発動するというものです。」
「……あいつら、よくも……」
ガタッ……!
その時、ドアの向こうに音がした。用心深く開けると……
「誰……マリナ?」
服を着た皇女がボディーガード数名と共にそこにいた。
まだ疲労は完全に取れたわけではないが、顔色は少し良くなっている。
彼女の顔は悲しさと悔しさで溢れていた。
「シーリン……全部聞いたわ……あの人達、私を陥れようと……」
「シーリンさん、マリナ様がどうしても言うので……」
「ええ、私も大臣達が怪しいと思って、シーリン達が調べてくれていると聞いて、無理を言ってボディーガードの人達に連れてきてもらったの。」
シーリンは全員を部屋にいれると、旧友をそっと抱き締める。 「……今回のことはスーツテストを止められなかった私にも責任があるわ。
ごめんなさい。」
「いいのよ……私も気付かなかったし……あなたはいつも通りでいて、お願い。」
そのやさしい声に鉄の女と一部から噂されたシーリンは唇を噛み締めて、重く頷いた。
涙が流れるのを止められず顔を反らす。
泣いているのを見られるのに慣れていないのだ。
マリナは旧友のブルネットを優しく撫でて頭に顎をそっと乗せていたが、やがて上げた顔は「指導者」のそれになっていた。
シーリンも雰囲気の僅かな変化を察知してマリナを見つめる。
「皆さん、お願いがあります。録音テープにあった新しいファイターの存在、もしかしたら新型のMFも用意されているかも知れません。
だから……」
その願いを否定するものはいなかった。 EP8
マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。
その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。
「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」
メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて
「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」
トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。
「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」
ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。
背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると
「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。
明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。
但し、ガンダムは使うな。今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」 「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」
「まあ、君の父上のことは残念だった……」
トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。
「事情は全て聞かせてもらったわ。」
もう一つの声はシーリンだった。彼女と数人のボディーガードは銃を構えてこちらを睨んでいる。
彼女はRCレコーダーを再生させると、先程の会話が流れていく。
リーダーの大臣は悔しげに拳を握る。
「調べられていたか……」
次の瞬間、マリナはしなやかな動きで大臣の腕を掴み、一瞬の内に地面に叩き伏せた。
「ぐわぁ!!」
皇女の水色の瞳は落ち着きと共にどこか哀しげに見つめる。
「残念でした……みんなの力で国をされない発展させてきたのに……
あなた達が歓迎してくれないなんて……」
「当然だ、ずっと男が国をまとめてきたんだ。最近現れた小娘に……ぐぅぅ……」
マリナは冷然とした態度で腕を捻った。
「私は国のみんなが好きです。
それに、女性も含めて社会で活躍できるようになった現在(いま)も……
でも、このように邪魔をする人達には断固戦います……ファイターである前に皇女として。
」
「ほう、いいねえ。その気合い。何も恐れてない瞳。倒し甲斐があるぜ。」
前に出てきたのはワインレッドの髪をした青年だった。 「……あなたですね、新しくファイターになるのは。」
「ああ……ギルガメッシュ・サムーンだ。覚えておけ。」
両者の間に冷たい熱気のようなものが走った。
次の瞬間、二人の拳がぶつかり合う。
そして、猛スピードで戦いを始める二人。
ギルガメッシュのパンチが飛んでくるが、マリナはそれを受け流し投げ飛ばす。
次の瞬間、ギルのキックが目にめ止まらぬ速さでマリナを蹴る。
技の応酬だった。
一方、こっそり逃げようとする他のメカニックや大臣達。
「逃がさないわ。」
シーリンは敵のボディーガードの銃弾を素早く避けて、急所を避けつつ射撃をして攻撃。
大臣達に素早い動きで追い付くと、彼らを合気道の投げで叩き伏せていく。
「ぐわぁっ」
「……マリナの痛みはこんなものではないわ。しっかり感じなさい……」
更に腕を捻り上げると、ギルガメッシュのトレーナーが襲いかかる。
しかし、その動きを避けて倉庫の壁に向かって投げ飛ばす。
「このっ、女に負けるとは……」
「女を甘く見るからでしょう。私も一応トレーナーよ……!」
そして、マリナを見つめるシーリン。
(きっとあなたなら勝てるわ……!私たちの希望だもの…… そして、マリナとギルガメッシュは互いに力をぶつけ合い少し息が荒くなっていた。
「中々だな。でもあんた、昨日もっと疲れてたんだろ?回復が早いなんて恐れ入るぜ。」
「……ええ、あれくらい簡単に復活できなければファイターの資格はないわ。
あなたも相当タフね……」
男は演技ががった喋り方で挑発的に続けた。
「疲労が溜まるビキニスーツならもっといやらしい息づかいが聞けただろうな。おしいぜ。」
一瞬怒りが湧きそうになるが瞬時に冷静になり、キックを繰り出す。よろめいて後方に下がるギルガメッシュ。
「……っ、あのシステムは外したわ。」
「そうかい、それじゃあ皇女がいつもの調子に戻った祝いに始めるとしよう。メインディッシュをな。」
ギルガメッシュが携帯型起動スイッチを押すと、自動的に倉庫から飛んできたガンダムオーレス。
「ええ、終わらせるわ。」
マリナもガンダムファーラに乗り込む。[newpage]
身に付けていたものを全て脱ぎ、全裸になるマリナ。
(シーリンも、みんなも私のために力を尽くしてくれている。
国がまた男性中心になれば、誰もが輝ける社会ではなくなってしまう……
絶対に、あんな人達に負けない……)
ってところ次の瞬間、心を落ち着かせ目を閉じる。今胸の内にあるのは闘いだけ。それ故に冴え渡る心。
胸に手を添えて、ほんのりと脚を開いてコクピット中央に立つ。
「モビルトレースシステム起動。」
布が凄まじい勢いを伴い降ってくる。 肩から腕、胸、脚……ありとあらゆる場所を瞬時に覆い尽くす巨大な布。
冷静な顔は圧迫に対し悩ましいものになり、豊かな黒髪を柳の葉のように揺らす。
「キィ、キツイ……でも、みんなのためを思えば……」
亡き家族、守るべき国民達、慕ってくれるアクバル、支えてくれるシーリンと家臣達……
みんなのことを思い浮かべると自然と身体に力が入り、両腕を鶴のように広げる。
「う、うぐっ……このぉぉ……!」
布を千切り纏わせる。
「はぁぁぁぁ!」
身体を反らし、まるで空気椅子でもしているかのように腰と膝を曲げて力を込める。
「いやぁぁぁ!!」
尻を突きだしアナルにグイッと遠慮なく入っていく布。
「はぁぁぁぁ……!!」
膣にも入り込む布。前後からぐいぐいと刺激されるが、下半身に力を集中させ、
目をカッと見開くと両足を股が割けると思わせるほど、交互にハイキックをして布を千切る。
こうしてスーツなら装着を完成させた。
「さあ、いきましょう。国のために絶対に負けないわ。」
「いいね、楽しませてくれよ。皇女さん。」
装着を終えた二人は機体越しに睨み合う。
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 「ハアァァッ!」
槍で襲いかかるマリナのファーラ。それを太い棍棒で受け止めるギルガメッシュのオーレス。
「甘い!!」
ギルの操作で棍棒のスイッチを押すと先端から斧の刃の形をしたビームが発生し、槍の先端を焦がす。
瞬時に後ろに下がるマリナ。
「斧……それがあなたの武器なのね。」
「そうだ、幾多のファイターに勝利するため。そしてお前に勝つためにな!!」
凄まじいギルの猛攻にも動じずに敵の刃を避け、槍と合気道の投げ技・捻り技を駆使して反撃するマリナ。
一連の体捌きに何とかついていけるギルの反射神経とスピード。
正に競り合いといった光景だった。
「やるじゃねえか!大臣達が見せてくれた映像で知ってたが、実物ともなると違うな!」
その声にどこか好戦と憎しみを感じずにはいられないマリナ。
「どうしてあなたはそこまで戦いを……
あなたのような人にはこの国を代表する資格は感じられない……」
「資格、あるさ。男であることと、力と目的があること。それだけで十分だ!!」
想像していた通りの言葉に嫌悪を感じながらも淡々と、しかし真剣に返すマリナ。
「男も女も関係ないわ。大切なのは国の未来よ。」
「関係ない、か……あるんだよ。おれにも、親父にも……」
「……?」
苦虫を噛み潰すような物言いに違和感を覚えながらも素早く槍でオーレスの腕、脚、時には後ろに回って背中を攻撃するマリナ。
「ぐはっ!……この……舐めるなよ!」 頭に血が登ったような物言いをすると、オーレスの肩、腕、胸、脛、それらの各部からミサイルが発射されファーラの全身を狙う。
「きゃぁぁぁ!!」
体にミサイルの与えた衝撃と熱さを禁じるマリナ。
「はぁ、はぁ、……危険だわ。距離を取らなきゃ……」
弓矢でオーレスに激しい攻撃を加えてから一旦一キロ程離れるマリナ。
心を落ち着かせ目を閉じる。冴え渡っていく感覚。
頭が澄んで白くなるようなあの状態になり弓を構える。
「この射撃武装にはこんな機能もある。もっと食らえ。」
再び発射される複数のミサイル。しかし今回は一つ一つが異なったベクトルに舵を切りながら向かっていく。
まるで群れを離れて巣立っていく鳥達のようだ。
あるものはマリナの右に、あるものは左に、背中や斜め上に移動して飛んでいくものもあった。
「囲むつもりね……」
あらゆるベクトルから狙う戦法。遠距離戦としてかなりの効果を持つものだ。
それでもマリナは表情一つ変えない。
寧ろ獲物を狙うハンターのように弓を携えたまま。
「ホーミング、タップリ味わえ、センパイ……」
目と鼻の先にあるミサイル達。
それらを素早く撃ち抜くマリナ。時に撃ち損ねるが、武器を持ったまま肘で払い落とした衝撃で破壊した。
合気道の訓練の傍ら、学んだ戦法だった。
「やるな……だが……」 ギルは猛スピードで斧を振りかぶり突進する。荒々しいだけではなく、マリナの微細な動きを観察し予測している。
「……させない……」
すっと目を閉じて集中力を高めるマリナ。
心の底から真っ白に、クリアになると槍を脚目掛けて突き出そうとする。
「この!」
ギルがキックをする直前、マリナはすっとガゼルのようにジャンプして重火器が入った肩を槍の先端で突き刺した。
「ぐ、おのれ……!!」
そのまま敵の肩を勢い良くキックして頭上に飛ぶ。
「よくも、踏み台に……!!」
「覚悟しなさい!」
雨のようなアローの嵐。それを幾つかが降りかかるが傷付いたのは肩と腕大半。
失格を避けるためか他国以上に頑丈に作られた頭はほぼ無事だった。
そして、斧を回転させ矢の幾つかを弾き返すギルのオーレス。
パワフルさと繊細で柔軟なモーションが合わさった見事な斧捌き。
「きゃぁぁぁ!!」
ダメージ受けつつも体勢を立て直し弓を槍にチェンジさせ突撃するマリナ。
斧で受けとめるオーレス。互いに一歩も引かない鋼の攻防。
「なぜだ、お前はそこまでして闘う?女であるのに……!」
「関係ないわ。私は皇女として皆に幸せになって欲しくて……」
「その言葉、鼻につくな。俺には、国よりも、負けていった男の方が大事だ……!」 「負けていった男……」
次の瞬間、マリナは戦場の空気が一瞬で変わったのに気付いた。
何か鬼気迫るものが張り詰めて自分を捕らえるような気がした。
金縛りではないが、敵の男にはそれを感じる。
ギルの息は上がり、声はまるで地の底から出すような低いものになって……
「俺の親父は、ファイターの選考で女に負けた……
アザディスタンはずっと男が英雄視される国だったのに……!
怨みは俺が晴らす……!!」
「…………」
何も言えずに黙っているマリナ。
アザディスタンでのファイター選考は、国の発展のため女性の活躍を目指す改革派の力も大きかったので、候補者には女性も数人いた。
彼女は元々性別に拘らなかったので、男だけが持て囃される状況が哀しかった。
だからギルの言葉にも哀しみと呆れを覚えていた。
「はぁぁ!!」
「!?」
次の瞬間、一糸乱れぬ速さで猛禽類のように襲いかかるオーレス。
彼の言葉によって反応が遅れたマリナはギリギリで斧を受けとめるも、パワー不足が祟って押し返される。
「親父は、あれからも格闘家を続けながらも落ち込んだまま、だから俺が、屈辱を晴らす……!」
「……ずっと、そういう気持ちで戦ってきたのね……。でも、苦しいだけだわ……」
マリナは意識を集中させると目を閉じた。 (私が選考で勝ってきたファイター達も同じ気持ちだったのかしら……
悔しがっていたのは目にしたけど、ここまでだったなんて……
それなら私は絶対に……)
「終わりだ!!」
ギルの猛攻に身動ぎしないマリナの身体は少しずつ白金色に輝きを増して、ガンダムファーラも同じ色になっていく。
「何だ、これは!!」
突然の事態に驚くギルに構わず、凄まじいスピードで向かうファーラ。
地上で見守るシーリンも叫ばずにいられない。
「あれは、明鏡止水……!マリナ、貴女って人は……!」
「はぁぁぁ……」
「うぐっ!」
槍の攻撃に押され圧倒されるギル。
パワーもスピードも、精度も段違いだ。
「ギル、眠りなさい……」
どこか優しさを含んだ声で告げるマリナ。
槍はガンダムオーレスの頭部を貫き、その機体は誰もいない地上に落下していく。
「ぐわぁぁぁ!!」
悲鳴を上げるギル。遂に激痛と衝撃で意識を失う。
それを察知するとマリナとファーラから輝きは消え、元の状態に戻った。
ギルとそのトレーナーを含む保守派の大臣達は反逆罪で逮捕された。
こうしてマリナ達のファイトを邪魔する者はいなくなった。 「貴女、ああいう風になれるのね。マリナ。教えた側の私も驚いたわ。」
「……ギルガメッシュの気持ちを知った時、ああなったの。
シーリン、私明日もこれからも勝ち抜くわ。そうすれば皆が男女問わず前に進めるようになるわ、きっと……」
マリナの目元は穏やかだった。 EP10
決戦の日、砂漠で向かい合う二人。
眼帯をしたレザーはボキボキと拳を鳴らしているが、対するマリナは落ち着いた佇まいで相手を見ている。
「姉ちゃん、あれから疼くんだよ。あんたにやられたこの片目が。」
「……あなたをそうしたのは私です。しかし勝たなければいけません。」
二人ともガンダムを呼び出すとコクピットに入った。
レザーはニヤニヤと笑っている。
「あの姉ちゃん、今頃目茶苦茶驚いてるだろうな……」
一方マリナは素早く全裸になると、コクピット中央に立った。……その瞬間……
「きゃあっ!!」
真空刃のようなものがマリナを襲った。
程好く引き締まった腹から血が流れる……
不幸中の幸いか、ギリギリで頭への攻撃は避けられたが、傷付いたそこを押さえて見つめた先には細身の黒装束を身に付けた男が立っていた。
手には彼女の鮮血に染まった刃物が握られている。
「あなたは……」
「俺はエジプトの殺し屋。レザーに雇われたエジプシャン忍術の使い手
しかし美味しい仕事だ。皇女様の、それも素肌を拝めるなんてな……」
「殺し屋……どこまでも卑劣ね……」
卑劣という言葉の意味には勿論、自分の産まれたままの姿を見られた恥辱も含まれていた。
胸と股間を隠し、白い肌を赤に染めて唇を噛んでいる。 「と言っても殺しはしない。レザーにもファイターとして止めを刺したいプライドがあるからな。
少しでも弱らせて欲しいって話だ。」
「そんなもの、プライドではないわ!」
珍しく語気を強める自分に気付き頭を冷やすマリナ。
(いけない……ここで怒っては相手の思う壺だわ……
私と、みんなの努力が水の泡になってしまう。)
少しずつ赤みが引いていく皇女の柔肌。
向かってくる相手の動きをかわして肘にチョップしてから投げ飛ばす。
「ぐはっ!」
衝撃で気絶する殺し屋。
「闘いを汚さないで……」
そのまま合気道の要領で相手を砂漠に放り投げると、完全にハッチを閉めた。
「……忘れなきゃ。モビルトレースシステム起動!」
凄まじいリングが下りてくる。
全身を覆うように張り付いていくスーツ。これがマリナの羞恥を忘れさせてくれる気がした。
しかし性的なことには潔癖で繊細な彼女。
見知らぬ暗殺者の視線に照らされた体はスーツの与えるいつものプレッシャーに一層ナイーブに反応してしまう。
控え目な美乳を布でホールドされて、小刻みにピクピク動く華奢な全身。
「い、いやぁぁぁ!!」
乳首は自ずと激しく主張するのを自覚して頬を赤らめる。 「キ、キツイィィィ……!でも、負けない……!!」
既にいない暗殺者を殴るつもりで、握り拳を宙に振り上げて布を千切る。
「いたい、このぉぉ…………!!」
切られた腹部から出血が滲み、蒼系スーツと混ざり合い、赤みの強い紫色になる。
それでも耐え胴体を激しく動かし、布を上半身に定着させた。
見られた羞恥は未だ僅かに残り、スーツに股間とアナルを締められれば、脳と下腹部から熱が込み上げるような感覚を禁じ得ない。
「ここも、見られたのよねぇ…………!
でも、切り替えなきゃ……
ハッ……!」
グイグイと食い込み摩擦を無遠慮に与えるスーツ。
僅かに汁が漏れて、スーツを濡らしたのを知るが構っておれず両足を強かにスイングして布を千切る。
「ふぅ、何とか終わったわ……!
正直お腹の傷が少し気になるけどあの時に比べればどうということはないわ……」
彼女の頭を過ったのは、あのビキニスーツで苦しんだ記憶。
ファイターとしてあんなことになるとは思っても見なかったが、あれ程の疲労を思えば今のダメージをあれこれ言ってはいられない。
「さあ、いきましょう。」
二人の声が重なる……
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 EP11
時は少し遡り、マリナが砂漠に出撃した少し後……
アザディスタンの少年アクバルはマリナの王宮にある小さな部屋でパソコンを開いていた。
彼はマリナと会った以降プログラムやカメラ機能の勉強を少ししていた。
(皇女のスーツ装着を目の当たりにしてから……というのが正確だが。)
それを活かしてやはり個人的にファイトのサポートをしようとしていた……はずだった。
「俺もマリナ様の力になるからな。」
少年らしくエッチに笑う彼。
実はマリナの乗ってきた小型飛行船とガンダムファーラに小型発信器と小型カメラを付けており、いつでもパソコンを通して彼女の様子を見れていた。
「一国民としてマリナ様の様子を見守らなきゃな。……とその前に……」
言い訳のように言うと、キーを操作してもう一人の女性ファイターの姿を拝み始めた。
実はマリナの機体だけでなく、彼女のものにも同じ装置を付けていたのだ。
「あの人のことだからマリナ様を気遣ってるはずだし。
それに……皇女様と甲乙着けがたいスタイルだからな。」
件の彼女は純白のイナクトに乗っていた。
それもモビルトレースシステムを搭載したタイプ。
「さて、行きましょうか。」
(今のマリナならきっと……
だけど敵はあの男……卑劣な罠があるに違いないわ……!)
マリナの秘書・シーリンはワイヤーで登っていった。
鋭く冷静な目にはマリナへの友情と心配の念が込められていた。 いつもは滅多にその思いを口にすることはないが、今回の一連の出来事があったのだ。今回のような影のサポートに及ぶのも無理はない。
……で、それを知りつつも男子特有のエッチな気持ちに駈られて彼女の様子をパソコンで盗み見るアクバル。
「許してくれよシーリン。俺は皇女様のサポーターだから、秘書のサポートも必要だからさ。
……どれどれ?シーリンさんの勇姿は、と。何だこれ?」
アングルやズームを巧みに使いながら、画面に食い入るように迫る少年。
しかし彼女が持った薄いケースに首をかしげる。
「まあいいや。それはともかく始まった♪」
普段着ているグリーンのスーツ、白い下着をアッサリ脱ぐと、スマートな肢体が姿を見せた。
ファイターのマリナ程ではないが、僅かに引き締まった体。
モデルのような細いボディー。
軽いスポーツを嗜む女性といったスタイルだった。
「おお、流石シーリン♪抜群のスタイルだよな〜眼福眼福。
皇女様より胸大きくて背が高いから迫力あるな〜」
昂り始めるアクバル。アソコも大きくなりピクピクしている。
然程筋肉がないこと以外は、マリナよりいくらか迫力のあるボディーをしている。
(外交相手の政治家とは違った意味で)王宮と多少の縁を持ったことは年頃の少年にはかなりのメリットだろう。
そして例のケースから取り出したのは半透明の布二枚。
MFとトレースシステムに明るくない彼は不思議がる。
「あれは一体……?」
「デミモビルトレースシステム起動!」 コクピット中央に立つと凛とした低い声と共に布の一枚をその豊満な胸に貼り付けた。
それは見る見る内に面積を拡大し、彼女の腹、腕に広がっていく。
「う、いやぁぁぁ……」
「な、どうしたんだ。呻いちゃって。
いつもはあんなにしっかりしてるのに。
……それにしても、あれがスーツ?」
広がるだけでなく、キュウキュウと彼女の上半身を締め付けながら纏われていく布。
下腹部を覆えば当然の如く女性器にも伸びて入り込んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、いざという時の為に、ガンダムファイターに準ずる力を持つ者や装着に不馴れな軍人に用意されたシステム。
小型布製パッドにより、あまり大きな負担をかけずに纏えるものだ。
スーツはファイターの性器を守るため、そこに徹底して密着する必要がある。
しかしそれが偶然にも、苦しみと同時にある種の喜びを与えてもいるのは否めない。
「い、いやぁぁぁぁ!……ううう……!」
思わず内股になりワナワナと震える才女を見て、アクバルは興奮を禁じ得ない。
我慢の証がズボンにシミを作る。
そして思わず股間に手が延びる少年。
「あの冷静なシーリンがあんなに興奮してる……
シ、シーリン……俺もやばいよ……!」
今の彼女をガードするのは、両腕と胴体、女性の秘所。
素肌を晒している背中や下半身は心なしか震えている。
これからのことを思い羞恥しているのか期待しているのか…… 負担の少ないスーツの性質上、すぐに苦しみは消えるともう一つのパッドを見つめるシーリン。
「はあ、はあ……!あとはこれね……」
それをゆっくりとアナルに嵌め込むと、キュウウウと音を立てて谷間に吸い込まれていく。
「き、きゃぁぁぁ!」
いつも動じない彼女の悲鳴に益々エキサイトするアクバル。
「す、すげえ。マリナ様も凄かったけど、シーリンも凄い……」
アナルにピッタリ張り付いたそれは勝手に尻全体を覆い、しまいには背中と両脚に延びていく。
美しい肩甲骨も、スラリとした脚も覆われて装着を終えた。苦しみもなくなり汗を拭うと……
「アクバル、見てるんでしょ?」
「え、何でわかったのさ!?」
いきなり焦り出すのを尻目に彼女は淡々と続けて。
「小型のメカがあったから。あんなの簡単にわかるわよ。」
怒るでもなくクスッと笑う彼女にはマリナにはない余裕が見てとれた。
それがまたアクバルをこそばゆい気持ちにさせて頬を赤らめさせる。
「さあ、今から行くわ。」
既に表情を切り替えて勢い良く出撃するシーリン。
そこにはまだ見ぬ敵を探し求めるハンターの色があった。 EP12
シーリンはイナクトのコクピット内のモニターからマリナの様子を見守っていた。
アクバルのサポートの下、ハッキリとした解像度だった。
ファイトの場所を目指す飛行船内のマリナの姿が見てとれた。
それはいつもの健気さだけでなく、今までのファイトに裏打ちされた自信が感じ取れて旧友としてフフッと笑みを漏らした。
そこには生来の淑やかさだけではない強さがあった。
「こんなに強くなって……」
「おっ、シーリンもそういう顔するんだね。」
アクバルの言葉に一瞬顔を強張らせて、どこか凄みのある笑顔を作ると……
「アクバル、ありがとう。あなたのお陰で助かるわ。
でも、彼女にあなたの覗きを知らせるら……」
「わ、わかったよ。」
黙り込むアクバル。
(スーツ装着を見られてもビクともしなかったのに、笑顔見られただけでこれだもんな……
よくわからないや……)
一見冷徹に見えるシーリンは自分の役目だけでなく、友人を助けるのにも全力を尽くし集中力を傾ける。
だからこそ、スーツ装着を見られても動じないのだが、普段の自分とは違うギャップを見られるのが恥ずかしいのだろう。
マリナを乗せた小型飛行船と並んで飛行する自動操縦モードのガンダムファーラ。
しかし、何か細いワイヤーがどこからともなくガンダムの胴体にマウントされると、細い人影がスルスルと内部に入っていった。
「あれは一体……? マリナ、聞こえる!?今あなたの……
…………何? 通信がジャックされてる……」 急いで通信で声をかけようとするが、シーリン側の画面は砂嵐。一向に繋がらない。
マリナのガンダムコクピットにも通信しようとするがやはり繋がらない。
「どうしよ、シーリン……」
「落ち着きなさい、アクバル。今国の自衛隊に救援信号を送ったわ。」
(あの敵パイロット、やはり卑劣ね。
スパイを送ったのね……)
少し時は流れてマリナはエジプトのファイター、レザー・クルスームが駆るガンダムグレイブと対戦していた。
「どうだ!」
レザーが放つ大型の砲弾。
それを時に交わし、時に手で払うマリナ。勿論弓矢で貫くのも忘れてはいない。
素早く近付き、ランスモードに変形させた武器を向ける。
(暗殺者にやられたお腹は痛むけど、今は大事になってないわ……)
傷付いた腹部に意識をある程度傾けながら闘うマリナ。
「この、噂には聞いていたがこの短期間に新しい武術をマスターするとは!」
「覚悟!」
「この!」
回転させた槍で突撃するが、交わされる。
「そんな!」
「強くなったのはお前だけじゃねえ!俺もお前にやられた片目を補うために動きを見切るテクを覚えたのさ!」
そして砂漠用のホバー機能を活かしてマリナの機体に突き進むレザーのガンダム。
ライトブラウンの砂塵をマリナに吹き掛けながら迫り行く鋼の巨人。 しかしマリナも負けてはいない。
この一週間に身に付けた冷静さを発揮し、ホバーの駆動音から正確に位置を割り出し槍を突く。
だが、ダメージは少しだけ。固い装甲に手こずり中々決定打を与えられない。
防御力もアップしたのだろう。
短期間にあらゆる面をアップさせるのは至難。
パワーやスピードよりも優先事項だったようだ。
「手応えが違う……なら、速さの源を!」
後退し距離を取ると、アローを放つ。
鋼の鳥のようにホバーの至る箇所に見える機械同士のジョイント部を撃ち抜くマリナ。
しかし、弾き飛ばされた無数のアローがマリナの元に飛んでいく。
「やはり全てタフなのね。」
手捌きで凪ぎ払った瞬間……
「喰らえ!」
「きゃあ!」
レザーのラリアットがマリナの腹部に決まった。
暗殺者にやられた腹部は少し開いて血が少しずつ流れていく。
「こんな時に……!」
しかし経験は裏切らない。すぐに頭をクリアにすると、迫るグレイブの腕を掴んで見事に投げ飛ばす。
「ぐわあ!!」
ホバー時とは比較にならない程の砂塵を四方に飛ばしながら熱砂に倒れるレザーのグレイブ。
「この……!」 何とか立ち上がり殴りかかるレザー。そこには最初に見せた見切りのテクはない。
更に腕を掴んでは投げ、倒れる直前にまた投げるマリナ。
砂漠に点在する岩場に当たった傷も手伝って、グレイブのホバー部分は破壊されていた。
脆くなったホバーを弓で跡形もなく撃ち抜くマリナ。
「もうすぐね……うっ、……」
弓を落としてしまうマリナ。
暗殺者にやられた傷はやはりファイトの妨害になっていた。
「あいつを雇って良かったぜ……」
ニヤリとするレザー。そして、巨大な鋼のケースを吊り下げたジエットがレザーの隣に降り立った。
「さて、換装型の本領発揮といくか……」 EP13
突如現れた箱に驚くマリナ。
「これは一体……?」
得意気に語るレザー。
「これはな、新しい戦場だよ。いや、あんたにお披露目するステージだ。」
「新しい?まさか……」
マリナは思い出した。レザーは初対戦で語った、ガンダムグレイブは様々なエリアでパーツを換装する特徴があるのを。
ホバーを破壊されたなら、それに替わる装備で対抗するということを悟った。
そして巨大な鋼のケースは砂漠の中にあって、砂漠ではない「ドコカ」……
レザーはグレイブの砂漠ホバーをパージすると、ファーラに掴みかかり怪力でケースに落としてしまった。
「きゃあ!ここは……水?」
ケースの底にはぶつからなかった。寧ろ冷たい水の中でプカプカ浮いている自分と機体。
「水中戦ね……」
「その通り、そしてこれがマリンタイプだ!」
ケースを運んだジェット機から射出されたパーツを装備したグレイブ。
背中にはエネルギータンクを内蔵したパックパック。
砂漠用に替わるパーツとして、水中用軽量エンジンを秘めた新たな手足。
薄いマリンブルーのモードだ。
勢い良く水中にダイブしてタックルするグレイブ。 「きゃぁぁぁ!!」
(何て突進力なの!それに水中は初めて……)
生身では泳げるがガンダムを用いた水中行動は未経験。
地上や空中とは違い、水がスムーズな動きを妨げている。
腹の傷も痛む。
吹き飛ばされた勢いを利用して壁際を蹴り飛ばし、水中で体勢を建て直す。
(冷静に……)
頭をクリアにして冷静になるが、初めてのシチュエーション。パーフェクトな冷静さではなく、明鏡止水には遠い。
(もっとメンタルトレーニングが必要ね……)
(このままでは外にある弓を拾えことも難しいわね。合気道だけでなんとかしないと……)
「あんた水中は慣れねえみたいだな。これがデビューにしてラストだ!」
「そうはいかないわ。ハッ!」
猛スピードで繰り出される砲弾をいなし、時にチョップやキックで破壊しながら接近するマリナ。
そして、腕を掴んで数回投げる。
「うわっ……!!」
と言っても壁や大地のある他のフィールドとは違い、ただ投げるだけでは意味がない。
できるだけ腕の捻りとベクトルを意識してケースの壁や床に叩きつける。
レザーとしては、ケースという鋼で囲われたフィールドを選んだのが裏目に出た。
マリナの技とケースの硬さが与える衝撃によりグレイブは所々傷付き、機体のシルエットは歪んでいく。
砲弾の発射口も幾つか破壊されていた。
「流石合気道をマスターしただけのことはあるな……!だが切り札があるぜ!」 グレイブが腰にマウントしていたライフルを構えると、放たれたのはビームでも砲弾でもなく、「水」だった。
今までの攻撃とは比較にならないスピードで鮫のように狙ってくる「水」。
「きゃぁぁぁ!」
ファーラの腹部にヒットすると、自身の腹の傷に応えて悲鳴を上げるマリナ。
「これは、一体……!!」
息を強めてフラッとする皇女。決して傷が広がったわけではないが、モビルトレースシステムは機体のダメージがファイターにも伝わる仕組み。
腹を押さえて傾けるしなやかな体。
「これはな、ウォーターガンだ。圧縮した海水を高速で打ち出す為のな。
皇女様にはキツいだろ。」
「本当に、卑怯ね……!」
沸き上がる怒りを押さえて何とか頭をクリアにしようとするマリナ。
一方シーリンのイナクトは確実に近付いていた。 EP14
暗殺者がマリナに倒されても、彼が仕掛けた通信妨害は解除されずに残っていた。
不安を抱えたままイナクトで飛んできたシーリン。
「マリナ!
レザー、相変わらず卑劣ね……!」
敵のやり口に怒りを燃やす彼女の近くに何体かのイナクトが現れた。
エジプト政府が雇った、ファイト開始以前に軍事や格闘に携わった者達が操る機体のグループ。
勿論、シーリン同様デミトレースシステムを使っている。
「やはりサポートがいたのね。来て正解だったわ。
しかし、ファイトに他人の手出しは御法度。
私はただ、レザーが用意しそうな邪魔物を倒してマリナを勝利に導きたいだけ。」
「あんたと皇女の関係は調べがついてる。
親しい間柄らしいからな、サポートに来ると思ってたぜ。
レザーのやり方は好きじゃないがこっちにも生活があるんでな。
サポーター同士のファイト、勝たせてもらう!」
「その言葉、そのまま返すわ。」
凄まじいスピードと合気道の洗練された技量で敵を倒していくシーリン。
鋼のオアシスに目を向ければマリナは苦しみながらも闘っている。
気付けば硬く手を握っている自分がいた。
(ファイターには手を貸すのはルール違反。でもあなたはきっと……!) 腹部に受けた海水の痛みに耐えている時、親友の機体を偶然目にするマリナ。
「シーリン!私のために……負けていられないわ!」
既に冷静さを意識し始めていた彼女のメンタルはポジティブさを増し、少しずつ生まれる余裕……
クールさを取り戻し、痛みを堪えてジャンプ!
咄嗟にグレイブの背後に回り、ウォーターガンを手刀で叩き落とす!
素早く構えるマリナにレザーは焦る。
「しまった!アジな真似を……!」
「お返しよ!」
「ぐわあぁぁぁ!」
弓と銃では僅かに勝手が違うが、普段のファイトで射撃はお手の物。
手足のパーツを装甲と手足に設置された銃口が破壊され、グレイブのモーションは鈍くなっていた。
マリナのような傷はないとは言え、圧縮・高速の海水に痛みと戸惑いを隠せないレザー。
「よくも……」
「エネルギー切れ?、仕方ないわ。」
心をクリアにしたとは言え偽れぬ息切れ。それでも力を振り絞り水槽の壁を蹴ってジャンプ。
それを背後から追うグレイブ。
「逃がすか……!!」
外に落ちた弓矢を拾うと水槽ごとグレイブを高速で撃ち抜いていった。
「ぎゃぁぁぁ!」 当たり一面金属と爆炎、そして水満たされた砂漠。
「はあ、はあ……!勝ったのかしら……明鏡止水になれなかったのが残念だわ。
……!」
爆炎からゆっくり立ち上がるグレイブ。
「まだまだだぜ。俺は終わっちゃいねえ……」
更に新たな飛行船がやってくる。
そこから射出されたのは、豪腕と両脚。
中破した水中装備をパージすると、新たなそれらを瞬時に装備したグレイブ。
その姿は最初の砂漠用装備とほぼ変わらない形状。
脚にホバーは付いているが、色はホワイトなので少し軽量なイメージを受ける。
「また同じ……」
「いや、一味違うぜ。野性動物の如く鋭いセンサーを備えたモードだ。
お前の明鏡止水とやらに対抗するためにな。」
「……いいわ。続けましょう。(ここまで来たらお腹の傷なんて気にしていられないわ。)」
ゆっくり立ち上がり、今までの幸せな出来事を走馬灯のように素早く思い返すと、次第に黒い髪は黄金色に、肌とスーツは薄い金色……所謂プラチナブロンドに染まっていた。
腹の痛みはあってないようなもの。 互いに迫っていく二体。
それを見つめるシーリン。
「マリナ、遂にやったわね……
あら?アクバル。通信接続直してくれたの?
ありがとう……助かったわ。」
シーリンのコクピットの右側スクリーンに映るアクバルの顔。
「ああ、俺もこれでもメカを多少は知ってるからね。あ、シーリンやばいよ!」
その声に反応すると、また数台のイナクトが飛んできた。
エジプトからの援軍だ。
「また何体も……いいわ、来なさい。ここはマリナの正念場なのだから。」
果敢に向かっていくシーリンの機体。 EP15
「邪魔はさせないわ!」
華麗な合気道と射撃で敵を撃破しようとするシーリンのイナクト。
しかし、敵のモーションはかなり繊細かつ正確。
しかも、機体のパワーも少し以前のものより上がっている。
「きゃあ!」
「今度の敵は更にファイト慣れしてるわね。エジプトの代表候補だった格闘家達かしら……」
腹部を殴られて砂漠に落ちるシーリンの機体。
ファイターほどの筋力はないので痛みはかなりのものだ。
落ち着いた美貌を歪ませつつ救援信号を送るシーリン。
いざという時の二段構えだ。
その間、砂漠の地面に射撃して、砂塵を飛ばし敵を翻弄するシーリン。
当たりを逃げつつサポートが来るのを待って一分もしない内にもう一機のイナクトが来た。
「何だ。たったの一体じゃねえか。」
「その一体が侮れないわ。」
瞬時に今の機体を捨て、新たなイナクトに乗り込むシーリン。
自動操縦させた状態で遠くに飛ぶ新型イナクト。それを敵も追う。
アクバルは通信でその一部始終を息を飲んで見守った。
(シーリン、また……)
突如今まで来ていたスーツを破り生まれたままの姿になるシーリン。
先の戦闘で美しい華奢な身体は汗に濡れて、少年を一層興奮させた。
「き、今日は何て日だよ……」 一方少しふらつきながらコクピット中央に立つと凛とした声で……
「モビルトレースシステム起動!」[newpage]降りてきたのはスーツの布ではなく、銀色の無機質な物体……リキッドメタルスーツだった。
マリナが以前付けたそれをイナクトに装備したものだ。
より自分のモーションを機体に反映させる、謂わば切り札。
但し、感情が昂る程ファイターの体力が減少してしまう諸刃の剣。
マリナの苦しみを目にした彼女は覚悟を決めながら臨んだ。
(マリナが明鏡止水を会得した今、私も感情に振り回される訳にはいかない……
いつも通りに闘って、素早く勝つ。)
「うぐっ……!」
冷たい金属はシーリンの胸に張り付き、肩甲骨までその面積を拡大していく。
より良いフィットを実現するため、正規のスーツ同様圧迫が凄いのだが、これはシーリンの為にかなりマイルドな強度に設定されている。
従って傷や骨折の心配はないが、今まで素人や準ファイター用のデミスーツしか着ていない彼女にはやはり負担だった。
「ひ、冷える……それにキ、キツイ……!!」
歯を食い縛るシーリン。苦しさゆえに少しずつ赤みを差す肌。
金属特有の冷たさにより一時的にできる鳥肌。
胸を覆うと、シーリンは膝に手を着いて息切れしていた。
「だ、大丈夫か、シーリン!!」
「ええ、何てことはないわ……」
思わず声を出すアクバル。それに苦し気に微笑んで応えるシーリン。
そして第二波が来た。新たなリキッドがシーリンの会陰にフィットした。 「あああぁぁぁ……!」
その冷たさにナイーブなそこはピクンとして、霰もない声を上げる。
会陰をセンターにして、膣とアナルに延びるそれに女特有の高揚を隠せないシーリン。
爪先を伸ばし、尻を突きだし下半身全体を震わせる。
「ぐぐっ、ぐ、やはり、キツイ……
でも、マリナの苦しみに比べれば……」
下腹部と尻を覆って装着は完了した。[newpage]振り替えって追ってくる敵を滑らかなモーションで翻弄し、時に投げ飛ばし、時に撃ち抜くシーリン。
「……流石ね、このスーツ。かなりの反映だわ。作った大臣達は酷い連中だったけど。」
残り三体になった敵。
彼等は相手のコクピット内をモニターで見ると目を輝かせた。
「うひょー、めっちゃ別嬪じゃねえか!」
「しかもあのスーツ、戦闘用とは思えねえ!」
「これは色々使えそうだな。」
口々に交わされる言葉を通信で聞いたシーリンは「やっぱり」という態度で呆れていた。
「終わらせるわ!」
しかし、今の敵は何れも熟練。ファイターの候補の中でも特に強いのだろう。
シーリンの攻撃を何度か受けつつも、基本的に隙のない攻撃で追い詰めていく。
「きゃぁぁぁ!」
ライフルによる射撃、パンチやキックを受け次第に消耗するシーリン。
凡そそれが10分程続くと、さしものクールな彼女も冷静さを欠いてくる。
「はあ、はあ……手強いわね。敵が送り込んだだけはあるわ。」 やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……
通信で語りかけるアクバル。
「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」
「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」
咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。
「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」
スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。
大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。
疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。
「後はこれを……」
液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています