(まずい、呪文の掛け直し、を……)

なぜわざわざ便意を抑えていたか。
答えは簡単、今日も野糞をする気でいたから。
頭の中で術式を組み、便意の抑制を試みる。だが。

ぐりゅるるるるっ……

「っ、ぐ、あっ、あぁっ!?」
(だ、駄目、術式が組めない…!)

直腸を突き刺す便意と腹痛の濁流が、彼女の邪魔をする。
なぜ、呪文の効果時間切れに陥ったか。
そう、彼とのトラブルに気を奪われていたから。

(……ッ、トイレ…!)

出したい。ウンコが、したい。
ここは学校の屋上だ。彼女の選んだ場所では無い。
便意に震える足を必死に動かし、下の階のトイレに歩き出す、が。

――グキュルルルルッ
「痛ッ、あぁっ……!」
(う、嘘…動けないっ…今動いたら、出るっ…!)

少し歩いただけで、足が止まる。腹痛と便意が、彼女の肛門を絶え間なく責め続ける。
足は内股になり、両足まで使って肛門を閉め、一歩も動けない。
元々彼女は快便だった。なのに便意をせき止めた。
溜め込んだ7日分のウンコが一気に襲って来たのだ、彼女にもう出す場所の選択権など存在しない。

「…っ、ぁ……もう、駄目………間に合わない…っ…」

蚊の泣くような声が、喉から漏れる。
屋上の、鍵のかからないドア。誰か来たら。見られたら。その冷たい感覚が体の芯を凍らせる。
元々外でするのが好きなだけで、見られたいとは思っていないのだから。


――――本当に?


―――――どくんっ。

「――ぁ―――」

どくん、と。一際大きな心臓の鼓動が聞こえた気がした。それは、シジルが便意に負けた証。
限界まで張り詰めた我慢の糸が、ぷつりと切れる。彼女の堤防が音を立てて崩れ去る音。

ぶううぅうぅぅぅっ!!ぶすーーーっ!!

長くて大きな、おならの音。

「あっ、ああぁぁっ…もう……出る、ダメ、ダメ………っ!」

喉から搾り出される、最後に残った理性の懇願。だが彼女の育てたうんこが従うはずも無く。