恭也は少しだけ苛立つ。清香がそんな目に遭うなんて、納得いかない気持ちが湧いてくる。
だが、同時に別の感情も芽生えていた。清香がスパダに挑んだ勇気。異文化に飛び込み、自分の限界を知った彼女の姿勢。
それもまた、清香らしい強さじゃないか。恭也は目を閉じる。
彼女がアフリカで何を感じ、何を学んでいるのか。もっと知りたいと思う自分がいる。

窓の外で、遠くの犬が一声吠えた。夜
はまだ深い。恭也はスマートフォンを手に持ったまま、返信の言葉を考え始めた。
清香に何を伝えたいのか、自分でもまだ分からない。
ただ、彼女の声が耳に残っている。
「元気にしてるかな?」と穏やかに尋ねるその声が。