恭也はスマホを握りしめたまま、ベッドに倒れ込んだ。
ディスプレイの光が、天井にぼんやりと反射している。
飛鳥の笑顔が、頭から離れない。
あの写真の中の彼女は、なんて眩しかったんだろう。
パレードの喧騒、色とりどりの旗、ファルキナ族の人々が笑顔で行進する姿。
全部、飛鳥の輝きに霞んで見えた。

飛鳥は、恭也のことをどう思っているんだろう。
友達?
幼馴染?
それとも、ただの一緒にいるのが楽な奴?

彼女の頭の中は、いつも社会運動とか、難しい本とか、わけのわからないアイデアでいっぱいだ。
恭也のちっぽけな片思いなんて、彼女の視界に入ってすらいないかもしれない。
「はあ……」恭也はため息をつき、スマホを枕元に放った。

目を閉じても、飛鳥の笑顔がちらつく。
パレードのあの瞬間、彼女が腕を絡ませてきたときの感触が、まだ腕に残っている気がする。
飛鳥の声、飛鳥の匂い、飛鳥のすべてが、恭也の心を締め付ける。
「Biracial Lives Matter」か。

異文化交流なんて、恭也にはピンとこない。
でも、飛鳥がそこにいるなら、きっと意味があるんだろう。
彼女が笑顔でいられるなら、恭也はそれでいいのかもしれない。

いや、よくない。
恭也は、飛鳥の隣にいたい。
友達でも、幼馴染でもなく、もっと特別な存在として。
でも、どうすればいいんだ?
悶々とした思いを抱えたまま、恭也はベッドの中で身を縮めた。
深夜の静寂が、部屋を包む。
ディスプレイの光が、かすかに揺れながら、恭也の心の波を映し出していた。