そうして1年が経過した頃、内容証明付きの封書が届いた。
 「契約を履行して下さい。内容は直接お伝えしますので、連絡お願いします」
 それが書面の内容だった。
 「私が行きましょうか・・・」
 一番年長のスタッフがそう言った。
 「いえ、私が行きます。代表が行かなければ門前払いされかねませんし・・・。ラバースーツの上から普通のトレーニングウェアを着れば大丈夫でしょう」
 こうして私は、当日指定されたビルの一室に赴いた。そこに現われた人物は仮面をつけており、しかも声は変声器で変えられていた。
 (私に招待を知られたくないのね・・・・)
 其の人物は、私にある契約書を示してきた。それには父の署名が書かれていた。内容は
 「2億円の資金を提供して貰う見返りに、マジックを行う」
 というものだった。しかし条件は信じられないものだった。
  ・マジックの内容は「拘束された状態でBOXに入りそこから脱出する」というもの
  ・拘束の仕方等はこちらで決定して当日に伝える。拘束もこちらで行う
  ・事故が起きてもこちらは責任は一切負わない
 (父は本当にこんな契約を・・・・)
 そう思ったものの署名は間違いなく父のものだった。契約を履行して貰わなければ裁判に訴えるというのが相手の主張だった。
 「確認したいことがあるので返事は2日ほど待って貰えませんか」
 そう提案すると相手は了承した。私はスタジオに帰ると、契約のことをスタッフ達に話した。