「さあ、到着よ」
 結月さんの声でワタシは目を覚ました。
 (いつの間にか寝てたんだ・・・。ここは車の中・・・?)
 「まずはこれを着せて、と・・・」
 結月さんはそう言うと私を立たせて、何か薄い灰色のものを着せた。
 「これはポンチョ型のレインコートよ。これでフードを被れば準備完了」
 「必要な事だけ言うわね。ここからショッピングモールまで歩いて」
 それだけ言うと、結月さんは車のスライドドアを開いた。私は半ば強制的に下ろされ、そのまま車外に出された。
すると、スライドドアが閉められ、私が乗せられていた車は去ってしまった。外は強めの雨が降っていた。
 (ここはどこ・・・?)
 訳が分からず、私は体ごと回転させて周囲の様子を見た。
 (まさか、ここって・・・!)
 あることに気がついた私の視界に赤色灯を回転させた消防車が見えた。私は咄嗟に近くの木の陰に身を隠した。
 「台風の接近に伴い、強風と大雨が予想されるため避難勧告が発令されています。住民の皆様は、速やかに非難をお願いします」
 そんなアナウンスが聞こえた。
 自分の置かれた状況に私は混乱していた。