>>782
最初に見かけたのは夕方の駅のホームだった
人の波の中にその足だけが浮かんで見えた
白くて細くて形がきれいで目を離すことができなかった
サンダルはまるで飾りのようだった
なぜか心がざわざわしてそれから毎日同じ時間に駅に通った

二日目も三日目もその足は同じ場所にあった
すらりと伸びたふくらはぎも軽く浮いた足の骨も記憶に焼きついた
何かを求めるように目だけが追いかけていた

思いきって話しかけたのは五日目だった
軽く笑ってこたえる声は落ち着いていて静かだった
名前も年も話さないまま会話は足りてしまった
それから毎日電車に乗る前に少しの時間をともに過ごした

どんな話をしてもあの足が気になってしかたなかった
ホームに立つたび視線は自然と足元へと向かった
風が吹くと肌が光るように思えた

ある日こんな言葉が落ちた
明日で最後になるの
それだけ言って彼女はいつものように笑った

次の日はずっとホームで待っていた
でも何分たっても姿は現れなかった
見覚えのある足も影もなかった