私が36歳の頃、妻の直子が事故で他界した。
一人娘は当時11歳。
妻の死後、娘との二人暮らしが始まった。
「もし父さんが再婚する事になったらどうする?」と聞くと、娘は抵抗があると言い「そんなに淋しいなら、私が母さんの代わりになる」とまで言った。当初は意味不明だったが、なぜかその言葉が印象に残った。
娘との仲は良好で、よく一緒に風呂にも入っていた。
だが娘が14歳、中学2年生になった頃に変化があった。顔は亡き妻に似てきて、芸能人に例えると女優の栗山千明似。
その日私はいつもより帰りが遅くなった。仕事が遅くなり、家に着いた時には午後10時近くになっていた。
 玄関で靴を脱ぎながら、「ただいま」と奥に向かって声をかけてみたが、返事はなかった。そのまま洗面所に行くと、浴室に明かりがついていて、ドアの向こうからシャワーを使う音が聞こえてきた。
 私はドアを開けると、娘の小さな背中が見えた。
 娘はシャワーを使って髪を洗っているところだったが、驚いたように振り返った。その拍子に持っていたシャワーノズルを落とした。湯が無関係な方向に飛び散り、浴室の壁を濡らした。娘はあわてて湯を止めた。
「びっくりするじゃない。急に開けないでよ」娘はいった。声が少し尖っていた。
私は謝った。謝りながら、じゃあノックでもすればよかったのか、と思った。「今帰ってきたところなんだ。風呂、俺も入っていいか」
「あ……あたし、もう出るけど」
「今日は残業で疲れたから、早く入りたいんだよ。」そういいながら私はもう服を脱ぎ始めていた。
 娘と一緒に風呂に入るのは久しぶりだった。
 全裸になり、浴室に入っていった。娘は顔を洗っているところだった。私は洗面器を使って掛かり湯をし、湯船に浸かった。
娘に仕事の話をすると「それは大変だったね」娘の口調はどこか上の空だ。濡れたタオルを絞り、髪と顔を拭いている。身体を捻り、私のほうには背中を見せていた。
 そのまま身体も拭き始めた。それで私は不審に思った。
「どうした。湯船に入らないのか。いつも髪を洗ってから、もう一度入るじゃないか」
「うん。今日はもういいから」背中を向けたまま娘は答えた。
 出ようとして娘が立ち上がった時だった。一瞬それがちらりと見えた。
「あっ、おい」と私は湯船の中から声をかけた。
 なによ、というように娘は首だけを回した。
「そこんとこ、生えてきたんじゃないのか」私は娘の下腹部を指差した。「ちょっと見せてみろよ」湯船の中で中腰になった。
「いいじゃない、そんなことどうだって」娘は反対側に腰を捻った。
「なんでだよ。見せたっていいだろ」私は彼女の腰に手を伸ばした。腰骨のあたりを掴み、自分のほうに引き寄せようとした。
「触らないでっ!」娘は私の手を振り払い、さらに肩をどんと押した。
 私はバランスを失い、湯船の中で尻餅をついた。
 娘は浴室を出ていき、ばたんとドアを閉めた。そのまま服も着ずに洗面所を出ていく物音がした。
 私はしばらく呆然とした。娘はもう父とは入浴したくない年頃なのかと思った。その後娘と話し合い、今後は別々に入浴する事にした。
その事があって以来、私は娘の肉体の成長を意識しないわけにはいかなかった。同時に娘に性欲がある事を認めていた。
続く