「どうしたのですか、宮沢さん。こんなところで」
「おお古式、奇遇だな。いや、ちょっと探し物をな」
「探し物? このあたりにあるのですか?」
「このへんで落としたかもしれないかと思ってな」
「弓道部の道場の前で、ですか。宮沢さんが通る場所ではないと思いますが」
「いや、俺の勘がこのへんだと言ってる。小さい紙切れなんだが、見た覚えは無いか?」
「毎日のように何かしらは見てますが……」
「うーん……どこいったのか……む? このポケットの中にあるこれはまさか」
「お目当てのものですか?」
「……おお、これだ! いやあ見つかってよかった。古式のおかげだな」
「私は何も」
「お、そうだ。ちょうどいい。お礼にこれ、受け取ってくれ。今度俺が見に行く映画のチケットなんだが、1枚余っててな」
「……ちょうど、この前私が興味あると言っていたものですね」
「なんとそれは驚きの偶然だな。まったく、見つかってよかった。本当に古式のおかげだ。さあ」
「――宮沢さん」
「ああ」
「その……普通に誘ってくださっても、私は、喜んでお受けしますから……」