三十九

「やはり陸上競技が好きなのと、三軍のまま終わりたくないからです。
 それにシーズンの途中ですし、レギュラーへの復活目指して頑張りたいからです」

「でも、奈穂子先輩は高等部のキャプテンの時、自尊心を傷つけるからという理由で、
 補欠のスクールブルマと体操服姿を廃止されたじゃないですか」
「大学でも二軍のスクールブルマ廃止の中心人物になられたとか」

「だからこそ」と四年生がフォーローして言った。
「奈穂子は三軍制度廃止のためにも頑張っているのよ。
 奈穂子自身の申し出で、無事三軍脱出できれば、三軍制度は廃止される。
 できなくても、奈穂子が三軍で頑張っている間は、三軍制度の執行は停止される、
 つまり奈穂子以外の部員は三軍に降格させられることはないことになっているの。
 だから奈穂子は三軍脱出できなくても、簡単に部活を辞めるわけにはいかないの。
 三軍に落ちそうな部員のために自分ひとりがペナルティを受けることを申し出たので」

「そうだったのですか、立派ですね、奈穂子先輩は。
 みんなのために自分ひとりだけが三軍のペナルティを受けるなんて、
 なかなかできないことですよ。
 頑張って一日も早く三軍脱出してくださいね」
と高等部の部員たちは無邪気に感心した。