三十一

 ついに奈穂子の女性として一番大事なところに剃刀の刃が当てられた。
 部室の中が静寂につつまれ、奈穂子の毛を剃るジョリジョリという微かな音が聞こえる。
 固唾を呑む部員たちにもその微かな音は大きく聞こえたが、
奈穂子にはさらに何倍にも大きく聞こえた。
 二軍部員が代わる代わる一筋ずつ剃刀を走らせると、大事な箇所の毛が剃り落されるだけではなく、
奈穂子のプライドまでもが削ぎ落とされていくような音に聞こえた。

「綺麗に剃れました、奈穂子副キャプテン!」
 やや嘲笑気味に報告する二軍部員たち。

「ご苦労様、でも本当に綺麗に剃れたかどうかきちんと確かめないと。
 三軍部員のあそこを触るなんて嫌だろうけど、
 奈穂子の股間を手で触ってツルツルスベスベになっているか確かめてください」
と副キャプテンとして自分への屈辱的な指示を出さなければならない奈穂子。

「二軍の先輩方、奈穂子の股間が本当に綺麗に剃れているかどうか、
 手で触ってするするすべすべになっているかどうかご面倒ですが、
 奈穂子のきたない股間を手で確かめていただけるでしょうか」
と今度は三軍部員として懇願しなければならない奈穂子。
 自分の股間をさわってツルツルスベスベかどうか確かめてくれという言葉には、
奈穂子を尊敬しつづけていた下級生たちもどっと噴き出した。
 部室は爆笑の渦が巻いた。奈穂子の威厳が地に落ちた瞬間だった。