ふあ、はー…ねむ
(人目もはばからず大きくあくびして頬杖つきながら集められた人々の発表を聞き流している男)
「ありきたりな発表ばっか…とっとと発表して帰りたい」
(退屈過ぎてあくびが止まらない、それでも全て聞いてから帰ろうとプログラム用紙に目をやる)
「…何かいいヒントになる研究ないかな、行き詰まって全然進まないんだよな」
(まだずっと子供の頃から見始めたやたら分厚い学術書、最初は書かれてることの意味も字もわからず無意味に持ち歩いていた)
(どこに出掛けるにも肌見離さず…そう、あの日持っていって誓いの書代わりにしていた書物)
(あの日を最後に少女と少年に会えないまま過ごすこと十年余り)
(男の子は相変わらずあの頃のまま家にある書物全てを読破し、そして研究漬けの日々を送っていた)

(毎年発表するわけでもないのに自身の研究の突破口になればといろんな発表会に顔を出しては、こうして最初から最後まで黙々と聞いている)
「うーん…今年も収穫ないのかな、でも…この子の研究…テーマが面白いんだよな」
(プログラム用紙に書かれた字をなぞる)
ひなた、今年はどんな話を聞かせてくれるんだろ
(今日一番楽しみにしている発表者の名を呟いて独り言を言ってしまう)