(しかし、ただ1人だけ…まだまともに口をきいてくれない生徒がいる)
(友達も多くて人気者の彼、成績もよく同僚の教師からも評判がいいが、どうしてなのか、自分にはまったく心を開いてくれない)
(教師として嫌われているのだろうか…などと悩んで心配する日々だったのだが、なんと今日、突然その生徒高梨から相談があると授業の後にこっそり耳打ちされた)
(これは打ち解けられる絶好のチャンス。わたしはこの日の放課後、意気込んで指定された体育館の裏手にあるひと気のない倉庫の前に早足で向かう)
(この機会に彼と真剣に向き合いたい、そう思っていると体育倉庫が見えてきて、高梨はその扉の前に寄りかかるようにして立っていた)
高梨くん!
ごめんねー、待たせちゃって
A組の先生に話しかけられてちょっと遅れちゃった
はあ……っ
(そう言いながら高梨の元に駆けていく。
息を切らしながら目の前に立つと、乱れた髪を整えながら長身の高梨を見上げる)
えっと、ここで話すの?
先生の資料室も空いてるけど…ここからじゃちょっと遠いか
(周囲に腰を下ろせる場所はないか首を振って探してみるが、何も見当たらなかった。
仕方がなく立ち尽くしたまま、いきなり本題に入ってよいものか迷いつつも声をかけてみる)
…ねえ、今日の話って、実はみんなには言いづらいこと、なのかな…?
(またいつものごとく冷たく去られてしまわないよう言葉を選びながら、高梨を見上げてその表情を伺ってみる)
先生あとはもう資料室に荷物取りに戻るだけだから、時間はあるの
もしかして何か悩みとか…あるなら、先生になんでも言って?