【すまぬ、ケイン殿…手を煩わせて…】

んぅ……ぇ…あ……ここは…?っ…ケイン殿?
え…仮眠室?私はここで…あっ…ぅう…私は…?
(意識が飛んでいたのだろう。目を開けた時には天井が見えたと思ったらケイン殿の顔が)
(視界の外から生える様に現れ、私の顔を覗き込んできた…そうか…私は検査を…)
(どうやらここはギルド内の仮眠室か…私の周りにも幾台かのベッドが設置されている)
(……ッ!そう言えば…意識が飛びかけ真っ白になってゆく中…アレがきっかけで私が服を)
(身に着けられないと言う職員の会話が聞こえたような…と、言う事は…!)
け、けけ、ケイン殿っ!ぁ、ああ、それで…私…ぇ…なっ?まだ裸?
ケイン殿…私に服を…何かギルドから借りてもらえぬか…?え…そんな…なん、だと…!?
(私はようやくこの世界で衣服を身に着けられるようになった…だがまだ裸のままなのに)
(気づき、ケイン殿に服を借りてきてくれるように要求したのだが…)
な、なぜ…私の奇妙な制約…呪いは解けて…この世界の衣服でも…ぇ…
私の中から出てきた物…む、無関係、だと…言うのか…ぁ、あああっ…!?
(ベッドから降りかけていた私はその場で崩れそうになってしまったがケイン殿に支えられる)
(ケイン殿が私の様子を見て不思議そうにしている…こんなルシーダを見た事が無いと…)
す、すまない…ケイン殿…と、ところで…何を…っ…?!?
ま、待て…!私の身体から出た物でそんな物を…ぃ、いや…綺麗とかそういう問題ではない!
あ、ぁあ…いや…何かおかしなところ…特に感じぬが…ぇ…
(ぬ…何だ…身体の中の奇妙な疼き…そう言えばなぜ私は先ほど…取り乱す事が…)
(え…もしや…もしや、まさか…!?)
(そっと両腕を…今までこの世界で隠すことが出来なかった乳房…陰部に伸ばす事が…)
(手で…隠す事が…出来る様になった…だと…?)
ぁ…私はついに…っ…!?
(そう言えばなぜ裸を見られて平然と…嬉々としていた不可思議な感覚が今は…感じぬ…?)
(……わ、私は…今まで…この世界に来て…この街の中で…お、大勢の民の…前で…)
わ、わぁああああぁああっ!?わ、私は…何という…恥をっ!?
け、ケイン殿…ぁ…あ、ああっ…み、見ないでくれっ…!?
(私は胸と股間を隠したままケイン殿相手に後退ってしまう…)
い、いや…どうしたも…どうしたって…恥ずかしいからであって…
(ケイン殿が何をいまさらと言う顔をしているのだが…わ、私はケイン殿にあの様に痴態を…)
(それどころか身体中を人目に関係なくまさぐられ…何より人前で交わい…など…ッ!?)
け、けけっ、け、ケイン、殿…!い、今更、今更なのは承知だが…
裸が恥ずかしいのは当たり前で…!い、今までの…今までのは!私の本当の意思じゃ…!
い、いや…ケイン殿の事は信頼しているが…それでも私は、素肌を人目に晒す事に
喜びなど感じては…!き、聞くなっ…!あのような営みの事等…!ッ?!
なっ?何?なんでこんな人が…ぁ、ああ、あああああっ?!
(胸と股間を隠しながらうろたえる私だがそこで漸くここはギルドの仮眠室…)
(私とケイン殿以外にも利用者はたくさんいて…しかも私の裸身を目当てに部屋を覗く者達も)
(多数…私とケイン殿のやり取りを見守っていて…ぁ…見てる…顔を…剥き出しの肌を…)
(わ、私は、私は…こんな…いやこれ以上に多くの人間の前で素肌だけでなく痴女そのものの)
(はしたない振舞いを、今日まで……)
ぁ…あ…ぁ、ぁあ…ぁ…あ…!み、みる、な…見るな、見るな、見ないで…見ないでくれえええ!
(胸と股間を隠したまま、私はそこにへたり込んでしまった…)
(どこから、何を…どんなことを、私は説明を…言い訳を…!)
ケ、イン…どの…ぁ…あぁ…私…は…
(仮眠室の真ん中で裸で胸と股間をかばいながら立ち上がれない私にケイン殿は心配そうに近寄って来る)
(何…私から出てきたその結晶…?)
(それが…今の私と…ぁ…あの結晶が体内にあった事が…今までの痴態を…私の羞恥心を…)
(ケイン殿はその結晶のペンダントと私を見比べながらそのように推測していた…)
(へたり込んで動けない私の頭をケイン殿がゴシゴシと撫でる…)
ぁ、ケイン殿…す、すまな、い…私は…私は…今の私が本当の私、なのに…
こ、混乱して…どうすれば…いいのか…わ、からなくて…
(ケイン殿のズボンの裾を掴み…力無く呟く私…情けない…本来の心を…言動を…取り戻したのに…)
ケイン殿…何度も、すまない…身体に力が入らぬ…ここから連れ出して…くれ…
(今はただ…何も考えたくなくて…宿に帰る事…それしか思いうかばなかった…)