百合カップルスレ@18禁創作板10
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0002名無しさん@ピンキー2014/02/12(水) 23:19:30.90ID:RFJLnYiF
過去スレ
百合カプスレ@エロパロ板
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1059798364/
百合カプスレ・2 @エロパロ板
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082138248/
百合カプスレ・2.5
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1082384534/
百合カプスレ@エロパロ板 三度目の正直
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1087027859/
百合カプスレ@エロパロ板 4
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1108536012/
百合カップスレ@18禁文章創作板5
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1167898791/
百合カップルスレ@18禁創作板7
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1286194348/
百合カップルスレ@18禁創作板8
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1345098894/

作品保管サイト(ただし古いもののみ)
百合ちゃんねる
http://lilych.fairy.ne.jp/
0009名無しさん@ピンキー2014/02/13(木) 00:19:51.37ID:gQ3eFSz9
即死の判定基準って何度か変わっているはず
でも、一年数ヶ月前立ったスレが24レスでまだ残っているから、20を超えれば安全じゃないか
0013名無しさん@ピンキー2014/02/15(土) 15:50:04.83ID:MetJMfWP
実は>>1に書いてある前スレの後にスレタイが9のまま、実質10スレ目があって即死してる。
それ含めたら11スレ目か?

とりあえず即死回避
0014名無しさん@ピンキー2014/02/16(日) 02:22:18.10ID:pAVov8SV
眠いから時間つぶしに


わたしは勉強家だ
テストでは90点以下はとったことはないし、
学校の催しは抜かりなく用意周到に準備して
最高の評価を得る

だからこの子のからだをイカせることは日々研究中だ

うすピンクに染まるこの子の肌はじっとりと濡れて
こんなによい感触だとは思わなかった
それにも増して、いろんなところを触ると
この子は楽器のように鳴いてとても興奮する

女の子の乳首があんなに立つとは思わなかった
それをつまむとびっくりするくらいに息が漏れて
また固くなる

わたしは感じ方によって乳首の張りが違うことを勉強した
ほんとうにきもちがいいときは
このこの乳首は中に芯が通っているみたいにそそりたつ

ふるえて、よじれて、汗をかく
この子はとてもかわいい
わたしなんてぜんぜんおよばないくらいに
0015名無しさん@ピンキー2014/02/16(日) 02:24:42.72ID:pAVov8SV
パンツのシミはなんていうか背徳的だ
あそこのかたちを示しながら暗くにじんで
エッチなにおいがかぐわしい

そこにあるよ
いちばんきもちいい部分が
蒸れているよ
肉のわれめが

わたしは分かっていながら無視をして
この子のかわいいくちびるを
わたしのたいしたことのないくちびるで
埋めてみる

すこしあたまの先がしびれるから
ふたりとも舌使いがうまくなったのだと思う
0016名無しさん@ピンキー2014/02/16(日) 02:26:24.24ID:pAVov8SV
わたしは勉強家だ
キスをしながらうごめくからだをみのがさない
この子のまぢかで感じるいい匂いと
セックスの息づかいと
あそこに手を入れてほしい身じろぎが
最高にたのしくてやめられない

どうにかこのままイカせられないものかと思案する

もっとふかく
もっとめちゃくちゃにして
べとべとになった唾液をおくりこむ

ちくびが洋服にこすれてくるけど
それわざとだよね

だめ
そんなふうにはイカせてあげない
足もとじさせない


もっともっと乱れてすべてを見せて
わたしは勉強するから

まだまだ指なんて入れてあげないよ
そのまえに膣の勉強もすんでないしね

まってててね
ヘタなわたしだけど
もっと秀才になるから

できれば潮っていうのを体感させてあげたいの
こんなにきれいでピンク色の
あなたのあそこがピクピクとなみうって
すべてをだしちゃうくらいに

いやまてよ
そうするとベッドが大変なことになる

わたしは日々勉強中だ
まだまだ知らないことだらけ

あ、イっちゃった
残念
0017名無しさん@ピンキー2014/02/16(日) 02:27:40.27ID:pAVov8SV
///
///
//
なんだこのクソ認証 間違えると全部きえやがる
もうこんなとこ使わない
0020名無しさん@ピンキー2014/02/16(日) 15:48:26.97ID:+c6MSV2p
画像認証、単語や数字に句切りが要るのかと思ったら要らないらしい。
0023名無しさん@ピンキー2014/02/16(日) 15:54:11.03ID:+c6MSV2p
まだ23だけど、まぁ大丈夫だろう。
あとどっか避難所探した方が良くね?
0027名無しさん@ピンキー2014/02/17(月) 10:49:00.14ID:TcXTUnPk
やった書き込めた!!

最近ネタは沢山出てくるものの書く時間無いし肉付け出来ない
0028名無しさん@ピンキー2014/02/19(水) 20:22:15.01ID:NmuOX6ko
 ある時、魔王は思い至った。
 「そうだ、なんの思慮もなく手近な連中をけしかけ続けているから駄目なのだ! これでは
勇者を鍛錬させているのと同じではないか!」
 広大にして深遠だった筈の魔界。そこに打ち込まれた棘にすぎなかった勇者一行は何時の間
にか針となり矛先となり、今では杭のように深々と突き刺さって徐々にだが確実に穴を広げて今、
こうしている間にも行く手を阻む魔物を討ち滅ぼして前進している。
 しかも勇者達に続く人間共も現れ、勇者が穿った傷口を塞ごうとする魔王の配下の障害になって
いるという報告まで耳に届いている始末だ。
 もともと単純な物量、総人口を比較してしまうと魔界は不利だ。なまじ個々の腕力魔力が
高いが故に弱肉強食世界から脱しきれず統率という言葉からも程遠い。魔王である自分が目を
光らせていなければ、いや目を光らせていても僅かな隙を狙って種族抗争や我欲の追求の為の
簒奪を繰り返し、あまつさえ魔王を追い落として魔界を混沌に戻そうとする輩まで後を絶たない
のが現状である。
 「そうは仰いますが魔王様、人間と違い私達に組織的に行動可能な軍勢を整えるなど無理な
相談にございます。まだ眼前に迫ってもいない勇者を討つため、己の縄張りの守りを削ってまで
兵力を差し出す種族など何処におりましょうか?」
 給仕服で側仕えを務める狼人少女が耳と尻尾を震わせおずおずと注進する。こう見えても族長の
娘で本気を出せば一騎当千の強者だ。
 しかも以前、食欲を満たすために狼人族の郷里を滅ぼそうとした低級な巨人族から守ってやろう
と魔王自ら打って出て肩を並べて追い払って以来、絶対の忠誠を誓ってくれている魔王にとって
数少ない本当の味方である。
 「いや、もはや安易に数に頼って良い時期は過ぎ去ったと考えざるを得まい。それに真っ向から
力任せに押し切れば良い段階も終わっている」
 なにも考えずに現地戦力に任せきった結果、数多の敵を退けた勇者は力量を高め新たな力も
得て刻一刻と上位の魔物とも渡り合える域に達そうとしている。
 このまま放置すれば、我が身すら脅かす存在となるのは間違いないだろう。
 「では、魔王様はいかように……?」
 「それを探る。いや、探ろうともしなかった己が浅はかさを今こそ改めねばなるまい」
 「???」
 「人間界に止まらず我が魔界にまで名を轟かせる勇者とやらの面構え、この目で拝ませて
貰うとしよう!」
 「魔王様、どちらに……!?」 
 「なに、ちょっとした散歩だ。直ぐに戻るが城を頼むぞ?」
 魔王が手を伸ばしただけで狼人少女は頭を垂れ耳を寝かせて恭順を示す。その柔らかい頭を
優しく撫でた魔王は、そのまま翼を広げてバルコニーから飛び立った。
0029名無しさん@ピンキー2014/02/19(水) 20:24:16.13ID:NmuOX6ko
 その頃、魔王城を遙かに望む山の中腹では、 
「人間、なんにでも慣れてしまうものなのね。つくづく実感するわ」
 昼夜の区別すら付かない曇り空を見上げながら独り言のように呟く勇者。
 絶えず不気味な色の雲に覆われ、日射しなど望むことも出来ない薄暗い空。そして痩せこけた
固い大地と冷え冷えとした空気、そんな中で何を養分にしているのか先を争うように天まで伸びる
節だらけの木々と足下に生える奇妙な色の草花。
 初めて魔界に足を踏み入れた当時は、そんな日常的な光景に絶えず注意を払って世界の全てを
敵に回してしまったかのような錯覚に陥りながら常に緊張の連続だったが、いまでは平気で剣を
外して野営の準備を始めることが出来てしまう自分の順応力には驚くばかりだ。
 「それは慣れと言うより、自信の表れですよ。もう低級な魔物に後れを取ることもなくなる位に
強くなったから余裕が生まれただけだと思いますー」
 周囲に簡単な探知結界の術を掛けながら応じたのは魔法使い。少し間延びした声色で幼い印象を
与えるが、この少女も勇者と共に数々の敵を退けてきた実力者である。
 「揃いも揃って油断大敵という言葉すら知らないのかお前等は!」
 少し緩くなってきた空気を、自ら志願して見張りに立つ女騎士が締め直した。剣術のみならず
神聖魔法も使いこなす彼女と魔法使いの少女の二人だけを共に、勇者は前人未踏の魔界侵攻の
先陣に立ち着実に進撃しているのだ。
 「そうは言いますけど、魔王城はまだまだ遠いですよ−? 適当に息抜きも考えないと途中で
力尽きちゃいますよー?」
 「そういうことね。この辺りの魔物相手なら手こずることもないし、せめて鎧くらいは脱いでも
いいんじゃないかしら? 疲れが取れないわよ?」
 魔法使いと勇者の言葉に更に不機嫌さを増してしまう女騎士。
 「よ、余計なお世話だ! 私はお前達とは鍛え方が違うのだから全然問題ない! あと私が
仰せつかった役目はヘラヘラ笑ってるお前、勇者を常に守ることなのだから眠るとき以外に武装
解除など有り得ん!」
 「……ヘラヘラって……ひっどぉい!」
 「騎士様は本当に優等生さんですねー。お陰で安心して休息できます−」
 よいしょ、と触媒やら用具やら満載のリュックとマントを重そうに外す魔法使い。
 「酷くなどない! だいたい昔からお前は緊張感が足りないというか真剣さが欠片も無いと
言うか、勇者の素養に甘えて不真面目な顔で愛想ばかり振りまいてばかりだっただろうが!」」
 「あ、そんなこと言う? 言っちゃうんだ? じゃあ私だって言わせて貰うけど、あんただって
初めて会った頃は『仲良くしてね?』とかデレデレの顔で手なんか繋いできてお風呂にまで付いて
来て、雷が鳴った時なんて……」
 「そそっ、それとこれとは関係ないだろう! それに昔の話を持ち出すなんて卑怯だぞ!」
 「昔の話を持ち出したのは、そっちが先でしょ。それとも最近の話の方が良いのかしら? 例えば
初めての探索で魔物に囲まれたときの話とか………」
 「わーっ! わーーーーーーっ!!」
 「それにしても魔界のお芋が美味しいなんて新発見です−。お陰で荷物も補給で転位する
回数も減って大助かりですよ−」
 きゃんきゃんと言い合う二人を無視して夕食の準備の為に火をおこす魔法使い。
 勇者一行の一日の行軍は、こうして和やかに幕を閉じようとしていた。
0030名無しさん@ピンキー2014/02/19(水) 20:25:53.59ID:NmuOX6ko
 そして、魔界では誰も使わない人間界の香辛料の匂いで勇者達の位置はバレバレだった。
 「……何も考えていない馬鹿共揃いなのか、或いは余程自信があるのか……」
 とは言え勇者一行の強さは既に魔界全域に知れ渡っている。近隣を徘徊する力の無い魔物
達は見て見ぬ振りで別の獲物を探すし、ある程度の知能と力を持ち種族で活動する者達でさえ、
自分達に火の粉が降りかからない限りわざわざ出向いて仕掛けようとは思わない。
 結果、自らがが掃討した一帯は勇者とっては安全地帯に等しくなっていた。
 「……もっとも、これはこれで私にとっても好都合だがな」
 安心して自分から隙を作ってくれるのなら、これほど有り難い話は無い。
 魔王ほどのレベルになれば自分の力を隠す程度など造作も無い。巧妙に正体を誤魔化し、力を
蓄える前と同じ一介の睡魔少女に戻った魔王は、真っ白な夕餉の煙を目印にして静かに勇者一行の
野営地に近づきつつあった。
 「さてさて、まだ年若い小娘共だと聞いておるが………………お?」
 小さな体を猫背にして屈みに、小動物のような動きで陰から陰へと移動しながら偵察行動を
行っていた魔王が野営地から聞こえてくる妙な声に気付いたのは間もなくだった。


 「おやおや、これは相当溜まってますねお客さん?」
 「だ、誰がお客さんだ! というか、どこでそんな破廉恥な物言いを覚えてきた! 曲がり形に
も勇者だろうお前はっ!?」
 「勇者でも騎士でも女の子は女の子なの。だから溜まっちゃうのよねぇ色々と」
 「だから抱きつくな鎧の中に手を入れようと……あ、こらっ!!」
 後ろから抱きついた勇者が慣れた仕草で弄ると、女騎士の行軍鎧がガシャガシャと簡単に外れて
落ちてゆく。あっという間に上半身を鎧下にされてしまった女騎士。
 「なな、何を考えているのだ馬鹿者! これでは見張りの意味が無いだろう!」
 至極尤もな思考で女騎士が憤慨するが、勇者は何処吹く風で首筋に鼻を近づける。
 「これよこれっ! この鎧で蒸れた汗臭い肌を舐めると興奮しちゃうのよ、れろ〜っ!」
 「だから、そういう悪趣味は大概にしろと……ひぁぁぁん!?」
 露わになった首筋をネットリと舐められて体を震わせる女騎士。その僅かな隙を逃さず勇者の
手が胸元へと素早く侵入する。
 「あ、乳首立ってる! もしかして期待してた?」
 「していないっ! する訳など……ああこらっ! 摘まむな転がすな引っ張るなぁっ!」
 「ああもう相変わらずコリコリして美味しそうな感触っ! ねぇ食べて良い食べて良いよね
我慢出来ないもん!」
 ちゅうちゅうと女騎士の細い首に吸い付き唾液塗れにしながら甘えた声を出す勇者。女騎士の
方も文句を言いながら為すがまま、抵抗する気配は微塵も感じられない。
0031名無しさん@ピンキー2014/02/19(水) 20:26:46.22ID:NmuOX6ko
 「こ、これは強姦だぞ陵辱行為だぞ分かっているのかお前は! 全てに於いて勇者に従わなけ
ればならない私が抵抗できないのを笠に辱めようなど卑劣な真似を……」
 「そうそう、今日もレイプだから悪いのは全部私なんだよね? ほらほら勇者様の命令だよ
最後は自分で脱ぎなさ〜い!」
 「くっ! 命令なら……従うしかないではないかっ!」
 耳を甘噛みされ、もどかしそうに内太股を擦り合わせながら服を脱ぎ始める女騎士。その瞳は
既に興奮で潤み頬は紅く火照り唇はすっかり濡れている。
 「な、なぜ私はこんな奴のことを……!」
 そう呟きながら肌を露わにすると、籠もっていた汗の香りよりも更に強い発情臭が周囲に
発散され広がってゆく。
 「うわっ、いつもよりエッチな匂いじゃない! これじゃ下の方も大変なことになって
るんじゃないの? 可哀想だから後で舐めて啜って舌入れてあげるわね?」
 「そ、それだけは駄目だ! 今日はその……きっと粗相を……それに大きな声も……」
 「噴いちゃっても漏らしちゃっても飲んであげるから平気平気っ! それに大きな声を出し
ちゃってもお誰も聞いてないって!」
 「そんな訳がないだろ! 現に近くに……」
 「ちなみに魔法使いさんこと私は寝てますよ熟睡中ですよー。しかも晩ご飯を沢山頂いたので
ノンレム睡眠状態で何も聞こえないのですーむにゃむにゃむにゃー」
 背を向けた状態で横たわった魔法使いが何故か自分から説明してくれる。
 「……ということらしいから大丈夫ね?」
 「何が大丈夫なんだ何が! 明らかに今日も起きてるだろ、そいつは!?」
 「聞こえませんー何も聞こえませんよーぐーぐーぐー」
 「な、なな、ななななななっ!?」
 どろり、と股間から溢れた熱い蜜が鎧の隙間から漏れ出す。どうやら何もかも聞かれていると
思って軽く達してしまったらしい女騎士。
 「はい油断発見! いただきま〜すっ!」
 「きゃんっ!?」
 更に勇者による追い打ち。欲情で分泌された甘い汗で濡れ光る裸の乳房、その先端を周囲と
一緒に大口で頬張られ乳児のように吸われて可愛らしい声を上げてしまう。
 「ひょうもふりふりしれえおいひいよひもいいいれひょ?」
 「く、口一杯に入れたまま喋るなぁ!!」
0032名無しさん@ピンキー2014/02/19(水) 20:27:41.80ID:NmuOX6ko
 そんな想像を絶した光景を見せつけられ流石の魔王も凍ってしまっていた。
 「な……なんなのだ、あの連中は……!?」
 敵地のど真ん中だろうとか、女同士なのにとか、実は和姦ではないのかとかツッコミどころが
余りに多すぎて思考が追いつかない。隙だらけの今なら簡単に殲滅できるかもという当たり前の
発想にすら至れず勇者一行の痴態に見入ってしまう。
 だが行為に溺れている最中とは言え勇者達の戦闘力は折り紙付き。
 
 ガサガサガサ……

 「はっ!?」
 対して力の殆どを封じている今の魔王は低級な魔物に過ぎない。勇者にとって安全圏でも魔王に
は危険極まりない魔界の一角に過ぎないという現実を失念してしまっていた。
 「ぐるるるるるる……」
 いつの間にか、魔王はヘルハウンドの群れに包囲されてしまっていた。
 「そ、そうか! こやつら、私が只の睡魔だと思い込んで……!」
 気取られないように、勇者達の野営地から少し離れた場所に潜んでいたのも失敗だった。人間の
気配を感じて近づいたものの、相手が強そうだと気付いて手を出せずイライラと辺りを徘徊していた
ヘルハウンドの標的にされてしまったのだから。
 「こ、こんな雑魚など……!」
 魔力を解放して焼き払おうとした魔王だったが寸前で躊躇してしまう。ここで不用意に本来の
力を振るってしまったら嫌でも勇者達の目に留まってしまうだろう。
 今の段階で、それは非常に拙い。
 ここで正体が暴露したとしても直ぐに討たれる心配は無い筈だ。一対三とは言え勇者達の力が
自分を超えているとは思えないし、まだ距離もある。多少の手傷は覚悟しなければならないかも
知れないが返り討ちに執着しなければ煙に巻くのも難しくは無いだろう。
 だが小手先であしらえる相手とも思えない。ある程度は本気を出す必要に迫られるだろうが、
こんな所で手の内を明かすのは明らかに賢明とは言えない。
 そして先に勇者達の力を探る機会も永遠に失われてしまうだろう。
 どう考えても得策では無かった。
0033名無しさん@ピンキー2014/02/19(水) 20:28:27.66ID:NmuOX6ko
 そんな魔王の葛藤など、目の前の獲物を狩るヘルハウンドは知る由もない。
 また全く関係なかった。
 「がうっ!」
 「ぐるるっ」
 唸り声の微妙な変化で意思疎通しながら巧妙に包囲の輪を狭めてくる。
 「ぐぬぬぬぬ……!」
 もともと力が全ての魔界だ。圧倒的な差を見せつける以外に打開策は無い。
 数えきれぬほどの敵を排除して王座を手に入れた魔王が誰よりも一番良く知っている魔界の
原則であり不変の掟である。このままでは食われるという選択肢が存在しない以上、遅かれ
早かれ力を振るう瞬間が来てしまうのは避けようがない。
 「……もはや背に腹は代えられない、ということか」
 威嚇のために見せつけている牙の間から涎を零しながら迫ってくる魔犬の群れ。その殺気に
満ちた赤い瞳を正面から見据えながら魔王は右手に魔力を充填させて……

 ずずんっ!

 次の瞬間、魔王とヘルハウンド達の間に第三者の強力な魔力の塊が着弾して大地を震わせ
ながら炸裂した。そして唖然とする魔王の脇を一陣の風が駆け抜ける。
 「なっ!?」
 「せぇぇぇぇぇぃっ!!」
 まだ粉塵が舞っている魔力弾の余波の中に裸同然の肌着姿で飛び込んだ勇者、気合いと共に
生み出した魔力で拳をコーティングしながら手近なヘルハウンドの横面にパンチを叩き込み、
意図も簡単に間合いの外まで殴り飛ばしてしまう。
 「てやぁぁぁぁぁぁっ!!」
 続けて魔力を乗せた蹴りで別のヘルハウンドを弾き飛ばす。もはや武器すら必要としない
程圧倒的な力で三匹目も瞬殺。
 「がうっ!」
 「がうがうっ!!」
 このままでは逃げることも叶わず全滅させられる。圧倒的な不利を咄嗟に悟ったらしい残りの
ヘルハウンド達が大きく開けた口の中に高温の火球が次々と生み出されるが。
 「そうは問屋が卸さないのですー!」
 魔王の後方から飛来した無数の魔力弾に先手を取られて一掃。一斉発射だったため威力が
足りていなかったのか、はたまた意図的に手加減していたのかは定かでは無いが、息も絶え
絶えになりながら全身を焼かれて這々の体で逃げ散っていく。
 「……大丈夫? 怪我はないかな?」
 驚愕の光景に腰を抜かしてしまった魔王。そこに傷一つ無く歩み寄ってきた勇者が精悍な
笑みを浮かべながら右手を差し出す。
 「…………」
 なにがなんだか分からないまま、促されるまま勇者の手を取ってしまう魔王。
 「よいしょっと!」
 「きゃ……!?」
 「怖かったよね? でももう大丈夫だからね?」
 温かくて気持ち良い、不覚にも勇者の胸に抱かれてしまった魔王はそう思ってしまった。
0035名無しさん@ピンキー2014/02/20(木) 18:14:54.14ID:GAkMKcMh
魔王の部下のケモ耳少女はどうしたんだ!!
支援!!!
0041名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:43:26.07ID:aNMtB4eJ
 詠唱や触媒と言った儀式を介さず魔力を発動させる勇者の資質。
 その片鱗を目の前で見せつけられた魔王は、肌着越しの勇者の柔らかい胸の鼓動と体温を
感じつつ驚愕して、
 「うにゃあっ!?」
 次の瞬間にはお尻を撫で回されて悲鳴を上げていた。
 「うっわー細いのに柔らくて最高! しかも程良い大きさと曲線が……ねぇねぇ、ちょっとだけ
生で触っても良いかな? 良いよねっ? 助けてあげたんだし良い匂いするし魔界に入ってから
カノのガードが固くなっちゃったし他に可愛い子とかいないしでストレス溜まってるから少しだけ
発散に協力してがぐわぁっ!?」
 「少しは自重というものを学ばんか、この変質者がっ!!」
 そして女騎士が裸の胸を腕で庇いつつ背後から勇者の脳天に放った拳骨に救われた。
 「さすが騎士様は鍛え方が違いますねータフですねー。あと十分くらいは腰が抜けてビクン
ビクンしか出来ないと思ってたのに嫉妬の力は偉大ですね−」
 周囲を哨戒し直して掃討を確認し終えたらしい魔法使いがコキコキと自分の肩を解し、魔具の
一つらしい大きな帽子を脱ぎながら戻って来た。
 「ししし嫉妬とか訳の分からん理屈で混ぜ返すな! あと、この色情魔に好き勝手にされた
くらいで腰を抜かしたりもしていないっ!」
 「まぁまぁ、そんなに照れなくても良いじゃないですか−。恋人に可愛がってもらって
失禁アクメで蕩けちゃうのは女の子としては普通ですよ当然ですよ−。私も経験ありますけど
ダブル噴きってへろへろになっちゃいますよねー癖になっちゃいますよねー」
 「やっぱり起きてて全部見てのかお前はっ!?」
 「……あいたたた……」
 「とか言ってる隙にコッソリ逃げだそうとするんじゃない色欲勇者っ!」
 「へぶしっ!?」
 四つん這いで脱出しようと試みたことろで背中からケンカキックを食らって勇者轟沈。虫の
ように踏み潰されてビクビクと痙攣を繰り返している。
 「お前の頭の中には節操という言葉は無いのか! 人の体を好き放題に弄んだ挙げ句、後戯
も接吻も囁きも無しに放り出して他の女の所に行くなど言語道断っ!!」
 うわー本音がダダ漏れですー、という魔法使いの呟きは耳に届かなかったらしい。
 「た、助けに行っただけでしょ? ついでに魔物も退治したじゃない!」
 このタフさこそが勇者と言うべきか、まだ弁解するだけの余裕はあるらしい。
 「助けるも何も、喰われそうになっていた方も魔物だろうが!」
 「だって魔物でも可愛かったんだもん可哀想だったんだもん仕方ないじゃない!」
 「この期に及んでそれかそれだけかっ! お前の価値基準にはそれしかないのかっ!?」
 「痛い痛い! それ本当に痛いからぁっ!」
 踏みつけられたまま踵で背中をグリグリされて悲鳴を上げる勇者。
0042名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:44:30.64ID:aNMtB4eJ
 「……あ、あの……」
 流石に居たたまれなくなってきた魔王。立場上、仕方なく助け船を出そうと声を出すが、
 「あーあー、アレは日常茶飯事というかバカップルの乳繰り合いの一環みたいなモノですから
気にしなくて良いですよー。それよりお茶はいかがですか−?」
 気配もなく背後を取った魔法使いに手首を取られ不発に終わってしまう。
 「ひぇっ!?」
 思わず飛び上がってしまった魔王。弱肉強食の魔界で頂点にまで上り詰めた自分に完璧な
不意打ちをかけることが出来る者などいないと思っていた筈なのに。
 「うふふふー」
 にこにこと人の良さそうな笑みを浮かべている魔法使いは一行の中でも最も背が低く華奢で
善人そうな印象しか与えないが、実は一番の曲者かも知れないと疑ってしまう。先程の一戦で
十発以上の魔力弾がヘルハウンド達に降り注いだ瞬間、振り返った先に立っていた魔法使いは
杖も水晶も持っていなかった。
 つまり魔具による増幅もなしで全てのヘルハウンドに深手を負わすだけの威力を持つ魔法を
掃射したどころか、最初の範囲型爆裂魔法も放ったことになるのだが。
 「はい、熱々ですよー?」
 などと考えている間に野営の焚き火の側まで連れてこられてしまった魔王。こうして至近距離で
見つめ合っても魔法使いは人畜無害そうな少女にしか見えない。用心しながらも甘い湯気を上げ
るカップを両手で受け取ってしまった。
 「………………」
 「魔界にはない葉っぱを使ってますしー、ちょっと戸惑っちゃうかも知れませんけど毒じゃ
ないですから安心して召し上がって下さいねー体が温まって良く眠れますよ−?」
 「は、はい……」
 不審に思われない程度に上目遣いで観察を続ける魔王。視界の外で騒いでいる二人よりも
目の前の魔法使いの方が要注意で、優先的に探るべきだと判断したからだ。
0043名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:46:28.80ID:aNMtB4eJ
 「ふーっ、ふーっ」
 先に飲むことで、こちらを安心させようと思ったのか吐息で冷ましつつ自分のカップに口を
付けてコクリと細い喉を鳴らす魔法使い。改めて自分のカップから漂う匂いを確かめてみると、
確かに魔王の知らないものだったが、毒になりそうな香りは混じっていないし誤魔化すための
香辛料の類いも入ってはいないらしい。
 とりあえずだが、正体は見破られていないと思って良さそうだ。
 「……熱っ!」
 などと考えながら口を付けると予想以上に熱かった。この程度の熱にも耐えられないとは、
今更ながら低級魔族だった頃の体は不便この上ない。
 「うふふっ、慌てなくて良いですからゆっくり味わってくださいねー?」
 ちょっと恥ずかしくなりコクコク頷く魔王を優しい瞳で見守る魔法使い。
 「こら、そこっ! 何を勝手に和んでいるのだっ!?」
 そうして今迄飲んだことのない柔らかくて甘いお茶をチビチビ丁寧に味わっている、やっと
折檻を終えたらしい女騎士がヘロヘロになった勇者の腕を抱きかかえ引きづりながら二人の
所にやってきた。
 「あの……」
 「だってせっかく勇者様が助けたのに問答無用で放り出しちゃうなんて可哀想じゃないですか
本末転倒じゃな少しぐらいお茶しても罰は当たらないと思いますよ−?」
 あっけらかんと答える魔法使い。
 「……まったく、どいつもこいつも甘いというか何というか……」
 口の中で不満を呟きながらも特に反対するつもりはないらしい女騎士、急に復活して魔王の
横を陣取ろうとした勇者の脇腹に一発入れて大人しくさせてから魔王と勇者の間を遮るように
二人の間に腰を下ろした。
 「……あの、えっと……」
 勇者一行の意外な素顔を目の当たりにして若干引き気味の魔王。とは言え、多少不本意ながらも
こうなってしまっては仕方が無い。とりあえず懐に入り込むことには成功した訳だし、ここで不審に
思われては元も子もないと割り切って自分から女騎士に話しかけた。
0044名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:47:25.72ID:aNMtB4eJ
 「お前、淫魔の類だな? こんな所で何をしていた!?」
 「ひぃっ!?」
 だが二の句を口にする前に遮られ、ギロリと殺気に満ちた横目で見下されて本気で震え上がって
しまった。魔族とか人間とか魔力とか腕っ節とか権威その他諸々を超越した謎のプレッシャーに
抗うことも出来ずカタカタと歯の根を鳴らしてしまう。
 「恐いですねーびびっちゃいますよねー。まるで新しく入った若くて可愛い女中さんを虐めてる
意地悪な奥さんみたいですよねー? 騎士様には正妻の余裕が欲しいですよねー?」
 「だからなんだその妙な例え方はっ! 私は純粋に魔物を警戒しているだけだっ!!」
 「そう言えば睡魔ちゃんの蜜は果物みたいな味と香りって伝説ですよ−? 女の子エキス大好きの
勇者様にはたまらないご馳走ですよね−?」
 「なにぃっっっ!!!」
 「はぅ〜〜〜〜っ!?」
 謎の波動で威圧され、再び腰を抜かしそうになってしまう魔王。
 「大丈夫ですよー。いまはドラゴンもヘコヘコ跨いで通るくらい恐い顔してますけど、こう見えても
中身は勇者様ラブのデレッデレ乙女ですから勇者様が助けた淫魔ちゃんにヤキモチは焼いても手を出し
たりはしませんからねー。真っ直ぐでイジメとか嫌いな人ですし勇者様に嫌われる様なことは絶対に
出来ませんからね−」
 「だから私の頭の中を勝手に捏造するな! そうではなくて……あれだ、その……いますぐに成敗
しなければならないほど強力な魔物ではないようだし、この馬鹿勇者にも一応は脳味噌もあるのだから
何かしらの考えがあってのことこかも知れんし……だから……」
 「あ〜ん、もう可愛いなぁこの子はっ!」
 復活した勇者、いまにも押し倒しそうな勢いで女騎士の首に抱きついてキスの雨を降らせようと顔を
唇を近づける。
 「こ、こら! 人前で何を……首は駄目だ少し余韻が残ってて……ああんっ!」
 「もう我慢出来ないから! ちょっとだけ、ねぇちょっとだけで良いからぁ!」
 「お前が何時我慢など……だから勝手に胸元まで舐めようとするな手を差し込んで指で掻き回そうと
するなぁっ! ああああああああんっ!」」
 「あわ、あわわわわわ………!?」
 魔王の目の前で二回戦を始めようとする勇者と、口では拒絶しつつも為すがまま押し倒されうなじを
舐められてピクピクと感じている女騎士。
 「喧嘩の後のセックスって燃えちゃいますよね−。やっぱり愛情の再確認って重要なんですねー
嫌よ嫌よも好きの内ってことなんですかね−」
 「あ、あの……あのっ!」
 「さぁ睡魔ちゃんは魔獣に追い回されてお疲れでしょうし、こっちへどうぞー。明日も早いですから
予備の毛布で温かくしてゆっくり休んでくださいねー?」
 「……あの……でも……」
 「あの二人なら心配要りませんよー全然問題ないですー。ああやって発散させてあげれば朝には揃って
お肌ツルツルの絶好調って感じになってますからねー」
 「……はぁ……」
0045名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:47:58.26ID:aNMtB4eJ
 「よ、止せっ! 止せと言ってんんんんんんんんん〜っ!?」
 せっかく整え直した胸布も簡単に捲られ、尖ったままの乳首を前歯で甘噛みされた女騎士の背筋を
電流が駆け抜ける。
 「可愛い声っ! ねぇ顔見せて? あたししか見れないエッチぃ顔見せて!」
 女騎士の肌から漂う女の香りに息を荒くする勇者、自分も上半身の鎧下を脱ぎ捨て素肌を晒し、
興奮しっきった乳房同士を押し付けるように女騎士に覆い被さって顔を近づけてくる。
 「駄目だ! それは駄目だっ! 私は騎士として……」
 「うふふっ! そんなこと言っちゃう子は……こうしちゃうもんねっ!」
 「ああっ!?」
 ヘコヘコと腰を揺すって乳首と乳首を擦り合わせながら、勇者の片手が慣れた動きで腰布の中に
侵入してくる。たちまちクチュクチュと泡だった音を立て始める女騎士の秘所。
 「あ、熱くてヌルヌルして……ハァハァ、指にしゃぶり付いて来るぅ!」
 刺激で筋肉が萎縮し、女騎士の膝が曲がって浮き上がってしまう。そこに自分の股間を押し付けて
擦る勇者の半開きの口から吐かれる熱い吐息が女騎士の頬を撫でる。
 「ほらほ〜ら、言うこと聞かないと処女膜破っちゃうよ破っちゃうよ〜? 早く可愛くてエッチぃ
顔を見せてくれないと処女じゃなくなんちゃうんだよ〜?」
 「っ!」
 表面上は強引にしか思えない愛撫だが、勇者の指は女騎士の浅い部分で出入りを繰り返し、敏感な
入り口を刺激しているだけ。そして片手で自分の体重を支え、加重で女騎士の背中が痛まないように
それなりに気を遣ってもいたりする。
 「良いのかな良いのかな〜? 今日という今日は本当に破っちゃうかもよ〜?」
 「……………………」
 一瞬だけ怯えたような表情を浮かべた女騎士だが、僅かな逡巡の後に瞼を伏せ横を向いたまま全身
から緊張を抜いてしまった。
 「あ、あの〜? そこで黙られちゃうと……困るって言うか……」
 「……………………」
 ぐすっ、と何かを諦めたように鼻を啜る女騎士。
 そして少しだけ、足を開く。
 「っきゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!」
 そんな健気な様に妙な声を上げた勇者の鼻から血が垂れた。
 「ぽっ……」
 そして可憐に頬を染める女騎士。
0046名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:48:36.60ID:aNMtB4eJ
 「やややや、やっぱり処女膜は真っ白なシーツの上で破らないとダメだよねっ! 純白の綺麗ーな
ドレス半脱ぎで何もかもあげちゃいます的な雰囲気で貰わないと損だよね! 一生に一回しかないん
だし、ちゃんとお仕事終わってから静かな土地で……えっと、だから……」
 「……………………」
 慌てふためいて急に饒舌になる勇者と、照れ顔で横を向いたまま静かに耳を傾ける女騎士。
 「……だから、なんて言うか……そう、気が変わったからっ! なんか今度はべろちゅーしながら
シたい気分になってきたからっ! だから…………だめ、かな?」
 「……………………目を瞑っててくれたら……いい」
 「うんうんうんっ! 言うとおりにするから瞑っちゃうからべろちゅー早く早くうっ!」



 魔王の耳に届いていた会話がピタリと止み、その代わりに何やら水っぽい音が聞こえ始める。
 少し離れた場所に魔法使いがこしらえてくれた寝床で毛布に包まって背を向けていても、音と一緒に
勇者と女騎士の求愛高揚と性的興奮が魔王の体に続々と流れ込んできて何をしているのか丸わかり
だったりする。
 間違いなく、互いの唇を求め舌を絡ませ唾液を拡販させながら、潤みきった性器を指で太股で愛撫し
夢中で貪り合っているに決まっている。
 「うぅぅぅぅぅ……!」
 思わず唸ってしまうほどに濃厚な交わりだ。
 「私が言ったとおりでしょー? 揃ってヘタレなお二人ですけど相思相愛らぶらぶえろえろなお年頃
ですから溜まっちゃうのも早いんでしょうねーお盛んで羨ましいですー」
 「はうっ!?」
 すぐ近くで横になり、熟睡していると思い込むほどに気配を消していた魔法使いの不意打ちに再び
驚かされてしまう魔王。
 「と言うわけで二人のらぶらぶ具合も確かめたし明日も沢山歩かないといけないのでに私は今度こそ
本当に眠りますね−。おやすみなさいですー」
 そうして再び静かになる魔法使い。言葉通り就寝に入ったらしい。
 「うぅぅぅぅ……!」
 一方の魔王は、明け方近くまで続く淫気の流入で一睡も出来ず夜を明かす羽目になってしまった。
0047名無しさん@ピンキー2014/03/02(日) 20:51:00.07ID:aNMtB4eJ
ここまで
というか続きとか全然考えてなかったんだけど……(^_^;

あと狼耳メイド少女の人気が激しく謎だw
0048名無しさん@ピンキー2014/03/03(月) 02:09:23.88ID:oC3bZ8z8
GJ!
みんな揃ってバカな感じがいい!

猫耳メイドをそこまで可愛らしげに書かれていたらそりゃあ期待するに決まってるよー
0051名無しさん@ピンキー2014/03/04(火) 22:04:53.10ID:vezjrrT8
魔王ちゃんって元から女魔族だったん?それとも化けただけだったんだろうか?
0052名無しさん@ピンキー2014/03/13(木) 06:43:27.51ID:U/S7s5Dr
まとめにあった彼女と彼女の話?(でしたっけ)はどこかで読めますかね?
まとめサイト落ちてるっぽいので気になって。
0054名無しさん@ピンキー2014/03/16(日) 05:14:03.21ID:DcliLMBA
実際にレズい友人がいると思う
百合って言うほど軽いもんじゃないと
0055名無しさん@ピンキー2014/03/20(木) 09:35:53.25ID:n6BaJh+8
魔王ちゃんが襲われないようなので失礼ながらぶった切って投下します
無知シチュ嫌いな方はスルーお願いします。
0056...2014/03/20(木) 09:39:03.51ID:n6BaJh+8
[彼女たちのかつての日々]


世の中には『そうであってほしいけど、そうでない方が良い』って葛藤-というかなんというか…-がある。
オレにも、あいつにも、誰にだってそんな葛藤はあるはずだけど-

「理紗、理科の宿題できた?」
「え?オレに理系のことは聞かねーでくれっつってんべ、明日香。
今から明日香にわかんねぇトコ聞きに行くとこだったんに。」
「あぁ、本当?どうしような、この問題、答えを見てもさっぱりで。」
「梓に聞けばいい良くねぇ?」
「また梓に頼るのか?なんか忍びないなー」
「しゃーねーべ、こーゆーのを背に腹は代えられぬって言うんだろ?行こう、明日香。」
「…宿題程度でそんな大仰な…まぁ、たしかにそうだな。行こうか。」


「…というわけで来たんだ。あの問題、どういうことなんだ?」
「あんたたちは…たかだか一問くらい宿題が解けないくらいで人の家に押しかけてんじゃないわよ!
いちいちあんたらは何かあるたびにあたしに頼って!帰んなさいよ!」
「あ、梓ぁ…オレら、困ってんだよ。少しだけだべ?教えてくれよぉ。」
「そうやって他人に甘えてばっかりだから普通に成績が悪いのよ!あたしじゃなくて教科書に聞きなさい!」
「ちょ…梓?開けてくれ、頼むよ。」
「バカ、家に帰って自分たちで解きなさい!」



「むー、めっちゃ先生に怒られたべ。」
「何恨めしそうな顔してんのよ、あんなの教科書見ればすぐじゃない。」
「…教室に置いてきたから間に合わなかったんだ。」
「呆れた。宿題出てるのに二人して教科書置いて帰ったの?そーゆーズボラするからこうなるのよ。」
「ぐっ…」
「何も言い返せねぇべ…」


具体的な単語にしようとしても当てはまるような言葉がない遠戚。
それが、オレ、理紗…それと明日香、梓の関係性だった。
オレらは親戚である以上に、幼馴染であり、親友であり、姉であり、妹だった。
物心つく前からの付き合いである三人の仲は、
思春期という難しい時期を迎えた今現在も、包み隠しのない深い仲間意識もしくは友情で結ばれていた。
もっとも、自分としてはその「難しい」の意味がわかってたかは疑問だけど。

なのに、それは、何時からだったんだろう。後になって思えば、今頃だったように思う。
『最高の親友』であったはずの明日香と梓との仲が、少しづつ変わっていったのは。


きっかけは小さいハプニングの積み重なりだった。いや、小さいことだからこそ、大事になるまで気付けなかったのかも。
「え?今、なんつったべ?もう一度。」
「だ、だから…!…ひ、拾ったんだ。そ、その…」
「あ、明日香が、あ、慌ててる!?ど、ど、どうしたんべ珍しい!?」
「こ、これ、見て…!」
差し出されたのは、分厚くも薄くもない普通の本。雑誌かなにかか?
いや、こ、これは…!?

「こ、これは…!まさか、明日香…これって…」
「そうだ、間違いない。これが噂の…」

「「同人誌…!」」
0057...2014/03/20(木) 09:41:04.16ID:n6BaJh+8
「これ、どこで拾ったべ!?」
「梓が帰るときに教室に置いて行った。
表紙が、あんまり、その、アレだったから、私のカバンに隠した…!」
「ぐ、グッジョブ!
…と、とにかく、どうすんべ?これ…」
「一応、梓のモノだ。人のモノなら、返さなくては。
でも、昨日あれだけ怒られた手前、これから梓の家に行っても取り合ってもらえないだろう。これを返すのは明日だ。
…どうする理紗?…読むか?」
「…えっ?…そ、そんな、そんなこと言って実は明日香が読みたいんだべ…?」
「なっ!?わ、私は、こ、こんな、男女がその………ゴニョゴニョしてる漫画なんて興味ない!」
「…明日香、もう読んだべ?」
「ば、バカ言えっ。もう来年の今頃は一生の大イベント入試だぞ…
そ、そんな大切な今に、特殊な性癖を知って何のプラスになるもんか!」
「なるほど、フェチってヤツなんか。」
「うぐくくくく…参った!もう降参!…見たよ、持って帰る寸前、立ち読みした!
まさか、いくら表紙がアレだからといって、梓がこんなものを読んでるなんて、思いもしなくて…」
「ホントだべ。梓はいつもオレらの先を行きやがる。こんなん読んで、梓はオレらよりよっぽど大人だべ。
…で、これ、どんな内容だんべ?…オレ、いきなり読む勇気ねぇべ。」
「そ、そ、それは…うう…こんな往来でなんて嫌だ。小っ恥ずかしい……い、家で話そう。それでいいか?」
「お、おう、そうだな…それがいいべ。急いで帰ろうな!」


オレと明日香は同じ二世帯住宅の住民で、同じ屋根の下で暮らしている身だ。
なんでも、オレと明日香のおばあちゃんとお母さんと三世代で幼馴染である縁から、
思い切って明日香の家を増築する時にオレの家族が呼ばれたらしい。
らしい、というのは、そのときオレたちはまだ幼稚園に通ってた歳で、そのころの記憶があやふやだから。
そんなわけで、オレが明日香の部屋にいるのも日常茶飯事。誰も気に留めはしない。その逆だってそうだ。

「…さて、お膳立ては完璧だべ。
飯は食った。風呂は入った。お母さんたちは寝た。もう後は明日香がその本の内容を話してくれたら後は寝るだけ。
あ、でもちょっとタンマ。…やっぱ読む勇気でてきたべ。ちょっと貸して。」
「え、そうか。じゃあ私は寝てるから、読み終わったらカバンに入れておいてくれ。」
「ん、了解。」



『息抜き』
今までこの言葉が意味するところはタダの休憩でしかなかった。
だが、日常の一環でしかないこの言葉は、この本の中では、非日常であった。
オレは、この瞬間ほど天地がひっくり返った感覚を覚えたことは以前にも今後にもなかったと思う。
物知りな梓は、このことをパラダイム変換と言うって後で教えてくれたが、それはまぁ今は深く触れないでおこうかな。

その本は、淡白に言ってしまえば、大人の女の人がギュウギュウに縛り上げられた状態であれこれして『息抜き』する、という内容だった。
まるで、捨てるために新聞をまとめておくように、
いや、それよりもしっかりと、
精密に、抜け落ちないように、
いや違う、抜け出せないように、
執念じみてるようなやり方で、ハムみたいに縄に身体を男の人に絞られて、
そのまま外に出て、
外でパンツを脱ぐことを強制されて、

その女の人は、終始一瞬たりとも苦しそうになんかしてなかった。
0058...2014/03/20(木) 09:42:15.97ID:n6BaJh+8
「…!?なん…?ど、どういうことだんべ、これ…?」
はじめ、オレの読解力が足りないもんだと思った。本なんて、推理小説くらいしかまともに読まなかったし。
この本は、二巻って書いてあるから、予備知識がなくてついていけないんだとも思った。
だけど、何回か読み返していくうちに、オレの足りない頭でも、分かることがあった。
「き、気持ちいいんか、これが、こんな仕打ちが…」
そう、心地よいと訴えているのだ。縛られ、屈辱を与えられ、苦しんで当然そうな行為の真っただ中にいる主人公の女性が。
『特殊な性癖』と明日香も言っていたから、これは特別な趣味の人を描いたのかもしれない。
でも、彼女は、主人公の女の人は、いかにも普通に世の中にいくらでもいそうな人で、
この人とオレと、何が違うんだろうか、と思う。
「オレたちが田舎もんだから知らねーだけで、東京の方では当たり前…なんだべか?」
そう思わざるをえない。家にパソコンはないし、あんまりテレビとかも観ない性分だ。
自分たちが時代から遅れてるだけかもしれない。
あんまり特殊すぎるものをテーマにして本にしたって商売になるはずがない。都会ではこれが流行ってるとか…
「…はぁーっ、考えててもしょうがねーべ。物は試し、だべ。」



案外、オレが呼びかけただけでアスカは目を覚ました。
普段ならよっぽどのことがあってもまだ起きないのに珍しいと素直に感想を言うと、なぜか赤い顔をしてた。
「隣でそこまで騒がれちゃ寝られないよ。」
「え、起きてたん?」
明日香はそっぽ向いた。目の前にちょこんと見えた明日香の耳が赤かった。


「えぇ?これ、やるのかい?」
「うん、だって気になるべ?」
「でもおかしい、こんなの試すべきじゃないと思う。」
「怖がんなって。お父さん言ってたぜ?『ガキは失敗してる方がふつうだ』って。
オレらから見ておもしろそうか…は別にして、こいつでやってること、本人たちは楽しそうだべ?」
ざっと読み返し、目的のページを開いて見せる。
主人公が身体のあちこちに縄が食い込み身動きできない状況で、それなのに台詞にハートマークがついている場面だ。
何がどう良いのかはわからないが、これが主人公には心地良いのはだいたいわかる。
それがどこからくるものかなんてオレには興味ない。問題は、それがオレたちにも楽しめるタチのものかって事だけだ。
「オレは試すっつっても、最後までやりたいだなんて思ってねーべ。
これだよこれ、これを体験してぇんだ。」
「いや、でも…私、どうやったらこんなふうに結べるかなんて…」
「別にこのページを完コピなんかオレらにできねーのはわかっとるべ。
ほら、適当でも見よう見まねでも何でもいーから、やってくれよ。頼むよ、明日香。」
「…わざわざ意固地に断る気にならないな。」
「おおーあんがとな。ちょっとここにビニールテープあったべ?それでやろう!」
「別に楽しくないと思うけどなー私は。」
「まだ言うかーそういう口はこうしてやるべ!」
「あいだだだだ!!!ちょっと!いきなり引っ張らないで!おかえし!」
「いでででで!!!」

一応年相応のガキらしいドタバタ騒ぎを一通りして、いったん仲直りのキスを済ませ本来の目的に向かう。
オレが明日香の机をガサゴソと探してヒモを調達する間に、明日香はベッドに座って本を読み返して復習する。
うわーとかうひゃーとか騒ぐ明日香を尻目に、わりと新品のビニールテープは思った通りに見つかった。
ちょっともったいぶり、どっかの緑帽子の剣士がやるようにババーンと勉強机の引き出しから出したが、明日香は見ていなかった。
…チッと心の中で舌打ちしつつ、明日香の隣にボスンと座る。
0059...2014/03/20(木) 09:43:32.05ID:n6BaJh+8
「読んだ?」
「…まぁ、前半くらい。」
「じゃあ、頼んだべ。明日香が分かった範囲でいいから。」
「うーん…そう言われても、手首の結び方くらいしかわからないよ?」
「じゃあまずそれでお願いすんべ。」
「後ろで結ぶからこっち向いてるとできない。」
「へっ?」
「…ほら、むこう向いて手首を合わせて。」
「ああ、ごめん。」
自分で言いだしてお膳立ての邪魔をするとは間抜けじゃんオレ。
とか思って眉をひそめつつ明日香に背を向けると、すぐにヒモがオレの手首に触れた。
ギュッっと力を入れてきてるから、ビニールがカサカサいってる。

手の甲を合わせたオレの手首に、ヒモがグルグルと三回横切る。
痛くない?と聞かれたから素直に別に何ともと返した。明日香はずっぽ抜けないようにそこから縦にヒモを通し、片結びする。
「あ、ハサミとってくる。」
「そうだな、オレもうこれじゃ無理だから頼むべ。」
そんなやり取りがあって、ヒモが本体から切り落とされる。
だいたいヒモってのは何かの荷物を結んで運ぶためのものだが、
この切れ端はその役目が果たせず何も運べないまま捨てちゃうんだなぁと思うと一瞬だけ申し訳ない気がした。
だって、おれ荷物じゃないし、このままどっかに運んだりするわけないし。

「…」
「…どう?なんか、楽しい?」
「いや、なんも。」
「やっぱり、私たちには関係ないんじゃないかな、この本。」
「まだほんの少ししかやってないべ?もっとやってくれよ?」
「ど、どうやってあんなのをやるんだ?もうここから先はわかんないけど。」
「んー、でもさ、これアレってよく見ると首とおっぱいのまわりと股でひっかけてるだろ?そこさえ押さえてれば適当でも大丈夫だべ。」
「ええ?…あ、ホントだ。でも、適当なんてノリで首にひもを巻きつけたりはだめだ。それは危ない。」
「じゃあ、それはナシで。」

…とは言ってみたけど、これが難しかったらしい。
始めは本にあるように一本のヒモで結んじゃおうと話をしてたが、これがどんだけやっても明日香にはどうしてもできなかった。
ならばといくつかのヒモに分けてやってみたが、これが上手くいきすぐに胸にかかってた二本の横線を再現できた。
…あの本では水着の上からおっぱいが強調されててインパクトが強かったけど、まだ成長してないから見栄えはビミョーかな…
それこそ明日香はちょっとくらい成長してるけど、オレはなぁ…

「次いくよ。」
「わかった、頼むべ。」
「…あっ、あんまりきつくするとお尻の穴がパンツについちゃう?」
「別にへーきだべ、そんくらいかまわねぇって。」
「そう…?じゃあやるけど…」
肩甲骨の高さで横に走る背中のヒモに、新たに背筋に沿ってもう一本垂直にヒモが結ばれ、下に伸びていく。
腰に伸び、尾てい骨を通り過ぎ、前に持って行って胴体を縦に半周するようにして同じヒモの前の部分にひっかける。
「ちょっと食い込んでたと思うから、グッとひっぱっちゃっていいべ。」
「分かった。」

と、明日香のヒモを握る右手に力が入ったとき、オレの中にヘンな感覚がぞわっと起こった。
はじめはお股に『ん?』程度にしか思わない、ズボンの上からくすぐられたくらいのピリッとするけど薄いさわられた感じ。
だけど、それがグイグイと明日香がヒモを手繰り寄せようとする力がかかるたびに、積み重なってお腹まで広がって大きくなってきた。
これって例えるなら耳かきされたようなぽわーんとした気持ち良さ…かな?
ん?気持ち良さ…?

「あ!ちょ、明日香!これだ!これ!」
「え、なに?どうかした…?」
「今、ヒモをギュッとしたとき、気持ち良かったべ!」
「えぇホント、どこが?」
「んー、なんか、じんわりとしてて分かりにきーべ。もう一回!」
「あ、そう…分かった、もう一度ね。」
0060...2014/03/20(木) 09:44:55.69ID:n6BaJh+8
胸のヒモにひっかけたヒモを引かれると、てこの原理ってやつでグッと身体にかかるしまりがきつくなり、ズボンごと股に食い込む。
その様をなんとなく見ていたら、その目線の先、おしっこを出す近くから、またあのヘンな感覚がやってきたのがわかった。
明日香が引くのに合わせてそれが強くなってきて、なんかお腹がもぞもぞしてくる。気持ち良いけど、なんかもどかしいなぁ。
あぁ、でも、ちょっとこの感じ、クセになっちゃいそう。もっとやって、もっともっと。
…んーでもなんかこう…お股の刺激が足りないよ。中途半端だなぁ。キュって引っ張ったりしてよ。
「あ、明日香、お股がビミョーに気持ち良いかもしんない、だからもっと強くやってみてくれよ。」


「…ねぇ、」
ヒモを掴んでいた明日香の手が脱力し、刺激が止まる。
あぁ…?と溜め息みたいに声が漏れてしまい、脱力感となにか失敗してしまったような脱力感を覚えた。
その声と態度をよく観察するように見つめていた明日香が、悲しいような羨ましいような寂しいような複雑な目でこちらを見ている。
「真剣な話、しよう。」
そのまま何も言わずに引っ張っていたヒモをはなし、手首と身体に結んでいたヒモもほどいてしまう。

「その…理紗はさ、お股が、気持ちいいんだよね?」
「ああそうだけど?」
「…本当にやめよう、こんなの、いけないよ。」
「何がダメなんべ?なんか知ってんのか?」
「う…そんなの、聞かないでくれ…」
「何だべ、水臭ぇな。今更オレらに黙っておくことなんてねーべ?言っちゃえよ、梓以外には絶対話さねーから。」
「ぐ…分かった、全部言うよ。
…はぁ、結論から言うと…その、今、私たちがやってることは…えっと…」
珍しい、いつもあっけらかんとしてる明日香が言いにくそうにしてる。
えっそんなすごいやっちゃいけない事だったのか?これ…


「えっちなんだ。」
「え、えっち?」
「そうなんだ、理紗が試してること、これってすごくえっちなことなんだ。」
「えっちって?あの、エッチ?」
「それで合ってるからそう何回も言わせないで…恥ずかしい。
えっと…確認したいんだが、理紗はお股を、ここを触ったことってあるかい?」
いきなりそれだけ言ってスカートに手を突っ込んでパンツを下ろす。ええ?いきなりなんだよ?
そして、オレとは違ってちょっとだけ毛が生えてる股間の真ん中、いつもオシッコを出してる周りを見せて丸くなぞった。
そんなところ、ばっちい感じがするから身体洗う時くらいしか触んねぇよ。

「いや、そんなとこあんまり触んねーけど。」
「だろうね。じゃあこことかあるかどうかすら知らないんじゃないかな。」
明日香は親指と人差し指でグイッとそこの中を押し広げる。
はぁー、この中なんて鏡でも使わなきゃ見えないけど、こんな風になってるのか。
…オレも中をのぞいて見てみるとこうなってるのか?口の中の皮みたいのがビラビラしてて気持ち悪い。
あ、でも、上の方にちょこんとある小っちゃいの、乳首みたいでかわいい。プルプルしてて触ると気持ちよさそう…
触ってみよ、えいっ。

「っふぁああっ!?」
オレがそのちっこい出っ張りをつまんだ瞬間、明日香の身体がびくんとはねた。…大げさじゃなくホントに腰が少し浮いたと思う。
え、なにこれ?これ押すと明日香ピクってなるの?いや、ホントにそうか?ってかよく見ると大きくなってる、ちょっと面白いかも。
もう一回、そりゃ。

「な、理紗っっつううっん!?」
あ、またはねた。やっぱり、これ触ると体がはねるんだ。
なるほどスネを叩くと足が前に出るって話聞いたからそんな感じなんだな!
…あ、長押ししてみたらどうなるだろう。おお、オレってばそんなところに気が付くとは頭いい!
物は試しだ、うりゃー。
0061...2014/03/20(木) 09:46:46.01ID:n6BaJh+8
「分かった、分かったからやめてってりぃいいいいいいさああぁあぁあ゛ああ゛!?」
えっ?明日香、痙攣してる!?うわぁ!?オシッコ漏らしてる!?
そんなっ、こんな、病気なのか!?明日香はここが病気なのか!?
「お、おい!?どうしたんだべ!?大丈夫かよ!?」
「…はぁ、はぁ、はぁ…理紗、お前ってやつは…」
「え?」
「こうなるってことを説明しようと思ってたんだ!
なに説明する前から見本を見せなくちゃいけないんだ!
いきなりクリトリスを触ったと思ったら、突然押しつぶそうとして…その、良かったけど、いきなりは、やめろよな…」
「…くりとりすぅ?」
「…あぁ、本当にそこからなのか…知らないって怖い…もういい、ハグしてくれたら許してあげるから…」

その後、オレは十数分もかけて明日香から説教されつつ性教育を受けることになった。
もちろん、ただ座って聞いているんじゃなくて明日香が漏らしちゃったオシッコの処理もしながらだ。
うわぁ、このオシッコ濃い。糸引くオシッコなんて初めて見たわ…
明日香はいろんなことを話したけど、とりあえず、オレが触ったところがクリトリスっていう女ならだれでも持ってるもので、
それが擦れるととてもエッチな気分になり、場合によってはエッチな気持ちがはち切れてしまうのだということは分かった。

「すごいなぁ、明日香も梓に負けずで物知りだべ。こんなこといつ知ったんだよ?」
「一人でお風呂に入ってた時に股から毛が生え始めてることに気付いて、どうにかできないかなっていじってたら偶然見つけたんだ。
私も理紗みたいに興味本位で触ったけど、すごくヘンな気持ちになったから怖くなってその時はやめた。
で、後になって調べてみたらこれがクリトリスって名前で、あの感覚は自分がエッチな気分になってるんだって事だって知ったんだ。」
「へぇー。」
「理紗が縛られて気持ちいいって思えたのは、たぶんヒモに押されてズボンがクリトリスとお股に圧力をかけたせいだ。
…つまり、理紗が感じた『気持ちいい』っていうのは、その、エッチな気分が盛り上がってるって、ことなんだ。」
「なるほど。オレも大人の階段を一つ上がったんだな。」
「だからこそやめようって何回も言ったんだ私は。本を見てすぐ変わったやり方だけどエッチをしてる話だって気付いたから。
大人じゃあるまいし、こんなエッチなこと、私たちはマネしない方がいい。
それこそ、好きな人とか、できたときとか…」
「明日香はオレとこんなことするのが嫌なのか?」
「へ?」
「いや、それじゃあまるで、明日香はオレのこと好きじゃねーみたいだべ?
でもさ、オレは別に明日香のこと大好きだから最後までやりたいな、それこそ、さっきの明日香みたいにしてほしい。」
「あはは、なに言ってるんだ。そんなの恋人を相手にとかさ…」
「恋人じゃなきゃダメなんてことないべ?この本の二人、そーゆー関係じゃないと思うけど?
だからさ、改めて頼むべ。これがエッチでオトナなことってわかってもさ、明日香に最後までやってほしいんだ。」
「ぐぅうう…あーもう理紗ってば…わかった。
…キスだ、その代わり終わったら感謝のキスをして。それでいいよ。」
「あんがと!さすが明日香だべ!」
嬉しくって前のめりになってほっぺにキスする。
キスの前払いだ。

「まったく、甘えるのばかり上手くなるから、梓に怒られるんだぞ?
…あー、いや、撤回。それを許す私も私だ。」
「なぁ、どうすればいいんだオレ?」
「エッチな刺激がほしいなら脱いじゃうのが一番だ、ほら、裸になって。もう一度結び直すから。」
「裸!?あの本だと水着でやってるべ!?」
「ダメだよ、慣れて雰囲気だけで楽しめるこーゆー人じゃなくて理紗は初心者なんだから。…もっとも、私もコレはよく知らないけど。
とにかく、気持ち良くなりたいなら素肌の上から触れるのが一番なんだから。ほら、脱いで脱いで。」
0063名無しさん@ピンキー2014/03/20(木) 19:44:28.69ID:T9pqKlfL
これって群馬?

最後の方まで女同士だってわからなかったからスレ違いなんじゃないかと思った
0064名無しさん@ピンキー2014/03/20(木) 20:23:53.36ID:IWdm3xaJ
いや名前で分かるだろ
よく知らないけど東北とかだと女でも俺って言う人もいるんじゃなかったっけ
正直標準語の俺女は受け付けないんだけどこれはすんなり読めたな
0065...2014/03/20(木) 21:39:53.26ID:n6BaJh+8
「…あれ?なんで明日香まで脱いでんべ?」
服を脱いで振り向くと、明日香がすっぽんぽんで座っていた。
脱いだ服を適当に置いているオレと違い、きちんとたたんで後ろに重ねている。
…うらやましい身体だよ、なんでオレたちずっと一緒なのに明日香だけ白くてデカくて胸も大きくなってんだよズルいよ早えーよ!
梓はともかく、なんで同じものを食ってるのに明日香はそんなに成長早いんだよ!
オレは普通だからまぁいいけど梓はチビだからこの前『ぱるぱるぱる…』とかワケ分かんねぇ唸り声出してたぞ自重しろ成長!

「着てても汚れると思うからね。」
汚れる…?別に外に行くわけでもないのに汚れる…?あ、オレも明日香みたいにオシッコ出ちゃうかな?
「オシッコ漏れちゃうからか?」
「…?いや、その可能性もたしかにあるけど…どっちにしろ、こうなったらパンツは穿いてても意味ないよ。」
えっパンツが意味ない?そんなもんなのか?
「ほら、もう一度結ぶから、後ろ向いて。」
「はーい。」
「はいは伸ばさないって先生に怒られるのに。」
「はいはい。」
「おちょくってるでしょ、いいの?跡が残るくらいギュウギュウに縛っちゃうよ?」
「やめて!それはやめて!痛いって!痛いから!」
「ミイラみたいにぐるぐる巻きにしてもいいかも。私が手伝わないと一人じゃほどけないようにしちゃったり…」

そう聞いて、頭の中で戦隊モノのヒロインが悪い奴らに捕まってる絵が頭に浮かぶ。
あれは真剣に嫌だけど、明日香が側にいてくれてるなら…
「うー…べつに明日香がそうしたいならいいべ。…明日香がいてくれるなら、そうされたっていい。
ギュウギュウに縛られちゃっても、明日香がいてくれれば、安心するし。」
「ちょっと…わりと真顔でそんなこと言わないで。…目覚めちゃったらどうすんのさ…
…あぁもう、テンションおかしくなってきた。さっさと済ませちゃおうさっさと!」

そんなこんなで、オレの身体にまたビニールテープを結びつけていく。今度はじかに当たるからさわさわしてくすぐったいよ。
それに、今度はこのヒモはエッチなことに使うってわかってて使ってるから、さっきよりもっと申し訳ない気分。
なんか明日香がおっぱい触ってきて超くすぐったいんだけど…なんかさっきから変だよ明日香…
「何だよ、触んなよ、おっぱいは関係ねぇべ?」
「一月くらい触り続けてたら気持ち良くなってくるようになるって。私が保証するから。
それに、揉むと胸って大きくなるらしいよ?」
「マジか、どれくらい揉めばいいべ!?」
「…言っておくけど、学校で揉んだらダメだからな。」
「えーなんでだよ?」
「いや、男子たちに悪いだろ。
…ほら、引っ張るよ?…今度はさっきよりずっと気持ちいいと思うから。せーの!」



あの瞬間、あの未知との遭遇をした瞬間の感覚は今でも、大げさじゃなくても今まさに感じているように思い出せると言い切れる。
グイッと引かれたヒモが、オレのオシッコの穴のところに入り込んで見えなくなるくらいに食い込み、そこを圧迫した。
それだけのことなのに、たったそれだけのことで、感じたことのない電撃のような衝撃が背筋に走った。
さっきまで感じていたのが静電気みたいなレベルだとしたら、それこそ今度のは雷に打たれたみたい。
全身がこわばってだらんと猫背だったオレの背中はシャキッと伸び、あまりの衝撃に息もできなかった…

…十秒くらい経っただろうが、それが十数分くらいに感じた。…それくらいの濃密な時間を、この刺激で味わえたんだ。
でも、だいたい気持ちいいって言う感覚は、何かすっきりする感覚とセットでやってくる。たとえば達成感とか。
なのに、オレの感じたあの衝撃は、オレの身体にしっかりとした爪痕を残し、
それはヤケドの痕みたいにオレを困らせるんだ、『もっと』って。
0066...2014/03/20(木) 21:41:01.33ID:n6BaJh+8
「…イッたね。やっぱり慣れてないと敏感なものなんだね。」
「…はぁ、はぁ、はぁ…
これ、これが、明日香がさっきおかしくなっちまったときに感じてたヤツ?」
「そう、だね。そーゆーの、『いく』って言うんだって。」
「はぁ、いく、か…明日香のおかげで、初めていく気持ちがわかったわけかぁ。あんがとな。」
「じゃあ、片付けようか。」
「あー待って待って、もうちょっと、もっとやってくれよ、明日香。」
「え?もっとなの?…欲張りだな、もう。」

と明日香は言い終わった後、『私だけじゃないんだ』と口元が動いたのが見えた。
なるほど、オレの今のまたさっきのをされたいって思いがエッチな気持ちそのものなんだってはっきりと頭の中でむすびついた。
明日香がさっきから妙にテンション高いのもエッチなせいなんだ。
…オレら二人、一回ずつイッてエッチな気持ちにエンジンがかかりっぱなしなんだ…!
あぁもう、ダメ…!なんか、お股がもっとヘンになってきたよ…
行くところまで行かないと絶対すっきりできない気がする…!

「なぁ、ここだけの話、明日香はエッチなことしたことあるのか?」
「…え?え、そんなこと…そりゃあ、そーゆー気分になっちゃったら、自分で何とかすることもあるけど…」
「それって、エッチなこと?」
「うぅ、そうだよ!そうだけど文句あるの!?たしかに隠してたけど、聞かれなかったから言わなかったんだから!」
「じゃあ、それを今オレにやってくれよ。明日香が普段やってること、オレに教えてくれよ。
かわりに、明日香がエッチになったとき、手伝うからさぁ、いいべ?」
「…はぁ!?…まったく、理紗がそんなに変態なやつなんて思ってもなかったよ。
そんなにイキたいなら…限界までイカせてあげるよ…!」

明日香は、オレのお股のヒモの端を左手で持つと、それを少しずつ手前に引いてお股を刺激する。
ゆるゆるとした刺激ではあるがそれでも腰が浮いているオレのその股間をじっと見つめると、そこに食い込んでるヒモを引っ張り出した。
当然、お股の刺激がなくなるわけだから、オレは刺激がなくなってすごくもどかしくなる。
はぁ、はぁ、と全力で走ったみたいな息が出て、体が熱いし頭の中もボーっとする。
そのせいか、お股の汗がひどい。ねちょねちょ言ってる。
…あっ、悶々とするってこういうことなのか。
「何してんだべ、早くやってくれよ。」
「そのための細工をしてるんだよ、ほら、見てよ。」
指差された先のヒモを見ると、爪で縦に裂かれていた。その穴に人差し指を通している。
んー…?ビニールテープは縦に裂けるもんだけど、それがどうしたんだよ?
「ピンとこないみたいだね、面倒臭いしそのまま実演しようかな。」

と、そのまま人差し指ごとヒモを元の位置に戻す。
え、ってことは。…はああああ!?す、すっごいゾクゾクして、体中鳥肌になりそう!?
「ちょ、ドコに指突っ込んでるべ!?てか、何!?今の感覚!?明日香、知っててやってんだよね!?」
「もちろんだよ。今、この指が入ってるのはズバリ、膣だ。」
「ハァっ!?なんつー所に指…っ!?マジで、何、この感じ…!?」
「そうなんだよ…不思議で気持ち良いだろう?普通の女の人は普段一人でエッチするとき、ここをいじるんだ。
まぁ、私も理紗も処女だからそんなに乱暴にはできないんだけど。
クリトリスよりもじわじわ来るから、私は好きだなぁ。」
「え、ちょ、それってさ、もしかして…」
「気付いたみたいだね。…二点責めとか言ってたっけね。
クリトリスと膣、一気に二つとも擦ったら…飛び切りの気持ち良さだよ?」
ヒモを持ってる左手を親指立ててグーの体勢にしてるけど…いや、オレとしては、やめてほしいな。
だってさ、クリトリスだけの刺激で息もできないくらい敏感なんだよ?オレ。
いやさぁ、そんな簡単に受け止めきれるものじゃないと思うんだ、きっと。
だからさ、その、左手をさ、そう、引っ張ったりしないでって、
膣の中でくちゃくちゃするのやめてって、
あっ引っ張るのダメだってぇ!
0067...2014/03/20(木) 21:42:55.03ID:n6BaJh+8
「タンマ、心の準備がまだぁああああああんぎぃいいいいあああああ!?!?」
「あー聞こえなーいさっき問答無用でクリトリスをグリってやった理紗の声聞こえなーい。」
「あああああストップストップぅいいいやああああああがああわわあああ!?」
ひいい!イッてる!イッてるのにまだ上書きされて、いく!
違うっ、どんどん積み重なって一つの大きな『いく』になってる!
こ、怖いっ怖いよ!振り切れちゃう!
全身つっぱっちゃって、自由になんないし、頭気持ち良いでいっぱいで他は空っぽだし!
「いろいろ考えることはあるだろうけど、今は全部洗い流してよ理紗。私と、エッチな気分だけで脳みそと心臓を満たすんだ、いいね?
ほら、親指でクリトリス押しつぶしてあげるから…行ってらっしゃい。」
はい…というと思ったか!?バッカじゃないの!
いや、何って、明日香のことを頭の片隅に置くことができないくらいすごいんだってばぁああああああ!!!
はあああ!?なんか大きいのくるっ!頭真っ白でわかんない!これわかんないよォ!
「いぎぃいいあああああああああっっ!」

あ…オシッコ、漏れちゃった…
「すごい、もう潮吹けるようになったんだ。」
知らないよぉ…オレの知らないこともう言うなぁ…
もう休ませろー…あー…目が、まぶたが、重い…



気がついたオレが最初に見たモノは添い寝して優しい笑みを浮かべて頭をなでてくれていた明日香だった。
そのお母さんのような愛を感じる顔にオレは笑顔を返して両手を差し出して…
「寝ながらハグなんて甘えん坊だなぁ…いだだだだだ!?」
全力でベアハッグした!
「痛っ!痛い、いだだだ!
…おい、理紗ぁ!何するんだ!」
「それはこっちのセリフだべ!?こっちの意見聞かないで無理矢理最後までして!オレはストップって言ったべ!?」
誰だってこんなことをされたら怒ってもいいと思う。正直刺激が強すぎて辛かったんだよ!
ふざけんじゃねぇ!誰がここまでしろって言ったよ!?ほどほどってものがあるだろほどほどって!

ベッドから起きてもオレの怒りは収まらなかったし、オレの不平不満も出続けた。
それを聞いてる明日香は、申し訳なさそうにしていたけど、どこか子どもが親を叱ってるような余裕があるのが腹立つ!
「ふん、こんなひどい目に合わされるなら、エッチな気分になんてならねーかんな!」
「そんなこと言って、理紗はイケナイ女の子だ。私がここまでエッチになったのは初めてなんだよ?きっと、理紗のせいだ。
ほら、ゆっくりと鼻で息をしてよ…すごい匂い。これ、ほとんど理紗が出した女のフェロモンなんだよ、たぶん。
…もう、これから一人でエッチな気分になったら、理紗の顔を思い浮かべながらじゃないと出来そうにない。…前からだけど…」
「じゃあ、そのときはオレを呼んでくれよ。明日香がエッチな時はオレが手伝うし、
もしオレがエッチな気分になったら明日香が手伝ってくれればいいべ?それでおあいこならいいだろ?
あ、それに、梓も加えないといけねーか?あいつ、こーゆーことも知ってそうだし。」
「り、理紗…
うぅ、だめ、そんなこと言われちゃ我慢できない…」
「へ?明日香ぁ?なんか、えっ、どうした?」
その瞬間、明日香の手が視界から消えた。そして、背中にベッドの感触を覚えた。あと、明日香の目が据わってる。
「そりゃ……理紗がさぁ…あんまり誘うようなこと言うからだ…理紗が悪いんだからね?イケナイ理紗は今からオモチャだ。」
え…ちょっと、明日香…?意味わかんないよ?耳元で話さないでよ、くすぐったい!
てか、それと胸を小突かれて倒れたオレの上にのしかかってる今の体勢の何が関係してんの!?
ちょ、キスなんかしてる暇あるなら説明してよ!そんなの後でいいだろ!?
えっ、そんな、ベロを突っ込んだりしないでよ…!オレのヨダレを舐めないでよ…いや、そんな、口のなかドロドロにしないで…
0068...2014/03/20(木) 21:44:06.55ID:n6BaJh+8
「理紗ぁ…りさぁ…りさ…ん、ぅん…理紗ぁ…」
だから、お股をくっつけてる暇があるなら説明、して、よ…
あああ…やめ、てって、そんな、ぴったり合わせたら、気持ち良くなって、考え、られなくなるって…!
くぅう!だから、くちゅくちゅ音たてたらオレ、また、エッチな気分に、なっちゃうって…
んっ!?ベロを吸うなぁ!
っふぁ!?膣に指を突っ込まないでって!っぁ、だめだって、こんなの、ホントのエッチみたいじゃんか…!
分かったから!分かったからおっぱい揉むな!全部やめて!エッチ通り越しておかしくなるぅっ!
「理紗ぁ…大好きだから…りさぁ…私のために、善がって…喘いで…くれ…!」
うわああああんバカ!誰がここまでしてって言ったのさぁ!やりすぎ…ぁ、やば、イッちゃ…ぅ、ぁ…
「…んっ!ぅク…ひぃあ!ぅぁっ!…くひぃ……」
ダメだ…我慢、できなかった…は、恥ずかしすぎる…こんな、強引で一方的にやられたい放題にされちゃうなんて…
「…イッたね…良い顔だよ、最高にドロドロで、エッチで、素敵だ…!
大好き、大好き、大好きだから…これからもそんな顔見せてね、理紗…」
何だとぉ…ムカッときた。オレだって明日香のこと好きだよ。だけどこんなの納得できないぞ?
あぁ分かったよ。これが明日香がオレに『好き』って伝えるやり方なんだな?じゃあオレもそれに乗ろうじゃねぇか。
「…ぅう、許さねぇべ…次は、明日香がこうなってもらうからなぁ…この変態…!」

とは、口では言ってみたけど…
「ふふ、じゃあ、今度こんな気分になったときは、こんな変態をよろしく頼むよ、理紗。
…ねぇ、このまま寝よう?…朝までこうしてたいんだ。」
「…せめてさぁ、パジャマ、着よう…っくは!?」
「だめ、パジャマなんて着てたら理紗のココいじれない。…朝まで、抜く気、一ミリもないから。」
「うぅー…そりゃあんまりだべ…」

なんだろう、オレ、これに関しては一生明日香に勝てそうな気がしないんだけど…
うーん…まぁ、明日香が相手なら負けても悪い気しないかなぁ…あーあ、明日香が男だったら付き合うのになぁ。
…あれ、なんかオレ、明日香のことおかしな目で今見た気がする。
ああもう、気まずい…寝よう…
「そう簡単に寝れると思わないでよ。」
「ひにゃぁ!?あ…ちょっと…んあっ…はっ…ダメっもう寝かせてってぇ!」
「…分かった。」
「…ふぇ?」
ちょ…っ!?今、いく寸前!ギリギリのとこなんだから一思いにやってよぉ!
「寝かせてほしいんだろう?じゃあ寝てもいいよ、私は理紗のココに指を入れてるだけで満足だから。
そうだなぁ…もし、これ以上を望むなら、私にとびっきりだらしない声でおねだりしてくれたら、いいよ?
ほら、そんな顔しないの、一緒に寝ててあげる、離れないから。
…我慢するだけだろ?」
うわああああん梓ぁ!助けてぇ!



翌朝、
ツヤツヤとした生き生きとしてる笑顔をしてる明日香と、げっそりとして目がギンギンなオレを見た梓がギョッとした顔をしていた。
お、お前のせいで、こうなったんだろうが…!
い、いつか巻き込んでやる…梓も、明日香にもみくちゃにさせてやる…
0069...2014/03/20(木) 21:44:52.35ID:n6BaJh+8
「同人誌を忘れた?あたしが?
…あぁ、アレ同人誌じゃないよ。よく見なって、普通にただの漫画だよ?街に出れば普通に本屋に売ってるって。」
梓のあっけらかんとした顔に、明日香もオレも目が点になっている。
んな、バカな…フツーに漫画として売ってるものがあんなにいかがわしいって、アリかよ!?

「え!?だ、だって、内容が…アレだべ?」
「はは、やっぱり見たんだ?
どうよ?ちょっとテンション上がるっしょ?」
「て、テンション上がるどころじゃない…えーと、その…」
「はいはい頑張って言おうとしなくても分かるから。いやー、思ったとおりやっぱり効果あったね。」
「ちょっと待てよ、わざと置いてったっつー口ぶりして。そんじゃまるで、」
「あぁそうよ、わざと置いて行ったわ。明日香に見えるように、明日香と理紗がそうなってくれるように、ね。」
「…なにそれ、どういうこと?」

「どういうことも何も、あたしはあんたたちのために発破かけてやったのよ。感謝しなさいよ。
あんたたちね、初心なくせにいちゃつきすぎなのよ。だからそいつでちょっとオトナな遊びを見てもらったってわけ。
だいたい普通、友達って一緒に風呂に入ったりしないし、それをあたしに嬉しそうに話したりしないわよ。」
「いや梓、それは違うべ。同じ家に住んでるんだから、それくらい当たり前だべ。」
「当たり前…じゃないわよバカ!家族とももう一緒に風呂に入ったりとかしないの!普通!15歳の普通!
それに、もうあたしらの歳でキスしたらそれはファーストキスなの!それをあんたらはどこでもここでも…!
…はぁ、もう誰の目から見ても分かるわよ、あんたらがデキてることくらい。
それなのに、あんたら自覚なさすぎ!あたしはねぇ、去年からずっとやきもきしてんのよ!あんたらが鈍すぎて!」

「…え?でも、私も、理紗も、女…」
「バカっ、男女だから恋するって限らないでしょうが。普通はそうだろうけど、あんたらは例外。
それだけのことなのに、なんで気付かないわけ?あんたらみたいなの、百合っていうのよ、百合。
…意味ぃ?そんなの自分で調べなさいよ。普通にすぐ検索すれば出るから。
あーもー、ウブ過ぎんのよあんたら。ちょっとは亀仙人とかジャンとか黒子とかあーゆー連中みたいな発想出ないかなぁもう。」
「誰だんべ、それ?」
「えっ、あ、あんたたちは知らなくていいの、バカ!」

梓はややオーバーリアクションな感じで顔を真っ赤にしながらいろいろな事をしゃべり続けた。
ようするに、オレと明日香は女同士だけど恋人で、気付かないうちに甘い雰囲気をまき散らしていたらしい。
オレは明日香に恋してるなんて自覚はなかったし、それは明日香も同じ。それが今まで気恥ずかしくて仕方なかったと梓は怒っていた。
『ホント呆れるわ。その、エッチなことまでして、気付かないなんて…』と愚痴るときなんか細かく震えてたからその怒りは相当だ。
「とりあえず、これで理解したでしょう?あんたたちがやってることは恋人同士でいちゃついてるのと全然変わんないの!
だから、人前ではそういうことしない!バカにされるよ!?」
「でも、私には理紗を…」
「ノロケも禁止だからね!?」
「むー…」
0070...2014/03/20(木) 21:46:17.94ID:n6BaJh+8
ひとしきり今日も6回の授業が終わり、下校の時間になった。
集中なんてできるはずがなかった。視界の端に見えていた明日香が気になって、それどころじゃなかった。
そりゃそうだろう、今まで実感がなかったけど、漫画とかで散々見た『主人公の恋の相手』のポジションが目の前にいるからだ。
それは、隣の席の梓も一緒だったらしい。
まぁ、それはそうだろうなとも思う。自分だって、普段話してる先輩に彼氏ができたと聞いたときは会うたびに気まずかった。
それが梓の場合、幼馴染二人が相手だ、さっきの国語の授業で出た言葉で言うなら心中察するに余りあるってところだ。
校門までやってきて、明日使う教材を持って帰ろうとしていたことに気付き、重いから置いて帰ろうと二人で引き返す。

夕焼けのオレンジの光と部活の喧騒とが差し込まれた教室には、梓が一人机に突っ伏していた。
その脇には、昨日と全く変わらない位置に、あの本。
「こんなことまでして、あたしが譲ったんだから、幸せになんなさいよ。…ケンカなんてしたら、あたしが盗っちゃうんだから…
…ふざけんじゃないわよ。なんで、なんであたしだけ普通に蚊帳の外なのよ、なんであたしだけ全部分かっちゃうのよ。
バカ!…バカ…」


始めはただの独り言だったその声は徐々に大きく、震えた声になり、
最終的にはオレらがいる廊下どころか、外のグラウンドにも届きそうだった。
譲った…って、どういうことだ?意味分かんねぇ。
「…?おい、明日香見ろよ、梓のヤツ泣いてるぞ?」
「あ…本当だ。でも、放っておこう『泣いてるやつは気持ちの整理がつくまで泣かせておいた方が心理学的にいい』とかって梓言ってた。
何があったか知らないけど、傷をえぐらないようにそっとしておこう。」
「そんなもんか?…まぁ、梓が言ったならそんなもんか。」


それから、梓は、彼氏ができた。
梓とその彼氏、オレと梓。二つのペアで落ち着き、三人でつるむ機会はピタリとなくなった。
それは梓が彼氏と別れてからも、次の彼氏ができてからも、高校でまた同じクラスになっても変わらなかった。
そして、中学を、高校を卒業し、三人は散り散りになった。
オレは家業を継ぎ、明日香は都会の方の大学へ進学。梓は夢のためと言って上京した。
それでも明日香は三連休とかちょっとした休みが来ると決まって帰ってきて、オレの仕事を手伝ってくれた。
そのたびに水分補給をするように互いを蜜を味わい、肌の感触を楽しんだ。
ちなみに、オレらはまだ処女だ。
理由はいくつかあるけど、とにかく俺らの間に野暮ったい大人のオモチャとかはそもそも必要なかった。縄一本あればいつも事足りたし。
とにかく、人並みより幸せと思える人生を過ごしてる自信が、オレにはあった。
オレは、明日香が好きって時点で本当に幸せ者だったから。



終わらせる
0071...2014/03/20(木) 21:48:44.78ID:n6BaJh+8
お粗末さまでした
百合+SM+無知シチュで考えてみましたが、ちょっと無茶ありましたね。精進します。
0075名無しさん@ピンキー2014/04/08(火) 13:01:17.30ID:DwSpJ/zE
ファンタジーものが投下されていたので魔族×女騎士で百合SMしました。
分割が面倒だったので↓のページに投稿という形で失礼いたします。
ttp://www.titleblank.com/page/534373c5ebb227b340f3f433?libraryId=4f339952e4b005b7bed47a0b
0076名無しさん@ピンキー2014/04/10(木) 01:05:51.80ID:iDJv5qB0
>>75
某所で同じ物を拝見しましたがすごく良かったです
国に忠誠を誓う女騎士の裏の顔にギャップがあって、そのことに自身も悩んでいる姿がいいですね。本来なら性的な対象である二人の手練手管に足掻きながらも堕とされてしまうなにもかもどろどろとした絶望的な展開に引きつけられました
ロリおねいいですね!
0077名無しさん@ピンキー2014/04/10(木) 10:50:12.24ID:FyIgFGAA
ねちねちしててイイヨー

で、美しい女騎士は自動的に捕まるようになっとるんかいw
0078名無しさん@ピンキー2014/04/11(金) 01:50:31.48ID:boWbdjzz
うはぁ…この前はださくを放り込んで申し訳ないって謝りたい気分
エロってこう言うことを指すんだね
0079名無しさん@ピンキー2014/04/13(日) 19:09:05.25ID:E/ZkyZQk
ロリ百合って少ないよね。
ロリコンのお姉さんにイタズラされる○学生のおんなのことか
0080名無しさん@ピンキー2014/04/13(日) 19:42:43.04ID:7er3yCYX
女子高生×女子小学生スレならレズ・百合萌え板にあるよ
0081名無しさん@ピンキー2014/04/13(日) 22:12:45.65ID:SsBO6YXf
というか渋の方でおねロリでタグ検索したほうが早いような
0082名無しさん@ピンキー2014/05/06(火) 22:06:05.36ID:EQDYMaFq
無口系お嬢様に調教される黒髪おかっぱのメイドと申したか
0083名無しさん@ピンキー2014/05/13(火) 21:07:49.81ID:34Ygj5dG
(・∀|

倉庫のをちまちま直してたらいつの間にかドヘンタイになったので、おすそわけ
百合というかレズ レズというかお嬢さん責め 汁注意

改行どうしよーかなー エラーがわからんよー
00842014/05/13(火) 21:10:09.95ID:34Ygj5dG
変態紳士アレクサの遊戯 その2 鏡の中の円舞曲


皆さん御機嫌よう、私は変態紳士です。

今回は優雅なワルツの演奏会をお届け致します。
穏やかな子守唄のような三拍子の中で、いったいお嬢さんはどんな表情を見せてくれるのでしょうか? 
それは、この後のお楽しみです。


本日の舞台はウォークスルーのクローゼットが幾重にも並ぶお屋敷のドレスルームとなります。
ここでアンティークの椅子に座り、長女のヘアメイクを受けているのが前回、えもいわれぬ姿で絶頂に達してしまったお嬢さんです。皆さんはあれから日数が経ち本格的な行為に及んでいるとお思いでしょうか? 
実はそんなことはありません。
お嬢さんはもともと清らかな方なので自分から大胆に迫ることなどしませんし、何よりも私が長女に手をださないように(キスぐらいは許しますけど)仕向けているのです。

なぜって?
それは、私が変態紳士だからです。
00852014/05/13(火) 21:13:17.91ID:34Ygj5dG
なめらかなスリップの下着姿で身体の線を露にしたお嬢さんがちょこんと肘掛椅子に座っています。
目の前には足元から大人の背丈をゆうに越える大鏡が据えられていますが、これは左右の端を内側に折ることのできる優れものなのです。
この利点により、少女たちは自らの思いもかけない変貌をあらゆる角度から目の当たりにして心躍らせながら、スタイリストの魔法のような指づかいに心酔していくのです。

ところが……ここ最近のお嬢さんはちょっと違うのです。
庭やお部屋で戯れているときは普通の様子なんですが、こういった肌を出すような危うい状況になると途端に黙りこくってしまいます。明らかに長女の指先の感触を意識しながら、その瞳はうつむき加減に鈍く沈んで。


長女はやさしく少女の髪に触れながら、問いかけます。
「どうしたの? 今日は具合わるい?」
「……………」
まあ、確かに頬はほんのりと染まっていますけど、それは彼女の指が触れる場面ではいつものことです。
00862014/05/13(火) 21:14:35.47ID:34Ygj5dG
「もしかして、こないだの髪型が気に入らなかったとか?」
「……………」
「そっかあ、あれはイマイチだったかあ……」
思案げに首を傾げていると、お嬢さんがいじけるように口を開きました。
「だって……わたし可愛くないもん。
こんなふうにしてもらってもぜんぜん似合わないもん」
長女は驚きながら言葉を返します。
「なんで? いつも最高に可愛いと思ってるわよ? 
……う〜〜ん、わたしの腕がまだまだ未熟ってことかなあ」

少女は即座に首をふりふりしました。理由はよく分からないけれど、なにか拗ねてしまっているようです。
まだお化粧に手をつけていない長女は櫛を止めて少女の顔を覗き込みました。
「おかしいな……こんなに可愛いのに………。
わたしがすぐしたくなっちゃうくらいに―――」

口元がそっと寄っていくと、意外にも彼女はそのまま受け入れました。
やがて舌先を閉じた唇に割り込ませようとすると、それはむしろ簡単でお嬢さんは従順そのものでした。
00872014/05/13(火) 21:16:41.05ID:34Ygj5dG
ああ、わかった。
あれから何もしないから、逆に拗ねさせちゃった?

そうだよね。まだ自分に自信ないものね。
でもね、わたしは正真正銘に可愛いと思ってるんだよ。
とびきりのとびきりに愛らしくて、
砂糖菓子みたいに溶けてしまわないかって心配になるくらい。

ごめんね。
不安にさせて、ごめんね。


長女はおだやかに歌うように少女を愛し、鈍く陰っていた彼女の心に澄んだ水のような言葉を伝えていきます。
やわらかな舌が幼気な少女の口内をやさしく埋めていき、まだ何も手をつけていなかった艶やかなその髪にはそっと手櫛を通しながら。
その内に少女の頬に暖かみが戻り始め、はかなげに吸いあわされる唇がだんだんと粘り気を帯びはじめると、お嬢さんは長女の気遣いにごめんなさいと、すこしずつ震えるような愛撫でこたえていきました。
00882014/05/13(火) 21:17:48.26ID:34Ygj5dG
やがてそっと肩を放すと、長女は彼女の頬っぺたを両手でにゅーっとひっぱりました。
「ねえ! 自分がどんなに強力な笑顔を持ってるかわかってないでしょ!
この子悪魔め!」
ぷちんと指を離すと目をつぶってお嬢さんは痛がりました。
そうして長女が笑って、心がほどけたお嬢さんもわらうと、また木漏れ日の笑顔が舞い戻ります。


実は――この場面はちょっとした計算外で私もすこし冷や冷やしました。
たしかに繊細なお嬢さんは行為を求めないことで逆に傷つくというのはあり得たかもしれませんが、まさかこんなふうに拗ねてしまうとは。
まあ女性心理の複雑さは男性である私には窺い知れないところがある、ということでご容赦いただきましょう。

繰り返しますが、お嬢さん方を泣かせるのは私の本意ではありません。
お間違いなく。
00892014/05/13(火) 21:54:29.18ID:34Ygj5dG
長女とお嬢さんは好きという気持ちを乗せて、今度ははっきりと舌を絡ませていきます。
心が通じあうとなんと心地よく、幸福感に満たされるのでしょう。
お互いを求め合うその唇はあたたかく繊細に相手を想いやりながら、少しの切なさも伴ってどこまでも深く深く重ねられていきます。
そして、少女よりも断然、経験豊かな長女は彼女の身体の中に燻りはじめた欲望の熱を敏感に感じとると、より露骨な行為へと変えていくのです。

彼女のあごを召使のように指で反らすと、鋭い視線で命令するような言葉が放たれました。

「舌を出しなさい」

お嬢さんは慣れない仕草でお人形さんのように言われたとおりにします。
赤くぬめる舌先を柔らかな鼻筋の下から従順に伸ばしていくその姿は彼女の幼い顔立ちにまるで似合わず、ドレスルームには急激に淫靡な匂いが立ち込めてきました。
00912014/05/15(木) 00:53:28.72ID:bRb2gmcB
お嬢
00922014/05/15(木) 00:55:31.19ID:bRb2gmcB
濡れた花びらの果肉がひらかれ、糸を引く唾液が少女の欲望を裸へと剥いていきます。
とがった可憐な舌先は大人である長女の唇のひだでねっとりと締めあげられ、恍惚の水音とともにゆっくりと根本までこすられていきます。
まるで男性器のように、側面、裏表を粘りつかせながら丹念に、ときにはさきっぽを舌先でくすぐりながら弄んで。
お口を必死にひろげて長女のすべての行為を受け入れているお嬢さんは鼻に抜ける陶酔の吐息を漏らしながら、どろりと落ちてくる粘液を喉の奥へと伝わせていきました。
そのうちに、うまく受けることができなくなって、だらしなく汚れていくちいさな花の唇。

やがて、長女の手が下着の上からお嬢さんのふくらみをまさぐり始めると、とうとう彼女が待ちわびた瞬間が訪れることとなりました。
00932014/05/15(木) 00:56:55.37ID:bRb2gmcB
するすると長女の手のひらが滑らかな下着の上を這い回っていきます。
薄い水のようなスリップは甘美な衣擦れの音を立てながら肩紐を落とされ、少女の瑞々しい胸元が露になります。
身体を震えさせ、もっと、もっとと求めていく本能。でも、長女はそのとおりに行為をエスカレートさせてはいきませんでした。

なぜって? それが私の趣向だからです。ごく普通の行為でそのまま絶頂なんて、そんな味気ないことはしませんよ。
ここからが変態紳士の遊戯の始まりです。私のお気に入りのお嬢さんには、快感に肉体を支配されてなお、苦しんで苦しみ抜いてもらいましょう。

もう一度、すべてを出し尽くしながら、さらに激しいお漏らしをしてしまうように。
00962014/05/16(金) 19:08:46.98ID:M8vWz9Ps
(・∀|

未練たらしく気になるとこ直してる(迷ってる)ので、遅くってアイムソリソリ
00972014/05/16(金) 22:13:23.16ID:M8vWz9Ps
長女はお嬢さんの恥丘を指先でくすぐりながら、予想外のことばを耳元に囁きます。
「ね、自分でしてみて」
すでに興奮の高みにある少女の朦朧とした意識は、その甘い響きに従うことも抗うこともできず、苦しげな息の中で懇願するような困ったような表情を浮かべます。
彼女の欲望は憧れの女性にもっと深く愛してほしい、ただそれだけなのに長女は意地悪く悪魔的な声でささやくのです。

「この間、すごく感じてたから
もう全部知ってるわよね」

「ねえ、自分で気持ちいいところをさわって
可愛いオナニーをわたしに見せて」

長女は下腹部をまさぐっていた手を、わざと太腿によけてしまいます。
もう触らないわよ? 欲しければ自分でしてね、と言わんばかりに。そうして、しばらく焦らした後、長女の手はこれまでとはうって変わって、お嬢さんの胸の先に露骨に指を掛けていきます。
0098102014/05/16(金) 22:15:41.57ID:M8vWz9Ps
「あ………… んっ…………」

ブラの上から絡め取るような指使いが痺れるくらいに快感神経を貫くと、布一枚にこすれる乳首がじくじくと疼きはじめる肉ひだへの愛撫を要求していきます。
長女の胸への刺激だけで、お嬢さんは割れ目からはしたない涎が漏れ出てしまっていることを感じました。

さわって。さわって。さわって。

さらなる愛撫を求めて熱を帯びていく彼女の肉体は、しかし猛烈な官能に襲われて声に出すことはできません。
とうとう長女が彼女のブラをぷるんと捲りあげると充血したみずみずしい乳首が可愛らしい膨らみの中に立ち上がりました。
なんと綺麗で、なんと魅惑的な乳房でしょうか。感じている胸を見られた気恥かしさも興奮の高まりに一瞬でかき消され、彼女はただひたすらそこへの愛撫だけを甘く切望します。
0099112014/05/16(金) 22:16:50.19ID:M8vWz9Ps
下着の締め付けから開放された胸の先は固く勃起して長女の指先を待つばかり。
でも、しつこくも彼女はそこを直接には触れずにお嬢さんの理性を乱しにかかります。揉みしだかれる胸はえもいわれぬ感触でかたちを変え、跳ねのけたブラのフチに剥き出しの乳首が当たって不意の声を誘います。

苦しげにいたぶられるような吐息を漏らすお嬢さんに、また悪魔のような一言が投げかけられました。

「ショーツのなかに手を入れたら、
いちばん欲しいところにしてあげる。
転がしたり、つまんだり、大好きでしょ?」

耳の奥深くを蕩かすような長女の言葉は、まだ肉の交わりを知らない少女を抗いがたい想像に狂わせて、ついにこらえきれなくなったお嬢さんは、愛液でぐっしょり濡れたショーツの秘部へ指を潜り込ませました。
理性の飛んだその行為に際限はなく、余った手も一緒に。
0100122014/05/16(金) 22:42:23.52ID:M8vWz9Ps
どこからかワルツが流れてきます。
気がつくとお嬢さんは鏡に囲まれていました。
右を向いても左を向いてもあられもない姿が映りこみ、鏡の中の自慰行為から目を逸らすことができません。

やわらかな少女の肉体はアンティークの椅子の中に囚われて、その下着は乱れに乱れています。
スリップの肩紐は落とされ、ブラは捲り上げられ、半裸となったお腹の上にはぷるんとしたお椀のような果実がふたつ。

女の子の匂いも少々立ち込めているでしょうか。


まわる まわる

熱に浮かされ
陶酔の吐息と
濡れた肌
秘密のあそび

まわる まわる

甘い蜜を垂らして
熱く熟した肉ひだを
やさしく指で
踊らせて
0101132014/05/16(金) 22:43:26.87ID:M8vWz9Ps
鏡に映った自分の姿がどれほどお嬢さんの興奮を高めたかは分かりません。彼女は見えているのか見えていないのか、朦朧とした瞳で指先に神経を集中させて、その華奢な手足を椅子の中で閉じています。
あかく腫れたまあるい鼻と頬っぺたが、彼女の幼い官能を示しながら深い呼吸とともに宙に揺らめきます。太腿の間でふくらんだ薔薇のショーツは愛液で濡れそぼり、蠢く指先を透かしながらゆっくりと伸びたり縮んだりを繰り返しています。

そうしてしばらくの間、一人で自慰行為をさせながら、長女は少女の下着をひとつずつ脱がせていきました。
もうすでに半裸となっていた彼女は嫌がる素振りもなくされるがままで、するりとお尻からショーツが抜き取られるとなだらかな腰のふくらみに次いで、魅惑的な陰部が姿を現します。
やわらかな太腿の合間から匂い立つような指の重なりが垣間見え、とうとう少女は生まれたままの姿でオナニーに耽るというこれ以上ないくらいいやらしい行為を長女の目の前にさらけ出してしまいました。
0102142014/05/16(金) 22:44:31.69ID:M8vWz9Ps
あらゆる角度から鏡に映りこむお嬢さんの肉体はなんと綺麗なのでしょう。
ほどよく肉付いたなだらかな曲線美の先にはピンク色の乳首がみずみずしく勃起して、その華奢な手首の下には恥丘の薄い毛が垣間見えています。
両手に包まれた女の子の割れ目の膨らみは、一心不乱な指の動きに覆い隠され、見えそうで見えないその危うさが長女の脳髄を最高に刺激します。

さあ、皆さん、今宵の美酒のご用意はいかがでしょうか?
ここからはより優雅に、情熱的な旋律をお愉しみください。儚げできらめくような終幕の前には音楽家たち渾身の高みをご覧に入れましょう。
0103名無しさん@ピンキー2014/05/17(土) 07:58:44.52ID:KVRUMctk
わっふる!わっふる!わっふる!わっふる!わっふる!わっふる!わっふる!
0104152014/05/17(土) 22:12:01.56ID:RlMqwn5u
長女の悪戯によって、両膝を肘掛に持ちあげられてしまったお嬢さんは鏡の向こうに自らのすべての形を晒してしまいました。
涎に濡れた陰部が充血して開き、膨らんだ唇はなにひとつ隠すことを許されず克明に粘膜の様子を見せています。
ところが、そんな状態にしておいて長女は、わざとすくない指先で彼女を弄ぶのです。

踊らせるのはひとつかふたつの指だけ。
優雅に、華麗に、ささやくように。

お嬢さんは同性が故にすべてを知り尽くしている長女に思いどおりに操られ、鈍く遅く、それでいてこの上なくねっとりと触られていきます。
まるで快感を受けるためのお人形になってしまったかのように、ただされるがままに下半身をびくびくと波打たせるお嬢さん。
長女はそっと撫で、吸い付くようになぞり、粘らせるようにこすり、柔らかい肉の突起をやさしくそっと摘みます。
あられもなく晒さけ出されたお嬢さんの陰部は、繊細な楽器のように震え、収縮し、欲望の蜜をとめどなく溢れさせていきました。
0105162014/05/18(日) 21:52:58.95ID:And+srAd
つんと鼻を突く女の子の匂い。ひらかれた内腿の素肌がうぶな薄桃色に染まり、敏感な反応を見せながら汗を光らせていきます。

「あああッ!…………… んんッ!………………」

甘く蕩かすように肉ひだの形を隅々まで教えこんでいくような長女の指使いに、少女は頭が蒼白になり、腰を何度もよじらせます。
朦朧とする視界の先にあるのは、鏡の向こうで涼しげな女性がもてあそぶ複雑な女の子のかたち。
彼女は鏡に映る姿が自分であることを頭の端では理解していながら、脳髄を刺激する淫らな陰部の動きに視線を離せなくなってしまいました。

ゆっくりと粘液の糸を引かせながら絡みつく肉のひだ。
おとなの指先が夢のように、歌うように悦びの道筋をたどります。

あまりにも静かに、あまりにも丹念に続けられる愛撫がお嬢さんの肉体に快楽の苦痛を与えます。
足先が痺れて反りかえり、力んだ下半身が逃げるように腰を引いても、長女は愛撫の調子を変えてくれません。
お嬢さんは泣きそうになりながら、喘ぐ口元で必死に声にならない懇願を繰り返します。
0106172014/05/18(日) 21:56:59.84ID:And+srAd
熱い。熱い。

助けて。助けて。


その内に浮かんでくる玉の汗は少女の赤く腫れた頬を落ちていき、まあるいお尻をベタベタにさせ、汗と愛液にまみれた強い匂いが部屋中に充満していきます。

足を肘掛に乗せられてしまったお嬢さんの開かれた肉体は、いまは性欲のすべてをさらけ出しています。
眉を寄せ、息が詰まるような喘ぎを繰り返し、びくっ、びくっとお腹が揺れても、まだ絶頂へと昇っていくことができません。
快感の芯を薄皮一枚隔てていつまでもいつまでも弄ばれているような感覚が少女の頭の中をおかしくしていきます。


お願い。お願い。

強く。もっと強く。


「………イカせて……………」


お嬢さんが最後の最後に絞り出した声は甘く、鼻にかかった極上の音色でした。
なんと可愛らしく、淫靡な唇の動きだったでしょうか。
0107182014/05/18(日) 22:10:20.45ID:And+srAd
あまりにも官能的だったお嬢さんの声をここちよく耳に入れた長女は、苦しそうに喘き続けるその口元を強引に塞ぎにかかります。
なにもできずただ受け入れるだけとなった少女の奥深くまで舌を捻じ込むと、最高にいやらしい姿を見せなさい、とばかりにその指は彼女の一番欲しかった部分をめいっぱいにひろげ、はしたない感覚器官の隅から隅までを鏡の中へと映し出しました。

焦らされて焦らされて、煮えたぎった肉ひだは彼女の欲望を満たしきるように剥き出しにされて容赦なく触り尽くされ、びくびくと官能によじれるその肉体はこれまでとは違って嵐のような恍惚に染まっていきます。
長女は激しい息づかいによって何度も外されてしまう少女の唇を追いかけながら、真っ赤に腫れあがる可愛い頬っぺたがほとばしる快感によって沸騰しているような様を目にしました。
少女のお顔のまるみは艶やかに濡れそぼり、強烈な性の匂いに砂糖菓子のような甘さをかぐわせながら、高熱に侵されたように悶え苦しんでいます。
0108192014/05/18(日) 22:12:20.43ID:And+srAd
長女がとがった胸の先をつまんでくねらすと、それは得もいわれぬ歓喜の声を引き出しました。
もっともっと欲しがりなさいと、唾液にまみれた長女の粘膜はやわらかく執拗に少女の舌にからみつき、はしたない性欲にうずもれた熱い芯のさらに奥深くの湿った根本までを強くこすりながら引きずり上げるように突き出させます。

狭い椅子を取り囲む大きな鏡は、刺繍のレースさえも身に着けない少女の素肌が踊る様を、ありとあらゆる角度から生々しく見せつけていました。
薄い毛の向こうに隠れる指の動きは正面の鏡によって粘液が糸を引きながらこぼれ落ちていく瞬間までも克明に映し出し、悪戯に押しつぶされてよじれた胸の乳首はその心地良い震えを別の角度からあらわにされてしまいました。
0109192014/05/19(月) 19:27:05.42ID:yqrZDXGb
(・∀|
一行いじるとその前後が影響されどろぬまに・・
というわけで時間を浪費しただけでちゃっちゃと終了
0110192014/05/19(月) 19:28:37.00ID:yqrZDXGb
絶頂までもうあと少し。裸の肉体が鏡の中で甘美にのたうつ姿に囲まれながら、ちいさな少女の鼻先が高く宙に仰け反って、快感の頂点を示します。
長女は眉をしかめてなお愛らしい恍惚の瞳にそっと伝えました。


眠りにつく前にぜんぶ出しちゃおうね。

大好きよ、かわいくて花のようなお姫様―――――


少女の意識が白く霞んでいくと、肘掛にあった脚は宙を跳ね、縮こまっていた両手は強く強く握り締められます。
とろとろに溶かされたクリトリスは指の間で裸に剥かれて、なにひとつ隠すことなく爆ぜる恥丘を鏡の世界に向けて差し出していました。
長女の手が頃合いとばかりに愛撫をやめて、お嬢さんの下腹部を前に突き出させると太腿をめいっぱいに開かせます。


「あッ! んッ! んんあああッ!!!

あああああッ!! ん、んッ!!

ンンンーーーーーーーーーーーッ!!!!」
0111202014/05/19(月) 19:30:17.45ID:yqrZDXGb
朦朧とした意識の中ですべてが弾け飛び、お嬢さんは何度も何度も恥丘を突き上げるような痙攣の中で粘液の涎をこぼしました。長女に押さえられて極限まで開かれたその脚は、指先を強く丸めて逃げることのできない引き攣りに耐えようとしています。
鏡の前でぐちゃぐちゃに煮えたぎった肉のひだは激しい動きを波立たせながら収縮が止まらず、赤ちゃんのおしっこのような格好でお尻をひろげられたお嬢さんは最後の最後で力が入りきらずに、声にならない声をあげてかわいいお鼻を震わせながら苦しみにあえいでいます。
まだ絶頂の嵐は収まりません。全身を突き動かす究極の高みは少女の下腹部を官能で狂わせ、理性を失った膣口はお腹を強くよじらせながら、とうとう目の前の大鏡に激しく熱い液体をかけてしまいました。
しかも、すべて終えたはずのお嬢さんを長女は許さずに、剥き出しの性感帯となっている肉をさらに触って、二度、三度とお漏らしさせていきます。

声とも息ともつかない鼻に抜ける高い喘ぎが絶頂の瞬間のように激しく繰り返されると、それに呼応して少女の恥丘は再び宙に突き上げられ、恥ずかしい透明な液体をどこまでも際限なく絞り出していきました。
0112212014/05/19(月) 19:31:58.34ID:yqrZDXGb
お嬢さんはこれ以上ないくらいに眉を引き絞り、苦しんで苦しみ抜いたあとにようやく力が抜けると、やわらかな頬をリンゴのようにあかく染めながら、壮絶な呼吸を静めていきました。
そして、ようやく緩んだ唇は玉のような恍惚に輝いて、まあるい幼気なお顔はすべてを出し尽くしたあとの心地よい放心に染まりながら夢のなかへと潜っていきます。
少女の儚げな肉体のなかで、快感の余韻にそそり勃った胸の果実はいまだびくんびくんと悶えを残して色っぽく艶やかに濡れていました。


それからだいぶ時間がたってから、糸の切れたお人形のようにぐったりとしていたお嬢さんはぼんやりと意識を取り戻し、ずっと待っていた長女の唇に迎えられます。
満ち足りた幸福とともに、お互いの気持ちをもう一度キスで伝えて。

長女が汗で張り付いた彼女の前髪をきれいにそろえてどかせると、あまりにも可愛いおでこだったのでそこへちゅっと口づけをしました。
少女の微笑みが春色に染まり、今度は本当に陽射しが訪れたかのようでした。
0113222014/05/19(月) 19:33:13.28ID:yqrZDXGb
さて皆さん、ここで遊戯はお終いです。
あまりにも行為で体力を使ってしまったので、お嬢さんは大変お疲れになってこのあとのお話はございません。
鏡の中の演奏会はいかがだったでしょうか? 
皆さんの今宵のお集まりに感謝の意を表させていただきます。


私の名は変態紳士アレクサ。
私のポリシーは性の遊戯に参加される方や、それをご覧になる方たちに最上の悦びを差し上げることです。


ではまた、御機嫌よう。
0115名無しさん@ピンキー2014/05/20(火) 11:00:25.65ID:qAy615Lr
最高にGJ!

長女も気持ちよくなる展開も見たいです。



それにしても変態紳士いったい何者なんだ・・・
0116222014/05/25(日) 19:09:30.41ID:DsKHjeOy
(・∀|

>>114
また余計な単語おぼえちゃったよ・・・。

>>115
長女は奉仕者ですが誰が責めるんでしょ?

ではまたごきげんよう。
0117名無しさん@ピンキー2014/05/25(日) 19:14:26.61ID:LINi41sa
しまった、なんか読んで満足しちゃってGJを忘れていた、これはスゴイ・シツレイですね…ケジメします
すごい面白いしえrいしで楽しませてもらいました。続きも…書いても…いいのよ?(チラー
0119名無しさん@ピンキー2014/05/31(土) 20:56:20.56ID:gePimcJT
(・∀|
なんか思いついたんで、落書きっぽいものを残しとくね!
けっこうてきとうだよ!
0120名無しさん@ピンキー2014/05/31(土) 20:57:24.15ID:gePimcJT
「あらあらぁ、おとなしい顔していつもおしっこさせちゃうんだから、ほんとやらしいわねぇ」
どこからか声がすると、不意の指先が長女の激しいくちづけのあとの粘液をちろちろと弄び、肉感的な口元が細く涼しげな首筋にねちっこく埋められていく。
なにか魔法のようなまとわりつき方で肉体のおうとつがなぞられて、薄着のボタンが必要な部分だけ外されていく。
その服はあっという間に乱されて、身体にこもった熱気とともに長女のかたちの良い胸の先から汗にぬめるとがった乳首が顔をだした。

官能のうめき声が漏れる。それはずっと我慢していた肉欲が存分に開放されていく興奮に理性を飛ばされないように耐える吐息。

「そりゃそうよねぇ。わたしたちって、してあげてるときは自分でさわることも許されていないんだし。
だからぁ……ほうら、眠ってるこの子が知らないあなたの情けない格好。うふふふっ」
0121名無しさん@ピンキー2014/05/31(土) 20:58:58.42ID:gePimcJT
長女の肉体にまとわりつく愛撫はそれ自体が粘りつく生き物のようで、一瞬の息継ぎも許さずに遊戯で沸騰している肉をくねらせていく。
声は出さない。長女は高くなだらかな鼻筋を官能に揺らめかせながら、艶やかな薄い唇を色っぽく上下させるだけ。
桜貝のような爪が長女の顎を包み込み、さらなる粘液をこぼさせる。
なんてだらしない、少女たちに見せることも憚られるような憧れの女性の囚われた姿。

長女はねっとりと悪魔じみた愛撫に踊らされながら、いつの間にか下腹部をさらけ出していた。
成熟した大人の骨盤の先に少なめの毛を生やした恥丘が少女の目の前に突き出される。
「ほうら、してもらいなさい。想像してね、あなたがあれほど可愛がった女の子が自分がおしっこする場所に唇をつけるのを」
後ろから長女を犯すその手は、眠り続ける少女の肉体を手前へと誘導し、その可憐な口元を長女の股間にうずめさせた。
0122名無しさん@ピンキー2014/05/31(土) 21:03:09.52ID:gePimcJT
するといままであちこちを這いまわっていた手のひらが陰部へと集中する。
熱く沸騰するようなひだが、少女のまあるい鼻先とやわらかな唇のおうとつにこすられていく。
目が覚めるのが近づいているような可愛らしい吐息が鋭敏な粘膜をくすぐり、鋭く遊びのない指がずるりっと肉の奥深くへと埋め込まれた。

長女の細い顎がうわずった我慢の声を漏らし、彫りの深い魅力的な鼻筋が熱い興奮の熱量に負けて仰け反りはじめる。

だめ……… 起きないで………… お願いだから…………

欲望のひだに埋め込まれた指が、頭のてっぺんから足先までのすべての欲望を絞り出させながら快感の渦がお腹のただ一点でよじれていく。
くねらされ、掻き乱され、擦りつけられる悪魔の様な指をくわえこみながら、長女の肉ひだは粘りつくような収縮を繰り返している。
心地よい遊戯を夢見ているのか、少女のかわいい唇から舌がこぼれてくる。はしたない水音。
もう隠せないほどに長女の感じている匂いを嗅がれてしまっている。クリトリスに触れるなんてやわらかい少女の唇。
0123名無しさん@ピンキー2014/05/31(土) 21:04:20.04ID:gePimcJT
(・∀|

あとは脳みそに電極差して、それぞれで想像してね!

ではごきげんよう
0124名無しさん@ピンキー2014/06/01(日) 20:23:29.84ID:RG2Y6woS
わふっふるさせてくれないなんていやんいけずぅ
1レス目から得ろ杉ワロタ
0126名無しさん@ピンキー2014/06/07(土) 16:46:24.59ID:d5uJhmO6
(・∀|
ぼわーーん

落書きでもイイ! →Yes No
キャラが立ってなくてもイイ! →Yes No
してるだけでもイイ! →Yes No

正しい入力でロック解除します……
ブォン… ブォン… ブォン… 
0128名無しさん@ピンキー2014/06/07(土) 20:54:33.46ID:gP9jJgO5
……と、言う訳でこの流れに乗らせていただきます。
ヌルめですがおもらし要素とかスパンキングとかあるんで苦手な方は閲覧注意です。
分割が面倒なので例によって外部に頼らせていただきます、ごめんなさい。
ttp://www.titleblank.com/page/5392fca9ebb227b340f3f441?libraryId=4f339952e4b005b7bed47a0b
0129名無しさん@ピンキー2014/06/07(土) 21:46:36.27ID:xSQtUgXe
>>128
この組み合わせはイイ!GJです!
これからどんな風に篭絡されるのか楽しみ
続きは!?続きはどうしたんですか!?
0130名無しさん@ピンキー2014/06/08(日) 01:16:14.71ID:Jd6AXvKs
>>126
YES
YES
YES
と言いたいけど
YES←とにかく書いて欲しい
NO←今まで通りでやれば十分立ってる
NO←紳士的に考えて風情とかが無い

真面目に考えた
0132名無しさん@ピンキー2014/06/14(土) 00:16:37.03ID:YeI1vWSh
>>130
(・∀|

アウチッ!

それではおまけの続きはまた今度〜〜
シュボシュボシュボ
0134名無しさん@ピンキー2014/06/21(土) 10:29:13.62ID:Ix8mccMg
同人板で聞いたら「エロパロへ行け」と誘導されました・・・
言葉でなやんでるので誰か助けて。

エロ小説や、801などで、チンコのことをよく「男性自身」とか「○○(持ち主名)自身」とか表現するけど、
クリトリスのことは「女性自身」とはいいませんよね。週刊誌みたいだし。
クリトリスをもちょっとオブラートに包んで奥ゆかしく、
チンコを男性自身、と呼ぶのと同程度に熱っぽさが伝わる呼び方ってないですか?
0138名無しさん@ピンキー2014/06/22(日) 21:31:13.66ID:EWHJmpyk
「そろそろ裸になろっか。あなたのからだ、この子に見せてあげようよ」
耳元でくすくすと笑い声を立てながら長女の衣服を絡み取っていく。
そこから現れたのは、成熟した女性のおうとつを見せながらも引き締まった見事な肉体だった。
それは彫刻のように均整がとれていたが、石の冷たさはなく指が沈み込む魅惑の柔肌。

依然として指がお腹の中を行き来し、うねる肉。
煮えたぎる熱気が汗を落とし、胸から腹の窪み、ヘソを伝っていった水玉は少女の瞼を濡らす。
ぼんやりと瞳が開いた。焦点の定まらない夢うつつの揺らめき。
その視界に仰ぎ見たのは立ったまま肉体を蛇のように絡めとられている長女のそそり勃った乳首。

声が魔法のように少女を誘導する。
「さわっていいわよ。見えるでしょ? 
あなたがして欲しかったことを存分にしてあげなさい」
0139名無しさん@ピンキー2014/06/22(日) 21:46:21.33ID:EWHJmpyk
少女のぼんやりとした反応は正気かどうかは分からない。
可憐な手が、唇が、瑞々しく張った乳房へと伸びていく。
探るように、やさしくそっと膨らんだ果実にからみつき、甘えるようにいたわるように、ピンク色のぬめりを幼い粘膜が包み込んでいく。

やめ……て……… あッ!!!

そのたどたどしい愛撫は長女を予想外に反応させた。
かわいらしい花のような少女がさんざん愛欲にまみれてきた長女の肉体を新鮮な手つきで弄ぶ。
後ろからの手は愉快そうに指を増やして肉の壁をきつく押し広げる。

熱い。熱い。燃え上がる。
色っぽいスレンダーな女性がふたり分の指とぬめる舌によって、どこもかしこも狂わされていく。
少女は背伸びして長女の唇を奪った。苦しそうな長女のかぐわしい女性の息。
やわらかな少女の胸がくっついて、勃起した乳首同士が刺激を与えあう。
ほんのりと上気した少女のまあるい頬は快感を絞りあげる興奮に染まりながら恐ろしいほどにかわいらしくいやらしい。
慣れない行為で、強引にもしないお嬢さんのくちづけは長女には物足りなく、甘い唾液の味を求めてもっともっとと舌を伸ばしてしまう。
0141名無しさん@ピンキー2014/06/25(水) 23:17:25.57ID:wavZpxyE
華奢な少女と成熟した大人の肉体がからみ合って、その後ろでは零れ落ちるような豊満な胸が背中を擦り上げる倒錯した絵画のようだった。
長女の粘膜を貪る生き物のような指は激しく自在にうねりながら、時には焦らすようにじっくりと内壁のひだに留まり味わい尽くす。

そのうちに、麗しい吐息を漏らしながら耐える口元が決壊しようとする寸でのところで指が引き抜かれると、絶妙な間合いでおあずけされてしまう長女。

「うふふ。イカせるのはわたしじゃないの。この子。あとはお願いね」
声がほくそ笑むと、少女は言うとおりにおヘソを伝い薄い毛の先のとがった肉に下りていく。
今度は明らかに意思のある唇をそっと押しあてる。
背後の手は長女の口へと乱暴に押し込み、男性器の代わりにめちゃくちゃに深くまで挿しこんで舌を弄んだ。
だらしなくこぼれていく涎に濡れた胸の先では、もう片方の手が身悶えする乳首をきつく引っ張りあげる。
一方の下腹部では傷めつけるような上半身とのめまいがするほどの落差で、やさしくて情熱的な少女の唇がまとわりついている。
0142名無しさん@ピンキー2014/06/25(水) 23:19:19.14ID:wavZpxyE
ふたりの間逆な行為に頭をおかしくされ、お腹を引きつらせながら高く丸みのある鼻筋がきれいに仰け反り続ける長女の官能的な肢体。
全身の性感帯が壊されてしまうように痺れ続ける長女はいつまでもいつまでもクリトリスにそっとキスされるだけで、イクことができない。

ちゅ ちゅ ちゅ ちゅ 
ちゅう ちゅう ちゅう 

やわらかな綿毛のような唇で、ただ一点が甘く大切に吸い尽くされる。
これほど執拗に無垢な唇を当てられたことはない。

あ!  あ!  あ!  あああッ!

背後の手がそろそろ頃合いとばかりに、でろりと陰部を広げると煮えたぎった粘膜の奥の奥までが少女の幼い唇に吸い尽くされて強烈な満足感が長女の脳髄に染み渡る。
少女のまあるい顔立ちのやわらかさを知り尽くしている長女は愛撫以上にその様子を頭に描いて異常に興奮した。
0143名無しさん@ピンキー2014/06/28(土) 00:14:03.84ID:usMSe3Fb
甘いクリームを少しずつ舐めとって汚れていくような少女の鼻筋が陰部のひだに触れてこすれる。
知ってか知らずか余った手がお尻の隙間にそっと置かれてそれぞれの穴に入りかける指が絶妙な焦らしを与える。

挿れて……… 挿れて……… かわいい指を……………

まんまるく縮こまった少女の指は決して淫らに入り込むことなく、その唇はどこまでも一心不乱に長女の一番弱い部分を吸い続ける。
腰を揺らして、クリトリスを勃起させるたびに果てしなく先っぽを吸い上げられていく魅惑のくちづけ。

「いれなさい」

とうとう背後の命令通りにあどけない指先が肉の中へと埋められていくと、まるで粘膜そのものに意思があるかのようにずぶずぶと運び込んでいく。
あまりの満足感にお腹が理性を失い、おしっこのような液が漏れ出ると、長女はさらなる快感を求めて自分からお腹を捻じり始める。
背後の手はその渇望をほくそ笑むかのように、少女の指の上から自分のものを強引に荒々しくねじ込んだ。
その口は汗に濡れて艶やかな長女の肌を噛む。噛む。噛む。
0144名無しさん@ピンキー2014/06/28(土) 00:15:38.86ID:usMSe3Fb
全身がひりつくような猛烈な熱に襲われながら、また長女はちょろちょろと垂れ流した。
もうすでに、美しいその肉体はぐちゃぐちゃになって、ただの肉の塊。
背後の手はさらに指を増やして、きつく締まらせる。
足元の水たまりは強烈な性の匂いを発しながら、まだまだ体液が滴り落ちて大きくなっていく。
きれいで少女の憧れだった長女は汗と唾液と愛液にまみれて肉欲の奴隷となった。
その足元に跪く裸の少女はおしっこで口元を汚しながら、小ぶりな胸の先を興奮でとがらせて。

容赦なくかき混ぜる指とあどけなくくすぐるような指のふたつを貪り尽くすような収縮を繰り返した肉のひだは、とうとう長女に破裂するような絶叫を呼び覚まし、その瞬間、獣の咆哮が空気をつんざいたかと思うと三人の目の前に禍々しい肉の卵が姿を表した。

ぐるんっと目が開いてそれが割れたかと思うと、巨大な炸裂とともにミミズのような管が数えきれないほどに飛び出して、形容しがたい悪魔の姿が三人の影を覆い尽くした。
たくさんのイボのような膨らみから、涎のような液体がだらしなく溢れている。
それは全身のすべてが生殖器のようなぬめりとやわらかさ。

「とうとう呼び出しちゃった。じゃ、宴の始まりだね。わたしもいっぱい愉しめるといいな」

以下、触手プレイでうふんあはん。
うぎぎぎぎっ。
0145名無しさん@ピンキー2014/06/28(土) 00:17:58.95ID:usMSe3Fb
(・∀|
ノーアイデアでアイムソリソリ 
おそまつさまでしたー
0146名無しさん@ピンキー2014/06/29(日) 10:12:49.51ID:E3mxz0+f
いいね!いいね!立場逆転大好物
すごくいいよ。



そして予想外のヒキ
いったいどうなるんだ
0147名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:20:59.57ID:giucjey7
自作を投下します。
改行とか文字数とかの勝手が分からないため、スレ汚しになったらご勘弁を。



お漏らしシチュ(ほんのちょっと)注意で。
0148名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:26:40.89ID:giucjey7
『撫子寮にて。〜私の、可愛い巫女さん〜』



 香具山梢(かぐやま・こずえ)先輩と私のことを語る前に、まず我が母校である撫子女学園について説明しておきたい。その方が手短だし、私と彼女の関係の特異性についてよく分かってもらえると思うからだ。
 撫子女学園――近隣の人々には、よく『撫女』なんて呼ばれていたりする――は、その名の通りの『大和撫子』を無菌培養するために作られた学校だと思ってもらって間違いない。
 時は1883年、ちょうど鹿鳴館が落成されたのと同じ年、世界に羽ばたくレディの育成のために作られたというんだから相当歴史が古い。
 で、その由緒正しきお嬢様校であるところの撫女の生徒は、大きく二種類に分けられる。
 ひとつ――幼稚園からエスカレーター式に高等部まで上ってきた、正真正銘、名門名家のお嬢様。
 ふたつ――何の間違いか、分不相応にも撫女に入ってきて『しまった』、庶民の女子。
 私こと小町静流(こまち・しずる)は圧倒的後者の人間だ。名家どころか家が貧乏で貧乏でどうしようもなくて、独自の奨学生制度を持つ撫子女学園に辿り着いた。
 こんな人間は、撫女の中では少数派ながらも確かに存在する。同じクラスの櫻井さんや東屋さんは、私と同じ外部組だ。
0149名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:29:12.24ID:giucjey7
 そして件の梢先輩になると、こっちは圧倒的前者という立場になる。
 揺り籠から墓場まで、おはようからおやすみまで隈なく見守る香具山グループ――日本人なら誰でも知っている財団の一人娘だというのだから、私なんかとはもう住む世界が違う。
 だから同じ寮に住んでいる時点で何かの間違いだと思うし。
 同じ部屋に割り当たったことはそれこそ奇跡だし。
 あまつさえ恋人同士になってしまった事に関してはもう、神様の悪戯としか言いようがない。
 けれど、それでも私たちはうまくやっていると思う。出自の差なんて平成の世の中には似つかわしくないものに何度か振り回されたりしつつも、私と先輩は、この撫子女学園での青春を謳歌している。
 生きている。
0150名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:31:27.85ID:giucjey7
 /1.


「デートいたしましょう」
 ベッドの脇に立った先輩は、そう言ってにこやかに微笑んだ。
 ――『微笑んだ』と。そう言っただけでは状況は伝わらないと思うので捕捉させてほしい。
 場所。私と先輩の部屋。撫子寮304号室。
 時間。午前6時きっかり。
 私。まだベッドの中。
「……ふぁい?」
 そんな気の抜けた返事になったとしても勘弁してほしい。何せこちらは起き抜けなのだ。
 しかし先輩は違ったようで、とっくに着替えを済ませている。長い黒髪は空色のシュシュでポニーテールに束ね、セーラー服には皺一つなく、そしてスカートは今日もしっかり膝下キープ。
 ……うーん。冬休み中だっていうのに、いつも通りの完璧なレディであることだなぁ。
 そんな先輩は目をキラキラさせながら、つまりは夢見る少女の瞳で私に言った。
「デートをいたしましょう、静流さん」
「いや、それは聞きましたけど」
 目覚めの頭では上手く頭が働かない。うーとかあーとか言葉にならない声を出して、ようやく私はその言葉に至った。
「……なんで?」
 我ながら、色々な意味を包括した素晴らしい質問だったと思う。
 その問いに対し、先輩は小首を傾げる。分からないというのが分からない、というような。
「何故、と言われましても約束していたじゃありませんか。初詣は、ぜひ御一緒しましょうねと」
 あー。
 三日ほど前、先輩が実家と大喧嘩して年末年始を撫子寮で迎えることになった日。
ベッドに倒れ込む前にそんなことを言われたような気もする。つまりあれが、先輩にとっての『デート』の約束だったという訳か。
 私と先輩は恋人同士だし、初詣に繰り出すのもやぶさかではないのだけど、しかしそれにしても早すぎる。何と言ったってまだ午前6時……今ようやく3分を回った所だ。
 先輩は夏休みとかに、親御さんに「まだ時間が早いから遊びに行っちゃいけません」とか言われなかったんだろうか。言われなかったんだろうな、お嬢様だし。
「……約束、したじゃありませんかっ!」
 ずい、と詰め寄る先輩もそれはそれで可愛いのだけど、そんな状況ではない事は分かり切っていた。
 初詣。……初詣、か。
0151名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:35:02.60ID:giucjey7
 毛布を手繰り寄せ、しっかりとくるまる。1月の空気は部屋の中だというのにやけに冷えていた。
 ……つまり私達は、この寒い中寒い所に出かける訳だ。初詣といったってやることは御賽銭を入れて、くじを引くだけ。先輩と二人で外出ということを考えても、なかなか気が進むイベントでは無かった。
 というか、かったるい。
 煩わしい。
 面倒これに極まりない。
「さぁ、参りましょう静流さん!」
「イヤです」
「楽しみですね、デート!」
「無理です」
「も、勿論全部私の奢りです!」
「無駄です」
「なぁんでですかぁっ!」
 先輩が涙目になりながら腕をぶんぶんと振る。
 その梢シェイク(命名・私)に合わせて揺れる大きな胸を横目で見ながら、私は一つ大あくびをした。……眼福ではあるけれど、まだ私を起きあがらせるまでには至らない。
 なんたって私は。
「生憎ですが私は毎年、三が日は寝正月と決めているんです。……あとですね、小町家は先祖代々の浄土真宗なので。神社にお参りには行きません。サンタさんも来ません」
「きょ、今日くらい私に合わせて下さってもいいじゃないですか! 正月らしくですね、もっとこぅ……」
「なら先輩は着物を着てくるべきだと思います。何ですか制服って。物珍しくも無い」
「だって校則には、敷地の外に出る時も制服を着用のことって……」
 先輩は何か言っているが、既に私の『初詣』の価値はストップ安を記録している。先輩の着物姿が見れないのなら、そんな初詣に何の意味があるというのだろう?
 ……あぁ、巫女さん目当てで行くというのもアリか。けど、どうせ急場で雇ったバイトの子たちなんだろうし。清純で清廉な大和撫子なら、この部屋にも居る訳だし……
「……あ」
 そこまで考えて、私は思わず声をあげてしまった。
 ちょっと良い事を考えてしまったのだ。私は部屋から出なくてもいい、しかし先輩の要望通り『正月らしさ』を味わう事が出来る。俺に良しお前に良し、そんなWin-Winな方法を。
「先輩」
「はい?」
 きょとんと頭上に大きなはてなマークを浮かべる先輩に対して、私はその思いつきを実行するべく、真顔で口を開いた。
「ちょっくら脱いでもらっても良いですか?」


 ……その後。
 照れ屋な先輩は驚いたようでちょっぴり声を上げたり涙目になったり抵抗したりしたものの、懇切丁寧なお願い(宥めすかしとちょっぴり脅迫も行使)と極めて紳士的な態度(悪代官リスペクトの実力行使)によりその制服を脱いで頂く事に成功した。
 だが、それで終わりではない。誰かがこんなことを言った。男が服をプレゼントするのは服を脱がせたいからだ、と。
 ならば女が服を脱がすのは代わりの服を着せたいからである。そういう訳で私は先輩の服が脱げるのとほぼ同時に、その体に新しい服を着せる作業に入った。
 なお。
 これはあくまで『ジョブ』として組み立てられた行為であり、その過程で不可抗力的に先輩の体をまさぐってしまった事実も、そのたゆんでぽよんな感触に思わず鼻息が荒くなってしまったという事実も断じてなかったと、ここに申し添えておく。
0152:名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:41:08.17ID:giucjey7
 そして。
 そして、だ。
「……うぅぅ……」
 10分後。そこには床にペタンと座り、よよと袖を濡らす先輩の姿があった。
 いや、この表現は正しくない。正確には緋袴を履いた足を崩し、白衣の袖を濡らす先輩の姿である。シュシュの代わりに細くて赤い結い紐でポニーテールにし、勿論下には下着など付けさせない。
 完璧だ。
 我ながらその仕事のクォリティに興奮を禁じ得ない。そう、これこそが我が国が誇る最終兵器『巫女さん』だ。
 正確にはさらしやら何やらでこの豊満な胸は平らにしなければならないのだけど、そこはそれ脱がしやすさや素材の持ち味を重視してあえてのアレンジに踏み切っている。
 本流から外れたアンバランスさにこそ価値が宿ることもある、と私は断言する。
 だから私が火照った頬を押さえながらもう片手で携帯のカメラ機能を連射しまくっているのも、ごくごく自然な流れなのだ。……あぁ、今の先輩はもうどうしようもなく可愛らしい。
「私、穢されてしまいました……もうお嫁に行けません」
「何を大げさな。まだまだこれからですよ」
 ひ、と怯える先輩の顔もまたをかしというものだ。正月早々、なんとも雅なものを体験させていただいて、先輩にはもうご馳走様ですとしか言いようがない。
 じりじりとにじり寄っていくと、行き場を無くした先輩がベッドの上ににじり寄る。いや、そうなるように私が誘導したのだ。背の高さの割りに小動物っぽい先輩の動きをよむことなど、造作もない。
 うっかりフレンドリーな笑みが漏れてしまう私の顔を恐る恐る見上げ、先輩は引きつった笑みで言った。
「あの、静流さん。冗談です……よね?」
「残念ながら大マジです。先輩が巫女服を着てくれるとかもう、やることは一つしかないですよね?」
「えっと、お……お祓いとか?」
「そうですね。邪念を祓ってもらいましょうか……その体で」
「なんでそんなに下種っぽい台詞なんですかぁっ!」
 先輩が叫ぶが言ってみたかったものは仕方ない。戦巫女とか姫巫女とか、そういうサブカル的な方面も私は結構いける口だったりするのだ。
 そしてその末路というのは、私が知る限り一つしかない。という訳でまな板の上の鯉、いやさベッドの上の巫女コス先輩に私は悪人よろしくガバっと覆いかぶさる。
「やっ、んぅっ! ちょっと静流さん、どこに触ってるんですかっ!」
「え? 先輩の大きな胸とか強調されたお尻とか、太ももとかうなじとか触ってますよ?」
「言わなくていいですっ!」
0153名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:43:54.56ID:giucjey7
 照れる先輩も可愛い。可愛いなぁ。どうしたってこの人は可愛いのだけど、巫女コスというレア衣装ということもあって可愛さは当社比5割増しで。
「先輩……しましょ?」
 あまりに可愛いものだから、つい、そんなことを言ってしまうのだった。
「するって……え? えぇ!?」
 先輩は目を白黒させる。きっと『正月早々破廉恥なことは』とか『色欲に流されては』とか『強引な静流さんに今日こそは抵抗しなくては』とか、そんな思考が頭の中をグルグル回っているに違いない。
 だからその思考たちが口をついて出る前に、私は先輩の手を手繰り寄せ、耳元に口を寄せ、甘やかに囁くのだ。
「可愛いです」
「静流さん、そんなこと……っ」
「可愛いですよ。今の先輩。すごく可愛い」
「い、いわないで……!」
「食べちゃいたいなぁ。ねぇ、ダメですか?」
「〜〜〜〜〜!」
 耳元で囁くと、徐々に先輩の体から力が抜けていくのが分かる。生真面目な先輩は、反面、こういった褒め殺しにすごく弱い。
 というか、ちょろい。ちょろすぎて心配になる。こんな可愛い先輩が、こんなに流されやすくって大丈夫だろうか。やっぱり先輩は私が守ってあげる必要が――。
「静流さん、だけですから……」
「え?」
 そんな思考を読んだように、先輩は言う。釘を刺すように、拗ねたように。
「こんな強引にされて許すのは、静流さんだけですから……はしたない女だと、思わないでくださいね?」
 そう言って、恥らうように目を伏せる。
 ……何というか。
 お互い様、なのかもしれない。私だけじゃなく、先輩もきっと私のスイッチを知っている。多分自覚してないんだろうけど、私としてはそのスイッチを見事に押されてしまった気分で。
 こんなにどきどきして、じくじくして、切ない。
「……いいですね?」
 何を、とは言わなかった。先輩も問わず、こくりと小さく頷いた。
0154名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:47:10.64ID:giucjey7
.

 /2.


「静流さん……」
 熱っぽく漏らす先輩に口づけをする。一度目は啄ばむように浅く、二回目は舌を伸ばして絡めるように。
 先輩がぎこちなく応えると、じわじわと頭の奥が熱くなっていくような感じがした。
 はだけるように白衣の前を空けると、先輩の大きな胸がまろび出る。
 ……『まろび出る』なんて言葉を、まさか日常で使うことになるとは思わなかった。けれど確かに、先輩の胸はそう形容するに相応しい大きさを持っている。
 それでいて手を添えれば張りもよく、揉むのにもちょうどいい大きさ。
「……先輩って、かなり胸大きいですよね?」
 中の下といったところの私としてみればうらやましい限りだ。けれど大和撫子たる先輩にとってはコンプレックスでしかないようで。
「好きで大きくなったわけじゃありません……こんな、はしたない……」
「そうですか?私は好きですけど……んっ」
 そんな他愛のないことを言いながら、先輩の胸に口付けを落とす。唇にしたように、浅く、深く。胸に吸い付き、すすり上げる。
「や、やだっ……静流さん、赤ちゃんみたい……っ!」
「あら。じゃぁ、先輩はお母さんですね……」
 でも、きっと赤ん坊はこんなにいやらしい舐め方はしないだろう。乳首の輪郭を確かめるように舌を這わせ、時折弾いてみたり。その度に甘い声を上げる先輩のソプラノがたまらない。
「マーマ……ふふっ」
「んぁぅっ!」
 先輩の反応を確かめながら、右手を滑らせていく。胸を撫で、臍を通って緋袴の中へ。
 くち、と湿った音がした。もう濡れてる。それだけで私の心臓は早鐘のように鳴り響いていく。
「静流さん、そんな所……!」
「『そんな所』って……どこですか? 先輩」
 背を背けて逃げようとする先輩を、私は勿論逃がさない。背中にぴとりと寄り添う形で、形のいい耳に唇を寄せる。
「教えてくださいよ……ほら、例えば、今触ってる……こことか」
「あ……はぅ……っ」
 そう言って触れるのは、先輩の中心。
 秘裂はしっとりと濡れそぼり、触れられるのを待っているようだ。だから私は丹念に愛撫する。柔らかな秘裂から小さな突起――蕾まで。
0155名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:49:49.17ID:giucjey7
「だめ、弄らな……ひぅっ!」
 声を上げないように手の甲を噛む姿がいじらしい。でも私、もっと乱れている先輩が見たいのだ。
「ほら……ここですよ。先輩が感じてくれているここ。とっても熱くて、とろとろ蜜を出しているここ。ほら、何て言うんでしたっけ?」
「い、陰唇……んひゃぁんっ!?」
 残念。難しいことを言ってごまかそうとする人にはおしおきです。
 私は蕾をぴんと弾く。弱い力だったけど、敏感な部分だから衝撃は大きかったはずだ。ひょっとしたら甘くイッたかもしれない。
「せ・ん・ぱ・い? 答えてくれるまでやめませんよ? 私はそれでも全然構いませんけど」
「う〜〜〜……」
 先輩は拗ねたように唸ると、ぼそぼそと口の中で言った。
「お、おまん……」
「はい?」
 わざとらしく聞き返したのが、引き金になったのか。
 先輩は観念したように目をつぶり、叫んだ。
「おまんこ! おまんこですっ! だから私のおまんこ、いじめないでぇ……っ!」
 いつもなら隣室に声が聞こえていないか心配になるところだけど、今日は正月の三が日。皆帰省してしまっていることは調査済みだ。
 だから、先輩の恥ずかしい叫びを聞いているのも私だけ。私だけのもの。私だけの……先輩。
「はい、よくできました」
 むずがるようにいやいやをする先輩を向き直らせて、強引にキスをする。目を開けると若干涙目で、恨めしそうに私を見た。
「静流さんは、いつもこんなはしたないことを……そんなに私を辱めたいんですか?」
「半分正解ですが。……私、先輩と一緒に恥ずかしくなりたいんです」
 既に左手は自分のショーツの中に滑り込まれている。先輩の痴態を間近で鑑賞できたおかげで、やっぱり十分すぎるくらいに濡れていた。
「私だって……興奮してるんです。んっ……先輩と同じくらい……おかしくなってるんですよ……?」
「静流さん……あぁっ!」
0156名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:53:25.08ID:giucjey7
 蜜に濡れた花弁を押し広げ、奥まで指を入れる。熱く絡みつくその柔肉をかき回し、蹂躙する。
 まるですがるものを求めるように、先輩が私の体にしがみついた。先輩の柔らかさが、熱が、私をいっそう加速させる。
「静流さん、しずるさぁんっ! そんな、かきまわしちゃ……あぁぁっ、ダメですぅっ!」
「気持ちいい? 気持ちいいですか、先輩? 私ももう……ん……っ!」
 右手に先輩の、左手に私の感覚。その昂ぶりが、限界が近いことを告げる。先輩が体をくねらせ、切なげな声を上げた。
「ダメですっ、これっ、これ以上はダメっ! キちゃいます、何かきちゃう……あっ、やっ、んぅっ!」
「良いですよ……ほら、ダメになっちゃってください……ふふっ、私も、一緒に……!」
 同時に、先輩の体がびくんと震え、私も体の奥底から何かこみ上げてくる感覚。
「ダメっ、ダメダメダメぇっ! しずるさっ……ひぁ、あ、あぁぁぁぁっ!」
「先輩っ……先輩……んんんんっ!」
 あたたかくて、ふわふわして、ちかちかして。
 そんな絶頂の感覚が、私と先輩を包み込む。頭が真っ白になって、全身から力が抜けていく――

 ――とたん。

 ちょろちょろちょろ、ちょろ
「え」
 先輩の秘部に添えたままの右手がじんわり暖かくなる。塗れた感触。というか現在進行形で濡れていっている感触。
 これは、あれだ。潮ほど激しくもなく、愛液ほど慎ましやかでもないそれは、多分――
「……だから」
 『やっちゃった』感に背筋が冷える思いの私に、見つめあう先輩は羞恥に目を潤ませながら、恨めしげに言った。
「だから……あれほどダメだって、言ったじゃないですかぁっ……!」
「……はい」
 ……そういう意味だったんですね、それ。



 そうしてこの日、一人っ子の私は。
 生まれて初めて、一時間かけて『おもらし』の処理をするという貴重な体験をすることとなった。
0157名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 17:56:26.62ID:giucjey7
.

/3.


「正座なさいませ」
 ――結局、件の巫女服はクリーニング屋に持ち込むこととなり。
 着替えと清掃を黙々と終えた後、開口一番、先輩はそう言った。腰に手を当てた、漫画などで言う所の『ぷんぷん』というポーズが、ここまで似合う人間も珍しい。
「……あの、もうしてるんですが」
 正座し始めてそろそろ十分経つんですが。足の痺れも限界なんですが。
 しかし先輩はぷるぷる震える私の前に座り、『さぁ、お説教を始めますよ』と言わんばかりに咳ばらいをした。
「静流さん。私は確かに止めてと言いましたね? ダメになっちゃう、とも」
「……はい」
「それでも行為を止めなかったことに対し、何か申し開きは?」
「ダメになった先輩ってとても可愛いなぁと思いました……う、嘘ですちょっと魔が差してっ」
 先輩、こう、『つねる』というのは和風美人らしい批判の仕方としてとても可愛らしいと思うのだけど、痺れてる箇所を狙うのはホントにやめてほしい。
 ……さて。
 どうしようかなぁ、と考える。明らかに今回はやりすぎてしまった。いや、個人的にはそれに見合う収穫はあったのだけど、ここはとにかく平謝りの一手だ。
「ごめんなさい、反省してます……なのでそろそろ、こう、許して頂く訳には」
「イヤです」
「その、そろそろ限界なので、私に出来る事なら何でもしますから……キス100回で手を打ちませんか」
「無理です」
「ミニマム30秒で」
「無駄です――って静流さんと100掛けることの0.5分で50分もキスをしたら流石に死んでしまいますでしょう!?」
0158名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 18:01:39.88ID:giucjey7
 先輩は赤くなりながら叫ぶ。死ぬって窒息とか呼吸困難とかそういう事だけじゃないんでしょう先輩、といつもならからかう所だけど今はちょっと自重せざるを得ない。

 うー、と唸っていた先輩が、ややあって顔を上げた。
「……分割で」
「はい?」
「分割で手を打ちましょう、と言ったんです。1日で50分もキスをするわけには参りませんから……い、1ヶ月で使い切ることを目標に、1日2分のキスを要求します」
 ……なんだろう、それもちょっと違うと思うのだけれども。
 それでもそっぽを向いて髪をくるくる弄りながら、やっとこさ搾り出しましたといった様子の先輩を見てしまうと、こくこくと頷かざるを得ない。
 まぁ、何だ。
 建前というのは、いつだって必要なものなのだろう。多分。
「……それであの静流さん、なぜ唇を突き出すのですか?」
「いえ、今日の分を忘れないうちに済ませておこうと思いまして」
「わ、私からするのですか!?」
「キスをするのは私じゃなくて先輩の権利ですから」
 ちょっと意地悪かなぁ、なんて思いながらも。
 瞑った目を片方だけ開けて、ダメ押しの一言。
「……しないんですか?」
「〜〜〜〜っ」
 先輩は煩悶すると、やがて観念したかのように息をつき、赤い顔のまま私の前に身を乗り出して一言、とても恥ずかしそうに言った。
「――いただきます」
「はい、召し上がれ」


 ――なお。
 初日からノルマの倍近くをクリアした私たちのキス契約は半月足らずで終了し、めでたく再契約の形とあいなった事を、ここに付け加えておく。



 <了>
0159名無しさん@ピンキー2014/07/13(日) 18:04:41.85ID:giucjey7
投稿完了です。エロって難しいなー。

それでは、お粗末さまでした。
0160名無しさん@ピンキー2014/07/14(月) 02:13:50.46ID:RgrsN7m0
おお…おおGJ…
何から何まで好みで悶えた、訴訟は取り下げる
0161名無しさん@ピンキー2014/07/17(木) 19:43:02.02ID:2wv9i0pQ
押しに弱い年上、いいねえ
それにきっちりえろいじゃない
素敵
0163名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:14:41.41ID:ZFjuYUOq
自作を投下です。
舞台は一緒だけどキャラは一新。
何かオムニバスっぽいことやりたいなぁなんて思いつつ。
0164名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:16:30.57ID:ZFjuYUOq
『撫子寮にて。〜ふたりの温度〜』


 ――ごめんなさい、お姉さま。志乃は、悪い子です。


 零れる吐息が、次第に乱れていく。
 胸がどきどきして、苦しくて、切ない。
 それでも――止まらない。止められない。
 咎める心とは裏腹に狂おしい衝動に突き動かされて、私の肉体はどんどん加速している。
 あぁ、どうしてなんだろう。
 こんなにも熱くて、汗だくなのに。目の前がちかちかして、意識などすぐに飛んでしまいそうなのに――
 ――私はまた、罪を重ねようとしている。
 忌むべき行為と引き換えにして、刹那の悦びを得ることにだけ夢中になっていく。
 ……時々こんな瞬間が、ある。
 突然体が熱くなって、疼いてしまって。泣き出してしまいそうな、叫びたくなるような激情に駆られて……そして結局、私はまた自分を慰めてしまう。
 ――でも。鎮める方法なんて、一つしかないことは分かっていて。
「んっ……んぅ……んん……っ」
 自らの手の甲を軽く噛んで、甘い喘ぎを、その衝動を必死に噛み殺そうとする。けれどもまるで体がその努力を嘲笑っているかのように、吐息は熱を帯びてゆくばかりだ。
 あぁ、もしも――
 ぬるついた糸を手繰り寄せながら、ぼんやりと考える。
 これが私じゃなくて……『お姉さま』の指だったら……
「……ひぁっ!?」
 突然、弾けた。
 頭が真っ白になるほどに巨大な快楽。
 背徳的な想像が引き金となって、さらに私の指先は加速していく。こうなってしまえばもう止まらない。黒々とした炎が残っていた理性をあぶり溶かしていく。
「あ……やんっ……や、あ、あぁ……っ!」
 たまらなく――気持ちいい。
 もう、何も考えられない。
 だけどコールタールのように黒々とした炎は私の心にへばりついて、もっと、もっととせがむ。私一人じゃ止められない。だから……
 胡乱な思考の中で、私は思う。ごめんなさい。ごめんなさい。志乃は悪い子です。
 でもきっと、そんな私でもお姉さまは受け入れてくれるだろう。仕方ない子ねと笑って、私の汚れた体も抱きしめてくれるだろう。
 けれどその優しさが、私には、泣きたくなるくらい切なかった――
0165名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:19:03.16ID:ZFjuYUOq
.


/1.


「もしもし――志乃ちゃん?
……そう。もう、我慢できなくなっちゃったのね?
 いいのよ、謝らなくて。……そうね、ここまで来れる? 私が迎えに行った方が良い?
 あぁ、そうね。そうだったわね……ごめんなさい。じゃぁ、私の部屋……撫子寮の302号室で、待ってるわ」

 そう言って、私――香坂雪深は携帯の通話を切った。 
 窓から外を見れば、ちょうどチラチラと雪が降り始めていた所だった。予報ではこれから降り始め、明日の朝まで積もるらしい。きっと今日一日冷え込むだろう。
 あの子が道中、震えていなければ良いのだけど。そんな事を思いながら、暖房の温度を少し上げることにする。この部屋はもう十分暖かいのだけど、服を脱いでしまえばそうも言ってられなくなるだろうから。
 私は既に撫子女学園の制服から、厚手のセーターとフレアスカートといった出で立ちに着替えていた。
 あの子が来るまで、あと10分足らずといったところだろう。読みかけの小説を読みたかった所だけど、もうそんな時間はない。紅茶を淹れて、時間を潰すことにする。
 あの子を待つのは嫌いではなかった。
 学園ではなかなか会う事が出来なかった彼女に会えるのはここくらいのものだったし、それを嬉しく思わないと言ったら嘘になる。それが彼女のために必要な行為を行うためであったとしても。
 期待。そう、私は多分、期待してしまっている。あの子が来る事、あの子とする事に。
 そんなどこか暗い期待を、アールグレイの香りで落ち着けた。……私は彼女にとって頼れる先輩で、何より『お姉さま』なのだから、と。
0166名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:20:59.65ID:ZFjuYUOq
 ……ややあって。
 こんこんこん、と控えめなノックの音。どなた、と問うまでもなく、私にはそのノックの主が分かる。
 ……とっくにそれ所ではないんだろうに、それでも謙虚さを忘れない彼女の所作が私は好きだ。はい、と返事をして、扉を開ける。
 その瞬間。
「お姉さまっ!」
 叫んだ少女が、私の胸に飛び込んだ。
 黒髪をボブカットに揃えた、撫子女学園の制服を着た彼女。着替えていないということはやはり、学校が終わってからそのまま来たのだろう。
 『彼女』の身長は私よりも幾分低く、抱きつかれると私の胸に顔を埋めることとなる。セーター越しに彼女の荒い吐息を感じ、今日のそれはいつもより重症であることを悟った。
「お姉さま、お姉さま、お姉さまぁ……っ!」
 見上げる瞳は熱く潤み、火照った頬を紅に染めている。わずかに爪先をあげるその仕草は、まるで飼い主にじゃれつく犬のようでいて、実際はもっと深刻だ。
 きっとこの子は、ここに来るまでずっとこの状態だったのだろう。私は彼女を抱き寄せ、その労を労う。
「よくがんばったわね、志乃ちゃん。……偉いわ」
 微笑みとともに、少し屈んで、彼女の唇にキスを落とす。
 その可愛い唇を舌先で割って奥に侵入させると、彼女の舌が熱く迎え入れた。
「んっ……ちゅるっ、あむっ……」
「はぅっ……んぅっ、んっ、んんんーっ!」
 ぬるついた部分を味わい、唾液を流し込み、掻き回す。
 それだけで彼女の小さな体はぴくん、ぴくんと震える。今のこの子はすさまじく感じやすい状態で、恐らくは何回か軽くイッているのだろう。
 けれど、それではダメだ。全然足りない。
 いつもより少し長いキスの後、私はゆっくりと顔を離した。まるで泣きそうな、切なそうな顔。罪悪感と自己嫌悪と、それよりももっと大きな情欲の入り混じった顔だ。
「大丈夫よ」
 私はそれを安心させてあげたくて、もう一度顔を近づけて、優しく囁いた。
「今日も壊れちゃうくらい、イかせてあげるから」


 私の可愛い恋人、秋月志乃は――月に一度、こうやって発情する。
0167名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:22:30.74ID:ZFjuYUOq
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 /2.


 志乃ちゃんが私にその体質を打ち明けたのは、付き合い始めて二ヶ月ほど経った頃だった。
 おかしいと思い始めたのは、その更に一ヶ月前だ。
 一年後輩の彼女に告白された形で付き合い始めた私たちだったが、その頃は日に日に会える時間が少なくなっていって。遂には、一緒に並んで歩くことすら拒否され始めた。
 その時の私の狼狽といったらなかった。だって志乃ちゃんはどんどん私と一緒の時間を切り捨てていって、私にはその理由が分からなくて。
 ――どうして私を避けるの。私のことが、嫌いになったの?
 とうとう我慢できなくなって問い詰めた私に、志乃ちゃんは涙を流しながら言った。
 ――違うんです。お姉さまは全然、悪くなんかないんです……
 その理由が、志乃ちゃんの体質。
 彼女は月に一度のペースで、強烈な性衝動に襲われる。
 今までは自慰で抑えていた。体を壊しかねない激しい自慰で。それでも恋愛と肉欲は別だと彼女は信じていたし、私とはプラトニックな関係でいようと努力もしていた。
 ――抑えられると思っていたんです。お姉さまのこと本当に好きだから、想っているだけでいいって。でも……
 それでも、何とかできなかった。日に日に私を想って自慰をするようになり、やがて実際に一緒にいるときですらも、私を汚している妄想が頭を離れなくなったという。
 だから。
 別れて下さい、と言った。私のことを下卑た欲望で汚してしまう前に。
 この一ヶ月間は本当に幸せだったから――それだけで十分すぎるほどに幸せだと、彼女は泣き笑いの表情で言った。
 そして、私は――


「やぁっ、ぁっ、んあぁぁっ!」
 ――私は今、志乃ちゃんを抱いている。
 ベッドに場所を移し、セミロングの黒髪の間から、彼女のうなじに口付けて。ちゅう、ちゅうと激しく吸い立てながら、制服の隙間から膨らみかけの乳房を摘んだり、弄ったりしている。
 うなじは志乃ちゃんの弱点の一つであり、髪で隠れるために大っぴらにキスマークをつけてもいい数少ない場所でもある。厳格な家族の待つ家に帰る彼女のために、逢瀬ではよくこの場所を選んで証を付けていた。
「相変わらず、感じやすいのね……」
「んぅ、は、はい。そこは……ひぃんっ!」
「そこは、じゃなくてそこも、でしょう?」
 そう言って、ぴんと自己主張している乳首を軽くつねる。小さな体がびくんと震え、彼女の眉根が切なげに寄せられた。
0168名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:26:25.14ID:ZFjuYUOq
「悪い子ね。ここに来るまでに、もうこんなにしちゃったの?」
 からかうような、咎めるような声音。
 Mというより被罰願望があることは、これまでの逢瀬で分かっていた。そうやって耳元で囁くと、ぶるりと身を震わせて涙目になる。
「やぁ……っ、ごめんなさい……お姉さま、ごめんなさい……」
 けれど、決して虐めたいわけじゃない。私は綺麗な黒髪を梳いて、頭を撫でてやる。なるべく優しく、心が落ち着くように。
「大丈夫よ、悪い子でも。もっと感じてもいいの……私になら、見せてもいいのよ」
 言いながら、制服のブラウスのボタンを外していった。桜色のブラのフロントホックを開けば、発達途中といった小ぶりな胸が顔を出す。
「可愛い……」
 控えめな胸に口付けをすると、あ、と志乃ちゃんは頤を逸らした。
 腰まで髪を伸ばしていると、こういう時に邪魔だ。私は栗色の髪をかき上げると、ちゅ、ちゅ、ちゅぅと吸い付き、キスの雨を降らせていく。
 乳房から臍へ。そして……
「あっ、ひゃぁんっ!」
 唇より先に、指先をショーツに潜り込ませた。そこは既に滲み出した愛液を吸って、ぐっしょりと濡れている。
「……我慢、できなかったのね?」
 私の問いに、志乃ちゃんはなるべく声を上げないように口を抑えながら、こくこくと頷いた。それは私の愛撫の事じゃなくて、もっと以前のことを聞いているのだと二人とも分かっている。
 ――我慢できなくて、学園でも一人でしちゃったのね?
 そういう肯定を、この子はしたのだ。
「二回……それとも三回かしら。北棟奥のトイレで?」
「はいっ……あそこ、ぁん、人っ、来ないから……っ」
「そう。……今日は誰を想ってしたの?」
 彼女の幼い秘裂に指を差し入れる。二本、いや、三本。すでに濡れそぼっていたそこはすんなりと私を迎え入れ、温かく締め付けた。
「あんっ! お姉さまっ! お姉さまですっ! お姉さま以外でこんなこと、しない……!」
「私を想って、しちゃったのね?」
「はい……あ、あぁっ! くぅんっ!」
0169名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:30:02.87ID:ZFjuYUOq
 いい子、と耳元で囁いた。
 子犬のような鳴き声をあげる志乃ちゃんをもっと鳴かせてあげたくて、昂ぶっていく自分に気づく。これは嫉妬かしら。想像の中で志乃ちゃんを玩んだ私への。
「じゃぁ、想像よりももっと凄いこと、してあげないとね……?」
 片足を上げさせて用を成さなくなったショーツを抜き取り、志乃ちゃんの秘部を露にした。発達途中な彼女らしく茂みはまだ生え揃わず、その先にはピンク色の花びら。
 甘い香りに誘われるミツバチのように、私はその花弁の中心に舌を伸ばした。
「あんっ……! お姉さまっ、そこ、汚い……ぃんっ!」
「大丈夫よ。志乃ちゃん、とっても綺麗……ちゅっ」
 膣内に分け入った舌が、熱くて柔らかい感触を私に伝える。奥からは泉のようにとろとろと液体が流れ出てきて、ふやけてしまいそう。
「ちゅるっ、じゅずっ、んちゅぅっ」
 その少ししょっぱくて甘い液体を、なるべくいやらしい音を立ててすする。志乃ちゃんが頬を押さえ、むずがるように身をよじる、その可愛らしい姿を見たくて。
「お姉さま、やだっ、吸っちゃダメです……んっ、恥ずかしいぃ……っ!」
「どうして? あなたのジュース、とっても熱くて美味しいわ。ずっと飲んでいたいくらい……ちゅっ」
 その言葉に嘘はない。けれど志乃ちゃんの愛液は魔性の媚薬のようで、飲んでいるうちに私の方がたまらなくなってしまった。
 だから、と私は彼女に呼びかける。
「ごめんなさい。一度、イかせるわね」
「ぇ……あぁぁぁっ!?」
 その言葉を、彼女は理解する間があったかどうか。
 秘裂の少し上に濡れ光るピンク色の蕾。その花弁を唇で剥くと、思い切り吸い上げた。
「ひにゅぅぅっ!? んぃぃっ、おね、さまぁぁっ! そこはダメ、ダメ、ダメぇぇっ!」
 懇願を無視して、私はその蕾を舌先で転がし、唇で挟み、甘噛みする。志乃ちゃんが確実に絶頂へと上り詰められるように。
 志乃ちゃんはいつの間にかシーツをぎゅぅっと握り締めると、ぴんと背筋を伸ばしブリッジのような体勢になっていた。
 無意識のうちに口元に押し付けられる腰元を羽交い絞めにしながら、私は一層愛撫を強くする。
0170名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:32:47.55ID:ZFjuYUOq
「あぁぁぁっ! イくぅっ! わたっ、私っ、イっちゃいますぅっ!」
「いい子ね。志乃ちゃんがはしたなくイくところ、私に見せて……っ」
「やぁっ、あはぁぁっ、ダメ、もう………ん、んんんんんーーーっ!!」
 達した。
 びくん、びくんと痙攣すると同時、透明な飛沫が秘部から飛び散る。顔で受け止めたそれはとても熱くて、興奮してしまう。
「あ、あぁ……ぅ」
 力が抜けたように落ちる彼女の腰を、ベッドが柔らかく受け止めた。紅く染まった肌が上下し、口から熱く湿った吐息がもれ出ている。
 その様子を見下ろしながら、私は顔中に飛び散った潮を手で拭い、ぺろりと舐めた。
 ――あぁ、ダメ、ね。
 どうにも熱気に当てられてしまった。志乃ちゃんの性衝動が治まればいい、なんてやっぱり甘い考えだった。
 私も、気持ちよくなりたい。
 この衝動を、この子と分かち合いたい……。
「志乃ちゃん」
 呼びかけに、彼女は胡乱な表情で私を見上げる。
 その視線を感じながら私は――ゆっくりと、見せつけるようにセーターの裾をたくし上げた。
「お願い。私のことも……気持ちよくして?」


 それから――どのくらい時間が経っただろう。
「お姉さまっ、お姉さまっ、お姉さまぁ……っ!」
「志乃ちゃん……んっ、あぁっ!」
 舌を絡ませ、吸い付いて、嘗め回して。
 撫でて、挿れて、擦り合わせて。
 汗で、涎で、愛液で私たちは体中じっとりと濡れ、シーツはその水分でぐっしょりと重くなっていた。暖房の温度を間違えたのか、熱気と疲労で頭は痺れたようぼやけていく。
 それでも止まらない。止まれない。
 私たちは足を絡めあって互いの秘部をこすり合わせては、ただただ貪欲に快感をむさぼり続けていた。
「気持ちっ、いいっ! お姉さまぁ、気持ちいい! 気持ちいのぉ!」
「私もよっ……志乃ちゃん、おかしくなりそう……!」
 互いを求め合う指先が絡まり、舌先が絡まって、ぐちゅぐちゅという粘液の擦れあう音を聞く。世界が遠くなり、ただ目の前の少女の事だけを強く感じる。
 でも、もっと感じたい。もっと、もっと。
「んちゅっ、ちゅっ、ちゅぱっ、お姉さま、お姉さま……っ」
「ちゅるっ、志乃ちゃん、志乃ちゃ……っ!」
 やがて、それは訪れる。頭の中が真っ白になっていく感覚。全身が溶けて志乃ちゃんと一つになっていくような、それは多分今までで一番大きな絶頂の予感。
 それさえあれば、もう何もいらないような、強烈な多幸間の中で――
「お姉、さま……ぁっ!」
 志乃ちゃんは顔をくしゃくしゃにして、泣きそうな顔で、でも私を正面から見つめて、叫んだ。
「私……っ、お姉さまのこと好きですよねっ? ちゃんと、ちゃんとっ、好きですよねぇ……っ!?」
 ――どうして、そんなこと。
 問おうとする声も、意志さえも、強烈な光に吹き飛ばされて――
「ひんっ!? あっ、あぁ、イくっ! 私、イっちゃ……うぅぅぅっ!!」
「私もっ……志乃ちゃ、ひぐっ、あ、あぁぁぁっ!」
 互いの体をきつくきつく抱きしめあいながら、私たちは長くて深い絶頂の海に沈んでいった。
0171名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:35:36.28ID:ZFjuYUOq
.


 /3.


 どんなにぐちょぐちょに溶け合っても一つになれないことを私たちが知ったのは、それから随分と時が経って、長い長い絶頂の余韻から目覚めてからだった。 
 身支度を整えて外へ出ると、既に雪は積もり始めていた。
 志乃ちゃんは傘を持っておらず、帰りは学園まで家のものを寄越してもらう、という彼女に、それなら正門まで送ろうと私は傘を広げる。
「寒くない?」
「いいえ、私は……」
 否定しようとする志乃ちゃんの手を、ぎゅっと握る。やはりというか、手袋をしていない手は早くも外気に晒され、冷たくなっていた。
「嘘ばっかり。……手を繋いでいきましょうか。その方が温かいわ」
「はい。……ありがとうございます」
 はにかんだように彼女は微笑む。私は改めて手をしっかりと握りなおすと、正門に向かって歩き始めた。
 一つの傘に、並ぶ二人の肩。相合傘なんて恋人らしいことは、初めての経験。
 そういえば、外で手を握ったこともあまり無かったかもしれない、と思う。世間体が気になったのもそうだし、性衝動のことを気にして出来るだけ外では肉体的な接触をとらなかったのもそうだ。
 思えば撫子寮での逢瀬ばかりで、恋人らしいことはあまりしてこなかった。その事は私も、素直に反省すべきだろう。
 そうじゃなければ、だって……

 ――私、お姉さまのこと――

「お姉さまは、お優しいですよね」
 不意にかけられた志乃ちゃんの言葉で、思考は途切れてしまう。集中してなかったせいで前後の文脈が分からず、返した言葉は当たり障りのないものになった。
「えぇと、そんなつもりはないのだけど……」
0172名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:37:47.65ID:ZFjuYUOq
「いいえ、そんなことないです」
 くすり、と彼女は笑う。けれどそれは、どこか陰のある笑みで。
「お姉さまは、お優しいから……」
 言いかけて、志乃ちゃんはしかし、言いよどんだ。
「……志乃ちゃん?」
 その様子に私は思わず立ち止まる。
 けれど志乃ちゃんは少し考え、それさえもなかったことにして。
「やっぱり、何でもないですっ」
 そう言って笑い、傘の外へと一歩踏み出した。
「あ……」
 繋いでいた手が外れる。追わなければならないはずなのに、足が動かなかった。
 ――お姉さまは、お優しいから……
 分かった。
 分かってしまった。その先に続く言葉と、情事の最後に感じた違和感。
 ――お姉さまは、お優しいから。
   私のことを放っておけなくて、だから今も一緒にいてくださるんじゃないんですか?
 人目を憚った逢瀬。強く結びつけるのは、撫子寮で行われる情事だけ。けれどそれすらも欺瞞だったとしたら。
 そんな、疑問。だけど問えるはずもない。肯定でも否定でも、疑った瞬間に私との関係は崩れてしまう。
 きっと、そう思ってる。だから無かったことにした。疑うのは悪いことだ。悪いことは、してはいけない。
 でも――

 ――私、お姉さまのこと好きですよねっ?
   ちゃんと、ちゃんとっ、好きですよねぇ……っ!?

 彼女の鳴き声交じりの声が、リフレインする。
 肉欲と純愛がどろどろに溶け合って、彼女にはもう訳が分からなくなってしまったのだろう。自分が何のために香坂雪深という人間を求めているのか。何が愛で愛じゃないのか。それはただの性衝動じゃないのか。
 そして香坂雪深という人間は、優しさゆえに、それに応えているだけじゃないのか――
0173名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:39:55.15ID:ZFjuYUOq
「……志乃、ちゃん」
 違う、のに。
 そんなことないのに。
 けれど何も気の利いたことを言うことが出来ない間に、彼女との距離は少しずつ遠ざかっていく。志乃ちゃんの髪にはうっすらと雪が積もり始めていて、温かいからと握ったはずの手さえ今は離れたままで……
「………ぁ」
 瞬間。
 志乃ちゃんがちらりと、私の方を振り向いた。
 いや、私じゃなくて、ただ単に後ろを振り返っただけかもしれない。
 一人の夜道につい、そうしてしまうような、不安で心細くて泣き出してしまいそうな表情――


「志乃ちゃんっ!!」


 いつの間にか、傘は投げ捨てていた。
 その表情が、私に志乃ちゃんまでの距離を飛び越えさせた。
 私の声に今度こそ後ろを向き直った志乃ちゃんを、私は彼女がやって来た時と同じように、力いっぱいに抱きしめた。 
「……っ、お姉、さ」
 目をまん丸に開く志乃ちゃん。彼女に何を言うべきなのか、何を言ったら伝わるのか、正直な所私には見当もつかない。
「私は」
 だから私は、私の言いたい事を言う。きっとそれで伝わるはずだと信じて。
「あなたのことが、好き」
 ――あぁ、そうだった。
「あなたの柔らかい黒髪が好き。あなたの感じやすいうなじが好き。慎ましい胸が、可愛らしい声が好き」
 別れを切り出されたとき、今までの一ヶ月だけで十分すぎるくらい幸せだったと言われたとき。無性に悔しくて、私はこの子に一生付きまとうことに決めた。
 『だった』だなんて言ってほしくなくて。この子にとっての私を、勝手に過去のものにされたくなくて。
「はにかむように笑うあなたが好き。決して驕らないあなたが好き。いつも誰かの代わりに傷つく繊細なあなたが好き」
 だから、そうだ。
 決して『してあげている』なんてご立派な慈善の心じゃない。そんなものじゃ断じてない。私は、香坂雪深は、あなたと一緒にいるときが一番幸せなんだと。
 そう、伝えよう。
0174名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:40:59.99ID:ZFjuYUOq
「あなたが好きよ。ベッドの上のあなたも、それ以外のあなたも、全部まとめてあなたが好き」
 迷って不安でたまらないことなら、私がその不安を分かち合おう。
 何かが私たちを引き剥がそうとするなら、その何かに最後まで全力で抗おう。
 何があろうと無力な私の全力でもって、この子の手を掴まえて離さない。
 そう、今決めた。
 だから私は、多分言っていい。
 そんなどうしようもない意地と誇りと所有欲と、ありったけの愛しさを込めて。
「あなたを、愛してる」
 唇を寄せて、そう、呟いた。
 志乃ちゃんの瞳が揺れて――そして彼女は、私の胸に顔を押し付ける。その感触は、いつだって私に彼女のありのままの気持ちを教えてくれるはずだ。
「……お姉さま」
「うん」
「お姉さま……」
「うん」
「おねえ、さ……っ!」
「……うん」
 私の胸の中で、志乃ちゃんは微かに震えていた。
 押しつけられる額が少しだけ苦しくて――構うもんか。
 頭に積もっていく雪が冷たくて――構うもんか。
 このまま抱き合っていたら誰かに見られてしまう――構うもんか。
 どんなに溶け合っても一つになれない私たちは、だからこそお互いの体を抱きしめ合う。感覚を刻み付けるように。逢瀬の記憶を惜しむように。
 一人きりの夜、凍えるこの子の胸に、少しでも私の温かさが残っているように。

 
 <了>
0175名無しさん@ピンキー2014/07/21(月) 20:43:21.86ID:ZFjuYUOq
投稿完了です。
今回はエロ多め。だけどキャラが立ってるかちょっと心配だったり。

それでは、お粗末さまでした。
0176名無しさん@ピンキー2014/07/25(金) 21:06:49.54ID:NvfTBpDe
おう、なんかきてた
えろーい
あと最後の好き攻勢いいね
0177名無しさん@ピンキー2014/07/26(土) 01:12:08.88ID:A9p7OqBh
おおう、なんか気付かぬ内にまたすっごい好みなのが来てた、あなたが神か…!
自分が愛されてるのか不安な子ってほんとにいいものですね
0180名無しさん@ピンキー2014/10/28(火) 01:08:57.43ID:ONCNljd+
年末が近づくとこのスレを思い出す
今年も来てくれるかな歳神娘…
0181名無しさん@ピンキー2014/10/28(火) 10:49:06.07ID:h0LfHM4J
トリップもわからなくなるほど久しぶりですが投下させていただきます
あまり百合っぽくはないかも…
0182【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:51:01.28ID:h0LfHM4J
【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール


爽やかな朝の空気を切り裂いて、能天気な声が響き渡る。

「おーい、あんこー!おっはよー」

その耳に突き刺さるような、アニメ声優のような甲高い声に、杏子は思わず肩を竦める。

「てめえ!その呼び方はやめろっつったろ!?あたしの名前は杏子(きょうこ)だっ!」

もなかは、杏子の抗議などどこ吹く風とケラケラと笑う。

「いいじゃなーい。もなかとあんこ、そのまんまコンビ名にできるよお?」
「あたしはてめえと漫才やる気はねーっつの!」

その既に漫才じみたやり取りを、登校中の同高生たちがくすくすと笑う。
それに気付いた杏子の顔が、思わず朱に染まる。

「たくっ!あたしは行くよっ!てめぇに付き合ってると遅刻しちまわぁ!」
「あー、待ってよぉ、あんこ!」
「き・ょ・う・こ!!わざとやってんな!?てめえ!」
「あははははーあんこが怒ったあ!にっげろー」

秋野もなか。
拾遺和歌集にある源順の歌に由来する、れっきとした本名である。
肩までの髪をボブスタイルにしているせいで、丸い顔がさらに丸く見える。
顔立ちも体型も、性格も含めて、全体にま〜るい印象を与える少女である。

もなかがあんこと呼ぶ少女、朽木杏子。
先月、もなかのクラスに転校してきたばかりである。
その男っぽい言動が災いして、クラスメイトからは敬遠されている。
激しい性格を表すようにツンツンとあちこち跳ねた癖っ毛を腰まで伸ばしている。
吊り目に太めの眉毛、いつも怒っているかのようなへの字口。
スレンダーな身体付きもあいまって、全体的にとげとげしい印象を与える少女だった。

「あんこってば美人さんだし、口調とかへの字口とか直せばモッテモテなのにー」
「モテたくもねーし、そもそも男なんかに興味ねーし、あたしはこれが楽なんだよ」
「でもきっと友達もいっぱい出来るよー?」
「小うるさい女もてめえ一人で持て余してるよっ!」
「もなか、そんなにうるさいかなあ?」
「じ、自覚ねーのかよ!?」
「あははははー!」
「…ったく」

溜息をつく杏子の顔は、口ぶりの割にはさほど嫌そうではない。
口元は、笑いを堪えているようにも見えた。

※※※
0183【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:52:01.27ID:h0LfHM4J
朽木杏子はトラブルメーカーである。
少なくとも本人ともなか以外のクラスメイトや教師たちはそう考えている。

転校初日。
気怠げな教師の態度が気に入らないと喰って掛かってひと悶着。

「ちゃんとモノを教える気がねーんなら教師なんざやめちまえっ!」

下校時、万引きを働こうとした生徒の首根っこを押さえてふた悶着。

「万引きなんて甘っちょろい言葉を使うから調子に乗るんだよな。それ、窃盗罪っつー犯罪だかんな。わかってんのか?ああ?」

道に迷ったという小さな女の子を自宅まで案内したにも関わらず、その目付きの悪さから犯人呼ばわりされて、み悶着。

「そんなに自分のガキが大切ならちゃんと見ていてやれ!こいつは泣いてたんだぞ!?ママ、ママっつってな!その心細さをわかってやれてんのかよ、あんたは!!あたしを疑う前にそいつを抱き締めてやるのが先だろうがよっ!」

…といった具合。

そして翌日から、その全てを目撃していたもなかに付きまとわれる事になったのだ。

※※※

杏子のお気に入りの場所は、校舎の屋上だった。
昼休みになると、もなかを引き連れ…

「引き連れてねー!勝手に着いてくんだよっ!」

…勝手に着いてくるもなかを振り払いながら、杏子は屋上へむかう。

「無駄な抵抗なんだけどなーあっはっはっ」

屋上に出た杏子は、もなかがゆっくりのんびり小さな弁当を食べている間に、いち早く大きなオニギリ(×2)を頬張り、とっとと横になる。

「ふあ〜〜あっ!」
「あんこ、眠そうだねえ」
「うちは父子家庭だかんな。あの宿六のために家事もしてやんなきゃなんねーの」
「ねーねー、そういう家庭的なとこもアピールしよーよ。モッテモテに…」
「ならなくていいし、友達もいらねー」

ぴしゃりと遮り、杏子は睡眠態勢に入る。

「…こいつ1人で10人分くらいだからな」
「ん?なぁに?あんこ」

小声で呟かれた杏子の言葉は、卵焼きとコロッケのどちらを先に食べるべきか熟考中だったもなかの耳には届かなかったようだ。

「…なんでもねー」

ぷいと顔を背けて寝息を立て始める杏子の背中を、もなかはほんわりとした笑みを浮かべて見守っていた。

※※※
0184【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:53:02.99ID:h0LfHM4J
「…すーすー」
「…」
「…すーすー…むにゃ」
「…」

キーンコーンカーンコーン♪

「っしゃあ!午後の授業だっ!」
「うぉっとおー!?」
「て、てめえ!?な、なにしてた!ち、近くなかったか!?」
「なんも!なんもしとらんとよ!?」
「…何故訛る?」
「あ、あははっ、あ、あれえ?」

何故か頬を染め、笑って誤魔化すもなか。
その様子を訝しげに見やりながら、杏子は立ち上がる。

「さって、と…」
「で、でも、あんこは偉いねえ」
「ああ?なんの話だ?」
「そんなに眠くても授業にはちゃんと出るし、授業中には絶対寝ないし」
「あぁん?たりめーだろ?てめ、何のためにガッコに来てんだよ?」

心底不思議そうに杏子が問う。

(…ま、まじめかっ!つか、正論すぎるっ!)

内心の動揺を隠し、もなかは戦闘ポーズを取る。

「や、やるな、お主っ!」
「…何バカやってんだ」
「あん、待ってよぉ、あんこってばぁ友達甲斐がないなぁ」
「…誰が友達だって?あと、めんどくせーから放置してるだけで、その呼び方、認めた訳じゃねーからな?」
「やー!睨んじゃいやー!んもぉ寝顔はあんなにか〜い〜のにぃ!」
「て、てめえっ!やっぱ見てやがったな!?」
「かぶりつきでねっ!」

きゃいきゃいと騒ぎながら屋上を後にする二人。
その様子を、給水塔の影から見送る者があった。
杏子ともなかの憩いの場たる屋上には、かなてより先客が存在したのだ。

「…あれが朽木杏子って生意気な女か」
「そーなんすよ、黒田くん!」
「へっ…一度痛い目に合わせてやる必要がありそうだな」

※※※
0185【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:54:02.65ID:h0LfHM4J
「朽木杏子」
「…」

夕闇の公園。スーパーでの買い出しの帰り道、杏子は数人の男に取り囲まれた。
制服姿のままなのは、着替えの時間が惜しかったからだ。何しろ、タイムセールが間際に迫っていた。
人通りの無い暗い公園を通ったのは、このルートが一番の近道だからだ。

(…豆腐なんか買うんじゃなかった)

杏子は右手に下げた買い物袋にチラと視線を向け、そんな事を思った。
ちなみにスーパーのビニール袋では無く、持参した布袋である。ビニール袋を貰わなければ、ポイントカードのポイントが1プラスされるからである。

「朽木杏子、てめえ、随分調子くれてるらしいじゃねえか?あ?」
「…」
「なんとか言ったらどうだ、ああん!?」

下卑た怒声をあげる男を、杏子は冷めた目で見やる。可哀想なモノを見るような、そんな目だ。

「ビビって何も言えねえのかよ!はっ!?」

自分は名乗らず、あまつさえ初対面の相手を呼び捨てするような輩は、人の格好をしたブタであるから、相手にする必要は無い。

幼い頃、父から教わった事を杏子は律義に守っているだけである。

「…よく見ると、カワイイ顔してんじゃねえか?」
「痛い目を見せてやるんじゃなかったんすか?黒田くん」
「そのつもりだったが、気持ちいい目を見せてやる事になるかもなあ」

げへげへと下卑た笑いをあげる男たちの相手をしているヒマなどない。
無言でその意思表示をしつつ、杏子はスタスタと歩きだす。

「おい、てめえ!待ちやがれ!」

ひとりの男が杏子の肩を掴む。そのまま杏子の顔をこちらに向けさせようとするが、杏子の身体はびくともしない。男の顔に怪訝な色が浮かぶ。

「…汚い手で触んじゃねー」

(…こいつ、確かコンビニで万引きしようとしてたバカだっけか

唖然とした表情の男の顔に、見覚えがあった。

「てめっ…!」

万引き男が気色ばむ。だが、次の瞬間、杏子の身体がすっ…と沈んだかと思うと男の身体は中空を舞い、次いで地面に叩きつけられていた。

「な…?」

何が起きたのか解らない。万引き男の表情がそう語っていた。

「あたしは忙しいんだ。これから、晩飯の用意をしなきゃいけねーんだからな」

※※※
0186【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:54:55.40ID:h0LfHM4J
「杏子ぉ、いま帰ったぞー」
「あーお帰り、オヤジ」
「あー腹減った。ん?なんだこのぐしゃぐしゃのは?お前にしちゃ珍しいな」
「麻婆豆腐も知らねーのか?中華料理だぞ」
「にしたってお前、豆腐粉々のぐちゃぐちゃ…」
「…文句言うんなら喰わなくていいんだぜ?」
「あー旨そうだ!いただきまーすっ!」

杏子の父がそう言って、パン!と両手を合わせる。
2mになんなんとする巨体の父がやると、その音は家の外にまで響きそうだった。

「んで?今日の試合は?勝ったんだろーな?」
「たりめーだ。俺を誰だと思ってる?泣く子も黙るジャイアント・クッキー様だぞ?」
「…そのセンスねーリングネームはなんとかなんないのかねえ…ま、ともあれご褒美だ!」
「こ、これは!発泡酒じゃない、まごうことなき本物のビールっっ!しかもプレミアムじゃないかっ!」

ははーっとビールにひれ伏す父を杏子は呆れた様に見やる。だが、その眼は笑っている。
おもむろに、そして一気にビールを飲み干し、お代わりを催促しつつ、父が娘に問うた。

「そういや杏子、新しい学校はどうだ?友達出来たか?」
「小学生じゃあるまいし。ちゃんとやってるよ…そ、それに…」
「ん?」

いつも言いたい事はハッキリ言う男らしい娘が(それはそれで問題かも知れないが)言い淀むなど珍しい。

「なんだ?ま、まさか!好きな男でも出来たか!?」
「そんなんじゃねえ!!と、友達も出来た…ぞ。一人だけ、だけどな」
「ほお!そりゃ良かった。なに、一人でもお前にしちゃ上出来だ!で、どんなコなんだ?」
「…一人で10人分だよ」
「は?」

それ以上、この件に関して杏子が言葉を発する事は無かった。少し頬を染めた娘を、父はその厳つい体躯と顔に似合わぬ柔和な笑みを浮かべ、うんうんと頷くだけだった。

…こうして、朽木家の父娘の団欒の時間は、和やかに過ぎていく。
0187【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:55:45.82ID:h0LfHM4J
※※※

「およよ?なんだぁ、あのゾンビの群れは?」

湯上りに夜気にあたろうと窓を開けたもなかの目に、数人の人影が見えた。
街灯の下、よろよろと歩く男たちは確かにゾンビじみていた。しかもそのゾンビたちは、もなかの学校の制服を着ているようだ。

「むーん、ウチの学校にゾンビがいたとは…!大発見!明日、あんこに教えたげなきゃ!」
「もなちゃ〜ん、あんまり外の空気に当たってると風を引いちゃいますよ〜」
「はっ!母上さまっ!」

がらがらぴしゃん!と窓を閉め、もなかはベッドに潜り込む。そして3秒後には寝息をかいていた。

「むにゃむにゃ…あんこ…ゾンビ…むにゃ」

※※※

そのゾンビたちはと言えば。

「くそ、あのアマ…いてて」
「なんであんなに強いんだいてて」
「も、元はと言えばてめえがっ!」
「ご、ごめんよぉ黒田くん!」
「くそ…朽木杏子!覚えてやがれえ!」

※※※
0188【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 10:56:52.82ID:h0LfHM4J
そして、一夜が明けて。

「あんこー!あんこあんこあんこー!」
「だーっ!連呼すなっっ!!」

爽やかな通学路に響くいつもの怒声。

「おっはよ!ねえねえ、聞いてよ!昨日ね、ゾンビがね!…あんこ、ほっぺたどしたの?」

杏子の右頬には、大きな絆創膏が貼られていた。

「なんでもねーよ、ちょっと擦りむいただけだ。大した事ねー」
「もぉ!またケンカでもしたんでしょー!?ダメだよぉ、顔は女の命なんだよっ!?命は命がけで守らないと死んじゃうんだよっ!?」
「お、おう、訳わかんねーけど、解った」

もなかの剣幕に押され、思わすそう答える杏子。

「ワカレバヨロシイ。で、痛い?痛い?」
「だから、大した事ねーって。ほんのかすり傷だって」
「そっかあ…ならいいけど…んーっと」

何かを思案するもなか。そして。

「んちゅっ」

もなかはおもむろに杏子の頬に口付けた。

「おわあっ!?な、ななな、なにしやがる!?」
「んー?ケガが早く治るよーにって、おまじない!」
「あ、あああ、あほぉ!お、おおお、女同士ででで、キ、キキキキ…!!!!」

狼狽え動揺する杏子。耳の先まで真っ赤だ。
0189【あんこもなか】 1.お気楽娘とツンデレガール2014/10/28(火) 11:22:57.35ID:h0LfHM4J
「おー、あんこ、かーわいー!そんなあんこ、初めてだーうふふのふー」

ぺろりと舌舐めずりするもなか。

「もっかいチューしちゃおっかなー?ん〜…」
「だーっ!やめ!やめ!二度とやるなっ!今度やったら絶交だぞ!」
「おおっ?絶交するにはまず友達にならなきゃねっ!あんこ、ついにもなかを友達として認めてくれたんだね!?」
「うぐっ…!」

言質を取られた…朽木杏子、一生の不覚…っ!

「と、友達って事にしといてやるから!だから!二度とすんなよ!解ったな!?やったら…絶交だぞ!」
「はっ!あんこ殿!りょーかいでありますっ!」

しゃちほこばって敬礼するもなか。
真っ赤に頬を染めて顔を背ける杏子。

「えへへ、あんこ、だーいすき」
「こ、こら!う、腕組むな!ひっつくな!」
「えーいいじゃんいいじゃん、友達でしょおー?」
「ただの友達はそんな風に密着しないっっ!」
「じゃあ親友って事で!」
「じゃあ、じゃねえええ!!」

…その様子をクラスの男子に見られていた2人は、その日以降レズだの百合だのと影で囁かれ続ける事になる。

杏子に面と向かってそんな事を言う相手は、勿論ひとりもいなかったが。



続く
0191名無しさん@ピンキー2014/10/29(水) 03:27:55.53ID:T5jMPb95
いいね〜続き楽しみ

脳内にあいぽんが降臨してしまうのは避けられないよね
0192【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!2014/10/29(水) 08:49:55.84ID:o38KD5Jw
【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!


「おーい、あんこ〜」
「おっす、もなか」
「はぉっ!?あ、あんこ、どうしたの!?」
「な、なんだよ!?」
「あんこがもなかの事、てめえじゃなくもなかって呼んだよ!?あんこって呼んでも否定しなかったよ!?」
「…呼び方に関してはもう諦めた。それに、なんだ…」
「ほよ?」
「と、友達をいつまでもてめえ呼ばわりするほど礼儀知らずじゃねえぞ、あたしは」

耳の先まで真っ赤になりながら、杏子が言う。
きょとんとしていたもなかの顔に満面の笑みが広がる。

「にへへっ、あんこ〜!」
「だーっ!だからっ!引っ付くなっつーの!」
「照れなくていいじゃないのお、あんこってば!」

と、そんな訳で…

「ねえ、朽木さんって、見かけ程怖い人じゃないのかな?」
「あのもなかがあんなに懐いてるし…それが満更でもなさそうだし…」

クラスにおける杏子の評価が変化し始めていた。

「最近気づいたんだけど…朽木さんって美人、だよね?」
「そうそう!口は悪いけど…でも先生への態度とかさ…ちょっとかっこいいってゆーか…」
「万引きを止めたって噂、ホントかな?」
「小さい子を助けた話、知ってる?」

孤高の美女。口は悪いが情は深い。正義感が強く、弱きを助け強きを挫く。
なんとなくそんな良いイメージが杏子にはつき始めていた。
やや美化されているきらいはあれど、それはあながち的外れな評価でも無かった。

「ちょっと…話しかけてみようかな?」

※※※
0193【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!2014/10/29(水) 08:51:19.48ID:o38KD5Jw
クラスの女子が数人。
席につき、窓の外を見やり生欠伸をかみ殺していた杏子に近づき、そして

「あの…あんこ、さん?」
「…ああ?」

ギロリ。

そんな擬音付きの鋭い眼光が、声を掛けた女子を射抜いた。

「ひぃっ…!」

思わず涙ぐみ、後ずさる女子たち。

「ちょ、ちょっと待ったあああ!」
「うわっ!?も、もなか!どっから湧いた!?」

神出鬼没。それがもなかという少女である。

「ひーん、もなかぁ、怖かったよぉ!!」
「あーよしよし、いい子いい子。あんこってば、女の子泣かせちゃメッ!でしょー!?」
「い、いや、だってよぉ…」

もなかの剣幕に思わず口ごもる杏子である。

「だってもかかしもなーい!ちゃんとあやまんなさいっ!」
「お、おお…」

そして例によって、耳の先まで真っ赤にしながら

「わ、悪かったな…すまん」

ぺこりと、頭を下げた。

「う、うんこっちこそ…ご、ごめんなさい」

…そして。

「ああ?なんだそりゃ!?それはその男が悪いだろがっ!」
「朽木さんもそう思う!?そう思ってくれる!?」
「たりめーだ!よっしゃ、いまからそいつんとこ乗り込んで一発張り倒して…!」
「あんこ!あんこ!いいの!?まだ今日の授業残ってるよっ!?」
「授業とこいつの辛さと天秤にかけられるっつーのか!もなか!」

…いつしかクラスの女子は杏子に気さくに話しかけ、女の子らしい恋バナに花を咲かせるようにまでなっていた。

「許せねえ!そんな男、天が許してもこのあたしが許さねえ!」

一人、恋バナしてる女の子なのか正義のヒーローなのか、自我が行方不明の人物もいるにはいたが。

※※※
0194【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!2014/10/29(水) 08:52:38.30ID:o38KD5Jw
昼休み。いつもの屋上、いつもの二人。
何故かこの2人の時間だけは、クラスメイトたちも遠慮して近づこうもしない。

それは二人にとっての、聖域。

誰も何も言わなくても、自然とそんな意識が浸透していた。

「ふ…ふぁ〜あ」
「お、あんこちゃんはお眠の時間かな?」
「うっせーもなか。眠いは眠いが…今日は寝る気にゃなんねー」
「ん?どぼして?」
「…さあ、な」

何故だろう。気持ちが高揚している。

触る者みな傷つけるような態度と言動ばかり取ってきたように思う。
それで周囲に忌避され敬遠され、ひとりになっても、気にしてなどいなかった。
自分が信じた道を行く、それが杏子のモットーだった。

だが、もなかと出会って何かが変わった。
いや、杏子自身は自分が変わったとは思わない。
相変わらず言葉使いは悪いし、言いたい事は言うし、気に入らないものはバッサリ斬る。
なのに、これまでと周囲の反応が違うのだ。

(あたしは、何も変わってねえ。とすると…
(やっぱり、こいつのせい…なのか?

ニコニコと幸せそうな笑みを浮かべ、お弁当のタコさんウインナーを頬張るもなか。
その様子を見ていると、杏子の頬にも自然と笑みが浮かぶ。

(…いや、あたしも少し…変わったのかも知れねえなあ…

ポカポカと降り注ぐ太陽の下、2人の少女の心はとても充足していた。

※※※

「…あの女には敵わねえ」
「そいつは情けない話ですが…同感す」
「だが、あっちならどうだ?」
「丸い方…すか?」
「丸い?うん、確かに丸いな。だがな、オレはどっちかというと痩せっぽちよりああいうタイプが…何言わせんだてめえ!!」
「いてっ!く、黒田くんが勝手に言い出したんじゃないすかっ!」
「とにかくだ!」

咳払い、ひとつ。

「あっちなら…チョロいだろが?あの女の大切なモノ…めちゃくちゃにしてやりゃ、あいつも少しはオレらの恐ろしさが解るんじゃねえか?」
0195【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!2014/10/29(水) 08:54:08.50ID:o38KD5Jw
※※※

「おおっ!?なになになに!?」
「秋野もなかっつーのはてめえか?」
「そうだよ!本名だぞ!拾遺和歌集にある源順の歌…!」
「…いいから着いて来な。黒田くんがお呼びだ」

※※※

「…遅え」

既に日が傾き、夕日が差し込む教室で。
杏子はひとり「ちょいとお花摘んでくるから待っててねー」と言って教室を出て行ったもなかを待っていた。

「…一体どこまで花を摘みに?花壇か?それか花畑でもあんのか、この辺に?」

うーむと唸る杏子であった。

※※※

数人の男子生徒に取り囲まれたもなかは、既に挙動不審の極みにあった。

「おっとぉ!これはもなか一世一代の大ピンチ!?」

口調はいつもと変わらないが、怯えの響きが含まれていた。
それを敏感に察知した男たちは、いやらしい笑みを浮かべ、包囲を縮める。

(ど、どうしよう…どうしようどうしようどうしよう…!あんこ…助けて!あんこ!!

※※※

「…おかしい」

そもそも、なぜ花を摘みに行く必要があったのか。
もしかして、あれは何かの暗号だったのかも知れない。

「暗号?…何のために?」

首を傾げる杏子。その時、ドアがばああん!となった。

「もなか!遅かっ…あれ?」

待ちくたびれていた杏子は、さも嬉しそうに呼びかけ、しかし再び首を傾げる。
ドアを勢いよく開けて飛び込んできたのはもなかではなく、クラスメイトの女子だった。

「く、朽木さん!大変なの!もなかが…もなかが!」

※※※
0196【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!2014/10/29(水) 08:55:04.23ID:o38KD5Jw
スカートを翻し、杏子が跳ぶように走る。
階段など数段分一気に飛び降りる。当然スカートがめくれ、丸見えになったショーツに通りすがりの男子の目が釘付けになる。
白く輝く、飾り気のない純白のショーツ、そこから伸びるカモシカのようなしなやかで健康的な長い脚。
しかし、そんな絶景を衆目にさらしている事など気にも止めず、杏子は走る。


※※※


「きゃああああっ!」

男たちに押さえ付けられたもなかが、脚をばたつかせる。

「へっ、いくら騒いだってムダムダムダーーーっ!」
「ここは誰も通りがからねえよ、オレたちが使うことになってるからな」

いまは使われていない古い倉庫。
男たちはもなかをそこに連れ込み、レイプに及ぼうとしていた。
暴れる脚を押さえこみ、スカートを捲り上げる。
くまさんプリント付きのショーツを晒され、もなかの顔が羞恥に染まる。

「あんこーーー!助けてええええ!」
「へっ、あいつには見られてねえ、来るわけが…」

と、その時。

「うぉぉりゃああああ!」
「な、なんだ!?」

倉庫のドアが弾け飛ぶ。蹴り上げた脚をそのまま地面に叩きつけると、杏子が舞う。
もなかを押さえつけていた男、その振り返った、驚愕の色を浮かべた顔面に杏子の両の靴がめり込む。

ドロップキック。

あらわになった純白のショーツの眩しさを、男たちが堪能する時間は、殆ど無かった。

「もなかに!あたしの友達に汚ねぇ手で触れるなあああっ!」

怒号とともに、荒れ狂う嵐が倉庫内を蹂躙した。

※※※
0197【あんこもなか】 2.もなか、危機一髪!2014/10/29(水) 08:56:34.38ID:o38KD5Jw
杏子の前に男たちがひれ伏す。

「も、申し訳ありやせんでした!あんこさん!」

失言であった。

男の後頭部に杏子のかかと落としが炸裂。
男は倉庫の床と濃厚な口付けを交わす羽目になった。

「あたしをあんこと呼んでいいのは、もなかだけだっ!」
「す、すいやせん!く、朽木の姉御!あ、姐さん!き、杏子さまっ!」

…以後、黒田を筆頭とする男たちは、朽木杏子を「マッド・クッキー」などと呼び、その恐怖を語り継ぐ事となる。

※※※

「あんこ…ありがと」
「ふん…これに懲りたらあたしから離れんな」
「…うん。そうするね。ずっと、離れない」
「だ…!そ、そこまで、く、くっつかなくても、いいんだぞ!?」

ボロボロと涙を零すもなかを腕にぶら下げながら、杏子はふと思い出して、問う。

「で?花はどうした?これから一緒に摘みに行くか?」

もなかがキョトンとして、次いで大きな声で笑う。
それを不思議なものを見るようにしてから、杏子も笑う。そして。

「やっぱもなかには笑顔が一番似合うな」

頬を染め、小声で呟いた。



続く
0199名無しさん@ピンキー2014/10/29(水) 14:06:04.84ID:REahF3cd
!この感じ……お待ち申しておりました

やっぱり柄悪い子が絆されてくのは最高だな!
続きが待ちきれない、訴訟
0200名無しさん@ピンキー2014/10/30(木) 02:46:29.88ID:SE94zRs/
気が強い娘こそヒロインとして最高だと思うんです、百合じゃ
0202【あんこもなか】 3.あんこの試練2014/10/30(木) 23:41:08.57ID:FanAcciZ
【あんこもなか】 3.あんこの試練


「なーなー朽木…!」
「あ?」
「いや…く、朽木、さん?ちょっと聞いていいかな?」

近頃はクラスの男子までもが、時折杏子に、話かけてくる。

「もーあんこってば何で睨むのぉ?」
「知ってんだろ、あたしは元々こういう目付きなんだよ。で、なんだよ?」

杏子は話しかけてきた男子に話の続きを促しただけなのだが、どう見ても詰問調だ。

「あ、ああ…その…プロレスラーのさ…ジャイアント・クッキーって知ってるかな?あ、それはリングネームで本名は朽木挙周ってんだけど…」
「知ってる。つか、ウチにいる」
「うおっ!?そ、それって…!」
「あたしの親父だ」
「や、やっぱり!?珍しい苗字だからまさかとは思ったんだよ!お、おれ、ファンなんだよっ!こ、今度サインとか…いやできれば会わせて…!」

傍で、もなかがほえーと惚けたような感心の仕方をしている。

「あんこは格闘家の娘の人だったんだねえ」
「あ?言ってなかったか?」

杏子は身の上話は苦手だ。自分の事を語るのは苦手だ。
これまで拳で語ってきたから…というのも女の子としてどうかと思うが。

「そっかーだからそんなに強いんだねえ」
「もなかんちは和菓子屋なんだよな?」
「そーだよ!ウチのお菓子はサイコーさっ!美味しいよっ!」
「だからそんなに丸々と…ん、いや、なんでもねえ」
「あ、そーだ!ねえ、あんこ!」

もなかの目が大きく見開かれ、ただでさえ丸い目がまん丸になる。
いい事を思いついた時の表情だ。

(…厄介事を思いついた時の目をしてやがる…!

杏子の頬がひくっ!と、引き攣る。
0203【あんこもなか】 3.あんこの試練2014/10/30(木) 23:43:59.94ID:FanAcciZ
「あんこ!ウチに遊びにおいでよ!ウチの和菓子、食べにおいで!」
「いっ!?」
「友達になったらおウチにご招待!和菓子を振る舞いさらに親交を深めあおう!それが我が家のスローガンだったのだ!ね、来て!来て来て来て来てっ!」

(友達の、おウチ…?

それは朽木杏子にとって、いまだ経験したことのない未知の領域であった。

友達の、おウチ。

それはまさに人跡未踏、深海の世界かあるいは遠い宇宙の彼方…杏子にとってそれらと同義の場所であった。

「あんこ?どしたの?すっごい汗だよ?」
「お、おう。いや、なんでもねえ」

(こ、このあたしをここまで追い詰めるとは…!
(やっぱりもなかは…只者じゃねえ…!

こうして、杏子の前に「友達のウチに遊びに行く」という空前の試練が降って湧いたのである。

※※※

「あ、あんこ!?どしたの!?右手と右足が一緒に出てるよ!?どうやったらそれで歩けるの!?すごいすごい!ね、やり方教えて!こうかな?あたっ!こけた!こけたよっ!?」

…と、1人で10人分というもなかの喧騒も、いまの杏子には届かない。

(と、友達の、ウチ…!

目の前に聳え立つ「和菓子 秋野」の建屋と暖簾。
杏子は激しい緊張の中、暖簾の文字を親の仇を見るような眼で見ていた。
と、その暖簾がめくれ、ほんわかした笑みを浮かべた女性が顔をのぞかせた。

「あら、もなちゃん、お帰り〜あら?お友達?」

き、来た!第一関門…!家族への挨拶っ!!

「は、はいっ!は、ははは、はじめまして!く、くつきあん…じゃねえ!あ、あたし、朽木き、杏子と申します!以後、お見知り置きを!」

がくん!と腰を90度に曲げ、杏子が叫ぶ。

「あらあらまあまあ。礼儀正しいお嬢さんだこと。さあさあ、おあがりなさい」

…第一関門、突破!

杏子は心の中でガッツポーズを取る。
既に強敵とのラウンドを終えたように汗みずくであったが。

※※※
0204【あんこもなか】 3.あんこの試練2014/10/30(木) 23:45:15.34ID:FanAcciZ
…しかし、杏子の緊張は長くは続かなかった。

(この親にして、この子あり、か。

もなかともなかの母・かのこは、精神的双生児と言えた。
あっという間に打ち解け、いつもの調子を取り戻した杏子は、供された和菓子をつつく。

「う…うめえ!!な、なんだこれ!?」
「ごく普通の葛餅だよーでも、美味しいでしょー?」
「こ、こんな旨い和菓子、喰ったことねえ!も、もなか!お前いつもこんな旨いもん喰ってんのか!?」
「あらあら、気に入ってくれたのね?たーんと召し上がれ」
「うすっ!いただきますっ!」
「いい食べっぷりねえ、惚れ惚れするわあ。もなちゃんが一目惚れしちゃうのも解る解る」
「うげほげほげほっ!ひ、ひとめ…!?」
「やだーおかーさんのバカあ!そういう事言わないでよお、恥ずかしい!」
「もなか!親に向かってバカとはなんだ!バカとは!!」
「おぅ!?あんこの正論生真面目攻撃きたーーー!」
「あらあら、まあまあ(ニコニコ)」

と、そんな調子であっという間に時は過ぎ。
土産の饅頭まで持たされて秋野家を辞した杏子であった。

※※※
0205【あんこもなか】 3.あんこの試練2014/10/30(木) 23:46:35.06ID:FanAcciZ
「も、もな、か…あ、あのよ…」
「どしたの?あんこ、真っ赤だよ?」

夕闇の中、まだこの辺りに不案内な杏子をそこまで送る道すがら。

「お、おう…あの…その…お袋さんが言ってた…その…」

『もなちゃんが一目惚れしちゃうのも解る解る』

(一目惚れってどういう意味だ?
(もなかがあたしに惚れてる…?
(いや、だからなんだ。あたしは…
(あたしは、もなかをどう思ってる?

(始めての…友達。

(そうだ、惚れた腫れたは関係ねえ。
(ただの、友達だぞ、女同士だしな!
(それ以上でもそれ以下でもねえ!
(ある訳がねえじゃねえかっ!

「あんこ?」
「うぉっ!?ち、近い近い近いっつの!!」

至近距離で覗き込まれ、杏子が狼狽する。

「ほら、もう道解る?」
「あ、ああ…おお、わ、解る解る」
「よし、じゃあまた明日ねっ!…おりょ?」

もなかの服の袖を、杏子の手が掴んでいた。
まるで子供が母にしがみつくように。

「?」
「いや、その…もう少し、話、してかねえか?」
「…うん!いいとも!」

照れ臭そうにいう杏子に、もなかは満面の笑みで応じる。

※※※
0206【あんこもなか】 3.あんこの試練2014/10/30(木) 23:48:18.13ID:FanAcciZ
夜の児童公園。
もなかと杏子はブランコを揺らしながら取り止めのない会話を楽しむ。

「ねーあんこ。ウチのおかーさん、どうだった?」
「どーって…なんつーか、もなかソックリだな。あ?逆か?」
「あははははー」

と、杏子が急にしんみりした顔をする。

「羨ましいよ、いいお袋さんで。あたしの母親は、あたしと親父を捨てて出てったからな」
「あんこ…?」
「ま!それで寂しいとかそういう事でもねえけどな!」
「あんこ…」
「うぉっ!?も、ももも、もなか!?」

もなかが、杏子を背中から包み込むようにぎゅっと抱きしめた。

「…あたしはもなかだからね、あんこを優しく包んじゃうんだよん」
「ば、バカいってんじゃないよ!!ほら、そ、そろそろ帰ろう!うん、帰らなきゃなっ!」
「もう少し…こうしてたいな」
「も、もな…」

真っ赤になりながら、それでももなかを振り払えない杏子だった。



続く
0207【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:17:00.28ID:85/Ku4jk
【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん


「あほもなか!空っぽか、お前の中身は!」
「あははーだから、あんこがつまってくれなきゃねー」
「えーい!ああ言えばこういう!なんであたしはこんなのと友達やってんだっ!」
「んも〜あんこだってぇ、もなかが大好きな、く、せ、にん♪」
「いや、それは、その…!た、頼むからもう少し真剣にやってくれっ!出ないと海なんか行けないんだぞっ!」
「おぅ!それは困る!大変困るっ!あんことのデートがお預けだなんて!」
「デ、デデデ、デートぉ!?いや、違う!断じて違うだろが、それは!」

…事の発端はこうだ。

クラスの何人かで夏休みの旅行計画が持ち上がった。行き先は、海。
だが、もなかの母・かのこは、もなかに課題を課したのである。

『期末試験の平均点50点以上』

それは平均40点、いつも赤点ギリギリのもなかにとって、到底不可能と思われる数字であった。

「たく、もなかのお袋さん、優しそうな顔してなかなか厳しいよなあ」
「いやあ、もなかの点数がいつも悪すぎるのがいけないんだよお」
「それが!解ってんなら!真面目に!やらんかあ!」
「はーい!」

返事だけは良いもなかである。

そして。

※※※
0208【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:18:26.75ID:85/Ku4jk
「うぉっ!?ギリギリ!まさに瀬戸際!」という点数で、もなかはなんとか条件をクリアしたのだ。

「あれ?あんこ、どうしたの」
「つ、疲れた…もう海なんか行く元気残ってねえぞ…」

もなかの試験勉強を見てやっていた杏子は、すでに疲労の極みにあった。

「ダメダメ!さあ!張り切って行ってみよー!海だ!水着だ!太陽だーっ!」
「みず、ぎ…?」

ピクリと、杏子が身じろぎする。

「み、水着…着る、のか?」
「あったりまえでしょー?海だよ?うーみー」
「だ…」
「だ?」
「ダメだダメだダメだっ!み、水着なんてとんでもねえっ!」

ガタガタと震える杏子。

(おー!?あ、あんこが!
(あのマッド・クッキーの異名を持つ狂犬あんこが…怖れている!?

もなかは奇妙な感慨を得た。

(あんこにも苦手なものがあったんだねえ。

うんうんと頷き、そして。

「で?水着の何がそんなに怖いの?」

恐怖のあまり(?)蒼ざめ、ガタガタと震える杏子に問う。すると。

「は…」
「は?」
「は、恥ずかしいじゃねえか!水着なんて!あんなの、し、下着と変わんねえぞ!?」
「…」

…杏子はあのもなかを呆れさせるという偉業を達成した。
それはいまだ誰も成し遂げた事のない前人未到の快挙であった。

「はーなるほど。はい、それじゃ行ってみよーかー」
「も、もなか?」
「お買い物ー!あんこのために飛び切りセクスィ〜〜〜な水着を選んであげる!」
「ち、違う!それ、違う!もなか!?」
「だいじょぶだいじょぶ!あんこ、スタイルいいんだからぁ恥ずかしがる事ないってば!」
「もなか!頼む!聞いてくれ!人の話をちゃんと聞けーーー!」
「あ、あたし、それ一番苦手だー!知ってた?」
「…知りたくねえけど、知ってたぁ!」

※※※
0209【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:19:45.56ID:85/Ku4jk
と、いうわけで。

「うーみーっっ!海だよ、あんこ!あれ全部水なんだよっ?おまけにしょっぱいの!すごいねー!!」
「お、おお」

水着にパーカーをかぶっただけのもなか。
その隣に立つのは、上下ともに学校指定のジャージを着込んだ杏子。
夏の海にはミスマッチこの上ない姿であった。

「く、朽木さん?どうしたのその格好」

同行したクラスメイト(黄色いワンピース+パレオ)に問われて憮然とした表情をかえす杏子。

「水着、忘れた…とか?」

恐る恐る問う別の少女(ピンクのセパレートタイプ)。

「まっさかー!なあなあ、朽木さんの水着姿、見たいなあオレ」
「うん!見たい見たい!」

と、尻馬に乗る2名の男子(ヤシの樹が描かれたボクサーパンツとブルーグレーの競泳パンツ)

「こらー!あんこをやーらしー目で見るなー!プンスカ!」

と、膨れるもなか(花柄のビキニ)

総勢6人のパーティの中、杏子(学校指定ジャージ)だけが浮いていた。

「い、いいんだよ、あたしはこれでっ!」

ダラダラと汗を流しながら杏子が吠える。
ともあれ、楽しい旅行の始まりであった。

※※※
0210【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:20:50.72ID:85/Ku4jk
「ちぇーっ!せっかくあんこにピッタリの水着、選んであげたのになー」
「だ、だからちゃんと着てきただろが」
「ジャージで隠してちゃ意味ないよ〜ねえ脱いでよ脱ごうよ、ひっひっひ、良いではないか良いではないか」
「だ、ダメだ!絶対ダメだ!」

肌を見せるのが恥ずかしい。
貞操観念の強い杏子である。
しかも、もなかと一緒なのだ。

(なんでだ…もなかに見られると思うと…余計に照れ臭いとうか、恥ずかしい…
(いても立ってもいられなくなるこの感じ…なんなんだよ、くそーーーっ!!

「あーーーっ!」

苛立ちのあまり、髪を掻き毟る杏子。

「あ、あんこ!?だいじょぶ!?」
「な、なんでもねえ!い、いいからもなかも皆と遊んで来いよ!」


砂浜のパラソルの下。もなかと杏子は2人だけだった。
同行の皆は海で、波打ち際で、砂浜で、楽しげに遊んでいる。

「もなか、今日は焼こうと思って。褐色の夏女になるんだよ、うふふん」

そういうと、もなかは水着のブラのホックをパチンと外しうつ伏せに横たわる。

「もな、か…?」

もなかの意外と大きな胸が砂地に押し付けられ、いわゆる横乳がはみだす。
何故か、杏子はその光景に魅入ってしまう。

(…もなかの胸、柔らかそう…だな

ふと、そんな事を考え、顔が熱くなるのを感じた。

(バ、バカかあたしは!何考えてんだ、一体!

「ねーあんこ!背中にオイル塗ってよお」

まったくの不意打ちであった。
茹で蛸のように赤く染まり、脳天から湯気を吹きそうな勢いで、

「で、出来るかー!そんな事!!!!」
「あ、あああ、あんこ!?」

と、大声で絶叫。杏子はその場から走り去ってしまう。

「あん…こ?」

※※※
0211【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:21:45.92ID:85/Ku4jk
(…なんだってんだ。ったく…

あれ以来だ。調子が狂ったのは、あの日からだ。

『もなちゃんが一目惚れしちゃうのも解る解る』

(もなかが…あたしに、惚れてる?女同士、なのに?
(それとも、あれはただのものの例えなのか。
(もしもなかがあたしに惚れてたら、あたしはどうするのか。嬉しいのか。
(もしあれが単なる物の例えで、もなかはやっぱりあたしを友達だと思っていたら…
(あたしはどう思う?ガッカリするのか。

「…そんな事、考える時点でおかしいだろ…」

思わず、溜息。

「ゆーじょーもコイも知らずにきたからなあ。どうしていいのか、よく解んねえよ…」

経験値不足。どうやらそれに尽きるようだった。


※※※


「おーい、あんこ!どこ行ったのー?」
「朽木さーん、おーい」

杏子の耳に、彼女を探す声が届いた。
もなかと、同行の男子だ。2人で杏子を探しに来たらしい。

「あんこがいないと寂しいよーあんこー出ておいでー」
「…秋野はホントにあんこあんこなんだな」
「だって大好きなんだもん、もなかはあんこが大好きなの」
「ふーん。秋野は、男には興味ないわけ?」
「ん?どういう意味カナ?」
「ここに秋野もなかに興味を持ってる男がいるんだけど…どう?」
「ほへ?それっていわゆる告白ターイム!ってヤツですかい!?」

(…もなかに告白、だと?

岩陰に身を隠し、つい盗み聞きしてしまった杏子は、出るに出られなくなってしまった。

「オレより朽木さんの方が、いいのかな?」
「ん?んんん?んーーー?」
「あ、あれ?そこ、そんなに悩むとこ?」
「んーーーーーーーー????」
「あ、その…あ、あっちを探してみようか?おーい、朽木さーん」
「んーーーーっっっ!!!???」


※※※
0212【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:22:33.68ID:85/Ku4jk
夏の太陽が海に沈もうとしている。
波が打ち寄せる岩場に座り、杏子は夕日を見ていた。
相変わらず、ジャージ姿のまま。そこをもなかがツッコむ。

「あんこってば、結局ジャージで通したねえ、暑くなかった?」
「全然」
「そっか。そろろ風が気持ちいいもんねえ、さすが海!大自然の驚異っ!」
「そーだな」
「ね、ねえねえ、あんこも花火しにいこうよ?」
「あたしはいい」

いつも以上にそっけない杏子の態度に、もなかの頬が大福のように膨れる。

「もお!あんこってば、何怒ってるの!?」
「怒ってねえよ!なんであたしが怒るんだよっ!」
「怒ってるじゃない!なんでなんでなんでっ!?」
「るせえ!怒ってねえってんだろがっ!?」
「もう!あんこのばかあ!知らないっ!」
「はっ!上等!!さっさと花火でもなんでも宜しくやってくりゃいいだろ!」

(…なんだこれ。何やってんだ、あたしは。
(…嫉妬?嫉妬、してんのか、あたしは。
(もなかが…何処か遠くにいっちまうような気がして…?

肩を怒らせながら歩き去るもなか。
その背中を見ていると、杏子の中に冷たい風が吹く。

(待って。待ってくれよ、もなか。
(あたしは…そんなつもりじゃ…
(もなか!あたしは、お前が…!

「も、もなか!」
「何よっ!…ありり?」

振り返ったもなかの眼に、眩い光景が飛び込む。
夕日の中、真っ赤に染まったシルエット。
ジャージを脱ぎ捨て、そのしなやかな肢体を曝け出した杏子。
色は清楚な白。形状は大胆なビキニスタイル。
少ない布地のサイドをヒモで結んだいわゆるヒモビキニだ。

「あ、あんこ…?」

もなかが息を飲むのが解った。
その反応に、杏子はさらに顔が赤くなるのを自覚する。

(…ゆ、夕日が赤くて、良かった!

真っ赤な夕日に感謝しつつ、掠れる声で杏子が呟く。

「お、お前が選んでくれた、み、水着…に、似合ってる、か?」

もなかはまず無言でぶんぶんと首を縦に振る。そして。

「可愛い!綺麗!色っぽーい!すんごく似合ってる!」
「そ、そうか、そ、そりゃ、あんがとよ…」
0213【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:23:58.99ID:85/Ku4jk
すらりと引き締まった体躯。しかし出るべきところは女の子らしく出ている杏子の肢体。
このまま水着モデルでも通用するのではないかともなかには思われた。
その険しい目付きと仏頂面をやめ、媚びたような笑みを浮かべられれば、だが。

(…ううん、そんなのあんこに似合わない。
(あんこはそのままで、すっごく素敵!

もなかは嬉しくなって杏子に駆け寄ろうとした。

「おろろっ!?」
「も、もなか!?」

足元はバランスを取りにくい岩場。
杏子とは比べ物にならない運動神経の無さを誇るもなかがよく走れる場所ではない。
よろりとよろめくもなかに駆け寄り、だき抱える杏子。さすがの瞬発力であった。


「ふええ、危なかった!」
「たく、気をつけろよな…うあっ!?」

杏子は気付いてしまった。
お互い裸同然の格好で抱き合っている事に。

「ひ、ひえっぃぃぇぇ!!!!」

声にならない声をあげ、慌てて飛びすさる杏子。
と、足元の岩が転がり、足を掬われた。

「え…?」

ばっしゃーーーん!と、大きな水音と共に杏子の身体が海中に没した。

「あんこ!?」

もなかが慌てて覗きこむ。

「あんこ!だいじょぶ!?…ちょ、あんこ!?なにーガボガボって!?ねぇ、あんこ!もしかして…泳げないの!?」

もなかが驚くのも無理はない。あれ程身体能力の高さを見せて来た(主にバトル方面で)彼女が、まさかカナヅチだとは、誰が想像しえただろうか?


…いや、陸ではちょっとやそっとの事じゃ動じねえ自信があるんだけどさ。
あたし、海っつーか、水中はダメなんだよな。うん。
何しろ山育ちっつーか、水と親しむ機会がなかったもんで…
いやしかし、海の水ってのは辛えもんだな。喉が痛いぞ。
あ?なんだか息も…苦、し…よう、な………

……………
………
……
0214【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん2014/10/31(金) 11:25:26.15ID:85/Ku4jk
「あんこ、しっかり!ねえ、しっかりしてよ!ほら、息!息して!ねえ!あんこってば!」
「ねえ!じ、人工呼吸とかした方がいいんじゃない!?」
「やる!もなかが、やる!」

(…っせえなあ…ちょっとは静かに…!?

朦朧とした意識の中、杏子は薄目を開ける。
すぐ目の前に、涙に濡れたもなかの顔があった。
目を閉じて、さらに近づく。唇に、柔らかい感触。
暖かい呼気が注ぎ込まれ、急速に意識が覚醒する。

「もな…がはっ!げほげほごほっ!!」

がばと上半身を起こし、激しく咳き込む杏子。

「良かった!朽木さん!」「おお、気がついた!」
「良かった…!」「偉い、もなか!よくやった!」

ひとしきり咳き込み、ようやく人心地を取り戻した杏子、その目がもなかを探す。
…いた。大きな丸い目から大粒の涙を溢れさせふるふると震えている。

「も、な…げほっ!」
「あんこぉぉぉおお!!」

力一杯、抱きしめられた。

「良かったああ!良かったよぉぉおお!あんこおおおおお!」
「も、もな…げほっ!げほげほがはっ!」

(さっきの…唇の感触は…

杏子の顔が、見る見る朱に染まる。

(唇…もなか…あれ、もなかの…

「え?え?え?」

ワナワナと震える杏子。

「ええええええええーーーー!?」



続く








※季節はずれでスミマセン…
0215名無しさん@ピンキー2014/11/01(土) 01:43:46.02ID:9kVHQbaP
季節外れは今までもあったし無問題
やっと百合っぽくなってきたな……!
そしてこれからえろーすな展開になってしまうのか…
0216【あんこもなか】 5.愛し君よ2014/11/01(土) 23:16:33.71ID:2EXpAGxB
【あんこもなか】 5.愛し君よ


「おーい、あんこ〜!」
「よお、も、ももも、もなか!」
「声が裏返ってるよ?風邪かな?んーお熱はどーかなあ?」
「バ、バカ!か、顔をくっつけるなっ!」
「おー!顔が真っ赤だよっ!ほら熱!熱!」
「い、いいから!風邪じゃねーからっ!」

理由は解っているのだ。
いくら朴念仁の杏子とは言え。

心配げに杏子を見やるもなかをチラ見する。
そのぷっくりとした柔らかそうな唇に視線が固定される。

(柔らかそうじゃねえ。
(実際、とても柔らかくて、暖かくて…
(気持ちいい事…あたしは知ってる…
(あたしの唇が、あの感触を、覚えてる。
(またあの感触を、味わいたいって…

「………」
「あ、あんこ!?茹だってる!汗、すごっ!ちょ、ちょいと待ちなよお前サン!?」
「も、もなかは…な、なんともないのか?」
「ほへ?もなかは元気だよ?大変なのはあんこだってばー!」
「そ、そうか、な、なんともないか。だよな」


(あたしが変なんだ。
(友達に、同性に、こんな気持ち…


「………」
「あ、あんこ?あの…」
「………」
「えと、その…」
「だぁぁぁあああああっっっ!」
「ひえっ!?あ、あんこさんっ!?」

雄叫びをあげると、あんこは突然走り出す。
暑い暑い夏の日差しの中、目的もないままに。

※※※

「はあ!はあ!はあ!よし!いいぞ、やっぱりスポーツだな!色んなもん吐き出せるし、何も考えずに済むかんなっ!」

全力疾走の末、杏子は決意する。
とにかく走ろう。走り続けてれば、こんなモヤモヤから抜け出せるはずだ。

※※※
0217【あんこもなか】 5.愛し君よ2014/11/01(土) 23:20:54.74ID:2EXpAGxB
走る杏子。もなかは自転車で追走する。
なんであんこ、突然ジョギングに目覚めちゃったんだろ?と、首を傾げながら。

「ね〜あんこ〜まだ走るの〜」
「………」
「う〜もなか、つまんなーい」
「………」
「ねえ〜あんこってばあ…」
「………」
「…もなかと遊ぶの、もう飽きちゃった?」
「んな訳ねえだろ、あほぉ!!」

即答であった。

「おお!やっと返事してくれたね!もなかが嫌いになったんじゃないんだね!」
「当たりめぇだ!あたしはもなかが!!が、がぎ………っんぎっ…!」
「あんこ!?ねぇ!唇から血が出てるよ!?大変!だいじょうぶ!?」

(…あ、危なかった。思わず言っちまうとこだったぜっ!

杏子は気を取り直し、黙々と走り続ける。噛み切ってしまった唇がじくじくと痛んだ。

※※※

スポーツドリンクをがぶ飲みし、汗を拭う杏子を、もなかは無言で見ていた。
杏子が「ふう…」とため息をつき、ベンチに腰を下ろした所で、もなかが呟く。

「ね、あんこ…」
「あ?な、なんだ?」
「…何を悩んでるの?」
「え…」

いつもおちゃらけた表情のもなかが、優しい笑みを浮かべていた。
杏子を慈しみ見守る、暖かい慈母のような頬笑みだった。

「もな、か…あたしは…」
「もなかはあんこじゃないから、あんこの悩みは解んないけど、あんこの悩みを聞いてあげることは出来るよ?もなか、頭悪いから、悩みを解決は出来ないけど、あんこと一緒に悩み事は出来るよ?あんこが辛い時は、一緒に泣くことは出来るよ」
「もなか…」
「もなか、何にも出来ないけど、あんこの傍にいる事は出来るよ。何があっても離れない事は約束出来るよ。だから…あんこ一人で悩まないで…だって…」
「………」
「あんこは、もなかの、一番の、大切な友達だから」

にっこりとほほ笑む。
それはとても温かい笑顔で、温もりが杏子の中に染み込んでくるようだった。

(大切な、友達…か)

「…あんこ?」

杏子は大きく伸びをして「ん〜〜〜〜ぁぁぁあああっっっ!!」と、大きく息を吐いた。
0218【あんこもなか】 5.愛し君よ2014/11/01(土) 23:22:25.95ID:2EXpAGxB
「あ、あんこ?」
「だよなぁ!!やめやめ!もうやめだ!」
「あんこ?えっと、悩むの、やめたの?」
「ああ!あたしはもなかの大切な友達なんだろ?」
「う、うん。一番、大切で、大事な、大好きな…」
「ああ。解った。あたしもだ。もなか。お前はあたしの大切な友達だ!」
「あ…うん。それで、悩みって…」
「大切な友達に心配かけでまで悩むようなこっちゃねぇよ!はっ!」

(一番大切で、大事で、大好きな友達。
(それで充分だ。ありがとう、もなか。

口に出しては言わない。照れ臭くて言えないけど。
杏子はもなかの言葉で救われたように思った。

(悩むのなんて性にあわねぇ。あたしらしくねぇしな。

ほぅ…ともなかがタメ息をつく。

「そうかぁ。もなか、バカだから…相談に乗れなくてごめんね」
「ん、なことねぇ!あたしは…もなかの今の言葉でふっきれたんだ!やっと、な。もなかがバカなら、あたしなんて大バカだ。救いようのない大馬鹿野郎だ」
「おお、似た者夫婦ってヤツだね!」
「ふ、ふふふ、夫婦じゃねーだろっ!」
「だねえ…あーあ、夫婦になれればいいのになあ。女の子同士じゃムリだもんねえ」
「も、もなか…?」
「もなかはね、あんこが大好きなの。だから、ずっとずっとずーっと一緒にいたいの。夫婦になれば一生一緒にいられるのになって」
「あ、あた、あたたたたたた、あたしだって!」

(そうだ。悩んで前に進めないままなんて、あたしじゃねえ。
(このきょ…あんこサンは!思った事はスパッと口にするんだ!

ぎゅっと拳を握りしめる。唇を咬み、唾を呑みこむ。
決死の決意をそのまなじりに滲ませて、杏子は、思いの丈を口にする。

「あたし、だって!も、もなかの事が、だ、だだだ、だい、大好き、だぞっ!」
「お!?おお!!告白!愛の告白だねっ!」
「そ、そそそ、そんなんじゃねえ!ねえけど!その、あたしだって、もなかとずっと…ずっと、なんだ、その…と、友達!友達でいて欲しいって…思…」
「わーい!両想い!両想いだね!」
「だ、だからっ!そうじゃなくて、その、一番の友達、し、親友!こ、心の友!竹馬の友!そう、思って…その…」
「うん…大好き、あんこ」
「もなか…あんがと。あたしも…大好きだ、もなか」

茹でダコのような杏子に、うっすら頬を赤らめたもなかがそっと近づく。

「ね、あんこ」
「な、なんだ?」
「ちゅーして、いい?」
「…………」

かくんと杏子の膝が砕け、地面に崩れ落ちた。卒倒、していた。

「あ、あんこ!?ちょ、だいじょぶ!?ねぇあんこってばぁ!死んじゃヤーーーーー!!」



…続く
0220【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:41:57.09ID:syi31BWD
【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!


「あ、あたしはもなかが好きだ!好きなんだぁぁあ!」
「やだぁん、あんこったらぁん!愛の告白?」
「ど、どうとでも取ってくれ!とにかく!」

耳の先どころか、指の先まで。身体中を朱に染めて。

「あたしはもなかが好きだ!大好きだっ!」

はにかんだ笑みを浮かべるもなか。
その表情を見て、もなかは可愛いと改めて思う杏子。

「うん、あたしも、あんこが好き…」
「も、もなか…!!」
「ねえ、あんこ…ちゅーして、いい?」
「…………お、おぅ!!」

もなかが目を閉じる。唇がゆっくりと迫り、そして…

※※※

「うわぁぁぁあああああああああああああああああああああああああっっっ!!」
「ど、どうした杏子!?何があった!」
「入ってくるなクソ親父ぃぃぃぃっ!!」
「ぐぼぉぉおお!?お、お前、その、技は…っ!?ぐはぁっ!!」

悪夢、と言えるかも知れなかった。動悸は激しく、身体中に嫌な汗をかいていた。
悲鳴を上げて跳ね起きたら父親が飛び込んできて、慌てて思わず奥義を放ってしまった。

「くそ…なんつー夢だ…!」

悩むのはやめたつもりだった。ふっきったつもりだった。でも。
自分のもなかへの想いは、友情以上のものかもしれない。いや、恐らく…そうなのだ。

そしてもなかは…「ちゅーして、いい?」などと聞くもなかは…もなか、も?
「わかんねぇ…わかんねぇよ…」

※ ※ ※

「よぉ、もなか」
「あ、お、おはよ、あんこ」
「お、おお…あ、あれ?」
「ん?どうかした?」
「い、いや、その…いつもみたいに飛びついてこねえな、と…」

恥ずかしくて顔が火照るからやめて欲しい…と思いながら、実際それがなくなると一抹の寂しさを感じる杏子であった。

「え、えへへ。ちょっとね、もなかもね、少しはおしとやかになろーかなーと」

そう言って笑うもなかの笑みがぎこちない。

「そ、そうか。そりゃい、いい事かも知れねえな」
「でしょでしょ?目指せ!大和撫子!なんだよぉ」

あははははと笑う二人。だが、その様子は端から見て違和感バリバリだった。

※※※
0221【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:43:14.22ID:syi31BWD
「ねえ、朽木さん…もなかと何かあったの?」
「な!?何かってなんだぁ!?な、ななな、何もないぞ!?な、何があるってんだ、おおっ!?」
「…やっぱり、何かあったんだ」
「んぐっ…!いや、その…!!」

(なんで…なんで解ったんだ!?

丸わかりなのである。

「何があったか知らないけど…私たちで良ければ相談に乗るからね?」

クラスメイトの女子からそんな風に言われて、杏子は赤面する。
気を使ってくれている事は解る。だが、おいそれと相談できる性質の事でもなかった。

「あ、ああ…あんがとよ。でもま…多分…自分自身で、決着つけなきゃいけない事なんだと思うから」
「そっか!なんだかわかんないけど…頑張って!応援してる!」

そう言って離れていくクラスメイトを見送って、ふと杏子は気付く。

「そういや…もなかは?」

転校してきて以来、学校では殆ど一緒に過ごしてきたもなかの姿を、その日杏子はろくに見ることが出来なかった。


※※※


昼休みの屋上にも、もなかの姿は、ない。

(…避けられ、てるのか?

その認識はひどく辛いものだった。
ほんの数ヶ月前には、想像も出来なかった喪失感だ。

(…嫌われ…た?もなかに?

ぶるっ!と身体が震えた。まだ冬には早いというのに、冷える。
冷えているのは身体じゃなく、心。

(え、ウソ…だろ?え、あたし…どうすりゃいいんだ?

杏子は一人の屋上で呆然と立ち尽くす。
蒼ざめた顔で、食事もせず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。




※※※
0222【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:45:32.48ID:syi31BWD
「もなかっ!」
「あん…こ!」

放課後。
1人でそそくさと帰ろうとするもなかを捕まえた。
もなかの手を掴んで、逃げられないように。
柔らかいもなかの手の感触に、頬が火照る。

「んだよ、どこ行くんだ?」

…そんなつもりは無かったのに、刺々しい声が出た。

「ど、どこって…おウチに帰るんだよ、あはは」
「1人でかよ?」
「だ、だってもなかのおウチだもん。もなかしか帰らないよ。もなかのおウチに帰るんだもん。1人でか、かえ、かえりゅん…ぐしっ!」

(…え?

杏子は動揺する。もなかは唇を噛み締め、ポロポロと涙を零し始めた。

「あんこは来れないんだよ、もなかはもなかのおウチに帰るんだもん。ふえ、ふええええっ!!」
「もな、か…な、なんだよ!なんで泣くんだよ!あ、あたしか!?あたしが何か酷い事したのか!?」
「あんこは悪くないよぉだって仕方ないよぉあんこは女の子なんだもんんんんーーー!」
「い、意味わかんねえぞ!も、もなか!ちゃんと説明しろ!なんで…なんであたしを避けるんだよっ!!」

学校の廊下でこんな事をしていれば、注目を集めない訳が無い。
二人の周囲を、既に人垣が取り囲んでいた。
だが、2人はそんな周囲の状況などまるで気にしていない様子だった。

「だってえだってえ…!」
「だからなんだっつーの!!わかんねえよ!頼むよ!言ってくれなきゃわかんねえんだ…!」

杏子はホゾを噛む。友達だと、親友だと、そう思ってきた。
いつしか、それ以上の気持ちさえ、もなかには抱くようになった。
なのに、もなかの気持ちが、解らない。
好き、なのに。なのに、解らない。解ってやれないなんて。

「頼む…!もなか!頼む…!!」
「やだよぉ…!だってぇ…!こ、これ以上…あんこに嫌われたくないもぉ!!」

(…は?

「え?もなか?あたしがお前を嫌う?なんで?なんでだよ?」
「だってえ!ちゅーしてくれなかったし!」
「はああああ!?」

人垣がどよめく。
0223【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:46:44.13ID:syi31BWD
「き、気絶するほど、イヤだったの?も、もなかの事、嫌い?あんな事するコ、き、気持ち悪い?だよねだよね…!でもでもでもぉ」

もなかの顔は涙と鼻水でグチャグチャだ。

「あんこが好きなんだもぉ…!だ、だから、嫌われたくないもぉ…!でも、どうしていいか解らないんだもぉ…!」
「もなか…!あ、あたしは…!」
「お願い…お願いだよぉ…もなかの事、嫌いにならないでえ…」

完全に誤解だ。

「もなか!そんなことないぞ!あたしは…」
「あんこぉ…お願いだよぉ…あんこぉ…えぐっえぐっ…ひっく!」

だが、その誤解の原因を作ったのは、他ならぬ杏子なのだ。
そう思うと自分に対して怒りが湧いてきた。
もなかに誤解させ、悲しませた自分が許せなかった。

(で、でも、ど、どうすれば…!

泣きじゃくるもなかには、もはや杏子の声も届いていないようだ。

その時。
人垣の中、一緒に恋バナに花を咲かせた、もなかの危機を知らせてくれた、一緒に海で過ごした、相談に乗るど言ってくれた…杏子のクラスメイトたちが、誰もが同じようなジェスチャーをしていた。

『あんこ!もなかを、抱きしめちゃえ!』

彼女たちは、杏子ともなかをいつも見てきた…そう、彼女たちも、杏子の友達だ。
だから、2人を応援してくれている。朴念仁の杏子と違い、状況からなんとな〜く事情を察して。

(…抱き、しめ、る?
(こ、こんな、人だかりの中でかよ!?

さっきまで気にしていなかった人だかり。しかし一度意識してしまうと忘れることも出来ない。

(そ、そそそ、そんな事、出来るかあ!!

心で絶叫する杏子。
だが、その絶叫より胸に響く声がある。

もなかの、泣き声。

(…もなか!!

頭が真っ白になる。そして、次の瞬間。
杏子はもなかを抱きしめ…キスしていた。

「そ、そこまでやれとは言ってないわよ!?」
「きゃーっ!きゃーキャーキャー!す、すごいもの見ちゃった!」
「朽木さんやるぅ!!」
0224【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:47:42.35ID:syi31BWD
「………!」

もなかは見た。
真っ赤な杏子の顔、ぎゅっと目をつむって、眉間にはシワが寄っている。
プルプルと震え、汗がだらだら流れている。

(あんこ…あんこが、キス、してくれた…!
(う、嬉しい…嬉しい嬉しい嬉しい…!嬉しい、けど…

もなかの顔色が赤くなり、次いで青くなる。

(…い、息が!く、苦し!!

もなかを窒息させかねない熱く長いベーゼ。
たっぷり、1分以上は続いただろうか。

「…ぷはぁ!はあ!はあ!はあ!」

杏子自身の息も限界だった。
なにしろ、ファーストキスだ。
やり方などまるで解らない。

「はあ!はあ!はあ!あ、あんこ…」
「はぁはぁ…!あ、あたしがもなかを嫌うだってえ?んなこと、ありえねえ!」
「あ、はい。う、うん…」
「あんときゃあんまり興奮…いや、その、ど、動揺して!だから!し、したくなかった訳じゃなくて!」
「あ、あん…こ!」
「だーーっ!えと、だから、つまり!!」
「あんこ…あんこ、あんこ、あんこぉぉ…!」
「あたしは!もなかが好きだっ!抱きしめてキスしたくなるくらい、大好きだっ!!」

周囲から口笛と歓声が沸き起こる。


※※※
0225【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:48:42.03ID:syi31BWD
…もなかはね、あんこが大好きなの。

あんこが転校してきた時、ステキなコだなって思った。
見た目だけじゃなくて、心も…スゴく綺麗だった。
だから、もなかはあんこが大好きになったの。

あは、な〜んも考えてないお気楽娘に見えた?見えたよねえ、うんうん。
あれはもなかの素だよ。好きな人にはありのままの自分を見て欲しいから。
でもね。いつか嫌われるんじゃないかってビクビクしてたのも、確かなんだ。

え?そんな事気にしたってしょうがない?

うん。ありのままの自分で嫌われたら…しょうがないよね。
ご縁がなかったって事だから。でも、それで怖くなくなる訳でもないよ。

それに、それにね。

あなたに、解るかな?

女の子なのに女の子に恋しちゃったもなかの気持ちが、あなたに、解る?

怖いんだよ、自分の気持ちが。
怖いんだよ、相手の気持ちが。

それはきっと、男の子との恋より、ずっと。

もなかはあんこを友達として好きなんだと思ってた。
でも、そうじゃなかった。もなかはあんこに恋してたの。
それが解ってからは、もっともっと怖くなった。

もし、もなかの気持ちを知られたら…でも知ってほしい。でも…
女の子同士なのに、友達なのに、キスをねだるコなんて…
あんこは、気持ち悪いと思ったに違いないって…
嫌われたと、そう思った。

だから逃げたの。怖くて。あんこの気持ちを知るのが…怖くて怖くて。

でも。

あんこはもなかを、捕まえてくれた…
好きって気持ちと、優しいキスをくれたの…!

もなかは、もなかは幸せだよ…!


※※※
0226【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:49:35.93ID:syi31BWD
だが、その想いは言葉にならない。
ただ涙が零れる。杏子への想いと一緒に、溢れて止まらない。

「あん、こ…あんこ、あんこぉ!」
「だーら!もう泣くな!」
「な、泣いて、ないも!う、嬉しいのに、なんで、泣くの!」
「いいから!泣くな!あたしがついてる!あたしが守るから!」
「あんこ…!!」
「そうだ…こうなりゃ、毒喰らわば皿までだ!」

用法が微妙に間違っている事を、初めてのキスで逆上した杏子は気付くよしもない。

「もなか!あたしとずっと一緒にいたいっつったよな!」
「う、うん!言ったよ!あんことずっと一緒にいたい!」
「夫婦になれたらいいのにって、言ってくれたよな!」
「うん!言ったよ!夫婦になれたら、ずっと一緒にいれるから!」
「よし!もなか!あたしと結婚しよう!!」

「「「「ええええええっっ!?」」」」

周囲の観衆が、全員同じリアクションをした。

「そうすりゃ一緒に帰れるぞ!ずっと…ずっと、一緒にいられるぞ!」


※※※


杏子は走る。もなかをお姫様抱っこしたまま、走る、走る。

「あ、あんこ!?ど、どこ行くの!?」
「和菓子屋、秋野!!」
「も、もなかんチ!?なんで!?」


※※※
0227【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:50:29.12ID:syi31BWD
「お父さんお母さんっ!!」

どごん!と音を立てて、杏子の両の拳が畳にめり込んだ。
ケンカ腰に見えるが本人にそんなつもりはない。ただ、余裕が無いのだ。
耳の先まで真っ赤にしながら、杏子は叫ぶ。

「お、お嬢さんを!もなかを、あたしに下さいっ!」
「は?それってどういう…!」
「け、けけけ、結婚させて下さい!」
「いや、君ね…君、女の子、だよね?」

もなかの父、煎兵衛は常識人であった。

「そうよぉ、あんこちゃん。残念ながら日本では同性婚は認められてないのよぉ?」
「知ってます!」
「いや、母さん。そういう問題じゃ…」
「そうだよ、知ってるよ!こう見えて、あんこは頭いいんだから!」
「いや、もなか、そういう問題じゃ…」
「しかし世界では!同性婚が認められている国や地域もたくさんあります!
オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル!
アイスランド、デンマーク、フランス、イギリス、ルクセンブルク!!
アルゼンチン、カナダ、ウルグアイ、ブラジル、メキシコ!!!
アメリカでもマサチューセッツ州、カリフォルニア州、コネチカット州、
アイオワ州、バーモント州、ニューハンプシャー州、ワシントンD.C.、
ニューヨーク州、ワシントン州、メイン州、メリーランド州、ロードアイランド州、
デラウェア州、ミネソタ州、ニューメキシコ州、ニュージャージー州、ハワイ州、
イリノイ州…それからそれから…!!」
「す、すっごい、あんこ!そんな事いつ調べたの!?」
「昨日!!」
「あらあらまあまあ」

もなかから『夫婦』などという単語が出てすぐに調べたらしい。
もなかの父、煎兵衛は確信した。

(…この少女は、本気だ!

確信せざるを得ない必死さだった。

(だが可愛い娘を、もなかをまだ嫁にやる訳にはいかん!おお!そうだ!

「あんこさん…といったかな?しかしね、キミはまだ学生じゃないか」
「…え?」
「結婚生活の基盤となる仕事も、収入もない学生に…娘はやれんっ!」

がーーーん!

という擬音が、杏子の脳天を直撃したようだった。
まさに青天の霹靂。迂闊としかいいようがなかった。

「くっ…不覚!」

がっくりと項垂れる杏子。しかし、もなかは。

「なるほど!結婚には反対しないけど卒業、もしくは就職までお預けって事だね!」
「え?」
「いや、その…も、もなか?私はだな…」
「ありがとうお父さん!もなか達の結婚を認めてくれて!」
「あらあらまあまあ」

※※※
0228【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!2014/11/03(月) 21:58:17.21ID:syi31BWD
という訳で。

「あーーー!恥い!めちゃくちゃ恥ずかしいっっ!」

逆上状態から我を取り戻した杏子は、自身の言動を後悔していた。しまくっていた。
穴があったら入りたいと言い、公園の砂場に穴を掘ろうとしてもなかに止められるくらい後悔していた。

「あははっ、すごかったねえ今日のあんこは!」
「うう…す、すまねえ…ああ!もう!時間を巻き戻してやり直してえっ!」
「やだ。そんなの」
「もなか?」
「もなか、嬉しかったんだもん。悲しくて泣いちゃっても、失敗して恥ずかしくても、全部ぜ〜んぶ!もなかとあんこの大切な思い出だよ。無かったことになんてしたくないよ。違う?」
「…違わねえ」
「でしょ?」
「あ、ああ」

ひと気のない、夕闇の児童公園。
もなかは不意にきょときょとと辺りを見回す。

「ねえ、あんこ」
「あ?なんだ?」
「誰もいないね?」
「そうだな」
「誰も見てないんだよ?」
「…そう、だな」

杏子の頬が朱に染まる。

「じゃあ…んー…」

もなかが瞳を閉じ、唇を突き出す。
杏子がギクシャクと錆び付いたロボットみたいな動きでもなかに近づき…

震える唇が、そっと重なった。



続く
0229【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:46:14.38ID:b2rqKv9w
【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて


今日も今日とて通学路…

「おーっす、もなか!」
「わーい、おっはよーあんこ!」

もなかが杏子の腕にしっかりしがみつく。
杏子は頬を赤らめ、顔を背けつつも振り払おうとはしない。

「ねーねーあんこ!こっち見てよぉ」
「やなこった。恥ずい!」
「ぶーぶー!顔見せてっ!赤くなったあんこってば、かーいーんだも〜ん!」
「ぜ、ぜぜぜ、絶対、見せねえええ!」

と。

「わあ、朽木さん真っ赤だあ」
「おー、朝から見せつけてくれるねえ」

途端にギクシャクと油切れを起こす杏子。ついでに沸騰して頭から湯気を出す。

「やっほーみんな、おっはよー!」
「もなかぁ、今日も幸せそうだねえ」
「えへへ、だって可愛い奥さんと一緒なんだもーん」
「…ちょっと待て、もなか。あたしが奥さんなのか?」
「ん?そーだよ!あんこはもなかのヨメだよー」
「もなかがあたしのヨメじゃねえのか!?」
「ええ!?そーなの!?あんこはお料理も上手だし!強いし!頭いいし!」
「いやいや、もなかの方が、か、かかか、可愛い奥さんって感じじゃねえか!?」
「やだぁん、そーかなぁ?んーじゃあもなかが奥さんで、あんこが旦那様って事にする?」
「お、おお、いいんじゃねえか」

そのやり取りを見せつけられたクラスメイトたちは思った。

「激しくどーでもいい…」

※※※


昼休み、いつもの2人きりの屋上でも。

「はい、旦那様。あ〜ん」
「お、おお。はぐっんむんむんむ」
「おいし?」
「も、もなかに食わせてもらうと、さらにっ!」
「やぁん、あんこってばぁ♪」

イチャイチャである。ラブラブである。
もなかはニコニコ、杏子は真っ赤な仏頂面ではあるが。


※※※
0230【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:47:16.48ID:b2rqKv9w
夕日さす放課後、公園で2人は取り止めのない会話を楽しむ。
別れ際には決まって、もなかが唇を突き出しキスをねだる。
杏子は周囲に人影が無いのを確認してから、そっともなかの唇を味わう。
頭から湯気を吹きだしながら。

「あんこー!まった明日〜!」
「おお!また明日な!!」

2人とも、今日と同じ明日が来る事を信じていた。何の疑いもなく。
2人は幸せだった。

※※※



「…ウソ、だろ?親父」
「ウソじゃねえ。俺がお前にウソついた事があるか?」
「嫌だ!あたしは…あたしは行かねえぞ!」
「許さん!!お前はまだ未成年じゃねえか。1人で置いてく訳にはいかねえ!」
「この…!力ずくでもっ…!!」
「…俺に敵うとでも?」



※※※

その日の朝は、夜半から降り始めた雨が止まず、空は陰鬱な雲に覆われていた。

「あり?ありり?」

通学路のいつもの地点。愛しいあんこと出会ういつもの場所で、もなかは立ち尽くす。

「…あんこ?お休み?」

杏子は健康優良児である。そして生真面目でもある。これまで学校を休んだ事などなかった。
能天気を絵に描いて額縁を付けて首に掛けているようなもなかでも、不穏な空気を感じた。

(…何か、あったんだ。

もなかはクルリと90度反転。雨の中、飛沫をあげながら走り出す。

※※※
0231【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:48:33.98ID:b2rqKv9w
「あんこ!あんこー!おーいおーい!」
「もなか…!?」

頭から被った毛布からがばっと顔をあげる杏子。その頬には青アザがある。
だが、そんな傷にはお構いなしに杏子は自室の窓に飛びついた。

「あ!あんこだ!おーいおーい!」

窓の下には、もなか。降りしきる雨の中、少し不安そうな、でも笑顔で手を振る。

「もなか…!来たの、か」

会いたくなかった。いまは。
でも、会えて嬉しい。二律背反。

「ねえねえ、あんこ!なにかあったの?前に言ったよね!もなかはバカだけど、あんこと一緒に悩む事は出来るよ!一緒にいる事は出来るよ!」
「もなか…!」
「ちゅーして、大好きって言ってあげる事は出来るよ!世界の皆があんこの敵になっても、もなかは味方でいてあげられるよ!」

杏子が慌てて遮る。

「バ、バッキャロー!お、大声で何言ってんだ!は、入れ!いいから入れーーー!!」
「はーい!おっじゃましまーす!」

※※※

パジャマ姿の杏子は、満身創痍だった。
頬には青アザ、手足には無数の擦り傷。髪がぐしゃぐしゃのまま。

「あ、あんこ!?まさか、で、DV!?」
「…そんなんじゃねえよ」

杏子はもなかにソファに座るよう促し、自分も向かい側に座る。
朽木家の応接間。向かい合って座るもなかに、杏子は昨夜の出来事をぽつりぽつりと語り始める。

「たまにやるんだよ。親父と意見が合わない時とかさ。ちゃんとした勝負で…あたしは、コテンパンにのされた。それだけだ」

現役レスラーたる父には、さすがの杏子もかなわない。
昨夜の勝負の後の、父の言葉が蘇る。

『お前は俺の可愛い娘だ。お前を守るのは俺の義務であると同時に権利でもある。1人暮らしは許さない。俺と一緒に来てもらう。それが…一番なんだ。解ってくれ、杏子』

「親父の野郎…勝手な事ばかり言いやがって…!あんな言い方されたら…逆らえねえじゃねえか…!」
「あんこ…あんこ!?」

気丈な杏子が、一部男子生徒からマッド・クッキーの名で恐れられる杏子が、泣いていた。
もなかが初めて見る、杏子の涙。

「やだよ…あたし、やだ…!もなかと…離れたく、ねえ…!そんなの…やだよぉっ!」

子供のように泣きじゃくるその様は、普段の男勝りな杏子しか知らない者には信じられない光景だったかも知れない。
0232【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:49:32.18ID:b2rqKv9w
「離れ…?あ、あんこ!何処に…どっか行っちゃうの!?」
「メキシコ、だってよ…本場、なんだと。親父、ずっと誘われてて…それで…!」
「あ、あんこも行く、の…!?メキ、メキシコってがいこく!?と、遠い!遠いよ!?」

もなかのボケにもいつものキレが無い。動揺しているのだ。

だが、ボロボロと泣き濡れ震える杏子を見ていると、もなこの中に熱い想いがうまれる。
悲しむ杏子を、包んであげたい。守ってあげたい。

「あんこ…」
「もなかああ…あたし、あたし…!」
「餡子の入ってない最中なんて、美味しくもなんともないもんね」
「もなか…ぐす…もなかぁ…!」
「だから、もなかは、あんこと離れないよ。ずっと一緒だよ」
「ぐす…えぐ、えぐ…っ」
「離れ離れに暮してても、ずっと一緒にいるよ。信じてるから。もなかは、あんこが大好きだから」
「あ、あたしも…もなかが…!もなかが…好きだ…大好き、だよぉお」

もなかはソファから立ち上がり、テーブルを回って、杏子の隣に腰を降ろす。
えぐえぐとしゃくりあげる杏子を、もなかはそっと抱き締めた。
そして、ボロボロと零れる涙に口付けし、杏子の顔を拭っていく。
泣き濡れ、すでに赤くなっていた杏子の顔がさらに赤らみ、茹で蛸のようになる。

「も、もな…は、恥ず…」
「いいから、あんこはじっとしてて…」
「もな…か?」
「もっと恥ずかしいこと…しちゃうから」
「も………!!ひぁっ!?」

杏子はソファに押し倒された。
パジャマの裾からもなかの手が忍び入ると、重力に負けない張りを保った釣鐘形の胸を包み込む。形といい大きさといい、最高級の杏子の乳房。

「も、ももも、もなか!?な、なに、なになになに!?」

杏子は今の今まで泣き濡れていた事も忘れ、目を白黒させて問う。

「あんこは、もなかと離れるのそんなにイヤ?」
「あた、あたりめえだろ!だってあたしは…あたしは!」
「もなかの事が、好きだから?」
「そ、そうだよ!もなかが好き、だから!離れたく…ないっ!」
「うん…あんこの気持ち、すっごく伝わってきた。もなか、すっごく嬉しい。こんなにあんこに想われて、もなかは三国一の幸せ者だよ」

そういうともなかは心から幸せそうに微笑む。目尻には涙が溜まっている。

「もなか…お前…」
「でね、もなかもね、もなかがあんこの事をどれだけ好きか伝えたいって思ったの。そしたらね、やっぱりね…」
「お、おお…」
「身体を…重ねるのが一番かなって、思ったんだ」
「か、かかか、からだを…って、お前!な、何言ってるか解ってんのか!?」
「モチロン!恋人たちはね、夫婦はね、身体を重ね合って、お互いの気持ちを確かめ合うんだよ…」
「もなか…ちょ、ま…ひあっ!?」
0233【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:50:27.98ID:b2rqKv9w
混乱し動揺する杏子。しかしもなかは止まらない。
杏子の形の良いバスト、その先端の膨らみを指先でそっ…と捏ね始めた。

「バ、バカ!やめ…!ひぁっ!な、何だこれ…!?んひぅ…っ!」

(あんこの乳首…勃ってる…

「あんこ、誰かにこんな風に触れられた事、ある?」
「ね、ねえよ!なんで、そんな、事…あひぃぅ!あ!あ!もな…なんだよこれっ!!」
「じゃあ、もなかがあんこの初めてだね。嬉しい」

もなかの息が荒い。
杏子の乳首を指先で捏ねながら、パジャマをはだけさせる。

「もな…こ、こら!な、何してやが…んあぁぁあっ!!」

杏子の豊満はバストを揉みしだきながら、その敏感な先端を唇で包み込む。

「や、め、あっ!ぁぁあっ!もなかっ…!んくぅっ!!」

杏子の力ならば、覆いかぶさったもなかを押し退ける事など造作も無い。
だが、力が入らない。もなかにさわられた乳房から、もなかに吸われた乳首から、ピリピリとした電流のような感覚が全身に走り、筋肉が萎えていく。

「はっ…ふはっ!あん…っ、んあっ!あ!もな、か!もなかもなか、もなかぁぁあ!」

もなかは、ちゅぱちゅ…んちゅ…と、わざと音を立てるように杏子の乳首を吸う。舐めて、捏ねて、転がし、摘まむ。
その度に杏子の身体にいわく言い難い未知の感覚…快感が迸り、意図せず艶のある喘ぎが漏れてしまう。

「やめ…もな…も…やめ…あぅぅうっ!!」

もちろん、もなかは止まらない。
一旦、唇を乳首から離すと、今度は杏子の唇を吸う。
手は乳房を愛撫し、指先は乳首を弄んだままに。

「んむぅ…んちゅ…んはぁ…!んんっ!?」

もなかの舌が杏子の唇を割り、口腔に侵入する。
これまでした事もない、濃厚なキスに、杏子の脳がスパークする。

何も考えられない。ただ、気持ちいい。心地いい。多幸感が、全身に広がっていく。

もなかの舌は、杏子の唇の裏から歯茎までを隅々まで蹂躙する。
いつしか杏子も無我夢中でもなかの舌を吸っていた。

「もな…んちゅ、ん…もなか、もなかもなか…!」
「あんこ…好き。好き好き好き…大好き…んちゅ、んくっ…んん…」

お互いの唇と舌を存分に堪能し、息が苦しくなるほど貪りあった。
荒い息を吐き、唇を離すと、涎が銀色の糸を引く。

その様に淫靡なものを感じ、いまさらながら杏子の頬が火照る。
0234【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:52:46.23ID:b2rqKv9w
「も、もなか…お前、その…こんな、キス、どこで…」
「あんこが初めてだよ。他の誰にもしたことないよ。決まってるでしょ。あんこが好き。大好きって思ったら自然と…ねえ、解る?もなかの気持ち。ねえ、伝わった?もなかの想い…」

トロリと蕩けた顔でもなかが囁くように言う。
その表情はいつものもなかから想像も出来ない艶と色気を発散していて、杏子の胸の鼓動が激しく高鳴る。

「あ、ああ…!もなか…もなかの気持ち…伝わる、伝わってくる…あたしと同じ…好きって気持ち…!」
「あんこ…!」

再び、キス。今度は先程よりゆっくり、優しく、お互いをいたわるように、気持ちが、もっと伝わるように。

そして。

「…!?もな…ま、待て!そ、それは、その!いや、流石にそれは!!」

もなかの手が、するりと杏子のパジャマのパンツに入り込む。

「あんこ…あんこあんこ…!」
「もなか!だ、だめええっ!」

杏子が悲鳴をあげたその時、もなかの指先が杏子の花芯を捉えた。

「きゃん…っ!あ、あ、あ…っ!」

普段の杏子からは想像も出来ない、可愛い悲鳴。その事に自身でも気付き、杏子は思わず口を押さえる。

「な、ななな、なんだよ、い、いったい……!?きゃあああっ!!」

下半身に広がる未知の感覚に…それは自身の花弁から溢れる、快感だった…杏子は思わず、またしてもらしくない悲鳴をあげる。

「なん、で…あぅ…!んくぅっ!あた、し…こんな!あ!あひぃぅっ!」
「あんこ…ここ、ここだよね…あんこの、気持ち、いいとこ…!」

もなかの指先は、すでに充血し包皮から顔を覗かせた肉芽を捉えていた。指先で挟み込み、こりこりと摘まみ、押し付けるようにすると、杏子の口から愛らしい嬌声が零れる。

「あく…っ!ぁは…んっ!あんっ…!!んあぁぁっ!」

杏子の花弁から、トロリ…と蜜が溢れる。

(あんこ…感じてる…!もなかに、感じてくれてる…!

「あんこ、可愛い…感じてるあんこ、可愛い…!」
「あ…あぅ…んはぁっ!!あんっ!んっあ!あ!あ!あ!」

杏子はガクガクと震え、口元から涎を垂らす。もなかの問い掛けに応える事も出来ない。

(なんだよこれ…この感覚…!こ、こんなの、知らねえ!なんだこれなんなんだ…っ!!
0235【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:54:21.51ID:b2rqKv9w
波のように次々と押し寄せてくる未知の快感に、杏子は完全に混乱する。

「あんっ!んあ…っ!やっ…ひやっ!あん…っ!んはぁあっ!」
「あんこ、あんこあんこあんこ…!」
「やめ…!へん…変な声、出ちまうっ…!や、やだっ!は、恥ず…きゃうっ!あ、あんっっ!!」
「う〜あんこってば可愛い!可愛い可愛い可愛いっ!」
「ば、ばっきゃろお!あ…あふぅあっ!あ、あぅん、んっ!んんっ!」
「ねえもっと聞かせて、あんこの可愛い声…」
「や、やだ!も、もう…ん!んんっ!んくっ!」

必死で歯を食いしばり、喘ぎを堪える杏子。
しかし、その時、もなかの責めが変化する。

「きゃ…!ひぁぁあああっっ、あんっ!んはぁぁあ!あ、あああっ!」

充分に勃起し、ぷっくりと膨れた杏子の肉芽。押し付けるような動きから、根元から摘みあげるような動きへ。
敏感な器官を扱きあげられ、杏子は絶叫じみた嬌声をあげる。止まらない。抑えられない。

「あんこ…気持ち、良さそう…気持ち、いい、よね?」
「ば、ばばば、ばっきゃろおお!そ、そういう、こと、言うんじゃ、ねええ…ひゃうっ!んくっ!んっ!んぁああっ!」

杏子の秘裂から溢れ出す蜜は、ショーツから零れ、ソファに染みを作るほど。
もなかの指は密に塗れた陰唇を優しく撫で回し、肉芽を摘み扱きあげる。

「だ、めええ!それ、やめ…あ!あはぁぁああ!うくっ……いやぁぁああっっっ!」

自身の蜜をローション代わりにされ優しく愛撫された杏子の肉芽は、喜悦に震え、杏子にさらなる快感を齎す。

「こ、怖い…!怖いよ、もなか!おか、おかしくなりそう、で…!も、もなか!も、もう…やめ…はぅ…っ!んくぁぁあっ!」

(怖い…怖い怖い…!自分が自分で無くなりそうで…!こんな感覚…初めてで…!

未知の感覚、初めての快感に、杏子は恐怖する。

(なんなんだよ…!こんなの、知らない…!これが、セ、セックスってヤツなのか?
(男と女でする…生殖行為…快感を伴う…いや、待て!女同士でも…こんなに、こんなに気持ちいい…!?

杏子の性に関する知識は乏しい。これまでそういった興味が無かったからだ。

「大丈夫…怖くない…もっと、感じて。もなかの指…もなかの唇でもなかの…好きって気持ち…!」
「だめだめだめ…それ、だ…あああああっ!!!!」
「いっちゃいそう?あんこ…気持ちよくて…いっちゃう?」
「い、く…?いくって…!?あひぅっ!あ、あ、あ、あっっ!」
「好き…可愛いあんこ好き好き好き…!」

(身体が、弾けそうだ…!き、気持ちよくて…爆発、する…!
(これが、いくって…事なのか?あたし、いきそう…なんだ
(もなかに…されて……気持ちよくて…いく……っ!

「もな、かああ!あた、しも…好き…!もなか、が…だい、すきだぁぁあっ!」

快感と共に、もなかへの愛しさが込み上げる。
0236【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:57:43.60ID:b2rqKv9w
もう恐怖は無かった。未知の感覚は愛しい人から与えられた快感…
それを頭ではなく、身体で、心で感じる。

(気持ち、いい…!もなかの指…
(もなかの声、もなかの肌、もなかの吐息…!
(気持ちいい…それに…すごく、幸せな気持ちで…!

「も、もなかぁぁあああっ!」

想いが、心が、そして快感が弾ける。
びくんっ!と杏子の身体が跳ねる。

「きゃうっ!んはっ!あっ!い、いく…!?あ、あたし、いく…っ!いくいくいくいく………っっあぁぁあああーーーー〜〜〜〜………っっ!!!!」

激しい痙攣が走り、背骨が反り返る。
眼を白黒させ、喉も張り裂けんばかりの絶頂の嬌声が迸る。
口元からは涎が零れ、蜜壺からは愛液が溢れ、噴き出す。

(す、凄い…!凄い凄い凄い…!!

初めての絶頂快感に、その激しさに、杏子の意識が跳ぶ。
荒い息を吐き、絶頂の余韻に身体を震わせる杏子を、もなかは愛おしげに抱き締めた。

「あんこ…大好き。ずっと、ずっとずっとずーーーっと、愛してる…」

※※※



気絶から覚めた杏子は、顔を真っ赤に染めて、もなかの頭をグーでごつんと行った。
もちろん、充分以上に手加減はしていたが。
もなかはいつもの調子で戯けて笑ったが、その眼には涙が浮かぶ。

離ればなれになる寂しさと切なさで。

でも、お互いの想いはひとつだという心強さがあればこそ、大声で泣きわめく事はなかった。



※※※




そして、別れの日が来た。
0237【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/04(火) 23:59:24.54ID:b2rqKv9w
空港にはもなかの他にも、この地で共に過ごした友達が集まってくれた。

「黒田!もなかを頼むぞっ!」
「任して下さい、姐さん!変な男は…いや女も、もなかサンには一歩も近づけさせやしません!」

「みんなも、頼んだぞ!もなかを…あたしの大事なもなかを…頼む!」
「任せて!朽木さん!」
「さよならは言わないからね!また…きっと!」

「ああ!あたりめえだ!みんな…またな!」

零れそうな涙を、皆に見られたくない。杏子は踵を返し、歩き出す。
その後ろ姿を見送るもなかの肩を、1人の男子がポンと叩く。

「…ほら、秋野」
「え…?」
「もなか、行きなよ」
「そうだよ。もう邪魔しないからさ」
「ちゃんと二人きりで…ね?」

※※※


「あんこっ!」

背後から呼びかけられ、杏子がぴくんと震える。
振り返ったその眼からは、滂沱と涙が溢れていた。

「も、もなかぁ…」
「あんこ…」

もなかの瞳にも涙が溢れている。
別れの言葉など言いたくない。
だから、二人は抱きしめ合い、口づけを交わす。
そして、震える声で、それでも出来る限りの明るさで。

「またな!」
「うん…またね!」


※※※





そして、時は流れて…






続く
0240【あんこもなか】8.これからもずっと。2014/11/06(木) 10:20:56.60ID:6MCYgIkg
【あんこもなか】8.これからもずっと。


国際線の到着口に立つ1人の女性に、居合わせた男たちの視線が集中していた。

肉感的で包容力と母性を感じさせる女性だ。ショートボブの髪に包まれた顔はどちらかというと幼さを残している。大きな丸い眼とぽってりとした紅いルージュを引いた艶っぽい唇が印象的だった。
いかにも出来る女風なスーツを纏っているが、それが嫌味にならないのは、その幼さを残した顔ににこやかな笑みを浮かべているおかげだろう。
スーツの生地を押し上げるたわわな胸元、スカートから伸びるメリハリのある脚線が、蠱惑的な魅力を発散している。

ウキウキそわそわとしたその様子から、きっと恋人か愛する夫の到着でも待っているのだろう。
こんな魅力的な女性に待たれている幸運な男はどんな奴だろう?と、居合わせた男たちは、見知らぬ男に嫉妬した。

そして…

メキシコからの国際便が到着し、乗客たちが到着口から溢れ出す。

その中にも、ひときわ人目を引く女性の姿があった。
モデル…だろうか?と周囲の乗客たちは想像した。
少し癖のあるロングヘアー。すらりとした長身。均整の取れた抜群のプロポーション。
サングラスを掛け、Tシャツとデニムのパンツルックというカジュアルな出立ちは、オフタイムの女優かモデルかという想像を容易くさせた。
到着口を出たその女性は、サングラスを取ると辺りを見回す。誰かここで待っているのだろう。
サングラスを取ったその顔を偶然見た女性が頬を赤らめる。
強い光を宿した切れ長の眼、すっと通った鼻筋、ラメ入りのルージュを引いた唇はきりりと結ばれ、彼女の意思の強さを感じさせる。
生半可な男よりもよほど女性にアピールする魅力を持った女性だった。

しかし彼女は、少し不安そうに眉をひそめ、落ち着かなげに歩を進める。
待っているはずの相手が見つからないのだろう。
キョロキョロと辺りを見回すその様子は、それまでの毅然とした雰囲気から一変、迷子の子供のように見えた。

と、その時…

「あんこーーーー!おっかえり〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「うぉう!?も、もなか!どっから現れた!?」

どこに潜んでいたのか、到着口で衆目の注目を集めていた肉感的な女性…もなかは、モデルか女優かというスレンダー美女…杏子に突然、飛びつく。
杏子の不安げな表情は吹き飛び、喜びに満ち溢れていた。
もちろん、もなかも満面の笑みに加え、全身で喜びを表現する。

「驚かせようと思ってさーー!ああん、あんこぉ!ホントに本物!?」
「あ、当たり前だろがっ!お前こそホントに本物のもなかなんだろうな!?」

妙齢の美女たちがまるで子供のように戯れる姿に、周囲の人々は呆気に取られていた。

「あたりきしゃりきのこんこんちきよっ!なんなら確かめてみる?」
「はっ!望む所だ!受けて立ぁああつ!」

と、二人はしっかりと向き合い…人目もはばからず熱い口付けを交わす。
周囲がどよめくが、二人とも意に介さない。お互いしか見えていないのだ。
それも無理からぬこと、それ程に待ち遠しかった再会なのだから。
0241【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/06(木) 10:23:33.93ID:6MCYgIkg
「…ホントに、あんこだ」
「もなか…会いたかったぞ」
「うん、もなかも。お帰り、あんこ」
「ああ。ただいま、もなか」

そして、再び口付けを交わすと、ひしと抱き合う。
二人の眼からは、一筋の涙が零れていた。

※※※

「むふ〜ん、あんこはいい女になったねえええ!」
「な、ななな、なんだ!そのおっさんくせえ言い草は!」
「むふふ、良いではないか良いではないかっ近う寄れ」
「ええい!やめい!もなか!ちっとも変わんねえな、お前は!」
「あはは、安心した?あんこが大好きなもなかちゃんのまんまだよ!もなかは、ちっとも成長してないよっ!」
「いや、それはどうかと思うが…いや、うん。そうだな」

杏子は、腕にぶら下がるもなかの重みを懐かしいものに感じながら呟いた。

「もなかはもなかのままでいい。あたしの大好きな…もなかのままで」

※※※

「おーいい部屋じゃねえか!でかした、もなか!さすがはあたしのヨメ!」
「えへへ〜頑張ったもなかにご褒美はっ?」

と、玄関で口付けを交わすと、杏子ともなかは、2人の愛の巣へと脚を踏み入れた。

「う〜〜〜!もーずーーーっとちゅーしてたーいっ!」
「ま、待て!もなか!荷物の整理が先だろ!今日からここで生活すんだからなっ!」

これまで何度かお互いの居住地を行き来した事はあった。
だが、今回は違う。ようやく、念願の、待ちに待った二人での生活が始まるのだ。

「そうだよ!ずっとここで一緒なんだからっ!整理なんていつでも出来るよっ!」
「いや、それは…そう、なのか?」
「そうだよ!久しぶりの再会だよっ?そんな時、恋人たちの取るべき行動とは!?」
「え、あの、その…それは、やっぱり…!」
「やぁん、あんこったら、お顔が真っ赤だよ?何を想像したのかなあ?」
「る、るせえ!も、もなかと!もなかと同じ事だろっきっと!!」
「そっかあ、もなかとおんなじかああ!」

そういうと、もなかは杏子に飛びつくように抱きつく。バランスを崩した杏子は、まだビニールカバーの掛かったままのソファに押し倒される結果になる。

「じゃあ…しよ?」
「お、おお…し、仕方ねえ、な」
「あんこ…」
「もなか…」

※※※
0242【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/06(木) 10:25:07.26ID:6MCYgIkg
二人はお互いの唇を味わい、舌を絡めあう。
杏子に覆いかぶさる形のもなかは、久しぶりの濃厚なキスに夢中で、タイトスカートがめくりあがり、黒のレースのショーツが露わになっている事も気づかない。
杏子はもなかの下半身に視線を向け、既にそこがしとどに濡れていることに気づく。
そして、そっと手を伸ばし、触れた。

「きゃうっ!あ、あんこってば、いきなり過ぎっ!」
「もなか…もうこんなに…」
「やぁん、だってだって…!久しぶりなんだもぉ!」

甘えた声でそういうもなかが愛しく、杏子の顔に柔らかな笑みが広がる。

「もなか…可愛いぞ」
「えへへ、じゃあ…可愛いもなかに、いっぱい、してくれる?」
「お、おお」

色っぽい笑みでそう請われ、杏子は赤面しつつ、しなやかな指先をするりともなかのショーツに忍び込ませた。
もなかの花弁の周囲を、指の腹で優しく愛撫する。花弁そのものにはまだ、触れない。待って、焦らして、もう少し…

「い、いやぁだぁ…あ、あんこの意地悪ぅ…はぁ…はぁ…っ!」

もなかが腰を振り、甘い声で愛撫をねだる。

まだ…もう少し、我慢して、欲しくて欲しくてたまらなくなるまで…

「あ、あんこぉ…いやいやいや…っ、もぉ…もぉ…!」

杏子の指先は、時にもなかの花弁を触れるか触れないかといった距離でかすめる。
もなかの溢れる蜜だけを掬い取るように。そして、その蜜をもなかの花弁の周囲に塗り広げる。

「やあ!やあん!あんこぉ!もう…いやぁあっ!お、お願いだよぉ!さ、触って!してっ!もなかのぉ…もなかのおまんこ、してぇぇええ!」

もどかしさに耐えきれなくなったもなかが、腰を振り立てねだる。
瞬間、杏子が2本の指でもなかの花弁をくっ…と挟む。

「ひぁっ!?あ、んあぁぁあっ!」

くちゃり…!と音がして、溜まった蜜がぴぴっ…!と飛び散る。
0243【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/06(木) 10:26:32.21ID:6MCYgIkg
「すげ…あ、溢れて…」
「だ、だ、て…!あ、あんこが、じ、焦らすからぁ!い、意地悪ぅう!んあっ!」

もなかを焦らすうち、杏子自身も昂ぶっていた。荒い息を吐きながら夢中でもなかの秘部を愛撫する。
中から溢れ出す蜜を掬い取っては、花弁の淵に指を添わせる。指の腹で包皮の上から陰核を挟み刺激する。

「はぅっ!ひゃんっ!あ、いい…!き、気持ちいい…っ!あ、あんこぉ、な、中もぉ…!」

杏子のほっそりとしたしなやかな指先を、もなかの花弁は貪欲に2本一度に咥え込む。

「あ………っ!はぁぁぁあ、あ、あ、あ!」

ぢゅぷんっ!と音を立て、蜜が溢れる。もなかの膣が快楽を求め、うねうねと動き、杏子の指を締め付ける。

「も、もなかの中、すげえ…!締め付けてくる…!」
「はあ!んはあ!あ!だっ…てぇ!いい…いいのぉ!もっとぉ!もっとおおお!」

杏子の指が激しい抽送を始める。ぢゅぷぢゅぷと粘着質の水音ともなかの悦楽の喘ぎ声のハーモニー。

「やはっ!んんーーっ!あ、あんこ、む、胸もぉ!おっぱいもぉ!」

もなかは自ら震える指でスーツとシャツのボタンを外し、脱ぎ捨てる。
だが、ブラのホックを外すのに苦戦する。

「や、やぁ!は、外れ、ない…!お、おっぱい、してしてして…!あんこぉ!た、助け、助けてよぉ!」

もどかしげに頭を振り立てる。もなかの秘裂の愛撫に余念がなく、手が塞がっている杏子は口でもなかのブラを咥え、強引に引き上げた。
ぶるん!ともなかの丸くふくよかな乳房が零れ出す。その固くしこった先端に、杏子がむしゃぶりつく。

「ひあ、あ、あ!き、きも、きもち、いいいいいっ!おっぱいも、いいよぉぉ!あ!あん…っ!んああっ!」

杏子は唇と舌でもなかの乳首を吸い、捏ね、転がす。
左手はもう一方の乳房を揉みしだき、指先で乳首を捏ねる。
右手は秘裂を掻き分け、そのくっと曲げた指先が、もなかのポイントに行き着く。

「きゃあぁぁうぁっっ!そ、そこぉ!あひぃぃあぁぁあっ!そこ、そこそこぉぉっ!」

いわゆるGスポットを刺激され、もなかは悲鳴のような喘ぎ声をあげもだえる。
全身から汗が吹き出し、発情したメスの匂いを発散させる。
杏子はさらに責めを激化すべく、左手をもなかの乳房から離し、もなかの秘裂の端へと移動させる。
そして、茂みを掻き分け目的の部分をそっと押し付けた。

「きゃうっ!あ!や!すご…っ!あああぁぁぁあっっ!」
0244【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/06(木) 10:28:13.14ID:6MCYgIkg
ぷっくりと膨れ包皮から顔を出した陰核。ピンク色の愛らしい肉芽を刺激され、もなかは激しく乱れる。
Gスポットとクリトリスへの同時愛撫の激しい快感が全身を駆け抜けた。
もなかは、杏子に覆いかぶさる形で四つん這いの体勢を取っている。自身を支える両腕がプルプルと震え、もなかの限界が近い事を表す。

がくがくと震える、快楽に蕩け、涎を垂らすもなかの顔をすぐそばに見ながら、杏子はその耳に囁く。

「もなか…もなか…感じてるもなか、すげえ可愛い…」
「あ、あんこ!も、もなか…も…もう…!あひぅっ!き、気持ち良くて…!ぁぁっ!い、いっちゃう…!」

激しい快感に悶えるもなか、その蕩けた表情に愛しさが込み上げてくる杏子。

「い………いくっ!いっちゃうよぉっ!い、いい?いって、いい?あんこ、あんこぉ!」
「いいよ、もなか…ほら…!いかせてやる…」
「あひぃぃぃっ!!あ!はげ、し…!あ!あ、あ!」

杏子はさらに激しい愛撫をもなかに送る。
ぢゅぶぢゅぶぢゅぶっ!と、激しい水音。

「あんこあんこあんこ!好き…っ!好き好き好き好き…っ!」
「あたしも…もなか、好きだ…!大好きだよ、もなか…!」
「あああっ!あんこぉ!いく…いくいくいくっ!いっ……んああああああーーーーーっ!」

激しい痙攣、絶叫。絶頂快感の大きさそのままに、大きく身体が跳ねる。

「うぁ…あ…あひぃ………っ」

そして崩れ落ちたもなかは、力の抜けた全身を杏子に委ねる。

「あん、こぉ…す、すご、かった…すごい、気持ち、良かっ…た…」
「もなか…もなか、もなかもなか…」

愛しげにその名を呼びながら、杏子はもなかの髪をそっと撫で続ける。

※※※
0245【あんこもなか】7.餡子の入ってない最中なんて2014/11/06(木) 10:28:55.87ID:6MCYgIkg
「うわあ…あんこのアソコ、大変だあ」
「…え?うわっ!?うわわっ!」

履いていたデニムのパンツの、色が変わっていた。
もなかを愛撫するうち、昂ぶった杏子は、愛液を溢れさせ大きな大きな染みを作っていた。

「み、見るなあ!は、恥ず、恥ずか…っ!」
「恥ずかしがらなくていいよ、あんこ」
「ば、ばか!は、恥ずかしいに決まってんだろっ!」
「やーらしいもなかを見て、昂奮しちゃったんでしょ?もなかに、昂奮してくれたんだから…もなか、嬉しいよ?」
「あぅ…!あうあうあう…!」

もなかは身体を気怠げに起こし、杏子のデニムを脱がせにかかる。

思わす真っ赤な顔を背ける杏子。もなかがデニムとショーツを脱がせる感覚が伝わって来て、顔が更に熱くなる。

「も、もなか…あ、あんまり見ないで…きゃああああっ!!」

ぬちゃり…とした感触を秘裂に感じ、杏子は思わず悲鳴をあげる。
慌てて視線を向けると、もなかが杏子の秘部にキスを繰り返している所だった。

「や、やだっ!それ、は、恥ず、恥ずかしいから!ダメだっつったろ!?んはっ!ひんっ!」
「ちゅっちゅっ…!んふ…んちゅ…もう、あんこってば…ちゅくっ…これ、好きなくせにぃ…ちゅぅ…ん…っ」
「ば、ばばば、ばかやろぉ!だ、誰がそんな…きゃんっ!あ…んあぁぁああぁっ!あんっ!んああっ!!」
「ほら…すごくやーらしい声、出てる…」
「ひ…あ…あ、あ、あ!あんっ!もな、か!だ、だめええ!それ、感じ、過ぎる、からっ!ダメだっつーのっ!!ぅひぁっ!」

愛しいもなかに口でされる。一番恥ずかしい場所を、いやらしい場所を至近で見られながら、悶えてしまう。
それが恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ない。なのに、身体は。杏子が恥ずかしさを感じれば感じる程に激しい快感がいや増すのだ。

「んふ…やーらしいあんこ…見られて感じるエッチなあんこ…」
「や…くふぅっ!あ!あ!ば、ばかあ!もなかの、ばかあ!」
「あんこのアソコも、感じてる顔も全部見えるよ、見てるよ。もっと見せて、もっと感じて…」

もなかの舌先が、既に勃起し包皮からぷっくりと顔を出す肉芽を捉えた。

「ひあっ!や、やだっ!それ、やだってばっ!あ!ぁぁぁあああっっ!」

快楽と羞恥に悶絶する杏子。しかしもなかは舌先で肉芽を捏ね回しながら、杏子の膣内に指を侵入させる。

「………っ!!!ぁぁぁあああっ!!」
「んふ…お・か・え・し♪」
「あ!や!だ!あ!あ!あ!」

まともに声をあげる事さえ出来ない激しい快感が弾ける。
0246【あんこもなか】8.これからもずっと。2014/11/06(木) 10:30:10.45ID:6MCYgIkg
「んあああああっ!いや…いやいやいや…っ!」

涙を流し、高まり続ける快感と、それに伴う羞恥に杏子はいやいやをするように顔を降る。
羞恥と快楽に身悶えする杏子を見ていると、もなかはとても嬉しくなる。

「気持ちいい?あんこ、気持ちいい?」
「いやあ!ば、ばかあ!もなかの、ばかあっ!」

まるで子供に戻ったように震える杏子。
普段の勇ましく勝ち気な杏子がウソのように、その姿はもなかの母性と加虐心の両方を刺激する。

「ね、いきたい?このまま、いかせて欲しい?」
「いや…いやいやいや…ひぅ…っ!あ、あ、あ!」
「いきそう?すごく気持ち良さそうだもん…いきたいよね?あんこ?」
「い、いやあ!い、言え、ないっ!そんな、事…っ!んあ!ああっ!」

絶頂の間際。しかしもなかは、そこで愛撫を中断する。

「可愛いあんこ、綺麗なあんこ、強くて素敵なもなかの旦那様…」
「もな、か、あぅぅ…」

絶頂の直前、お預けをくらった身体が軋む。刺激を求めて、我知らず腰が動く。

「やん、腰動いて…そんなに、いきたい?ねえあんこ…」
「ぅぅ…!」

プルプルと震える杏子。再び、もなかの愛撫。

「んあっ!?あ!も、もな、かああっ!あんっ!んあぁあっ!あ、あ、あ!」

しかし、杏子が絶頂を迎える寸前、またももなかの指と舌が止まる。

「あんこ…いかせて、欲しい?」
「う…う、ぅぅううう…ぅぅっっ!」

荒い息を吐き、表情を蕩けさせ、プルプルと震える杏子。

「ね…これ、欲しい?もっと?」

愛撫を再開、しかしまたも直前で停止。
それを何度も繰り返され、杏子はどんどん昂り、追い詰められていく。

「あんこ、可愛い。ねえ、いかせてあげたいな…あんこを気持ち良くしてあげたいの。もっと、もっともっともっともっと…」
「うあ…あひ…ひぃ…!も、もう…だ、だめえ…!」
「あんこ…いきたい?ねえ、いきたいよね?あんこ…あんこ、あんこ…!」

そして、ついに杏子の防波堤が決壊する。
0247【あんこもなか】8.これからもずっと。2014/11/06(木) 10:32:02.11ID:6MCYgIkg
「あぁぁっ!い、いき、たいっ!も、な、かっ!い、いかせて!いかせてっ!お、お願い、だから!お、おかしく、なる!あたし…もお!もお!」
「あんこ、そんなにいきたいの?いかせてほしいの?」
「いかせてえ!いきたいいきたいっ!お、おね、お願いっ!もなかああ!も、もう、許してえええ!」

髪を振り乱し、絶叫する杏子。

「ああ、あんこ…いいよ、いって…!いかせてあげる…もなかの指でいっぱい、感じて…!」
「ふぁぁあぁおおおっ!い、いく!いくいくいくいくいく…!いっ……くぅぅぅうあああああーーーーっっぅ!!!!」

膣への激しい抽送、クリトリスへの口唇愛撫で、杏子は絶叫と共に頂きへと達する。
同時に愛液がシャワーとなって、もなかの顔へと降り注ぐ。いわゆる潮吹きだ。

「あぁ…!やぁ…!で、出てる…は、恥ずかしい…!恥ずかしいよお…!」

普段の気丈さの欠片も見せず、絶頂快感の余韻に浸る杏子。

(普段のカッコいいあんこも大好きだけど…やらしくいっちゃって真っ赤になってるあんこも、とっても可愛くて…大好き。

もなかの中に、杏子への愛しさが込み上げてくる。
これからは、そんな愛しい杏子と毎日一緒なのだ。
恥ずかしそうに真っ赤な顔を背ける杏子を見やり、もなかは幸せを噛み締めた。

「あんこ…愛してる」
「ばっきゃろ…あ、あたしの方が、ずっともなかの事、愛してる」
「負けず嫌いだねえ、あんこは。じゃあそういうことにしといてあげる」
「く…ああ言えばこう言う…なんであたし、こんなのに惚れちゃったんだろ。女、同士なのに…なんで、こんなに…好き、なんだろ」
「それはね、あんこ」
「あ?」
「それがもなかとあんこの運命だったんだよ。えへへ」

もなかは嬉しそうにそう言うと杏子の頬に口付けし、真っ赤になった杏子は不貞腐れたようにソッポを向く。
しかしその仏頂面も長くは持たず、杏子の頬にも幸せそうな笑みが浮かんだ。




fin
0248名無しさん@ピンキー2014/11/06(木) 12:37:31.51ID:5tPXVKCn
うむ、あんこもなかは甘々がよいよい
ということでGJでした。

後は一杯渋茶が怖い。
0250名無しさん@ピンキー2014/11/07(金) 21:52:35.37ID:r9z7YBwo
お、完結してんじゃーん!GJ!
面白かった(素直な感想)
0252名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 05:24:29.50ID:2fK/qnzs
>>251
レズはホモ、はっきりわかんだね(包含的な意味で)

それはそうと完結おめ!後で頭からしっかり読むとしようかな
0253名無しさん@ピンキー2014/11/26(水) 00:35:07.36ID:s7eEU985
撫子寮の人です。久しぶりに自作を投下。
エロ無し&超短いですが、賑やかしにでもなれば。
0254彼女と愛に関する幾つかの考察2014/11/26(水) 00:36:56.02ID:s7eEU985
「愛、というものがあるわね」
 そんなことを先生が言ったのは、二人してソファでごろごろしている時だった。
「いえ勿論、そんなものがあったら、という仮定の話だけど」
「いや、ちゃんとありますから。……ある、と思いますけど。仮に定めなくても大丈夫ですって」
 恋人の前で何を言い出すかな、この人は。
 先生が思いつきで変な事を言うのは毎度の事だったけど、今回はその中でも一際妙で難しそうだった。なんだろう。愛? 哲学の話でもするのだろうか。この人の専門は社会学のはずだけど。
 僅かに身じろぎをする度、パンツスーツの腰までかかった黒髪がさらさらと揺れた。しどけなくしなやかなその様子は、何と言うか黒猫のような妙な色気がある。
 ……スーツのまま横にならないでって、もうちょっと厳しく言うべきだろうか。あれ、皺になると色々と面倒だから。
「『それ』は生物学上、子孫を残すためのシステムに過ぎないという説があるわ。人を好きになるという状態は、つまりセックスをするための準備段階に過ぎないというような、ね」
 眉をひそめる私に構わず、横で寝そべる先生は続ける。
 黒猫のような、というか。んんー、と伸びをして見せる姿は猫その物だ。気持ち良さそうに目を細めて、横に座っていた私の太ももに腕を預ける。先に陣取っていた読みかけの小説は、ひょいと取り上げられてしまった。
 ……まぁ、いいけど。こんな話を聞きながら、恋愛小説を読む気にはならない。
「そうだとすると、恋愛感情と繁殖欲とはイコールということになるわね。つまりこの主人公と恋人も肉欲垂れ流しのエロエロって事になるんだけど」
 先生が、開いたページから目線を上げる。目が合った。涼しげな笑み。
「どう思う?」
「……はぁ」
 いや、どうとか言われても。
 ひとつ、ため息をつく。こんなことは慣れっこだ。元から、乙女心だとか浪漫だとかいうものとは正反対にいる人なのだ。
「それ、言ってる先生の存在からしてもう破綻してるじゃないですか。私と先生が愛し合った所で、子供なんてできないでしょう」
「そうなのよねぇ。だから異端なんだと思うのよ、私。ほら、言うじゃない」
 ――異常性愛って。
 流行りのファッションでも話題にするかのように先生の口から転がり落ちた言葉。それがまるで茨の棘のように、ちくりと妙に心に刺さる。
 ……異端で、異常。『普通』から外れた、私たち。
「異常ですか」
「異常でしょう。だって、遺伝子的に無意味極まりないじゃない」
 先生は肩をすくめる。
「女同士愛し合った所で、子供が出来る訳でもなし。最近はそういう技術も開発されつつあるっていうけど、そんなの設計段階では想定されていない訳でしょう。だったら」
 だったら。
 その先を、何となく聞きたくないような気がして。けれど先生の綺麗なソプラノに、つい耳を傾けてしまう。
「異常性愛者の何が異常かと言えば、それは繁殖を度外視している所にあると思うわ。……貴女の意見は、どう?」
 先生の口調は、ゼミで質問をする時と全く同じものだ。優秀な教授が優秀な学生に掛ける、無味乾燥な問い。
0255彼女と愛に関する幾つかの考察2014/11/26(水) 00:38:51.71ID:s7eEU985
 ……だから、私が発した声が思ったより尖った響きになったのも、仕方ないことなのだろう。
「よく、分かりませんけど。きっと愛って、そういうものじゃないんじゃないですか」
「……んん?」
「少なくとも私は、先生の子供が欲しいから先生の事好きになったわけじゃありませんし。システムとか子孫繁栄とか、言われても分かりませんし正直知った事じゃないです」
 先生が、ゆっくりと上体を起こすのが見えた。続いて私の肩に手がかかる。
 先生の手は、少し冷たい。……それが心の温度のように思えて、時々不安になる。
「私は、先生が好きだから好きなだけです。何か見返りが欲しい訳じゃ……ありません」
 そう言っているうちに、自分でも口調が不貞腐れていったのが分かった。
 きっと先生は、私に自分から言わせたかったのだろう。『好き』だってこと。さっきまでの難しい話は、そのための呼び水だったに違いない。
 それが何となく腹立たしくて、むかむかして、じくじくする。
 ……別に、先生に遊ばれるのが嫌な訳じゃない。
 ただ、ちょっとだけ考えてしまう。いつも必死になるのは、私の方だから。先生は本当に私のことを、遊び相手ではなく恋人として見てくれているのだろうか、なんてことを。
 だって、この話がもし本気なら、それこそ私を愛する理由なんかない訳で――
 先生はちらりとこちらを見た。髪の合間から覗く、黒瑪瑙のような綺麗な瞳。
 その瞳は相変わらず、私の心を全て見透かしてしまうかのような色をしていた。
「いらないの? 見返り」
「……嘘付きました。キスしてほしいです」
「キスだけでいいの?」
「嫌です。好きって言ってほしいです。抱きしめてほしいです。抱きしめて、いっぱい愛して、ぐちゃぐちゃにしてほしいです」
「欲張りね」
 そんなの、先生のせいです――
 そう言おうとした私の唇を、先生の唇がふさいだ。あ、と目を丸くする間もなく、すぐにその柔らかな感触は離れていってしまう。
 代わりに私に向けられたのは、満面の笑みだ。あぁもう、今まで小難しい話をしてたっていうのに、子どもみたいに無邪気な顔で。
「そんなあなたが、私は大好き」
 ……そんな言い方は、とてもズルイと思う。
 だから私は、咄嗟に何を言ったら良いのか分からなくて。結局不貞腐れた声のまま、言った。
「……私を捨てたら末代まで祟りますよ、先生」
「あら、それには及ばないわよ」
 そう言って先生は笑った。
「だって私が末代だもの。非常に心苦しくて恐縮なのだけど、私の家には、愛ゆえに私の代で途絶えてもらいましょう」
 ……そして、さらりとそんな物騒なことを言ってのける。
「愛ゆえに、ですか」
「愛ゆえに、よ」
 ままならないわねぇ、と先生はうそぶく。いいのかなぁ。先生の家、昔から続く名家だと聞いたことがあるけど。
 けど、それよりも何よりも、秤にかけるまでもなく私を選んでくれたのが嬉しくて堪らない。我ながら簡単な女だとは思うけど、だってそんなの仕方ないじゃない。
「柑奈ちゃん」
 ほら、名前を呼ばれただけで、こんなにもドキドキしてる。
 見つめられて、息を吹き掛けられるだけで、もっともっと好きになる。
「今日のスケジュールを、教えて?」
「これから二時間後に講義があります。……もう、ズル休みはダメですよ?」
「そう」
 先生は私の肩を抱いて、ゆっくりと押し倒した。その唇が私へと落ちる。今度はただ合わせるだけじゃない、恋人同士のキス。
 互いの唇に銀の橋をかけて、先生は私に囁きかける。
「じゃ、たっぷり二時間は、こうやっていましょ――私とあなたの命題を証明するためにも、ね」


 ――そうして。
 私たちは今日も、遺伝子に反逆する。


<了>
0256名無しさん@ピンキー2014/11/26(水) 00:41:32.74ID:s7eEU985
投稿完了です。やっぱりトリップとか付けた方がいいのかなぁ。

それでは、お粗末さまでした。
0258名無しさん@ピンキー2014/11/26(水) 01:56:32.51ID:4UG9SqCx
いやむしろこのくらいのギュっと凝縮した小さなエロこそ…
0264名無しさん@ピンキー2014/12/23(火) 00:03:09.89ID:wjUOf/wi
今年はクリスマスSSを上げてくれる人とかいないんですかね?
0267名無しさん@ピンキー2015/01/01(木) 23:33:43.67ID:ypzT8UVq
あけましておめでとうございます。
歳神娘ではないですが投下させて頂きます。
甘々な流れで来ましたが後は一杯渋茶が怖い、甘さ無しのOL物です。
今回は前半のみのエロ無しになります
0268エリート上司の秘密2015/01/01(木) 23:36:15.22ID:ypzT8UVq
 平日の夜、雨の降る雑踏の中。社会人三年目の古川あいは帰宅の途に付いている。疲弊
しきった足を動かし、周りの調子に合わせるように早歩きに大通りを突き進む。雨なんか
降っているから尚更今日は早く帰りたかった。
 そこまではいつもと同じ。毎日毎日、変わらないことを繰り返していた。
 自分がいつ日常を抜け出し、非日常を垣間見るかなんて検討が付かないものだ。ただた
だ決められたことを決められたように、引かれたレールの上を安全運転でひたすら走るこ
とに、自分自身無意識のうちに嫌気が差していたのかもしれない。
 非日常は、こんなふうにして、突如襲いかかってくる。

 目の前を遠ざかっては近づく人の中で、あいの前を通る、その人にだけ思わず自然と目
で追ってしまう。
 眼鏡を掛けた整った顔立ちをした女性、しかし冷たさすらを感じる、感情を写さない表
情。あれは間違いない、と思った。あの人は、私の上司である上川美和だ。黒いコートを
纏っており、その姿は闇に溶け込んでしまいそうであった。
 問題は、その傍らには制服を着た女子高校生と、相合い傘で腕を組み歩いていることだ。
その年端もいかぬ少女の表情は、女性と打って変わってくすくすと幸せそうに笑みを浮か
べている。
 無表情の女性と制服姿の女子高生というコントラストが奇妙で、危うさを感じさせられ
た。
 美和はあいの、言わば憧れの先輩だった。日頃から口数が多い訳では無く、プライベー
トの話が噂に上がりすらしない正に謎の存在だったが、若くして出世を果たし、仕事も出
来るそんなキャリアウーマン像にあいは密かに憧れを感じていた。そんな完全無欠の女上
司が夜に女子高生と腕を組んで歓楽街の方へ歩く場面を目撃して、驚きを感じない訳がな
い。
 美和はふいに後ろを振り向いた。あいは雑踏の中で一瞬だけ、目が合ったような気がし
てどきりとする。すぐ目線を空へ移してしまったが、次に見やった時にはもうこちらを向
いてはいなかった。彼女の目線が心に突き刺さるようで、しばらく立ち止まり、ぼんやり
と人混みを眺めていた。
0269エリート上司の秘密2015/01/01(木) 23:36:55.80ID:ypzT8UVq
***

「昨日、何してたんですか?」
「仕事に決まってるでしょう」

 翌日、あいはたまたまエレベーターの中で美和と会った。

「違います、昨日の夜女子高生と歩いてましたよね」

 何も答えようとはしない。

「歩いていった方って確か歓楽街ですし、あんな時間に制服の高校生と一緒にどうしたの
かなと思って」

 あいの中に邪な気持ちはなかった。ただ憧れの先輩のプライベートを垣間見、それに興
味を持ってしまった、それだけだった。現にあいは、あの女子高生のことを美和の親戚だ
ろうくらいにしか思っていない。
 美和はしばらく何も言葉を発することなく、いつもの無表情で前を向いている。あいは
ここに来て気まずさを覚え、自らの軽率な発言を改めようと思い始めていた。

「あなた、気持ち悪いわね」
「……申し訳ありません」

 ああやってしまった、打たれ弱い温室育ちのあいには憧れの先輩に投げかけられた『気
持ち悪い』の言葉に相当来ていた。少し俯きながら、あからさまに悲しげな顔をしたあい
に、美和は思いもしない言葉をかけた。
0270エリート上司の秘密2015/01/01(木) 23:37:50.81ID:ypzT8UVq
「今日、仕事終わったら空いてる?」
「あっ……はい、構いません」
「じゃあその時に」

 短い言葉を残して先に美和がエレベーターから出ると、ごとりと硬質な音をさせ扉が閉
じる。あいは美和の考えが全く読めず、どうしてわざわざ仕事が終わった後に話す必要が
あるのだろうとただただ不思議に感じていた。

 ***

 あいと美和は定時で仕事を上がり、美和に連れられるがままに繁華街から少し外れた薄
暗い路地を歩き、雑居ビルの階段を下に下がると、若いあいは普段立ち寄ることなど到底
無いような雰囲気の良いバーが現れた。店内は薄暗いが静かで、まさに隠れ家的と言える
ような佇まいであった。

「雰囲気が良いですね」
「気にしなくていいわ。今日は私が奢るから」

 慣れない雰囲気の中で、謎に包まれていた上司と会社以外の場所で一緒に時間を共にし
ていることにに少し緊張をしていたあいは、しきりに辺りを見回していた。

「雰囲気が良くてちょっと驚きました……こんな所良かったんですか」
「気にしなくていいのよ。今日は奢るから」

 あいは甘い安酒しか飲み慣れていないため何を頼めば良いかわからず、注文を美和に任
せると、少し経って聞いたこともないようなカクテルが出てくる。甘く、綺麗なそれは口
当たりが良く、こくりこくりと飲み進めてしまうと気が付けば頭がぼんやりとしていた。
対する美和はいつもと表情一つ変えずちびちびと酒を飲み、時折煙草を吸いながら静かに
佇んでいる。
0271エリート上司の秘密2015/01/01(木) 23:38:35.59ID:ypzT8UVq
「古川さんって可愛いわよね」
「え、そんな、ありがとうございます」
「年齢より若く見えるし。若さって大事だと思うわ」

 急に美和から褒められ、驚きと嬉しさが込み上げてくる。普段堅物そうに見える美和が
人を褒めることなんて、自分のことを含め見たことがない。
 美和が言うように、確かにあいは実年齢よりも若く周りから見られる、というのも物は
言い様で、つまりは童顔だった。加えて身長もあまり高くないため、昔から中学生や高校
生に間違えられては周囲から馬鹿にされ、自分でも大きなコンプレックスであった。『可
愛い』と言われることはあっても、それはあいの場合褒め言葉になっていなかったのだ。
 だが憧れの上司である美和の場合は別であり酔いも回っていたため、この幼く見える自
分の容姿も悪くないかなと久方ぶりに思えた。

「上川さんだって素敵じゃないですか。大人の女性って感じで、私憧れちゃいます」
「そう?ただのおばさんだと思うけど」

 それからはあいが一方的に喋り、適当な所で美和が相槌を打つだけの時間が長く続いた。
間がもたないので辛かったというのもあるが、酔って気が大きくなったあいはいらないこ
とまで色々と喋っていた。意外にも気難しそうな美和が嫌な顔せずひたすら聞き役に徹し
ていたのだが。

 カクテルを一杯飲み終えた辺りで、あいはかなり酔いが回っていた。もともと酒に強く
ないのにも関わらず、口当たりが良く度数の強い酒が入ったカクテルを飲まされてしまっ
たので、目も当てられなかった。

「そろそろ出ましょうか」
0272エリート上司の秘密2015/01/01(木) 23:39:20.21ID:ypzT8UVq
 不意に美和に声を掛けられ、そうですね、と返しあいは立ち上がろうとした時、酔いの
せいか足がもつれてぐらりと大きく揺らめいた。なんとかテーブルに手を付き事なきを得
たが、大分酔いが回っていることは確かだった。

「大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、ちょっとふらつくだけですから」
「ちょっとどころには見えないけど……」
「ほんとに大丈夫ですって、ほら、歩けますし」
とあいは言っておきながら完全に千鳥足であった。
「これじゃ家に帰れそうも無いわね」
 美和は小さくあいには聞こえない程度にそう呟いた。

 美和は勘定をした後店を出ると、千鳥足のあいを引いて歩き、タクシーを捕まえると、
運転手に自らが住んでいるマンション前まで行くように告げた。
 美和の住む分譲マンションの前でタクシーを降りると、慣れた手付きでオートロックの
扉を開け、エントランスを抜けると半分寝ているあいを連れ立ってエレベーターに乗り自
室のある階のボタンを押す。エレベーターから降り、長い廊下を歩いた後、横で自分に体
重を預けているあいに邪魔されながらも自室の扉の鍵をなんとか開けた。
 数年前に買ったこの家は、女一人で住むにはあまりにも広く、寒々としていた。美和は
寝室に行き、ダブルベッドにあいを寝かせる。すやすやと寝息を立てるあいは、化粧をし
ているものの肌を上気した姿があまりにも幼く見えた。

「無防備過ぎて逆に腹が立ってくるわ」

 でもいいけど、とその後に付ける。
 あいが寝ている横に美和も腰掛けた。こうしてまじまじと顔を見てみると、整った顔立
ちだということがよく分かる。
0273エリート上司の秘密2015/01/01(木) 23:40:07.87ID:ypzT8UVq
 しわやしみの無い綺麗な肌、長いまつげ、荒れていないぽってりとした唇。
 その半開きの唇に思わず目が行く。なんて素敵なんだろう、と思わずため息を付いてし
まう。
 美和はほぼ考えるよりも先に自らの顔を寝ているあいの幼い顔にゼロ距離まで近づけ―
―一瞬、唇を重ね合わせた。
 当然あいが起きる様子は無い。その様子に美和は、面白くないと思いつつ、次は何をし
てやろうかという嬉々とした思いに珍しく駆られていた。
 横向きで寝ているあいを仰向けに姿勢を直す。今度はあいの着ているスーツのジャケッ
トのボタンを外し、前をはだけさけた。そしてブラウスのボタンもぷちり、ぷちりと一つ
ずつ開けていく。美和は部下を酔わせて家に連れ込み、その上体を勝手に弄んでいるとい
う背徳的な行為にひどくゾクゾクとしたものを感じていた。
 ブラウスのボタンを上から下まで全て外し終わり、左右にはだけさせると、あいの匂い
がふわりと感じられた。薄い胸を覆う純白のブラ、そしてほどよく肉の付いた白いお腹に
思わずうっとりとしてしまう。思わずその肌を一撫ですると、吸い付くような肌触りであっ
た。
 ここまでならあいが起きても「着替えさせてようと思って」で言い訳は付く。だが幸い
にもあいは未だ寝息を立てている。本当はその白いお腹を撫で回し、吸い付いて赤い痕を
点々と付けてやりたいし、その純白のブラをずらし、その中央に色付いた物をこねくり回
し、強く吸い付きたい。さあどうしようか―――。
 理性とが一瞬せめぎ合いを繰り広げるが、そもそもこんなところに連れてきた時点でも
う決まっている物だろう。このまま気持ち良く眠らせてあげたい気もするが、やはりこれ
は自分のしたいことを尊重しよう、据え膳食わぬはなんとかだと自分勝手に片を付けた。
 あいの白く凹凸のある鎖骨の上に顔を寄せ、息を深く吸い込む。鼻腔にあいの匂いが一
杯に入ってくる。若い子の匂いはやっぱり最高だと一人で感慨に耽った後、首筋を夢中で
舐め、軽く噛み、吸い付く。
 いつもの癖で首筋に痕を点々と残していると、上の方から断片的な声が聞こえてくる。
どうやら起きてしまったようだが、美和は今更臆するような女ではなかった。
0277(前書き)2015/01/04(日) 00:45:26.59ID:+lFD6qlO
失礼します。単発のSS書きです。

SS投下させていただきます。
以下、SSの注意書きになりますので、ご一読いただくよう、お願いいたします。

・長さは24レス分です。
・「結城友奈は勇者である」の友奈×東郷さん、夏凜×友奈の百合SSになります。
 苦手な方は、お手数ですが、スルーしていただくようお願いします。
0278(1/24)2015/01/04(日) 00:48:16.40ID:+lFD6qlO
 
 「……おいでなすったわね」

 犬吠崎風の、険しい視線が手元の端末に注がれる。
 その画面に表示されているのは、彼女たち勇者部五人を示す「結城友奈」「東郷美森」「犬吠崎風」「犬吠崎樹」
「三好夏凜」のアイコン。
 そして、もう一つ――彼女たちの敵、バーテックスの現在地を示す光点だった。

 「――だけど、これ、おかしいです。風先輩」

 すでに変身を済ませた東郷が、同じくスマホを手にしたまま、そう述べる。
 「おかしいって、どういう事? 東郷さん」
 隣にいた友奈が首をかしげ、親友に問い返した。
 「ほら、見てちょうだい、友奈ちゃん。今までは、バーテックスがいるポイントのそばに、その種別を表す説明がついていた
  でしょう? でも、今は――」
 「え? ……あっ!」
 東郷に促され、友奈は改めて画面を見直して、気づく。そこにはただ、「???」というメッセージが表示されている
だけだった。
 「どういう……事なんだろう、お姉ちゃん?」
 同じくそれに気づいた樹が、少し不安げに声を落として、風の方をちらりと見る。それに対して風は、険しい視線を崩さないまま
応えた。
 「おそらくは……大赦も知らない、新たなバーテックスが出現したのかも。未知の敵だから、データが表示されないんだわ」
 
0279(2/24)2015/01/04(日) 00:52:31.64ID:+lFD6qlO
 
 「そんな……!」
 未知の敵と聞いて、樹はますます不安な表情を露わにする。
 そんな妹に気づいて、風は顔を上げると、樹に優しく、しかし頼りがいのある笑顔を浮かべてみせた。
 「大丈夫よ。どんな敵が現れたって、あたし達、讃州中学勇者部の結束と女子力にかなうもんですかっての!」
 「その通りよ」
 どん、と胸を叩いてみせる風に続いて、夏凜がざっ、と先頭に立ち、背中越しに語る。
 「何だったら、私一人だって殲滅してみせるわ。怖いんだったら、どこかに隠れていたっていいのよ、樹?」
 「ちょっと夏凜、そんな言い方……!」
 その、一見冷たいとも感じられる言い方を風が咎めようとするが、樹がそれを制して、首を横に振る。
 「ううん、私も勇者部の一員だもん。夏凜さんや、みんなと一緒に、戦います!」
 「……いい覚悟ね」
 夏凜が振り返り、フッと笑う。それを見て、風や東郷も、ほんの少し、表情をゆるめた。
 「よーっし! それじゃあ今日も、『アレ』やりましょうよ!」
 両手で頬をパン! と叩くと、友奈が一同に呼びかける。
 「いいわね! やっときましょっか!」
 風がそれを受け、みんなを自分のところに呼び集めると、それぞれが輪になって肩を組み、円陣を組んだ。
 「……ああもう、毎回毎回恥ずかしいわね、さっさと済ませましょうよ」
 「まあまあ、夏凜。何だかんだ言って、あんたもこのノリに馴染んできたっしょ?」
 「はあ!? バッ、バカ言うんじゃないわよ! 大体あんた達はね……!」
 「ほらほら、風先輩も夏凜ちゃんも、おしゃべりはそこまでにしましょう?」
 「友奈さん、掛け声、よろしくお願いします!」
 「うん! ……行くよ! 勇者部、ファイトーっ!」

 「おーっ!」という、威勢に満ちた甚句とともに、五人はそれぞれ、敵バーテックスに向けて進撃を開始した。
 
0280(3/24)2015/01/04(日) 00:57:24.53ID:+lFD6qlO
 
 「何よ、コイツ……全然攻撃してこないじゃない」

 不気味に浮遊する、球体状のバーテックスは、夏凜たち五人が近づいても全く迎撃などの反応を起こさず、ただまっすぐに
神樹へ向かって移動し続けるだった。だが、その無反応が、かえって彼女たちに攻撃をためらわせる。
 「油断しちゃダメよ。どんな能力をもってるかわからないんだから、迂闊に近づいちゃ……」
 「甘いわよ、風! 戦いは常に先手必勝、やられる前にやるべきでしょ!」
 警戒するよう、全員に伝える風に対し、夏凜が一言言い返す。
 そして、手持ちの刀をぐっと握り直すと、バーテックスの足元から、一気に高く跳躍した。
 「ちょっと、夏凜! ……ああもう、東郷、援護!」
 「了解です!」
 先行する夏凜を抑えきれず、頭を抱えながら風は東郷に指示を出す。東郷はその場で地面に横たわり、狙撃銃を構えて援護の
体勢に入った。
 「……ふん、やっぱりコイツ、何もしてこないじゃない! ちょろいっ!」
 一方夏凜は、跳躍の到達点に対し、今まさに敵の頭頂めがけて落下していくところだった。その間も、バーテックスの様子に
何ら変わったところは見られない。
 「もらったぁぁぁっ!!」
 空中でぐるん、と一回転し、さらに勢いを増した夏凜の二刀流が、バーテックスに突き刺さる――その瞬間。
 突如、バーテックスの体表に、ビキッ、と一筋の亀裂が入る。

 そしてその亀裂が上下にぐわっと広がると、そこに現れたのは、巨大な――夏凜の身体よりもさらに大きそうな、一つの目玉
だった。
 
0281(4/24)2015/01/04(日) 01:01:39.59ID:+lFD6qlO
 
 「!?」

 その突然の変化に驚く暇もなく、目玉がギンっ、という強烈な視線で、夏凜を睨みつける。
 「うっ……!」
 その瞳に見据えられた途端、夏凜はふっ、と自分の気が遠くなるのを感じる。
 そのま全身の力が抜けた夏凜の五体は、あえなく樹海の地表へと落下していってしまった。

 「夏凜ちゃんっ!!」
 その様子を見た友奈が叫び、一足飛びに夏凜の救出に向かう。
 「おのれっ……!」
 東郷もまた、銃のスコープに視線を合わせ、バーテックスへ狙いを定めつつ、引き金に指を掛けた。
 しかし。

 「……あっ……!?」

 その眼前で、バーテックスの正面に、新たな巨眼が現れた。その、真っ赤な目玉は、東郷の敵意を感知したように、ぐりり、と
動いてこちらを向く。
 「しまっ……!」

 それに気づいた東郷は、ばっ、とスコープから顔を離し、目をそらそうとする。
 だが、間一髪間に合わず、バーテックスの視線に捕えられてしまった東郷の意識もまた、暗闇の中へと沈み込んでしまった。
 
 
0282(5/24)2015/01/04(日) 01:07:03.17ID:+lFD6qlO
      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇      
 
 「……う、ん……?」


 ――きらめく陽光が、閉じたまぶたを透かして、視界を照らす。
 そのまぶしさと、寄せては返すさざ波の音に、夏凜はふと、目を覚ました。
 「……あれ? 私、どうして……?」
 その場でむくり、と身を起こした夏凜。なぜか頭がぼうっとして、前後の記憶があいまいな事に気づくと、ううん、と頭を振り、
左右を見回した。
 「……ここ、って……?」
 頬に当たる風を感じながら、自分の置かれている状況が理解できず、夏凜は一人、ぽつり、とつぶやく。
 夏凜が眠り込んでいたのは、普段、自分がトレーニングに励んでいる、砂浜だったのだ。
 「……どうして、ここにいるんだっけ? 確かみんなと、神樹さまの結界の中にいて、バーテックスと戦っていた、ような……」
 わずかに蘇ってきた記憶を頼りに、必死で思い出そうとするが、それ以上は霞がかかったようにはっきりとしないままだ。
 そうだ、もしも戦っていたのなら、友奈や――勇者部のみんなは、今頃どうしているのだろう?
 その事が気にかかった夏凜はあわてて立ち上がり、スマホを取り出して、誰かに連絡を取ってみようと試みる。
 その時だった。

 「――夏凜ちゃん」

 突然、誰かに背後から声をかけられ、夏凜は思わずそちらを振り向いた。
 「あ、あんた……!」

 そこに立っていたのは、今まさに、連絡をしようとしていた相手――結城友奈だった。
 
0283(6/24)2015/01/04(日) 01:12:30.52ID:+lFD6qlO
 
 「あんた……どうしてこんな所にいるの……?」
 呆然としたまま、目の前の友奈に問いかける夏凜。
 「えへへ……」
 だが、当の友奈はその言葉には答えず、一歩、二歩と砂浜を踏みしめながら、夏凜の方へと近づいてくる。その視線は足元に
向けられており、どことなく恥ずかしそうな雰囲気を漂わせていた。
 その様子にしびれを切らした夏凜は、思わず声を荒げた。
 「ねえ、返事しなさいよ、友奈! 私たち、確かバーテックスと戦ってて……みんなは今どこに……っ!?」
 だが、その言葉は、すうっと目の前に迫った友奈の手が両頬に添えられることで中断されてしまう。
 「………」
 ふと、無言のままで友奈が顔を上げる。その顔は真剣そのものであり、瞳はまっすぐに夏凜を見据えていた。
 「ちょ、ちょっと……?」
 体をこわばらせて戸惑う夏凜。友奈がそのこわばりをほぐすように、そっと頬をなでる。
 そして次の瞬間、友奈は夏凜の唇にキスをした。

 「!………」

 あまりにも急な出来事に、夏凜は何も反応することができない。ただ、自分の唇に伝わってくる、ふわりとした柔らかな感触の
ことで、頭がいっぱいになってしまっていた。
 「ん……はっ」
 ほんの少しの間、そのままじっとしていた友奈だったが、すっと唇を離すと、再び夏凜の目を見つめながら、意を決したように
言葉を発した。

 「夏凜ちゃん……私、夏凜ちゃんの事が……好き、です」
 
0284(7/24)2015/01/04(日) 01:18:43.09ID:+lFD6qlO
 
      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇      
 
 「――そっ、そんな……! い、いい、いきなりの友奈ちゃんからの告白だなんて、こ、心の準備が……!」

 友奈からの突然の口づけの直後、愛の告白を受けてしまった東郷は、顔を真っ赤にして激しくうろたえた。
 そんな東郷に、友奈は流し目を送りつつ、さわやかな低音で言葉を続ける。
 「私は本気だよ……大好きなんだ、東郷さん。だから、私の恋人に……ううん、お嫁さんになってくれないかな?」
 さらなる告白を受けて、東郷の口元がはわわとゆるみ、両手は意味もなくふらふらとあたりを漂ってしまう。
 誰もいない、東郷と友奈だけの勇者部部室で、二人の騒動は繰り広げられていた。

 ……東郷がこの場所でふと目を覚ましたのは、ほんの数分前の事である。
 自分がなぜ、どうして一人でこの場所にいるのかも分からないまま、とにかく外に出ようと車いすを操り、部室のドアを開けた。
 その時突然、誰もいなかったはずの教室に友奈が現れ、驚いている暇もない内に東郷の唇は奪われてしまったのだった。

 「……わ、わたた、私は、友奈ちゃんがそう言ってくれるのなら、よよ、喜んで……」
 相変わらず、顔を真っ赤にしながらも、東郷は必死にもつれる舌を操り、友奈へと返事をする。
 「本当……?」
 「はいっ! まだまだ至らぬ不束者ではございますけれど、貴女のお側に置いてくださるなら、誠心誠意尽くさせて頂きますので……
  んんっ!」
 東郷の返事を最後まで待たずに、友奈が再びその唇をふさぐ。
 初めは優しく、東郷の唇をなぞるようだったその口づけが、だんだんと熱を帯び始め、東郷の頭の芯をかあっと熱くさせていった。
 「嬉しいよ……東郷さん」
 相変わらずの低音で、友奈が東郷の耳元でそっとささやく。
 それと、友奈が東郷の胸元に手を伸ばすのとは、ほぼ同時の事だった。

 
0285(8/24)2015/01/04(日) 01:25:32.80ID:+lFD6qlO
 
 「っ!……友奈、ちゃんっ……!」

 それに気づいた東郷は、思わずびくんっ、と身を震わす。
 そんな東郷をなだめるように、友奈はあくまでも優しい手つきのまま、東郷の制服のネクタイをしゅるり、とほどき、ブレザーを
脱がせてゆく。東郷の、ふくよかな胸の張りが、残されたシャツ越しに強烈な存在感を放っていた。
 友奈が、東郷の胸に、そっと手をあてがう。
 「んんっ……」
 さして、力を込められたわけではなかったが、大好きな想い人に触れられているという事実が、東郷の感覚を普段よりも敏感に
していた。
 「ふふ……感じちゃってるんだね、かわいいよ、東郷さん……」
 口元に妖しい微笑みをたたえた友奈は、東郷の背後へと回ると、背中越しに両手を東郷の胸へと伸ばすと、二度、三度と揉みあげた。
友奈が力を加えるたび、形よく張った東郷の胸が、ふにゅり、と変形する。
 「あっ……はぁっ……友奈、ちゃんっ……」
 吐息を弾ませ、東郷ががくん、と身をよじる。天井へ顔を向けてしまい、ふと目の前を見れば、そこには逆さになって微笑む友奈の顔。
 「大丈夫だよ、東郷さん……力を抜いて、なにもかも、私にまかせてくれていいから……」
 そしてまた、友奈が東郷にキスを浴びせる。今度のキスは東郷の唇だけにとどまらず、その内側までもを侵していくものだった。
 「んふぅっ……んん……んちゅぅっ……」
 友奈の舌が、東郷の口内を荒らしていく。頬の内側を舐めあげ、ぴちゃぴちゃという水音が跳ねるたびに、東郷の感情を司る
回路が、ひとつひとつ焼き切られていくような感覚があった。
 その間に友奈の指が、するりと東郷の胸元へと入り込んでゆく。下着越しにさわさわと胸を撫でまわしていたと思うが早いか、
その五指が、早くも皮膚と下着の間へと滑りこんできた。
 「きゃっ……!」
 今までの、布越しの触り方とはまた違う、友奈の体温を直に受け、東郷が思わず短い嬌声をあげる。
 それにも構わず友奈は指を巧みに動かし、東郷の胸にまんべんなく刺激を与えてゆく。やがて探り上げた小さな突起を、人差し指と
親指でそっとつまんだ――が。
 「……っ? 友奈、ちゃん……?」
 うっとりと目を閉じ、友奈のされるがままになっていた東郷が、そっと目を開いて友奈を見る。
 友奈はまるで貼りつけられたかのような笑顔のままで、東郷に問いかけた。

 「ねえ……東郷さん。今、私の指に当たってる、コレ……なあに?」
 
0286(9/24)2015/01/04(日) 01:30:40.78ID:+lFD6qlO
 
 「え……っ!?」
 突然の質問に東郷が、はっと我に返る。
 「そっ……それ、は……」
 友奈の質問の意味を理解するにつれて、東郷がふいっと目を伏せる。だが伏せた先にあるのはまさに、友奈に弄ばれている自分の
身体だった。
 「ほら……答えてくれないと、ここで終わりにしちゃおうかな……?」
 ほんの少し、意地悪な響きをともなわせて、友奈が胸に差し込んだ手をすうっと抜き取ろうとする。
 「ま、待って!」
 思わず上げた東郷の声に、友奈が「ん?」と言って手を止める。
 しばらくの間、東郷のはあっ、はあっという熱い吐息だけが、部室の中で繰り返される。
 「……そっ、それは、そのっ……私、のっ………」
 「私の……何?」
 必死に言葉を紡ぎだそうとする東郷に対し、友奈が先をうながす。
 ごくり、と唾を飲み込む音が鳴り、東郷が、じわりと涙をたたえた瞳でゆっくりと友奈を振り仰いだ。

 「……私の……乳首……ですっ……」

 その瞬間、友奈の指が東郷の突起をきゅいっ、とつまみ上げた。
 「ああんっ!!」
 まるで電撃のように体を貫いたその刺激に、東郷が背を弓なりにしてびくびくっ、と震えた。

 
0287(10/24)2015/01/04(日) 01:36:52.02ID:+lFD6qlO
 
      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇      
 
 (……私……何で友奈と、こんな事してるんだっけ……?)

 砂浜に押し倒した友奈の胸に顔をうずめ、舌で先端をちろちろと舐めまわしながら、夏凜はぼんやりと思った。
 「ああっ……んっ、夏凜ちゃん……気持ちいいよ……」
 だが、その思考は照りつける太陽の熱と、頭上から降り注ぐ友奈の、甘くとろけるような声によって、すぐに霧散させられて
しまう。
 (友奈……気持ちよくなってくれてるんだ……よかった)
 その言葉に、自分でも不思議なくらいの充足感を覚え、夏凜はふたたび愛撫へと没頭していく。
 口の中に唾液をためてぬめりをよくし、友奈の乳首に自らの舌をぬるり、とからませ、上下に何度もこすりつける。
 こりこりとしたその感触を十二分に味わいながら、時折ちゅうっ、と吸い上げると、「んんっ」と友奈が敏感に反応するのが
わかった。

 「ね……夏凜ちゃん」

 行為の合間に、友奈がそっと夏凜の頭に手を差し伸べて、言葉をかけてくる。
 「……はぁ……んっ、何? 友奈」
 それに気づいた夏凜が顔を上げる。目の前にある友奈の表情は、目元が下がり、頬も紅潮してはいるが、どことなく、まだ余裕を
残しているように感じられた。
 「私……もっともっと、夏凜ちゃんに気持ち良くしてもらいたいな……?」

 そう言って、友奈はそっと夏凜の手を取る。
 二人の手は、やがてゆっくりと、友奈の下腹部へと導かれていった。

 「!……っ、ゆっ、友奈……!?」

 あまりに出し抜けのその行為に、さすがに夏凜が自分を取り戻して、友奈に握られた手を止める。
 「ちょっ……ちょっと、待って! 友奈……何か、あんたおかしいんじゃない……?」
 言ってしまってから、友達にかける言葉としてはあまりに不穏当であった事に気づいて、夏凜はぐっと目をそらす。
 しかし友奈は気を悪くするそぶりも見せず、また、夏凜の手をそこから離そうともしないまま、にっこりと微笑んだ。
 「おかしい事なんて、何もないよ? ……私、夏凜ちゃんの事が大好きだから、もっともっと、夏凜ちゃんと仲良くなりたいん
  だもん」
 そして、少し身を起こすと、胸の上の夏凜の顔を引き寄せ、優しく唇を重ねてきた。
 「ふむ……ふぅぅん……」
 はむはむと、唇を甘噛みされる気持ちよさに、夏凜の心が蕩かされてゆく。

 (……ああ、そうだ。私、さっきもこうやって……)

 キスをされて戸惑っているところを、まるで操られるように友奈に引き倒されてしまったのだと、夏凜は思い出した。
 
0288(11/24)2015/01/04(日) 01:44:17.77ID:+lFD6qlO
 
 夏凜の手が、おそるおそる、友奈の『そこ』に触れる。
 「う……ん」
 ひたり、と指先が触れた瞬間、友奈がくぐもった声を上げるのを聞いて、夏凜は思わずぱっと手を離してしまった。
 「あっ、ごっ、ごめん、友奈……」
 「ん……ううん、大丈夫だから。お願い、続けて……夏凜ちゃん」
 ドキドキという鼓動が、必要以上にうるさく聞こえてくる。まるで心臓が、耳のすぐそばにあるみたいに。
 友奈に促され、夏凜は再びそろそろと友奈の身体に手を這わせる。もう一度触れたその部分は、リアルな柔らかさをもって、
夏凜に応えた。
 指先でつつう、となぞると、その微妙なふくらみが伝わってくる。そっと手の平で包むようにすると、内側から、ほわっとした
体温が感じられた。
 「夏凜ちゃんにさわられるの、気持ちいいな……えへへ」
 「……っ、バカね……何言ってんのよ」
 若干照れたように友奈が笑う。それを見た夏凜が、ますます顔を赤らめてしまう。
 口をつぐんだまま、照れ隠しのように夏凜が手を動かす。外側の肉丘を上下に撫でまわしていた指が、やがてその中心の割れ目に
さしかかると、夏凜は無言のまま、もう一度友奈の顔をうかがった。
 こくん、と友奈がうなずいたのを見て取り、夏凜は意を決したように、指先の力を徐々に、徐々に増していく。
 くにゅっ、という感触と共に、友奈の入り口が開き、夏凜の指を優しく迎え入れた。
 「んっ……!」
 詰まったような声を上げる友奈には、しかし構わず、夏凜はさらに指を動かす。つぷぷ、とわずかな水気を含んだ摩擦音を立てて、
指は友奈の中へと飲み込まれていった。
 「……っ、はぁっ……入った、わよ……大丈夫なの?」
 いつの間にか呼吸を止めていた事に気づいた夏凜がひとつ、息を吐き、友奈を気遣って訊ねる。
 「うん……平気」
 友奈は微笑みを絶やさないまま、少し首を起こして自分の下半身へと視線を向ける。
 「わぁ……私の身体の中に、今、夏凜ちゃんが入ってるんだ……なんか、不思議だね……」
 「い、いちいちそういう事言うんじゃないわよ、もう……それで、えっと……」
 「うん……いいよ。指、動かしてみて……?」
 友奈の赦しを得て、夏凜がじわじわと指を曲げる。友奈の内側はぬるり、と湿っており、曲げた指が濡れていく感触があった。
 完全に曲げきった指を、またゆっくりと伸ばし、さらにほんの少しずつ、くちゅ、くちゅと前後に動かす。
 「はっ……はぁっ……」
 ひとつひとつの動作が、指を、手を、腕を通じて、夏凜の体温を昂らせていく。
 体の火照りはやがて頭にまで達し、知らず知らずのうちに、夏凜の思考力を鈍らせてゆく。

 「いいっ……いいよぉっ、夏凜ちゃん……。もっと、もっとっ……」

 繰り返される友奈の言葉とかすかな水音だけをバックに、誰も見る者のない砂浜で、夏凜はただひたすら、熱い肉壁をこすり続けた。
 
0289(12/24)2015/01/04(日) 01:51:22.62ID:+lFD6qlO
 
      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇      
 
 「ゆっ、友奈ちゃんっ……ダメよ、そんなところっ……!」

 東郷の声が、羞恥に震える。
 「ダメ? どうして?」
 きょとんとした顔で、無邪気に友奈が答える。

 ――スカートをまくりあげ、下着を降ろして膝を開かせた、東郷の下半身に顔を寄せたままで。

 「だって……そんなところ、汚いわ……」
 「東郷さんの身体に汚いところなんてないよ」
 そう言うと、友奈は舌を伸ばし、東郷の秘所をついっ、と舐める。
 「ひゃうっ!」
 軽く触れられただけにも関わらず、強烈な刺激がその部分に走り、東郷を痺れさせる。
 友奈はさらにぐぐっと顔を近づけると、ぴちゃ、ぺちゃ、という音を立てて舌を上下左右に動かし、東郷の柔らかな陰唇を
ねぶり回してきた。
 「んん……東郷さんのここ、汗の味がする……しょっぱくて、おいしい……。周りの毛も、ふわふわしてて、気持ちいいな……」
 「………ッ!!」
 友奈の微に入り細をうがつ描写に、東郷は顔から火が出る思いになり、両手で顔を覆ってしまう。もうこれ以上、友奈の顔を
見ることも、友奈に自分の顔を見られることも、耐えられそうになかった。
 「どうしたの? 東郷さん」
 それに気づいた友奈が、ふと愛撫を中断し、上目づかいで東郷を見上げる。
 「……ゆっ、友奈、ちゃんっ……。私、もう……恥ずかしすぎて、死んじゃう……」
 顔を隠したまま、蚊の鳴くような声で東郷がそうつぶやいた。
 
0290(13/24)2015/01/04(日) 02:01:39.28ID:+lFD6qlO
 
 友奈は、そんな東郷の様子をしばらく無言で観察し続けていたが、やがて「……ふふっ」と笑うと、ゆっくりと立ち上がる。
 そして、東郷が顔に当てている両手に、そっと自分の手を重ね、ゆっくりと開かせてゆく。
 「……あ、ああ……」
 その下から現れた東郷の、今にも崩れてしまいそうな蕩け顔に向けて、友奈はとびきりの甘い声で囁いた。

 「……恥ずかしがってる東郷さんの顔、もっと見せて?」
 
 「っ!」

 その一言に、もはや脳までぐずぐずに溶かされてしまった東郷は、今やただ、とろんとした目つきで、目の前の友奈の瞳を見つめる
事しかできなくなってしまった。
 視線はそのままに、友奈は手を下へと伸ばし、東郷のナカをぐちょぐちょとかき回す。すでに熱く濡れそぼっていたその部分は、
友奈の指を二本、三本と難なく受け入れていった。
 「あっ、あぅ、あふぅっ、友奈ちゃんっ、友奈ちゃんっ……」
 ただうわごとのように、半開きの口から涎まじりに、愛しい人の名を呼び続ける東郷。
 その身も心も、完全に友奈に操られてしまったかのように。
 その熱の高まりが、頂天へと達しそうになった、その瞬間。
 友奈が一斉に、東郷に差し込んでいる指を曲げ、東郷のもっとも感じる部分をぞぞぞっ、とこすり上げた。

 「あああっ!!」

 びしゃあっ、と股間が熱い液体に塗れてしまうのを感じつつ、東郷は絶頂を迎えた。
 
0291(14/24)2015/01/04(日) 02:15:30.09ID:+lFD6qlO
 
 「……はぁ……はぁぁ……」

 ぐったりと、車いすの背もたれに体を預け、東郷が荒い息をつく。
 そんな東郷の身体を、友奈が優しくなでまわした。
 「かわいかったよ、東郷さん……」
 耳元でささやく友奈の声は相変わらず甘やかで心地よく、東郷の内側にしっとりと染み込んでいく。
 だが、その手が再び下半身へと差し掛かった時、東郷はぐぐっ、と薄目を開けて、友奈に懇願するような顔を向けた。
 「まっ、待って、友奈ちゃん……もう、これ以上は本当に……」
 「恥ずかしい?」
 友奈に先回りされた東郷が、無言でこくこくとうなずく。
 「恥ずかしすぎて、ガマンできない?」
 重ねて問われ、また首を縦にふる。
 「そうかー……それじゃあ」
 一瞬、何かを考えるような素振りを見せてから、意味ありげな笑顔を浮かべた友奈は、
 「もっと恥ずかしい事してる人たち、呼んじゃおっか?」
 と言い、すうっ、と右手をゆっくりと頭上へ掲げた。
 「……え?」
 その言葉の意味が理解できず、ぽかん、としている東郷。だが、次の瞬間、その目の前で――

 「……ああっ! 夏凜ちゃんっ、気持ちいいよぉ、夏凜ちゃんっ!」
 「はっ、はっ、友奈、友奈っ、私もっ……!」

 部室の床に、一糸まとわぬ姿で互いの秘所をこすり合わせ、快楽を貪っている夏凜と――友奈の姿が現れた。
 
0292(15/24)2015/01/04(日) 02:25:24.76ID:+lFD6qlO
 
 「!? なっ……えっ……!?」

 夏凜の目が、驚きに大きく見開かれる。
 そこはつい一瞬前まで、自分と友奈が戯れていたはずの砂浜ではなく、見慣れた勇者部の部室。
 そして自分と友奈の営みを見つめているのは、(なぜか)シャツをはだけさせ、下半身を露出させた東郷と――

 「ゆ……友、奈……?」

 寄り添うようにして立ち、口元に薄く微笑みをたたえた――友奈、だった。
 「友奈が……もう、一人……?」
 思わず夏凜は、自分が組み敷いている相手をばっ、と見下ろす。
 「どうしたのぉ……? 夏凜ちゃん……」
 しかし、そこにいるのもまた、間違いなく友奈だった。
 突然の出来事に、腰を動かすのを中断してしまった夏凜に向けて、ほんの少しだけ、不満そうな顔をしている。
 「だ、だって、そこに、東郷と……ゆ、友奈が……」
 ぷるぷると震える指で夏凜が二人を指さす。しかし友奈はちらり、とそちらを一瞥しただけで、気にも留めない様子で
 「……そんなの、気にしなくて平気だよ、夏凜ちゃん」
 と、夏凜に向けて微笑みかけた。
 「へ、平気って……んっ!」
 思わず何かを言い返そうとする夏凜。だが、その言葉は、友奈がくいっ、と押し付けてきた腰の柔らかさにより中断されてしまう。
 「それなら……ほら、東郷さんに、見せてあげよ? 私たちが、すっごく仲良しさんになれたところ……」
 誘うような目つきで、挑発的な口調で、友奈が夏凜に訴えかけてくる。その間も、二人の秘所はくちゅくちゅと熱っぽい音を立てて
こすり合わされ続けたままだ。
 「あっ、んっ、ダメ、友奈っ……」
 それに呼応するかのように、夏凜もまた、知らず知らずのうちに腰を振り始めてしまっていた。大きく広げた互いの脚を絡み
あわせるようにして、下半身をぶつけあう。その行為が、夏凜の非現実感をよりいっそう煽り立て、周囲の状況に対する違和感までも
打ち消してしまうかのように感じられた。
 (……ああ……本当に、私、どうして友奈とこんな事……。しかも、東郷が、目の前にいるっていうのに……)
 ぼうっとした頭で、わずかに残った思考にしがみつきながら、夏凜はちらり、と東郷の方を見やる。
 だが、そこにあったのは、東郷の非難や軽蔑の色をはらんだ視線ではなく――
 
0293(16/24)2015/01/04(日) 02:31:28.49ID:+lFD6qlO
 
 「はっ、はひぃっ、らめっ、らめです、友奈ひゃん……」

 こちらの事など目に入らないまま、目の前に屈みこんだ友奈の愛撫に、呂律のまわらない声で悦ぶ東郷の姿だった。
 「うふふ……何がダメなの? 東郷さん」
 「ら……らってぇ……、目の前に、夏凜ひゃんと、友奈ひゃんがいるのにぃ……こんな、こんな恥じゅかしぃのぉ……」
 「けど、それが気持ちいいんでしょ? 東郷さんは、恥ずかしい所を見られるのが好きな、変態さんだもんね?」
 「しょんな、しょんな事ぉ……ひうっ!」
 必死で抗う東郷に対し、友奈が股間のふくらみをちゅぅぅっ、と唇で吸い上げる。
 「ああ……そこっ、そこちゅーちゅーしちゃ、らめれすぅ……」
 「ちゃんと言って? 東郷さんは、お友達に見られながらおまんことクリトリスぺろぺろされて気持ちよくなっちゃう変態さんです、
  って」
 「あぁ……はいっ、い、言いまひゅぅ……わたしは、東郷美森は、大親友の友奈ちゃんに、おまんこ、と、く……クリトリスを、
  ぺろぺろ、ちゅぱちゅぱってされて、感じちゃってる、ヘンタイですぅ……。それで、それを、お友達の夏凜ちゃんに見せて
  喜んでる、本当のヘンタイさんなんですぅぅ……」
 「はい、よく言えたね♪ ごほうびの、奥ぺろぺろしてあげる」
 「んひぃぃっ!?」
 すでに完全に友奈に隷属してしまった東郷が、友奈がひときわ奥までずぶぶ、と挿入した舌によって、またしても達してしまうのを、
夏凜は何の感慨もなく、ただぼんやりと見つめていた。

 (ああ、そっか……)

 ぱちゅん、ぱちゅんと友奈に向けて、腰を打ちつけながら夏凜は思う。
 (東郷も、きっと私と同じで、友奈に……)
 友奈の言葉に魅せられ、操られてしまっているのだろう、と。
 
0294(17/24)2015/01/04(日) 02:42:29.52ID:+lFD6qlO
 
 「んっ、んっ、いいよぉ、夏凜ちゃん……もっと、もっと強くっ……」
 そうせがむ友奈の声が、夏凜の脳をさらにぐらぐらと揺さぶる。その言葉に反発することは出来ず、夏凜は体勢を整えなおすと、
さらに激しく友奈と自分の肉丘をぶつけ合わせた。
 「あっ、うぅんっ、んはぁっ……!」
 互いの分泌物によりにゅるにゅるとぬめるそこが、夏凜に未知の快感を送り込んでくる。その快感が高まれば高まるほど、体は
より強い刺激を求め、無意識のうちにかくかくと腰を動かしてしまう。
 (……でも、そんな事、もう関係ないわよね……)

 薄れかけた意識で、夏凜はそう思う。
 ――熱い体温を伴った、体の交わりが、こんなにも心地よく、幸せで、安心するものだなんて知らなかった。
 それも、自分の事を、好きだと言ってくれた相手との、そして――

 自分もまた、好ましく思っていた人との、交接が。

 「夏凜ちゃんっ……私、もう限界だよっ……夏凜ちゃんも、夏凜ちゃんも、一緒に……」
 「ええ……いつでも一緒よ、一緒に行きましょ、友奈……」
 きゅっ、と指を組み合わせて片手を握りながら、夏凜が友奈にささやく。その響きはどこまでも親しげで、甘えに満ちたもの
だった。
 そして今までよりもいっそうペースを上げて、二人は腰を重ねる。その中心部からはぷしゅっ、ぷしゅっと間欠的に秘蜜が
あふれだし、終わりが近い事を告げていた。

 「友奈っ、友奈っ、一緒に、ずっと、いっしょに……っ!!」

 涙と嗚咽の混じった声でむせびながら、夏凜はその体をめいっぱい反らせ、陰唇と陰唇で熱烈なキスを交わす。
 強くかみ合う柔肉の感触を確かに感じながら、夏凜はびくびくっ、と体を痙攣させ、終局へと導かれたのだった。
 
0295(18/24)2015/01/04(日) 02:48:20.25ID:+lFD6qlO
 
 「……あ……はぁ……ぁ…」
 「……んっ、ふぅ…っ、……ふぅぅ……」

 ぐったりと両手を投げ出し、はだけさせたままの胸をゆっくりと揺らしながら呼吸をする東郷。
 床にごろり、と横向きに寝そべって、小さくあえぐ夏凜。
 もはや精根尽き果てた彼女たちに、それぞれの『友奈』が優しくささやく。
 「ほら……東郷さん。まだまだ物足りないよね? 東郷さんがお願いするなら、私、何だってしてあげられるよ……?」
 「ねえ、起きて……夏凜ちゃん。もっともっと、私といっぱい、仲良くなろうよ……ね?」
 その声音はあくまでも甘く、耳から心へと、いともたやすく侵入してくる。
 まるでどろりとべたつき、獲物を誘う、甘い粘液のように。
 だが。

 『私たち……二人だけの世界で』

 「……!」

 その言葉を聞いた瞬間。出し抜けに、東郷と夏凜の意識が覚醒する。
 
0296(19/24)2015/01/04(日) 02:52:08.15ID:+lFD6qlO
 
 「……違う……!」

 よろよろと、車いすの上で身を起こしながら、東郷が拒絶する。

 「そうよ……あのバカが、そんな気の利いたセリフ、言うわけがないじゃないの……!」

 夏凜もまた、四肢に力を込めて膝をつき、ゆっくりと立ち上がる。
 「貴女は……貴女たちは、本物の友奈ちゃんとは違う!」
 肩に添えられていた友奈の手をばっ、と振りほどいて、東郷はざっ、と友奈から離れる。その隣に、一瞬で距離を詰めた夏凜が
立ち、二人の友奈を睨みつける。
 「そうよ! 本物のあいつは、もっとバカっぽくて、能天気で、底抜けのお人好しで……でも!」
 ビシッ、と突きつけた右手には、いつの間にか彼女の勇者としての力の象徴――刀が握られていた。
 「私たちみんなを……二人だけなんかじゃない、全ての人を笑顔にさせる、太陽みたいな子なんだから!」

 その時。

 (………うおおおおおおおおおっ!!)

 遥か、遥か頭上の彼方。
 部室の天井を通り抜けた遠い遠いどこかから、天を震わせ、地面を揺さぶるような雄叫びが、東郷と夏凜の二人に届いた。

 「東郷っ!」
 「わかっているわ!」
 
 それを耳にした瞬間、夏凜が東郷の名を呼ぶ。
 呼ばれるまでもなく、すでに勇者としての装備に身を包んでいた東郷が手にしたハンドガンを天井に向け、ガァン! と発射した。
 その瞬間、偽りの世界の糸は綻び、崩れ、二人の眼前に現れたのは――

      ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇      
 
0297(20/24)2015/01/04(日) 02:57:09.14ID:+lFD6qlO
 
 「……勇者! キィィィィィックッ!!」

 友奈の渾身の一撃が、遥かな天の高みからまっすぐにバーテックスに向けて振り下ろされる。
 ズガァン! と中心部を一直線に貫いたその蹴りにより球体は崩壊し、その中から御霊が姿を現す。
 「出たわ! 御霊よ!」
 倒れてしまったままの東郷と夏凜を守っていた風が叫ぶ。しかし。
 「ああっ! でも、お姉ちゃん……!」
 同じく二人のそばに立ち、ワイヤーで結界を敷いていた樹がそれを指さす。
 「……体が再生してる!? くそっ、ここからじゃ、再生する前に攻撃が届かない……!」
 友奈もまた、全力の攻撃を加えた直後であり、もう一度仕掛けるにはわずかに呼吸を整える間が必要だった。バーテックスの
再生速度はそれよりはるかに早く、瞬く間に御霊は復活した球体で覆い隠されてゆく。
 「くそっ、間に合わない……!」
 その場から一気に跳び、攻撃を加えようとした風の目の前で、御霊が完全に包まれてしまう――その寸前。

 「!?」
 ガキュン! という銃撃音とともに、わずかに露出していた御霊の一点が、正確に撃ち抜かれ、破壊された。
 「……まさか!」
 風が空中でバッ、と振り返ると、先ほどまでいた地点で、銃を構えているのは――

 「――東郷!!」

 目覚めた東郷が、むき出しの御霊に即座に反応し、すぐさま狙撃を行ったのだった。
 そして。

 「……なめんじゃ、ないわよぉぉっ!!」

 再生が止まり、再びその姿を現した御霊を前に、今度は風の頭上から、また別の声が聞こえてくる。
 そちらを仰げば、両手の刀を大振りに構え、今にも斬りかかろうとしている夏凜の姿があった。
 「夏凜も! 無事だったのね!」
 喜ぶ風に一瞬だけ目くばせで応えてから、夏凜は全身の力で刀を振り抜き、御霊をズシャァっ、と斬り抜ける。


 両断された御霊は瞬時に崩壊し、色鮮やかな光の粒へとその身を変えて、天へと還っていくのだった――。

 
0298(21/24)2015/01/04(日) 03:09:04.24ID:+lFD6qlO
 
 「……いやもー、一時はどうなる事かと思ったわよ、まったく」

 戦いすんで日が暮れて。樹海から解放された勇者部の面々は、社のある学校の屋上へと転送され、ようやく一息ついたところだった。
 「すみません、ふがいない所をお見せいたしまして……」
 東郷がすまなそうにぺこり、と頭を下げる。
 一方の夏凜はと言えば何も言わず、「ふん」とそっぽを向いてしまったままだ。
 「東郷さんも夏凜ちゃんも、ホントにケガしてない?」
 「ええ、大丈夫よ、友奈ちゃん」
 「……別に、平気よ、私も」
 「そっか! みんな無事で何よりだー!」
 友奈が、満面の笑顔を見せて心の底から喜ぶ。

 「………」

 その笑顔を、東郷と夏凜がそれぞれの想いを抱きながら、そっと見つめていた。
 それに気づいた友奈が、きょとん、とした表情に変わる。
 「ん? どうしたの、二人とも。私の顔、何かついてるかな?」
 「! う、うう、うっさいわね、バカ友奈! 相変わらずのーてんきなアホ面だなって思ってただけよ!」
 「えーっ! 何それー、ひどいよー、夏凜ちゃん!」
 「ふふ……そうね、今日ばかりは、夏凜ちゃんの言う通りかもしれないわ」
 「あーん、東郷さんまで―!」 
 
0299(22/24)2015/01/04(日) 03:12:29.87ID:+lFD6qlO
 
 「……なんだか、東郷先輩だけじゃなく、夏凜さんまで友奈さんと仲良しになっちゃったみたいだね」
 「うんうん、仲良きことは美しきかな……ん?」
 三人の騒ぎを見守っていた樹と風。と、その時、風のスマホにメールの着信通知が届いた。
 「んーと……何なに? ……はー、へー、そういう事だったんだー」
 「どうしたの? お姉ちゃん」
 風がやたらとうなずいたり感心しているのに気づいた樹が、ひょこ、とその手元のスマホを覗き込む。それにつられ、他の三人も
集まってきた。
 「大赦から、今回の敵についてのデータが回ってきたのよ……今更来ても遅いってのにねぇ、まったく」
 と、風が苦笑交じりにメールの文面を見せる。
 「やっぱり、今まで遭遇したことのない新しいバーテックスで……特性は、『体表の巨大な目玉で敵を睨みつけ、一種の催眠
  状態に陥れる』だってさ」
 「ふうーん」
 風が読み上げるのにあわせ、友奈と樹が素直に感心する。

 が、東郷と夏凜だけは、
 「………」
 なぜか、その場でうつむき、顔を赤らめて黙っているだけであった。
 
0300(23/24)2015/01/04(日) 03:18:36.06ID:+lFD6qlO
 
 「あ、まだ続きがあるわね……。『催眠にかかった勇者の復帰を妨げるため、意識を失っている間は、その人間のもっとも強い
  願望を、過度に増幅した形の幻覚を見せられる』らしい。……ま、要するに、あのバーテックスに眠らされると、自分にとって
  チョー都合のいい夢をみて、そっから戻ってこられなくなる、って事かしらね」
 「へえ、いい夢かー。何だかちょっと、興味あるかも」
 友奈が無邪気に反応する。
 「あ、そう言えば東郷さんと夏凜ちゃんは、実際に眠っちゃってたんだよね? ね、二人は何か、夢見てた?」

 「!!!」

 友奈のその質問に、二人はぎくぎくっ、と過剰に反応する。
 「ねえねえ、夏凜ちゃんってばー……ん?」
 ととと、と夏凜の前に回り込む友奈。が、その様子がどうも尋常ではない事に気づいて首をかしげる。
 「…………………っ」
 「か、夏凜ちゃん……?」
 スカートをぎゅっとつまんで唇を強くかみ、目元にはじんわりと涙までたたえている夏凜を見て、友奈は心配そうに声をかける。
 が、次の瞬間。

 「……ぬぅああああああ―――っっ!!」

 と、一声叫んだかと思うと、夏凜はその場からばひゅん、と猛ダッシュで校舎へ続く扉を開け、だだだだだ、と逃げ去って
しまった。
 「ど……どうしたんでしょう、夏凜さん……」
 「……さあ……」
 その場に残された風と樹が、ぽかん、とした表情でそれを見送った。
 
0301(24/24)2015/01/04(日) 03:24:00.61ID:+lFD6qlO
 
 (……ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ……)

 その陰で一人、誰にも気づかれぬよう、こっそりと含み笑いを浮かべる者もいた。
 言わずもがな、東郷である。
 (忘れないようにしないと、忘れないようにしないと、忘れないようにしないと……)
 口元で一人ぶつぶつとつぶやきながら、東郷は全身の感覚と記憶を総動員して、先ほどまでの夢の内容を体に刻み込もうと集中
していた。
 「……ん? どうしたの、東郷さん」
 車いすに座ったまま妖しい笑い声を立てて、何やらひとり言を口ずさんでいる東郷に友奈が気づく。
 その声に東郷が「!」と反応し、友奈の方をバッと振り向いて、鼻息を荒くしながら、これ以上ない程のいい笑顔で答えた。

 「友奈ちゃん! 私……忘れたくないよ!」

 「…………何を?」
 わけがわからぬままの友奈を差し置いて、東郷は再び、自分だけの世界へと没入していってしまった。


 ――ともあれ。
 こうして今日も、勇者部の活躍により、世界の平和と乙女の秘密は、無事に守られたのであった。

 
0302(後書き)2015/01/04(日) 03:25:04.04ID:+lFD6qlO
以上、お目汚し失礼いたしました。
楽しんでいただければ幸いです。
0305名無しさん@ピンキー2015/01/06(火) 05:48:06.20ID:vjn/YOtV
しぇしぇしぇのしぇ〜は置いといて↓
あけおめ!お正月早々にとんでもないことやらかした結果
奇跡が起きた!
ワイルドだろぉ

http://Gn2ch.net/s11/0106miki.jpg

Gをsnに変更する
0307名無しさん@ピンキー2015/03/10(火) 00:20:48.50ID:v8rG0PqX
>>2の保管庫ってなくなってる?
初めてこのスレ来たので過去作品を覗いてみたいんだが・・・
0308名無しさん@ピンキー2015/05/19(火) 23:11:11.89ID:xDgsj+LS
お久しゅうございます。
おねロリを書きましたので投下いたします。
長いので他サイトを使用することをお許しください
ttp://www.titleblank.com/page/555b44eee4b02bc3989cc2d2?libraryId=4f339952e4b005b7bed47a0b
0309名無しさん@ピンキー2015/05/20(水) 01:06:14.80ID:gjUjGHGn


……アーイイ…遥かに良いです…
ロリ攻めちょおいい GJ!
0311名無しさん@ピンキー2015/06/26(金) 22:54:41.05ID:+cO3/uDw
お久しぶりです。撫子寮の人です。
今回は久々に自作を投下します。賑やかしにでもなれば。
0312撫子寮にて。〜私と先輩のバーリ・トゥード〜2015/06/26(金) 22:57:29.12ID:+cO3/uDw
 私の先輩――篠宮愛莉は、ここ撫子女学園ではいわゆる問題児のレッテルを貼られている。
 今まで無断欠席した授業は数知れず。教師の言う事は聞かず、『なんか、面白そうだから』というだけの理由で突拍子もない事をやりだすのもしばしばだ。
 ――例えば二ヶ月前の撫子女学園文化祭、通称『撫子祭』では、喫茶店の裏でクラスメイトを牛耳って、金融をやっていたらしい。
 詳しいことは知らないし知りたくもないが、文字通り巨万の利益を巡って風紀委員を相手に大立ち回りを演じたという。何と言うか、自由な人だと思う。
 ……だのに、恐ろしく成績が良く、生徒には訳のわからない人気がある。教師にとってみれば、こんなに面倒な生徒はいないだろう。
 対して、私こと櫻井初穂は至って平凡な人間だ。
 真面目な優等生と評される事もあるけれど、私としては、他に何も取り柄が無いから真面目にしなきゃいけないだけだと言いたい。先輩のように、遊んでいても成績が良いのは一種の才能だ。
 逆に真面目にさえしていれば、そこそこの成績を取ることはできる。別に特別な事じゃない。
 だから今年の撫子寮の部屋替えの時、まるでお目付役のように先輩と同室にされてしまった事も。
 それ以来先輩が何かしでかす度に、教師たちが『頼むよ櫻井』と私を拝んでくるのも、私に言わせればお門違いというものだ。
 先輩の暴走は言ってしまえば脱線した機関車のようなもので、ただ真面目なだけの人間に止められるはずが無い。
 ……そう。先輩が本気になってしまえば、私には止めることなんかできない。
 分かっていた、はずだったのだけど。
0314撫子寮の人2015/06/26(金) 23:23:03.09ID:ZblvS0zR
すみません……
投下しようとしたのですが、NGワードに引っかかったらしく規制されてしまいました
原因を調べますので、投下は明日以降とさせて下さい
0317名無しさん@ピンキー2015/06/29(月) 03:37:29.48ID:c42bCUYl
>>316

エロもさることながら先輩ちゃん後輩ちゃんの駆け引きのじゃれあいがいいね!
過去作品も読んでみるよ
0319名無しさん@ピンキー2015/08/18(火) 20:05:05.40ID:eWAqaPMM
保守も兼ねて作品を投下します。
分割が面倒だったので例によって外部サイトを使うことをお許しください。
百合ハメ撮りです。
ttp://www.titleblank.com/page/55d312e4e4b02bc3989cc2d8?libraryId=4f339952e4b005b7bed47a0b
0320名無しさん@ピンキー2015/09/05(土) 23:53:10.07ID:1YCqAzlY
>>319
ワクワクしながら読み耽ってしまった
GJ

Part1ということは続きを期待してもよいのか
0321名無しさん@ピンキー2015/12/02(水) 23:30:29.73ID:Kcip9Pas
撫子寮の人です。
今書いてる百合SSがちょっと頓挫してるので、代わりに短いのを書こうと思います。
という訳でシチュエーション募集。できれば一行で済むようなもの。

例)「主が強気な主従百合」「ファンタジーな学園モノ」「異種族間百合シリアス多め」

グロイのやレイプものは恐らく可愛そうになって書けなくなっちゃうので、それ以外で悪しからずご了承ください。
何をどの程度拾えるかは保障いたしかねます。たくさん来たら電波が受信できたもので。想像と違うものが来ても泣かない。
0324名無しさん@ピンキー2015/12/25(金) 15:33:42.05ID:DKfTFwRL
撫子寮の人です
例のシチュエーション募集SSが何とか仕上がったので投下
今度は分割投稿できるかな?
0325結婚まで何マイル? 12015/12/25(金) 15:36:34.14ID:DKfTFwRL
 1/.

 かぐわしい匂いで、目が覚めた。
「ん……っ、くぅ」
 それが何の匂いなのか考える暇もなく、私の頭を鈍器で殴られたような痛みが襲う。思わず顔をしかめて、ベッドの中で丸まるようにして頭を押さえた。
 完っ全に二日酔い。いや、ひょっとしたら三日酔いかも。
「あっ……たま、いたぁ……」
 原因は分かってる。昨日、教授との飲みにしこたま付き合わされたからだ。卒業論文に関する質疑応答を肴に4軒もはしごすれば、無理もない話である。
 まだ半分眠っている頭に、徐々にエンジンをかけていく。よし、現状認識といこうか。
 私、海道由利。このマンションから5分の大学に通う、花の女子大生――を、卒業しかけの4年生だ。現在、就活を無事に終えて卒業論文を執筆中。教授にダメ出しをされては飲み屋に拉致される22歳。昨晩解放されたのが3時半で、呑んだ量は――えぇと、いっぱい。
 思わず頭を抱えた――今日がゼミ休みの日で本当に良かった。これは今日いっぱい家でゆっくりしてないと明日から動けそうにない。
 ちゅんちゅんと外では雀が忙しく鳴いていた。台所からはとんとんと何かを刻む音。それに混ざって、いい匂いが鼻をくすぐる。多分、味噌汁の匂い。
 味噌汁の匂いで起きる朝は幸せだ。何故ならばそれは自分のために食事を作ってくれる誰かがいるという事であり、自分が孤独でない証であるからして――
「……んん?」
 そこまで考え、私は首を捻った。何だか重要なことを見落としている気がしたのだ。けれどその重要な何かに気づく前に、がちゃりと寝室のドアが開いて一人の女性が顔を覗かせた。
「あっ、由利さん。おはようございますっ」
 愛らしい笑みだった。腰まで垂らした髪をシュシュで束ね、ピンクのエプロンに身を包んだ様は、まるで亭主を起こしに来た新妻といった感じで。
「朝食、ちょうど準備できたところですよ。ふふ、今日のは自信作です」
「ん、あぁ……」
「朝は和食が良いんですよね?」
「うん……ん」
 女性と一言二言会話を交わすうち、だんだんと頭が冴えてきた。私はこの女性を知っている。それも、とてもよく。
 うん、なるほど。……なるほどなぁ。
 納得と同時に、芋づる式にとでも言おうか、違和感の正体もはっきりした。何だか頭痛が酷くなってきたような気がして、私は頭を押さえる。
 そんな私の心情など知る由もなく、彼女は中へと足を進めるとカーテンを開けた。
 爽やかな日差しが部屋へ差し込む。見事な快晴、清清しい青空。――けれども何だか、今日も一波乱起きそうな予感。
「今日はとってもいい天気ですよ! 雲ひとつなくって、空がとっても高くって、絶好のお洗濯日和って感じで」
 だから、と。
 前置いて、彼女は振り返った。肩まで垂らしたポニーテールがふわりと揺れる。
 そのまま彼女は微笑んで、まるで夢見る乙女の風情で言った。
「結婚しましょう、由利さんっ」
 ――彼女の名前は、崎守葵。
 私の大学の一年後輩で、ついでにルームメイトでも何でもない子で。
 あまつさえ私の記憶が正しければ、これが今年に入って65回目の求婚だった。
0326結婚まで何マイル? 22015/12/25(金) 15:38:12.11ID:DKfTFwRL
 今日の朝食は、葵の言った通り純和食だった。鮭の塩焼きとシジミの味噌汁、ごはんと出汁巻きと浅漬けが少し。
 朝一番に放たれた妄言をいつも通り受け流してリビングのテーブルにつくと、私は朝食をいただく事にした。
「……」
「〜〜〜♪」
 目の前には葵。向かい合う形で座る彼女の前に朝食はない。曰く、軽く食べてきたから平気らしいのだけど、食べる代わりに私の顔をじっと見つめるのはやめてほしい。
 それも、えらく上機嫌なのだ。何だか鼻歌でも歌いそうな感じ。料理を作るのが好きな人間は人が食べるところを見るのも含めて好きだというけれど、葵もその類だろうか。
「美味しいですか?」
「えぇ。この出汁巻き卵とか、私の好きな味だわ」
「じゃぁ結婚」
「しないわよ」
 葵の言葉をぴしゃりと切って、味噌汁を静かにすする。
 ――あ、このシジミの味噌汁、美味しい。
 アルコールでしこたま病んだ肝臓を癒してくれるような優しい味だ。塩味は控えめだけど、出汁がちゃんと効いてる。砂抜きがきちんとできているから、ジャリッとしてしまっていやな気分になることもない。
 そこまで考え、私は味とは別のところで渋面になった。……いや、いやいや。きちんとできていたらおかしい。シジミの砂抜きなんて、冬場だと4、5時間はかかる代物だ。そんな時間から仕込んできたのか。もしかして、この部屋にいたのか。
 そもそも、だ。
「……ねぇ、葵。そもそもあなた、どうやってこの部屋に入れたの?」
 昨日は泥酔して帰ったけど確かに鍵はしたはずだし、大家さんだって親族でもないこの子のために鍵を開けたりはしないだろう。
「あ、はい。合鍵持ってますから、私」
「……渡した覚え、ないんだけど?」
「この間一緒に飲んだ時に、由利さん先につぶれて寝ちゃったでしょう? その間に、鍵の型をちょこちょこっと」
「…………」
 ドン引きよ、私。
 空き巣だと思っていた犯人がストーカーだった時の気持ちを考えてもらえばいい。思わず背筋がゾッとするでしょう? いや、この子がストーカーじみてるなんてずっと前から分かっていたことだけど、改めて突き付けられると精神的に辛いものがある。
「由利さんが結婚してくれれば公認になりますから、些細なことですよっ」
「いや、結婚しないから。全然些細じゃないから。明るく言っても無駄だから」
 葵の妄言を軽く受け流し、私は鮭の塩焼きを摘む。このスルースキルが教授相手にも発揮できないだろうか、なんて思いながら。
 ――そう、結婚。
 葵は事あるごとに私に求婚する。アパートだろうがキャンパス内だろうが公道だろうが、お構いなしに。
『今日はいいお天気ですねっ!』
『私、占いによると今の姓が縁起が悪いみたいなんです!』
『由利さん最近人恋しくないですか? 奇遇ですね、私もなんです!』
 だから、つまり、それゆえに。
「結婚しましょう、って……そう言うけどね? 私もあなたも女同士じゃない。その情熱は男性に向けるべきだと思うんだけど」
「由利さん、その考えは古いですよ? 今はパートナーシップ条例で同性同士の事実婚が認められてますし、ips細胞を使えば子どもだってできる時代ですから。何も問題ありません!」
 それはもちろん、互いの同意があれば、の話だ――という言葉を、危ういところで飲み込んだ。言ってしまえば、じゃぁ同意してくださいということになる。結婚しましょう、へと一直線だ。
「それに……男の人は、怖いですから」
「……」
 その言葉に、思わず箸が止まった。
0327結婚まで何マイル? 32015/12/25(金) 15:40:46.84ID:DKfTFwRL
 葵が私にべったりなのは、それなりに訳がある。あれは一年ほど前の話だ。当時ゼミの後輩だった葵から、担当教授からセクハラを受けていると相談を受けた。
 とはいえ、そんなに露骨なものでもない。よく個人向けのメールが来て、食事に誘われるといった類のものだ。けれど教授が父親ほど年齢の離れた男であり、愛を囁くような内容で、断ると留年をほのめかされるような悪質なものだと話は別になる。
 あの時は大変だった。本人に抗議をしても効果がなかったから、わざわざ学長に直談判をしに行ったんだっけ。
 結局ちょっとしたニュースになって、学長は記者会見で頭を下げ、教授は免職となった。葵はと言えば担当教授が変わって講義に出られるようになり、私にえらい感謝していたのを覚えている。
『私っ……私、この事は忘れません! きっと恩返しをします!』
 いや、恩返して。助けてあげた鶴じゃあるまいし。そうは思ったのだけど、その日から葵はやたらと私の世話を焼くようになった。講義の合間に弁当を持って来たり、酔っぱらった私を迎えに来たり。
 そんなにしてくれなくてもいいよ、奥さんじゃないんだから――いつかそう言った。けれど葵は首を振り、大真面目にこう返したのだった。
『いいえ、由利さん。私、由利さんの奥さんになりたいんです』
 だから、結婚しましょう――と。後の常套句になるプロポーズの言葉を。
 とはいえ。大筋において納得できる、というだけで葵の行動は謎ばかりだ。一番分からないのは、その原動力。何が彼女を、そうまでして結婚させたがるのか。
「ねぇ、葵。あなた、私なんかのどこがいいの?」
 ずぼらだし、成績も並だし、不美人ではないけど顔もスタイルも良いというほどでもない。酒は好めど大抵潰れる、残念なタイプの酒飲みだ。
 対して、葵は傍から見ても美人と言って差し支えない。足はすらっとしていて長いし、細いけど出る所は出ている。誰にだって愛嬌を振りまくし、学内の人気だって悪くないのだ。
 私にお熱でなければ――その事実が周知でなければ、とっくに彼氏の一人や二人作っていただろう。あんなに連呼している結婚だって、不可能な話ではない。
 それもこれも、『相手が女』という前提のせいで無意味な仮定となってしまっているけれども。
 私の問いに、葵はきょとんとした顔で小首を傾げた。――こういう仕草が嫌味にならないのは、天性の素質だと思う。
「好きな所ですか? 全部ですけど?」
「いや、そういうのいいから。私は納得できる答えがほしいの」
「そうですねぇ……」
 んー、と目を瞑ってうなる。そのハミングのような響きは、『答えは決まっているけれども何と言ったものか迷っている』時のものだ。
 ややあって、葵は目を開けた。にやりと笑い、我が意を得たりとでも言わんばかりに、何故か若干ドヤ顔で。
「結婚してくれたら教えてあげます」
「――てい」
「あいたぁっ」
 そのまま箸を伸ばし、鼻を摘んでやった。何だそれ、本末転倒も良い所じゃない。
0328結婚まで何マイル? 42015/12/25(金) 15:42:50.77ID:DKfTFwRL
「愛は理屈じゃないんですよぅっ」
「はいはい、そうかもね。確かにあなた、全部本能で動いてる気がするし」
 何だか気が抜けてしまう。理屈じゃない、確かにその通り。なら、私が葵を理解しようとしても無駄ということだ。
「ごちそうさま。葵、あなた確か、一限目入ってたでしょう? 早く帰りなさい。刑法の大西教授、遅刻にはうるさいわよ」
「あ、はい。それじゃ、そろそろお暇しますね」
 葵はハンドバックを持って立ち上がった。そのまま帰るのかと思いきや、ドアに手を掛けた所で私の方を振り返る。
「部屋の隅に固めてあったプラスチック容器、ゴミの日だったので捨てておきました。コンビニ弁当ばっかりじゃ駄目ですよ? 冷蔵庫に作ってきた肉じゃが入れておきましたから、お昼はそれをチンして食べてくださいね?」
 いつの間に――というのは、聞くだけ野暮だ。
「あ、ありがとう」
「いえ、大したことじゃありません」
 葵は微笑を浮かべる。――あぁ、何も知らなければ天使の笑みだろうに、私はもうこの子の笑顔を純粋な目では見れない。
「私――いつか由利さんを、私なしにはいられないようにしてみせますから」
 そんな物騒な、犯罪予告めいた宣言を残し、ドアが閉まった。
「………………はぁ」
 私はと言えば、嵐が過ぎ去った部屋で溜息をつくしかない。良い子だとは思うし、尽くしてもらってる事には感謝もしているけれど、素直に喜べないのは何故だろう。
「だいたい、結婚結婚っていうけど……その前にお付き合いから始めるって言う選択肢はないのかしら」
 いや、だからといって付き合ったりもしないけれども。
 私は立ち上がり、食べ終わった食器を台所に持っていく。そのついでに何となく思い立って、冷蔵庫に入れてあるという肉じゃがを一口だけ摘んでみた。
「……美味しい」
 しっかり味が染みてて、冷めていても特に気にならない味になってる。じゃがいもに男爵じゃなくメークインを使っている辺り、煮崩れがなくて実に私好みだ。どうしてこう、あの子はそういう所で小技を効かせてくるのか。
「うーん、いかんいかん」
 いよいよ気を引き締める必要がありそうだ。しっかりしなさいよ、海道由利。
 あの子はさっき、自分なしにはいられないようにしてみせるといった。あれもまんざら冗談ではないのかもしれない。
 ――何せ。今こうしている間にも、胃袋は着々と掴まれつつあるのだから。
0329結婚まで何マイル? 52015/12/25(金) 15:46:46.31ID:DKfTFwRL
 2/.

 一事が万事、という言葉がある。
 私と葵の日常と言うのはつまり、大体においてこのようなものだった。顔を見合わせれば求婚、とりあえず求婚。違いといえば、日に日に微妙に増えていくバリエーションくらいのもので。
『結婚しましょう! 私に毎日お味噌汁作らせてください!』
 定番の逆パターンで攻めてみたり。
『結婚しよう! 何故ならば、愛しているから!』
 やたら芝居がかった動作でバラを投げてみたり。
『結婚ッ!』
 とりあえず叫んでみた模様。
 徐々にブーストがかかっていく葵の奇行をなだめすかしてごまかして、私の日々は過ぎていく。
 日常。うん、確かにそうだ。恐ろしいことに、私にとって論文を書いたり食事をしたり酒を飲むのと同じような比率で、この騒がしい闖入者への対処が日々のスケジュールとして機能していた。
 理由は幾つかある。一つは卒業要件単位を全て取得し終えて論文を書くだけの、ともすれば単調極まりない日々の中で、葵の存在が良いスパイスになっていたこと。
 もう一つは、葵が甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれるため、無下にできなくなってしまっていたこと。
 というか彼女の作る料理がべらぼうに美味しかったのだ。我ながらダメ人間だとは思うが仕方がない。人間の三つある欲求の内、一つを完全に満たしてくれるのだ。これを至福と呼ばずに何と呼ぼう。
 そんなこんなで、私のガードは日々順調に突き崩されていった。そんなに頻繁に来るなら、私も相応の対応をしなければ仁義にもとる。
 彼女用のクッションを買い、マグカップを買い、早朝に来て朝食の仕込みをするくらいなら泊って行った方が良いと寝具だとか歯ブラシなんかも常備して。
 ――あれ? 私、自分で外堀埋めて行ってない?
 そんな考えが頭をよぎって――いやいやと慌てて頭を振る。これはそう、仲が良い後輩への対応だ。お泊りくらい同性なら普通だし。むしろ異性でないからこそ、意識してないっていう証拠だし。
 誰に聞かれるでもないのに心の中の陪審員に弁明をする。それでも――あぁ、このままじゃいけないな。これから気を付けようだとか。そんな楽観的に物を考えていた。
 そう、つまりは私は、ある意味において平和ボケしていたのだ。――このままじゃ、だとか。これから、だとか。今までの関係がこの先ずっと続くと漠然と思っていた。
 だから。そうでなくなる可能性なんて、全然頭の隅にもなくって。
 葵とのそれまでの関係が唐突に終わりを告げた時も――全く、対処することができなかったのだ。

 ――突然。
 葵が、私の家に来なくなった。

 それは町がクリスマスのイルミネーションを飾り始め、にわかにキャンパスも浮つき始めた頃だった。
0330結婚まで何マイル? 62015/12/25(金) 15:51:36.05ID:DKfTFwRL
「……?」
 その日の朝起きた私は、味噌汁の匂いがしないことに気付いた。
 不思議に思った私は、その後10分かけて『自分で用意していないんだから当たり前』という、当たり前といえば当たり前過ぎる結論に達した。つまりその日、葵は来なかったのだ。
 珍しいこともあるものだと思いながら、その日は長い間使われなかった備蓄のカップ麺を久々に開けて朝食を取った。
 次の日も、そのまた次の日も葵は来なかった。――おかしい、と思い始めた。メールを送れど電話をかけれど反応はなく、すわ病気で倒れたかと気をもみ始めた。
 葵が来なくなって4日経った。週の半分も訪れないというのは、ここ1年間のデータからすると由々しき事態だった。
「崎守さんですか? 何か、実家に戻るって言ってましたけど……」
 大学で、葵の友人からそういう話を聞いた。葵の実家――確か、横浜のどこかって言ってたか。
 疑問の一部は解消した。けれど、それでもやっぱり引っかかる。あんなに甲斐甲斐しく私の世話を焼いていた葵が、連絡の一つも寄越さないなんて。
 私への熱が冷めたのか、ようやく女同士で結婚などありえないと悟ったのか――それなら良い。私が口を酸っぱくして諭し続けた甲斐があったというものだ。
 でも……あそこまで通い詰めて求婚し続けるという熱量が急に冷めるなんてことが、有りうるのだろうか?
 そこまで考えて、私は頭を抱える。ダメだ、さっぱり分からない。あの子が何を考えて、どんな行動をとっているのかなんて。
 結局の所、私は葵の事を何も知らないし、何も知ろうとしてこなかったのだ。だから私の呟きも、泣き言のような響きを帯びていく。口を開けば、お決まりの言葉が漏れ出してきて。
「ねぇ、葵……あなた、私なんかのどこが良いのよ」
 酒を煽ってそんな事をぼやいても、誰も答える相手はいない。
 久しぶりのコンビニ弁当は、まるで砂を噛んだように妙に味気なかった。


 そんな日が、何日か続いた。
 論文は一向に進まず、酒の量ばかりが増えていった。葵は一向に私の部屋に現われず、どうやら講義も欠席し続けているようだった。
 部屋にはコンビニ弁当の容器とカップ麺のカップが山積し、その横には缶チューハイとワンカップが積まれていく。それでも咎める者はいないから、やりたい放題になった。
 部屋が広い。台所が遠い。暖房をつけても、どこか寒々しさがぬぐい去れない。
 ……あぁ、そうだ。そろそろ認めざるを得ない。
 葵がいつだったか、自分なしにはいられないようにするといった。これがその計略の一部なら、見事と言うしかない。
 私は葵がいないとダメだ。
 正直言うと、部屋に押しかけられてたあの日々も嫌いじゃなかった。
 私なんかのどこがいいんだなんて。呟いただけで、結構幸せだった。
 ――だから。そろそろ、行動に移さなきゃいけない。
「論文の提出、3日ほど待ってください。やらなきゃいけないことができました。詳細は言えませんけど取り下げる気もありません。じゃないと、一生後悔するので」
 次の日朝一番に教授に頭を下げ、3日の猶予を勝ち取った私は、その足で長距離バスセンターへと向かった。
 行先は横浜。
 彼女が帰ったのだという、葵の実家へ。
0331結婚まで何マイル? 72015/12/25(金) 15:55:01.38ID:DKfTFwRL
/3.

 
 堅い座席に辟易しながら、揺られること5時間。
 途中、サービスエリアで15分の休憩。さらに眠れないことに悶々としながら過ごすこと7時間。
 なぜ私は飛行機を使わなかったのかと後悔する頃には、すっかり外には夜の帳が下りきっていた。
「……寒っ」
 私の住む町からだいぶ北上した為か、バスを降りた途端に切りつけるような夜気が私を襲う。思わずコートの襟元を合わせた――12月だからと、厚着をしてきて良かった。
 これでひとまず目的地に着いた。とはいえ、これからが大変だ。
 学生課に問い合わせても、防犯上の問題で正確な住所までは教えてもらえなかった。この広い横浜の中から、どうやって葵を見つけ出すか。
 それでも、やるしかないのだ。今日はもう遅いから宿を取るとして、残された期限は2日しかない。幸いにして崎守というのはありふれた名字ではないから、虱潰しでも何でもして葵を探し出さなくては。
 そう、静かに決意を固めて――
「――由利、さん?」
 固めた、のだけど。
 その瞬間、後ろから声をかけられた。
 振り返れば、そこには一人の女性が驚愕に目を丸くして立っている。……きっと私も同じような顔をしていたに違いない。
 私はその女性をよく知っていた。そりゃあ、もこもこのダウンとイヤーマッフルで完全防備していたけれど、まさか探しに来た相手を間違えるはずも無い。
「由利さん? え? 何で? ど、どうしてここにいるんです?」
 それ、全部こっちのセリフなんだけど――
 よっぽどそう言いたかったけど口は動かなかった。長距離バスの疲れと不意打ちで目的を達成してしまった安堵感から、変な笑い声を上げてその場にへたりこんでしまったのだ。
 崎守葵 。
 彼女を探す旅は、こうしてあっけなく終わりを迎えたのだった。


「母が、脳梗塞で倒れたんです」
 葵は、そう言った。
 バスセンターでばったり再会してから、1時間くらい後の事になる。ようやく足腰が立った私はひとまずロッカーに荷物を全部預け、とにかく葵から話を聞こうということになった。
 今は、せっかくだから赤レンガ倉庫まで歩きませんかと言う葵の隣を、土地勘のない私は少し後ろから歩いている。
「突然の事で、私も気が動転してしまって。取るものも取り合えず、横浜に戻りました。……すみません、連絡もなしで」
 聞くところによると、慌てて帰ったために携帯も家に忘れてきてしまったという。――とりあえず、連絡も無視されていたのでなくて心底ほっとした。私も案外小心者らしい
0332結婚まで何マイル? 82015/12/25(金) 15:57:17.14ID:DKfTFwRL
「いや、それは良いんだけど……お母様は、大丈夫なの?」
 寒さに耐えかねて自販機で買った缶コーヒーを手の中で転がしながら、私は尋ねる。
 クリスマスを間近に控えた横浜の街は、どこもかしこも綺麗にライトアップされていた。色とりどりの灯りの中を、葵の吐く息が白く溶ける。その弾み方を見るに、悪い報告ではないんだろう。
「はい、おかげさまで。手術も無事に終わって、検査によると後遺症も無かったみたいです。早いうちに病院に運ばれたのが良かったんだろうって」
「そうね。……本当に、良かった」
 つまりは、そこまで見届けたから大学に帰って来ようとしたのだろう。その途中で、ちょうど横浜に来ていた私とばったり鉢合わせただなんて。
 ……まったく、何て偶然だろう。私は運命だとかは信じない主義だけど、それでもものすごい偶然が起こればテンションは上がる。それを運命だとか呼びたくなる気持ちも、分からないではない。
「でも、本当びっくりしました。まさか由利さんが、横浜まで来てくれるなんて」
 ――えぇ、えぇそうでしょうとも。何より私が一番驚いているくらいなんだから。
 葵は後ろ手に指を組んで、こちらを振り向いた。まるで子供の様に無邪気な笑み。
「私に……会いに来てくれたんですよね?」
 あぁ、なんて幸せそうに笑うんだろう。そんな顔を見せられたら、こっちは気恥ずかしくなって思わず顔を背けてしまう。
「さぁ。どうだったかしら」
「えぇー!? ここまで来てそれはないですよ由利さんっ!」
「うるさいわね……ってちょっと近い顔近いっ」
 まとわりついてくる葵を引きはがしながら、女二人で歩いていく。周りからすれば姦しいことこの上ないのだろうけど、何だかちょっとした安心感もあって。
 うん。
 やっと、だ。
 やっとずれていた歯車が噛み合ったような、そんな感覚がした。こんな下らないものでも、私の大切な日常の一部で、それが今戻ってきたのだと思った。
 初め距離があった二人の位置も、いつの間にか横並びになっていた。腕だとか肩だとか、触れてしまいそうなくらいに近い。
 何だか葵の手を衝動的に握りしめたくなる気持ちを抑え、それから少し歩き、歩いて。
「わぁ……」
 そして私たちは、そこについた。
 それはまるで光の運河だった。中央広場に等間隔に植えられたモミの木には明かりが灯され、中央の一番大きなクリスマスツリーまでの道が作られている。
 柔らかいオレンジの光が両脇の倉庫を照らし、一種異国じみた雰囲気を漂わせていて。
 本当のことを言えば、横浜には今まで何度か来たことがあったし、赤レンガ倉庫に来たのも初めてではない。けれどもこの時期に来たのは初めてで、ここまでだとは思っていなくて、その、なんというか。
「……すごい」
 我ながら小学生並の感想だとは思ったけど、そうとしか言えなかった。
 気づけば、周りにも私たちのようなカップルが何組か、遠巻きにツリーを眺めている。辺りが静かなのは、皆一様に言葉が出ないからだろう。女同士で来てるのは私たちだけのようだけど、それはもう構わない。
 きっと。
 寒い日に暖炉の前に集まるように、こんな日は温かな光が恋しくなるのだろう。大切な誰かと、この気持ちを共有したくなるんだろう。
「ここ、とっておきなんですよ」
 葵の手が、私の指を握る。どこか控えめに、いつも積極的な彼女にすれば意外なくらいに。
「……ガイドブックに載るくらいメジャーですから、私だけのって訳じゃないのは申し訳ないですけど」
 そう言って、はにかむように微苦笑する。私は静かに首を振った。
「ううん、とっても綺麗。私、こんな綺麗なの初めて見たかも。……今こうしてるだけで、ここに来て良かったって思う」
 だから。
 つまり、それゆえに。
 その言葉はごく自然に、私の喉から滑り落ちた。
「結婚しましょう、葵」
0333結婚まで何マイル? 92015/12/25(金) 16:02:26.78ID:DKfTFwRL
「……え?」
 一瞬――葵の口が、ぽかんと開いて。
「え? え、えぇっ?」
 次の瞬間目に見えてあたふたし始めた。握っている手がじわっと汗で滲み始める。もっとも、それでも手は離してやらない。
 よし、ファーストインパクトは上々だ。やってやった――不意打ちされ続けてきた私からの、ささやかな復讐というやつだ。
「多分私、あなたがいないとダメだと思うのよ。毎日私の味噌汁作ってちょうだい」
「えっ、あっ、で、でもっ」
「将来的にはパートナーシップ条例のある渋谷区に住みましょう。子供もips細胞で作るから問題ないわ」
「あ、あぅ、あぅ」
「今はお金がないから悪いんだけど、来年度になって働き始めたらきっと給料三か月分の結婚指輪を贈るから」
「うぅ……」
 顔中真っ赤になって俯いてしまう。これもきっとツリーの照明のせいではないんだろう。下を向いていても耳まで赤くなっていて、そんな所が何とも言えず可愛い。
 少しからかいすぎたかな、と反省する。いや、からかうというのも語弊があるか。ちょっと嗜虐心を出しただけで、私はこれで有言実行の女だから。
 私は赤くなった耳元に唇を寄せ、そっと囁いた。
「全部、本気だから」
「〜〜〜〜〜っ!!」
 声にならない叫びを上げ、葵がばっと顔を上げる。慌てて頭を引っ込めた――危ない、あやうく衝突事故になるところだった。
 葵は何故か涙目だった。あぁ、彼女は攻めているときは良いけど攻められるとてんでダメなタイプなのだな――そう分析している所に震える指先が突きつけられる。
「い、い、いつからですか?」
「……いつからって、何が」
「私の事を、す、す……好きになったのって。だって、私がアプローチをかけてる時も全然なびいてくれなくてっ」
 あぁ、確かに。言われてみれば、これはなかなかの難問だ。
 引き金になったのは、やっぱり彼女が私の部屋に来なくなった事だろう。けれども、今にして思えばその前から彼女に惹かれていた気がする。気がする、というかこれは多分確定事項だ。
 ……だって。嫌いな人を家になんて上げないし、ましてや合鍵を作られたことを放置なんてしないでしょう?
 それでも明確に『いつから』だなんて分からないし、分かったとしても説明するだけ陳腐になる気がした。……あぁそうか、『私のどこがそんなに好きなんだ』と私に聞かれた葵も、きっとこんな気持ちだったに違いない。
 だったら、それに対する答えは決まっている。
「じゃぁ、結婚してくれたら教えてあげる」
 そう言って、葵の肩を抱き寄せた。
 向き直った葵の瞳は熱く潤んでいた。こうしていると彼女の熱と一緒に、鼓動までも聞こえてきそう。
 期待。うん、きっとしてる。私も、彼女も。
「由利さん……こんなに人がいるのに」
「誰も見てやしないわよ。……それで? どうするの?」
「どうするって……」
「結婚。してくれる?」
 問いはするけど、答えはきっと決まっている。だから大事なのはタイミングと、少しの勇気。
 一瞬、葵の目が泳いだ。やがて決心をしたように目を瞑る。私との距離は、もう僅か程しかない。葵は私の首に腕を回し、そっと背を伸ばした。
 音が遠くなる。世界が遠くなる。私の感覚が、たった一人の女の子しか捉えられなくなる。
 そして。
 二人の距離が、ゼロになって――



 <結婚まで何マイル?――了>
  お題『押しかけ女房な大学生百合』
0334名無しさん@ピンキー2015/12/25(金) 16:08:27.56ID:DKfTFwRL
以上、『押しかけ女房な大学生百合』でした
PCがクラッシュしたりと予想外のハプニングがありつつも、何とかクリスマスに間に合って良かった……
もう一つ貰っている『おねロリ主従』も構想はあるものの、投下がいつになるかは完全にPCさんの機嫌しだいとなります
いつかは書くので、気長に待っていただければ……

それでは、お目汚し失礼しました
0335名無しさん@ピンキー2015/12/25(金) 17:58:50.34ID:IQUYwfEN
きたか…!!

  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
なんちゅうものを投下してくれたんや…!(涅槃顔)
やっぱ普段押せ押せな子が攻められて赤面するの最高っすね…
0336名無しさん@ピンキー2015/12/28(月) 01:51:41.31ID:H8Sn+FBS
神はここに有らせられたか……!
最高のクリスマスプレゼントでしたありがとうございます
気付けば後輩に夢中になってる由利さんも良いけど、
押されると弱いのもたまらなくかわいい……大学生っていうシチュも相まって最高です
0338名無しさん@ピンキー2016/02/08(月) 00:45:06.70ID:Itu5dgWJ
あけてましておめでとうございました。撫子寮の人です。
以前リクエストがあった『おねロリ主従』の目途が立ったので投稿します。
まずは分割で第一部を。計第三部の予定です。
0339名無しさん@ピンキー2016/02/08(月) 00:51:01.22ID:Itu5dgWJ
 私――メアリ・マクダエルは、恥の少ない人生を歩んできたと思っております。
 マクダエル家は中流の家柄ではありますが、父の方針もあり、女だてらにしっかりとした教育を受けることができました。父はとにかく厳格であり、嘘を許さず、私たちに事あるごとに言い聞かせたものです。
 どのような人に対しても、嘘を言わず、誠実であれ――
 エインズワースのお屋敷でガヴァネス(家庭教師)を務めるようになってからも、私はその教えを忠実に守ってまいりました。伝統ある伯爵家の使用人として、恥の無いように。
 そのおかげで旦那様の覚えも良く、一人娘のアリステルお嬢様からもお慕い頂けたものと自負しております。
 ですから――あぁ、どうして私はあの時、お嬢様にあんなことをしてしまったのか――
 思い起こすほどに後悔は尽きませんが、懺悔の代わりに語ることにしましょう。あの日私がしでかしたこと、後にお嬢様と大いなる秘密を共有することになった、その一部始終を。
 それもこれもつまり、出来心という奴のせいになるのでしょうが――


 1/.


 それは、そろそろ初夏に差し掛かろうかというある日の午後のことでした。
 私はその日の授業の準備を終え、お嬢様が学校から帰ってこられるのをお部屋から眺めておりました。お嬢様というのは勿論のこと、私が勉学をお教えしているアリステル・エインズワース様のことです。
 アリスお嬢様――光栄なことに、親しみを込めてそうお呼びすることを許されております――は伝統ある伯爵家、エインズワース家の一人娘であり、端的に言って天使のように可愛らしいお方でした。
 ふわふわとしたカールがかったプラチナ・ブロンドの髪、くりくりとした大きな瞳――
 初等教育を受けるお歳としてはやや舌足らずな喋り方をされますが、それすらも愛らしく、私などは何かの間違いで主の御許から遣わされた天使なのではないかと本気で思っていたりするほどです。
 いつも学校から帰ってこられると、私の所へ「メアリ、メアリ」と言いながらとてとてと走ってこられて――あぁ、その様子がまた何とも言えず愛らしいのです。
 ところが今日は……あら、あら。遠目から見ても元気がないご様子で、小さな鞄を掛けた肩もどことなくしょんぼりしていらっしゃいます。
 昨日お見かけした時にはいつも通りでしたのに、一体学校で何があったというのでしょう。よもや、心無い虐めを受けたのでは?
「メアリー……」
 思わず玄関まで飛び出して抱きしめたくなる衝動を必死になってこらえていると、子供部屋の扉が開いてアリスお嬢様が入ってこられました。
 その様子は、まるで雨に濡れた仔猫のよう……いつもより幾分と力ない足取りで私へと歩くと、屈んで待ち構えていた私の胸へとぽふんと倒れこみました。
 事件です。
 何かが起こったのです。
 お嬢様がここまで打ちひしがれていらっしゃるなんて、かつて無かったことでした。
 私は大いなる驚きをもってお嬢様を抱き留めます。相変わらず羽根のように軽いお体で、きちんと栄養が取れているか心配になるのですが、ここはエインズワース家の料理長の腕を信じましょう。
 それよりも、です。
「お嬢様、何かあったのですか?」
0340アダムのリンゴと出来心 22016/02/08(月) 00:52:43.37ID:Itu5dgWJ
「んー……」
 発言に躊躇するような口ぶりは、むしろこの問いが的を射ているものだと言えるでしょう。問題は何が起こったかですが、これも幾つか想像はできます。
 学校での出来事で、見た目に外傷がないのなら、考えられるのは人間関係でのトラブルです。
 お嬢様は成績も良く、まして伯爵家の令嬢であるため、教師から蔑ろにされるのは考えにくいことでした。
 で、あるのならば。
「失礼ですが……ご学友と、何かあったのですか?」
 今度は、ためらいがちに頷かれました。私のスカートを握りしめたまま、ぽつり、ぽつりと話し始めます。
「あのね……あのね、メアリ」
「はい」
「今日ね……皆が知ってること、私だけ知らなくって……だから仲間外れ、なっちゃって……」
 仲間外れになった → なぜ? →皆が知っていることを自分だけ知らなかったから。
 なるほど。お嬢様の説明は言葉足らずでしたが、おおよそのことは脳内で補完できました。
 恐らく学校での授業だかご学友との会話だかで、お嬢様が答えられない問題が発生したのでしょう。あまり無いことでしたが、それだけに周囲の好奇を誘ったのかもしれません。
 無知をからかわれたか、それとも責められたか。いずれにせよ、その羞恥はお嬢様には耐え難いものだったことでしょう。
 まったく……まったく、何たることでしょうか。
「それは、ご学友の皆さまがいじわるでございましたね。知っていることなら、教えてくださってもよろしいのに」
 いじわるどころか性根が悪いとくらいは思っていましたが、私はお嬢様を慮ってそう言いました。しかしお嬢様はふるふると首を振って、悲しそうに答えます。
「私、おばかさんだから……」
 聞き捨てならない発言でした。
 ガヴァネスである私から見る限り、お嬢様は学力も同年代の子女より高く、またお教えしたことの飲み込みも非常に早い方でした。何階級も先の授業ならともかく、今の学年の授業なら問題なくついていけるはずです。
 何よりも、お嬢様の無知が恥であるというのなら、それは指導力不足であったガヴァネスたる私の責と言うべきでしょう。決してお嬢様が誹りを受ける謂れはないはずです。
「いいえ、お嬢様は悪くありません。お嬢様はご立派にお勉強なさっているではありませんか。
 もしその知識に抜けがあったとしても、また学べば良いだけのことですわ」
 そもそも学問というものは広大無辺。学べど学べど果ての無いもの。老成の賢人ならばいざ知らず、まだ幼いお嬢様の無知が笑われるなどおかしいことなのです。
 そこまで力説して、お嬢様はやっと顔を上げてくださいました。
「メアリ……教えてくれるの?」
「えぇ、勿論でございますとも。それが私の仕事であり、喜びなのです」
 お嬢様が安心されるよう、にっこりと微笑みます。
 少し安請け合いをしてしまったような気がしないでもありませんが、私にもガヴァネスとしての矜持があります。
 初等教育の問題ならよどみなく答えられる自信がありましたし、何よりお嬢様の危機を見逃すなど、使用人としてできる訳もありません。
 ですから、私は。じゃぁ、と口を開いたお嬢様をにこやかに見つめて――

「赤ちゃんはどうやったら出来るの?」
0341アダムのリンゴと出来心 32016/02/08(月) 00:55:34.22ID:Itu5dgWJ
「え゛」
 ――そのまま、カエルが引きつぶされたような声を上げたのです。
 予想だにしなかった問でした。
 思考の死角を突かれると、人はかのように固まってしまうのだと私はその時初めて知ったのです。
 お嬢様の仰った言葉を認識するのに2秒、その質問の意味を理解するのにもう3秒。
 アカチャンハドウヤッタラデキルノ?
 えぇ。生娘ではありますが、私とてその仕組みを知らない訳ではないのです。何年か前に正しい男女の交わり方を母から学びましたし、教会が推奨する欲情を伴わない性交渉の仕方も知っています。
 ただ、私がそれを知り得たのは現在のお嬢様のお歳から少し後で、つまり今のお嬢様にお教えするのは時期尚早であると判断できました。
 故に私は、少し思考を彷徨わせた後、こう切り出しました。
「え、えぇそれはですねお嬢様。男女が深い仲になり、赤ちゃんが欲しいと望んだ時、自然に」
「コウノトリが運んで来る訳じゃないってことは知ってる」
「…………」
「キャベツ畑から来る訳じゃないことも、知ってる」
 取りつく島がありませんでした。
 お嬢様はおっとりした方ではありますが、とても頭の回転が速く、半端な嘘やごまかしはこのようにバッサリと切り捨てられてしまうのです。
 となれば、良い策が思いつくまで、ひとまず時間を稼ぐしかありません。
「お、お嬢様。どうして、そのような事を?」
「えっと……」
 お嬢様は純粋な方です。聞かれたら答えてしまうのです。
 お嬢様が赤ちゃんの来し方を気にする理由。今日、学校で何が起こったのか。
 それは大筋によれば、以下の通りでした。



 全ての事の起こりは、本日のランチにまで遡ります。
「先日、私、ジョンとハロッズに買い物に行きましたの」
 一緒に食事を取っていたお嬢様のご学友の一人が、鼻も高々にそう切り出しました。
 この方は度々お嬢様の話に登場するため、私もよく知っていました。エインズワース家ほどではありませんがそこそこ地位のある名家の令嬢であり、お嬢様とは学校の他にパーティーでもよく顔を合わせます。
 どうやらその事で家の位が上のアリスお嬢様に対抗意識を持っているらしく、事あるごとにこうやって何を買った、どこへ出かけたたと自慢するのです。
 その行いはスノッブじみていましたが年齢を考えれば可愛い背伸びのようなものであり、私などは密かに彼女のことを『おませさん』と呼んでいました。
0342アダムのリンゴと出来心 42016/02/08(月) 00:57:41.17ID:Itu5dgWJ
「へぇ……そうなんだぁ」
 対してお嬢様は無垢な方ですから、おませさんの自慢に対しても嫌味なくそう返事をします。
 一事が万事、これが二人のペースなのです。なかなかに良い関係と言えました。
「その後カフェに行って、ニッカボッカ・グローリーを頂きましたわ。あなた、食べたことはおあり?」
「ないかもぉ」
「とぉっても冷たくて甘いんですのよ! 少し大きかったので、ジョンと半分ずつでしたけれど」
 感嘆の声が、おませさんの周りから上がりました。
 ニッカボッカ・グローリーとは今ロンドンで流行りの、アイスクリームと木の実を大きな器に盛りつけた氷菓子――であるそうです。
 私も風の噂で聞いたことがあるだけで、実際に見たことはありません。
 その聞きなれない単語はさぞや刺激的な響きで聞く者の耳を蕩かしたことでしょう。年齢の大小はあれど、とかく女性というものは最先端の匂いに弱いのです。
 しかし、それとは別にざわざわとした声も上がります。
「殿方と一緒の器で?」
「少しはしたないのでは?」
 ここにいるのは皆良家の子女ですから、そういう思考になるのも無理からぬ話です。大切なのは貞淑と深慮。婚前での逢引など、もってのほか。
 ですがおませさんは、そんな反応すらも予想していたかのように、さらに慎ましい胸を張って言うのです。
「問題ありませんわ。えぇ……だって私、いずれはジョンと結婚するんですもの」
 今度こそ、羨望と憧憬の声が彼女を包みました。
 そう、度々話に上がっていたジョン氏とはつまり、おませさんの許嫁だったのです。男性と逢引するだけでも進んでいるというのに、将来は結婚だなんて!
 特別な恋愛対象を持たず、恋に恋する年齢の多くの学友にとっては、ほとんど夢物語のような話でした。
 そしてその物語の登場人物が目の前にいるのです。黄色い声も上がろうというものでした。
「いつ? いつ結婚なさるの?」
「お相手ってどんな方? もっと詳しく知りたいわ!」
「ねぇ、聞かせて下さいな!」
 瞬く間に興味津々のお嬢様方に囲まれるおませさん。彼女はきっと勝利を確信したでしょう。
 一番羨ましがらせたかったアリスお嬢様の反応は芳しくありませんが、学友にちやほやされるというのは大きなステータスですから。彼女の自尊心も大きく満たされるといったものでした。

 ――えぇ。そこまでで終われば、まぁ、良い話で終わったのですが。

 おませさんにとっては不幸なことに、その場にはお嬢様がいました。
 いえ、これら一連の話はお嬢様に自慢すべく口に出したのでしょうが、その後の反応を彼女は全く予想できていませんでした。
 お嬢様は無垢であるが故に、手榴弾を火の中に投げ込まないではいられない人なのです。
0343アダムのリンゴと出来心 52016/02/08(月) 00:59:45.14ID:Itu5dgWJ
「ねぇ、ジョンって人と結婚するの?」
「えぇ、将来的には。社交界に出る彼を、陰ながら支えるつもりですわ」
「ふぅん」
 お嬢様はそこで首を傾げ、そして、さも翌日の天気を聞くかのような自然さで尋ねたと言います。。
「ジョンと、子作りするの?」
「えっ」
「何人くらい、つくる?」
「えっ」
 ……それまでの盛り上がりはどこへやら、その場の空気は完全に凍り付いてしまったことでしょうね。可哀そうに。
 さて、ここで捕捉しなければなりません。つまりお嬢様がなぜこんなことを言い出したのか、ということです。
 お嬢様の通う学校では、毎週火曜に聖書の授業がありました。
 折しも本日は旧約聖書の創世記、万物が創り出された天地創造からエデンの追放、そして追放後の人類の受難までのお話です。
 この辺りは、新しい登場人物が出てきてはまた新たな人物を生むというサイクルが一文で完結するほど、人の入れ替わりが激しい部分です。出会って結婚したら、もう次の文節では生んでいるのです。
 その図式はお嬢様の頭にしっかりと残っていたのでしょう。つまりおませさんがジョン氏と出会って結婚するのなら、後はもう生むしかないじゃない、という訳です。
 ところが実際、そう三足飛ばしで事が進むわけもありません。おませさんは、顔を真っ赤にして反論しました。
「なっなっなっ……何を言い出しますのっ!? そんなは、恥ずかしいこと……今はまだ、考えたこともありませんわっ!」
「恥ずかしいって、どうして?」
「どうしてって……それは」
 そこまで言っておませさんはようやく、自分とお嬢様との間に性知識の決定的な差があることに気付いたのでしょう。
 お嬢様が自分を困らせようとしているのではなく、単に分からないから聞いているのだと。お嬢様には性的な知識がなく、その知識を自分に求めようとするだろうということを。
 嫌な予感がしたかもしれません。しかし時既に遅し、お嬢様の無垢なる好奇心はがっちりとその言葉を捉えたのです。
 赤ちゃんを作ることは、どうやら恥ずかしいらしい。
 しかし自分は元々赤ちゃんとして、両親の間から生まれてきたはず。
 ならばどうやって両親は自分を生んだのか? 自分はどのように生まれてきたのか? 
 それはお嬢様にとって、まさに無知の知に気付いたソクラテスが如き衝撃であったことでしょう。自分のルーツを知らないことに気付いたお嬢様が哲学的な探求のために、真実を知るおませさんを質問攻めにしたことは想像に難くありません。
 後から「仲間外れにされた」と語るからには、ご学友にも手当たり次第に尋ね、そのことごとくに逃げられてしまったのでしょう。
 そんな数々の攻防を経て、言葉に窮したおませさんはついに、こう切り出したと言います。
「あ、貴女の家にもガヴァネスはいるでしょう? 難しい話だから、その方に聞いたらどうかしら?」
 責任転嫁による逃避。
 つまりは丸投げでした。
0344アダムのリンゴと出来心 62016/02/08(月) 01:02:17.65ID:Itu5dgWJ
「――って……」
「……」
 拙い口ぶりで事の経緯を話すお嬢様に対し、私は内心で冷や汗をダラダラとかきながら、どうやって事態を収めようか考えていました。
 ……それはまぁ、確かに。いずれそのようなこともお教えしなくては、と思ったこともないではありません。
 ですがその時がまさか、こんなに早く来ようとは。
 先ほどの私は、ご学友に対して『知っているのなら教えてあげればいいのに』などと思っていましたが、真相を知った今となっては撤回しなければなりません。教えられる訳がありません。
 お嬢様は聡明な方ではありますが、どうしたってありのままの事実を伝える訳にはいかないのです。
 それは純白の羽を黒いコールタールで汚すが如き罪深い所業であり、とても許しがたい行いであると言えました。まして、お嬢様を宝物のように可愛がっている旦那様に知れたら。

『赤ちゃんの作り方を教えてもらったのー』
『ほう。アリス、そんな素敵な事を誰にご教授頂いたのだね?』
『メアリー』

 十中八九首が飛ぶでしょう。もしかしたら物理的に。書斎で一度だけ拝見した家宝のクレイモアは、とても手入れが行き届いていて切れ味が良さそうでした。
「メアリー。メアリなら、知ってるんだよねー?」
「あ、あのですねお嬢様」
「メアリ……教えてくれないの?」
 お嬢様のしょんぼりしたお声につられて、私は。
 見ました。見てしまいました。……努めて見ないようにしていたのに、ふと視線を下げて。
 お嬢様の大きな瞳には、いっぱいに涙が溜まっていました。スカートをその華奢な腕の力いっぱいで握りしめ、不安に耐えるようなまなざしは何よりも雄弁に私へと訴えかけます。
 お嬢様は賢いお方です。私やご学友が自分に秘密をひた隠しにしていることは、勿論のこと察しがついているのでしょう。
 そのことで自分がつま弾きにされているような孤独感をも感じていらっしゃるに違いありません。
 このお歳での疎外体験は、後の心の成長にも悪い影響を与えるでしょう。
 それらの孤独感、疎外感を払拭する方法は、私たちと同じ立場となることだけ。つまりは秘密とされていることを解き明かし、共有することだけなのです。

 どのような人に対しても、嘘を言わず、誠実であれ――
 ――いえ、いえ! いけません、メアリ・マクダエル!

 手放しかけていた心の手綱をしっかりと握りしめ、私は頭を振りました。
 この場合において私が誠実であるべきは道徳に対してであり、エインズワース家に対してであるはずです。そう。勿論、そうですとも
 私は一つ息を吸い、覚悟を決めました。大事なのは優しく、それでいて毅然とした態度。お嬢様が何を言おうと揺るがない心です。
 この、メアリ・マクダエル。お嬢様の健全な成長の為なら、例え嫌われたって……
「お嬢様……ざ」
 しかし私がお嬢様の肩に手を置き、『残念ですが』と言葉を発するよりも早く、お嬢様は私の手を握りしめました。
 そしてその手の柔らかさと体温でもって私をドキリとさせる暇もなく、すかさず二の矢を放ったのです。
「メアリっ」
 まっすぐな視線。お嬢様が少し上目遣いになり私を見つめて。あぁ、あぁダメですお嬢様いけません、そんなに頬を上気させて、そんなに熱い目で見つめられたら、もう――
「おねがぁいっ」
 ――その時私は、知恵のリンゴを食べようと言われたアダムの気持ちが、何となく分かったような気がしました。
 えぇ。間違っていたとしても、例え後々破滅的なことになるだろうということが薄々分かっていたとしても、そんなもの頷かない訳にはいかなかったのです。
0345名無しさん@ピンキー2016/02/08(月) 01:06:43.10ID:Itu5dgWJ
今回はここまで。ある程度まで書き溜めているので、一週間以内に次を投下する予定です。
なお、最近ノクターンノベルズとの二重投稿を始めたので、同じ物が当該サイトでも連載されています。
「ささくれぱんだ」の名前で今までの作品をまとめてあるので、よろしければどうぞ。
0347名無しさん@ピンキー2016/02/29(月) 00:19:58.54ID:XMFUiuHx
気になって続きをノクターンで読んじゃったよ
家庭教師が理性のタガを外すシチュはもちろん最高だったけどこの後一体どんな波乱があるんだ……!
0348アダムのリンゴと出来心 72016/03/06(日) 01:18:50.93ID:lW2XTHkp
 2/.


 知恵のリンゴを齧ると決めてから真っ先に私がしたことは、部屋の扉を開けて外の様子を覗き見ることでした。
 廊下には誰かが通りかかる気配はありません。お嬢様が帰ってこられる前に雑用女給は廊下及び部屋の掃除を終えているはずですし、執事は旦那様の執務の補助をしていることでしょう。
 経験則的にも、この時間帯にこの階にいるのは私たちだけのはず。
 子供部屋にはカギはなく、もし仮に付いていたとしても施錠すれば逆に怪しまれる原因となります。故に事は万全を期す必要がありました。
「……これはあくまで教育の一環であり、不埒な行為ではありません。私は女性ですが教会が禁ずる同性愛者ではなく、お嬢様に邪な感情を抱いたりは決して致しません」
「メアリ、どうしたのー?」
「いえ、何でもありませんよお嬢様」
 きょとんとした顔のお嬢様に笑顔を向けながら、私は後ろ手で扉を閉めました。……何となく私は、今度の日曜に教会に行こうと思いました。特に深い意味はありませんが、自らの信仰を証明することは大事なことです。
 さて。
 お嬢様はベッドにちょこんと腰をかけていらっしゃいました。この状態からどうやって事を切り出すか、私は少し考えます。赤ちゃんの作り方を教えるとは言いましたが、どのように、どこまでお教えするかは重要な線引きです。
 おしべとめしべで例えるか、正式名称を使って具体的に説明するか。はたまた、実践してみるか――
 ――実践。
「うぅ……」
 思わず顔が赤くなるのを感じました。実際にやってみるといったって、私にだってそんな経験はないのです。しかしこの場にそういった類の教本はなく、かといって取り寄せるまでお嬢様は待ってくださらないでしょう。
「メアリー」
 えぇ、だって今ですら待ちきれないといった様子で足をぷらぷらさせていらっしゃるのですから。頬をぷぅーっと膨らませ、今か今かと催促なさるのです。
「メアリ、はやくぅ」
 あぁ、あぁ。
 お嬢様のおねだりの声は甘い媚薬のような響きで私の脳を蕩かしていきます。それは冷静に考えを巡らせるだけの時間と余裕をバッサリと奪い取っていき、代わりに鞭を入れられた馬車馬のごとく行動を迫るのです。
 ――えぇい、ままよ。
「お嬢様。……し、失礼いたします」
 少し腰をかがめて、髪をかき上げると、私はお嬢様の唇にそっと口づけました。
 キス。
 ふわふわで、温かいお嬢様の唇。
「んっ……」
 驚いたようにお嬢様が目を瞑りました。その反応が可愛らしく、私は思わず舌を――入れそうになるのを必死で我慢して、啄ばむようにちゅ、ちゅ、と口付けを繰り返します。
 あぁ、キスとは何と柔らかく、そして気持ちのいいものなのでしょうか。
 家族と交わす親愛のキスは何度となくしたことはありますが、それとはまた完全に別物です。唇を触れ合わせる、たったのそれだけで、胸の奥から幸福感がじわじわと湧いてくるのです。そんな体験、私にとっては勿論のこと初めてでした。
 ですから私はひょっとしたら、何事もなければずっとお嬢様にキスし続けていたかもしれません。
0349アダムのリンゴと出来心 82016/03/06(日) 01:20:59.82ID:lW2XTHkp
「ん、んんぅ〜……」
 お嬢様の苦しそうな声に、ふと我に返りました。
 見ればお嬢様はぎゅぅっと眉根に力を入れて、息を止めているご様子でした。慌てて唇を離すと「ぷぁっ」と小さなお口で息を吸い込みます。
「お嬢様、申し訳ありません、大丈夫ですか?」
「へいきー……ん、なんかすごかった……」
 相変わらず主語がありませんが、それでも心の底から同意できます。なんかすごかったのです。あの数秒の接触には、人生観を変えかねないほどの衝撃がありました。
 その衝撃の余韻が残っているのか、いつもよりぼんやりした感じでお嬢様はつぅっと自分の唇を指でなぞります。……それを妖艶と捉えてしまうのは、私の異常性でしょうか。
「……メアリの唇、ふわふわー」
「え、えぇ。ありがとうございます」
 我に返ると幾分恥ずかしく、それだけで『やってしまった』という感じがひしひしと沸いてきます。キスだけでこうなってしまうなら、ここから先の段階は一体どうなってしまうのか。
 やめましょう。
 こんなことはやめるべきだと私の良心がひっきりなしに叫び続けます。今ならきっと引き返すことができるはずなのです。そう、例えば『キスをすれば赤ちゃんができるのです』ということにでもして――
「でも、キスじゃ赤ちゃんはできないんだよね?」
「……えぇ、勿論ですとも」
 刹那にして退路を塞がれました。
 これもおませさんの入れ知恵でしょうか。何とも的確にこちらの手札を潰してくれたもので……というか、そこまで話が進んだならもう教えてしまっても良かったのでは……?
 お嬢様がじぃっと私を見ます。疑問の目です。キスでは赤ちゃんができないのに、どうしてメアリはそんなことをするんだろう? 言葉にすればそんな感じでしょうか。
 これが疑惑になる前に、私は二の句を告げなければなりません。私はお嬢様の横に腰を落ち着けると、じっとその瞳を見ました。――少しでも逸らせば怪しまれるのです。
「キスは赤ちゃんを作るための前段階なのですよ、お嬢様。私とキスをした時、体がふわっとしたでしょう?」
「うん、したー」
「そうやって体をほぐす必要があるのです。子作りは大作業ですからね、えぇ、言わば準備運動のようなもので」
 嘘は言っていません。それどころか限りなく真実に近い表現のはず。
 もっとも、そうであるが故に『本当のことを教える』という以外の選択肢は段々狭まってきていました。航路上に氷山があると分かっているのに直進せざるを得ない、そんな気分です。
 そこでお嬢様はきょとんと首を傾げます。
「私、体柔らかいよ?」
 お嬢様はバレエを習っていらっしゃいますからね。えぇ、レオタード姿も本当に可憐で。
「それでも、子作りの場面となると自然に体が強張ってしまうのですよ――そうですね」
 思い起こせば――ここが最後の選択だな、と思った記憶があります。多分、引き返しうる最後の分岐点だと。
 主や、エインズワース家の方々や、とにかく私に関わり期待してくれた全ての方々に心の中で懺悔した記憶もあります。
 けれども私の獣性は、それがどうしたと言わんばかりにその言葉を発しました。
「もっと体をほぐすために……まず、服を脱ぎましょうか」
0350アダムのリンゴと出来心 92016/03/06(日) 01:26:21.00ID:lW2XTHkp
 あぁ、愚かなるメアリ・マクダエル!
 言ってしまいました。ついに言ってしまったのです。そうしたらもう、引き返せないというのに。
 これまでなら何とでも言い訳をすることができました。例えキスをする場面を見られたからと言って、幼さゆえのスキンシップということで話は済んだでしょう。
 同性の私たちがキスをしていたからといって、いや同性の私たちだからこそ、いやらしい意味でとらえる方はいません。
 しかしお嬢様が服を脱いでしまえば、それは全く別の話です。
 幼さや同性の意味が裏返しの凶器となり、私は同性でありながら無垢なお嬢様をたぶらかし不埒な行為に及ぶ変態ということになってしまうでしょう。
 分かっています。その指摘の半分はもはや真実となりつつあることも。それでももはや止まることはできなかったのです。
 どんどん引き返せないレールを敷いていくうちに、私の中の情欲は止めることができぬほどに加速していたのでした。
 皮肉なことに「お嬢様に性教育を行う」という名目が、私の最後のブレーキを壊してしまったのです。
「服を脱ぐの?」
「えぇ、まずは上だけでよろしいですよ。はい、手を上にあげてくださいませ」
「はぁい」
 お嬢様は私の懊悩など知らぬまま、疑いもなく両手を上に上げました。私は笑顔のまま、お嬢様の上着と、ついでにその下に付けていた肌着を、まるで果実の皮を剥くようにするんと取り去ってしまいます。
 めくり上げるごとに、雪原のように白いお嬢様の肌が露わになっていきました。
 緩やかな稜線を描くような、子供特有の丸みを帯びたお腹。可愛らしい、小さなおへそ。そこから上は傾斜はなく、柔らかさがありつつも平坦となっています。
 お嬢様は同年代の子供たちと比べて発育がやや遅く、まだ胸当てを付けていらっしゃいません。
 ですから女性としての膨らみはほとんどなく、二つの小さな薔薇色の蕾が自己主張するだけです。それがややつんと突起していらっしゃるのは、外気に触れたせいでしょうか。それとも、緊張しているから?
 ごくりと唾を飲み込む音が、やけに大きく感じました。子供特有の体臭というのか、甘いような乳臭いような香りが鼻腔をくすぐります。それは一種オーラのようにお嬢様の周りに漂い、私はその神々しいとさえ言える光景に釘付けになりました。
「メアリは、脱がないの?」
 その言葉に、はたと我に返ります。いつまでも見惚れているわけにはいきません。まるで火事場泥棒の如きですが、事は迅速に、かつ抜かりなく行う必要があるのです。
「あ、は、はい。少々お待ちくださいませ」
 本当は私まで脱ぐ必要はないのでしょうが、同じ状態であった方がお嬢様も安心するでしょう。そんな邪な企みから、私はボタンへと手を付けます。
 上着のボタンを外し、その下のシュミゼットを脱ぎます。それを引き抜く段階から、胸が引っかかってぶるんと震えました。
 ――あぁ、このはしたない乳房。胸当てを外せば、ますます重力に引かれてたゆんと落ちます。
 張りはまだ心配していないのですが、年老いた時が心配な胸でした。
 同年齢の基準より、3割ほどは大きいでしょうか。未婚の私にとっては何の得にもならない、あるだけで邪魔になる代物です。
 まさにコンプレックスの塊とも言える部分ですが、お嬢様のお気には召したらしく。
「メアリ、きれー……」
「そ、そうですか? 何だか恥ずかしいですわ、お嬢様」
 ちなみに私は綺麗と言われたのは初めてのことでした。不美人でないことは自覚していましたが、かといって美人と言えるほどの自信も持ち合わせてはいません。
 そもそも美人にガヴァネスは不向きなのです。雇い主との不倫を警戒し、奥様が雇いたがりませんからね。
 ですから、私も世間一般のガヴァネス同様に、お世辞に慣れておらず、思わず頬を赤らめてしまいました。私など、お嬢様の美に比べれば何てことのない女ですのに。
「うん、胸もおっきいし……ふわふわー」
「ひぅんっ、おっ、お嬢様っ?」
 ですがお嬢様は私の胸に興味津々のようで、手を伸ばして私のものに触れました。さわさわと、やわやわと。
 撫でてる? 擦ってる? そんな羽のようなタッチです。情欲に任せるというよりも、興味の元を確かめるというような。
0351アダムのリンゴと出来心 102016/03/06(日) 01:28:50.36ID:lW2XTHkp
 かといって興奮がない訳ではないらしく、その陶器のように白い肌にはほんのりと赤みがさしています。
 私の体でお嬢様が興奮されている――その事実に、何とも言えない悦びが体中を駆け巡りました。
 お嬢様の手つきは、まるで粘土遊びをされるような、捏ねるような手つきに変わっていきました。興味の元が大きさから弾力へと移ったのでしょう。
 私の乳房を手の中に収めながら、お嬢様はその胸に頬を寄せ、ふわぁと息をつきました。
「いつか私も、このくらいお胸が大きくなるかなぁ?」
「んっ……大きいというのは、良いことばかりではありませんよ?」
 殿方の目というのもどうしても集めてしまいますし、運動の邪魔にもなります。お嬢様がバレエを続けていくなら、まさしく百害あって一利なしでしょう。
 それよりも何よりも、私が声を大にして言いたいのは、お嬢様はこれくらいのサイズがちょうどいいということです。大きくなるだなんて、とんでもない。
 「そーかなー?」と腑に落ちない様子のお嬢様を抱き寄せ、私の膝へとお乗せします。ちょうど、いつも本をお読みする体勢へ。
 これは私とお嬢様の授業スタイルでもあります。
 お嬢様はとんでもなく物覚えが良く、ノートを取る必要がありません。しかし興味の方向は移ろいやすい方なので、自然と母親が読み聞かせをするような形となるのです。
 そう、その格好で。
 私とお嬢様はいつもと違い、上半身を露出しています。いつもの授業、けれどお教えする内容は、いつもならとても口に出せないような事――
「さぁ、お嬢様。授業を始めますよ」
「はぁい、メアリ先生」
 先生、という言葉がぞくりと背筋を刺激します。これは何という背徳でしょう。
 まだ口を付けたばかりの果実は、早くもその甘美な味でもって、私を虜にしようとしていました。


*/*/*


「私が今からお教えするのは、性交――セックスという行為です」
 結局のところ、私はそのようにストレートに切り出しました。
 ここまで来て誤魔化すのはどだい無理な話でしたし、一度火がついた私の情欲も収まりそうにありません。
 ……そういうことを認めるに吝かでないくらい、私も燃え上がってしまっていました。
 とはいえ、これはあくまで性教育。その一線だけは、しっかり守らなくては。
「セックス?」
 お嬢様が怪訝そうに首をかしげます。そうしている間もその手は私の乳房を玩具にしており、ぽよぽよと持ち上げたり、摩ったりなさっています。
 その指が乳首に掠めるたび、私の口から「んっ」と甘い声が漏れだしました。
 ――恥ずかしいですが、言っても止めては下さらないでしょうから、そのまま説明を続けることにします。
「はい……んくっ、男性と女性で、赤ちゃんを作る行為です。お嬢様のここに……」
 スカートの上から、お嬢様の股間にぽんと手を置いて。
 ふと、見上げる視線とぶつかります。「どこ?」と言いたげな怪訝な表情に、思わず苦笑いが漏れました。
 毒を食らわば皿まで、ということでしょう。この毒はあまりにも甘美ですが、いつか遠くない未来に私の身を滅ぼすに違いありません。
0352アダムのリンゴと出来心 112016/03/06(日) 01:31:01.67ID:lW2XTHkp
「そうですね。お嬢様、下も脱いでくださいますか?」
「……脱がなきゃ、ダメ?」
 天衣無縫を地で行くお嬢様が恥じらいを見せるのは珍しいことです。
 上ではなく下を脱ぐときに羞恥を覚えるのは、性交の器官というよりは排泄の器官を外に晒すことへの抵抗があるのでしょうか。
「えぇ。大事なことですので」
「ん……」
 腿をモジモジと擦り合わせ、お嬢様はスカートをずり下ろしました。腰を少し浮かし、足をバタバタさせて、完全に足先から抜き去ってしまいます。
 代わりに現れたのは純白のショーツです。布地はやや圧手ですが、ふっくらとした膨らみが感じられる丘陵。それだけで否が応にも興奮してしまうのですが、本番はこれから。
「お嬢様。残りのショーツは私がお脱がせいたします」
「……私、自分で脱げるよ?」
「いえ、いえ! ここはメアリにお任せを!」
 語気が上がるのを意識しました。はしたなくは思いますがここは譲れません。お嬢様に女性をお教えする第一歩は、私の手によってでなくては。
 そんな独占欲で、ショーツに手を伸ばします。まるで芸術品に対して自然にそうなるように、慎重かつ繊細な手つきで――
「……ん、っ」
 あぁ、あぁ!
 楽園の果実が剥かれていきます。お嬢様は頬を染めながらもその力の一切を私に委ね、その信頼感が一層私を燃え立たせるのです。
 私は高まっていく鼓動が背中越しにお嬢様に聞こえないかそれだけを案じながら、その作業を続けて。
 そして――とうとう。
 果実がその姿を詳らかにしたのです。
 今まで誰にも晒されなかった穴は今なお一切の不浄を拒むようにぴったりと閉じ、周りには僅かの茂みもありません。
 しかしその頑なな処女性を感じさせる姿とは反対に、ショーツを取り去った後に微かに広がる子供特有の体臭や少しだけ残った尿の臭いが、まるで虫を誘う花のように私を誘惑して止まないのです。
 無垢であるが故に、誘惑する娼婦のようでもある――
 本当の美は二律背反(アンヴィヴァレンツ)の中に宿るといいます。であるのならば、今のお嬢様はその極致とも言える存在でした。
「ん……スースーする……」
 ですが一方のお嬢様は、股をぴっちり閉じてしまって落ち着かないご様子。
 恐らく排泄の為の器官を、何の目的もなく外に晒すのは恥ずかしいのでしょう。入浴でもトイレでもなければ外に出すはずのない器官ですから。
 なるほど。その認識を、まずは正さなければなりませんね。
「お嬢様、ここは何をするための場所ですか?」
 さわ、と花を愛でるようにお嬢様の秘所に触れます。宝物のように、傷つかないように。
「ん……おしっこ?」
「半分正解ですわ、お嬢様。ここはおしっこをする場所でもありますが、同時に赤ちゃんを作り、育てる場所でもあるのです」
0353アダムのリンゴと出来心 122016/03/06(日) 01:33:10.57ID:lW2XTHkp
 ぴったりと閉じた秘裂をほぐすように、上下になぞります。
 「んんっ」というくすぐったそうな声。慣れない感覚の正体が「くすぐったさ」ではないことを知るには、まだまだ早いお歳です。
「赤ちゃんを……ここで作るの?」
「えぇ、その通りです。お嬢様のここに、殿方の一物を…… 」
「イチモツ?」
 怪訝そうな声。
「……えぇ、ここにはないので私の指で代用しますが」
 強引に話を逸らしました。こちらは正真正銘説明できないのです。
 だって、私とて生娘ですから。ローマ時代の彫像に付いているソレを指の間からチラチラ見たくらいで、とても言語化に耐えうるような記憶ではありません。
 いいのです。これは授業であって、実際に性交する訳ではないのですから。
「お嬢様のこちら――陰部ですが、どうでしょう? 今、どんな気分ですか?」
 陰唇への愛撫を続けながら、お嬢様に尋ねます。
 お嬢様の小さな唇から、まるでスタッカートのように「んっ」「あっ」と漏れ出る声。
 きっとお嬢様は何がそうさせるか分かっておられません。けれど、その何かは確実にお嬢様の中に存在して、今もなおお嬢様の身を苛んでいるのです。
「くすぐったい……けど気持ちよくって、頭がぼーっとするぅ……何これぇ……」
「えぇ。気持ち良くなると、女性は愛液という滑りをよくする液体を出すようになっていて……」
 言うのとほぼ同じタイミングで、お嬢様の膣奥からとろりとした液体が漏れ出てきました。
 ごくり、と生唾を飲み込む音がやけに大きく響きます。お嬢様が興奮されているのだということ。この位の歳の女の子でも、興奮すればこんないやらしい液をだすのだということ。
 そんな新鮮な愉悦が、私の脳髄を犯すようにじんじんと響きました。
「……メアリ?」
「は、はい。こうやって滑りが良くなったら、お嬢様の陰部にイチモツを入れます。そうやって殿方の赤ちゃんの種と、お嬢様の赤ちゃんの種を混ぜ合わせるわけですね」
 しゃべりは徐々に早口になっていきます。早く終わらせる、それだけを考えて。
 危機感はいや増していきます。だって私自身の脈拍がどんどん速くなっていくのを感じるのです。
 自分が興奮するのも計算内ではありますが、そこから最後の一線を踏み越えるわけにはいきません。
 踏み越えてはいけない最後の一線。それは私が欲情に我を忘れて、お嬢様を襲ってしまうことです。そこだけは守らなくては。
「そうやって種が混ぜ合わさって10カ月と少し経てば、赤ちゃんが誕生する訳ですね。はい、これが赤ちゃんの作り方です」
 ぱん、と両手を合わせ、『はい、これで終わりましたよ』というアピールをします。えぇ、漏れはないはずです。大分端折ったような気もしますし言わなくていいことも言った気がしますが、これで一部始終は説明したはず。
 やりました。
 やりきりました。何度となく道徳を踏み越え、今やその概念は遠き彼岸の如しですが、人として許されざる最後の一線は守りきったのです。
 ならば私がこれからやるべきことは一つ。
 可及的速やかに服を着替え、ベッドを戻し、「この事は皆さんには内緒ですよ?」と一つウィンクをして授業を終えること。たったそれだけのはずです。
 はず――だったのですが。
0354アダムのリンゴと出来心 132016/03/06(日) 01:35:25.52ID:lW2XTHkp
「んぅ……」
 お嬢様が何やら、渋面で自らの股間を撫でているのです。何やら釈然としないような納得していないような、そんなお顔で。
 ――もしかしなくても、性感を与えるレクチャーはやりすぎだったでしょうか。
 好奇心旺盛な方ですから、その快感の正体を探ろうとやっきになっているのかもしれません。私は恐る恐る声をかけました。
「あの、お嬢様。いかがなさいましたか?」
「うん。……あのね?」
 そう言い、お嬢様は両指を使って陰唇を開きました。
 くぱぁ、と。私の愛撫によって濡れたそこは糸を引き、えも言われぬ妖しさを醸し出します。
 思わずむしゃぶりつきたくなる衝動を、なけなしの自制心で抑えつけました。えぇ、自分でも驚きですが、私にもまだそんなものが残っていたのです。
「えっと……私のここに」
「はい。挿入するとですね、赤ちゃんが出来る訳でして」
「……入れないのぉ?」
「えっ」
 ぼーっとした、まるで酒にでも酔ったように焦点の合っていない目が、私を見つめます。上気した頬は、まるで欲情の証のよう。
 いえ、きっとお嬢様は『欲情』という感覚すらまだ知らないはずです。
 そんな幼い子供が欲情に呑まれた姿は、私の心をどうしようもなく滾らせて。なけなしの、最後の自制心を容易に振りきって行きそうで。
 ――ダメです。ここから先は、本当にダメなのです。
 念のために言っておきますと、つまり。ここから先というのは、お嬢様を襲って処女を奪うというようなことです。
 今までも道徳的に大丈夫であったはずはないのですが、まだそれは道徳の範疇の話であり、お互いが黙っていれば証拠は残らない事でもありました。
 しかしここから先はエインズワースという家系に直結する現実的な問題です。
 もし、私がまかり間違ってお嬢様の処女を奪ってしまったら。遠くない未来、エインズワース家の名を背負ってお嬢様が結婚する時に大問題になることは想像に難くありません。
 なぜ、生娘ではないのか、相手は誰だったのか、不義の子はいないのか、そもそもそんなふしだらな女と結婚させて良いのか――そんな議論が巻き起こるでしょう。そこまで行けば私も首程度で済むわけがありません。
 ですからこの一線だけは。色々な線を何だかんだで越えてきてしまった感はありますが、正真正銘この一線だけは、踏み越えるわけにはいかないのです。
 ……えぇ。ここまで話にお付き合いいただいた方にはもう、お分かりでしょう。
「メアリぃ……」
 人の心など弱いものです。ましてや、何度となく自制しそこねてきた、逃げ癖のついてしまった心では。
 しかし信じていただきたいのは、これから起こってしまったことは決して私だけのせいではなかったということです。
 お嬢様はちょっとだけ背伸びをすると、私の耳朶に唇が触れんばかりの距離で、その天使のような囁きで私の脳を揺らしたのです。
「このままじゃ、メアリの赤ちゃん、作れないよ……?」
0355アダムのリンゴと出来心 142016/03/06(日) 01:38:21.45ID:lW2XTHkp
「―――――っ!」

 お嬢様のことを末恐ろしい方だと思ったのは、それが初めてでした。魔性という言葉でもって、お嬢様のことを見たのも。
 けれどそれも思い返してみればの話で、その時の私はまったくそんな事を考えている余裕など無く、溢れんばかりの獣欲に任せてお嬢様をベッドに押し倒しました。
 決壊です。
 必死にこらえていたものが、とうとうあふれ出てしまったのです。その、決壊に至る一点を、お嬢様は知ってか知らずか、えいやっと突き崩してしまったのです。
「お嬢様っ、お嬢様っ、お嬢様っ……!」
 まるで盛りのついた犬がそうするように、覆いかぶさってお嬢様の体を舐め回します。
 初めは唇へキスを、次第に下ろしていって鎖骨へ、お臍のくぼみを、柔らかく頬ずりしたくなるお腹を。
 ガヴァネスとしての責務も威厳も、もはやあったものではありません。そんなものは知ったことではありませんでした。
 私一人が地獄に墜ちればいいのです。えぇ、どの道こんな誘惑に、耐えられるはずがないのですから。
「んんっ、メアリぃ……」
 むずがるようにお嬢様がやんやんと首を振ります。私がそうさせているのだという自覚がどうしようもなく興奮を煽り、私の秘裂からもとろとろと愛液が溢れはじめました。
 もっとお嬢様の可愛らしい声が聞きたくて、その声で囀らせたくて、私は遂にお嬢様の秘所へと口づけます。
 すでにそこは先ほどの愛撫によってしとどに濡れており、一口啜ればお嬢様の愛液がとめどなく口の中に溢れていきました。
 爽やかな酸味と汗の混ざった、甘露というには生々しすぎる味のそれを、私は夢中で飲み干します。
 ずちゅ、じゅる、じゅちゅっ――部屋中にいやらしく響く水音。
「うぁぁ……きもちぃよぉ、メアリぃ……」
 お嬢様の声も瞳も、とろんと蕩けていきました。お嬢様が快楽を得ている――それはつまり、もう迎え入れる準備が出来ているということで。
 誰を?
 何を?
「っ……はぁっ、はぁっ……!」
 その答えが過った瞬間、私は恐らく本当の意味でリンゴを齧ったのでしょう。
 私は一旦秘所から口を離すと、ベッドにしどけなく横になるお嬢様の耳元まで這い寄り、震える声で言いました。
「――良いですね?」
 何の事か――など分かるはずもありません。そもそも答えさせる気がないのです。何をどうしようと私はお嬢様の全てを奪うつもりでいました。
 この可愛らしいお嬢様は、私の天使です。私だけのものなのです。どんな未来の伴侶にだって、渡すものですか――!
「あ゛ぅっ!!」
 お嬢様の秘所に、ゆっくりと中指を挿入させていきます。
 分かっていたことですが、実際に指を侵入させていくとその狭隘さ、肉の温かさに感動すら覚えました。
0356アダムのリンゴと出来心 152016/03/06(日) 01:40:42.08ID:lW2XTHkp
 一方のお嬢様はビクっとした様子で私の体へしがみつきます。なるべくお嬢様の気持ちが和らぐよう空いた手でその御髪を撫でながら、挿入を進めていって。
 私の指をきゅうきゅうと締め付けるお嬢様の中でも一層狭い場所に行き当たりました。こりっとした弾力。これ以上の侵入を許さない、肉の門。
 これが、処女膜です。
 他人のものも自分のものも見たことがある訳でなく、本で読んだだけの知識ですが、いわゆる言葉通りの膜ではなく、厚い粘膜が周囲からせり出し、まさしく門のような形状になっていることは知っていました。
 挿入された際にそれが破れ、激痛が走るであろうということも。
 しかし私は――身勝手な私の獣欲は既に決めてしまったのです。そうするのだと。
 他人に痛みを押し付けて自分の欲を満たす……まさに卑劣漢の中の卑劣漢。
「お嬢様、申し訳ありません――」
 知らず、そう呟いていました。許されるわけもないのに。僅かな理性の抵抗でも言うかのように。
 ですが、その消え入りそうな呟きをお嬢様は聞き取ってくださったのです。
 お嬢様は小さな腕で私を抱きしめると、その天使のような顔で微笑みました。
「いいんだよ、メアリ」
 ――最後の枷が、外れました。
 じんわりと暖かく湿った粘膜の感触を感じながら、私は、私の指は、お嬢様の処女膜を貫いてその奥へと達したのです。
「ひにゅぅぅぅぅっ!!」
 お嬢様の喉から絶叫が迸ります。この年では経験するはずのない痛み。
 痛みを与えているはずの私ですら、想像だに出来ないものです。その漏れ出る苦悶の声を僅かでも隠そうと、お嬢様は私の胸に顔を埋めてぶるぶると振り立てました。
 その姿は痛切で、見るに堪えず――だからこそ興奮して。
 私がこの方に痛みを与えている、この方を支配しているという暗い感情が、まるで黒い炎のように私の情欲をあぶり立てていくようです。
「お嬢様っ、お嬢様っ、お嬢様っ! 愛しておりますっ! お慕いしております!」
「メアリ、メアリ、メアリぃっ!」
 二人の言葉は、呻きに似ていたように思います。少なくとも意味のある言葉は発せられませんでした。私は愉悦から、お嬢様は恐らく苦悶から、お互いの名を呼びあって。
 けれど、私の自惚れでなければ、その時の私たちの心は確かに――繋がっていたのです。
 はい、それはそれは短い時間でした。 抽挿の激痛に耐えられなくなったお嬢様が、縋るものを求めるかのように私の乳房にかぶりついたのです。
 吸いついたのではなく、文字通り歯形を立てて。
 それはおおよそ快感と呼べるものではなかったのでしょうが、刺激には違いありませんでした。
 いいえ、その頃はもう、お嬢様から与えられるものであれば、何でも快感と認識するような体となっていたのかもしれません。
 ともあれ、その刺激がきっかけとなったのは間違いないでしょう。まるで砂防が一点の亀裂から崩壊するように、私の中の情欲や快感や愉悦が一気に、火花のように弾けて。
「あっ、あ、んああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 私は頤をそらし、あられもない声を上げ、絶頂へと達したのでした。
0357アダムのリンゴと出来心 162016/03/06(日) 01:42:26.24ID:lW2XTHkp
 3/.


 エデンの東へ追放されたアダムは、その知恵を得た頭で何を考えたのだろうと、私は胡乱な頭で考えていました。
 恐らくリンゴの甘美な余韻は既になく、荒涼たる現実を前に呆然と立ち尽くしたことでしょう。後悔と罪悪感に苛まれても、もはや後戻りはできないのです。
 とてもよく分かります。――だって今の私が、そんな感じなのですから。
「あああぁぁぁぁぁぁぁ……」
 今や私は枕に顔を埋め、聞くに堪えない声を垂れ流すだけの存在と化していました。
 逃避です。他に考えるべきことは山のようにあるはずでした。
 それは例えば色々な液体で汚れてしまったお嬢様の衣服を洗うであろうランドリー・メイドへの手回しであったり、今日この出来事を共有してしまったお嬢様との口裏合わせであったりということです。
 お嬢様が生娘であるかどうかということが問題となるのはもっと後の話でしょうから、少なくともそれまでには何か具体的な策を講じなければなりません。
 えぇ、私はアダムと違ってまだ追放されたわけではないのです。逆に言えば、リンゴを齧った事実さえ公にならなければ追放されることはないでしょう。
 ならば嘘でも策でも何でも使って、今日という日をなかったことにしてしまえば……
「……地獄へ堕ちて、しまいたい……」
 そこまで考え、私はいよいよ頭を抱えました。
 どんな人に対しても嘘を言わず、誠実であれ――20年間頑なに守り通してきたマクダエルの矜持は一体どこにいってしまったのでしょう。人は一度罪を犯すと、わが身を守るために嘘を重ねる生き物だと私は今、初めて知ったのです。
 禁断の果実を一口齧ってしまえば、もはや無垢ではいられない――痛切すぎる教訓でした。
「メアリ……頭、いたぁいの?」
 そんな自己不信と人間不信に陥っていた私を救ったのは、お嬢様の心配そうな声でした。
 見上げれば、お嬢様は裸に上着を羽織っただけという格好で私を覗き込んでいました。――それは私にとって煽情的な光景でしたが、興奮よりも先にお嬢様を汚してしまった事実を直視してしまい、肺腑を刺されたような心持がします。
 汚し、傷つけ、いいように凌辱したのです。こんな不敬はないでしょう。遥か東の国のサムライたちが、何かあるたびにハラを切りたがる気持ちが分かります。私だって刃物があったら衝動的にそうしかねません。
「いえ、大丈夫です。……頭が痛いのは確かですけれど。それよりもお嬢様、お体の調子はどうですか?」
 破瓜には早すぎる年頃です。お嬢様には未知の衝撃だったことでしょう。私が地獄に堕ちれば良いのは勿論のことそうですが、その事がお嬢様の傷跡になってしまったら、それは忍びないことでした。
 しかしお嬢様は――あぁ、お嬢様は私のような者にも、その天使のような笑みを向けてくださるのです。
「うぅん、痛かったけど……でもメアリが一緒だったからへーき」
 そしてお嬢様は、私の隣に横になると、はにかんだように言うのでした。
「メアリ……教えてくれて、ありがとぉ」
 私の天使が女神になった瞬間でした。
 追放が何だというのです。地獄が何だというのです。お嬢様がいて下さるこの場所こそが天国でなくて何なのでしょうか。そこにいられるようあらゆる手を尽くすことに、何の恐れがありましょうか。
 そう、その時の私は、柄にもなく燃えていたのです。必要とあればお嬢様との駆け落ちすらも厭わない、そんな決意さえ募らせていました。
 ですが、熱情というものは冷めるものなのです。時が経つにつれて、あるいは誰かの言葉によって。
 今回の場合は後者でした。
 お嬢様はまるで母親がそうするように、目を細めながら自分の腹を撫で、呟いたのです。
「メアリとの赤ちゃん――いつ、できるかな?」
0358アダムのリンゴと出来心 172016/03/06(日) 01:45:07.85ID:lW2XTHkp
 ……………………はい?
 今度こそ私の脳は、その言葉を理解できませんでした。
 お嬢様は一体、今何と仰ったのか?
 例によって聞こえなかったわけではないのです。ただ、頭が理解を拒んでいただけで。
 それでももう一度その言葉を聞き返すのは何だか致命的なことになってしまう気がして、私は何とか思考を紡ぎだします。
 メアリとの赤ちゃん、とはどういうことか?
 そもそもお嬢様は、何だってそんな慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でていらっしゃるのか?
 ――もしかしてお嬢様は、先ほどの行為で赤ちゃんができたと思っているのではあるまいか?
 いや、いやでもまさか、そんな!
 お嬢様に性的な知識がないとはいえ、いくら何でも男女の間でなければ子供ができないことくらいご存じのはずです。
 だって、そのための器官がないのですから。そのことも先ほど、ちゃんとご説明したはずで……
 ……あ。

 ――お嬢様のここに、殿方の一物を……
 ――イチモツ?
 ――……えぇ、ここにはないので私の指で代用いたしますが。

 あの時、私はそういったと思います。『代用』と、そういう言葉を使ったのです。
 その為、お嬢様はこう思ったのではないでしょうか。あぁ、赤ちゃんを作るには『原則的に』男性の『イチモツ』という器官が必要だけど、それが無ければ女性の指でも代わりに使えるんだな、と。
 原理を知っていればすぐさま違うと分かる理屈ですが、文脈としてはそう受け取れないこともないのです。
 赤ちゃんの作り方を教えてくれるのだから、赤ちゃんができないことをするはずがない――そうも思ったのかもしれません。
 ――このままじゃ……メアリとの赤ちゃん、作れないよ?
 私が理性を失うそのほんの一瞬前、そのようにも仰っていた、ような……
「……あ、あああぁぁぁぁぁぁぁ………」
 冷や汗がどんどん流れてきます。知らず、口角がぴくぴくと上がっていきました――別に笑っているのではなく、単に痙攣しているだけです。
 先ほどまでの勇気など、今や微塵も残っていませんでした。何か恐ろしいことが起こる、何か――そんな予感に私の心臓はひっきりなしに警鐘を鳴らし続けます。
 そんな私の惨状を慮れるはずもなく、お嬢様は私の胸元に頬を寄せると、幸せそうに言ったのでした。
「ふふっ……頑張ろうね、メアリお母さん」
 その言葉に何と答えたのか、正直なところ定かではありません。
 張り詰めすぎた緊張の糸がぷっつりと切れてしまったのか。私はその言葉が聞こえたのを最後にして、意識の手綱を手放してしまったのでした。


 ――これが、私とお嬢様の初体験の顛末です。
 後にして思えば、私はこの時きちんと間違いを正しておくべきだったのです。この日の行為は模倣であること、お嬢様との間には赤ちゃんができないことをきちんと説明すべきでした。
 はい、結果論です。何度思考を繰り返しても、お嬢様にめっぽう弱い私にそれができたとは思えません。
 ですから、この後に起きることも必然であったのでしょう。
 旧約聖書において、人類の受難はまさにエデンの追放から始まるのです。その記述は示唆的であり、これから起こる出来事を暗示しているようですらありました。
 お嬢様の勘違いが巻き起こす、未曽有の大スキャンダル。それはノアの大洪水が如く伯爵家を大きく揺るがし、私は事態の収拾を図るべく、およそガヴァネスらしからぬ大立ち回りを演じることになるのです。

 ――えぇ。もっとも、それは別の話になるのですが。



<了>
0359名無しさん@ピンキー2016/03/06(日) 01:51:00.60ID:lW2XTHkp
以上、リクエストの『おねロリ主従』でした。
色々あって前回から投稿が大幅に遅れて申し訳ないです。

前述の通りノクターンノベルズでも活動を始めましたが、こちらの方でも何か思いつけば投稿していきたいなと考えております。
今回のように何かお題を頂戴して短編を書かせてもらうかもしれません。
ともあれ、今まで通り暖かく見守っていただければと思います。
お目汚し失礼しました。
0364名無しさん@ピンキー2016/08/05(金) 18:21:16.95ID:TQW/UDwB
早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜

とある女子学園の入学式。
3年目の教師、鬼束早百合は校門脇に立ち、入学式のため登校してくる新入生たちを見守る。新入生たちは誰もかれも希望と少しの不安に瞳を輝かせ、頬を上気させている。
初々しくも晴れやかな表情の乙女たちは、校門脇に立つ女教師の姿を視界に捉えると、みな一様に表情を変える。はっとした表情、息をのみ、目を見張り、頬を上気させる。

とっても、キレイ…!!

慈母のような表情で新入生たちを見守る女教師、早百合は、類まれなる美貌の持ち主だった、絹のようなさらさらの黒髪を肩のあたりで切り揃えている。
清楚な佇まい。キリリとした目元、瞳は潤み輝く。艶やかで蠱惑的な唇。艶のある表情。地味な紺色のスーツを纏ってもその抜群のスタイルは隠せない。溢れ出る大人の色気。

誰もが見惚れる美貌の女教師。だが、その内心は。

…あああああ!この子もあの子もかああいいいいっ!!
…いますぐどっかに連れ込んで押し倒して、あんなことやこんなこと教えてあげたいっ!

彼女は、登校してくる新入生たちを自分の獲物としか見ていない。
より取り見取りの獲物が集まる狩場で、次の標的を探しているのだ。

…女子高の教師。それは我が天職。
…そこは周りを愛らしい乙女たちに囲まれた地上の楽園。
…私に処女を捧げるべく集いし天使たちよ、待っててね。
…あなたたちの知らないあんなことやこんなこと、
…いっぱいいっぱい教えてあげるから…!!

そう、鬼束早百合、またの名を”鬼百合”
それはこの女子学園に巣くう魔性の存在。
何人もの女生徒たちを毒牙にかけてきた乙女の敵。
穢れを知らぬ乙女たちに、貞操の危機が迫っていた。
0365早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜2016/08/05(金) 18:22:43.10ID:TQW/UDwB
※※※

(ど、れ、に、し、よ、お、か、な?う〜目移りしちゃうわねぇじゅるる)

…などという内心をおくびにも出さず、早百合は慈母の笑みを維持したまま、新入生たちを見守る。

(選り取り見取り選り取り見取り。でも、だからこそ、狙いを定めてこれぞ!という子を…ん?)

獲物を吟味する早百合の視線が、一人新入生と絡み合った。

「…あの子…!」

その新入生は、早百合と視線が合うと慌てたように顔を伏せ、足早に歩き去っていく。

「あらん、照れちゃってかぁーいー」

すれ違いざま、早百合はその少女を観察する。
無造作に断ち切ったようなざっくりとしたショートボブ。髪の手入れもあまりしていないようだ。
分厚い黒縁眼鏡で視線と表情を隠し、うつむき加減に歩く姿は、一見、地味で野暮ったい少女に見えた。だが。

(私の眼は、誤魔化せないわよ)

数多の少女たちを手込めにしてきた、百戦錬磨の鬼百合の眼は、その少女の真価を見抜いていた。

(あの子は…磨けば光る原石!!)

眼鏡の奥の瞳、その輝きを、視線が絡み合ったわずかな時間でも、早百合は見逃さなかった。
大きくつぶらなその瞳。そしてその抜群のプロポーションの良さは制服の上からでも見て取れた。

(決めた…!あの子にしよう)

その少女…後に生徒名簿で「公城 遥」との名前が判明するその少女は、鬼百合と今年度最初の獲物としてロックオンされた。
だが、そのことが、早百合と遥の運命を大きく変えていくことになる…

※※※
0366名無しさん@ピンキー2016/08/05(金) 18:24:02.82ID:TQW/UDwB
新入生面談。
その名目で、早百合は遥と2人きりになる機会を早々に手に入れた。
生徒指導室に現れた遥を、正面からまじまじと見て、早百合はおのが眼力に間違いがなかったことを確信する。

(やっぱり…こ、この子、かぁいい…っ!)

早百合は思わずごくりと喉を鳴らす。
卵型の丸みを帯びた輪郭に収まった目、鼻、口の配置のバランスの良さ。
眼鏡のレンズの奥にあっても少しも輝きを減じない、意思の強さを感じさせる瞳。
バラ色の唇は艶やかでなまめかしく、その年齢に不相応ともいえる艶を持つ。
均整の取れた肢体、制服の胸元を押し上げるのは十分に発達したバスト。
腰の括れから臀部にいたる曲線も、スカートから伸びる脚線美も艶めかしく美しい。
だが、その無表情と手入れをあまりしていなさそうな髪、うつむき加減の姿勢が、若さゆえの溌剌さを欠く態度が、彼女の魅力を大きくスポイルしているようだった。

(どうして自分の魅力を出そうとしないの?分かっていないはず、ない。逆に隠そうとしてる…なぜ?)

早百合は自問する。だが、答えなどわからない。だが、それ故に。

(私が貴女の魅力を開花させてあげる。貴女の知らないこと、いっぱい教えてあげる…)

含み笑いをその蠱惑的な唇に載せて、早百合は生徒指導室に入ってきた公城遥に歩み寄る。硬い表情の遥の緊張を解こうと微笑みかけるが、反応はない。

「そんなに硬くならないで。ざっくばらんにお話ししましょう」

たいていの男が骨抜きにされかねない蠱惑的な微笑を浮かべ、早百合は言う。

「私は鬼束早百合。担当は数学。入学おめでとう、公城さん、これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします。鬼束先生」

礼儀正しくお辞儀をする遥。その動作もしなやかで、早百合には好ましいものだった。
当たり障りのない新入生面談をするうち、日は西に傾き、窓からはオレンジ色の光が差し込む。
と。

「これから貴女には素敵な学園生活が待っているわ。私がそのお手伝いをできると思うの」

教師の顔から、獲物を狙う狩人へ。早百合が変貌する。
椅子から立ち上がり、遥の横へと回り込む。そっとかがみこみ、遥の顔を覗き込む位置。

「貴女の知らない…いろいろなこと、教えてあげられるわ」

妖艶ともいえる、艶の籠った声。相手の魂さえ震わせる色気を伴うセイレーンの歌声。
男なら一瞬で、たとえ同性でも頬を染め惚けさせる魔性の声だった。遥も、また例外ではないようだった。びくん!と身体を震わせ、頬を赤らめ硬直する。

「私の、知らないこと?」

硬直ののち、はっと我に返った遥は、怪訝な表情を浮かべる。
その戸惑いのため寄せられた眉根。早百合が何度ともなくみてきたものだった。だが。

「…私が、何を知らないっていうんですか?」
「え…?」

それは不遜ともいえる声音だった。早百合を、相手を馬鹿にしたような嘲りを含む声。

「先生が考えていらっしゃる以上に…私は、いろいろな事とやらを知っていると思います」

そして、それはまた挑むような声だった。早百合は一瞬の躊躇の後、一旦は狂わされかけたペースを取り戻す。

「じゃあ…試してみる?」
0367早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜2016/08/05(金) 18:25:16.14ID:TQW/UDwB
そう囁き、早百合の指先が遥の顎を捉えた。そしてバラの蕾のような遥の唇を、奪う。
遥の眼が、眼鏡の奥の大きな眼が、一層大きく見開かれる。驚愕の色を浮かべて。
その一瞬の機を逃さず、早百合の舌が遥の唇を割り、口腔内に侵入を果たす。

「ん、んん…っ!?」

戸惑い、抵抗しようとする遥を強引に制し、舌先で遥の口腔内を犯す。
歯茎をなめ、舌と舌を絡め、甘い甘い唾液を注ぎ込み、蹂躙する。
遥はびくびくと身体を震わせ、瞳を蕩けさせていく。

(ちょろい…!)

早百合は内心、勝利の快哉をあげる。
卓越したテクニックを持つ早百合にかかれば、経験不足の少女を口付けだけで落とすことも可能なのだ。
これまでにも何人もの少女を陥落させてきたおのが手腕に絶対の自信を持つ早百合は、次の行動に移る。

「ふは…ふぅ…」

ことさらに甘い吐息を吐きながら、遥の唇との間に銀の橋をかけ、いったん離れる。
惚けた表情を浮かべる遥を正面から見据え、妖艶ともいえる笑みを浮かべ囁く。

「どうかしら?貴女の知らない、大人の、キス…感じちゃった?」

蕩けた表情のまま、遥は答えない。

「もっと素敵な事、教えてあげるわ。どう?教えて、欲しい?」

遥は答えない。だが、その瞳に変化が生じる。
惚けたままの表情が引き締まり、我を取り戻す。
その口の端にうっすら笑みを浮かべて。

「せんせ…キス、上手ですね。ちょっと、感じちゃった」

妖艶ともいえる表情。15、6の少女が浮かべられるものでは、無かった。

「え…?」
「だから、お返し」
「んんっ!?」

遥の腕が早百合の首筋に伸び、絡みつき、引き寄せた。
ぶつかるような勢いで唇同士が接触、今度は遥の方から舌が侵入。

「んんっ!?ん…っ…!んん…っ!!」

先ほど、早百合がしたように、今度は逆に早百合が口腔内を犯される。
ねろねろと動く遥の舌先、吸い付くような唇、ちゅばちゅばと音を立てて注がれる唾液の甘さ。

(…な、なに、この子…う、うまい…っ!?)

早百合の胸中に戦慄が走る。
これまで何人もの少女を陥落させてきた早百合以上の、超絶テクニック。
早百合の感じるところを知り尽くしたような甘く激しい口づけ。

(や、やだ…こんなの、感じ、ちゃう…っ!?
0368早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜2016/08/05(金) 18:26:05.38ID:TQW/UDwB
だが、それだけでは終わらない。遥の手が早百合の胸元に伸び、器用にブラウスのボタンをはずす。
遥の手がするりと早百合のブラの内側にあっけなく侵入を果たし、そして。

「あふっ…うぁ…っ!!あ、あ、あ…っ!!」

思わず、声が漏れる。遥の指先が早百合の胸を、乳首を、優しく愛撫する。
あっという間に性感帯を特定され、、転がされ、撮まれ、爪弾かれる。

「や、やあ!な、なんで…こんな…っ…んふぅぅぅう…っ!!」
「せんせ、感じやすいんですね。可愛い」

そう囁かれ、早百合の頬が羞恥に染まる。

(うそ、なんで、こんなに上手なの…!なんで、こんなに、感じるの!?

遥はさらにキスの雨を降らせながら、早百合の胸を愛撫し続ける。そして早百合の腰を抱き、そのまま立ち上がった。
つられるように早百合も中腰から直立の態勢になる。すると腰を抱いていた遥の腕が動き、早百合のタイトスカートの内側に潜り込む。

「ひぅ…っ!」

敏感な太腿の内側をそっと撫でさすられ、早百合が反応する。遥がくすりと笑い、早百合は羞恥にさらに赤くなる。
太腿への愛撫を続けながら、遥の手はタイトスカートをまくりあげ、徐々に深部へと向かう。

そこはすでに熱く潤い、より強い刺激を待ちわび、ひくついている。
そのことに自身気づいてしまい、早百合は羞恥し、困惑する。

(濡れてる…!溢れちゃってる…!こんなに簡単に…なんで?
(この子が、うますぎるから?それとも…この子に、されてる、から…

遥の行動が、自身の身体の反応が、想定外にすぎて早百合は混乱の極みにある。ろくに逆らうこともできぬまま、遥の…年下の少女に翻弄されてしまう。
早百合のスカートの中に潜り込んだ遥の手は、熱く潤った早百合の花園に到達する寸前で止まった。
ショーツの縁に沿うように指先を滑らせながら、早百合の情欲を煽りたてていく。

(や、やだ…!焦らされてる…!!
(し、してほしい…のに…っ!!

すでに口付けと胸への愛撫だけで昂り、意識さえ朦朧としている。
もっと強い刺激が、快感が欲しいと、早百合の身体が絶叫していた。

「い、いや…っ…!そんな…そんな…っ」

いやいやをするように首を振り、早百合が喘ぐ。

「せんせ…もっとして欲しい?」

遥の囁きに首肯してしまいそうになるが、わずかに残った理性が首を横に振らせる。
このまま認めたら…取返しのつかないことになる。そう感じて。

「うふ…うそつき」
0369早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜2016/08/05(金) 18:27:01.26ID:TQW/UDwB
眼鏡の奥の瞳を妖艶に輝かせ、魔性の笑みを浮かべて、遥は囁く。
そして早百合の秘部の近くを彷徨わせていた指先を、そっと熱く潤う中心部に触れさせた。

「ひぅ…っ!!ふあ…っ!!」

早百合がびくん!と震える。

「こんなに濡らして、欲しがってるのに」
「ちが…そんな…そんな…!!」

違う、違うの。おかしい。こんなのおかしい。
逆よ。これじゃ立場が逆じゃない。私が…
私が彼女に教えてあげるはずだったのに。

遥の態度とその絶妙な愛撫に、早百合は混乱の極みにある。

「せんせ。私が教えてあげる。せんせの知らない快楽を」

違う。教えてあげるのは私、私が先生なのに。
どうしてこんなことに?でも、ああ、欲しい…
もっと、してほしい…!!

「ほら、ここ。せんせの一番気持ちいいところ。気持ちよくしてあげる」
「ああ…ああ…」
「ほら…待ち遠しくてこんなに熱くなって、こんなにいやらしいお汁を溢れさせて…」
「いや…いやいやいや…」
「欲しいでしょ?気持ちよくなりたいでしょ、せんせ?」
「ああ…っ!ああ!ああ!ああ…っ!!」
「して欲しいって言って?おねだりして?そしたら…」
「ひあっ!?」

ショーツの上から、遥の指がぐっ…と押し当てられる。
その刺激に思わず声をあげてしまう早百合。
だが、それ以上の刺激は、快感は齎されない。
生殺し。快感の一歩手前で堰き止められた、行き場を失った劣情。

「いっぱい気持ちよくしてあげるよ、せんせ…?」
「あ………っ!あ!あ!ああああ!あああ!あああ!」

ひくひくと全身を痙攣させ、煩悶する早百合。
そしてついに理性が決壊する。

「も、もうだめぇぇ!し、して!き、公城さん!してぇ!」
「何をしてほしいの?せんせ?どうしてほしいの?」
「そ、そこ、もっと…もっと…!!」
「そこってどこですか?ねえ?」
「お…おま…っ!!」

羞恥に言いよどむ早百合。その煩悶する表情を、眼鏡の奥の瞳が見据える。
その昏い情念を秘めたような輝きに、早百合の背筋をぞくりとしたものが走る。

「ほら、いいなさい、せんせ。してあげるから。せんせがしてほしいこと、全部」
「あ…あああ…っ!お、おまん、こ…っ」

早百合は悟った。もう逆らえない。この少女には、どうしても逆らえないのだ、と。
0370早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜2016/08/05(金) 18:27:46.36ID:TQW/UDwB
「お、おまんこ!弄って!弄ってほしいの!」
「おまんこのどこ?せんせはクリ派?それとも、中がいいかしら?」
「ど、どっちもぉ!クリ、い、弄って…!な、中も掻き回して…っ!」

いやらしいおねだりが止まらない。欲望を吐き出すことで、さらに煽り焙られる。

「ぐちゃぐちゃに掻き回してっ!お願い!お願いお願いもう我慢できないのっ!」
「いやらしい。それに欲張りですね、せんせ。いいわ…」

くすりと笑い、遥が囁く。

「ぐちゃぐちゃに、してあげる」
「あ…っ…っ…!?ひぁあああああああああっっっ!!!!」

じゅぶりっ!音がして、遥の人差し指と中指が奥まで飲み込まれた。
早百合のショーツをずらし、強引に中へと、膣内へと差し込まれ、掻き回す。
同時に親指が、昂奮し肥大し包皮からすでに顔をのぞかせていた陰核を押しつぶし、転がし、爪弾く。

「あひっ!?ひあ!あ!あ!あ!あああっ!あふぅあっ!あ!」

がくがくと全身を痙攣させ、早百合は悶え、喘ぐ。

「そんなに気持ちいいですか?待ち遠しかったんですね。大きな声…聞こえちゃいますよ?」

生徒指導室はその性格上、防音設備が施されている。
よほどの大音量でなければ外に漏れることはない。
だが、もし誰かに聞かれたら?そう考えることが早百合の羞恥と興奮を煽る。
遥の行為はすべて早百合がこれまでに数多の少女に行ってきたことだった。
初めて責めから受けに転じてしまったことで、早百合は混乱しつつも、異常な昂奮を感じている。

(すごい…すごいいいいいいいっっ!すごく気持ち、いい…っ!
(どうしよう…どうしようどうしようどうしよう…こんなの…こんなのされたら…っ!
(でも、気持ちいい…気持ちよすぎて…どうしよう…っっっ!!

「んあああっ!あ!あひぅ!あ!ああああ!あ!あ゙あ゙あ゙っ!あ゙、あ゙、あ゙…っ!」
「いいんですよ、気持ちよくなって。ほら、もっと…もっと感じていいんですよ」
「ひやら…っ、らめっ!もう…っ…らめぇぇぇぇっっっ!!」

じゅぶじゅぶと淫靡な音が響き、早百合の全身から香しい汗が噴き出す。
全身が快感の大波に翻弄され、恍惚に表情が蕩けていく。
そして、早百合の身体は宙に浮きあがるような感覚に晒され、ついに…

「らめぇぇぇぇっっっい、いく…っ!!いっちゃ……っ」
「いって、せんせ…」
「ぅああああああああ゙あ゙あ゙あ゙ーーーーーーーーっっっ!!」

全身をがくがくと痙攣させ、弓なりにのけぞり、早百合は達する。
絶頂の快感が爪先から脳天まで突き抜けていく。
身体が中空に投げ出され、次いで落下していく。

「……っはあ!はあっ!はぁ…っ!!」

スカートの裾から、つつぅ…っと愛液を垂らし、口元からは涎を、目元には涙を滲ませ、惚けた表情で絶頂の余韻に浸る早百合を、遥は冷めた目で見据えていた。

※※※
0371早百合と遥 1 〜鬼の霍乱〜2016/08/05(金) 18:28:15.21ID:TQW/UDwB
遥の手から解放された早百合の身体は、そのままがっくりと、糸の切れた操り人形のように床に突っ伏してしまう。
荒い息を突く早百合を、遥は無表情に見下ろし、そして踵を返し生徒指導室を出て行こうとする。

「ま、って…公城、さん…」

荒い息の間から早百合が呼ぶ。
遥は足を止め、振り返る。
その顔に、眼鏡の奥の冷ややかな眼差しに、早百合は心を鷲掴みにされる。

(わ、わたし…私は…
(どうしてこの子に惹かれたのか、
(そしてどうしてこんなにも感じさせらたのか
(いまならわかる…きっと、私は…

荒い息を吐きながら、自分を見つめる女教師に怪訝な表情を向ける遥。
そして早百合の口から、遥も、早百合自身も予想だにしていなかった言葉が飛び出す。

「公城さん…いえ、遥…私、貴女が…好きです」
「…は?」

(そう、初めて見たときから…!
(私は、きっと貴女のことが…!

「好きなの。遥…!」

数多の少女を毒牙にかけてきた鬼百合の、これが最初で最後の、本気の恋であった。





続く。。。
0373早百合と遥 2 ?変転?2016/08/13(土) 01:25:48.79ID:tF8d/2gm
早百合と遥 2 ?変転?



朝まだき早朝の学園。
まだほとんど人影のない新しい朝。
人気のない教室に2つの人影がある。

「先生…鬼束先生?」

美貌の女教師・鬼束早百合に、傍らに寄り添い、しなだれ掛かった少女が甘い声で囁く。
今年2年に進級した愛らしい少女、薫は、早百合の恋人の一人だ。
久しぶりの逢瀬を楽しもうと甘い声で呼びかけるが、早百合の反応は芳しくない。

「先生?早百合さんっ!」
「ぅおっとぉ!?ご、ごめん、なに、薫ちゃん?」

薫がふくれっ面になる。恋人にすげなくされて怒らない女はいない。

「ひどい、先生!せっかく久しぶりに2人っきりになれたのに」
「あ、いやその…ごめんごめん。で、なに?」

薫はさらにほっぺたを膨らませて、早百合に詰め寄る。

「…ほかの子の事、考えてたんでしょ?」
「あう」

図星であった。

頭を離れない一人の少女の顔。彼女から齎された悦楽。
それらが一瞬、早百合の脳裏をよぎり、頬を朱に染める。

「先生…どうしちゃったの?」

早百合の表情にいつもとは違う空気を感じ、薫は問う。

「な、なにが?」
「…まるで恋する乙女みたいな顔、しちゃって」

それもまた図星であった。

※※※


そうだ、一目惚れだったんだ。初めて彼女を見た時から、彼女に惹かれた。
だからあんなにも感じちゃったし、あれ以来彼女の事が頭から離れない。

公城 遥。
一見地味な、おとなしく目立たない少女。
でも、分厚い眼鏡の奥の瞳に魔性の光を宿した少女。
大人顔負けのテクニックを持ち、私を翻弄し篭絡した少女。
彼女を想うと身体が熱くなる。
逢いたくて、胸が痛くなる。
なんてことだろう。これは恋だ。
私の、鬼束早百合、初めての本気の恋…!

※※※
0374早百合と遥 2 ?変転?2016/08/13(土) 01:26:36.64ID:tF8d/2gm
2年の数学を担当する早百合は、基本的に一年の教室に用はない。
だがその日、一年生たちは不審な女教師の姿を一度ならず目撃する。

柱の陰に身を潜め、きょろきょろと何かを探す早百合の姿は、不審人物以外の何者でもなかった。

早百合が追い求めているのは、もちろん公城 遥。

何をしようという訳ではない。とにかく、一目、その顔を見たい。出来れば話をしたい。
しかし早百合は教師で遥は生徒なのだ。堂々と話しかければ良いだけなのだが、そんな事にも考えが至らない。
止むに止まれぬ衝動のまま、早百合は遥の姿を追い求める。

「…先生、何をしてるんですか?」
「うひゃう!?はる…っとと、き、公城さん!」

僥倖、と言えるだろうか。
逢いたい想いを募らせた相手に声をかけられたこと自体は、そうも言えよう。
だが、不審者よろしくこそこそしている姿を見られたことは、そうは言えまい。

「誰か、お探しですか?」

眼鏡の奥の、鋭く冷ややかな、どこか蔑むような視線が、早百合を射抜く。
早百合の背筋をぞくりとした感覚が貫く。
だがそれはいやな感覚ではない。むしろ、早百合の求めていたものだったかもしれない。

「そ、そう!そうよ。あなたを探して…」

なんのために?そう返されることを恐れ、言葉が尻すぼみになる。
先日の、別れ際の冷たい視線が思い起こされる。

『貴女が好きです』

早百合のその言葉に、遥は答えることはなく、冷ややかな無表情のまま、その場を去ったのだ。
歯牙にもかけられなかった。
その記憶が、早百合を躊躇わせる。だが。

「…そうですか。じゃあ、また生徒指導室でよろしいですか?」
「…え」
「では放課後、行きますので、もう宜しいでしょう?」

それは、もう不審者みたいに一年の教室の周りをウロウロするな、という牽制だったが、早百合は天にも昇る気持ちで遥の言葉にこくこくと頭を上下させる。

「う、うん。ええ、はい。じゃ、じゃあ放課後!」

もちろん、早百合の脳裏にはあの日の記憶が蘇っている。
目眩く初めての快感。恋に目覚めたあの時の記憶が。

(もしかして、もしかしたら…彼女も、実は満更でもないんじゃ…!

微かな希望が、早百合の心を支配する。そして…

※※※
0375早百合と遥 2 変転2016/08/13(土) 01:27:35.71ID:tF8d/2gm
西日射す、夕暮れの生徒指導室。
放課後になるやいなや、そこで待機していた早百合
が、遥が現れたのは2時間は経ってからだった。

「遅くなりました」

悪びれもせずそう言い放つ遥に、だが早百合は何ら文句はない。

(ああ、来てくれた…!ホントに来てくれた!

頬を上気させ、崇拝の視線を向けられた遥は、眉根を寄せ、不快感を表す。

「それで、ご用は?」
「え、うん、あの…」

用など無い。ただ逢いたかった。話をしたかった。ただそれだけなのだ。
もじもじと身をくねらせて、言葉を濁す女教師に、我慢ならない様子で遥は吐きすてる。

「用がないなら、一年の教室の周りをウロウロしないでいただけますか?」
「あ…ご、ごめんなさい、ただ、私…!」
「特に用が無いなら、失礼します」
「ま、待って…!」

用ならある。あるはずだ。話を、話をしたい…!
自分の事をどう思っているか、聞きたい…!

「こ、この前の!返事を、聞かせて欲しいの!」
「返事?私、何か先生に答える必要ありましたか?」

不遜とも言える態度で、遥は言い放つ。
その前で縮こまり視線を泳がせる早百合。

これではどちらが目上か、解らない。

「そ、その…私が貴女を、す、好きだって、言った事を…」
「聞きましたよ。それで?」
「あ、貴女は、私をどう思っていてくれるかな、って、その…!」

必死に絞り出した問い掛け。
だが、遥の反応は早百合の求めていたものではなかった。
遥は、はあ…と、大きく溜息をつく。

「私が、先生をどう思っているか、ですって?どうもこうもありませんよ。正直に言って欲しいですか?」

汚いものを見るような視線で、遥は早百合を射抜く。

「教え子に、年下の相手に、しかも同性に手を出す変態教師、です」

早百合が絶句する。

「これまでにも何人もの生徒にああいう事をしてきたんでしょう?最低です」

早百合には言葉もない。

「そんな最低教師が、私を好きですって?そんなの信じる訳ないでしょう?」
「た、確かに…!そうかも知れないけど…!」
0376早百合と遥 2 変転2016/08/13(土) 01:28:27.15ID:tF8d/2gm
何か言わなくちゃ。でないとこのまま、全て終わってしまう。
言いようのない不安と焦燥に駆られ、早百合は必死で言葉を紡ぐ。

「わ、私はこれまで何人もの生徒を…で、でも!こんな気持ちになったのは初めてで…!貴女の事が頭を離れなくて!」

必死に言葉を紡ぐ早百合に、だが遥はびしゃりと言い放つ。

「教師としてあるまじき行為をしてきた事は認めるんですね?そんな人を信じられる訳ないでしょう?」

自業自得と言えよう。早百合の頭からどんどん血の気が引いていく。寒気が生じて、がたがたと身体が震える。
自らの過去の行為のゆえに、早百合は初めての本気の恋を失おうとしていた。

「でも、だって…それでも…私は、貴女の事が…!」

もはや筋道だった言葉を発することも出来ない。

「貴女の事が、好き…!この前の事が頭から離れないの…!」
「そんなに、気持ち良かったんですか」
「…え?」

遥が、蔑む視線を向けている。

「私が好き?忘れられない?いいえ、先生は私からされた事が忘れられないだけ。あんなに感じてたんですものね、だから」

記憶を呼び覚まされ、自身の痴態が脳裏を過ぎり、早百合は赤面する。

「ち、違うわ!そうじゃないの!」
「じゃあ、気持ち良くなかった?」

そう問われれば絶句せざるを得ない。
気持ちよかったのだ。これまでに感じたことのない程に。初めての悦楽だった。

「ほら、ね」

せせら笑いながら、遥が早百合に向け、一歩を踏み出す。
何故か、早百合は思わず後退る。
まるで蛇に見据えられた蛙のように硬直し、喉が渇き、鼓動が高まる。
心臓が早鐘を打ち、汗が噴き出す。
また遥が一歩を踏み出す。早百合は後退。
また一歩。後退。

そして、早百合は壁際にまで追い込まれる。
すぐ目の前に嘲りの表情を浮かべた遥。
分厚い眼鏡の奥から早百合を射抜く侮蔑の視線。

「やっぱり、最低の変態女。私にまたして欲しいだけなんでしょう?気持ちよくて忘れられないから、それで好きなんて言ってるだけ」
「ち、違うの!違う違う違う!」
「違わないわ」

そう冷酷に言い放つと、遥の唇が早百合の唇を塞ぐ。

「ん…っ!?んん…っ!!」
0377早百合と遥 2 変転2016/08/13(土) 01:29:02.78ID:tF8d/2gm
思いもよらぬ遥の突然の行動に、早百合は目を白黒させる。
だが、状況はどうあれ、恋い焦がれる相手から口付けされた早百合は、あっという間に表情を蕩けさせ、その唇を味わう事しか出来なくなる。
無我夢中で遥の唇を味わう早百合に対し、だが遥はやはり表情を変えない。
しばし早百合の好きにさせてから、遥は身を引く。唇の間に銀の橋が架かる様を、早百合はうっとりとした視線で追う。

「ほら、結局それだけ。気持ちよくなりたいだけ」
「そんな、こと、そうじゃ、ない…わ、私、私は…」
「お望み通りしてあげますよ、先生」
「…ひぅっ!?」

いつの間にかタイトスカートの中に手を入れられていた。
ショーツの裾から強引に遥の手が潜り込み、一気に突き立てる。

「つ…っ!!い、いた、い…!!」

さすがにまだ十分に潤ってはいなかっな膣に、いきなり2本の指を突き立てられ、早百合は苦悶の表情を浮かべる。

「気持ちよくない?気持ちいいでしょ?ほら、いやらしい変態の先生?」

言い募りながら、遥の指が激しい抽送を始める。
早百合の成熟した膣は、その刺激に応じて愛液を分泌。
最初は力任せだった抽送も、早百合の膣が潤い始めると滑らかになり、早百合に快感を齎すようになる。

「んんっ!んはあっ!あ!や、はげし、いぁっ!」
「ほら、こんなに無理矢理されてるのに感じちゃうんですね?変態で淫乱な、どうしようもなくいやらしい先生?」
「ちが…っ!あ!わた、しぃっ!そん、な…ひあうっ!」
「ただ気持ちよくなれればそれでいいんですよね?私が好きだなんてウソ、せいぜい感違い。どうせ貴女もあの人と同じ…っ!」

快感に翻弄される早百合の頭に、その言葉だけは刻み込まれた。


あの人と、同じ?
私が?誰と同じなの?

遥の、かつての…?


だが、思考がまとまらない。


「んあっ!あ!ひぅあっ!だ、だめ!わ、たし、もう…っ!」
「勝手にいきなさい。いけばいいわ…!」
0378早百合と遥 2 変転2016/08/13(土) 01:29:24.64ID:tF8d/2gm
ひときわ激しく、さらに奥まで、遥の指による抽送が強まる。
いや、ただ激しさを増しただけではなかった。
突き立てた指の先端をくっ…と曲げられ、その先が当たる部分を、早百合の膣内のGスポットを、的確に刺激していた。

「あぐっう…っ!だめ…っ!はげし過ぎ…っっ!!あ……!?」

来る。早百合の心に恐怖を感じさせるほどの激しい、未曾有の快感が、来た。

「あがっ…!!あひぃぃいいいあああっぅ!」

ぶしゃあっ!と、音を立て、早百合の陰部から愛液が噴き出す。
絶頂の快感に、がくがくと全身を震わせ、早百合は果てた。
荒い息を吐き、床に頽れる早百合を一顧だにせず、遥は生徒指導室を後にした。

※※※

生徒指導室を後にした遥は、足音高く廊下を進む。
無性に腹立たしかった。

何が腹に据えかねるのか、自分でも定かでないまま、遥は荒々しく歩を進める。

ふと自分に向けられる視線を感じた。
廊下の向こう…1人の女生徒が遥に視線を向けていた。

リボンの色が違う。上級生だ。
挑むような視線を向ける上級生を無視して、遥は歩き去る。
上級生の少女…薫は、遥の後ろ姿を見送り、ひとりごちた。

「あの子が、先生の…!」




続く。。。
0379名無しさん@ピンキー2016/08/13(土) 02:22:01.24ID:d5o4yRhA
割と短いスパンで2話も来てるヒャッホウ!
こういうのいい…
0380名無しさん@ピンキー2016/08/13(土) 03:18:38.99ID:aewRldRe
投稿ありがとうございますとしか言いようがない……
続きは待機してるので是非お願いします
0381早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:25:08.05ID:xE0QVu4K
公城 遥は、憤っていた。

その理由が自分でも解らない。
いや、原因があの女教師にある事は明白だ。
だが、彼女の存在が、行動が、その言葉が、何故こんなにも自分の心を掻き乱すのか。それが解らない。

自室に帰り、後手にドアを閉め、眼鏡を外すと、遥は大きく溜息を吐く。
霞んだ視界に映るのは、熱を持った頭を過るのは、あの女教師。鬼束早百合の事。
とても、とても綺麗な先生。でも、何故か憎らしく、遥をイラつかせ、胸をざわつかせる存在。

彼女と、同じだから?

…どうせあなたも彼女と同じ!

いみじくも、早百合に対してふと放った言葉が、自身の疑問への答えになるような気がした。

※※※
0382早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:25:51.01ID:xE0QVu4K
彼女…先輩。優しくて綺麗で、私に色んな事を教えてくれた人。
私の、初めての人。

1年前。初めて先輩に出逢った時。
彼女はとても綺麗で、私の心を鷲掴みにした。

そして私は気付かされた。私は、普通じゃない。私が好きになれるのは同性だけ。

彼女が、先輩が私の想いに応えてくれるはずなんて無いと思ってた。
だってそんなの普通じゃない。変だもの。

でも、先輩は…先輩は、応えてくれた。
はにかみながら、私も遥が好きだよって言ってくれた。
幸せだったんだ。最初の内は。

私達は、幾度となく身体を重ね、愛し合った。
私は先輩をもっと気持ちよくしてあげたくて、努力したっけ。
私の唇で、指で、感じてくれる先輩が愛おしくて。

でも。あれはほんの一月程前………

「先輩。この前一緒にいた男の人…」
「え、うそ?見られてた?やだあ」
「誰、なんですか?」
「ええ?わかるでしょ?か、れ、し。あはは」

私は絶句した。私は愛されてると思い込んでいたけれど、彼女にとって、私はそういう存在じゃなかったのだ。

「ん?なんだろ、好奇心、かな。それに遥、どんどん上手くなるんだもん、参ったぁ気持ちよくて。あはは」

ただの好奇心。遊びの関係。それが真実。

「いや、遥もさ、そろそろいい男見つけた方がいいよ、うん」

舞い上がっていたのは私だけ。私の事を理解してくれてた訳じゃ無かった。

「ちょっと、なにマジになってんの?ねえ、まさか私を、本気で?まさかねえ冗談、でしょ?」

好きって言ってくれたのに、愛してるって囁いてくれたのに。
身体を重ねあって、あんなに感じてくれたのに。なのに。

あんなの遊び、ロールプレイングゲーム。そういう演技。
彼女は悪びれずにそう言って、私の最初の恋は終わった。

また恋が出来るなんて、思えない。

※※※
0383早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:26:20.98ID:xE0QVu4K
遥は自室のベッドに身を投げ出し、天井を見上げている。
眼鏡を外した素顔は、普段より少し幼く見える。
普段は眼鏡で覆い隠しているくるりとした瞳、その目尻には涙が滲んでいた。

※※※

もう恋なんてしない。いや、出来ない。また、裏切られるだけだから。

「どうせあの人も先輩と同じ…」

だから、腹立たしいの?
冗談やウソ、好奇心で好きになられたって迷惑だから。
でも、もし。もし、あの人が本気だったら?
先輩と違って本気で、私を愛してくれたとしたら?

「…そんな都合のいい話、ある訳ないじゃない」

霞んだ視界に浮かぶあの人、先生に向かって私は枕を投げつけた。
無性に腹立たしかった。
そして、悲しかった。

※※※
0384早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:26:53.57ID:xE0QVu4K
「…はぁぁぁ」

鬼束早百合は深く大きな溜息を吐く。

「先生?どうしたんですか?」
「はっ!?えと、あの、ご、ごめん!えーっと、この問題だけど…」

授業中、教壇に立っていても、ろくに集中出来ない。

(教師失格ねえ、私は

そもそも教師の職を志したのも、周りにうら若き乙女たちを侍らせられる環境を欲したからだった。
そして生徒を次々と手篭めにし、今度は生徒に恋をして授業なんかそっちのけ。

(貴女の言う通り…最低ね
(それに…

あれ程罵倒され、それでも尚。
遥を想わずにはいられない。
そして遥を想うと、身体が疼く。濡れる。

(変態で、淫乱…か。そうね。そうかも

遥の蔑むような冷ややかな視線。
早百合を罵倒し嬲る言葉。
強引で容赦のない強姦じみた愛撫。
年下の少女から受ける屈辱的な行為の数々、それら全てが遥への想いを弱めるどころか加速させる。

(私、マゾっ気あったのかなあ…

穢れを知らぬ乙女たち、数多の処女たちに未知の悦楽を教える事が早百合の悦びだった。
だが、遥に出逢い、自身の秘められた性癖、あるいは欲望、あるいは…本質に気付かされたように思う。

(愛するだけじゃなく…愛されたかった、のかな…

「先生!ちゃんとしてください!」
「はっ!?ご、ごめん!」

教壇で物思いに耽ってしまった早百合を、生徒の1人が叱責する。
慌てて授業を再開する早百合に、その生徒…薫は、怒りとも哀しみともつかぬ複雑な視線を向けていた。

※※※
0385早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:27:17.54ID:xE0QVu4K
鬼束早百合は何人もの乙女たちの処女を散らしてきた。
それは次々に相手を乗り換えてきたという事だ。
一時、早百合との関係を受け入れた少女たちと言えど、早百合が自分から離れていけば、熱も冷める。
どれほど身体を重ねたとしても、やはり同性同士の関係は不自然だと、そう考える少女たちが殆どだったろう。

遥の先輩がそうだったように。

だが、それでも中には。

「先生、ちょっといいですか?」
「かお…橋本さん?いいわよ」

授業が終わり、昼休み。早百合は薫から、声を掛けられた。
早百合の恋人のひとり。遥に執心する前に、身体を重ねた相手。
そう。早百合の気持ちが離れれば、早百合の元を去っていく少女たちが殆どだが、それでも中には。

※※※

薫に促され、早百合は生徒指導室へと脚を踏み入れた。
外に面した壁際。そこで遥に…

つい先日の快感が蘇る。

(…ほんと、最低ね

思わず落ち込む早百合を、後ろから柔らかく暖かい感触が包み込む。

「かおる、ちゃん?」
「先生…私を捨てないで」
「かお…!?」

思わず頭を廻らせ、薫の顔を見る。
その瞳には大粒の涙が浮かんでいた。
次から次へと相手を乗り換えてきた早百合だ。こういった修羅場は初めてではない。
適当に宥めすかし、時を置けば、殆どの少女たちは熱病から醒めたように早百合の元を去っていった。
しょせん同性同士の関係なんてそんなものなのかも知れないと、早百合はどこかで了解していた。諦めていた、悟っていたと言ってもいい。好奇心からの、火遊び。一時だけの関係。

だが、遥への執着は…
早百合自身、自分の感情に戸惑ってもいたのだ。
そして戸惑いながらも理解していた。

本気の恋。相手が同性であろうと、いやそんな事は関係がない。
たった一人の、ただその人だけがいてくれればいいと思える相手。
だから、今の切ない胸の内を知った早百合なら、薫の想いもよく理解出来た。

「ごめん、薫ちゃん。私…私は」
0386早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:27:43.64ID:xE0QVu4K
しかし、早百合にはこう答えるしかなかった。

「好きな人が、できたの。もうその人の事しか考えられない」

薫が悲痛な表情を浮かべる。
所詮、振る側が振られる側より辛いなどという事は無いだろう事も、早百合は理解していた。

「いや!いやです先生!私…私!」

必死に縋り付く薫を、早百合は振り払う事も出来ない。

「ごめん。でも…!」
「いや!そんなの…許さないっ!」
「かお…っんん…っ!?」

強引に唇を奪われた。
涙に濡れる薫の顔が間近にある。
早百合の胸が軋み、痛む。
だが。

「…だめ。ごめん、ダメなの」

薫を制し、苦渋に満ちた表情と声で諭す。
このまま受け入れる訳にはいかない、と。

「先生…!ひどい、ひどいよ…!あんなに好きって。可愛いって。言ってくれたのに!」
「薫…!」
「お願い、先生…!せめて、最後に、もう一度だけ…」

薫が、早百合の腰に両手を回し、しがみつくように抱きすくめる。

「薫…!」

最後に、もう一度だけ。
受け入れるべきだろうか。だが、それが彼女の未練を断ち切る事になるのだろうか。
逡巡の末、早百合は薫の肩を抱き、そっと引き剥がした。

「ごめん、薫。やっぱり、だめ」
「せん、せ…っ!」

薫の表情を絶望の色が覆っていく。
早百合の胸は痛み続けている。
だが。そこで薫の表情が、変わる。
それは怒りの表情。破滅を望む自暴自棄の表情。

「ゆるさない…そんなの、ゆるさないんだから!」
「かお、る…?」

薫は肩に置かれた早百合の腕を振り払うと、両手を自らの制服のブラウスの合わせ目に掛け、一気に引き裂いた。
ブラウスのボタンが弾け飛び、青い果実のような乳房を包んだピンクのブラが露わになる。
0387早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:28:13.84ID:xE0QVu4K
「薫!?なにを…っ!?」

次いで薫はピンクのブラをも無理矢理に引き剥がす。ぷるん、と愛らしい乳房が揺れる。
さらにスカートのホックを外し床に落とすと、ほぼ全裸となった肢体で早百合に飛びつくように抱きついた。

「薫…っ!は、離しなさい!」
「いやよ!ねえ先生、私を見て!私を…抱いて…!」
「か、薫…!」

その熱情に気圧され、早百合が硬直した、その時だった。
生徒指導室の扉がからからと音を立てて開き、一人の少女が現れた。

「!?は、はる、か…!?」

なぜ、どうして、はるか、なんでここに?
早百合も、また遥も、共に言葉もない。
永遠とも思える静寂の後。

「…あれ?」

遥が呟き、自らの頬を手の甲で拭う。
手の甲が濡れていた。

「はる、か…」

滂沱と涙を流す遥。だが、一瞬の自失の後、悲しみと怒りをその面に湛えて、踵を返すと、脱兎のごとく走り去る。

「は、遥!!」

薫に抱きすくめられていることを忘れ、追いかけようとする早百合だが、もちろん、薫は離そうとはしない。

「薫…あ、あなたなの!?」

…ここに遥を呼んだのは、薫。

「そうよ、先生。言ったでしょ?私を捨ててあの子となんて、許さないって」

絶望の果てに、破滅を選んだのか。
こんな事をして早百合の心を引き留める事など出来るはずもないことを、解らないはずもない。
薫は高らかに笑う。
その嘲笑は、愚かな自分へさえも向けられていた。

※※※
0388早百合と遥 3 罠2016/08/14(日) 00:29:02.36ID:xE0QVu4K
ほら、やっぱり。

あの人も先輩と同じ。結局、私を裏切るんだ。

分かっていた。でもムカつく。
分かっていた。でも、哀しい。
ムカつくのは分かる。嘘をつかれていたんだ。

でも哀しいのは何故?
哀しくて悔しくて切なくて、涙が溢れるのは…
好き、だったから?

「私も先生の事を…?」

綺麗な人だと思った。
入学式の朝、先生と目があった時、思わず目を伏せていた。
つい見惚れてしまっていた事が恥ずかしくて。
生徒指導室で2人きりになった時、胸が弾んだ。
突然キスされて、驚いたけど。でも…とても素敵な、キスだった。

あの時、私は恍惚の表情を浮かべていたことだろう。

「…そっか」

でも。それでもやっぱり。
結局、裏切られたんだから、同じこと。

私があの人をどう思っていようと、信じられなければ同じこと。



続く。。。
0389名無しさん@ピンキー2016/08/14(日) 00:30:42.40ID:QKLaaH6/
GJ !
こういうライバルキャラは花を飾りますな
遥も満更じゃなかったのか!
続きに期待!
0390早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:21:40.98ID:1/lWP6DW
昼休みの学園を、早百合は走る。
タイトなスカートが、脚の動きを妨げる。
足元はヒールのパンプス、走るにはおよそ不向き。
行き交う生徒たちから呆気にとられて見送る中、それでも構わず早百合は息を切らせて走る。

「遥…!」

生徒指導室から走り去った彼女がどこへ向かったかなど、早百合に解ろうはずもない。
まだ彼女の事など何も知らないのだ。
でも、だからこそもっと知りたい。逢って話をして…愛しあいたい。

「遥…っ!」

どこにいるかなんて解らない。でもきっと見つかる。逢えるはずだ。
彼女と出逢えたこと、それ自体が奇跡。
だから、きっと。
根拠のない想いだけを信じて、早百合は遥を、愛しい少女を求め、走る。

※※※

晴れ渡った空に予鈴が鳴り響く。
屋上で空を見上げながら、遥は独りごちる。

「昼休み、終わっちゃった」

騒めきが潮のように引いていく。
昼休みの喧騒が嘘のように鎮まっていく。
ようやく得た静寂の中、遥はそっと溜息をつく。
胸が痛い。

「先生の…ウソツキ」

そう呟いた所で心は晴れない。

「先生のバカぁぁぁあっ!」

そう叫んでみたら、ほんの少しだけ気分が晴れた。

「変態教師!裏切り者っ!バカバカバカ、先生のバカぁぁぁっ!」

乏しいボキャブラリーを尽くして、力の限りの罵倒。と。

「変態のバカで悪かったわね。傷付くわあ」
「…せん…っ!?」

屋上の昇降口。荒い息を吐き、大汗をかいた早百合が、いた。
0391早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:22:03.03ID:1/lWP6DW
「どうして、ここが…」
「愛の奇跡?なんちて」

ふらりと一歩を踏み出す早百合。その手にはヒールの折れたパンプスをぶら下げて。

「生徒指導室のある一階から、順番に来たらここに辿り着いただけよ。ここにいなければ、今度は校庭から体育館講堂の順って予定だったけど」
「私を、探して…?」
「当たり前じゃない!あ、あんなとこ見られちゃったら…」

遥の脳裏に先程、生徒指導室で見た光景がフラッシュバックする。
早百合に、裸でしなだれ掛かる女生徒。
遥の胸が痛み、表情を軋ませる。
いま、自分はひどい顔をしてる。そう自覚せざるを得ない遥は、早百合の視線から逃げるように顔を背ける。

「誤解なの。あれは薫が、あの子が仕組んだ事で、私はあんな事するつもりは…」

追ってきてくれた。その事自体は嬉しい。
誤解だと言ってくれるなら、信じたい。
でも。

「そんなの、信じない」
「はる…!」
「信じられる訳ないでしょう?」
「ど、どうして…!?」

おろおろと動揺する早百合を見るうち、遥の心にふつふつと怒りが湧き出す。

信じたい、もう一度。信じさせてよ。
誤解なら、本当に私が好きなら!

自分でも感情を制御出来ない。
かつての心の傷が、彼女を素直にさせてくれない。

「どうせあなたもあの人と同じ!本当は私の事なんて好きじゃないくせに!」

激昂し思わず叫ぶ。

「あの人…って、誰なの!?貴女を…裏切った人?」
「好きって言ってくれたの!私だけだって!なのに!他の人と…男の人と!あなただってどうせ!」

言葉が堰を切ったように流れ出す。

「ち、ちがう!私は違うわ!貴女を裏切ったりなんてしない!」
「じゃあさっきのはなに!?」
「だ、だから誤解だってば!」
「あの子ともしたんでしょ?してたんでしょ!?」
「そ、それは…」
「それで今度は私!?あの子を裏切って!そしてその次は私を裏切るんでしょ!?」
「う…っ!そ、そんな、それは…」
0392早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:22:45.76ID:1/lWP6DW
反論出来ない。否定する根拠がない。
薫の想いを裏切った事は確かなのだ。
次は無い、もうしないといくら誓おうと、そんな誓いに意味などないと言われたら…返す言葉など無い。

「どうすれば…どうすれば、信じてもらえるの…私、私は……その人とは違うのに…っ!」
「同じよ!!」

早百合は自問自答する。でもそれは答えの出ないループ。
遥もまた、殻に閉じこもる。またも呼び覚まされた辛い記憶。

「先輩…あんなに愛し合ったのに、愛してあげたのに。気持ちいいって言ってくれたのに。私の気持ち伝わってるって思ったのに…!」

身体を重ねて、想いを伝える。

伝わるのだろうか?身体の温もりで、凍てついた心を溶かす事は可能なのか?
早百合は、それでも。それに賭けるしかないと思い至る。

「遥…!」

早百合はずかずかと遥に歩み寄り、両の腕を伸ばす。早百合の意図を悟った遥は逃げようとするが、すぐ後ろに柵があり、果たせず。
屋上の柵に押し付けられるような形で抱きすくめられる格好になる。

「なんのつもりですか先生」

冷静さを取り戻したのか、遥が冷たい声で問う。

「私の気持ち、伝えようと思って」

そう返すと早百合は唇を押し付ける。

「ん…っ!?んんっ…!」

なおも逃れようとする遥、だが、早百合の唇は、とても甘く官能的で。
甘い毒を注ぎ込まれていくようで、遥の脳髄をしびれさせる。

「感じて…私の気持ち」

重ねた唇にそう囁き、早百合は遥の制服の胸元に手を伸ばす。ブラウスのボタンをひとつ、またひとつと外していく。呆気に取られた様子で、遥が呟く。

「うそ…こんなところで、なにする、つもり…?」
「御察しの通り」
「…バカ、なの?誰か、来たら…!」
「授業、始まってる。誰も来ないわ」
「…変態。淫乱教師」
「そうね。そうかも」
0393早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:23:04.53ID:1/lWP6DW
問答の間に、遥のブラウスのボタンは全て外され、フリルを散らした愛くるしい、でも少し子供っぽいデザインのブラが露わになる。
それを愛おしげに見やり、早百合は遥のブラを外す。
はらりとブラが垂れ、まだ発育途上の、青い果実を思わせる遥の乳房が露わになる。
屋上を抜ける風に晒され、肌は泡立ち、乳首がツン…と尖る。

「ああ…可愛い、おっぱい」

早百合の行動に呆気に取られ、されるがままにされていた遥が我に返り、その頬を朱に染める。

「バ、バカ…!なにを、して…なにを、言って…っ!」

慌ててのしかかる早百合の身体を押し返そうとした、その時。

「きゃぅっ…んっ!!」

早百合の唇が、遥の乳房の先端を含んで、舌先で転がした。
思わず可愛い喘ぎ声を上げてしまい、羞恥に頬を火照らせる遥。

「だめ…っ!ば、バカ!やめてっ、てばっ!!」

だが、早百合は止まらない。唇で乳房を捉え、唾を含ませた口腔内で、舌先を使い、遥の乳首を嬲る。突き、転がし、押しつぶしては摘み上げる。

「ひんっ!あ!きやうっんんっ、あっ!」

早百合の変幻自在の舌使いに、遥の乳首は翻弄され、じんじんと痺れるような快感がその動きにつられて小爆発を連続させる。

(きもち、い…っ!なんで、こんなとこで、こんなこと…
(は、恥ずかしいのに…!なんで、こんなに…!

喘ぎ悶えながら、自身の乳房にむしゃぶりつく早百合を上から睨みつける。

(こんな人に…ウソツキの変態教師にされてる、のに…!

びくんっ!びくんっ!と身体の痙攣が止まらない。表情が快感に蕩け、惚けていくのが自分でもわかる。

(なのに…どうして、こんなに、気持ち、いいの…っ!
(嬉しくて、涙が、出るの、どう…してっ!?

わかっている。もう、わかってしまった。
先生にされてるから。だから嬉しい。気持ちいい。

先生が、好き…だから。私も先生が、好きに、なったから…!

「ひんっ!きゃぅっ!んあっ!はぅあっ!ひあっ!」

いやいやをするように首を左右に振りながら、早百合から与えられる多幸感とえもいわれぬ快感に翻弄されながら、でも、それでもと遥は胸中に唱える。
0394早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:23:23.41ID:1/lWP6DW
でも、先生は他の子とも…!
先輩みたいに私を裏切る…!
だから、認めちゃいけない。この気持ち。

だから、許しちゃいけない。先生のしたこと。
だから、信じちゃいけない。先生の言葉。
でも、だから、でも…!
ああ、気持ち、いい…!

「ひっ…い、いや!だ、だめっ!」

何か熱いものがせり上がってくる。
乳首と乳房から発した快感が全身を巡り、身体を熱くさせる。
滾ったマグマのような熱い塊が、降りてきて、身体の奥で…爆発、する。

「あ………っ、いや…だっ…!?」

わたし、いっちゃう………!?

「ひんっ!……っあ、あああああっ!!」

がくがくと激しく身体を震わせ、遥は達した。達して、しまった。

(うそ…っ。こんな、ことで。これだけで…?

身体から力が抜け、膝が笑う。
ズルリと身体が崩れ、床に伏してしまいそうになる。
早百合が乳首への愛撫をやめ、遥の身体を支えた。
そのまま横たわるような形になる。
屋上の、硬いコンクリートの床の上。にも関わらず、遥は柔らかいベッドに包まれているような錯覚にとらわれていた。

…先生に抱きとめられている、から?

その先生は…早百合は遥に覆いかぶさり、柔らかな笑みを浮かべ、遥を見下ろしていた。

「感じてくれた?私の気持ち。信じてくれる?私の想い」

その言葉は、遥の涙腺を刺激した。
ポロポロと涙が溢れ溢れて、遥の頬を濡らす。

「し、信じ、信じたいのにっ!信じたい、けど!」

頑なな心。閉ざされた心。
そう簡単には解けない、永久凍土に閉ざされた心。

「信じ、させてよお!せんせえ…!わ、私、わたしぃぃ…っ!」

もう恋なんて出来ない。出来るわけ無い。
女の子同士なんて、どうせ最後には裏切られる。
先輩も、先生も………どうせ!
0395早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:23:41.92ID:1/lWP6DW
「遥…っ!」

早百合は思う。自分に何が出来るのか。
何も出来ない。こうして、遥を愛することしか。
だから、せめて。

「信じて…私を。もう私、貴女しか見えないんだから…っ!」
「んひっ…くっ!うえ、うえええ…んくっ!」

再び乳房と乳首への愛撫。唇と左手での愛撫で、遥は泣きながら喘ぐ。
早百合の右手は、遥の制服のスカートを捲り、太腿を愛撫する。ひくんひくんと震える遥の太腿を、愛おしげに撫でさすりあげながら、早百合の右手は遥のフリルのついた愛らしいショーツに至る。

「あふっうっ!!ひあ…っあんっ!!」

既に熱く潤った遥の秘密の花園。

「遥…お尻、上げて」
「い、いや…そんな、だめ…」

ショーツの上から遥の秘裂をつんつんと刺激しながら、早百合は囁く。
いやいやと首を振る遥、だが、その腰は悦楽への期待からか、ひくひくと震えている。

「もっと感じさせてあげるから。全部、忘れさせてあげるから。私が貴女を愛するから…っ!」
「あ…っ!あ!あ!あ!」
「好きよ、遥」
「んんーっ!んあーっ!」

耳朶を震わせる、甘い愛の言葉。
その言葉に感じているかのように、遥は喘ぎ悶える。

「はっ!はっ!はーーーっ!あ!んあっ!あ!」
「遥…好き。好き好き好き…大好きっ!」
「はぅぅっ!あ!きゃうんっ!!」
「可愛い、遥。もっと感じて。もっと、私を…!」
「あーーーっ!あ!あ!あ!あああーーっ!」

乳首への愛撫と、耳元への囁き、そしてショーツ越しの秘裂への愛撫で、遥は昂り、身体を弓なりに反らせていく。
結果、腰が浮き、早百合の手がするりと遥のショーツを下げることに成功。

「あ…っ!」

甘い陶酔の中にたゆたっていた遥の意識が一瞬、我に帰る。だが。

「っっ!!あーーーーーーっっ!」

しとどに濡れそぼり、甘い蜜を湛えた蜜壺と化した遥の膣に、早百合の指が突き立てられた。
0396早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:23:59.19ID:1/lWP6DW
「ああ!?や、だめ、うそ、あ、い、く……!?」

早百合の指はまだ突き立てられただけで動いていない。否、動かせないのだ。
遥の膣はきゅんきゅんと収縮し、早百合の指を締め付けている。

「やだっ!だめ……っ!あ、ああぁ!?っああああああっっ!」

身体を大きく仰け反らせたショックでかけていた黒縁眼鏡が弾け飛ぶ。
口を大きく開き、獣じみた絶叫と共に遥は絶頂に達した。

「あぅぅ…っ!あふぅう…ん!あ、ああ……」

びくんびくんと身体を震わせ、絶頂の余韻に揺蕩う遥を、一旦身を引いた早百合が見下ろす。
乱れた髪と汗に濡れた肌が、行為の、快感の激しさを表しているようだ。
眼鏡がないため、大きく潤んだ瞳と、目尻から溢れた涙がよく見える。
いまだ小さな喘ぎと熱い吐息を漏らす愛らしい唇。その唇の端からは垂れた涎が銀色の筋を引いている。
のけ反った首のラインも艶かしく蠱惑的で。
はだけたブラウスと、その下に露わになった形の良い乳房と愛らしい乳首。
なだらかな起伏を描くお腹のライン。
捲れあがったスカートと剥き出しの繁み、その奥にひくつく熱く濡れた遥のヴァギナ。
力なく投げ出された両の脚の細くしなやかなライン。
それら全てが官能的で煽情的で…早百合は感動すら覚える。

「遥…す、ステキよ…とっても…ステキ…!」

それ以上の言葉もない。いや、いまの早百合の感動を表せる言葉などないように思えた。

そうだ、言葉じゃない。
言葉だけじゃ伝わらない想いを伝えるために、いまこうしてるんだから。

「せん、せ…わ、わたし…もう、いっ、て…いっちゃっ、て…」

荒い息を吐き、途切れ途切れに訴える遥。
絶頂快感の余韻に蕩け惚けた表情は、早百合の劣情を刺激して止まない。

「うん…でも、もっと…もっと、感じて、欲しい…」
「…え」

ちゅ…と、軽い口付けを送ってから、早百合は身体をずらし、遥の下腹部へと首を伸ばす。

「…やっ!やだっ…!」

早百合の意図を察した遥は羞恥に顔を真っ赤に染め、両手を伸ばし早百合の頭を押さえようと試みる。が。
0397早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:24:21.52ID:1/lWP6DW
「あひっんっ!」

いまだ膣内に入り込んだままの早百合の指先が、第一関節でくんっ…!と鍵爪のように曲げられた。
そして軽くひっ掻くような動きで遥の膣内を刺激する。

「あくっ!ひゃうっ!だ、めっ!それ、だめっ、なのっ!あ、あ、ああああっ!!」

女の泣き所、Gスポットを的確に責められ遥は悶絶する。
伸ばした遥の手は、早百合の頭に届きはしたが、押し留める力は出ない。
膣奥から発し、全身を震わせる快楽電流のため、力が入らない。
早百合は遥の膣内を掻き回しながら、その唇で遥のヴァギナに口付ける。

「あひぃっうっ!ああっ!あああっ!」

舌先で繁みを、陰唇を掻き分け、溢れ溢れた愛液を舐めとるように愛撫する。

「きゃうっんっ!あ、あ、あ、ああ…あっ!」

十分に遥の淫汁を味わった後、舌先が移動。目指すは遥の最も敏感な場所…

「あぅ…んっ!あ!ああっ!あ!あ!あ!ああっ!!」

陰核を包む包皮に達した舌先で器用に捲る。露わになった陰核に早百合のぬめついた舌先が、触れる、と。

「ひやあああいやああああああっっっ…あがっ…ひはぁぁああああっ!!」

繊細で敏感な器官を早百合の熟練の舌技で責められ遥はあっという間に絶頂の高みに押し上げられる。
身体と心が天上へと誘われ、浮遊するような感覚。
快感と幸福感と、少しの恐怖に侵食されていく。

「やはぁぅ!だ、め、も…!いっ、いって、いっちゃ、た…からあっ!」

だが絶頂快感の高みに、その頂から、遥は降りてくる事が出来ない。
早百合の指が敏感さをました膣内を掻き回し、指先はGスポットをこりこりと刺激し続けて、唇に含まれたままの陰核は舌先で嬲られ、弾かれ、爪弾かれ、転がされ、押し潰されては吸われ…

「あぅっ!やあ!もう、いっ…っ!!ひあああっ!ま、また…っんはぁあっ!と、とま、とまんな、いっ…あひぃぃっっっ!!」

ぶしゃり!と膣から淫らな汁が噴き出す。意思とは裏腹に、より深い快感を得ようと、差し込まれ抽送を続ける指を締め付け、抱きしめる遥の膣。
乳首や陰核はじんじんと痺れ、怒涛の如く身体の隅々まで、全神経に快感の大波を送り続ける。
絶え間なく連続する絶頂快感に、涙が溢れ、涎を垂らしながら、遥は喘ぎ悶える。
まだ幼さを残す顔立ち、躰つきの少女が、女の悦びに身体と心の全部を満たされ、絶叫じみた喘ぎ声をあげ悶える様は、この上もなく淫靡で背徳感すら覚える光景であった。

「ああ…遥…好きよ、可愛い遥…感じて、もっと、もっと……!」
0398早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:24:41.23ID:1/lWP6DW
熱に浮かされたような声で愛を囁き、激しい愛撫を続ける早百合。

「やあああっ!も、だめ、おか、おかしく、なっちゃ、う…っ、ぅああっ!また…っ…きゃぅあああああひぃぃぃっっっ!!」

何度目とも知れぬ絶頂、息つく間もなく押し寄せる快感。激し過ぎる未知の悦楽に遥はなす術もない。

「ああああきもちい、きもち、よすぎ、て…っ!あああっ!くる、ちゃう…ぅぅぅああっっっっ!!」

がくがくと、まるで制御を失った操り人形のように、出鱈目に首を、手足を振り回す。

「遥、遥、遥、遥……!」
「せん…っ!せんせっ…!あ、ああ…せんせえええっ!」

何度目とも知れぬ絶頂。遥と呼ばれる毎に、先生と呼ぶ毎に、膨れ上がる快感。
ひときわ大きな絶頂が襲いかかり、遥の意識を現世から遠ざける。

「せんせ…えっ!好き…好きぃぃぃいいっっ!」

その絶叫と共に、遥は大きな大きな絶頂に飲み込まれ、この上ない幸福感と共に意識を手放した。

※※※


そうよ。

私だって、きっと。
初めて貴女と出逢った時から。

貴女の事が、好きだったんだから。

だから…
信じさせて。

お願い、先生…


※※※
0399早百合と遥 4 信じて、信じさせて2016/08/20(土) 16:25:05.16ID:1/lWP6DW
学校からの帰り道。遥の前に早百合が立ち塞がり、告げた。

「…くび?」

呆然とした表情を浮かべる遥。
ご丁寧に眼鏡がずり落ちて傾く。

…やだ、可愛い。

状況とは場違いに、そんな感慨を抱く早百合。

「ど、どうしてですか!?ま、まさか私の、その私との、あの、あれが…?」

屋上での行為が、誰かの目に留まっただろうか。
だが、早百合は晴れやかとも言える快活な笑みを浮かべる。

「違う違う。辞めさせられたんじゃなくて、辞めてきたの」
「ど、どうして…ですか」
「私なりにこれまでの行いを反省して、でも前に進むために」

遥は怪訝な表情を浮かべる。

「だから、どういう…!?」
「だから、生徒に手を出すような最低教師なんて、ダメでしょ?」
「…!わ、私のせい、ですか」
「あああっ!そうじゃない!そうじゃなくて!教師と生徒って関係じゃダメだから!」
「やっぱり私のせいじゃないですか!」
「ち、違うよぉ!自分のためだってばあ!遥と一緒にいたいんだもん!」
「せん…!?」

まるで我儘を通そうとする子供のような口調に、遥は絶句する。

「遥といたいの。ずっと一緒に。だから…」
「せんせ…」
「信じて、くれる?信じて欲しい。私は貴女が好き。ずっと、これからずっと」
「せんせ…せんせ…」

遥の目元から涙が溢れ、眼鏡を曇らせる。

「…もう先生じゃないんだけどな」
「いいえ」

きっぱりとそう言うと、遥は早百合に飛び付き、抱き締めた。

「貴女は私に大切な事を教えてくれた、思い出させてくれた、私の、私だけの、大切な先生…です」
「遥…っ」

そして2人の唇が近づき、重なって…

下校途中の生徒たちが好奇の視線を向けていた。
だが、幸福感に包まれた2人は意に介さない。
いまの2人にはお互いしか見えていないのだから。



fin
0401名無しさん@ピンキー2016/08/23(火) 17:00:12.16ID:8zh9bqTe
いいね
さすがにけじめは付けたか
放置された薫がちと気になる
0402早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:46:31.85ID:G3xPvWnP
公城遥は放課後になるやいなや、教室を飛び出した。

「公城さん!廊下を走ってはいけません!!」

教室から泡を食った教師の叱責が飛ぶが、遥は「ごめんなさいっ!」とだけ返して、そのまま走り去る。
普段はまじめな生徒である。教師もそれ以上は何も言わず、やれやれと肩をすくめる。

公城遥、17歳。
抜群のプロポーションと整った顔立ち、誰もが認める美少女だった。
くるりとした大きな眼は好奇心に溢れ、くるくるとよく動く。
人生を、青春を謳歌するもの特有の喜びに上気した頬。
清らかな花弁を思わせる唇には常に柔らかな微笑が浮かぶ。
肩口まで伸びた黒い濡れ髪が肩で踊る様も、すべてが溌剌とした輝きを放っていた。
朗らかで誰にでも優しい性格は、学内外を問わず人気も高い。

そんな彼女が息せき切って走る、その訳は。
もちろん、今日が愛しい恋人と逢える日だからだ。

彼女にはかつて、鬱屈した時期もあった。だがそれを乗り越え、快活な性格を取り戻し、青春を謳歌出来ているのも、その恋人のおかげといってよかった。

※※※

待ち合わせはいつもの喫茶店。そわそわと落ち着かない様子の遥、だがその表情がぱぁっと明るくなる。

「せんせ!こっちこっち!」

待ち人来たれり。ぶんぶんと手を振る遥に、同様に大きく手を振りながら、遥の愛しい恋人がやってきた。

それまで店内の男たちの視線をその一身に集めていたのは、手折ることも憚られる路傍の花のような可憐な美少女…遥だった。
だが、遥の待ち人が現れた途端、遥に向けられていた視線の過半数が、遥の恋人たる女性に向けられた。

…そう、遥の恋人は、女性である。しかも並大抵の女性ではない。類まれなる美女、であった。

ゆるくウェーブのかかった栗色の髪、蠱惑的な光を湛えた切れ長の眼。
すっと通った高い鼻筋、紅いルージュを引いた艶やかな色気を放つ唇。

鬼束早百合…25歳。
遥が可憐な路傍の花であるならば、早百合は大輪の薔薇であろうか。
店内のあちこちから向けられる男たちの惚けた視線を意にも介さず、早百合は一直線に遥のもとへ。

「お待たせっ、遥。今日も可愛いねえ」
「もう、先生ってば…!」
0403早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:46:52.80ID:G3xPvWnP
かつて早百合は遥の通う高校の教師だった。
故あって今は退職、学習塾の講師を務めている。

遥が早百合を先生と呼ぶのは、単にかつて彼女の教師だったから、というだけではない。
そこには遥の、強い想いが込められている。大切な事を教えてくれた、私だけの、先生。
握った拳を振りあげつつ、頬を赤らめる遥の前の椅子に腰を下ろした早百合は、ふと違和感を覚える。

「事実、事実…ん?あれ?」
「…気が付きました?」
「そりゃあ…眼鏡、どしたの?」
「コンタクトにしてみたんですけど…」
「うん、可愛い。でも、なんで今更?」
「だって、眼鏡とった方が、か、可愛いって…」

…と、照れくさそうに遥が口ごもる。
ちらと上目づかいに早百合を見上げると、期待していた反応はそこにはなかった。

「…誰に言われたのよぉ」
「え?」

早百合が泣き出しそうな表情を浮かべる。せっかくの美貌がくしゃくしゃだ。

「え?え?え?」
「ねえ!誰?誰が言ったの!?」

遥に眼鏡ない方が可愛いよなんて言った男?女?一体誰なの!?
そう言われて遥が眼鏡やめた?遥はそいつが、そいつの事が…!?

「ちょ、先生!?先生が言ってくれたんじゃないですか!」
「私そんなこと言わないもん!遥は眼鏡あってもなくても可愛いもん!」
「だから!先生ですってば!!」
「言ってない!!いつ言った?ねえ、いつ!?」
「この前、えっちの時、言ってくれましたっ!だからっ!」
「え?」
「…あ」

大声で失言。
遥の顔が見る見るうちに茹蛸のように赤くなっていく。
頭のてっぺんから湯気を噴き上げそうだ。

「は、はるか!で、出よう!ね?」
「は、はひっ!!」

好奇の視線が集中する中、2人はそそくさと店を飛び出していく。

※※※
0404早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:47:15.91ID:G3xPvWnP
…人気のない公園。池のほとりのベンチに二人はへたり込む。

「さ、さすがに焦ったあ!」
「ご、ごめんなさい…でも先生があんなこと…」

眼鏡無い方が可愛いって、言ってくれたのは先生なのに。
だから、先生が喜んでくれるかなって思ったのに。

「…忘れるなんて、ひどいです」

冷ややかな目で早百合を睨み、ぷくっと膨れる遥。

(お、怒った顔も可愛い…いや、待て、落ち着こう

早百合は記憶を辿る。

(この前、えっちの時って…2日前か。うーむ…

ほぼ一日置き、ともすれば毎日のように逢瀬を重ねている2人である。
それほど遠い記憶ではない。思い出すのはさほど難しくなかった。

※※※

あの時は遥が、すっごく恥ずかしがってて…ああ、そうだ。それはそれはすっごい恥ずかしいことさせたんだっけ。

恥ずかしがって真っ赤になってる遥がかーいくってかーいくて。
そんで、私が言ったんだ。

「遥、可愛い…ほら、眼鏡とって、感じてる顔、もっとよく見せて…」

でぇ、遥が…

「眼鏡…無い方がいいですか?」

くぅっ!あの時の遥、すっごい可愛かったあ!萌え死にそう!!
って、んで私がこう答えた…

「うん、よく顔見せて…遥、可愛い…」

※※※

「おおっ!」

思わずぽん!と手を叩く早百合。
0405早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:47:36.67ID:G3xPvWnP
「なんだぁ私かぁ!」
「ほらぁ!ひどいです、忘れ…」
「ちゃうちゃう!そういう意味じゃなかったから!」
「…知りません」
「あうううう、私は眼鏡の遥も素顔の遥もどっちも好きなのぉ」

その声と表情があまりに情けなく見えたのか、遥がぷっと吹き出す。

「あ、やっと笑ってくれた」
「…先生のバカ」
「うん。あ、そうだ。さっき食べそびれたからさ、ケーキ食べに行こう?奢っちゃうから」
「…わかりました。それで手を打ちます」

公園を歩く2人は、一見、姉妹に見えるだろうか。
だが、しっかりと手を握り寄り添う姿は、恋人同士以外の何者でもなかった。

※※※

学習塾の人気教師(自称)は、それなりに稼げる仕事らしい。
遥は早百合の1人暮らしのマンションの部屋を訪れる度に思う。

…先生一人には広すぎないかしら?

「ひとりじゃないもーん、遥がしょっちゅうお泊まりに来てくれるもーん」
「ごめんなさい、今日は泊まれません」
「えええええ?」

ぺこりと頭を下げた遥、あからさまに落胆する早百合。

「だって明日はまだ学校ありますよ。平日はお泊まり禁止って、先生が決めたんじゃないですか」
「う…それは、そうなんだけどぉ」
「私だって、本当は…でも、先生の心遣いが嬉しかったから…」

照れくさそうに頬を赤らめて遥にそう言われると、早百合もそれ以上の我儘を言う訳にもいかない。

「えいっ!」

ひとり寝には広すぎるダブルのベッドにぼふん!と身を投げる早百合。

「子供みたい」

早百合の行動をくすくすと笑いながら、遥は早百合の側に腰を下ろす。

「早く遥と一緒に暮らしたいなあ。ねえ!高校出たらどうするの?そろそろ進路とか考えてるんでしょ?」
「あ、その…はい」

その質問に、遥がピクリと硬直する。
0406早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:47:56.27ID:G3xPvWnP
「はい、鬼束先生の夜の進路相談!ほらほら、どうしたいのか言ってご覧?ん?」

冗談めかして早百合が問う。冗談めかしてはいる。だが、本気の質問だ。
遥の今後を案じて、2人の将来を考えての。

だがそれ故に、いま、遥は即答する事が出来ないでいた。

「色々…考えてはいるんです…その…」
「うんうん」

言い淀み、早百合の視線から、ふと顔を逸らす遥。
早百合は遥をじっと見据え、答えを…

(…素顔もやっぱり可愛いなあ

…答えを、待ってはいなかった。

(眼鏡の遥も可愛いけど、そりゃ、素顔はもっと可愛いわよね当然。
(あ、なんかうるうるしてる。やだ、可愛いったら可愛い…!

「先生…私、私は…」

言い淀み、それでも何か伝えなければならない事がある。
切羽詰まった様子の遥。逡巡、躊躇い。
言わなければならない、でも…!

(あー…可愛い。ずっと見てたい。あ、でも今日は帰っちゃうんだあ…

「…遥」
「…ん」

早百合の指先が遥の顎にかかり、顔を自分の方に向けさせ、そして、唇が重なる。

「迷ってる?なにか、大変な決断をしようとしてるの?」
「…お見通し、なんですね」
「愛する遥の事だから、ね」

その小百合の真っ直ぐな言葉に、遥が赤面する。

先生はいつも、そう。
真っ直ぐで迷いがなくて…
でも、私は。

「私は貴女が決めたことならなんだって応援するから、ね?」
「せんせ…」

再び口付け。今度はさっきより、強く深く、大胆な。
遥の、うるうると潤む瞳を正面から見据え、早百合は囁く。

「私を喜ばせようと思ってコンタクトにしたんだ?」
「…でも、先生は…眼鏡、かけてた方がいいんでしょう?」
「どっちがいいとか、無いよ。私は遥の全部が好き。それに…」

早百合は遥の額、目尻、頬に唇にと、キスの雨を降らせる。
0407早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:48:12.80ID:G3xPvWnP
「やん…先生ってば」
「私を喜ばせようとした遥の、気持ちが嬉しい。可愛くって、大好き」
「せんせ…ん…やぁ、くすぐったいです…」

キスの雨はやまない。逃れようとする遥、だがバランスを崩しベッドに倒れ込む。

「きゃっ!あんっ…せ、せんせ?ちょ…」
「遥…遥、遥、遥…」

学校から待ち合わせ場所に直行した遥は制服のまま。

「せ、制服、しわになっちゃいます」
「大変、じゃあ…はやく脱がなきゃ」

ブラウスのボタンに早百合の指がかかる。あっという間に前をはだけられ、次いでブラのホックも外され、遥の乳房がまろびでる。

「や…んっ…!」

羞恥に頬を染める遥。部屋の明かりつけられたまま、煌々と遥の乳房を、その先端の蕾を照らす。

この2年で、遥のもっと成長した部分。
仰向けでもその釣鐘形の崩れない張りのある肌に包まれた、豊満だが大きすぎないバランスの良い乳房。
ツンと尖った先端、桜の蕾の如き愛らしく慎ましやかな、でも敏感な乳首。
早百合はその芸術的な乳房をうっとりと視線で愛でてから、そっと指を這わせる。

「んんっ!せ、せんせ…だめ。待って…」
「やだ、待てない」

指先で、遥の先端をそっと摘む。

「んんっ!だって、せめて、シャワー…!」
「だめ。遥の香りが、消えちゃう」
「うう?バカァ!先生の変態!」
「うん。ごめんね、遥。でも…」
「きゃぅんっ!あ、や、だめ…っ!」
「もう、我慢出来ない」
「ひぃやぅあっ!あ、あああああっ!」

早百合の唇が遥の蕾のような乳首にしゃぶりつく。

「あっくふっ…っん!きゃうっ!んんっ!や、せんせ…それ、ダメ…っんっ!」

唇を小刻みに震わせる。唾液を塗した舌先で丹念に嬲りあげる。
それだけで、遥は軽い絶頂へと何度も達してしまう。
遥の身体は、そういう風になってしまっているのだ。

「はくっ…ううんっ!あ!また…きゃぅううんんっ!!」

一方を唇で、舌で存分に味わいながら、早百合は遥のもう一方の乳房を左手で弄ぶ。
たわわに育った乳房をたゆたゆと揺すり、たわませながら、先端を指先で転がす。
0408早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:48:27.40ID:G3xPvWnP
「やぁぁぁ!は!あ!んんっ!あぅんっ!んあっ!あ!あ!あ!ああああっ!」

ひくんひくんと身体を震わせ、何度も何度も軽い頂に登る遥。
じりじりと身体を焼き焦がしていくような焦燥感にも似た感覚が、遥の下腹部にじわじわと広がり、溢れ、零れそうになる。

「せん、せ…っ!いやぁ!もう…私、わた、し…っ!んくふっ!!くぅんっ!!」

遥が耐えきれぬ様子でじたばたと手足をばたつかせる。

「うん…ここ、ね?」
「ひゃうっ!ああっ!」

捲れ上がった制服のスカート、露わになったショーツの真ん中に、小百合の指先がそっと触れた。
そこは既に充分に潤って、その時を今か今かと待ちわびていた。

「んくっ…っはぁ!せん、せ…!」
「脱がすよ…お尻、あげて?」
「は、はい…」

羞恥に頬を染めながら、言われた通り遥は腰を浮かせる。小百合が遥のショーツをするりと脱がせると、蜜を溢れさせた遥の蜜壺から芳しい芳香が立ち上がる。
その香りが、小百合を狂わせる。

「…!や!せんせ、それ、だめ!!」

小百合の顔が遥の下腹部を経由し、両の脚の間に達した。

「やだ…っんはぁぁぁああっ!!」

そして、密に誘われる蜜蜂のように吸い付き、貪る。

「はぅっ…あっ!あ!ぁああぃやぁあっ!やです、せんせ、それ…っだめぇ!」
「だって…!遥のえっちなお汁…美味し…んちゅ…」
「だっ…シャワーも…浴びてな…いっ!んあっ!やぁ!はず、恥ずかしいっ、ですっ!」
「でも…んく…すごく、気持ち良さそう、だよ…遥…」
「いやあ!せ、せんせの、ばかぁっ!あ!んあっ!わ、たし…もぉ…っ!ふあぁあっ!!」

小百合は溢れる蜜を遥の敏感な部分に塗しては吸い付き、舐め上げ、貪る。
遥は激しく悶え、喘ぎ、羞恥と悦楽に赤く染まる。

「美味し…遥…もっと、味あわせて…」
「はくっ…!あ…っ!あはぁああああああっ!」

くちゅり…っ!という音と共に、小百合の指が遥の蜜壺に呑み込まれていく。

「あっ…かはっ!はぅ…あ、あ!あ…ひぃあああっぅぅああああっ!」

遥が仰け反り、痙攣する。陰核と膣穴の同時責めに、快感が沸点を越え、全身を震わせている。

「や…はぐっ!せん、せ…!いや…いやいやいや…っ!だめぇぇえっ!」
0409早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:48:42.81ID:G3xPvWnP
目尻に涙を溜め、激しくも甘美な悦楽に全身を震わせる遥。
限界が近いと見て取った小百合は、さらに激しく舌と指を使う。

「せんっ…い、いっちゃ…わたし!もお!い、いく!いっちゃいます…!」

ぢゃぶぢゅぶぢゅぢゅぶっ!と淫靡な音と遥の嬌声が部屋に満ちていく。

「せんせ…せんせ、せんせ…いく…っ!いくいくいくいく…っ!んくっ…っっっああーーーーっ!!!」

びくん!と一際大きく身体が跳ね上がり、激しい痙攣と共に遥の蜜壺からシャワーのように潮が飛び散る。

「いやあああっ!出てる…っ!出ちゃって…あ、あ、ああぁぅうああああああーーーーっ!!」

ぶしゅぶしゅと音を立てて潮を吹きながら、遥は長く甘く、狂おしい絶頂快感の波に翻弄される。

「だめ、はずかし、あ!ああ!また、来る、来ちゃ…っうあああっ!いゃああーーーーっ!」

小百合の愛撫は止まない、絶頂の頂から遥は降りてくる事が出来ない。

「いくぅぅうあああっっ!また、いくいくいくいくいっちゃうっっっんああああああーーーーっ………っ!」

愛しい少女が激しい連続絶頂の中で悶え喘ぐ様を、小百合は陶酔の表情で見ていた。

「いくぅぅうああーーーーっ!だめ、せん、せ…いくの、止まん、ない…すごい…っ…すごいのっ!あ、あ、あああっ!!んはぁぁぁあああっ!」

そしてあまりの快感に遥の意識と身体が限界を越え、意識が遠のいていく。


今日もまた、言えなかったな。


意識を手放す刹那、その悔恨が、遥の脳裏をよぎった。
0410早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:49:00.05ID:G3xPvWnP
※※※

また、言えなかったな


…私は貴女が決めたことならなんだって応援するから、ね?


先生、ホントに?それで私たちが

お別れする事になったとしても…?

※※※

寝息を立てる愛しい少女の髪をそっと撫でながら、小百合は呟く。

「あまり、眠れてないのかな…」

あまりに激しい絶頂快感の末、失神してしまった遥は、そのまま寝入ってしまったようだ。
遥が何かを思い詰めている事はわかっている。
元学校教師であり、遥と2年の付き合いである。恋人の様子がいつもと違う事に気付かないわけがない。

(やっぱり進路の事なんだろうけど…
(眠れない程悩んでるなら…聞かせて欲しいな

そっと髪を撫でながら、小百合は思う。

今は、寝かせておいてあげようと。そして目覚めたら…

※※※

「あれ…?」

遥がふと気付くと、すでに2時間程経過していた。

もう帰らねばならない時間だ。

「せ、先生!ごめんなさい!わ、私、眠っちゃって…!?」

2人きりの大切な時間。それを眠って無駄にしてしまった。
まだ遥の方から小百合を愛していないのに…

それに、あの事も、また言えないまま。

後ろ髪を引かれる思いで、それでも帰り支度を始めようとする遥に、小百合が声をかけた。

「で、遥。何悩んでるの?」
「え?」
「さっきの話の、続き」

早百合に搦め手は使えない。彼女は常に直球である。
0411早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:49:15.74ID:G3xPvWnP
「悩んでる事、わかってるよ。遥の事だもん、分かる」
「先生…」
「一人で悩まないで。私も一緒に悩ませてよ」
「先生…」

正面から切り込まれて、ようやく遥は自身の決めた道を告げる決心をする。

「私…留学したいんです」
「留学…!?」

自分の勉強したい事、進みたい道、目標としたい夢。
その最も近道となるであろう大学はアメリカにある。

だから、行きたい。

遥は真剣に、その想いを語った。

「うん、いいわね!頑張れ、遥!及ばすながら応援する!」

輝くような笑顔で早百合が言う。
対して、遥の顔色は晴れない。

「応援、してくれるんですか?」
「え?当たり前じゃなあい!」

明るく言い切る早百合。

「私が応援出来る事って、まずは英会話かな。必要でしょ?後は…」
「…どうして!!」
「え?…は、遥!?」

滂沱の、涙。遥は泣いていた。早百合には訳が解らない。

「どうして!?なんでそんなに簡単に…!」
「ちょっと待って、遥。なにか誤解があるわよ、また」
「だって…!私、アメリカに行くって言ってるんですよ!?私たち、離れ、離れに…ひっく、なっちゃうんですよ!なのに、なんで…っ!」
「ならないわよ」
「私、先生と離れるの辛くて…!でも夢も諦められないって…!だから、辛いけど、先生とは……え?」

早百合は優しい笑みを浮かべている。

「そんなに思い詰めてたんだ…ごめんね。早く言ってくれれば…ううん、もっとちゃんと言ってあげられてれば…
「せん、せ…?」
「離れ離れになんてならない」
「だって、そんなの、ムリ…」
「ついていくから」
「…へ」

呆然とする遥。
0412早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/08/30(火) 10:49:32.00ID:G3xPvWnP
「私、ついて行くもん。アメリカだろうが、どこだろうが」
「だ、だって。え。先生、あの、仕事、とか」
「大丈夫大丈夫、日本語教師とかね、なんとでもなるなる」
「いえ、じゃなくて、あの、先生の生活とか、人生、とか…」
「私の人生?遥と共に生きること」
「だ、だって…!」
「何よ、来て欲しくないの?」
「そんな訳ありませんっ!」

思わず激昂してしまい、慌てて口を押さえる遥を、早百合はやはり優しい笑みを浮かべたまま、告げる。

「ねえ、遥。最初から言ってるでしょ。そもそも私が学校の教師辞めたのだって、貴女とずっと一緒にいたいから、なんだから」

その想いは、変わっていない。その事をもっときちんと、折に触れ言ってあげておくべきだったと、小百合は後悔する。

「な、なんだか…私、バカみたい、ですね。独り相撲もいいとこ…」

遥は手の甲で涙を拭って微笑むと、小百合に飛びつくように抱き着いた。

「…遥!」
「先生、お願い…」
「なに?」
「私、今日、帰らなくていい、ですか…?」

小百合は遥を抱きしめ返して、その耳元に囁く。

「じゃあ私の事…いっぱい愛してくれる?」
「…はい。愛したい、先生を…」

※※※

「せんせ…はふぅ…ん…」
「はるか…んんっ…ん…」

生まれたままの姿で抱き締めあい、口付けを交わす。
一人では広すぎる小百合のベッドも2人でならちょうどいい。

遥は冷ややかな笑みで見やり、囁く。

「どうしました?せんせ…」
「い、いじわる…!遥のいじ、わるぅ…っ!」
「こんなに可愛がってあげてるのに…乳首、いやなんですか?」
「うううぅぅ…!いじわるぅ!わ、わかってる、くせにぃ!」
「ごめんなさい。せんせ、教えてください。ちゃんと言って?」

言わせたい、のだ。小百合が瞳を潤ませて、おねだりする様を、見たい。

「いじわるぅ!遥の、いじ、わるっ、も、きらいぃいぃいい!」
「やだ、せんせ。そんな悲しい事言われたら…もう続けられなくなっちゃいます…」

すっと小百合の乳房、乳首を嬲っていた指先が離れようとする、と。
0413早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/09/01(木) 12:51:11.55ID:cGHjsNvh
「いやああ!やめちゃ、やああっ!し、してっ!はる、か!してぇ!!」

ぶんぶんと首を左右に振り、小百合がわめく。
下腹部にじわりじわりと広がる焦燥感、より強い快楽への欲求が小百合を急き立てる。

「どこを?どうしてほしいんですか?ねえ、せんせ」
「お、おお、おまんこ…っ!おまんこ、してぇ!」

顔を真っ赤にしながら、それでもはっきりと小百合が告げる。
そうしなければ、いつまでもお預けされるのはわかっている。
恥ずかしくて恥ずかしくて、身体中が燃えるように熱い。
だがその熱が、さらに小百合の情欲を刺激し燃え上がらせてもいた。

「恥ずかしいおねだり、ちゃんとできましたね、せ、ん、せ」
「いやああ!も、ゆる、して、はる…かぁっ!!」
「恥ずかしがって真っ赤になって、でも感じちゃうせんせ、すっごく可愛い」
「もう、だめぇ!おね、がい…してよぉ!はるかぁっ!」
「どこ、でしたっけ?」
「おまんこぉ!おまんこおまんこおまんこ、してぇぇっ!!」

遥は待機させていた指を、小百合の求めるままに突き立てた。

「ひぐぅ…っ!んはあああああああああああああああっっっ!!!!」

びくびくびくっ!と全身を震わせて、一突きで絶頂へと駆け上がる。

「ひぅ…っ!んあっ…あっ、あ、あ、あ…あああああああっっぅああ!」

しかも絶頂快感は寄せては返す波のように繰り返し繰り返し小百合を襲う。遥の指が、小百合の膣内を縦横無尽に掻き回し、蹂躙しているのだ。

「あぐぅっ!あがっ!かはっ!は!は!あ………ぅっっっっ!!あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ!!」

顔をむちゃくちゃに振り立て、涙を溢れさせ、涎を振りまく。
襲い来る絶頂快感のあまりの強さ、大きさになす術もなく翻弄される小百合。
さらに。

「やっ!?それ、だ………んひぃああああああああああああああっっっ!!」

遥が唇と舌で小百合の陰核を責め始めたのだ。

すでに充血し、硬く尖った陰核は包皮をめくりあげ、刺激を求めて震えていた。
準備の整った、もっとも敏感な器官を突然激しく責め立てられ、小百合は悶絶する。

「せんせの匂い、じゅる…いい匂い。せんせの味、ちゅぶちゅぶ…ん、おいしい…」
「やだ、はずか、し…っんはあああああっ!あ!あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ!!」

だが、その羞恥を快感がはるかに凌駕していく。
0414早百合と遥 5 ?あれから2年…?2016/09/01(木) 12:51:27.79ID:cGHjsNvh
「せんせ…もっと感じて、いっていっていって…っ!」
「あ゙あ゙あ゙!いく、のっ、とま、ない…っ!は、はるか!はるかぁ!!」
「せんせ、感じて、いって、気持ちよくなって…!」
「い、く…!ああああ!き、きもちい…のぉ!きもちいいいいのぉおおおっ!!」

獣のように絶叫しながら、小百合は幾度となく絶頂を迎える。

「はる、かぁっ!すきぃっ!すきすきすきぃいいいいっっっ!!」

最後、遥への愛情を吐露しながら、絶頂快感に溺れる小百合は、幸福感に包まれていた。

「私も…好き…先生、愛してます」

※※※

「そういえばさ、住むトコってどうなるの?」
「学生寮みたいのもあるみたいです。他の方法としては、いわゆるホームステイ…」
「ストップ!ストップ!要するに好きにしていいのね?じゃあ一緒に住もう!」
「あ…」

そうか、そんな事が出来るのか。
虚をつかれた表情から満面の笑みに。

「すごい!せんせ…ウソ、夢、みたい…!」
「でもまずは合格しなきゃね?」
「絶対!合格!しますっ!」

夢のためだけじゃない。
先生、そして自分自身の…愛の、ため。

「あ、遥…ここって確か州法で同性婚が認められてるよ?」
「え…」
「いっそ結婚して、永住、しちゃう?」
「け、け、けけけ、けっこん!?せ、せんせと!?」
「あら、いや?」
「そそそ、そんな訳ないでしょっ!?」
顔を真っ赤にして、遥は絶叫、即座に否定。
「じゃあ…遥、私と結婚、してくれますか?」
「あぅあぅ…そ、それって、あの、プププププ、プロ、プロポー…」

頬を赤らめつつ、真剣な表情でこくりと頷く早百合。
遥は頭から湯気を立てんばかりに真っ赤になって、だらだらと汗すら流している。
早百合はそんな遥を愛おしげに見やり、優しい笑みを浮かべ、甘い声で囁く。

「…ずっと、一緒にいたい。遥。愛してる」
「…はい。ずっと傍に、いて下さい。愛してます。先生」



fin
0417名無しさん@ピンキー2016/09/01(木) 13:42:06.02ID:+BM1q0OA
ありがとう……ありがとう……。
あまあまな良い百合で感謝という言葉しかない
0419名無しさん@ピンキー2016/10/05(水) 23:29:04.55ID:/aRwnR/s
お久しぶりです、撫子寮の人です。
今回は過去に登場させたキャラクターでザッピングまがいの事をやってみようと思います。
月一投稿くらいの連作で、多分エロはなし。
それでも、賑やかしくらいにはなればいいかと……
0420撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:34:00.63ID:/aRwnR/s
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 /1.香坂雪深


 その日、私が見つけたもの。
 恋人の白い肌。差し出しかけた手。喧噪に掻き消されそうな細い声。
 ――貴方の、はにかむような笑顔。


 1月16日、午前9時……その、少し前。
 本日は全国的に晴れ渡り、テレビが言うには絶好の行楽日和らしい。
 行楽日和、ということは。絶好のデート日和でもある、ということだろう。そんなことを思いながら、空を見上げた。
「……晴れて、良かったわ」
 呟いて、私――香坂雪深は胸を撫で下ろす。待ち合わせは撫子女学園の正門前。いつもは鉄の校門と学校銘板が無愛想に迎えるここも、今日と明日だけは訳が違う。
「撫子祭へようこそー!」
「1年C組、化学室でお化け屋敷やってまーす! そこのボクも、良かったら来てねー!」
「映研は視聴覚室でZ級映画祭を開催中! B級に飽きちゃったあなたに、本物のクソ映画を!」
「焼きそば売ってまーす! 2パック買ったらもう1パックついてくるオマケ付き!」
 各団体が校門まで出張って自分たちのブースに呼び込もうと、サンドイッチマンにビラ撒きにひっきりなしだ。
 遠くからはこのお祭りの開催を告げる花火が鳴り、校門の両脇には――オブジェ? 彫像? 4mほどのウェルカムポールが置かれていて。明らかに慣れ親しんだ学び舎とは違う雰囲気が醸し出されている。
 いつもと違う雰囲気――それはまるでテーマパークに来たような、ワクワクとドキドキが入り混じった高揚感。
 そう、今日は何といったって撫子祭。
 普通の学校でいう所の文化祭であるこのお祭りは、それでいて普通の学校とは少し違った意味合いを持つ。
 通常の文化祭が2学期に開催されることが多いのに対し、撫子祭が開催されるのは3学期。あと2か月もすれば3年生は卒業、1年生や2年生は進級してクラス替えになる時期で。私たちはそれを、どうしたって意識する。
 だからこそ、この撫子祭は私たち撫女生にとって『この一年の総決算』という意味が強くなるのだ。
 ただでさえ普段は慎み深く淑女たれと教えられている彼女たちのことだから、その反動もあって撫子祭2日間の爆発力ったらない。青春という名のよく分からないエネルギーに突き動かされて、馬鹿騒ぎともいえる騒乱を巻き起こす。
 ……その良い例が、このウェルカムポールだろう。私は少し頑張って首を傾け、名状しがたいそれを見上げる。そうしないと見れないのだ。
 きっと、最初のモチーフは東京タワーだったのだろう。しかしそれからの迷走ぶりを表すように脇からスカイツリーが生え、そこに考える人が座っている。
 かと思えば東京タワーの上にはキングコングが登っていて足元では地底怪獣バラゴンを踏みつぶしており、その頭の上ではとにかく高さが稼げればいいやとばかりにキリンがY字バランスをしていた。
 何が何だか分からないが、とにかくよく分からないエネルギーを感じる。もしかしたら芸術とはそういったものなのかもしれない――どこのクラスが作ったかは知らないが、これを真っ先に訪問客に見せるあたり、『撫子祭』がお見舞いする先制パンチとしては上々だろう。
 そんなことを考えて一人頷いていると。
「あっ、お姉さまっ」
 待ち合わせ時間より3分ほど早く、待ち人が現れた。
 鈴が鳴るような声に胸が躍り、振り返る。この瞬間だけは、きっと何度経験しても慣れることはない。
 そこには、ボブカットの小柄な女の子が立っていた。息を切らせて走ってきたのだろう、その髪はわずかに乱れて、小ぶりな胸は控えめに上下している。それでも申し訳なさそうに――まだ待ち合わせ時間まで余裕があるのに、何なら少しくらい遅れて来たってかまわないのに。
 けれども、そんな謙虚な所が、私のかわいい恋人――秋月志乃の良い所だ。
「すみません、家の者がうるさくって……あの、お待ちになりましたか?」
「ううん、今来たところ――」
 そう言い終わるかどうかの所で、どちらからともなく顔を見合わせて吹き出してしまう。まるで少女漫画かメロドラマのような、テンプレートなやり取りが面白くって。
 でも――うん。初めてのデートという感じのそれが、何だかこそばゆくて心地いい。
0421撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:36:15.19ID:/aRwnR/s
「そのオブジェ、見てたんですか?」
「えぇ、……何というか、すごい物だなぁと思って」
「ふふ、そうですよね」
 私の呆れと感嘆が半々くらい入り混じったものを、どうやら志乃ちゃんは称賛だと思ったらしい。口に手を当てて上品に笑うと、驚くべきことを口にした。
「これ、私たちのクラスが作ったんです」
「……へぇ」
 何というか、まぁ。
 私の恋人が、この奇怪建造物の生みの親の一人だったとは。本当に撫子祭は淑女を狂わせる。
「東屋さんが……あの、私のクラスメイトで撫子祭実行委員なんですけど。私たちで校門脇のオブジェを担当することになったから、とにかく大きくて目を引くものにしようって」
 東屋、という珍しい苗字に聞き覚えがあった。東屋夏帆――私の学友である紫藤あやめの、ルームメイト兼恋人だっただろうか。
 確かポニーテールのとにかく元気な子で、所属している陸上部では1年にしてエースとして活躍していたはずだ。
 1度遠くから見たことがあるだけの印象だけど、こういう大雑把さが好きそうなのは、何となく、分かる。
「――それで、黒板に書き出した候補を全部合体させようって事になっちゃって。もう大変だったんです。……お姉さまは、模擬店でしたっけ?」
「えぇ、メイド喫茶よ。私は午前中は非番だけど。良かったら、冷やかしていく?」
「はい、是非。私、メイド喫茶って初めてなんです」
 これは――期待の目、だろう。企画の段階では特におかしなことにはなっていなかったと思うけど、私がいない間にそうなっていないことを祈る。
 具体的には、我がクラスが誇る問題児、篠宮愛莉がおとなしくしていてくれればいいのだけど――
 ――まぁ、そんなことは今気にしたって仕方のないことだ。
「それじゃ、行きましょうか。……えっと」
 手を差し出しかけて、少し。
 言葉に詰まる。今の彼女にそうしても大丈夫だろうかと、不安がよぎって。
「手……繋いでも、平気かしら」
 平気、というのは、志乃ちゃんの体調のことだ。発情体質――月に一度ほど猛烈に快楽を求めてしまい、酷い時には他人に触れられただけで絶頂してしまう代物。
 実を言えば、冬のあの日……私を求めて寮にまで押しかけた日から、発情は起こっていない。いない――のだと思う。少なくとも彼女の方から私を求めてきたりはしない。それが嬉しくもあり、不安でもある。
 ……比率でいえば、不安の方が大きい。あれからもう、二ヶ月は経っている。本当なら、そろそろ来なければおかしいのだ。
 だから志乃ちゃんは、小さな声で「ごめんなさい、お姉さま」とだけ言った。私は苦笑して首を振る。仕方ないことだ――こんなに人が多い所で発情するリスクは冒せないだろう。
「いいのよ。それじゃ、はぐれないように注意してね」
「はいっ」
 まるで子供に言い聞かせるような物言いになってしまったけれども、志乃ちゃんは気にした様子もなくそう言った。私たちは頷き合って校門をくぐっていく。私が前、志乃ちゃんは少し斜め後ろに。
 手を伸ばせば触れ合えそうな距離。だけどこの空間は絶対だ。私が志乃ちゃんの恋人であるために、彼女のことを想っていると胸を張るために。
 ――そんな、もどかしい距離で。私たちの撫子祭は始まった。
0422撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:38:22.30ID:/aRwnR/s
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「ジャズ部は毎年恒例のジャズ喫茶やってます! そこのお二人さんもどう? 良い雰囲気にならなかったらお代はいらないから!」
「1年A組はスリル満点のバンジージャンプ! オールハンドメイド、風紀の査察が入るまでの期間限定!」
「賭けレースやってるよー! 陸上部との100m対決、勝ったら学食の食券10枚あげちゃう!」
 撫子祭期間中の廊下は、とにもかくにも姦しい。
 校門を抜けて呼び込みが少しは大人しくなるかと思いきや、ここからが本番とばかりに攻勢をかけてくる。
 放っておいたらそれにふらふらと連れていかれそうな志乃ちゃんをしっかりとガードする私は、姫を守るナイトというよりは重要人物を守るSPといった感じだ。
「すみません、お姉さま。……撫子祭ってこんなに活気のあるお祭りなんですね……」
 申し訳なさそうに言う志乃ちゃん。――の両手には、クレープと綿あめがしっかりと握らされている。それでも撫子祭初参加の1年生としては被害も少ない方だろう。
「これでも、2日目に比べたらまだまだ序の口よ。気を抜いたらオカルト研のよく分からない壺を大枚はたいて買わされてたってことにもなりかねないから、気をつけてね」
 さもありなん、といった様子で志乃ちゃんは神妙に頷いた。
 もっともこれは去年に実際にあった話で、資金難に喘ぐオカルト研を詐欺師然とした新入生が唆して起こした事件だったりする。件の実行犯は今回の撫子祭で我らがメイド喫茶を仕切っているわけだけど、果たして今年は大人しくしてくれているだろうか。
「……あ、お姉さま、このクレープ美味しいですよ。一口いかがです?」
 志乃ちゃんはその体質のせいか、接触だけに限らず様々な反応に敏感だ。渋面になりかける私の心の機微を察知したのか、絶妙なタイミングでクレープを差し出してくれる。
 私は年下にそんな気遣いをさせてしまったことを若干申し訳なく思いながら、そうなると無下にしてしまう訳にもいかずに。
「あ、うん。それじゃ、頂こうかしら」
 差し出されたそれに、ぱくりと噛り付いた。
 うん、美味しい。クリームの甘さをイチゴの酸味がうまく中和していて、濃厚なのにしつこくない口当たりだ。やはり撫女のお嬢様方は舌が肥えているせいか、フードのクォリティも全体的に高い気がする。
 けれどそれより、なにより。
 ――これ、間接キスかしら。
 直接でないものも含めていいのならば、キスはあの冬の日から数えて2か月ぶりになる。こんな些細なことでも心はトクンと高鳴って、あぁやっぱり私はこの子に恋をしてるいるんだと改めて実感する。
 でも――
 ううん。だから、だろうか。
 ――直接。
 唇を意識する。見えない指でつぅっと撫でるように。そうしていつかの感触をトレースする。あの冬の日、彼女の唇と合わせた感触。
 ――直接、したい。
 志乃ちゃんに触れなくなって、もう2か月。そんなに長い間、互いに触れ合わない恋人なんているのだろうか。遠距離恋愛でもなんでもない、隣に並んでいる距離でも、キスどころか手を握る事すらできないなんて。
 彼女の小さな唇がクレープを小鳥のように啄ばむ。その唇を、幸せそうな横顔を注視する。流れる黒髪を、柔らかい頬を、少しだけ赤くなった耳を。
 ――触れたい。抱きしめたい。キスしたい。
 そんな衝動を、思わず口に出しそうになって――私は頭をかいた。何だか、私の方が参ってしまっている。
 発情体質。
 付き合い始めて数か月は、それをどう解消するか――つまりはいかに肉体関係を持つかに気を揉んだものだけど。まさか今となって、『そうしないこと』に腐心しなければならないなんて――
「……あれ」
 そんなことを、つらつらと考えていたものだから。
 横に並ぶ志乃ちゃんのほんの小さな呟きに気付くのが遅れた。彼女がその歩みを止めて初めて、私もあわてて立ち止まる。
「志乃ちゃん、どうしたの?」
「いえ、お姉さま……その」
 クレープを持っていない方の手で、前を指差す。
0423撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:41:56.52ID:/aRwnR/s
 自分と志乃ちゃんだけの世界に入っていた私は、勿論前方だって見えていなかった。その指に導かれるように前を見れば、何やら黒山の人だかりができている。
 進行方向、5mほど先。調理実習室の前だろうか。
 何か人気の出し物でもやっているのかと一瞬だけ思ったけれど、記憶によれば調理実習室はめいめいのクラスが調理に使う場所として解放されており、あまり行列や人だかりができるような場所ではない。
「……うーん?」
 訝しみながら人だかりに近づき、前に何があるのか確かめようとする。その途中、周り囲むお喋り好きな女生徒の話し声が、否応なしに耳に飛び込んできた。
「心中ですって!」
「痴情のもつれって話よ!」
「何それ、昼ドラ? え、死人が出たの?」
「未遂よ未遂、っていうか……今まさに、って感じで」
「流石は撫子祭ね! スリルには事欠かないわ!」
 ……何やら淑女の学び舎らしからぬ物騒な単語が、そこかしこで飛び交っている。
「お姉さま? どうしたんですか?」
 後ろから志乃ちゃんが疑問を投げかけるが、そんなこと私だって分からない。
 ただ一つ言えるのは、この先で起きているのはきっと碌でもない事件だということだ。撫子祭にはこういったトラブルがよく起こるのだ。
 ハイになりすぎた撫女生が起こす、決して首を突っ込んではならない類のトラブル。過去に一度撫子祭を経験している記憶が、ひっきりなしに警鐘を鳴らしていた。
「志乃ちゃん――」
 けれど。
 『志乃ちゃん、ここは危ないから別の道に行きましょう』と言うよりも早く。トラブルは、向こうからこちらに首を突っ込んできたのだった。

「――あああなたを殺して私も死ぬわぁ!」

 トラブルは、金切り声を上げていた。
 ぎょっとして、思わず背筋が伸びる。一般的な女生徒より背が高い私は、そうすれば人ごみの先を見ることができた。そうして、その先で何が起きているのかを一目で理解した。
 包丁だった。
 トラブルは、出刃包丁の形をしていた。
 調理実習で使われる、魚などを捌く為の出刃包丁。それをぎゅっと両手で握り締めた女生徒が、一人の女生徒を壁際に追い詰めている。
 包丁を握り締めた少女はこちらに背を向けており顔は見えなかったが、追い詰められている方の顔はよく見えた。 
「お、落ち着いて美影ちゃん……ほら、その物騒なものをそこに置いて? ね? 話せば分かるから……」
「ももも問答無用だわ! あの泥棒猫に取られるくらいなら、いっそ私だけのものに――」
 長くて、少しウェーブがかった栗色の髪。
 切れ長の目はひっきりなしに動いているが、これは混乱しているわけではなく、修羅場を乗り切るために考えを巡らせているのだ。私には分かる。
 というか。
 私はその人物を知っていた。曰く、撫子女学園創設以来の問題児。曰く、最悪のトラブルメーカー。私が先ほどから、頼むから大人しくしていてくれと祈っていた人物が、何の因果かこんな所で包丁を突きつけられているなんて。
「どうしてこんな所にいるのよ、愛莉――!」
 そう、篠宮愛理だ。
 立てば爆薬、座ればドカン、歩く姿は焼け野原と彼女を知る者は称する。その呼び名の通り全身に爆弾でも仕込んでいるかのように、行く先々で騒動を巻き起こす様は、まさにナチュラルテロリストだ。
0424撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:44:43.68ID:/aRwnR/s
 けれど彼女は愉快犯的に迷惑を起こす側の人間であり、こうやって迷惑を被っている、有体に言えばピンチになっているところを見るのは初めてだった。
 心中。痴情のもつれ。そんなことを言っていたかしら。
 けれど目の前の包丁少女と愛莉には、そんなドロドロになるほどの繋がりがあるとは思えない。
 というか愛莉は同室の後輩と恋仲になっていたはずで、包丁少女と心中するいわれはないはずなのだ。
 そんな疑問から、思わず愛莉を注視してしまう。――うわ、あちらに視線を察知された。目が合った。
 やめて、そんな『助かった』みたいな目をしないで。助ける気なんてないから。私はテロに巻き込まれる前に、この場から速やかに立ち去りたいだけなの。
 そう必死に目でアピールする。けれど。
「雪深ちゃーん! 助けて私のマイスィート!!」
 愛莉は躊躇なく私を巻き込んだ――知っている。そういう女なのだ。
「――何?」
 包丁少女が、ぐりんと――ありえないような角度で首を回してこちらを睨みつける。顕わになった顔は長い長いぼさぼさの黒髪に半分隠され、有名な和製ホラーのクリーチャーのよう。
 その迫力に気圧され、群衆がどよめきながら後ずさる。自然、私が一歩前に出る形になった。
 ――私だってよっぽどそうしたいけど、私まで後ろに下がるわけにはいかない。何故なら、後ろには。
「お姉さま? どうなってるんですか?」
 背が低くて事情を把握できず、不安そうに声を投げかける志乃ちゃんがいる。それを後ろ手にかばって、私は冷や汗を流しながら腹をくくった。
「あああなたも私とお姉さまの邪魔をするの? 無駄、無駄よ。だって私とお姉さまは前世で世界を救った仲なんだから」
 ゆらり、ゆらりと左右に揺れながら近づく包丁少女。
 邪魔する気なんてない。何なら愛莉なんて好きにしてくれて構わない。どうせ殺したって死なないのだ。
 けれどもそんな事は言えず、私はただただ固唾を飲むばかりで。
「ずっと探してたの。でもやっと巡り合えた。今はまだ前世の記憶がはっきりしていないようだけど、もう2、3回転生を繰り返したらきっと思い出すわ。
 だって私とお姉さまは運命の糸で結ばれてるんだから――!」
 彼女が何を言っているのか私にはさっぱり分からない。きっと考えるだけ無駄だろう。
 問題は、包丁少女がこちらに近づいてきているその一点。その矛先は完全に私へと向かっている。これはまずい。考えなくてもまずい状況がはっきりと分かる。
 口の中がカラカラに乾いていく。なのに冷や汗はどんどん流れ出していた。どうする、どうすればいい?
 考えがまとまらない。次の一手が決まらない。えぇい、愛莉は何をしてるんだ。こんな状況に巻き込んで、一人だけ逃げようとしているんだったらただじゃおかない――
 そんな事を思いながら一瞬だけ――それこそ長い間視線を外してたらざっくりと刺されそうだ――目線を包丁少女の後ろに移す。
 愛莉はこちらに背を向け、何かをいじっているようだった。何だろう――棒? 筒? 円柱状の何か赤いもの。先っぽからホースの伸びた……
「うっ」
 瞬間、私は彼女が何をしようとしているのか理解した。思わずうめき声が漏れる――彼女が選んだ方法は、この場を収めるという観点ではある意味で最善であり、そしてある意味においては最悪だった。
「あ、あのね。今すぐソレ置いて大人しくした方が良いわよ。ほら、後ろ――」
「ふ、ふん。そんな古典的な手段に今更誰が騙されるっていうの?」
 私の申し出を彼女は鼻で笑う。それが彼女の運命の分岐点となった。
 その背後で音もなくホースを構えた愛莉は、曲がりなりにも自分への愛を語った少女に、躊躇なくノズルを引いた。
0425撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:46:11.24ID:/aRwnR/s
「――ごめんねっ!」
 業務用蓄圧式消火器。
 高圧で消火剤を噴出するそれはすさまじい勢いで包丁少女の背中を強打し、彼女を地面へと押し倒した。
「おねっ、お姉さま!? お姉さまぁぁぁぁ!」
 事態を把握できず、じたばたともがく包丁少女。
 凶器を取り落とし、もはや無害となった彼女になおも愛莉は消火剤を噴射する。それは再起不能にするためというよりも、むしろ――
「うわっやばっ、これどうやって止めるの!?」
 不吉な言葉と共に、噴射の反動で暴れ狂うホースがついに愛莉の手を離れた。まるで大蛇か火を噴く竜か、のたうちながらホースはそこかしこに消火剤を撒き散らす。
 視界は、瞬く間に白煙で埋め尽くされ――
「うわっ、何これ!?」
「煙たい! 何、何が起こったの!?」
「爆発!? 爆弾!?」
「テロよーーーーー!!」
 不安は伝染し、混乱となり、瞬く間に狂騒へと変わっていく。
 白煙の中逃げ惑う群衆/のたうつ包丁少女/どさくさ紛れに逃げようとする愛莉。
 けれどそれは、今はどうだっていい。私が見つけなきゃいけないのは、一人だけ。
「志乃ちゃんっ!!」
 後ろを振り返り、必死で目を凝らす。群衆に紛れて、その小さな背中は明後日の方向に押し流されようとしていた。
「お姉さま、お姉さまっ!」
 志乃ちゃんは、まだこちらを見つけられていない。好き勝手に動く群衆をかき分け、私は少しでも彼女へと近づこうとする。
「志乃ちゃん――っ!!」
 手を伸ばす。もう少しで彼女の手がつかめそうな距離――けれど。
 ――ごめんなさい、お姉さま。
 その瞬間、申し訳なさそうに微笑む志乃ちゃんの顔が脳裏をよぎって、私はその距離を――ずっと感じていた距離を飛び越えることが出来ずに。
 私の手は空を切り、志乃ちゃんの姿は群衆に紛れ込んでしまってそれきり、見えなくなってしまった。
0426撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:48:01.85ID:/aRwnR/s
 */*/*


 それからはもう、てんてこまいで。
 消火剤の煙幕が晴れた頃には、その場をいいように引っ掻き回した愛莉はいなくなっていた。
 危険な場所に長くいるのは得策ではないことを彼女は知っている。特に、風紀委員の初動が早い撫子祭においては。
 かくして、野良ネコじみた嗅覚で彼女が動きを察知したであろう風紀委員の到着で、件の包丁少女はあえなくお縄になった。
「絶対に諦めないわ……ここで私が朽ち果てようと、第二第三の運命が」
 彼女は魔王じみた口調でそんな捨て台詞を吐いていった。――それは愛莉と二人で何とでもしてくれればいい。
 さて、当事者たちがいなくなってしまったその場で、私はそんなことしている場合じゃないっていうのに風紀や新聞部にあれこれと事情を聴かれて。
「やってくれましたね篠宮愛莉――地獄の底まで追い詰めますから覚悟なさい」
 青筋の浮いた風紀委員がそんな物騒なことを言いながらようやく私を解放してくれたのは、それから30分後のことだった。
「……参ったわね」
 心の底から絞り出すような、ため息交じりの声が一つ。
 撫子祭の参加者は生徒と来客含めて1000人とも1500人とも言われている。
 その上志乃ちゃんは、律儀にも校則を守って携帯電話を持ってきていない。そんな中で彼女をどうやって見つけたらいいのか、今の私には見当もつかないのだった。
 せめて待ち合わせ場所くらい決めておけば良かった――そんな今更ながらの後悔を吐き出しながら、私は廊下の壁にもたれかかる。
 目の前に行きかう人、人、人。その多さに眩暈すら覚えながら、闇雲に歩き回るのとこの場に留まるのはどちらが利口だろうか――そう、考えを巡らせていると。
「……ん」
 視線が、前を行く一人の女生徒に止まった。
「賭けレースやってまーす! 挑戦者求ーむ! 午後からは食券、さらに上乗せですよー!」
 その少女は自分の背丈ほどもある大きなプラカードを担いでいた。そのプラカードに見え隠れして、長い髪をまとめたポニーテールが歩く度に左右に揺れる。
 活発そうな雰囲気に体操服とブルマが似合っていて。上からひっかけたジャージも、いかにも着慣れているといった風情だ。その腕の部分には一本のライン。
 ということは、彼女は一年生だ。で、賭けレースを毎年やっているのは確か陸上部だったはず。
 そんな断片的な情報で、おぼろげな記憶を補強している。うん、確かに私は彼女を見たことがあったのだ。
 あれはそう、私のクラスメイト、紫藤あやめと並んで歩いている時。あやめの恋人で、かつルームメイトでもあるというその名前は――
「……あなた、もしかして東屋さん?」
「はい?」
 やはり、というべきか。
 その名前に反応し、彼女はプラカードごと振り返る。きょとん、とした顔。彼女は私のこと、知らないみたいだ。
「私、二年生の香坂雪深。あなたのクラスメイトの秋月志乃の……えぇと、知り合いみたいなもので」
 恋人、とはさすがに言えない。撫女が知る人ぞ知る女性同士の愛の園だからって、そうでない生徒も大勢いるのだ。廊下の往来で口に出すのは、憚られた。
 ……のだけど。
「あーっ、お志乃ちゃんのお姉さま! お話はかねがね!」
 彼女に、そんな思惑が届いたのかどうか。何人かがこちらを振り向いたのは、東屋さんの声が大きかったからだと思いたい。
0427撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:49:29.66ID:/aRwnR/s
 とはいえ、志乃ちゃんから私の話は聞いているようだった。……どういう話がいっているのかは気になるところだけど、そうなれば話は早い。
「ぶしつけで悪いのだけど、志乃ちゃん見てないかしら。さっきまで一緒にいたのだけど、はぐれてしまって……」
「お志乃ちゃんですか? 確かさっき、空き教室でクレープ食べてるのを見ましたけど……」
 それだ。
 なんて幸運。こんな早く、志乃ちゃんの情報が舞い込んで来るなんて。
「それってどこの教室? 何分前だった? 1人? どんな様子だったの?」
「ちょ、ちょっとお姉さま近い近い、顔近いですよぅっ」
 その言葉に、思わずにじり寄っていた自分に気づく。東屋さんからしたらちょっとしたホラーだろう。
 ごめんなさい、と謝りつつ距離を取り、そこであれ、と気づいた。
「……東屋さん、お姉さまって私のこと?」
「あ、はい。先輩はそういうの、呼ばせてくれなくって。お志乃ちゃんが読んでるのを聞いてつい、羨ましくなっちゃって」
 東屋さんは恥ずかしそうに頬をかく。先輩、というのは、恋人であるあやめのことだろうか。
 それにしても、志乃ちゃんが私のことを話しているときでも『お姉さま』と呼んでいるというのは、少しむず痒い。
「そんなに志乃ちゃん、話をするの? ……その、私のこと」
「はい、いつもお姉さまのことばかり話してますよ。大人びてて、包容力があって、素敵だって」
 大人びていて、包容力があって、素敵。
 そんな言葉の一つ一つが、小さな棘になって胸に刺さる。本心から言っていることが分かるだけに、この痛みは無視できなくて。
 ……それは。
「買いかぶりすぎよ。大人びてるとか、包容力があるとか……志乃ちゃんの前だから、無理してそう振舞ってるだけで」
「そうなんですか?」
「そうよ」
 話が変な方向に向かっているな、とは思った。私が今東屋さんにするべきことは、志乃ちゃんの目撃場所を聞くことなのに。
 けれどそうするには私は思ったより鬱憤を溜め込んでいて、それを誰かに聞いてほしくって、ついでに言えば東屋さんはそういう事を聞いてくれそうな子のように見えた。
「志乃ちゃんが思うほど大人じゃないのよ、私。我侭だし。……繕ってるのは、嫌われたくないからってだけ」
 志乃ちゃんが私に、『頼れる大人のお姉さま』を求めていることは知っている。だからそうあるように、そうありたいと私は自分を律してきた。
 冷静に、理想を守れるように、適切な『距離』を保って。
 だけど本当は、そんな距離なんか飛び越えてしまいたいのだ。発情する体質も難しい家のことも、そんなの全部知ったことかと投げ捨てて、彼女の手を握って思う存分愛したいのだ。
 でも――そうしてしまうと、志乃ちゃんとの関係も彼女の気持ちも、全部壊れてしまう気がして。それが、怖くて。私は結局、安全な距離から足を踏み出せないでいる。
 手を握った。掴み損ねた何かを確かめるように。
 だから私はさっきも手を握れなかった。――そして、ずっと握れないままで過ごしていくんじゃないだろうか。
 そこまで考えて、なんだか笑えてしまった。こんなに格好悪くて、しかもそんな格好悪いことをそれほど親しくもない後輩に話していることも含めて。
「なんだか……ダメね、私」
 微苦笑する。やっぱりこれは自分の心に留めておくべき問題だったのだろう。早いところ話題を変えて、志乃ちゃんの場所を聞こうと、そう思った。
「――ダメじゃ、ないです」
 東屋さんは、真剣な顔でそう言った。
「……東屋さん?」
 その語調に気圧されて、私は少し戸惑う。彼女の瞳は真剣そのもので、ネガティブが入った先輩を励ますとかフォローに入るとか、そう言った感じではなかった。
 なんというか、まっすぐ、だった。
 まるで自分の大切にしているものをバカにされたような、それに対して精一杯反駁するような、そんな声だった。
0428撫子寮にて。〜撫子祭オーバードーズ〜2016/10/05(水) 23:52:27.79ID:/aRwnR/s
「お志乃ちゃん――私が何でお志乃ちゃんって呼んでいるかって言うと、時代劇に出てくるお姫様みたいに物静かで上品だからなんです。
 でもそれって、あまり主張しなくて、輪に入ってこなくて……『そうできなくっても仕方ない』って感じで」
 発情体質だ。彼女にとって人と触れ合うことは、それ相応のリスクが伴う。
 輪に入りたくなかった訳じゃない。あの子は本当は、お喋りで寂しがりやだから。
「だけど! 最近のお志乃ちゃん、すっごく楽しそうなんです! みんなとお喋りして、それができるようになって……
 友達もすっごく増えました。みんな、お志乃ちゃんが明るくなったねって、そう言ってます」
 今朝、校門前で待ち合わせたときのことを思い出す。彼女はあんな風に、学校のイベントに参加できる子だっただろうか。それを楽しそうに語る子だっただろうか。
 きっと違う。私と付き合い始めたころは、もっとうつむきがちで、引っ込み思案で、はにかむ程度にしか笑わない子だった。
 なら、それを変えたのは……
「お志乃ちゃんを変えたのは、きっとお姉さまなんです」
 呟く東屋さんを見て、私はぎょっとした。
 その顔は赤く、目頭には光るものが潤み始めて、なんだか今にも泣き出しそうだったのだ。
「だから……ダメだなんて、言わないでください」
 私は頬を掻いた。照れくささと申し訳なさが入り混じったような、不思議な感情。
 どうして会ったこともない私のことを東屋さんがここまで断言するのか、それは分からない。
 ここまで言ってもらってなお、私には疑問が残る。私はちゃんと、志乃ちゃんの思っている私だろうか。そう偽っているだけなんじゃないか、と。
 それが怖いのは、やっぱり――
『――私、お姉さまのことが好きですよねぇっ……!』
 あの雪の日の志乃ちゃんの叫びがリフレインし、私はようやく納得した。
 私は――ううん、私たちは確かめたいのだ。ちゃんと自分が相手を愛し、愛されていることを。
 私たちは付き合っていて、お互いを想い合っていて。それでも時々不安になる。
 それは手を繋げなかったり、逆に肉体関係だけになってしまったり。相手に自分をよく見せようと繕って、少し後ろめたい時なんかに。
 こんな私は。
 ちゃんと彼女を愛しているのだろうか/愛されているのだろうか、ということを。
 あの冬の日、私は志乃ちゃんに愛していると伝えた。志乃ちゃんが変わったとするなら、きっとその時からだろう。
 なら――私も逆に、今、愛しているといってほしいのかもしれない――
「難しいわね」
 苦笑する。求められるのには慣れているつもりだけど、求めるのは不慣れだ。本当の自分を曝け出すことも。
「志乃ちゃんは本当の私を知って、幻滅したりしないかしら」
「しませんよ」
 東屋さんは、やけにはっきりと断言する。出会ったばかりの人に対しても、感性のままに物事を言えるのが彼女の美徳なのだろう。
「そういう子じゃないって、お姉さまが一番よく知っているでしょう?」
 なるほど確かに。これは一本とられた。
 抱えていたわだかまりが氷解した気分だった。東屋さんに礼を言おうとして、しかしそれは少し違う気がする。
 ならば愚痴を聞かせたことを謝ろうかとも思ったけれど、彼女はそういう事を求めていない気がした。
 なら、なんと言うべきだろうか。
 少し悩んで、結局、わたしはこう口を開いた。
「……あやめが」
「はい?」
「あやめがあなたを好きになった理由、分かった気がするわ」
 言って、私は微笑む。うん、これで正解だったと、東屋さんの表情を見て確信した。
「……はいっ!」
 少し頬を高潮させ、けれどどこか誇らしそうに満面の笑みを浮かべて。
 なるほど。
 私の言葉は、彼女にとっては最大の賛辞らしかった。 


<【2/. 秋月志乃】に続く――>
0429名無しさん@ピンキー2016/10/06(木) 00:01:22.05ID:z1eFcx67
今回は以上です。お目汚し失礼しました。

一応、各キャラクターが登場する話は以下の通りです。理解の助けになれば。

>>164 「撫子寮にて。〜ふたりの温度〜」 香坂雪深 秋月志乃
>>316 「撫子寮にて。〜私と先輩のバーリ・トゥード〜」 篠宮愛莉
百合カップルスレ6 >>380 「撫子寮にて。」 東屋夏帆
0432名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 12:41:57.90ID:0zvO0ASM
久しぶりにきました。
懐かしくて何か書きたくなったので、暇つぶしにどうぞ。
既に付き合ってる百合カップルの話です。今回はエロなし。
0433名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 12:44:09.34ID:0zvO0ASM
ゆっきぃと付き合いだして、もう5年経つ。

高校を卒業したあたしは、進学せず、就職した。
家は貧乏だし、親との関係もずっとうまくいってなかったから、さっさと自立した生活を送りたかった。
一方、ゆっきぃは大学に進学した。
あたしの職場と大学が近かったこともあって、同棲するようになった。

それが2年前。

最近、工場勤務から本社勤務へと変わって、労働環境もがらりと変わった。
工場の人たちと比べ、本社の人たちは冷たかった。職務内容も変わって戸惑うあたしに、上司はきつい言葉をぶつけてくる。
毎日のように残業が続いて、土日も出勤する日が増えたし、貴重な休日には寝ていることが多くなった。

精神的に余裕がなくなると、身近な人間にそのイライラをぶつけてしまう。ってのは、よく聞く話だけど。
好きで、大好きでたまらないゆっきぃに、まさかあたしがそうする立場になるとは思ってなかった。
0434名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 12:48:50.50ID:0zvO0ASM
「こんちゃん、今日何時くらいに帰れるん?」
「…今日?あ〜、いつも通り、夜中の12時くらいじゃん?」

仕事に行く準備をするあたしに、どこか遠慮気味に聞いてくる。
あたしが不機嫌になることが多くなってから、ゆっきぃはずっとこんな感じであたしに接してる。
罪悪感や自己嫌悪がないわけじゃないけど、それ以上に余裕が無い。

どうしてゆっきぃがあたしが帰ってくる時間を聞いてきたのか、その理由はわかってるのに。

「もうちょっと早く帰れん?」
「…帰れるもんなら帰ってるよ」
「こんちゃんが忙しいんはわかってる…めっちゃ頑張ってるのも。でも、今日はこんちゃんの誕生日やし、お祝いしたいから。」

そう。今日はあたしの誕生日。
朝一でゆっきぃからおめでとうの言葉とプレゼントをもらったけど、正直大して興味が無かった。
一つ年を取りました。…で?それが?って感じ。わざわざ毎年毎年お祝いする必要あるの?

あからさまにめんどくさそうにため息を吐く。
ゆっきぃが悲しそうに顔を歪めたのに、それさえめんどくさく感じる。最低だ。

「別にいいよ。」
「よくないよ…。」
「家帰ったらすぐ寝たいし。じゃ、行ってくるから」
「ちょっと、こ…」

バタン。
聞きたくないとばかりに強く扉を閉める。
湿気の多いぬるい空気が余計にあたしの心を気だるい気持ちにさせる。
0435名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 12:52:40.02ID:0zvO0ASM
真夜中。
静まり返った道にはあたしのヒールの音だけが聞こえる。

毎回毎回、ゆっきぃにあたり散らしては後悔してばかり。
午前0時をわずかに過ぎて、あたしの誕生日は終わってしまった。
ゆっきぃはもう寝てるだろうな。明日1コマから講義あるらしいし。

あたしが帰ったとき寂しくないように、いつも玄関の明かりが点けてある。
あまり音を立てないように、そっとドアを閉めて、鍵をとチェーンをかける。
静かな部屋に、ゆっきぃが既に寝ていることを確信した。

上着を脱いでリビングへ向かうと、机に突っ伏して寝ているゆっきぃがいた。
テーブルの上には空のお皿とコップと、それからローソクとライターが置いてある。
これを見たら誰だってわかる。ケーキ、買って来てくれたんだろうって。
確認しようと冷蔵庫を開けると、近所の人気のケーキ屋さんの箱が置いてあった。やっぱり。


あたしだって、ゆっきぃの誕生日にケーキを買って持っていったことは何度もある。
そのとき、あたしはたまらなくウキウキしてて、ゆっきぃの好きなケーキはどれかなぁ?とか、これとこれとどっちにしようか?とか、
メッセージカードには何を書こうか?とか、ゆっきぃの喜ぶ顔を想像しながら、たまらなく幸せで楽しい気持ちになっていた。
ゆっきぃの笑顔で頭がいっぱいで、とにかく最高の気持ち。


そうだ、あの時、あたしは、
大切な人の特別な日に、ただただ感謝した。傍にいられることに、あたしを選んでくれたことに。一緒にいられることは当たり前なんかじゃない。その時間は無限じゃない。あっという間に時は過ぎて行く。限りある時間を一つ一つ大切にしなければ。

きっとゆっきぃはそんな気持ちにはなれなかっただろう。あたしがいらないって言ったから。
あたしの帰りをどんな気持ちで待ってたんだろう。
あたしの喜ぶ顔を想像するどころか、買ってきたケーキを邪険に扱われないだろうかって、不安な気持ちになってたんじゃないのかな。
全部あたしのせいだ。
長いこと乾いていた心が、目頭が、じんわりと熱く湿っていく。

「…ごめんね」

眠っているゆっきぃには聞こえない。

そっと頭を撫でる。
ふわふわの柔らかい髪。あたしの大好きな、ゆっきぃの髪。
しゃがんで顔をのぞきこむと、相変わらず寝てるけど、疲れてるようにも見えた。
こうしてじっくりゆっきぃの顔を見たのは久しぶりかもしれない。寝顔だけど。
息を深く吸うと、ゆっきぃの柔らかな香りが染み渡る。
胸の奥に湧き上がるのは、やっぱり、好きって気持ち。
0436名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 12:54:48.04ID:0zvO0ASM
「ん…」

ゆっくりと、ゆっきぃの瞼が持ち上がる。
透き通った綺麗な瞳がぼんやりとあたしを捉える。
二、三度瞬きして、あたしの姿を確認してるようにも見えた。

「…ただいま」
「こんちゃん…おかえり」

珍しくただいまを言ったあたしに、ゆっきぃは嬉しそうに笑った。
そうだ。あたしの些細な言動に一喜一憂してくれるのは、この人しかいないんだ。

「あ、あのさ…こんちゃんいらんって言っとったけど、ケーキ、買ってきたから、一緒に…食べん?」

遠慮ぎみに、でもどうしても言いたそうに、ゆっきぃは言葉を選ぶ。
もうあたしの言うべき言葉は決まっている。

「うん、ありがとう…今朝はゴメン。ケーキ、すごい嬉しい」
「……よかった」

さっきよりもっと嬉しそうな顔。
ゆっきぃの笑顔は堪らなくキュートなんだ。

「あ…でも、こんちゃんの誕生日、おわっちゃった…」

時計を確認して、悲しそうな顔。
誕生日のその日にお祝いすることよりも、誕生日をお祝いする気持ちの方がよっぽど大事なのに。
イベント好きなゆっきぃには許せないみたい。
0437名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 12:58:01.11ID:0zvO0ASM
「終わってないよ。延長えんちょー」
「延長?」
「そうそう。あたしが生まれたの、夜中の23時くらいらしいから、まだまだ生まれたばっかだし」
「なんなんそれ。変な理屈」
「あたしがいいんだから、いいの」
「ふふ…そっか、」

久しぶりの優しい時間。
やっぱりこうして笑い合えるほうがずっといいよね。

「ゆっきぃ」
「?」
「今まで、ヤなことばっか言って、ごめん」
「こんちゃん…、」
「仕事のストレスとか、全部ゆっきぃにぶつけてた。ほんとにごめんなさい。」
「ううん…こんちゃん、めっちゃ忙しそうやったから。…まぁ、寂しくなかったわけやないけど」

仕事をすることは、生きるために必要だけど。
それで大切なものを蔑ろにするようじゃ、生活が荒むようじゃ、意味がない。
もちろん、仕事が楽しくて、それが生きがいになっている人だってもちろんいるから、そこは理解してるけど。

「職場変えるかもしれない。すぐじゃないけど」
「そっか…」
「それまでにヤなことあったら、愚痴とか聞いてくれる?」
「聞く聞く!むしろ、こんちゃん全然何にも言わんから、心配しとったんよ?」
「そうなんだ…」

向かい合って話さないとわからないこと、いっぱいあるよね。
誰だって愚痴なんて聞きたくないと思って、何も言わなかったんだけど。
でも当たり散らすほうがよっぽど悪いよね。

「ケーキ食べよ!取ってくるね」
「うん!ケーキ久しぶりだなぁ」
「こんちゃん甘いもの大好きやもんね」
「まぁね。でもゆっきぃの方が大好きだよ」
「…あほ」
「つれないなぁ〜」

いつものあたしたち。
あたしの軽口にゆっきぃがつれないのも、いつものことだった。
久しぶりで、なんだかくすぐったい。

小さなホールケーキにローソクをさして、ライターで火を灯す。
部屋の照明を落とすと、暗闇にその光が眩しく輝く。
ゆっきぃの瞳に、ローソクの火が写りんで、余計に眩しい。

「はっぴばーすで〜、こんちゃん〜、はっぴばーすで〜こんちゃん〜」
「わ〜歌ってくれんの?」
「はっぴば〜すで〜、でぃあこんちゃん〜、はっぴば〜すで〜とぅーゆー」
「うはー、ありがとぉ」
「おめでとー!さ、火ぃ消して!一息ね」
「ふー!」
「一本しか消えてないやん」
「あれー?」

今度の連休は休み取れそうだから、一緒にどこかに旅行に行きたいなぁ。
0438名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 13:03:42.84ID:0zvO0ASM
「…さて、ゆっきぃ。ケーキも食べたことだし、ここからが本番だよ」
「プレゼントなら朝渡したやん。」
「あたしまだシャワー浴びてないから、一緒に浴びようか!」
「…うちとっくにお風呂入ったんですけど。」
「最高のプレゼントもう一個ください!!」
「ちょ、ちょっと待っ…!」

強引にゆっきぃの細い手首をつかんで、脱衣所兼洗面所へと連れ込む。
あ、そういや明日ゆっきぃ1コマから講義あるんだっけ。ごめんだけど、明日は寝不足で頑張ってね。


エロパートに続けたいです
0439名無しさん@ピンキー2016/11/13(日) 23:04:43.44ID:eeuj4DtC
懐かしい、こんちゃんとゆっきぃは前スレだったかもっと前だったか……。
良い百合でした、なごみました
0441名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:03:55.17ID:kPE0ej0j
>>439 >440
ずいぶん昔の話なのに、覚えててくれてる人がいるとは…。
感激です。

>>438 の続き投下します。
0442名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:08:35.19ID:kPE0ej0j
「んむっ…」

我慢できずにぷるぷるの唇に吸い付く。
さっきまで食べてたケーキの、生クリームの味がする。おいしいケーキを食べたゆっきぃの舌はそれよりもっとおいしい。
抱き合って、舌を絡めあいながら、既に寝るときのカッコになっているゆっきぃの服に背中側から手を差し入れる。あたしの手が冷たかったのか、ゆっきぃがびくって震えた気がした。
滑らかで温かな肌を堪能しつつ、ブラのホックを外す。

ゆっきぃは、普段、寝る直前にはブラを外してるから、まだ寝るつもりじゃなかったってことになる。あたしの帰りを待とうとしていた証拠だ。
普段ツンデレなゆっきぃは、本当はこんなにもいじらしい。

「、は…」
「ん、」

名残惜しく唇を離す。
お互い息が乱れている。キスで呼吸がしにくかったから?それとも興奮してるから?
あたしはそのどっちもだけど、ゆっきぃはどう?

「ゆっきぃばんざいして」
「…自分で脱ぎたいんやけど。」
「恥ずかしがり屋は相変わらずだね〜。はい、ばんざーい」
「もー、」

両腕をそれぞれ掴んで上にあげさせると、ゆっきぃはそれ以上の抵抗はしなかった。
ゆっきぃの上半身が露わになる。ぷるん。と音がするかのように、豊かな胸があたしの目の前に晒された。
その素敵な光景が隠されないように、今度はゆっきぃの両手首を掴んで、『気を付け』の姿勢をとらせる。
まじまじと見つめると思わずため息が漏れる。ああなんて、きれいで、えろいんだろう。
最近ご無沙汰だったから、ゆっきぃの裸をみるのも久しぶりだぁ。なんか胸大きくなってない?大歓迎です。神さまありがとう。

「こんちゃん鼻息荒い」
「ごめん、あまりにもゆっきぃのおっぱいがえろくて」
「真顔でいわんとってよ…」
「えー、じゃあ…、はぁはぁ…おじさん、ゆきちゃんのおっぱいがえろくて…はぁはぁ…興奮しちゃうyあいたぁっ!!」
「きもちわるい!」

耳まで真っ赤なゆっきぃに拳骨を食らった。ゆっきぃのツッコミは容赦ない。
なんか、『きもい』じゃなくて『きもちわるい』の方が傷付くね。

「うぅ、…これでもくらえ!」
「ひゃっ、!」

傷付いたから、目の前にある豊満なそれをぎゅ、って鷲掴みにしてやった。
どこまでも沈んでいくような乳房の柔らかさと、手のひらに感じる乳首のかたさが何とも言えない。
そのままかたくなった乳首も刺激するようにしながら、やわやわと揉む。

「ちょ…あ、…ぅ、こんちゃん…」

ゆっきぃがぎくりと身体を強張らせた。みるみるうちに顔が赤くなっていく。
少し前に知ったんだけど、ゆっきぃは胸をぎゅって掴まれるのが好きだ。両手で両胸を少し乱暴に握りこむようにすると、あっという間にいやらしい顔になる。
そんな顔、他の人に見せたらだめだよ。

ゆっきぃの心臓がドクドクいってるのがわかる。あたしのも多分そうなってる。
下から顔を覗き込むと、いい感じに蕩けた表情がうかがえた。あーえろかわいい。
おっぱい星人なあたしと、おっぱいをいじめられるのが好きなゆっきぃ。ねぇ、あたしたち最高のカップルだね。
0443名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:09:40.70ID:kPE0ej0j
―あんまり裸でいるとここにいると寒いし、シャワー浴びよっか。

そう声をかけて、困った顔でこくりと頷いたゆっきぃを確認すると、下も手早く脱がせて先に浴室に押し込む。敢えて下を触らなかったのは、それがこの後のお楽しみだから。
自分の服もさっさと脱いで、乱暴に洗濯カゴに放り込む。
いそいそと浴室の扉をあけると、ゆっきぃが待つそこへ飛び込んだ。
0444名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:13:01.44ID:kPE0ej0j
シャワーの温度を調整してこんちゃんを待ってたら、すごい勢いで浴室の扉が開いた。
…久しぶりにこんちゃんの裸見たかも。
ほどよくきゅっと引き締まった腹筋。相変わらずスリムやね。
油断するとあっという間に身体にお肉がついてしまううちとは違って、こんちゃんはよく食べる癖に全然太らない。
前に、なんで太らんの?って聞いたら、『なんでだろ?あたし燃費悪いんだよね〜。』やって。むかつくからほっぺた抓ってやったわ。

「背中流したげよっか」
「え!いいの?胸で?胸で?」
「…あのさぁ……。」
「スミマセン」

こんちゃんは照れくさい空気になるとすぐふざける。
すっぽんぽんで隠すものが何にもないから、やっぱり恥ずかしいみたい。
うちも今、相当恥ずかしいんやけど、実はこんちゃんの方が恥ずかしがってる自分を出すのがヘタなんよね。
そういうとこ、なんかかわいいね。
…まぁ、こんちゃんには言わんけど。

「仕事で疲れてるやろうから、いたわってあげようと思ったのに。ちょっと余裕ができるとすぐそーやってふざけるんやから。」

こんちゃんの照れ隠しに付き合ってあげることにして、泡立てたボディスポンジでこんちゃんの背中を擦る。
見るだけですべすべやとわかるその背中に、直接手のひらで触りたい衝動に駆られたけど、そんなことしたら、『ゆっきぃあたしに触りたかったの?えっち〜』ってニヤケ顔でからかわれるから触れん。…ちょっともどかしい。
こんちゃんの素直さの1%でもうちの中にあったら、もうちょっといろいろするんやけど。
だって、好きな人の身体に興奮するのは、なにもこんちゃんだけじゃない
0445名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:18:16.62ID:kPE0ej0j
こんちゃんの頭を洗ってあげるころには、鏡の中の眠そうにとろんとしたこんちゃんと目が合った。

…実は、ちょっと期待しとったんやけど。…え、えっちするんかなぁって。
でも、こんちゃんすごい疲れてるやろうし、こうやって背中流したり頭洗ったりしてあげて、こんちゃんがちょっとでも癒されるならそれでいいって思わんとだめやんね。

「…ゆっきぃ」
「んー?」

ちょうど頭のシャンプーを流し終わったところで、こんちゃんがずいぶん真剣な声を出した。

「すごいねむい」
「うん。…疲れてるんよ。お風呂あがったらすぐ寝なだめよ。」
「でもすごいむらむらしてる」
「え」
「ゆっきぃ」

くるりとこんちゃんが振り向いた。ぽたぽた髪の毛から水滴が落ちていく。
濡れて髪がぺたんこになったこんちゃんは、長めの前髪を邪魔そうに横に流すと、じっとうちを見つめてきた。
さっきまでの眠そうな顔はどこいったん?
こんちゃんのおっきな目は、邪魔な髪がどかされたおかげで、はっきりと確認できる。いつもはきらきらしてて、えっちのときはすごく優しくなるその目が、今日はなんだか熱を帯びてギラギラしてみえた。
あれかな、極限まで身体がくたびれると、命の危険を感じて、自分の子孫を残そうとして性欲が増すってやつ。…あれ、でも男の人の話じゃなかったっけ?

「ごめん。ちょっと、だめかも」

顎を掴まれて、むりやり顔をあげさせられる。そのままそっとキスされた。唇に触れ合うだけのキスを何度も受けとめる。
こんちゃんは優しい。えっちのときは、もっと優しい。…いつもは。
でも今は、こんちゃんのキスから、いつもみたいに優しくしようとして、でも、どうにもならないとまどいと興奮が伝わってくる。
ねぇ、だめって、どういうこと?
聞く暇もなく、こんちゃんが舌を絡めてくる。ぬるりとした感覚に思わず身体がぶるって震える。こんちゃんがそれに気付いて、逃げないように、うちの腰を抱き寄せた。
こんちゃんの腕とうちの背中は、当たり前やけど遮るものがないから、肌と肌で触れ合うことになる。
…ああ、お互いほんまに裸なんや。
丁度いいくらいの温度に調整されたシャワーがうちらに降り注いでる。

舌先をちゅうって吸われて、腰が抜けそうになるのをなんとかこらえた。キスだけで腰がぬけたなんてこんちゃんが知ったら、明日から格好のネタにされるに決まっとる。
って思ってたんやけど、背中を優しく爪先で擦るように刺激されたら、我慢できずに声が出た。

「はぁ、ん…」
「いい声」

うちがぺたんと座り込んじゃったのを見て、こんちゃんが嬉しそうに笑う。
さっき横に流したはずの前髪が垂れてきてて、片目にかかりそう。なんか、やたらセクシーや。
学生の頃から美人さんやったこんちゃんは、大人になって、幼さがなくなって、ほんまにきれいになった。…その分、うちも大人になってるはずではあるんやけど。うち、ちゃんとこんちゃんにつり合えてるんかな。
なんて考えていたら、こんちゃんの舌がうちの首筋をべろりと舐めあげてきた。唇を噛みしめて漏れそうになる声を我慢する。うちのじゃないみたいな甘い声は,あんまり聞きたくない。どんな顔してればいいかわからんくなるから。
それなら、って言うみたいに,今度は首筋にがぶりと噛みついてきた。
0446名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:23:23.95ID:kPE0ej0j
「んあっ…、」

それ、だめ。
痛いのに、痛いはずやのに、なんでこんな声だしてるんやろ。身体に力が入らんくなる。
こんちゃんがうちの様子を見て、角度を変えて何度もうちに歯をたてる。

「あぁ、あっ…や、だめ…っ!」

がぶがぶと噛みつかれる。
追い打ちをかけるみたいに、ぎゅ、って、両胸の膨らみをつぶすように鷲掴みにされた。
なんか、いつものこんちゃんと違って、ちょっと乱暴や。
それなのに、なんかうちおかしい。
こんちゃんに支配されてるみたいで、体中がびりびりして、感じちゃう。うちってほんまはMなんかな。いやらしく身体をのけぞらせて、こんな風になってるうちをこんちゃんはどう思うんやろう。
ちらりとこんちゃんを盗み見る。熱を帯びた瞳が、うちをじっと見てる。
いつもみたいに、こんちゃんは茶化さない。
えっちのときによく聞く、かわいいね。って言葉も、好きって言葉もかけてこない。
どうしよう。茶化してくれんと、かわいいって言ってくれんと、『あほ』って返せない。
恥ずかしさを身体から逃がす方法がなくなっちゃう。

こんちゃんは、もうとっくにかたくなったそこを避けて、その周りを指でくるくるなぞるように刺激する。早く触ってほしくて、でも、そんなこと絶対言えんし、もどかしい。
かたくなった乳首の先っぽを、掠めるようにこんちゃんの指が触れる。
早くほしい。でも。

「ぅ…」
「ゆっきぃ、胸、びんびんだね。」

こんちゃんが楽しそうに言う。わざとらしい下品な言い方。
柔らかい舌が、乳房と、乳首の周りをじらすように優しく舐める。もう痛いぐらいになってるのに、直接は触れてこない。

「どうしてほしい?」

むり、言えん。
ぶんぶん首を横に振って訴える。

「あっ、!?」

そしたら、しかるようにきゅって乳首を摘まれた。
強い刺激が身体全体に伝わる。

「ゆっきぃがそのつもりなら、別にいいよ。」


―そのかわり、やめてって言っても聞かないよ。
0447名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:30:12.22ID:kPE0ej0j
「……ぁ、…あっ!………ゃ、んぅっ、っん!」

ゆっきぃの敏感になった乳首に、何度も吸い付く。
たっぷりじらしたおかげでとってもいい反応をみせてくれる。
あたしの唾液でぬるぬるになった両方の胸の先端を、きゅって摘んでくりくり遊んであげると、ゆっきぃの顔がいやらしく歪む。

「〜〜っ!」
「気持ちい?」
「そ、んな…こと……んんぅっ!」

ちょっと強めに扱きあげと、涙目になった。
普段ツンケンしてる(最近はかなり丸くなったけど)ゆっきぃが、あたしに、両方の乳首をいじめられて快感に喘いで泣いている。
そのおっきな胸を鷲掴みにされて、身体のいろんなところを噛まれて、きっとやらしいところを濡らしている。

ああ、どうしよう。
大好きなのに、めちゃめちゃにしたいなんて。
疲れてどっかのネジが一本抜けちゃったのかな。

片手でしつこくゆっきぃの胸を堪能しながら、そろりとゆっきぃのあそこに手を添える。
思ってたよりもずっとぬるぬるしてるそこに、あたしの中のネジがさらに一本抜けた気がした。シャワーを浴びながらしていてこれなんだから、お湯に洗い流されてなければ、一体どうなってるんだろう。

ぬるぬるしてるそれを指ですくい取って、ゆっくりクリトリスに擦り付ける。

「あ……いやぁ……あ…、んっ!……だめ…っ」

突然の強い刺激に、ゆっきぃがあたしの手を止めさせようと抵抗する。
それが気に入らなかったから、何度も何度もしつこく往復して擦りあげる。
どうしても抑えきれない声をどうにかしようとゆっきぃが手で口を押さえた。くぐもった声が浴室に響いていやらしい。
そんなことされたら、押さえても無駄なぐらい喘がせたくなっちゃうよね。
ゆっきぃはあたしを煽るのがうまい。

クリトリスを指で両側からそっと摘んで刺激してあげる。のけぞって目の前に差し出された首筋に、今日何度目かわからない、よくわからない衝動に駆られて、たまらず噛みついた。

「あ、も…うそっ、……や………っっ!!」

途端にびくびくってゆっきぃの身体が震えて、そのまま脱力する。
ちょっと予想外にも、もういっちゃったらしい。
首を噛まれていっちゃうなんて、なかなかの変態だ。
ぐったりしてるゆっきぃの前髪をシャワーのお湯が濡らしていく。

「いっちゃったね」
「っ、…しんじられん……うち、」
「すごいかわいかったよ」

予想しない形でいっちゃったのが相当恥ずかしかったのか、ゆっきぃは俯いて目を合わせてくれない。かわいい。
…だめだ。またむらむらしてきた。
0448名無しさん@ピンキー2016/11/19(土) 21:33:47.37ID:kPE0ej0j
「まだこれからだけど、大丈夫?」
「え」

返事を聞かずに唇を奪う。
ゆっきぃの唇はすっごく柔らかくて、食べちゃいたいくらい気持ちいい。あたしの唇はどうなんだろう。
すべすべの白い太ももに手を這わせていく。ゆっきぃの肌はどこを触っても気持ちいい。

そこに指を這わせると、さっきよりさらにぬるぬるになってる気がした。
まだ足りないよね。あたしも足りない。
待ちわびるかのように、あたしの指をぬれて誘ってる。思わずため息が漏れた。
…もう入れちゃっていいかな。いや、なんかもったいない。でももうそろそろ…。
うじうじ入り口で指を前後させてたら、ゆっきぃが腰をもじもじさせて、あたしの指を擦り付けるように動いていた。

「ゆ、」
「…………お願い…」
「…わかった」

シャワーを止める。
浴槽に背中をもたれかけさせて、ゆっきぃ足と足の間にあたしも座り込む。待ちわびるようなゆっきぃの熱のこもった視線。
そろりと指を中に侵入させると、なんの抵抗もなくぬるりと飲み込んだ。
ゆっきぃが、ふ、って静かに息を吐く。
ゆっくりゆっくり指を奥までさし入れて、ぎりぎりまで引き抜いて、またゆっくりさし入れて、を繰り返す。できるだけ丁寧に中を撫でてあげる。

「……んぁ……あ…………」

漏れ出るような喘ぎ声から、ゆっきぃの身体に快感がじわじわ染み込んできているのがわかる。
あたしも女だから、なんとなく、今ゆっきぃがどういう感じなのかは想像できるよ。機械的で、ゆっくりピストン運動みたいにされるのが、逆に良かったりするんだよね。
ゆっきぃの息の乱れに合わせて、少しずつ前後させるスピードをあげていく。
くちゅ、くちゅ、って音が、いやらしい。

「ぁ、はっ、……ど、しよ、…もう」
「いきそう?」
「んっ……」
「はやいね。…もうちょっと我慢して」
「そんなこと、……言われて、もっ、あっ、ゃ!」

っていいながら、動かす速度を上げる。少しだけ指を折り曲げて、中の壁を強く擦りあげるようにしながら。
ゆっきぃが首をいやいやって横に振る。強い刺激に涙目でこらえようとする様子が愛おしい。もっともっと追いつめたくなっちゃう。
いつの間にか、ぬちゃぬちゃ音がするくらい、激しくゆっきぃのあそこを責めたてていた。

「んっ、ぁあっ、……もう、っ、イっ……」

ゆっきぃの中が、きゅう、って締まる。
お構いなしに、狭くなったそこを押し広げるようにして何度も指を突き立てる。あたしの指を奥へ奥へと誘い込むようにひくついて収縮を繰り返すそこ。
…ああ、

「…やらし」
「〜〜〜っ、あ、あぁあーーー…っ!!」

ゆっきぃの身体がびくびくはねる。目の前にある白いおなかに力が入って、きゅっと引き締まる。中がぎゅうぅって狭くなって、あたしの指を強く咥えこむ。
空いている片方の腕でゆっきぃを抱きしめて、ゆっきぃの震えが収まるまでそうしていた。
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