推敲? そんなの関係ねえ!

百合の花は死の匂い。
棺を開けると、白いワンピースの若い娘が横たわっていた。
光沢を帯びるワンピースの生地が、娘の肌の白さをより際立たせていた。
そして百合の匂いだけが、それが「死んでいる」という事実を主張していた。
ワンピースの肩紐が、ゆっくりと解かれる。
程良く丸みを帯びた、慎ましい大きさの乳房が姿を現す。
娘の乳房を曝け出したのは、娘と同じ人物―
ネグリジェと髪型は違っているが、正真正銘の、娘と同じ人物だ。
否、性成熟期に入り、女性らしい身体になった辺りの娘に対し、
歳は美人だから若く見える分を差し引いても30くらいだ。
この「百合子」の前に横たわっている美しい娘は、人形―結婚する前に、
18の誕生日を迎えた百合子の身体の、隅々まで本物のように描き尽くされている。
結婚を控えていた百合子は、この身体が男に舐り尽され、
男根の味を覚えて老いていく事に憂いを覚えていた。
そこで、女性として成長しつつも、処女で汚れのない今の身体を、
美の芸術として永遠に留めておこうと、ある人形作家に頼んだ。
それはラブドールというもので、形だけではなく、
感触や膣の中の襞の一つ一つまで、本物そっくりに再現されたものだ。
その為に、処女は奪わずとも、人形作家に膣穴の奥まで覗き込まれ、
乳房を舐られ、時には乳首を吸われて感触を確かめられた。
百合子は、その時に自分がそうされたように、人形の乳首を吸っていく。
あの時も、この人形のように安らかな寝顔を湛えたまま、
母性の性器を吸われる快楽に、じっとりと股間から雫が垂れるのを覚えたっけ。
なだらかな白い山が、刺激によって快楽をもたらすように成長している事を、
身体で知った印象深い出来事だ。
桜色の小さな乳首が、紅色の唇に吸われる。
成熟した女性の色香を湛える唇が、少女の面影を色濃く残す乳房を、何度も責めている。
百合子の口紅と唾液に生々しく汚された人形の乳房は、照れたように、
唇の紋様で仄かに赤く染まった。
娘の頃の自分の乳房を味わう度に、欲情と共に、美しさで満ち溢れた昔の生活が蘇る。
真っ白な乳房の山に描かれた模様は、丸で雪原に現れた花園のようで、
それは百合子の視界を揺らめかせるようだった。
美しい夢を見ているように眠る過去の清い身体は、大人の色香を纏った未来の自分に
蹂躙され、より輝きを増して見えた。