二人の一部始終を、木の影から見ている女性がいた。
「ふふ、ローナったら、可愛い顔してすっごい出るのね。今度コウ君からかってあげよーっと♥」
――彼女の名はセリア。
コウシロウの働くバーの常連にして、ローナの隣に住んでいる(スケベ)エルフ。
ちょっと年は上だが子供っぽくて、ローナとは仲がよく、お互いに料理を交換したりちょくちょく一緒に遊びに行く親友。
(それで、ローナと一緒にコウ君におもいっきり…ああもう想像しただけで胸がキュンキュン来る……♥)
彼女は隠れながら一人で悶えていた。が。
「はいはーい、ちょっとそこのオネーさん、そこで何してるのかな〜?」
夜間パトロールの、制服を着た治安維持隊のダークエルフに見つかった。
この前小説で読んだ別世界で例えると警察だろうか。ちょっときつそうな制服の前が少し空いていて、大きな胸の谷間が見えている。
「うぇっ!?えっとこれはあのその!」
「はは〜ん。その反応、それに一人でいる所を見るとノゾキだね?けっこういるんだよこの公園。カップルの溜まり場だしね。
まあ、この街事件なんて起きたこと無いから、ここくらいしかチェックする所ないんだよね。暇でいい仕事だよ、うん。」
「は、はぁ…」
「この公園もレズカップルだらけだからさ、食傷気味なんだよね。でもこの国、女の子ばっかだからさ。
いやいや、可愛い娘ももちろん好きなんだよー?でもさでもさ、たまには男×男も見たいんだよ。
つーか治安維持隊とか言うけどさ、私たちいなくても治安なんて全く乱れてないっつーの。
やることは迷子の捜索と落し物手続き。いや平和なのはいいんだよ?やりがいゼロとも言わないけどさ、もっとこう…ずばばーんとさ、
気持ち良いこととか楽しい事とかしたいじゃん?つーかどこ行っても男少なすぎ、あー、もう彼女いるけど彼氏もほしいなぁもう。」
セリアは完全に彼女のペースに巻き込まれている。つーか注意のハズがだんだん愚痴になってる…
「えっと…今度飲みにでも行きます?」
「いいの!?うん、行く行く!一人で飲む酒は飽きてたんだよね。いやー、酒癖悪いらしくててうっかり恋人襲っちゃってさ。
貴女は大好きだけど、一緒の酒は勘弁。酒入ると激しすぎ。とか言われちゃったのよ、うん。あーでも、飲みすぎると上司に怒られ…
いやいや、誘われたんだから行くのは仕方ないよね、あー、誘われたんなら仕方ないわー、うん。」
――うん、この人、自分と同じ匂いがする。すっごいダメな人の匂いだ…!

そして、セリア行きつけのバーに常連がまた一人。
色々とアレな女性の追加に、コウシロウの気苦労がまた増えるのでした……
       
                               つづく