箱に入っている無数のチューブ容器。
ホテルにありそうな使い切りの歯磨き粉みたいに小分けされたそれを一つ取って、
空いている左手で私のお尻のほう―――チューブの中身の行先をまさぐる。

“下着”越しにおしりの穴に触るとある鍵穴―――
そこからもう少し背中側に指を滑らせて、探り当てた小さな穴にチューブの中身を一気に流し込む。

プチュッ―――

そんな音とともに、おしりの穴が潤いを取り戻す。方々からお尻の肉を引っ張るようにして、穴まわり全体をなじませていく。

ついでに排泄申請も通しておしっこも抜いとこうか―――

排泄申請といってもトイレからいつでも申請できるのはおしっこだけで、
大きいほうはついさっき触った鍵穴でみっしりと塞がれたまま。

だから―――使われるはずのないウォシュレットやペーパーは、この白いラベルのトイレには置かれていない

どうしても回数の多くなる排尿管理はある程度を自己管理させる代わりに
排便管理は厳格に、それこそ奴隷と変わらないぐらいに―――ううん。
お尻に打ち込まれたものの大きさを考えたら、奴隷より厳しいとさえ思える。

そう。体に溜まったものを出す自由を奪われたおなかの中は、“かさばらない”食事を選べば実は意外ときつくない。
どちらかというと、閉じる自由、楽になる自由を奪われたおしりの穴のほう―――

唾液がでるわけでも膣分泌液がでるわけでもない、出すためだけにあるはずの穴。
その穴に栓を打ち込んでこじ開け、管を通して我が物顔で居座り続ける―――
体のでき方みたいなものを踏みにじるようにして穿かされる鋼の下着。

本来、半日もすれば乾いたお尻が悲鳴を上げるような代物と4週間近くを共にする私たちにとって、
このチューブはなくてはならないもの。シャンプーとか歯磨き粉とか、それこそトイレの紙のような、日用品の一部。