トップページ801
136コメント208KB
モララーのビデオ棚in801板71 [転載禁止] [無断転載禁止]©bbspink.com
0001風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:14:42.17ID:6x6p4YSU0
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板70
http://itest.bbspink.com//test/read.cgi/801/1426866477/l50

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
0002風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:17:53.52ID:6x6p4YSU0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
  長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
  再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
   また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
   作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。
※ルールを守っている書き手やその作品に対して誹謗中傷・煽り・否定意見の書き込みは禁止
※誹謗中傷・煽り・否定意見に対しての反論は書き手、読み手共に禁止
 レスするあなたも荒らしです。注意する時は簡潔に「>>2を守ってください」で済ませましょう。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://bbs.kazeki.net/morara/
0003風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:18:31.30ID:6x6p4YSU0
■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。
0004風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:19:04.38ID:6x6p4YSU0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
0005風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:19:29.70ID:6x6p4YSU0
04
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
0006風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:20:09.48ID:6x6p4YSU0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘
0007風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:20:49.17ID:6x6p4YSU0
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ
0008風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:21:19.11ID:6x6p4YSU0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0009風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:21:52.85ID:6x6p4YSU0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
0010風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:22:27.70ID:6x6p4YSU0
|__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
0011風と木の名無しさん2018/12/09(日) 23:23:55.10ID:6x6p4YSU0
いつの間にか落ちていたので立てました
テンプレのコピペミスあったらすまん
0012風と木の名無しさん2018/12/10(月) 08:45:10.71ID:xtbipK6p0
>>1
スレ立て乙です
ありがとう
0013風と木の名無しさん2018/12/10(月) 18:21:40.15ID:WetYEwTA0
前は500KBで落ちてたけど、今はシステム変わって730KBまで容量あるみたいです

約一ヶ月で一スレ消費していた過去の一時期と違い、現状は投下も激減し、
そこまで行くのに何年かかるかわかりませんが、覚えておきましょう
0014風と木の名無しさん2018/12/11(火) 14:57:36.28ID:jfmEB6JC0
投下の途中で前スレ終わったドアラの人、よかったら続き投下して下さいね
0015風と木の名無しさん2018/12/11(火) 18:53:26.18ID:0aIxE2AF0
保管庫の過去スレ一覧の変更できる人いたら頼む
0017風と木の名無しさん2018/12/11(火) 20:57:00.67ID:lFYBi90b0
>>16
正直要らなさそう
私の記憶違いじゃなかったら2レスでかなり残ってたスレあったし…
まあ20レスいけば安泰だろうけども
0018風と木の名無しさん2018/12/13(木) 23:40:39.94ID:bLjIcqMu0
>>1
スレ立て乙でした

前スレの蟻桐の人、続き気になってます
凪差さんが出てきて嬉しかった
0019引退セレモニー 2/32018/12/15(土) 20:00:01.12ID:gWDvMzBz0
スレ立て乙です
前スレ最後で投下途中だったので続きです


しゃちほこの盛野→元ド荒の中の人
(盛野の引退セレモニーより)






「最後の日にあなたに会えて良かった」
昔と変わらぬ人懐っこさで、森乃に握手を求める。求められるまま、握手をした。あの頃と何ら変わらない握手だ。
ド荒の本にコメントを書いたことがある。ド荒、は、ファンにとっては一人だが、盛野にとって彼がド荒だった。
盛野のコメントは、彼が演じるド荒に向けたものだった。

「バク転は、若い子がしますけど…。セレモニーでは一緒に歩きましょう」
足をさすりながら彼は言う。
「ありがとう、来てくれて」
勇気が必要だったろうに、来てくれたことに労いの言葉をかけた。

ド荒は、何人もの役者に脈々と受け継がれている。坊主好き、珍妙なダンス好き、バク転、その他諸々。
設定として引き継がれてはいるが、細かく見るとそれぞれ違うな、と盛野はわかる。

「コーチとしているんですってね」
「ああ」
「後進の指導は大事ですよね。わかります。この球団一筋のあなたらしい選択だ」
そこへ、一人の若者が入室してくる。盛野は、名前も顔も一致しないその若者を訝しげに見つめた。
「今日、バク転してくれる若い子です。僕の教え子」
「教え子?」
「今、何をやってるんだ、って顔ですね。足が悪いので激しい動きはできませんが、育成部の責任者です」
よろしくお願いします、と彼は、頭を下げる。
「盛野コーチ。これからもこのド荒くんをよろしくお願いしますね」


世代交代。
華の選手はいつしか引退し、指導に回る。
彼は野球選手ではないが、彼もまた、己の身体と戦い、力尽き、次の道を選んだのか。
0020引退セレモニー 3/32018/12/15(土) 20:00:51.03ID:gWDvMzBz0
球場全体に、応援歌が響く。昔の応援歌。
球場全体に、「ありがとう盛野!」コールが響く。
球場全体に、ジェット風船が飛ぶ。

盛野はその中で、彼の足音を聞いた。
振り向けば、彼は、左手には、サインボールを入れた箱を抱え、右手にはデジカメを持っている。

ド荒。
俺の大好きなド荒。
一番大好きなド荒。

ボールを投げ込む。一球一球に別れの悲しみと長年の感謝を込めて。

ド荒。
俺の大好きなド荒。
一番大好きなド荒。

カメラも憚らずに、ド荒の抱擁を受け止める。
自分は、今、すごい笑顔なんだろうなあ、と考える。

なあ、お前に会えて良かった。また、飲みに行こうな。また、遊びに行こうな。
盛野は、これからの人生を楽しんでいきたいとようやく感じることができた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0021年賀状 1/22019/01/05(土) 21:23:31.90ID:r7dX4A870
短いですが、オリジナル「年賀状」

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


郵便受けを開けると、ひらりと赤いハガキが落ちた。
「あいつ…もう五日だぞ…」
俺宛ての年賀状。差出人は、幼馴染のあいつだった。
ご近所さんで生まれた時から一緒だったあいつ。正月も、毎年元日から一緒だったから、年賀状なんて出したことなかった。
大学進学のため、あいつが遠くに行ってから初めての新年。付き合い十九年にして、初めてあいつから年賀状をもらった。

電波に乗せて軽く挨拶をするだけで、人と年賀状のやり取りなんて年々少なくなっていっているのに、あいつらしい。
実際すでに元日にあいつには挨拶済みだ。
まあ今日届くってことは、二〜三日ほど前に出したってことだろう。それはそれであいつらしい。
「俺も出してやればよかったかな…」
ハガキのくじ番号を何となく確認し、あいつの文字を目でなぞる。
あいつん家…あいつの実家の住所は、俺の家と番地違い。この住所を書くのに、なんとなく変な心持ちがしたんじゃないだろうか。
ふと、字が思ったより上手い気がして違和感を覚える。あいつの字を見るのも思えば久しぶりだ。
こんな字だったか?
上手くなったのか?俺の知らないところで。
それとも…忘れつつあるのか、あいつを?
チクリとした寂しさを感じて、しかし反射的にそんな思いを振り払いたくて、気持ちを吹き飛ばすようにハガキを裏返す。
0022年賀状 2/22019/01/05(土) 21:24:03.25ID:r7dX4A870
“謹賀新年
あけましておめでとう!”

ペンじゃなく、筆?いや、これは筆ペンだろうか。手書きの毛筆で堂々と筆記してある。
小さい頃、一緒に年賀状を書いていたあいつが無理して謹賀新年と難しい漢字を使い、見事に間違えていたのが脳裏に蘇る。
何とかごまかしていたが、あれはごまかせていなかっただろう。
祖父母へ宛てたものだったから、かわいい孫の書いた年賀状なら誤字も笑ってくれたに違いない。そう思いたい。
昔の思い出に少し笑いながら目線を落としたら、その下に書かれていた字に息を飲んだ。

“彼女できちゃった!”

ヒュッと音がした。と思う。その時の耳は、現実の音を捉えていなかった。
体の内側がドクドク言っている。わけがわからない。
なんで心臓がこんなにうるさい?なんで息が上手くできない?
こんな短い文章を見て、なんで俺はこんなにどうしたらいいかわからなくなっているんだ?
「こんなこと年賀状に書くか普通…」
無意識にこぼれ出ていた言葉。
つぶやいたことさえ自覚がなかった言葉は、なぜこぼれ出たのかわからないほど内心を反映しておらず、ただ人ごとのよう。

“おめでとう!”

何がめでたいもんか。ちっともめでたくなんかない。
この衝撃が意味することは。
この、感情は。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0023風と木の名無しさん2019/02/02(土) 19:04:18.60ID:BqEn2pJa0
いちおつです。新スレ立ってよかったですね。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0024龍は眠らない 前編 1/32019/02/02(土) 19:06:16.37ID:BqEn2pJa0
 遥かな夜空の向こう、大いなる暗黒の彼方から、誰かの囁く声が聞こえる。
 「アドルフ・・・・君は夢を叶えたね。君は確かに、二十世紀の神話になったんだ。ジ
ークフリートではなくてファフニルの方だけれど」

 「グスタフ、悪って何だと思う?」
 その三十過ぎの黒髪の紳士は、優美なオーストリア訛りでそう尋ねた。曰く言い難い光
を放つ碧い双眸が、テーブルの向こうから、ちょっと斜視気味にぼくを捉えた。
 「ぼくはミヒャエルです」
 空腹に料理を詰めこむのに余念がなかったぼくは、急いで嚥下し、一息ついてから注釈
を入れた。
 「失敬。グスタフは幼くして亡くなった私の兄の名前だ。それと、昔大好きだった人の
こともたまにそう呼んでた。本当はアウグストで、普段はみんなグストルと呼んでたんだ
けどね」
 紳士は眉を上げ、片頬でちょっと翳のある笑みを見せた。
 「で、話の続きだが、悪とは何だと思うかね?そもそもこの世に、主として子供向けの
創作物で描かれるような、純粋で普遍的かつ絶対的な善と悪というものは存在すると思う
かね?」
 「『善と悪がある』というのは、それ自体としては信ずるに値する真理だと思います
が・・・・」
 ぼくは少しずつ言葉を発した。元々、あまりそういうことは突きつめて考える方ではな
く、倫理とか修辞学とか、そういう授業も苦手で、落第点すれすれを取ったものだった。
なんで我が国の人々は眉間に皺を寄せて勉強したり、検証したり、議論したりすることが
こんなにも好きなのだろうか。こういう国民がおかしな人物や体制を妄信して間違いを犯
すことなどあり得ないと思うのはぼくだけだろうか。
0025龍は眠らない 前編 2/32019/02/02(土) 19:08:29.46ID:BqEn2pJa0
 「正直、難しくてよくわかりません。ただ『絶対的な善とは何か、絶対的な正義とは何
か』を定義するよりも、『絶対的な悪とは何か』を定義することの方が易しい気はしま
す。その上で、『善』とか『正義』というものを定義するとするなら、恐らく『悪を為さ
ない、為させないこと』なんじゃないでしょうか」
 これ以上喋ったら、自分で何を言っているのかわからなくなりそうだった。そもそも、
紳士の最初の質問に全然答えられていなかった。
 にも関わらず、彼は口髭を生やした厳粛な顔に、さっきよりちょっと柔らかい微笑を浮
かべて頷いた。「上出来とまでは言わないが、まあいいだろう、ミヒャエル」そう言いた
いみたいだった。一番厳しいと噂されている先生の口頭試問を無事パスしたような気持ち
で、ぼくは心底ほっとした。

 「アドルフだ」
 貧しく疲弊しきった哀れな敗戦の街ミュンヘンの片隅で、明るい色のギャバジンのコー
トを着た紳士はぼくに親愛の片手を差し出した。といっても、生まれて十八年間、この街
を出たことなどほとんどなかったのだけれど。
 夕食を奢られた後、埃っぽいローゼンハイマー街を抜けて、アドルフのアパートについ
て行った。簡素そのもの、禁欲そのものという、革命家というより洞窟に起居する修道士
のような住まいだったが、一点だけ、らしからぬ要素があった。
 「絵を描くの?」
 「たまにね。戦前はプロを目指していたが、今ではただの趣味だよ。仕事の方がおもし
ろいし、物理的にも忙しくなってろくに時間を取れないしね」
 持ち主の性格を表すように几帳面に整えられた清潔なベッドに並んで腰を下ろした。彼
はウィーンのことを色々話してくれた。更に、もっと広い世界を求めてミュンヘンに来た
ことや、ドイツとオーストリアを再統一する必要性について情熱的かつ饒舌に語り始め、
そういう政治的諸問題が書いてある書籍や新聞やアジビラを持ってきてくれて、よかった
らあげると言ってくれた。中には、彼自身が執筆した記事もあった。
0026龍は眠らない 前編 3/32019/02/02(土) 19:10:43.39ID:BqEn2pJa0
 話は大戦中ドイツのために勇敢に戦い、受勲したことや、国防軍を再編成すべきである
こと、最近自分が創設した新しい部隊のことに及んだ。アドルフは新興の政党を率いる政
治活動家で、この時代は政党単位で独自の武装組織を持つことがごく当たり前であり、街
中での小競り合いも日常茶飯事だった。普通のドイツ人、普通の男の子であるぼくは、す
っかり彼の話に惹きこまれて、熱心に聞いていた。
 「ドイツと世界は君たち若者のものだ。君のような子が部隊の宣伝をしてくれれば――
いや、いっそのこと入隊してくれれば、とても心強いのだが。レームも喜んで面倒見るだ
ろうし。何しろ、政治や軍事よりも若い男の子の方が好きときてるからな、あいつは」
 「雇っていただけるなら――その、今夜だけじゃなくて、ずっとお側に置いていただけ
るなら、それはほんとに嬉しいです。何ヶ月も失業中で、母も弟たちも飢えに苦しんでい
ますから」
 ぼくは一生懸命言った。アドルフはじっとぼくの顔を見つめ、頷きながら聞いていた。
 「戦争に・・・・戦争にさえ負けなければ・・・・。これじゃあ父さんだって何のため
に死んだのかわからない」
 悔し涙が込み上げそうになるのを辛うじて堪え、膝の上で拳を握り、唇を噛んだ。
 「わかってるよ、君の気持ちや状況は。何より、お母さんや弟さんたちのことが心配だ
よね」
 深い共感と慈愛のこもった声で一言一言、噛みしめるように言うと、アドルフは矢庭
に、ぼくの両肩を掴んでベッドに押し倒した。
0027風と木の名無しさん2019/02/02(土) 19:11:30.91ID:BqEn2pJa0
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

ちょっとageときます。明日の晩また来ますね。
0028風と木の名無しさん2019/02/03(日) 17:35:54.00ID:njo3Lm1q0
毎度お世話になります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0029龍は眠らない 後編 1/72019/02/03(日) 17:37:45.73ID:njo3Lm1q0
 心臓が高鳴り、喉元から飛び出そうだった。また泣き出しそうになりながら、今や猛禽
の蹴爪にがっちり掴まれた小動物も同然のぼくは、男の顔をまっすぐ見ることができず
に、頬を赤らめて目を逸らした。彼は鮮やかな手つきでぼくがリボンタイ風に結んでいた
スカーフをほどき、襟元から抜き取った。無造作に背後へ放り投げられたそれは蝶のよう
に宙を舞った。
 アドルフは手際よくぼくのカッターシャツの釦を外し、胸をはだけさせた。一応ストー
ブが焚かれているとはいえ、十二月のことであり、しかも彼のアパートはとても寒かっ
た。冷気に晒された乳首が彼の刺すような視線の中でツンと立ち、それを指先でさりげな
く摘ままれ、弾かれて、耳が熱くなるくらいに恥ずかしかった。
 ここに来れば何があるか、もちろん知っていた。男どうしであっても肉体は結ばれる、
しかし、自然の理に基づく男女の結びつきと違って、主に男性を受け入れる側に、相当な
困難が伴うことも知っていた。
 鋭敏に、ぼくの不安を感じ取ったのだろう。彼は手を止めて、冷静に言った。
 「君、男とも女とも経験ないんだろう?怖がらなくても、大事な兵士の体に最初から無
茶はしないよ。嫌ならこれで終わって帰っても全然構わない。それでもここまでつきあわ
せた分の金は払うしね」
 その言葉の後半部だけ、ぼくが眼差しで否定すると、彼はふっと笑って、「ありがと
う」と呟き、染み一つないピローカバーに扇のように広がったぼくの髪に手を絡ませた。
 「素晴らしいブロンドだ。誠にゲルマン民族らしい。将来は君のような金髪碧眼の、美
しく優秀で愛国心に溢れた青少年ばかりを結集した精鋭部隊も組織したいと思っているん
だ。鳥肌立つくらいにスタイリッシュな制服をデザインさせるつもりだよ。まだまだ資金
や権力が圧倒的に及ばないがね」
 その魅惑的な話も、ぼくの耳にはろくに届かなかった。家に帰っても惨めさと窮乏が待
っているだけの戦後の若者であるぼく、今、家族の中で自分だけ、親切な紳士にレストラ
ンに連れて行ってもらって、全く何日ぶりかでおなかいっぱい美味しいものを食べさせて
もらったことへの罪悪感に苛まれているぼく、その男の部屋で、今生まれて初めて体を売
ろうとしているぼくの耳には。
0030龍は眠らない 後編 2/72019/02/03(日) 17:41:21.19ID:njo3Lm1q0
 ぼくが男娼になったなんて知ったら、母はどんなに悲しむだろう。弟たちはどんなに軽
蔑するだろうか。男らしく、名誉の戦死を遂げた父の名にも泥を塗ることになりはしまい
か。
 ふと、さっき食事中に自分が言ったことと、アドルフの問いを思い出した。
 善とは、正義とは、悪を為さない、為させないこと。悪とは一体何だろうか。
 家族を、故国の人々を、敗戦の屈辱と、いつ終わるとも知れない貧困と混乱の中に捨て
置くことこそ、悪ではないだろうか。
 「哲学と道徳と政治は何が違うと思う?」
 アドルフは部屋の照明を落とし、上着を脱ぎ、ぼくに覆い被さってきた。頬に、顎に、
首筋に、胸にと冷たい唇を這わせながら、その口づけよりも危険な毒素に満ちた問いかけ
を発した。ぼくに答えを求めていないのは明らかで、ただ自問自答しているだけだった。
この風変わりな紳士ときたら、ベッドで抱きあってのキスや愛撫の時くらい、その手の命
題を忘れていられないのだろうか。
 乳輪を甘いキャンディのようにしゃぶられて、感じてしまって、こっそりシーツに爪を
立てて堪えた。
 「『善とは何か、悪とは何か』を追究するのが哲学。善を為すよう奨励するのが道徳。
道徳の実践や応用、つまり制度化を担うのが政治。但し、哲学者も道徳家も、時の政治的
権力の影響を全く受けずにはいられない。――気持ちいいの?勃ってるね」
 アドルフは衣服の上からぼくの下半身をまさぐり、くくっと笑った。「いけない子だ」
 ぼくは着せ替え人形みたいにベルトを外され、ズボンとパンツを脱がされるままになっ
た。
 恥じらう間もなく、露になったものを、アドルフがそっと口に含んだ。
 「ひゃっ」
 そんな所を誰かに舐められるなんて、生まれて初めてのことだった。あまりの気持ちよ
さにのけ反り、声が出た。自分の掌やシーツに擦りつける時なんて比べものにもならな
い。勢いよく吸い上げられ、舌が忙しなく伝い降りたり這い上がったりした。亀頭を集中
的に責め立てられて、足の指が引き攣り、気が遠くなりそうになった。
 「アドルフ・・・・出していい?」
0031龍は眠らない 後編 3/72019/02/03(日) 17:44:19.08ID:njo3Lm1q0
 数分、いや数十秒と持たずに、そう囁きかけた。アドルフが目顔で頷いたので、深く息
をついて、彼の口腔に夥しく射精した。アドルフの唇の端から滴り落ち、顎を白く汚すほ
どだった。
 「すぐイッちゃった。舌を使うの巧いんだね」
 しばらくして、アドルフに腕枕してもらって一休みしながら言うと、
 「そりゃ、演説家だから」
 彼は本気とも冗談ともつかないことを言った。
 「実際ね、ウィーンで、この街で、戦場で、数えきれないくらいの男のものを咥えた
よ。もちろん生きるため、絵を売るためだ。戦争に征ってた時なんか、風呂場でしょっち
ゅう、複数の男に取り囲まれて、あらゆることをさせられた。あいつは根っからの淫売
で、自分から喜んでやってるんだって噂まで立てられてね。体目当てなのは変わらないと
はいえ、親身に話を聞いてくれる気のいい上官もいたけど、軍隊っていうのは基本的に、
そういう野蛮な所だからさ」
 ぼくはアドルフの形の良い乳首を弄りつつ、二十代の彼がお風呂でマワされる所をじっ
くり想像して、またおちんちんをカチカチに硬くしながら、顔つきだけは神妙に聞いてい
た。
 「子供の時から、そういう権威主義的なのは嫌いだった。親父もそういう人間で、私が
絵を描くのを嫌って、何か気に入らないことがあれば殴ったしね。学校も合わなくて辞め
て、恋人と山歩きしたり川で泳いだり、屋外でスケッチをしたり、劇場に行ったり、芸術
や音楽や文学の話をしたり、故郷のリンツでは専らそんな風に、のびのび過ごしてた。お
互いの家に誰もいない時や人目につかない自然の中で素っ裸になって愛しあったりね。お
互いまだ今の君より年下の、親元に住んでる子供だったのに、思えば大胆なことをしてた
ものだよ。
 君のような素直でやさしい子を見ると、その人のことを思い出すよ。彼はいつも善良で
あろうとしていた。でも、政治には全く関心がなくて、政治的な問題とはいつも一定の距
離を置きたがる性質だった。そんなこともあって、ウィーンに出てからは一つ屋根の下に
暮らしていたにも関わらず、お互いに心が離れていったのさ。十九で、私が彼の許から行
方をくらます形で別れて、それ以来一度も会っていない。多分、これからもね。
0032龍は眠らない 後編 4/72019/02/03(日) 17:46:25.82ID:njo3Lm1q0
 今言ったように、いつも善であろうとしていた人のように――私よりはよほど善良であ
ったように私には思えるが、政治と道徳にはさっき言ったような形での関連がある。政治
的でないということはとどのつまり、道徳的でないということなのだろうか?そもそも、
政治的でないとはどういうことだろうか?完全に政治や政治的見解と無関係で生きること
など、果たして個人に可能なのだろうか?」
 「その人のこと、本当に好きだったんだね。さっきから話に出てる、レームとかヘスと
かいう人たちよりも好き?その人たちともこういうこと、するんでしょ?」
 鼻にかかった声で言いながら、アドルフの首に両腕を巻きつけ、口元に軽く口づけた。
 「たまに、お互い気が向いたら、ね。でもそれはスポーツとかレジャーみたいなもの
で、そうだな、変な言い方だが、党員どうしの団結力強化のための営みの一環だよ。彼ら
は帝国の――私の夢のために共に闘う同志であり、もっと言えば私の夢の一部だ。
 でも、その人は違うよ。彼は私の、何というか、私の――愛しい人だ」
 苦笑いは言葉の終わりで、屈託のない、はにかんだ笑みへと変わっていた。その後もあ
る程度の期間、つきあいは続いたが、この人のそういう表情を見たのは、多分、この時が
最初で最後だった。
 人類の諸悪がたった一人の個人の上に置かれるとする。彼は極めて観念的で抽象的で、
ある種神秘的ですらある悪の元型(アーキタイプ)として、後世の人間によって定義され憎
悪され断罪され続け、その評価は永遠に覆すことができないとする。それが彼の、善良な
る人々の、世界に対するある種の義務であり、必然でもあるだろう。
 でも、その人だって、ただの人間だ。
 ぼくは彼の生まれたままの裸の体に両腕を回し、そっと抱いた。ドナウの流れのよう
に。
0033龍は眠らない 後編 5/72019/02/03(日) 17:49:14.18ID:njo3Lm1q0
 「あなたの幼馴染みの恋人って、八月生まれの人?」
 胸に頭を押し当てながら囁くと、アドルフはちょっと驚いたように目を見張った。
 「そうだが、どうしてわかったんだね?」
 「夕食の時言ってたじゃない。アウグストって」
 「そうだったか。君は利発な子だな。きっと頼もしい味方になるだろう」
 アドルフは目を細めてぼくの肩を抱き寄せ、髪を掻き撫でた。
 それから彼はぼくに、リラックスして仰向けになるように言った。
 「大丈夫、挿れないから」
 そう言ってぼくを安心させてから、強く抱きしめて口づけした。口中では舌が絡み、腰
の所では、ぼくのと彼のともむくむく動いて触れあって、まるで自分たちの分身どうしも
キスしてるみたいだと思えて、ちょっと微笑ましかった。
 アドルフがぼくの肩を押さえて普通に交わる時みたいに腰を動かすと、溢れ出すお互い
の糖蜜に濡れそぼちながら、重なりあったものどうしが擦れあい、捏ね回され、そのぬめ
る感覚と淫猥な水音がまた新たな興奮を誘った。ぼくもはしたなく腰を揺り、夢中で快楽
を貪りながら、アドルフの足に自分の足をきつく絡みつけ、背中に回した腕に力を込め、
その唇や耳朶や首筋や肩を頻りに噛んだ。
 恥ずかしかったけど、声に出して言ってみた。
 「アドルフのおちんちんと擦れて、ぼくのおちんちん気持ちいい」
 その言葉が耳に届くと、アドルフも顔を上気させて、
 「私もだ・・・・ミヒャエルの体に出していいかな?」
 「うん・・・・いっぱい出して」
 気が付くと、生温かく、ドロッとしたものがおなかの上に広がっていた。アドルフは枕
元から布巾を取ると、優雅な仕草で二人分のそれをきれいに取り除いてくれた。お臍の内
側や太腿まで、丁寧に拭ってくれた。
 その後、ぼくの頬に口づけし、掛布を首の所まで掛けてぎゅっと押さえつけた。
 「疲れたろう。ゆっくりおやすみ。明日の朝早く帰って、午前十時に党の事務所に来て
くれ」
 そのあまり色気のない言葉をぼくは、天使の囁きのように快く聞いた。
 「ちょっと面倒くさいけど、同伴出勤ってわけにもいかないのでね」
 と、彼はきまり悪げに付け加えた。
0034龍は眠らない 後編 6/72019/02/03(日) 17:51:26.45ID:njo3Lm1q0
 夜半過ぎ、ふと目を覚ますと、傍らで眠っているはずの彼はいなかった。
 そっと部屋を見渡し、目を凝らすと、こちらに背を向けて、小さな堅い机に向かってい
る彼の姿が見えた。スタンドの明かりだけを点け、恐らく古典か歴史かの分厚い本を何冊
も広げて、彼は書きものに熱中していた。
 声など上げられるはずもなかった。ぼくは精励する人を見た。果てしのない孤独と静け
さの中で沈思黙考する人を見た。何も見なかったように、再び眠りに就こうと思った。カ
ーテンの隙間から射しこむ月影が無限の距離感を以て、ぼくと彼とのわずか数メートルの
空間を隔てていた。

 「そら、子供にはホットミルクだよ」
 翌朝、一晩ベッドを共にした代価としては破格の支払いを受け、白パンを一かけらとポ
テトサラダだけの質素な朝食を供された。聞く所によると、たとえこの先どんな富と権力
を得ることがあっても、この食生活は変えるつもりがないらしい。美味しいものを食べる
とか、贅沢な暮らしをするということにこの人は本当に関心がないのだ。
 ただ、朝にはものすごーく弱いが、今朝は頑張って起きてくれているらしい。
 「もう子供じゃないよ。夕べあんなに・・・・いやらしいこといっぱいしたくせに」
 追加で差し出された熱いマグカップを手に持ちながらも、ぼくは膨れっ面をした。
 「そうだったね。どんな恋ならしていいかは年齢で決まるもんじゃない。誰かにああい
う形で愛を受けた時からもう大人だ」
 言いながら、澄まし返った表情で自分は白湯を飲んでいる。その顔は涼しげで、憎らし
いくらいに抜け目なく小利口で、昨夜、キャンバスに絵筆でいろんな色を載せていくよう
に、ぼくの体を自在に扱い、目くるめく官能に彩った男と、本当に同じ人かと疑いたくな
る。
0035龍は眠らない 後編 7/72019/02/03(日) 17:53:18.29ID:njo3Lm1q0
 「言い忘れていたけど、向こうでは『アドルフ』は困るぞ。『ヒトラーさん』と呼んで
くれ」
 玄関のドアを開けてくれながら、彼は念を押した。
 ちょっと思いついて、かわいらしく呟いてみた。
 「はい。我が総統」
 彼は目をぱちくりさせた。
 「何、それ?」
 「なんか今、降りてきたんです」
 「へ〜」
 と彼はそっくり返って大袈裟に感心し、にんまりと会心の笑みを浮かべた。
 「いいな」
 権威主義的なの嫌いじゃなかったの、と、ふと思ったけれど、もちろんそんなかわいげ
のないことは口に出さない。
 朝靄煙る街路へとぼくを送り出しながら、アドルフは鷹揚に片手を上げ、ごく平凡に、
日常の挨拶をした。
 「それじゃまた、後でね、君」
 男は、この時まだ、ドイツ史上、いや世界史上空前絶後の現象ではなかった。

Ende


 「世の中で一番の悪党は、間違っているものを見て、それが間違っていると頭でわかっ
ていても目を背ける奴らだ」
(ボブ・ディラン)

 「もし社会が無制限に寛容であるならば、その寛容は最終的には不寛容な人々によって
奪われるか破壊される。寛容な社会を維持するためには、社会は不寛容に不寛容であらね
ばならない」
(カール・ポパー)
0036風と木の名無しさん2019/02/03(日) 17:54:12.78ID:njo3Lm1q0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ロータル・マハタン「ヒトラーの秘密の生活」より。
0037風と木の名無しさん2019/03/13(水) 19:54:01.40ID:QnvMxaix0
蟻霧の蟻さん→霧さんのSFちっくな話。四話目。
『平行世界のステイルメイト-4-』

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「じゃあ、蟻to霧ギリス……なんて、どうですか?」

伊志井さんが言ったのに、事務所の人は「いいね、"間に合わせ"よりはずっといい」と頷いた。
「じゃあ、君たちは今日からコンビってことで。
 二人で頑張って、売れちゃってください」
事務所の人が、俺たちを握手させる。伊志井さんは「よろしく」と笑った。

なんでかな、伊志井さんを見た瞬間思ったんだ。(あ、この人だ)って。
人生を懸けるとか、運命の相手とか、大げさだけど、そんな感じ。
俺はこの人と生きていくんだ、って。

俺の心はたぶん、ずっと変わってない。ただ、過ぎていった昔にはもう戻れない。それだけだ。



朝起きると、パラレルワールドの伊志井さんはまだそこにいた。勝手に俺のパソコンを見ている。
ソファで寝させたのにやや心を痛めていたのが馬鹿らしい。ちょっと薄い後頭部を思い切り叩く。
「いった!……朝から積極的だな君は」
「頭のどこがエラー起こしたら、んな発想すんだよ。勝手に触んな」
「いや、こっちの世界の君はどんな仕事をしてるのかと思って」
俺はため息をついて、スマホを見る。『伊志井政則、映画撮影をドタキャン!関係各所に大迷惑!!』
……さっそくニュースになってた。俺の方もうるさくなるかもしれないので、電源を切っておく。

「僕はこっちでもバツ2か。それに比べて君は正反対だ、ほとんど死んだような感じだね」
「嫌な言い方すんな。元芸人が一人食っていくのは、意外と簡単なんだよ」
「ああ、放送作家とか?」
「そう思っとけばいいだろ」
「全然底を見せないね。ミステリアスだ。向こうの君もそうだよ」
伊志井さんのたわ言は無視して朝食を作る。合鍵も持ってない、話もしない距離感に慣れてたから、
まるで相方みたいに扱われてるのが落ち着かない。
0038風と木の名無しさん2019/03/13(水) 19:54:41.73ID:QnvMxaix0
「それより、いつ帰んの?」
「さあね。寝て起きれば元の世界かと思ったんだけど……さすがにそう簡単にはいかないな。
 でも、僕はしばらくここにいた方がいいかもしれない。
 こっちの僕は、君にずいぶん寂しい想いをさせたんじゃないのか?」
その一言は、俺の胸の『穴』に深く、突き刺さった。
「図星か?」
「……なわけ、ないだろ」
俺はパソコンを持って、コートを羽織った。伊志井さんもぺたぺたとついてくる。
「いいか、絶対外に出るなよ。玄関にも。電話は留守電に」
「分かってるよ。行ってらっしゃい」
「……」
「行ってらっしゃい、伊静くん」
「……行ってきます」
敗北感を噛みしめて家を出る俺を、伊志井さんは笑顔で見送った。



「お前、俺が死んだ世界から来たんやろ」

村太さんの第一声に、僕はコーヒーを吹き出した。村太さんはテーブルに肘をついて、
咳きこむ僕をじっと眺めている。
「ほんまに久しぶりやなあ、伊志井。……この世界、夢やなかったんやな。
 ありがとな、それを教えてくれて」
僕の手に、そっと村太さんの手が重なって、優しく撫でられた。ああ、この人は僕の知っている
村太シ者なんだ。そう思うと、涙が出てきた。



痛い、頭が痛い。これは、あかん頭痛や。目の前がぐるぐる回っとる。
体が冷たくなってく。俺、死ぬんかな。体が全然動かん。病院に行っとけばよかった。痛い。

……走馬灯って、ほんまにあるんやなあ。桶太ァ、お前が音楽やりたい思うた時、俺ほんまは
ちょっと悲しかってん。言えばよかったんかなあ。行かないでくれって、やればよかったんかなあ。
ああ、それより……松岡や。前の相方ともひどい別れ方したんに、ごめんなあ、松岡。
……あかん、松岡を独りにはできひん。まだ死ぬわけには……クソッ、動け、動けや俺の体!!俺はまだ……

どくんっ。
0039風と木の名無しさん2019/03/13(水) 19:55:09.93ID:QnvMxaix0


……

……さん……

………村太……さん……

「村太シ者さーん、起きてくださーい。朝ですよー」

のんびりした声が、俺を揺り起こした。体が怠い……ん、なんや。なんで頭、痛くなくなっとるんや?
俺はゆっくりと目を開けた。視界いっぱいに、松岡のにこにこ顔が見える。せや。ここは松岡の家や。
俺は昨日ネタ合わせをして……ん?ちゃうぞ。俺はラジオの仕事をしたはずで……あれ、なんで
テレビが窓の方にあるんやろ。俺の覚えとる松岡の家と、家具が違うような……いや、前からこんな
部屋やったな。……どっちの記憶がほんまなんや。俺、死んだんとちゃうんか。

「なあ松岡、今日なんやった?」
「休みやのに、ネタ合わせする言うて家に押しかけてきたんは、誰でしたっけ?」
松岡は寝ぼけてはりますね、と笑って立ち上がった。俺は痛みの消えた頭をおさえて、考える。
「あ、明日は仕事ですよ」
「誰と」
「馬鹿リズムと合同ライブやないですか!まさか忘れたとか「いや、覚えとる、覚えとるで!」
 ……あ、そういや明日のフライヤー、松舌が作ったんですよ」
「松舌?あいつ、引退したやろ」
「えっ……?」
「あ、ああ……すまん。また間違えた」
松岡はまた座って、俺の額に手を当てる。
「あの……ほんまに平気ですか?」
俺を気遣ってくれる、その仕草がなぜか悲しくて。
「うわっ、なに!?」
気がつくと、俺は松岡を抱きしめていた。気色悪い!とかドッキリか!?とかうるさい松岡の
肩に鼻先を埋めて、俺は泣いた。これが、死ぬ前の俺が見とる夢でもええ。
今はただ、ここで生きていたいんや――。



いつのまにか降り出した雨が、ガラス窓を濡らす。村太さんは水滴をなぞって、
円を描きながら、次の言葉を探していた。この人は、どういうわけか『死んだ村太シ者』の記憶を
受け継いだ、『この世界の村太シ者』だ。脳の出血を起こさず、実力派漫才師、花エンジンの名を轟かせている。
僕らが何度も(生きていれば)と思い浮かべた姿が、そこにあった。
0040風と木の名無しさん2019/03/13(水) 19:56:06.59ID:QnvMxaix0
「向こうの世界と、なんも違わんように見えるやろ」
村太さんは、窓の向こうを行く人々を指さして言う。
「せやけど、あちこちがちょっとずつ違うねん。……お前、伊静の嫁さんがなんで死んだか、知っとるか」
「……いえ」
「出産ってな。今でも1パーセントくらいは死ぬんや。あいつの嫁さんは、その1に入ってもた。
 血が止まらんでな。夜中にあの子を産んで、明けるころにはもう……」
村太さんは話すだけでも辛いのか、目を伏せる。
「俺は、アホなことを考えてもた。俺が生きる代わりに、嫁さんが死んだんやないかって」
「そんな……!」
「分かっとる。せやけど、俺はそう思って"しもた"んや。こっちの伊静は、俺が遊んでやらんでも
 お前と一緒にちゃんとやっとった。せやけど、代わりに嫁さんは死んだ。
 何かを得るためには、何かをなくさなあかんのやないか……ってな」
村太さんは水を一口飲んで、僕の目をまっすぐに見る。

「お前ら、ただのコンビやないな」
「……!」
「んな、あからさまな反応すんなや。安心せえ、俺以外は誰も知らん。伊静が自分から俺に言うたんや」
「彼は……なんて?」
「ん、ただ"嫌いになれないのは、辛いですよね"って言うたで」

空気が冷たくなった。村太さんはお冷の氷をスプーンでいじりながら「どんなきっかけで始まってんねや」と問う。
しかし僕が知るわけもないので、すぐに顔を上げた。
「なあ、どうせ帰る方法が分からんのやったら、伊静ととことん向き合ってみたらどうや。
 向こうの伊静とは話せんかったこと、話してみたらええやんか」
「……分かりました」
「よし。湿っぽい話はこれで終わりや。戻ろっか」
そこで、コンコンとガラス窓を叩く音。見ると、傘をさした伊静くんが僕たちを見ていた。
その平らな表情は、僕が彼に答えを求めた時、「いいのか」と聞いた時、必ず見た表情だった。
0041風と木の名無しさん2019/03/13(水) 19:56:26.04ID:QnvMxaix0


航空券の予約サイトを見ている俺に、風呂上がりの伊志井さんがのしかかってきた。
「何見てるんだ?……ジュネーヴ?」
「11万か……高いな。伊志井さんに半分出させるか……」
別のタブで見ているCERNの公式サイトで、伊志井さんはやっと理解したらしい。
「おい、やめろ。相方が解剖されてもいいのか」
「帰る方法に一番近そうなのはここなんだけど」
「頼む、本当にやめてくれ」
伊志井さんが必死なので、スイス行きはひとまず諦める。パソコンの電源を切って
ベッドに入ると、なぜか伊志井さんもついてきた。
「お前さ、俺のこと好きなの」
冗談のつもりで額を小突いたのに、伊志井さんは真剣な顔で「好きだよ」と答えた。

「あっそ。……へえ、趣味悪い」
「自分を卑下するな、君のいい所ならいくらでも思いつくよ」
「たとえば?」
伊志井さんは仰向けになって「まず、背が高い」と指を折る。
「それと、前向き。僕はネガティブな性質だから、ありがたかった。
 ああ、僕のトークをすぐ拾ってくれるのも嬉しかったな。あとは……」
「もういい」
「ここからがいい所なのに」
なんとなく分かった。伊志井さんは俺に、向こうの俺を重ねてる。
向こうの俺にできなかったことを、俺にやろうとしている。

「あのさ、向こうの俺は、なんでお前と一緒にいるのかな」
「さあ……仕事のためじゃないか?」
「……好きじゃなかったら、とっくに捨ててると思う」
そう言うと、伊志井さんは「そう考えたことはなかった」と驚いていた。
俺から見れば、なんで分からないのか謎なんだけど。
「嫌われているかもしれないと思う理由なら、あるんだ」
「うん」
「君に、男に犯されたという汚名を着る覚悟があったら、僕は今ごろ芸能界どころか
 社会から追放されている」
「……」
「おまけにその後、君が解散の話を持ち出さないのをいいことに関係を強要しているのは
 僕の責任だ。本当にすまない。いや、向こうの君に謝るべきなんだろうが「死ね」
俺は全力で伊志井をベッドから蹴落とした。
0042風と木の名無しさん2019/03/13(水) 20:00:11.91ID:QnvMxaix0
村太さんと別れて伊静くんに着いていくと、駐車場に入っていく。
ポケットからスマートキーを出した腕をつかんで引き止める。
「危ないだろ、雨が降ってる。視界が悪い」
「それほどじゃないだろ。離せよ」
「嫌だ。君と話さなきゃいけないことがあるんだ」
伊静くんはチッと舌打ちして、僕の手を乱暴に振り払う。助手席に乗りこんでも
蹴落とされたりはしなかった。その代わり、法定速度ギリギリの乱暴な運転で僕の家まで運ばれる。
伊静くんは合鍵を出して、僕の家のドアを蹴り開けた。たぶん娘さんには見せない顔で、僕を
寝室まで引きずっていく。ベッドの上に投げられて、目を白黒させる僕の上に、伊静くんがのしかかる。

「……俺がここでお前を殺したら、どうなるんだろうな」

物騒な言葉に、僕は「嘘だろ」としか言えない。
「こうやってさ」
僕の首に、伊静くんの細い指がかかった。そのまま少しずつ、力がこもる。
「お前を殺したら、ちゃんと耳は削いでやるよ。コントと同じように。それを持って、警察に行く。
 理由?絶対に言わない。蟻霧はいつか都市伝説になって……」
目の前がかすんで、息ができない。と思った瞬間、パッと手が離れた。
丸まって咳きこむ僕を、伊静くんは黙って見下ろしている。

「そんな事、するわけないだろ。俺はさ」

伊志井さんのことが、ずっと昔から好きなんだから。
そう言って縋りついてきた伊静くんを、僕は拒まなかった。
「お前もそうだったんじゃないのかよ。ずっと、ずっと我慢してたのに。
 そばにいられたら、それだけでいいって思って、言わなかったのに」
僕には答えることができない。だからただ、黙って背中を撫でてあげた。彼が本当はそうしてほしかったように。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
たぶん次回で終わります。
0043風と木の名無しさん2019/03/17(日) 00:55:51.79ID:BYySjtuC0
蟻霧の人だ!お待ちしてました
向こうから来た小悪魔な蟻さんに萌えてます
0044風と木の名無しさん2019/03/24(日) 10:46:54.51ID:TL9x5TmI0
投下減ってるからあまり野暮なことは言いたくないけど、テンプレ読んでルールくらい守って欲しいな
0045風と木の名無しさん2019/05/23(木) 01:02:18.25ID:Up9GvEZ10
保守
0046風と木の名無しさん2019/06/06(木) 10:32:48.79ID:v/eSZaFZ0
ほしゅ
0047風と木の名無しさん2019/07/21(日) 03:07:48.38ID:dUG5MdmC0
ほしゅ
0048風と木の名無しさん2019/09/07(土) 02:00:24.69ID:t/BzRgCt0
あげとく
0051風と木の名無しさん2020/06/15(月) 21:04:34.56ID:T5PCpfSk0
まだここ書き込めるのかな?あげた方がいいかもしれないけど……
0052透明な子供たち 1/32020/06/15(月) 23:24:20.97ID:T5PCpfSk0
オリジナル ショタ×お兄さん 暗い
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

手を握る。
僕たちはどちらも手袋をしていなかったから、大きさがよくわかる。僕の手より、大きかった。カコさんのほうが、僕よりも身長が大きい。
お父さんの手とどちらが大きいのだろう、と思って最後に見たのはいつだったかと考えた。弟に聞いてみれば、もしかしたらわかるかもしれない。

いつも歩いているとき、カコさんは歩幅を合わせてくれる。
夜の街灯は、明るいはずなのにどこか心もとなくて怖くなる。なのに、カコさんが隣にいれば楽しい道のりになる。
すごく長い時間塾とかいろんな場所を渡り歩く毎日の中で、この時間が唯一の楽しみだ。けれど、それも今日は違った。
取り留めもないことをたくさん考えてみたけれど、どうしても気になった。
「カコさん、公園いこ」
「門限あるんだろ」
カコさんがちらりと片目でこっちを見る。
「でも、カコさん痛そうだよ」
足が止まる。
街灯の光の下で、浅黒く腫れてる目の周りは、今まで見たことのない程に酷かった。
くっきりと残る傷を僅かに眉を寄せて、そして、口をつぐんだままカコさんは僕の手を引いた。
「カコさん、」
「大したことないから行くぞ」
「カコさん、お願い」
 じっと見る。カコさんから視線をずらさないでいれば、少しの問答の後、近くの公園へ足を向けることになった。
いつだってカコさんはこっちのことを無理矢理言うことを聞かせようとはしない。
その公園は猫の額ほどで、ブランコとベンチと水飲み場以外は何もない。
 自分のハンカチを濡らして、ベンチに座ってくれたカコさんの傷に当てるとじんわりとした熱さだけが取れていく。
もっと綺麗なハンカチだったら良かったのに、と思うとやっぱりちゃんと買わないといけないなと思う。
今のやつは弟が幼稚園の時に使っていたハンカチだから、薄くて端っこが破れている。
公園の水はまだ出てくれたけれど、あと少しできっと閉められてしまう。冬が来る。息をするたびに白い息が出る。
冬が来る。カコさんも僕も暖かい服なんて持っていないから、これまで以上にきっと寒くなる。
僕は弟のお下がりがもらえるけど、カコさんはどうするんだろう。少しだけ不安になった。
0053透明な子供たち 2/32020/06/15(月) 23:27:51.19ID:T5PCpfSk0
「カコさん、」
「……」
手を添える。怖かった。
「カコさん、このままだと死んじゃうよ。逃げようよ、僕も一緒に行くから」
「お前は帰る家があるだろ」
「ないよ、弟がいればうちは大丈夫なんだもん。きっと。僕一人いなくても、きっと気づかないよ」
カコさんは、黙っている。
「お金だって、ちゃんとあるよ。お年玉、だから、それ持って一緒に僕のおじさんところに行こうよ。カコさん」
カコさんがカコさんのお家に帰るたびに、ケガしているのを僕は知っている。
それはどんどん数も量も大きさも多くなってきていて、おんなじぐらいカコさんもおかしくなってきてる。
この間は右の方から話しかけてもちゃんと返事をしてくれたのに、左側へ向いてくれないと話しかけても聞こえなくなった。
なんで、って聞いても答えてくれない。何でもない、ってばっかり言って答えてくれない。
それなのに、みんなはカコさんのことを怖い不良だと言っている。いつも喧嘩なんてして、といっている。
カコさんがいつもけがをしているのは、どうしようもなくておうちに帰るときで。
不良になっちゃったのはカコさんがおうちに帰れないから、どうしようもなくてずっといるしかないんだと言うことを誰も気づいてくれない。
誰も見つけてくれない、僕が夜に一人で歩いていても誰も見てはくれなかったように。
カコさん以外僕のことを見つけてくれる人はいない。なのに、僕はカコさんをさらってどこかに行ってしまえるほど大人じゃなかった。
夜の公園のベンチは腰かけているととても冷たい。そして、周りのおうちは幸せそうな明かりが漏れている。
けれど、その光が僕に降ってくることはないし、カコさんに降ってくることもない。誰も僕たちがいることに気づいてくれない。
「……ああ、それもいいかもな」
「本当!」
だから、カコさんの答えに、僕はとてもうれしくなった。
おじさんは弟も僕もおんなじくらい大切にしてくれるし、こっそり僕にテレホンカードをくれた。
弟はキッズケータイを持っているからいらないらしいけど、これを使えばいつだっておじさんは迎えに来てくれると約束してくれた。
だから、二人でおじさんのところへ逃げちゃおう。
0054透明な子供たち 3/32020/06/15(月) 23:33:09.11ID:T5PCpfSk0
そうすれば、あそこは遠いからカコさんのおうちの人も追いかけては来れない。
お父さんもお母さんも弟がいれば、きっと僕がいなくても気づかないから、誰も悲しくならない。
絵本みたいに全部綺麗に解決してくれる。なんて素晴らしいんだろう。
そんな素敵な発想に少し誇らしくなる。そんな僕に対して、カコさんは、なんだかぼんやりしたように口を開いて。

「でもさ、俺がいないほうがおまえは幸せになれるよ」
どこか夢みたいに呟いた。
その声は消えてしまいそうで、すごく怖かった。怖くて、ぎゅうとカコさんの手を握る。
指先からどんどんこの人はほどけてしまうんだと思った。
生きようって思う力がどんどんほどけて、頑張ろうって気持ちが抜けていって。きっと、近いうちにバラバラになってしまう。
カコさんは少しずつほどけてる。
しゃべってるとボロボロ泣いてしまう時もあるし、何もないところでぶつぶつとしゃべっている時もある。
ぐるぐるしているときもあれば、僕には見えない何かにおびえている。
怖くなってカコさんの手首を掴んだ。思わず見てしまう。
聞き手の方にいっぱい、注射みたいな痕とか、切ったみたいな痕がある。見てはいけないものだ。
びっくりした僕に気づいたカコさんは、上がっていたジャージの袖を伸ばしてそれを隠した。そして、どこか諦めるようにへらりと笑った。
「俺は馬鹿だからこうなったけど、おまえはきっと上手くやれるよ。こんなんなる前にさ、きっと助けてもらえる。おじさんもいるんだろ」
自分を馬鹿だって言ったカコさんは、こっちを見た。そして、僕を見て困った顔をする。
「……泣くなよ」
「泣いてないよぉ……」
僕はまだ子供で、どうしようもなく子供だったから守りたかった人の前でわんわん泣いてしまった。
冷たい指先でカコさんは僕の涙を拭って、頭をポンポンしてくれる。こんなことはカコさんしかしてくれないのに。
この人は僕を置いていってしまうのかもしれないと思うと悲しくて、寂しくて、悔しかった。
なんだか、遠いものを見る目で優しくカコさんは笑ってる。
魔法にかけられたみたいに、幸せそうに笑ってる。
なのに、僕が大人になるまで生きていてね。なんて簡単な約束をカコさんは頷いてくれない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
0055風と木の名無しさん2020/06/16(火) 16:58:00.03ID:vDm+k3YH0
せつねえ!!
「少しずつほどけて」いて長生きする約束をしてくれない悲しみ
乙です!!
0056必殺☆収録人2020/06/19(金) 06:29:59.39ID:xNbXKBvN0
投下あったんですね。数日見ていなくて気がつかずすみませんでした。
今日中に保管庫への収録完了しておきます。

>>51
賛成です。時々保守して下さる方が見えるようですが、ageもした方がいいでしょうね。
0057必殺☆収録人2020/06/19(金) 08:24:27.78ID:9HF92Nbd0
作品ページの作成は完了したのですが、
(https://morara.kazeki.net/?71-52)
71巻の目次ページにリンクを貼ろうとすると、エラーになり更新ができません。
(https://morara.kazeki.net/?%E7%AC%AC71%E5%B7%BB)

何が原因かわかりませんが、有志の方、試しにやってみてもらえないでしょうか。
「編集」ボタンを押して編集ページを開いて、作品欄の最新の所に以下のテキスト↓↓を貼りつけて、
「更新」を押して下さい。

-[[オリジナル ショタ×お兄さん 「透明な子供たち」>71-52]]
0059風と木の名無しさん2020/06/19(金) 22:35:23.60ID:ZxczTqp/0
>>57
乙です!
こちらでも編集を押してみましたがエラー出ますね……
0060風と木の名無しさん2020/06/19(金) 22:43:29.95ID:xVX9214E0
>>57
更新ボタンを押すとエラーが出ました

fopen() failed: diff/E7ACAC3731E5B7BB.txt
Maybe permission is not writable or filename is too long

ググると(文字通り)パーミッション関連のエラーぽい
力になれずすまない
0061必殺☆収録人2020/06/20(土) 06:31:03.05ID:KafOY+P90
>>59-60
ありがとうございます。

そうですか、困りましたね・・・・。
私も全く事情が呑みこめないのですが、どこに問い合わせてどう対処したらいいのでしょうか。
0062風と木の名無しさん2020/06/20(土) 17:34:23.04ID:XLt6uKA60
>>61
収録人さんの出たエラーコードでググってPukiWikiのヘルプが出ないかな
0063偽兄弟 1/42020/09/16(水) 23:33:50.29ID:w8iUnoTQ0
とあるアーティストさんのPVを見て滾った勢いで書きました。元ネタあるっちゃあるけどもうオリジナルということで。
殺人・暴行・薬物描写ありでめちゃくちゃバッドエンド注意。兄弟のように生きてきた年上と年下の話。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

──そんなつもりじゃなかったんだ。
お前が傷付いていくのをこれ以上見たくなくて、止めたかったんだ。
助けたかった。
救いたかった。
だから俺は──…

家に帰って来るなり台所に駆け込んで行ったアイツに嫌な予感がした。
後を追うと案の定、シンクに向かって咳き込んでいる。震える手で蛇口を捻り、流れる水を掌で口へ運ぶ。俺は大きく溜息を吐いて彼に駆け寄った。
「おい、しっかりしろ」
「ぅう……うぇっ」
「またアレ飲んだな?水飲んで全部吐け」
「っ、ゲホッ!んぐっ、うぅ」
フラつく身体を支えつつ背中を擦る。何度か水を口に含んではいたが、飲み込めないのか全部吐き出してしまっていた。
「はぁ…はぁ……苦しぃ……っ、気持ち悪いよ…」
「そうなるのはわかってたことだろ!何度やれば気が済むんだ」
「……っ…!ぅ…っ」
「もう止めるって約束したのに……どうしてお前はっ…!」
苦しんでいる最中の弟をつい非難してしまう。弟といっても血の繋がりはない。境遇が似ていたからか出会った時から俺を兄のように慕ってくれ、俺も弟のように可愛がってきた間柄だ。
コイツはあまりにも酷い家庭環境で育ち、自分やお袋さんを虐待していた親父さんを手にかけてしまった過去がある。絶え間ない暴力への恐怖とお袋さんを救えない無力感から精神が歪み始め、ある時糸が切れてしまったらしい。
全身を真っ赤に汚して泣きながら俺のところに辿り着いたコイツを警察になんて突き出せなかった。多分お袋さんも無事ではないような気がして、余計に一人にはさせられないと思った。
でも自分とそんなに歳も変わらない人間の面倒を見きれるほどの力なんて俺にはなかった。彼を一生逃げ続けなければいけない立場に追い込んでおいて、ボロボロになった心に寄り添ったケアもろくにしてやれない。
そんな状況で、彼が一時の快楽に救いを見い出してしまうのを止められるはずがなかった。
0064偽兄弟 2/42020/09/16(水) 23:36:00.93ID:w8iUnoTQ0
昔は愛嬌たっぷりで目を奪われるほど華やかな笑顔をしてたアイツが、今はやつれて澱んだ瞳に絶望を浮かべて毎日泣いている。
俺にできるのは、時々ネジが外れたような笑い声を上げて自分ごと全てを壊そうと暴れ出す弟を必死に抑えることだけだった。
「…どのくらい飲んだ」
「……ぇへへ………兄ちゃんには…あげなーい……全部僕のだ」
「っ!?まさかお前っ……!」
咄嗟に彼の財布をひったくって中身を確認する。今朝生活費にと多少の金を渡していたからだ。そして最悪な予想ほど当たってしまう。
「……全部注ぎ込んだのか…!?」
「全部ちゃんと飲んだもん……怒らないでよ…」
「は!?お前死ぬぞ!早く吐き出せ!!」
「何言ってんの兄ちゃん……飲んだ水は吐き出せないんだよー…知らないの?」
「バカ!!何言ってんだよ!早く吐けって!!」
一気に血の気が引いた俺は無理やりにでも水を飲ませようとしたが、彼は邪魔だというように手でそれを払ってしまう。俺の手から滑り落ちたコップが床に当たって割れてしまい嫌な音を立てた。
「っっ!!」
その音がアイツのトラウマに突き刺さる。
──アル中だった親父さんに酒瓶で殴られる音。
定まっていなかった視線が俺で止まり、恐怖と混乱で見開かれた。
「うわぁああっ!!」
パニックに陥った彼が叫びながら腕を振るい、俺の頬を弾き飛ばした。想像以上の力にバランスを崩しかけたが、彼が死ぬかもしれないという恐ろしさの方が俺の足を踏ん張らせる。
どうにかして腹の中のものを出させたいと考えるあまり、俺は思いっきりみぞおちに拳を叩き込んだ。力加減なんて考えていられない。必死になって二度、三度と殴りつけた。
「うぐっ!っ、がはっ!!」
「っ…すまん、でもこうしないとっ…!!」
「っっ、ぐ、ぇ…っ、ゴホゴホッ!」
彼が俺から逃げるように腹を押さえながらシンクに寄りかかる。激しく咳き込んでいるものの吐き出す様子が見られなくて、焦った俺はもう一度拳を作ろうとした。
「はぁ…っ、許せ……お前のためなんだ…!」
「……ぅ……うぅ…っ、ううぅ…!!」
「…?」
「っうああぁぁああ!!!」
すると次の瞬間、弟が獣のような唸り声を上げながら俺に向かって突進してきた。体当たりをモロに喰らって尻もちをついた俺に彼が覆い被さる。
0065偽兄弟 3/42020/09/16(水) 23:37:46.04ID:w8iUnoTQ0
「うるさい…!消えろ!!」
「!?」
「消えろ消えろ消えろ消えろぉ!!消えろ!!消えろっ、消えろぉおっ!!」
そのまま彼は俺の腹に向かって何度も拳を振り下ろした。
親父さんの影を消そうとしてるように。自分に襲いかかる脅威から逃げるように。
半狂乱になって、悲鳴を上げながら、何度も何度も必死に。
俺は抵抗出来なかった。取り返しのつかないことになったと思った。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……はあ………っ…ぁ……?」
「……っぅ……」
「………あれ…?兄ちゃん……?」
しばらくして動かなくなった俺に気付いたのか、一瞬弟が冷静さを取り戻す。
そして自分の手を見て、自分の身体を見た。
「…ぁ……え?」
「……ごほっ…」
俺の口から咳と一緒に熱い何かが零れた。それは弟の手や身体を染めていたものと同じ。
彼の手にはシンクの横に置いたままだった包丁が握られていた。
「に、ぃ…ちゃん……?」
呆然と俺を見下ろす弟は、自分が何をしたかを悟った。
親父さんにそうしたように、俺をメッタ刺しにしてしまったのだ。
彼の震える手から包丁が床に落ちる。肩を大きく揺らして息をしながら、やがてボロボロと涙を溢れさせた。
──あぁ、泣かせてしまった。
「……ご…めん、な……」
「っ、ごめん……ごめんね、兄ちゃん……あぁ、なんで僕、こんなっ…」
弟は俺に開いた穴を両手で塞ごうとした。だけどズタズタになった身体はもうそれじゃ元には戻らない。
「……俺が、悪か……っ、お前、を……殴る、な……て」
「兄ちゃん……兄ちゃん……っ!!」
「ご……め…っ、ごふっ…」
ちゃんと謝りたかったのに上手く声が出ない。
苦しみ続けた弟に俺は何もしてやれなかった。
いや。しなかったどころか、追い詰めてトドメをさした。
0066偽兄弟 4/42020/09/16(水) 23:39:32.63ID:w8iUnoTQ0
見てみろ。涙で濡れる瞳から感情が消えていく。
後悔も絶望も怒りも全部なくなって、ただの真黒い穴みたいに虚ろな目。
弟は天を仰いで一言、溜息と一緒にか細い声を漏らした。
まるで何かが抜け出ていったように見えて、多分それが、彼が彼だった最期の瞬間だった。
「…………ごめんね兄ちゃん」
もう一度俺に目を向けた彼の口元は不自然に歪んでいた。
そういう風に見えただけかもしれない。だって俺の意識はもう薄れ始めている。
窓から射した月明かりに照らされた弟は、涙と血で彩られてこの世のものではない完璧さで輝いているように映る。
それが彼の本当の姿だったのかもしれないなんて思うのは、きっと俺のエゴだ。
傍観してただけで彼を救えなかった事実から目を背けようとしてる、都合のいい言い訳だ。
「──……っ」
力を振り絞って弟の名を呼んだ。返事はない。
その代わりに唇が降ってくる。
彼が飲んだあの毒々しい甘みと、俺が吐いた血の味。
混じり合わせるように何度も深く重なって、離れていく。
「僕はこれから地獄へ行くから、もう会えないね」
温もりを感じない声が耳元に届く。
「さよなら。兄ちゃん」
そしてのしかかっていた重みが消え、覚束無い足音が遠ざかって行った。
──何言ってるんだ。どこへ行く気だ。何するつもりだ。
バカな真似するんじゃないだろうな。戻ってこい。行っちゃダメだ。
「…………ぃ……く、な……」
──行くな。
行かないでくれ。
俺を独りにしないでくれ。
世界が恐ろしいほど静かになる。
全身を包む冷たさが俺の罪を突き付ける。
弟に家族を殺させ、俺を殺させ、自分を殺させた。
0067偽兄弟 5/42020/09/16(水) 23:42:05.81ID:w8iUnoTQ0
──こんなつもりじゃなかったんだ。
お前が傷付いていくのをこれ以上見たくなくて、止めたかったんだ。
助けたかった。
救いたかった。
だから俺はお前を抱き締めたはずだったのに──
あの時引き留めずに自首させてれば、それより早く手を差し伸べてたら、こんなことは起きなかったかもしれない。
でももう遅い。
俺は何も出来なかった。
悔しくて、情けなくて、哀れで堪らなくて、俺の目から涙が零れる。
自分の返り血が混じって赤く滲んだ涙が目尻を伝って床に落ちる頃には、俺はもう何も感じなくなっていた。
そしてずっと遠くで、何かが潰れる音がする。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

投稿してるうちにレス数が増えてしまいましたすみません
0068風と木の名無しさん2020/12/02(水) 23:59:29.33ID:invowWst0
>>61
保管庫wikiの中の人です
すみません!今気付いて修正しました!
0071風と木の名無しさん2021/11/19(金) 19:43:11.09ID:j2oIhoWe0
PC向けの改行をしているので、スマホからだと見辛いかも知れません。
スマホの方は保管庫に入ってからの閲覧をお勧めします。
過疎ってるのでageで行きますね。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
0072 ◆Vo0G3jORO.ev 2021/11/19(金) 19:45:24.48ID:j2oIhoWe0
 「吉村さん、男はぼくが初めてじゃないですよね」
 歯切れのいい、魅力的な東国の言葉つきで男が言う。遥か昔には「東(あずま)言葉」と呼ば
れた。今は「標準語」などと言うが、元来関西人はそんなスカした言い方はしない。「関東弁」
と言うのである。なんで東言葉が「標準」やねん、である。
 やや廃れた用法だが、「東京弁」とも言う。話者の出身地が茨城でも神奈川でも埼玉でも群
馬栃木でも、ことによると静岡やら山梨でも、いやひどい場合は東北やら愛知、いいやもしか
したら関西以外の西日本でも、とにかくTVでアナウンサーが喋っているのに近い(と関西人が
思う)イントネーションや語法文法で喋ると「東京弁」なのである。
 話をややこしくしてしまったが、もちろん、この男の生まれ故郷であり、新しい芸名の由来
ともなっているあのミッキーマウスと落花生の県でも同様だ。彼は非常に美しい「東京弁」の
ネイティブスピーカー、飄々とした東男(アズマオトコ)である。
 長身の自分よりもまだ上背のある大柄な男の裸の肩に寄りかかりながら、絶大な支持率を誇
る大阪府の若き首長、今を時めく日本維新の会副代表はふと呟いた。
 「『そこら辺が関西人の大雑把な性格をよう表しとる』なんて言うたら他府県の人、特に『じ
ゃない』方の府、とか言うてるお高くとまった人らが怒るやろなあ。『一緒にせんといてー』
とか言うて」
 「え?何か言いました」
 「いやべつに、こっちの話。っていうか、なんでぼくと君がこうナチュラルに事後のピロー
トークする展開になってるん?ぼくら面識ありましたっけ」
 「そういうメタな発言はやめて下さい。ただでさえよくわからない作品の方向性がヤバイく
らいに定まらなくなります。面識があったかどうかは忘れました。ただ吉村さんが新喜劇に出
演したことは嘘みたいですが実際にあります。
 では、さっきの質問です。吉村さん、初めてじゃないですよね。あなたを美味しくいただい
ちゃった最初の男は誰ですか?やっぱり橋下さんですか」
 男はくるっと吉村に向き直り、両手首を掴んで仰向けに押し倒し、でかい図体を伸し掛から
せた。吉村もでかいので二人の絡みは結構な迫力である。
0073♯吉村俺と寝ろ 2/62021/11/19(金) 19:48:51.77ID:j2oIhoWe0
 「教えて下さいよ。橋下さんはあなたのドスケベな体にどんないやらしいことをしていじめ
たの。ここを、こうしたのかな」
 「いや、ちょっと、そんなんしたら・・・・やっ」
 「あなたは橋下さんにこんな所をこういじくられて、どんな声を出したんですか」
 「くっ、公平、あかんて!」
 「ハハハ、大丈夫です、濃厚接触してもイソジンでうがいをすればいいって大阪府で一番偉
い人が言ってましたから」
 「自分、ぼくのことバカにしてるやろ・・・・あーっそこなぶったら」
 「一言言っておきましょう。あなたの関西弁と一人称『ぼく』はあざとい」
 「そんなんゆーたかて、生まれた時からこの言葉喋っとるんやからしょうがないやん・・・・
やんっ。イケメンは関西弁喋らんと思っとるんか!?・・・・あんっ」
 「イケメンって自分で言わないで下さい。見た目を飾って人気を取るように思われては却っ
て逆効果ではないのですか?」
 「あっそこいいッ・・・・何を、票は顔で取るんや!」
 「ほうー、まだそういうこと言います?かわいくないですね、やめちゃおっかなー」
 「いやっ、やめんといてッ」
 「おお、吉村はんよう勃っとる!」
 「イントネーションが違うわ!」
 「じゃあ『吉村はんよう勃っとる』ってネイティブアクセントで言ってみて下さい。でない
としませんよ」
 「堪忍して、お願い」
 「それがあざとい、と言ってるんです。とにもう、うちの猫くらいかわいいんだから」

 「吉村さんの奥さん、元CAでえらく美人なんですって?顔も身長も、何もかも完璧な旦那
が、男に体を弄ばれてあられもない姿できゃんきゃん言ってるなんて知ったらどう思うんでし
ょうねえ。週刊誌やネットにはどんな風に書かれるでしょう」
 二戦目を終えて一息ついた千葉は、法律家の取り澄ました横顔を見やる。
 「顔と身長しか取り柄ないみたいな言い方せんでくれる?」
 「そんな風に聞こえました?」
0074♯吉村俺と寝ろ 3/62021/11/19(金) 19:50:36.93ID:j2oIhoWe0
 千葉は吉村の髪に軽く手を絡ませた。まだ三十代と言っても通るであろうこの男、きれいな
顔して腹の中は真っ黒だ。元は橋下の門下でサラ金の顧問弁護士を務め、法外な相談料を取っ
て立場の弱い相手にスラップ訴訟を仕掛けていた、いわばインテリヤクザだ。金にも汚いし人
も陥れる。極右思想の持ち主であり、計算高く権力志向であるのは言うまでもない。メディア
を駆使したイメージ戦略とは本当に恐ろしいものだ。水で洗えば娼婦も処女とばかりに、より
によってこんな薄汚れたチンピラ上がりを捕まえて、清廉潔白、正義の志士であるかのような
幻想を大衆に抱かせることに成功しているのだから。
 なんでこんな若くていい男が政治家なんだ――うだつの上がらぬ政敵らが臍を噛んで悔やむ
のは容易く想像がつくが、果たして大阪府市民はこのタチの悪い色男に何かいいことをしても
らったのだろうか。千葉は2020年に芸名まで改めて本拠地を東京から大阪に移した身であり、
関西の政情には疎い方だが、そんな彼の目にもあまりそうは見えなかった。
 日本第二の都市でありながら、大阪は貧しい。とても貧しい。千葉の住む西成は特にそうだ。
 それでも、「何か楽しげなこと」「華やかで勢いのありそうなこと」に心を寄せずにはいられ
ない、熱狂せずにはいられないのが大阪人の性なのか。その大らかさに救われる人も多いのか
も知れない。ひょっとしたら千葉自身も含めて。
 「何と書かれようと、ぼくは構へん。妻のことなんか言わんといて。白けるわ。公平、三回
目しよーな」
 西成の慎ましい住まいで一緒に暮らしている雌猫が甘えてじゃれついてくる時のように、同
い年の男が瞳をキラッと光らせて千葉に身をすり寄せてくる。やれやれタフだなと思いながら
も、千葉はその媚態に負け、男を抱き寄せ、賢しらな唇を存分に吸った。
 「君は、巧いで」
 千葉の腕の中でしどけなく、されるままになった後、吉村がふと言った。
 「何がですか。キスがですかフェラチオがですかおっぱい舐めがですか」
 「ちゃうわ。芝居の話。君は才能あるで。おもろいで。『お笑い芸人』なんて呼び方失礼や。
君らみんな、関西が誇る立派な舞台役者や」
0075♯吉村俺と寝ろ 4/62021/11/19(金) 19:52:17.03ID:j2oIhoWe0
 「ありがとうございます」
 「よう来た。ほんまによう来た。大阪に骨埋める気なんか?」
 「ええ、そのつもりです。でも、あなたはいずれ国政に戻るつもりなのでは?」
 吉村は笑み、答えない。今ではそんな機会も激減したが、曾ては千葉も何度も見たことのあ
る、あの繊細な洋菓子のように美しい国会議事堂。春は花、秋はもみじ葉萌え出ずる麗しの帝
都、永田町。千葉は再び、したたかな恋人の細身だが筋肉質な体を強く掻き抱き、その耳朶を
軽く噛み、舌先で嬲った。
 「吉村センセイ、教えて下さい。同性どうしでも法律上の不貞行為になるのですか」
 「だからそういう話やめてって言うてるやんか」
 「なるんですか、どうなんですか」
 「現行法では、厳密に言うとならないと思いますが、グレーですね。裁判官によって判断が
分かれるでしょう。・・・・くくっ」
 「そうなんですか!その規定はどこに書いてあるのですか」
 「民法第七百七十条です。あっ耳めっちゃいいッ」
 千葉はくすっと笑って、吉村の耳から首筋へと舌を這わせた。両手の指で双の乳首を転がし、
引き締まって張りのある胸筋を撫で回しながら何度も舌を行きつ戻りつさせ、たまに肩を甘噛
みすると、おもしろいように吉村が反応する。
 薔薇色に上気した端整な顔を至福の思いで見ながら、腰から下へと手を伸ばした。臍まで反
り返る情熱をそっと掌で包み、何度か上下させる。
 「まだイカせないよ、もうちょっと我慢してね」
 千葉が冷静に囁くと、彼は切なそうに眉根を寄せ、身を捩り、濡れた唇の間から深く、苦し
げな息をついた。その様を見て、千葉の下腹にもまた新たな血流が漲ってくる。
 指先に熱く滴る蜜を舐め、自分の唾液と混ぜ合わせて吉村の秘めやかな部分に塗りこめた。
 千葉は大きく腰を引き、吉村の開かせた足の間に荒ぶる雄を一息に叩きこんだ。吉村の体が
跳ね、二人の巨漢の体重と激しい律動にベッドのスプリングも悲鳴を上げる。
0076♯吉村俺と寝ろ 5/62021/11/19(金) 19:54:18.70ID:j2oIhoWe0
 「世の中が穏やかになるとろくでもない侍がのさばりやがる」
 なんかの時代劇で渡辺謙が言っていたが、本当にその通りだな。吉村の嬌声と肉茎への刺激
を心ゆくまで楽しみつつ、その体の上で腰を揺り動かしながら、千葉はそんなことを考えてい
る。維新だとか、新選組だとか。百五十年も前の無頼に憧れ、自らを準えるとは、何とも安っ
ぽいヒロイズムだ。抜刀して斬り結ぶでもなく、やることといえばツイッターで小競り合い。
いい年こいた男や女が恥ずかしくないんだろうか。
 「吉村さん、きれいだよ。最高。すごく・・・・締まるね」
 枕の脇で千葉が吉村の片手に片手を重ねると、吉村は焦点の定まらぬ目で快感に揺蕩いなが
ら、自分から五本の指を絡みつけ、ひしと握り返した。
 平成が令和と改まり、自分は金成公信(かねなりきみのぶ)という名前を捨ててこの異邦、西
国へとやって来た。穏やかなる世にのさばるのは、ろくでもない侍と、度々名前を変えること
を何とも思わぬ無節操な人々。どれだけ誤解されても決して名前を変えぬ不器用な人々。こん
な連中のために毎日、「彼ら」の神とやらに祝詞を奏上しつつ、ついに嫡嗣を得られぬまま老い
てゆく徳仁。
 そしてそれら全ての時代の情景をどこか他人事のように冷めた目で見ている自分。実際に他
人事だからだ。
 千葉がこの国で生まれた時から感じてきた、途方もない疎外。
 それを権力者、まして今自分に組み敷かれ犯され、えも言われぬ艶な姿で身悶えしよがり狂
っている冷淡で身持ちの悪い男にわかってもらおうなどとは、毛頭、思わない。ただ相手の肉
体を思うがままにあしらい、欲望を捌けさせ、ひと時の快楽を分かちあうだけだ。恋と言える
ほどのものでもない。
 「公平・・・・!」
 千葉が吉村の中で達する瞬間、吉村が目を見開き、千葉の腕に強くしがみついた。すぐ力が
抜けた。荒い息をつきながら千葉が見ると、年若く、勝ち気な政治家は、両者の体液に塗れ、
乱れた白いシーツの上で意識を失っていた。
0077♯吉村俺と寝ろ 6/62021/11/19(金) 19:56:08.59ID:j2oIhoWe0
 「公信」
 シャワーを浴び、身支度して先にホテルの部屋を出ようとした時、まだシャツに腕を通した
だけの姿でベッドにいた吉村から本名で呼ばれた。
 「はい」
 振り向くと、
 「また、NGK(※)行くわな。今度は観客で。もちろん一人で」
 「ありがとう、待ってます。他のお客さんに気づかれて取り囲まれないように気をつけて」
 「わかってる。ええ芝居見せてーな」
 吉村は目まですっかり和ませて笑顔になった。この男にはあまりないことに。

Fin.


 「大衆は女と同じだ」
 「大衆は理性で判断するよりも、感情や情緒で反応する」
 「大衆の多くは無知で愚かである」
 「政策実現の道具とするため、私は大衆を熱狂させるのだ」
(アドルフ・ヒトラー)


※なんばグランド花月。大阪市中央区難波千日前にある吉本興業直営の劇場。
0078風と木の名無しさん2021/11/19(金) 19:57:32.31ID:j2oIhoWe0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

吉村はん、心のチンコは挿れても票は入れしまへんで
0079風と木の名無しさん2021/11/19(金) 19:58:29.62ID:j2oIhoWe0
痛恨のミス。タイトルがトリップになっちゃった
レスを投稿する