吉村はすっかり興醒めて呟いたが、恍惚の境地にある彼の耳には
恐らく入っていない。
叩き起こして頬を張りたい衝動が一瞬湧いたが、深呼吸して、逆
に髪に指を絡ませて撫で、乱れを整えてやった。そこは長年の人生
経験で陶冶された自分たるもの、何ごともなかったように彼が息を
吹き返すのを待ち、また夜のお茶に誘うか、シャワーを勧めるかす
るのだろう。
何にせよ、顔を腫らして定例会見に出るわけにもいかないだろう
から。
Fin.
黄色い薔薇の花言葉:「嫉妬」「不貞」「薄らぐ愛」など。西洋では
伝統的に、黄色は「裏切り」「妬み」「排斥」などマイナスのイメー
ジがある。一説にキリストを裏切ったユダの衣の色が黄色だったか
らと言われている。