――あれ、れ……? 身体がなんかヘン……力入らないや? えぇっ、次の女の子の日はまだ先だと思ってたのに……
(薬草の採取をし始めてから間も無く、疲労が溜まるには早すぎる頃合い)
(ちょっと前まで容易く採取できていた薬草だったが、急激に握力が落ちてしまったのか手が滑り折角の薬草が台無しに)
(それに鼻歌を歌いながら片手で抜いていたのに、両手で必死に歯を食いしばらなければ抜けないほどになってしまう)
(似たような感覚、女の子の日だと教えられたあの最悪な状態とつい重ねてしまう)
(しかし、お腹の奥がしくしく痛くなるような感覚も身体中に襲い掛かる倦怠感もない)
(そんなよく分からない状態が害意ある魔法によるものなど冒険者見習いのプラットにわかるはずもなかった)
果物屋さんの……おじさん……?
(頭の中がクリアということは、まわりの様子を伺う力は落ちていないということで)
(プラットの鼻孔をくすぐる変な臭い、自然と嫌悪感という名のもやもやとした気持ちを抱かせる独特な臭いに再度気づくと)
(――後ろに誰かがいる、今度こそ良からぬことを企む人物の存在に気が付くことができた)
(ただ魔法によって弱らされた身体にとってはその気づきは遅すぎて、名前を呼ばれると共に肩を引かれて大きくバランスを崩してしまう)
(誰かがいることは分かっていたことだから驚きは薄く、強いて言うならその正体に少し呆気を取られるほどのものだった)
(馴染みの顔であるはずなのに、その笑顔を見た瞬間「あの臭い」に気づいた時の嫌悪感を何倍も濃縮した感覚が襲い掛かる)
(いつもの様に明るく振る舞えない、顔は引きつり言葉は喉から出てこず咄嗟に出るのはそれ以上近づかれたくないという気持ちの表れ)
(男が覆い被さるよりも前に腕を前に突き出して相手の胸を押すも、容易く押し返されてしまい)
……これより近づかないで……、ぼくの上からどいてよ……
(吐きそうな顔をしながらようやく絞り出した言葉は今まで見せたことのない100%の拒絶の意)
(女の子から女へと向かっていくプラットにだってここまでされたら相手が何を思っているのか分かっているようだ)
(そして気づく、男と顔をあわせると時折感じる臭いの正体も不用意な接触の意味も、今と同じように隆起させるズボンについても)
最低っ! もうおじさんのところで買い物なんてしない! 気持ちわるいの! はやくどいてよ! このバカ!
(そうなってしまうと一気に先ほどまで言葉少な目だった様子から一転、プラットはまだ言葉に棘の少ない可愛らしい罵倒を浴びせ掛ける)
(それが男の心情をどう変えてしまうか、絶体絶命な状況の中の適正な行いかどうかなんて知る由もないが)
(とにかく衝動に任せて、今まで感じてきた不快感も一緒くたにし思いのたけをぶつけるのだった)
【肉体労働者なメタボといってもビール腹な中年男性さんって感じかな】
【衝動に任せたレイプ魔じゃなくって、計画しきったヘンタイさんみたいですごく気持ち悪い(誉め言葉)方ですねー】