(国の中心として大きく聳え立つ真っ白なお城)
(そのすぐ近くには広大な庭園が広がって、緑鮮やかな木々や色鮮やかな花壇が並んでいる)
(花の上には蝶が舞って、木々の間を小鳥が駆け巡って囀り声を響かせる)
(優雅な庭園の中を二人の少女がのんびりと歩きながら周囲を見回していた)
あら。見て、アリシア。あそこに見たことのない花が咲いているわ
(静かに歩いていた二人だったが銀髪の少女が先に声を発して、真新しい花壇に近付く)
(まだあどけなさの残る可愛らしい顔立ちで、身長は年齢を考えても低い方)
(それなのに体の発育は凄まじく、フリルブラウスを押し上げる胸の輪郭ははっきりと弧を描いている)
(本人は自覚がなくても着ている服装はそんな体型を強調していて)
(深紅のスカートに付いたコルセットが腰を細く引き締めることで胸やお尻の膨らみをより大きく見せている)
(そんな異性を誘惑するばかりの体つきに加えて、その美貌は国中で一番と言ってもいいほど)
(日差しを跳ね返して輝く銀色の髪は絹のようにしっとりと滑らか)
(大きく開いた瞳は蒼く透明感があって、まつ毛も長く、このまま美人に成長するのを予感させる)
(まだ純真無垢であることを表すように表情は柔らかく変化し、外の世界への興味を底知れないほど持っていた)
「そちらのお花は先週、北方の地方から持ち込まれたものですね」
(少女の声に応じてアリシアと呼ばれた方の少女が隣に並びながら答えを返す)
(ほんの僅かに負けるかもしれないけれど少女に負けないくらいの美貌を持っており年齢は少し年上に見える)
(身長はそんな年齢相応と言ったくらいで、身に纏ったメイド服を押し上げる胸の膨らみはこちらも大きい)
(軽くクセのついた明るい茶色の髪を微かな風に揺らし、瞳は優しく姉のような眼差しをもう一人の少女に向けている)
(持って生まれた気品を感じさせる雰囲気で、メイド服を着ていても、貴族出身であることを隠すことはできないでいた)
そうなのね。アリシアはよく知っているわ。
「こうして一緒に歩いていますと、リディアーヌ様にお尋ねされることが多いですから」
(感心したように頷く少女を見てアリシアはくすっと笑いを溢してから、澄ました顔で答える)
(リディアーヌ、という名前を聞けばこの国の人間は誰でも少女の顔を思い出す)
(それくらい有名なのはただ見た目の麗しさが優れているだけではなく、この城の主人である王の一人娘、つまりお姫様だから)
そうかしら? それから、アリシア
(そんなリディアーヌお姫様はちょっと首を傾げてから、アリシアの方に顔を向けて)
昔のようにリディと呼んで欲しいと言っているのに
(少し拗ねたような表情を浮かべながら、不満げに言葉をぶつける)
今の私はメイドの一人でございますので。リディアーヌ様とお呼びしなくてはいけません
(リディアーヌの不満をよく理解していて、その上ではっきりと断りを入れるアリシア)
(柔らかな笑みは本当に姉のようで、対するリディアーヌが更に拗ねた表情になるのは妹のように見えた)
もういいわ。ちょっと一人で歩いてくるからアリシアはここで待っていて
(花壇の前に屈んでいた体を立ち上がらせて、リディアーヌはそれだけ言って庭園の通路を進んでいく)
(普段は大人しくお淑やかなリディアーヌがこうして感情を見せるのはアリシアの前くらい)
(それをわかっているからアリシアはリディアーヌにちょっと意地悪もするし、自由にさせたりもしていた)
(流石に庭園の外には出ないだろうから、リディアーヌの背中を大人しく見送り、それから庭園の中を見回す)
(ゆっくりと回転していた首が動きを止めて、視線がある一点を見つめてから、瞼を閉じる)
「(探したつもりはなかったのに…。でも、見つけてしまった)」
「(リディが近くにいる…。わかっていても、私は、私の体は…もう…)」
(再び瞼を開いた時、アリシアの綺麗な茶褐色の瞳は揺らいでいた)
(見つめていた方向へと足が動いて、一歩また一歩と歩みを進めていく)
(その視線の先には雑用をする庭師の姿があった)
(お城の中では決して見ることはない、醜い姿の中年男で、普段は誰も近付こうとしない)
(そもそも視線を向けることすら多くの人は避けているそんな男を見つめながら大きな木の下で立ち止まる)
(太い木の幹に隠れて通路の方からは見えないようにして、アリシアの体は庭師の方へと真っ直ぐ向く)
(メイド服のロングスカートを両手で掴んで、いつの間にか赤くなった頬を俯けながら、待っていた)

【お待たせしました。こんな導入で構わないしょうか】
【よろしければ、これからよろしくお願いします】